説明

画像形成装置、プロセスカートリッジ、画像形成方法

【課題】潜像担持体の交換時期を決定することができ、異常画像を出さないうちに交換時期を知ることができ、ロスタイムがなく、継続して安定して良好な画像を得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】表面にフィラーを含有する保護層を有する潜像担持体と、帯電手段と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、を備えた画像形成装置において、潜像担持体の画像領域外に、潜像担持体交換時期を決定するための表面電位検知領域を有し、該表面電位検知領域において、該潜像担持体の表面電位検知領域の保護層中のフィラーの含有割合が画像領域内の保護層中のフィラーの含有割合よりも少なく、潜像担持体の表面電位検知領域に表面電位検知手段を有し、潜像担持体の交換時期表示手段を有する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関し、さらに詳しくは、潜像担持体が摩耗して画像が異常になる前に、潜像担持体の摩耗を予測し、潜像担持体交換時期を表示し、安定した高画質な画像を得ることができる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置では、潜像担持体(以下、電子写真感光体、感光体ともいう)に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を施すことにより画像形成が行われる。帯電工程で生成し感光体表面に残る放電生成物および転写工程後に感光体表面に残る残トナーまたはトナー成分はクリーニングプロセスを経て除去される。
複写機やプリンタ等に広く使用されている電子写真方法に用いられる電子写真感光体としては、安価、大量生産性、無公害性等の利点から、有機系の感光材料が汎用されている。ところが、有機系感光体は無機系感光体と比較して耐摩耗性が低い。
【0003】
一般に用いられるクリーニング方式として、安価で機構が簡単でクリーニング性に優れたゴムブレードが用いられる。しかし、ゴムブレードは感光体に押し当てて感光体表面の残留物を除去するため感光体表面とクリーニングブレード間の摩擦による機械的ストレスが大きく、特に有機感光体においては感光体表面層やクリーニングブレードの摩耗が生じ、摩耗すると感光体が所定の性能を発揮できなくなるため、感光体やクリーニングブレードの寿命を短くする。近年は電子写真システムの小型化が望まれるようになってきて、感光体の小径化を余儀なくされており、感光体は小径ほど、寿命も短くなる。
【0004】
また、近年帯電工程においては、直流電圧に交流電圧を重畳して帯電する帯電ローラ等によるいわゆるAC帯電が用いられるようになってきた。このAC帯電は、感光体の帯電電位の均一性が高い、オゾンやNOx等の酸化性ガスの発生が少ない、装置を小型化できる等の優れた性能を有している反面、印加する交流電圧の周波数に応じ、1秒間に数百〜数千回もの正負放電が帯電部材と感光体の間で繰り返されるため、感光体はこの多数の放電を受けて表面層の劣化が加速される。
そのため、長期に渡って高画質を維持するには、摩擦やAC帯電による感光体やクリーニングブレード等の劣化を低減し、有機感光体の寿命を延ばし、クリーニング性を向上させる必要がある。
【0005】
この要求に対して、例えば、特許文献1に示す、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸ブロックにブラシ等を押し付けて微粉化して感光体に供給する方法などが採用されている。ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸を用いることにより、それが保護剤として機能し、感光体表面の潤滑性は向上し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦を低減することができると供に、転写残トナーのクリーニング性も向上することから、非常に好ましい。
AC帯電による劣化に対しても、感光体に保護剤を塗布しておくと、AC帯電のエネルギーは、先ず保護剤に吸収され、感光体に到達し難くなるため、感光体は保護される。
【0006】
一方、有機感光体の耐摩耗性を向上させるアプローチもある。有機系感光体において耐摩耗性を向上させる方法としては、感光体表面に保護層を設けるものがある。例えば、表面層に酸化チタン、アルミナなどのフィラーを含有させたものが検討されており、特許文献2に開示されている。
上述のように感光体表面にフィラーを含んだ保護層を形成することで、機械的耐久性に優れた感光体を得ることができるが、その一方で、高耐摩耗性が高すぎる場合には経時的に感光体表面に放電生成物が蓄積してしまい、高温、高湿環境で画像流れ等の異常画像が発生してしまう場合がある。そこで、フィラー量や種類を調整し、感光体表面を適度に摩耗させることで、上記のような異常を抑える使用方法が主流である。
【0007】
上記のような感光体の使用方法では、感光体を少しずつ摩耗させるため、感光体が所定の性能を発揮できなくなる。すなわち、感光体膜厚が薄くなるため、帯電が低くなって、解像度が悪くなったり、地汚れが出たり、画像濃度が低くなったり、耐圧が低くなるため放電を起こして異常画像が出たり、局部的に摩耗するとスジになったりする。このような異常画像が見られると、感光体は寿命となり、感光体を交換することになる。感光体ユニットとして交換する場合もある。しかし、このような異常画像を見てから交換するのでは、サービスマンによる交換の場合、サービスマン到着まで数時間あるいは数日を要し、その間プリントできないこともある。ユーザが交換できる場合でも、ダウンタイムを省くには、予備の感光体または感光体ユニットを準備しておく必要があり、予備の感光体や感光体ユニットを置いておくのは、スペースやコストの面から無駄である。特に、高画質高速度高生産性領域のプリンタにおいては、数時間の装置停止は、膨大な損害を招きかねないため、装置が停止してからのサービスマンへの連絡では、損失が大きい。
【0008】
そこで、感光体表面の摩耗を検知し、摩耗が異常画像をもたらす程度となる前にユーザに感光体の寿命を予告する警告を出す手段が望まれる。
従来の感光体の寿命検知には、ドラムの回転数をカウントして一定の回転数に達した時に警告を出す方式や、帯電装置から感光体表面への流れ込み電流と感光体の膜厚変化との相関関係を利用して、前記流れ込み電流が基準値に達したときに警告を出す方式(特許文献3等)や、感光体表面の摩擦抵抗を測定し、摩擦抵抗が規定値に達した場合に感光体寿命警告を報知する方式(特許文献4等)が用いられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のドラム寿命検知方式には、以下のような欠点があった。感光体の回転数をカウントして一定の回転数に達した時に警告を出す方式は感光体の膜厚変化を直接的に検出する構成ではないため、正確な寿命検知を行うことができなかった。帯電装置から感光体表面への流れ込み電流を検出し、基準値に達したときに警告を出す方式と感光体表面の摩擦抵抗を測定する方式とでは、画像領域で電流や摩擦抵抗を測定しているため、それらの測定値が異常と判断された段階では、既に画像に異常が発生してしまっていることが多く、感光体摩耗のため解像度低下や地汚れ等が発生してしまう場合もある。上記のように、高画質高速度高生産性領域のプリンタにおいては、解像度低下や地汚れが発生すると、膨大なプリント数が無駄になる場合がある。経験から異常発生を予測しようとしても、感光体摩耗による電流や摩擦抵抗の変化は小さく、その変化が大きくなるのは異常が起きたときであり、その予測は困難であり、不正確である。流れ込み電流の場合は、軸方向の総電流となるため、異常発生を予測しようとしても、一部では大きな異常が起きている場合もある。そのため、高画質の正常な画像形成が行えている段階で、的確に感光体を交換する時期を知らせる手段が求められていた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題にかんがみ、潜像担持体表面に、フィラーを含有する保護層を設け、表面電位検知領域に対応する領域に保護層中のフィラーが少ない部分を設け、強制的に潜像担持体膜厚が画像領域内よりも早く摩耗する部分を形成し、膜厚が早く摩耗する部分の表面電位を検知して、潜像担持体の交換時期を決定することができ、異常画像を出さないうちに交換時期を知ることができ、ロスタイムがなく、継続して安定して良好な画像を得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)フィラーを含有する保護層が表面に形成された潜像担持体と、
該潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、
画像データに基づいて、該帯電手段により帯電された該潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
形成された静電潜像をトナーにより可視像化する現像手段と、
可視像化されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置において、
該潜像担持体の画像領域外に、潜像担持体交換時期を決定するための表面電位検知領域を有し、該表面電位検知領域において、
該潜像担持体の表面電位検知領域の保護層中のフィラーの含有割合が画像領域内の保護層中のフィラーの含有割合よりも少なく、潜像担持体の表面電位検知領域に表面電位検知手段を有し、潜像担持体の交換時期表示手段を有することを特徴とする画像形成装置。
(2)潜像担持体の表面電位検知領域の表面電位検知手段は、非画像部(地肌部)の表面電位を検知することを特徴とする(1)記載の画像形成装置。
(3)それぞれフィラー量が異なる塗工液を噴出するスプレーガンを複数使用して潜像担持体の保護層を形成したことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の画像形成装置。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられる、少なくとも潜像担持体と、帯電手段とを備えた、プロセスカートリッジであって、該潜像担持体はフィラーを含有する保護層を表面に有し、潜像担持体の画像領域外に、潜像担持体交換時期を決定するための表面電位検知領域を有しており、該表面電位検知領域の保護層中のフィラーの含有割合が、画像領域内の保護層中のフィラーの含有割合よりも少ないことを特徴とするプロセスカートリッジ。
(5)フィラーを含有する保護層を表面に形成した潜像担持体の表面を、帯電した後に、
該潜像担持体の表面に静電潜像を形成し、
潜像担持体表面の潜像にトナーを供給してトナー像化し、
潜像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する画像形成方法において、
該潜像担持体は潜像担持体の画像領域外に、潜像担持体交換時期を決定するための表面電位検知領域を有しており、該表面電位検知領域の保護層中のフィラーの含有割合が、画像領域内の保護層中のフィラーの含有割合よりも少ないものであり、
該表面電位検知領域において、前記画像領域内と同様に、少なくとも帯電し静電潜像を形成し現像する工程を行うと共に表面電位検知領域の表面電位を検知し、該表面電位の値に基づいて潜像担持体の交換時期を決定することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、表面に保護層を設け、その保護層がフィラーを含有する感光体を用い、表面電位検知領域として保護層中のフィラー量の少ない部分を設け、強制的に感光体膜厚が画像領域内よりも早く摩耗する部分を形成し、膜厚が早く摩耗する部分の表面電位を検知して、感光体の交換時期を予測することによって、帯電低下による、解像度不良や、地汚れ、放電破壊による異常画像などが出る前に、感光体の交換時期を知ることができ、高画質でない画像を出さなくて済む。感光体を交換する場合、サービスマンによる交換の場合でもサービスマン到着までの数時間あるいは数日のタイムロスを省くことができる。ユーザが感光体またはプロセスユニットを交換できる場合でも、交換時期でもないのに予備の感光体やプロセスユニットを準備しておく必要がなくなり、スペースやコストの無駄を省くことができる。
【0013】
また、表面電位検知領域の表面電位検知手段は、非画像部(地肌部)の表面電位を検知することによって、他の部分の表面電位を検知するよりも、画像との対比がよく、より正確に感光体交換時期を予測できる。
感光体表面に保護層を持つことによって、表面電位検知領域の保護層が摩耗した時点から予測する画像領域内の保護層が摩耗するであろう時点を交換時期とすることで、交換時期の決定が容易となる。
【0014】
それぞれフィラー量が異なる塗工液を噴出するスプレーガンを、複数使用して像担持体の保護層を形成することにより、表面電位検知領域と画像領域とで、異なる感光体保護層のフィラー量とすることができ、表面電位検知領域では、画像領域内よりも早く感光体を摩耗させることができ、画像領域内の感光体摩耗時期を予測することできる。
【0015】
少なくとも表面に保護層を設け、その保護層がフィラーを含有し、表面電位検知領域として、画像領域よりもフィラー量の少ない部分を設けた感光体と、帯電手段とを備えたプロセスカートリッジを、本発明の画像形成装置に用いることにより、表面電位検知領域の摩耗により画像領域内の摩耗を予測し、感光体を交換する時、交換がより容易となり、サービスマンによる交換の場合でもサービスマン到着までの数時間あるいは数日のタイムロスを省くことができる。また、ユーザが感光体またはプロセスユニットを交換できる場合でも、交換がより容易となり、交換時期でもないのに予備の感光体やプロセスユニットを準備しておく必要がなくなり、スペースやコストの無駄を省くことができる。
【0016】
感光体の表面電位検知領域には、画像領域内よりも少量のフィラーを含有する保護層を設け、表面電位検知領域も画像領域内と同様な作像プロセスを施し、感光体の表面電位検知領域の表面電位を検知し、感光体の交換時期を決定することにより、表面電位検知領域の摩耗により画像領域内の摩耗を予測し、感光体を交換する時、交換がより容易となり、サービスマンによる交換の場合でもサービスマン到着までの数時間あるいは数日のタイムロスを省くことができる。また、ユーザが感光体またはプロセスユニットを交換できる場合でも、交換がより容易となり、交換時期でもないのに予備の感光体やプロセスユニットを準備しておく必要がなくなり、スペースやコストの無駄を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置の作像ユニットの一例の概略構成図である。
【図3】本発明の画像形成装置の作像ユニットの他の例の概略構成図である。
【図4】本発明の画像形成装置に用いる積層型電子写真感光体の一例の概略断面図である。
【図5】本発明の画像形成装置における、表面電位検知領域をを備えた感光体を説明する図である。
【図6】(a)はプリント枚数と感光体摩耗量との関係を示すグラフであり、(b)は感光体摩耗量と感光体帯電電位の関係を示すグラフであり、(c)は非画像ODと感光体帯電電位の関係を示すグラフであり、(d)は実施例1におけるブラックの表面電位検知領域の表面電位の測定結果を示すグラフであり、(e)は実施例2におけるブラックの表面電位検知領域の表面電位の測定結果を示すグラフである。
【図7】(a)はプリント枚数と感光体摩耗量との関係を示すグラフであり、(b)はプリント枚数と感光体帯電電位との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
なおドラム状の感光体について以下説明するが、本発明はこれに限定されず、シート状やエンドレスベルト状の感光体であってもよい。
【0019】
<全体構成>
図1は本発明を適用する画像形成装置の概略構成を示す図である。
同図において符号1は感光体、9は露光装置、51は一次転写ローラ、52、53、54はローラ、56は中間転写ベルト、57は中間転写ベルトクリーニング装置、61は二次転写ローラ、71は定着ベルト、72は加熱ローラ、73は定着ローラ、74は加圧ローラをそれぞれ示す。また、Y、M、C、Kは色を示す添字である。
【0020】
画像形成装置は、その内部の略中央に中間転写ベルト56を備えている。中間転写ベルト56は、ポリイミドやポリアミド等の耐熱性材料からなり、中抵抗に調整された基体からなる無端状ベルトで、3つのローラ52、53、54に掛け回して支持され、図中矢印A方向に回転駆動される。中間転写ベルト56の上方にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナーに対応した4つの作像ユニットが中間転写ベルト56のベルト面に沿って並んでいる。
【0021】
図2は、4つの作像ユニットのうち、1つを拡大して示す図である。
同図において符号2は帯電装置、3は保護剤塗布装置、4は現像装置、8はクリーニング装置、Sは表面電位検知手段である表面電位センサをそれぞれ示す。
いずれの作像ユニットでも同様の構成であるので、この図においては、色の区別を示すY、M、C、Kの表示を省略する。各作像ユニットは感光体1を有し、各感光体1の周りには、感光体1表面に電荷を与える帯電装置2、感光体1表面に形成された潜像を各色トナーで現像してトナー像とする現像装置4、感光体1表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置3、トナー像転写後の感光体1表面のクリーニングをするクリーニング装置8がそれぞれ配置されている。転写性に問題がなく、転写残トナーが次の作像に影響を与えない程度であれば、クリーニング装置は必ずしも設ける必要はない。保護剤塗布装置も必ずしも必要なものではない。
【0022】
この作像ユニットをプロセスカートリッジと呼び、プロセスカートリッジ内のどこかの部品に異常が生じた場合、例えば感光体が摩耗して異常画像が出た場合には、異常個所となる部品単体、例えば感光体だけを交換しても良いし、プロセスカートリッジごと交換しても良い。
また、図1を参照すると、4つの作像ユニットの上方には、帯電した各感光体の表面に各色の画像データに基づいて露光をし、潜像を形成する露光装置9が備えられている。
中間転写ベルト56を挟んで、各感光体1と対向する位置には、感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト56上に一次転写する一次転写ローラ51がそれぞれ配置されている。一次転写ローラ51は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。
【0023】
中間転写ベルト56のローラ52で支持された部分の外側には、二次転写ローラ61が圧接されている。二次転写ローラ61は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。二次転写ローラ61と中間転写ベルト56との接触部が二次転写部であり、中間転写ベルト56上のトナー像が転写紙等の被転写体に転写される。
中間転写ベルト56のローラ53で支持された部分の外側には、二次転写後の中間転写ベルト56の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置57が設けられている。
【0024】
二次転写部の下流には、転写紙上のトナー像を転写紙に半永久的に定着させる定着装置70が備えられている。定着装置70は、内部にハロゲンヒータを有する加熱ローラ72および定着ローラ73に巻き掛けられた無端の定着ベルト71と、定着ベルト71を介して定着ローラ73に対向、圧接して配置される加圧ローラ74とから構成されている。
【0025】
以下に、本画像形成装置の特徴をより詳細に説明する。
<感光体>
図4は、本発明の画像形成装置に用いる積層型電子写真感光体の概略断面図である。
図4中、101が導電性支持体、102が感光層で、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層103と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層104とを積層して形成してある。また、前記感光体の機械的強度、耐摩耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、図4に示すように、感光層102上に保護層105を設ける。また前記感光層と導電性支持体の間には下引き層106が設けられていてもよい。
感光体としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。本発明の画像形成装置に用いる感光体(感光体)は、導電性支持体と、該導電性支持体上に少なくとも感光層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0026】
前記感光層としては、公知の感光層を用いることができ、電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、又は電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、各層には必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0027】
前記導電性支持体としては、体積抵抗1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
【0028】
ドラム状の支持体としては、直径は20〜150mmが好ましく、24〜100mmがより好ましく、28〜70mmが更に好ましい。前記ドラム状の支持体の直径が20mm未満であると、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に困難となることがあり、150mmを超えると、画像形成装置が大きくなってしまうことがある。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
また、特開昭52−36016号公報に開示されているようなエンドレスニッケルベルト、又はエンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0029】
前記感光体の下引き層は、一層であっても、複数の層で構成してもよく、例えば(1)樹脂を主成分としたもの、(2)白色顔料と樹脂を主成分としたもの、(3)導電性基体表面を化学的又は電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が挙げられる。これらの中でも、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。
【0030】
前記白色顔料としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、これらの中でも、導電性支持体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンが特に好ましい。
前記樹脂としては、例えばポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂;アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0031】
前記感光層における電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料又は染料;セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記感光層における電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができる。該結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
【0035】
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0036】
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
【0037】
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
【0038】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0039】
前記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
【0040】
また、前記感光層中にはレベリング剤を添加しても構わない。該レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、又はオリゴマーが使用される。前記レベリング剤の使用量は、前記バインダー樹脂100質量部に対して、0〜1質量部が好ましい。
【0041】
<感光体保護層>
前記感光体の保護層は、感光体の機械的強度、耐摩耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のために設けられる。該保護層としては、感光層よりも機械的強度の高い樹脂に無機フィラーを分散させたものが好適である。また、前記保護層に用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、該熱硬化性樹脂は機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による摩耗を抑える能力が極めて高いため特に好ましい。前記保護層は薄い厚みであれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない保護層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、保護層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、保護層に用いる樹脂として電荷輸送能力を含有させたりしたものを用いることが好ましい。
【0042】
前記感光層と保護層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により保護層が摩耗し、消失すると、すぐに感光層は摩耗していってしまうため、保護層を設ける場合には、保護層は十分な厚みとすることが重要であり、0.1〜12μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、2〜8μmが更に好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の摩耗が進んでしまうことがあり、12μmを超えると、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する樹脂を用いる場合には、電荷輸送能力を有する樹脂のコストが高くなってしまうことがある。
【0043】
前記保護層に用いる樹脂としては、画像形成時の書込み光に対して透明であり、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが好ましく、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は熱可塑性樹脂であってもよいが、樹脂の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性樹脂とすることで、保護層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による摩耗を大幅に減少させることができる。
【0044】
前記保護層は、電荷輸送能力を有していることが好ましく、保護層に電荷輸送能力を持たせるためには、保護層に用いる樹脂と前述の電荷輸送物質を混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する樹脂を保護層に用いる方法が考えられ、後者の方法が、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができ好ましい。
【0045】
前記電荷輸送層能力を有する樹脂としては、樹脂中に電荷輸送能力を有する基として、下記構造式(i)で表される基を有するものが好適に挙げられる。
【化1】


ただし、前記構造式(i)中、Ar1は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Ar2、及びAr3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0046】
このような電荷輸送能力を有する基は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の機械的強度の高い樹脂の側鎖に付加することが好ましく、モノマーの製造が容易で、塗工性、硬化性にも優れるアクリル樹脂を用いることが特に好ましい。
このような電荷輸送能力を有するアクリル樹脂は、上記構造式(i)の基を有する不飽和カルボン酸を重合させることにより機械的強度が高く、透明性にも優れ、電荷輸送能力も高い保護層を形成することができる。また、単官能の上記構造式(i)の基を有する不飽和カルボン酸に多官能の不飽和カルボン酸、好ましくは3官能以上の不飽和カルボン酸を混合することで、アクリル樹脂は架橋構造を形成し、熱硬化性樹脂となり、保護層の機械的強度は極めて高いものとなる。前記多官能の不飽和カルボン酸には、上記構造式(i)の基を付加してもよいが、モノマーの製造コストが高くなってしまうため、多官能の不飽和カルボン酸には、上記構造式(i)の基を付加せず、光硬化性多官能モノマーを用いることが好ましい。
【0047】
前記構造式(i)で表される基を有する単官能不飽和カルボン酸としては、下記構造式(ii)、又は構造式(iii)を例示することができる。
【化2】


【化3】

【0048】
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、−COOR7(ただし、R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)、ハロゲン化カルボニル基、CONR89(ただし、R8及びR9は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)を表す。
【0049】
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Ar1及びAr2は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Ar3及びAr4は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
前記構造式(ii)において、Xは、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、Zは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、又は置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基を表す。
m及びnは、それぞれ0〜3の整数を表す。
【0050】
前記構造式(ii)及び構造式(iii)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などにより置換されていてもよい。これらR1の置換基のうち、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0051】
前記Ar3及びAr4のアリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、又は複素環基が含まれる。
前記縮合多環式炭化水素基としては、環を形成する炭素数が18個以下のものが好ましく、例えばペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
【0052】
前記非縮合環式炭化水素基としては、例えばベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基;ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基;9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基などが挙げられる。
前記複素環基としては、例えばカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基などが挙げられる。
【0053】
前記多官能の不飽和カルボン酸の含有量は、前記保護層全体の5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が更に好ましい。前記含有量が5質量%未満であると、保護層の機械的強度が不十分であり、75質量%を超えると、保護層に強い力が加わったときにクラックが発生しやすく、感度劣化も生じやすくなることがある。
【0054】
前記保護層にアクリル樹脂を用いる場合には、上記不飽和カルボン酸を感光体に塗工後、電子線照射あるいは、紫外線等の活性光線を照射してラジカル重合を生じさせ、保護層を形成することができる。活性光線によるラジカル重合を行う場合には、不飽和カルボン酸に光重合開始剤を溶解したものを用いる。光重合開始剤は通常、光硬化性塗料に用いられる材料を用いることができる。
【0055】
前記保護層中には該保護層の機械的強度を高めるために、フィラーとして、金属微粒子、金属酸化物微粒子、その他の微粒子など含有することが好ましい。前記金属酸化物としては、例えば酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他の微粒子としては、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂に無機材料を分散したものなどが挙げられる。
無機フィラーの平均粒子径dは0.2〜0.4μmであることが耐摩耗性と画像品質を両立させる点から特に好ましい。平均粒子径dが大きくなり過ぎると感光体上に形成される潜像が乱れやすくなり、また電荷移動の際のトラップとなり露光後の光減衰特性が悪化したり残留電位の上昇が生じてしまう。逆に平均粒子径dが小さくなりすぎると耐摩耗性の面で悪影響が生じる。つまり平均粒子径dが小さすぎると保護層中のバインダー樹脂との結びつきが弱くなり保護層より脱離しやすくなるために、摩耗が促進され耐刷性が低下してしまう。また平均粒子径dが小さすぎると塗工液として凝集しやすく保護層として成膜した場合、均一な膜質が得られない。こうした点が、特に好ましい平均粒子径dを0.2〜0.4μmとする理由である。
保護層を用いると、保護層を用いない場合に比べ、一般的に感光体の摩耗速度は大幅に遅くなる。そのため、保護層が摩耗しつくすと、その個所の摩耗速度は急激に増大し、感光体の表面電位の変化も急激になる。
【0056】
<強制摩耗手段>
感光体が摩耗して異常画像が出る前に感光体摩耗を検知するには、画像領域外に表面電位検知領域を設け、その表面電位検知領域に、画像領域内よりも早く摩耗する部分を、意図的に形成する。画像領域内とは、通常、画像を形成する、A3やA4等、紙サイズに合わせた領域を指す。いわゆる文字間等の地肌部の非画像部ではない。画像領域外とは、画像領域内以外の領域を指す。表面電位検知領域は、感光体の長手方向の両端に有する画像領域外の一方に設けることが好ましい。そのため、感光体の長手方向の両端の画像領域外の一方を他方より長くすることが好ましい。
【0057】
感光体の摩耗を少なくするためには、前述したように、フィラーを含有する保護層を、感光体表層に形成する。画像領域の保護層は、添加するフィラーの量を重量基準で通常は10〜40%、好ましくは20〜30%とするものである。フィラーの量が10%未満では摩耗が大きくて耐久性に劣り、40%を越えると感度低下や残留電位上昇が無視できなくなるので望ましくない。この要求を満足するために、画像領域の保護層の任意断面におけるフィラー含有量がその平面内での面積占有率として2〜6%とすることが望ましい。
保護層を用いると、保護層を用いない場合に比べ、一般的に感光体の摩耗速度は大幅に遅くなる。そのため、保護層が摩耗しつくすと、その個所の摩耗速度は急激に増大し、感光体の表面電位の変化も急激になる。また、保護層が含有するフィラーの量によっても、感光体摩耗速度は変化し、フィラー量が多い方が摩耗は少なく、少ない方が摩耗は多くなる。
【0058】
表面電位検知領域に、画像領域内よりも早く摩耗する部分を形成するためには、図5のように、感光体の画像領域内対応部と、表面電位検知領域を設ける表面電位検知領域対応部とで感光体保護層のフィラーの含有割合を変えるとよい。具体的には画像領域内の通常のフィラーの含有割合に比べ、表面電位検知領域対応部では、フィラーの含有割合を5%程度少なくすることが好ましい。このようにすると、感光体の表面電位検知領域では、ある摩耗程度になるのが、画像領域内よりも早くなる。
尚、感光体の表面電位検知領域を設けない方の画像領域外に関しては、保護層のフィラー量は画像領域における保護層のフィラー量と同じであって良い。
表面電位検知領域の長さは最低10mmであることが好ましく、20mm程度がより好ましい。
【0059】
保護層の形成にはスプレー塗工を使用することができる。通常は感光体1を周方向に回転させながら、スプレーガンを感光体1の長手方向に移動させながら塗工液を吹き付けることで均一な保護層105を形成することができる。繰り返し塗工を行うことで任意の膜厚の保護層105を形成することができる。塗工後、加熱乾燥させて溶媒を除去し、保護層105を完成させる。
【0060】
感光体1の長手方向でフィラー含有量が異なる部分を形成するには、スプレーガンを複数使用すればよい。複数のスプレーガンから、それぞれフィラー含有量の異なる塗工液を噴射して塗工することで、感光体1の長手方向で、部分的にフィラー含有量が異なる保護層105を形成することができる。
スプレー塗工液として、膜形成のためのポリカーボネート10質量部、低分子電荷輸送物質7質量部、フィラーとしてのアルミナ微粒子(中心粒径0.30μm)5.8質量部、分散助剤0.08質量部、溶媒としてのテトラヒドロフラン700質量部、さらに溶媒としてのシクロヘキサノン200質量部からなるものを例示することができる。
【0061】
<摩耗検知>
摩耗程度を検知するには、感光体の表面電位を測定する。図2のSは表面電位センサを示す。摩耗検知のためには、感光体の表面電位検知領域に表面電位検知手段である表面電位センサを設置し、表面電位検知領域の表面電位を測定する。
このとき、表面電位検知領域でも画像領域内と同様な通常の作像プロセスを施す。ただし、中間転写ベルトや中間転写ドラム、転写チャージャ、転写ローラ、転写材等は、画像領域内のみでも良い。表面電位を検知して摩耗を検知するので、現像プロセスも直接は必要ではないが、感光体の摩耗には、クリーニング時の、トナーの存在の影響が大きいので、表面電位検知領域では、画像領域内と同様なプロセスを施すことが望ましい。
【0062】
感光体表面電位として帯電電位(帯電後書込み前の表面電位)を検知する場合について説明する。感光体の摩耗に伴い、帯電電位(帯電後書込み前の表面電位)は正常な時より低くなる。また、摩耗は局部的に進む場合もあり、局部的に摩耗していると、帯電時に局部的摩耗部に電界が集中し、それに伴い放電破壊を生じ、その部分帯電電位は異常に低くなる。
【0063】
感光体の画像領域内対応部と表面電位検知領域対応部とで感光体保護層のフィラー含有率を変えて、表面電位検知領域に、画像領域内よりも早く摩耗する部分を形成し、感光体帯電電位を検知して、感光体交換時期を決定する方法について説明する。
まず、プリント枚数と感光体の摩耗量との関係(図6(a))について、感光体保護層中のあるフィラー量について、把握しておく。感光体の画像領域内が摩耗し、異常が出るどの位前に異常を検知したいか、感光体交換時期を決定したいか(=表面電位検知領域において異常が出た後、何枚プリント後に画像領域内において異常が出るか)によって、感光体画像領域内対応部と表面電位検知領域対応部との感光体保護層中のフィラー量の差を決定する。
一方、感光体摩耗量と感光体帯電電位との関係(図6(b))を把握しておく。さらに、感光体帯電電位と、例えば紙上画像の非画像部(地肌部)OD(光学画像濃度)との関係(図6(c))を把握しておく。非画像部ODの許容値Tを決めておき、非画像部ODが許容値Tを上回り、異常を示す帯電電位となる感光体摩耗量を把握しておく。この時の感光体摩耗量と、上記プリント枚数と感光体の摩耗量との関係とから、感光体の画像領域内が摩耗し、異常が出るどの位前(K)に異常を検知したいか、感光体交換時期を決定したいか(=表面電位検知領域において異常が出た後、何枚プリント後に画像領域内において異常が出るか)を決定する。
【0064】
例えば、図6(c)より、非画像部ODが許容できない=Tよりも高くなる時の感光体帯電電位は500V以下の時、図6(b)より、感光体帯電電位が500Vとなる感光体摩耗量は約5μm、図6(a)より、感光体保護層のフィラー含有率30%(以降、保護層中でのフィラーの占める重量%)の場合、感光体摩耗量が約5μmとなるのは、約60,000枚プリントした時である。感光体の画像領域内が摩耗し異常が出る10,000枚(=K)前に異常を検知したい場合、約50,000枚プリントした時に感光体摩耗量が5μmとなるのは、感光体保護層のフィラー含有率が25%の時である。よって表面電位検知領域の感光体保護層のフィラーは画像領域内の感光体保護層のフィラーよりも含有率を約5%少なくしておくと、表面電位検知領域が摩耗して表面電位検知手段が帯電電位500Vを検知した時(非画像部ODが非許容範囲となった時)から約10,000枚後に画像領域内で異常画像が出ると予測できる。
【0065】
表面電位検知領域の電位測定は、常に測定しても良いが、表面電位検知領域で電位の異常が認められても、画像領域内において、即座に異常が発生するわけではない。そのため、例えば、10〜1000枚、好ましくは50〜500枚画像形成毎に表面電位検知を行えば良い。また、電位の異常を一回検知した場合には、即座に感光体交換時期と判断しても良いが、異常が連続して認められた場合に至って、感光体交換時期と判断しても良い。これらの設定は、要求する画像によって決定する。
上記表面電位検知手段は、帯電後書込み前の帯電電位を検知しても良いが、書込み後の非画像部(地肌部)の表面電位を検知してもよい。書込み後の方がより現像部に近く、画像との相関がより良い。画像領域外の表面電位検知領域では、作像時100%露光し、ベタ画像を作像しているため、書込み後の表面電位を検知する場合には、表面電位検知のタイミングに合わせ、露光しない時間を設け、非画像部の表面電位を検知するとよい。
【0066】
<交換時期決定手段>
本発明の画像形成装置は潜像担持体の交換時期決定手段を有する。この潜像担持体の交換時期決定手段は、例えば、表面電位検知手段が所定の設定値を超える信号を発生したとき、これを交換時期と判断して、この信号を適宜の警告手段に送って警告信号を発生する手段である。
感光体やプロセスカートリッジの交換時期の警告は、画像形成装置本体の液晶等の表示部にメッセージを表示したり、警告ランプやLED等の点灯やブザー等によりユーザに報じたりする。上記電位情報をサービスコールシステムに接続して、直接サービスマンに知らせるようにすると、さらに便利である。
また、高速高生産な装置のように、予備の感光体やプロセスカートリッジ等を余分に搭載している場合には、自動的に交換するよう、設定しても良い。
この機構はカラーの画像形成装置の場合、全色の感光体に載せると確実に各色のプロセスカートリッジの交換時期を予測できるが、一般に使用量が多く、早めに感光体が消耗するブラックのみに載せ、ブラックのプロセスカートリッジ交換時に全色のプロセスカートリッジを交換しても良い。また、カラーは4色同様な傾向を示すことが多いので、ブラックに加え、カラーのうち1色に搭載しても良い。
【0067】
潜像担持体表面に保護層を持つと、摩耗したことがわかりやすい。
図8(a)のように、保護層があると、保護層が摩耗してしまって保護層がなくなった時、摩耗の速度が急激に変化する。そのため図8(b)のように、プリント枚数と帯電電位との関係は、保護層がなくなると、保護層がある場合と比較して変化し、保護層がなくなると帯電電位は急激に変化するので、保護層の摩耗を検知しやすい。
そこで、感光体上表面電位検知領域の保護層が摩耗してしまった時点を交換時点とするよう、プリント枚数と感光体保護層摩耗量と感光体帯電電位との関係を前もって把握し、感光体保護層の膜厚を選択しておいても良い。
【0068】
<帯電>
帯電装置2は、帯電部材として導電性芯金の外側に中抵抗の弾性層を被覆して構成される帯電ローラ2aを備えることが好ましい。帯電ローラ2aは、感光体1に対して微小な間隙をもって配設されることが好ましい。この微小な間隙は、例えば、帯電ローラ2aの両端部の非画像形成領域に一定の厚みを有するスペーサ部材を巻き付けるなどして、スペーサ部材の表面を感光体1表面に当接させることで、設定することができる。また、帯電ローラ2aには、帯電ローラ2a表面に接触してクリーニングする帯電クリーニング部材2bが設けられていることが好ましい。
本発明において、帯電ローラ2aは、感光体の画像領域内と同様に、画像領域外の表面電位検知領域も帯電させるものである。
前記帯電部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記帯電ローラ以外にも、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、等を用いることができる。
【0069】
本発明において用いる帯電ローラ2aは、感光体に対して接触、または非接触近接に配置して近接放電を起こすことにより感光体表面を帯電させる方式のものを用いる。
上記で、接触とは感光体に帯電ローラが直接接触していることであり、非接触近接とは感光体と帯電ローラの間に200μm以下の空隙が存在していることを言う。非接触近接方式は帯電部材の表面が感光体表面に残留したトナー等によって汚染されにくいというメリットがある。
【0070】
帯電ローラは、例えばSUM−Niメッキ(鋼の表面をニッケルメッキ仕上げ)で形成した例えば外形φ8mmの金属軸である芯金の外周に、例えばエピクロルヒドリンゴムからなり、体積固有抵抗値を1×103〜1×108Ω・cmとした弾性ローラ部を例えば肉厚1.5mmの層として形成したものである。さらに弾性ローラ部は、例えばゴム自体のテストピース硬度が60度のものを使用する。また、表面が硬質な帯電ローラ2aの具体例としては、例えば、抵抗調整層を高分子型イオン導電剤が分散する熱可塑性樹脂組成物(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンおよびその共重合体等)により形成し、抵抗調整層の表面を硬化剤により硬化皮膜処理されたものが挙げられる。
【0071】
また硬化皮膜処理は、例えば、イソシアネート含有化合物を含む処理溶液に抵抗調整層を浸漬させることにより行われるが、抵抗調整層の表面に改めて硬化処理皮膜層を形成することにより行われてもよい。また、帯電ローラ部の両端部に、それぞれ例えばポリエステル、またはポリエチレンテレフタレートからなる片面が粘着面に形成された粘着シートを貼ることによって、感光体と帯電ローラの間に空隙を作ることができ、非接触近接方式を実現できる。そして、帯電ローラ芯金に直流電圧または交流電圧と直流電圧を重畳した電圧を印加することによって、近接放電を起こして感光体の表面を帯電できる。これにより、放電ワイヤを用いた、いわゆるコロトロンやスコロトロンと言われるコロナ放電器と比して、帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制することが可能となる。
【0072】
<露光>
均一に帯電された感光体1には、図示せぬ露光手段から発した画像情報に応じた露光Lにより静電潜像を形成する。露光手段としてはレーザーダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)等を用いることができる。
感光体の表面電位検知領域では、常時全面ベタ画像となるよう、露光Lにより露光する。
【0073】
<現像>
感光体1上に形成した静電潜像は、現像装置4により現像し、トナー像が形成される。
現像装置4は、感光体1に対向している現像ローラ4a、現像ローラ4aに近接して紙面の表面から裏面方向に現像剤を搬送する第一の搬送スクリュウ4b1、紙面の裏面から表面方向に現像剤を搬送する第二の搬送スクリュウ4b2を互いに平行に備えている。現像ローラ4は、図示は省略するが外周側の回転自在なスリーブと内側に固定した磁石から構成する。第二の搬送スクリュウ4b2の搬送方向上流側にはトナー補給口を設け、第二の搬送スクリュウ4b2の搬送方向下流側に設けたトナー濃度センサの出力に応じて、これも図示せぬトナー補給装置からトナーを補給する。トナー補給装置からスクリュウ4b2に補給されるトナーを現像剤と混合し、撹拌しながらスクリュウ4b1を経て、現像スリーブ4aへくみ上げる。
【0074】
現像スリーブ4aによって汲み上げられるトナーと磁性キャリアからなる現像剤は、ドクターブレード4cによって所定の現像剤層の厚みに規制され、現像スリーブ4aに担持される。現像スリーブ4aは、感光体1との対向位置において同方向または逆方向に移動しながら、現像剤を担持搬送し、トナーを感光体1の潜像面に供給する。
なお、図1においては、二成分現像方式の現像装置4の構成を示したが、これに限るものではなく、一成分現像方式の現像装置であっても適用可能である。
また、現像装置は、感光体の画像領域の静電潜像と同様に、画像領域外の表面電位検知領域の静電潜像も現像し、トナー像を形成する。
【0075】
現像剤はトナーとキャリアからなる二成分現像剤であり、キャリアは粒径50μm程度のフェライト、マグネタイト、鉄等の磁性体表面にシリコーン樹脂等の樹脂をスプレー等の方法で表面処理されたものを使用する。トナーはエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等の結着樹脂と顔料及び帯電制御剤等を混練粉砕し、分級したものに、シリカ、チタニア等の外添剤を加えたものであり、粒径は7μm程度である。
【0076】
トナーには、必要に応じてワックスやオイル等の定着助剤を内添したり、ステアリン酸亜鉛やフッ素樹脂等の潤滑剤の粉末を外添したりする場合がある。定着助剤を添加することで定着装置をなす定着ローラにシリコーンオイル等の定着オイルを塗布しなくても定着オフセットを防止することができ、コストダウンが図れる上、定着オイルがこぼれて床を汚したりする心配もなくせる。潤滑剤は、感光体の表面エネルギーを低減させ、紙粉やトナーによる感光体フィルミングを防止したり、転写中抜け等の異常画像の発生を防止したりする作用がある。
【0077】
<保護剤塗布装置>
保護剤供給手段としての保護剤塗布装置3は、固定されたケースに収容された固形保護剤3bと、固形保護剤3bに接触して保護剤を削り取り、感光体1に塗布するブラシローラ3aとを備える。固形保護剤3bは、ブロック状に形成されており、加圧部材3cによってブラシローラ3a側に付勢されている。加圧部材3cは、板バネ、圧縮バネ等のバネがよく、特に図に示すように圧縮バネを好適に用いることができる。固形保護剤3bはブラシローラ3aによって削り取られ消耗し、経時的にその厚みが減少するが、加圧部材3cで加圧されているために常時ブラシローラ3aに当接している。ブラシローラ3aは、回転しながら削り取った保護剤を感光体1表面に塗布する。
【0078】
図2に示す作像ユニットおいて、この保護剤塗布装置3の下流には、クリーニング装置8が設置されている。
クリーニング装置8は、クリーニングブレード8a、支持部材8b、トナー回収コイル8c、ブレード加圧スプリング8dを備える。クリーニングブレード8aは、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴムを板状に形成してなり、そのエッジが感光体1表面に当接するようにして設けられ、転写後に残留する感光体1上のトナーを除去する。クリーニングブレード8aは、金属、プラスチック、セラミック等からなる支持部材8bに貼着されて支持され、感光体1表面に対し所定の角度で設置される。また、ブレード加圧スプリング8dによって所定の当接圧、食い込み量で感光体1表面に当接する。
クリーニングブレード8aは感光体1上のトナーを除去するとともに、保護剤塗布装置3で感光体上に塗布された保護剤を薄い膜状に延ばす塗布ブレードの役割も行う。
また、表面電位検知領域に形成されたトナー像は、転写されずに残り、画像領域内の転写残トナーとともに除去される。
【0079】
図3は保護剤塗布装置の他の実施形態を示す図である。
保護剤塗布装置3は、固定されたケースに収容された固形保護剤3bと、固形保護剤3bに接触して保護剤を削り取り、感光体1に塗布するブラシローラ3aとを備える。固形保護剤3bは、ブロック状に形成されており、加圧部材3cによってブラシローラ3a側に付勢されている。加圧部材3cは、板バネ、圧縮バネ等のバネがよく、特に図に示すように圧縮バネを好適に用いることができる。固形保護剤3bはブラシローラ3aによって削り取られ消耗し、経時的にその厚みが減少するが、加圧部材3cで加圧されているために常時ブラシローラ3aに当接している。ブラシローラ3aは、回転しながら削り取った保護剤を感光体1表面に塗布する。さらにブラシローラ3aの下流側に均しブレード3dと支持部材3eと加圧スプリング3fが設置されている。ブラシローラ3aで感光体上に塗布された粒状の保護剤は、均しブレード3dによって感光体上に均一な膜に形成される。
【0080】
この保護剤塗布装置3の上流には、次に説明するクリーニング装置8が設置されている。
クリーニング装置で感光体1上の転写残トナーを除去した上で保護滑剤を塗布するため、トナー入力に左右されずに均一に感光体上に保護剤を塗布することができる。
クリーニング装置8は、クリーニングブレード8a、支持部材8b、トナー回収コイル8c、ブレード加圧スプリング8dを備える。クリーニングブレード8aは、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴムを板状に形成してなり、そのエッジが感光体1表面に当接するようにして設けられ、転写後に残留する感光体1上のトナーを除去する。クリーニングブレード8aは、金属、プラスチック、セラミック等からなる支持部材8bに貼着されて支持され、感光体1表面に対し所定の角度で設置される。また、ブレード加圧スプリング8dによって所定の当接圧、食い込み量で感光体1表面に当接する。
また、表面電位検知領域に形成されたトナー像は、転写されずに残り、画像領域内の転写残トナーとともに除去される。
【0081】
保護剤塗布装置3についてより詳細に説明する。
固形保護剤3bは、脂肪酸金属塩(金属石鹸)、フッ素系樹脂等からなるものが使用できるが、特に脂肪酸金属塩が好ましい。脂肪酸金属塩としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の直鎖状炭化水素の脂肪酸金属塩が挙げられ、金属としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム、チタン、鉄などが挙げられる。これらの中で、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄などが好ましく、特に、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、あるいはステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物が感光体の保護効果が高く、好ましい。
【0082】
また保護剤として以下のような構成のものも適している。
疎水性有機化合物(A)、および両親媒性の有機化合物(B)を必須の成分として含んでいるもの。
疎水性有機化合物(A)の例としては、前述のような、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素や芳香族炭化水素に分類される炭化水素類の他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルキルエーテル(PFA)、パーフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂やフッ素系ワックス類、ポリメチルシリコーン、ポリメチルフェニルシリコーン等のシリコーン樹脂やシリコーン系ワックス類等が挙げられるが、これに限るものではない。
【0083】
他方、両親媒性の有機化合物(B)としては、前述のように陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
陰イオン系界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸アルキル塩、長鎖脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン、アンモニウムイオン等が結合した化合物が挙げられる。
【0084】
陽イオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の、疎水性部位の末端に陽イオン(カチオン)を有し、これと、塩素、フッ素、臭素等や、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、水酸イオン等が結合した化合物が挙げられる。
【0085】
両イオン系界面活性剤の例としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体、アルキルアミノ酸等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤の例としては、長鎖アルキルアルコール、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコキシド、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等のアルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物等が挙げられる。また、ラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の長鎖アルキルカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ヘキシトール等の多価アルコールやこれらの部分無水物とのエステル化合物も好ましい形態として挙げられる。
【0086】
エステル化合物のより具体的な例としては、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルチミン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、ジパルチミン酸グリセリル、トリパルチミン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、パルチミン酸ステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、ジアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ステアリン酸ベヘン酸グリセリル、セロチン酸ステアリン酸グリセリル、モノモンタン酸グリセリル、モノメリシン酸グリセリル等のアルキルカルボン酸グリセリルやこの置換物、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン、ジパルチミン酸ソルビタン、トリパルチミン酸ソルビタン、ジミリスチン酸ソルビタン、トリミリスチン酸ソルビタン、パルチミン酸ステアリン酸ソルビタン、モノアラキジン酸ソルビタン、ジアラキジン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン、ステアリン酸ベヘン酸ソルビタン、セロチン酸ステアリン酸ソルビタン、モノモンタン酸ソルビタン、モノメリシン酸ソルビタン等のアルキルカルボン酸ソルビタンやこの置換物等が挙げられるが、これに限るものではない。
また、これらの両親媒性有機化合物は複数種類を併用しても良い。
【0087】
保護剤の保護効果は、基本的には保護剤の供給量に依存し、保護剤の供給量が多いほど、感光体は保護され、摩耗速度は低下する。従って、本発明のように、保護剤の供給量が少ない表面電位検知領域では摩耗速度が比較的速く、保護剤の供給量が多い画像領域内では摩耗速度が比較的遅くなる。
【0088】
本発明の感光体の保護剤を、一定の形状、例えば角柱状や円柱状等のブロックに成型するための方法としては、固体物質の成型方法として公知の方法を、用いることができる。
例としては、溶融成型方法、粉末成型法、熱プレス成型法、冷間等方圧プレス法(CIP)、熱間等方圧プレス法(HIP)などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0089】
溶融成型方法を例に、具体的な保護剤の成型方法を説明する。
予め保護剤の溶融温度以上に加熱した、所定形状の型枠中に、加熱溶融したアルキルカルボン酸グリセリルの所定量を注ぎ込み、必要に応じて融点以上の温度で一定時間維持後、放冷もしくは徐冷により冷却し、成型体を得ることができる。また、成型体の内部歪みを除去するために、冷却の途中で、保護剤成分の相転移温度を下回る温度まで冷却が進んだ後に、再度、相転移温度以上の温度まで緩やかに再加熱しても良い。
室温近傍の温度まで冷却後、成型体を型枠から外し、保護剤の成型体を得る。
また、この後、更に切削加工などにより、保護剤の形状を整えても良い。
【0090】
上述の型枠としては、熱伝導性のよさ、寸法精度の良さから鋼材、ステンレス、アルミニウムなどの金属製型枠が好ましい。また、型枠内壁面には、離型性を良くするために、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの離型剤をコーティングすることが好ましい。
【0091】
上記のような脂肪酸金属塩を直方体状に成型した固形保護剤3bは、図示しない保護剤保持部材に固定されている。固形保護剤3bを収容するケースには、ブラシローラ3a側に付勢する複数の加圧部材3cが、長手方向に並んで設けられている。
【0092】
固形保護剤3bのブラシローラ3aへの加圧力は、複数の加圧部材3cの、加圧力の総圧で200〜1000mNの範囲になるようにする。総圧が200mN未満では、ブラシローラ3aで十分に固形保護剤3bの掻き取りが行われず、感光体1表面への保護剤塗布量が不足する。これにより、クリーニングブレード8aや感光体1表面の摩耗を促進し、転写残トナー等のクリーニング不良が発生しやすくなる。また、総圧が1000mNを超えると、感光体1表面への保護剤塗布量が過多となる。これは、固形保護剤3bの消耗が早まるばかりでなく、感光体1表面が、吸湿性の脂肪酸金属塩等からなる保護剤が過剰に塗布されることで湿度の影響を受けて、静電潜像が流れ、画像ボケを発生するという不具合の要因となる。したがって、固形保護剤3bは、ブラシローラ3aに対し総圧200〜1000mNで加圧されるのが好ましい。
【0093】
ブラシローラはステンレス、鉄などからなる芯金に繊維からなるシートが接着されている。図3の例では、芯金の外径は6mm、ブラシローラの外径としては14mmである。
ブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種ないし2種以上を選択して使用する事ができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルおよびポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などの内、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。
また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して用いても良い。
【0094】
また、ブラシ表面には必要に応じてブラシの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として、被覆層を設けても良い。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定されること無く使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル、ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。
上記保護剤塗布装置、クリーニング装置は、必ず設けなければならないものではない。
【実施例】
【0095】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの例によってその範囲を限定されるものではない。
なお、以下の記載における部は質量部を表す。
感光体の製造方法
<感光体1>
直径40mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下記下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液および保護層塗工液を、順に塗布した後、乾燥し、4.2μmの下引き層、約0.15μmの電荷発生層、21μmの電荷輸送層、約6.1μmの保護層からなる感光体を作製した。保護層の塗工はスプレー法により、それ以外は浸漬塗工法により、行った。
感光体画像領域内対応部と表面電位検知領域対応部とでフィラー含有量が異なるように保護層を形成するには、スプレーガンを二つ使用した。図5に示されるような感光体において、感光体画像領域内対応部には、保護層塗工液1を、スプレーガン1を用いて噴射して塗工し、感光体表面電位検知領域対応部には、保護層塗工液2を、スプレーガン2を用いて噴射して塗工した。感光体画像領域内対応部と表面電位検知領域対応部とで、保護層の厚さは同等となるよう塗工した。
上記のように塗工した乾燥後の感光体1は、表面保護層のフィラー含有率が、画像領域内対応部では約25%、表面電位検知領域対応部では約20%となった。
【0096】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕
Y型オキソチタニルフタロシアニン顔料 2部
ポリビニルブチラール(エスレックBM−S:積水化学製);0.2部
テトラヒドロフラン 50部
【0097】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールA型ポリカーボネート 10部
(帝人:パンライトK1300)
下記構造の低分子電荷輸送物質 10部
【化4】


塩化メチレン 100部
【0098】
〔保護層塗工液1〕
ポリカーボネート 10部
上記構造の低分子電荷輸送物質 7部
アルミナ微粒子(中心粒径0.30μm) 5.8部
分散助剤(ビックケミージャパン製BYK−P104) 0.08部
テトラヒドロフラン 700部
シクロヘキサノン 200部
【0099】
〔保護層塗工液2〕
ポリカーボネート 10部
上記構造の低分子電荷輸送物質 7部
アルミナ微粒子(中心粒径0.30μm) 4.2部
分散助剤(ビックケミージャパン製BYK−P104) 0.08部
テトラヒドロフラン 700部
シクロヘキサノン 200部
【0100】
〔保護層塗工液3〕
ポリカーボネート 10部
上記構造の低分子電荷輸送物質 7部
アルミナ微粒子(中心粒径0.30μm) 7.2部
分散助剤(ビックケミージャパン製BYK−P104) 0.08部
テトラヒドロフラン 700部
シクロヘキサノン 200部
【0101】
<感光体2>
直径40mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、上記下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液および保護層塗工液を、順に塗布した後、乾燥し、4.2μmの下引き層、約0.15μmの電荷発生層、21μmの電荷輸送層、約5.0μmの保護層からなる感光体を作製した。保護層の塗工はスプレー法により、それ以外は浸漬塗工法により、行った。
感光体画像領域内対応部と表面電位検知領域対応部とでフィラー含有量が異なるように保護層を形成するには、スプレーガンを二つ使用した。図5に示されるような感光体において、感光体画像領域内対応部には、保護層塗工液3を、スプレーガン3を用いて噴射して塗工し、感光体表面電位検知領域対応部には、保護層塗工液1を、スプレーガン1を用いて噴射して塗工した。感光体画像領域内対応部と表面電位検知領域対応部とで、保護層の厚さは同等となるよう塗工した。
上記のように塗工した乾燥後の感光体2は、表面保護層のフィラー含有率が、画像領域内対応部では約30%、表面電位検知領域対応部では約25%となった。
【0102】
[実施例1]
タンデム型カラー画像形成装置imagio MP C3500を改造し、全体構成は図1、感光体周りは図3の構成とし、感光体の線速を280mm/sとした。上記のように作成した感光体1は、摩耗程度を検知するための表面電位検知領域を設けるため、従来よりも長くし、320mmとし、そのうち表面電位検知領域の長さを20mmとした。保護剤ブロック3bの幅は5mm、高さは8mm、長さは320mmとした。保護剤ブロックのブラシローラへの加圧力は、複数の加圧部材の、加圧力の総圧で400mNとした。また、帯電は帯電ローラにより感光体に対して−600Vの直流電圧と振幅1.2kVで周波数が2kHzの交流を印加するように改造した。
【0103】
摩耗程度を検知するために、感光体1の表面電位を測定する。摩耗検知のために、感光体1の表面電位検知領域に表面電位検知手段である表面電位センサを設置し、表面電位検知領域の表面電位を測定する。表面電位検知領域でも画像領域内と同様な通常の作像プロセスを施す。ただし、ここでは、転写プロセスは除外し、帯電、露光、現像、クリーニング、保護剤塗布を施した。現像されたトナーは転写されないので、全てをクリーニングで回収した。表面電位センサは露光後に設置し、画像形成100枚ごとに表面電位を測定した。表面電位検知領域では、作像時は100%露光してベタ画像を作像するが、表面電位検知のタイミングに合わせ、露光しない時間を設け、非画像部の表面電位を検知した。表面電位検知のための露光しない時間は、表面電位計の仕様によるが、1秒あれば十分である。
【0104】
感光体1を用いて、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのプロセスカートリッジを4つ作製し、改造したタンデム型画像形成装置に搭載し、画像濃度が7%のテストチャートを、22℃、40%の環境で、連続で画像形成した。表面電位の測定は画像領域外である表面電位検知領域で測定し、表面電位が600Vになった時、この時点から10,000枚後を交換時期と判断して、この信号を適宜の警告手段に送り、プロセスカートリッジの交換時期を警告するために、画像形成装置本体の液晶表示部に交換時期のメッセージを表示するようにした。この時の、4色のうち、ブラックの画像領域外である表面電位知領域の表面電位の測定結果を図7(d)に示す。画像形成当初は約700Vであった表面電位は、画像形成10,000枚時には、680V弱、その後、画像形成を続けるに従い、表面電位は低下し、画像形成約40,000枚時の表面電位は約600Vであった。この時の画像領域内の予測表面電位は約620Vである。その時の画像を評価したところ、紙上画像の非画像部ODが約0.08であり、許容範囲ではあるものの、目視でも地汚れがやや目立つようになっていた。画像形成当初の非画像部ODは約0.05であり、目視では地汚れは気にならなかった。ここでプロセスカートリッジの交換時期を警告するメッセージが表示されたが、確認のためさらに連続画像形成を続けたところ、約48,000枚時、表面電位検知領域の表面電位は約580V、非画像部ODが約0.1であった。この時の画像領域内の表面電位は約600Vであったと考えられる。
【0105】
[実施例2]
実施例1同様の条件において、感光体2を用いて、プロセスカートリッジを4つ作製し、改造したタンデム型画像形成装置に搭載し、画像濃度が7%のテストチャートを、22℃、40%の環境で、連続で画像形成した。表面電位の測定は画像領域外である表面電位検知領域で測定し、表面電位が500Vになった時、この時点から10,000枚後を交換時期と判断して、この信号を適宜の警告手段に送り、プロセスカートリッジの交換時期を警告するために、画像形成装置本体の液晶表示部に交換時期のメッセージを表示するようにした。この時の、4色のうち、ブラックの画像領域外である表面電位検知領域の表面電位の測定結果を図7(e)に示す。画像形成当初は約600Vであった表面電位は、画像形成10,000枚時には、約580V、その後、画像形成を続けるに従い、表面電位は低下し、画像形成約50,000枚時の表面電位は約500Vであった。この時の画像領域内の予測表面電位は約520Vである。その時の画像を評価したところ、紙上画像の非画像部ODが約0.09であり、許容範囲ではあるものの、目視でも地汚れがやや目立つようになっていた。画像形成当初の非画像部ODは約0.05であり、目視では地汚れは気にならなかった。ここでプロセスカートリッジの交換時期を警告するメッセージが表示されたが、確認のためさらに連続画像形成を続けたところ、約60,000枚時、表面電位検知領域の表面電位は約460V、非画像部ODが約0.12であった。この時の画像領域内の表面電位は約500Vであったと考えられる。
感光体2を用いた場合、約50,000枚を画像形成した頃に、表面電位検知領域の感光体保護層は摩耗してほとんどなくなったと考えられる。その後、表面電位の変化がより大きくなり、感光体交換時期の判断が、よりしやすくなった。
【符号の説明】
【0106】
1 感光体
2 帯電装置
3 保護剤塗布装置
4 現像装置
8 クリーニング装置
9 露光装置
51 一次転写ローラ
52、53、54 ローラ
56 中間転写ベルト
57 中間転写ベルトクリーニング装置
61 二次転写ローラ
70 定着装置
71 定着ベルト
72 加熱ローラ
73 定着ローラ
74 加圧ローラ
101 導電性支持体
102 感光層
103 電荷発生層
104 電荷輸送層
105 保護層
106 下引き層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2004−341480号公報
【特許文献2】特許第3734735号公報
【特許文献3】特開平04−57068号公報
【特許文献4】特開平08−044245号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーを含有する保護層が表面に形成された潜像担持体と、
該潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、
画像データに基づいて、該帯電手段により帯電された該潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
形成された静電潜像をトナーにより可視像化する現像手段と、
可視像化されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置において、
該潜像担持体の画像領域外に、潜像担持体交換時期を決定するための表面電位検知領域を有し、該表面電位検知領域において、
該潜像担持体の表面電位検知領域の保護層中のフィラーの含有割合が画像領域内の保護層中のフィラーの含有割合よりも少なく、潜像担持体の表面電位検知領域に表面電位検知手段を有し、潜像担持体の交換時期表示手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
潜像担持体の表面電位検知領域の表面電位検知手段は、非画像部(地肌部)の表面電位を検知することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
それぞれフィラー量が異なる塗工液を噴出するスプレーガンを複数使用して潜像担持体の保護層を形成したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられる、少なくとも潜像担持体と、帯電手段とを備えた、プロセスカートリッジであって、該潜像担持体はフィラーを含有する保護層を表面に有し、潜像担持体の画像領域外に、潜像担持体交換時期を決定するための表面電位検知領域を有しており、該表面電位検知領域の保護層中のフィラーの含有割合が、画像領域内の保護層中のフィラーの含有割合よりも少ないことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
フィラーを含有する保護層を表面に形成した潜像担持体の表面を、帯電した後に、
該潜像担持体の表面に静電潜像を形成し、
潜像担持体表面の潜像にトナーを供給してトナー像化し、
潜像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する画像形成方法において、
該潜像担持体は潜像担持体の画像領域外に、潜像担持体交換時期を決定するための表面電位検知領域を有しており、該表面電位検知領域の保護層中のフィラーの含有割合が、画像領域内の保護層中のフィラーの含有割合よりも少ないものであり、
該表面電位検知領域において、前記画像領域内と同様に、少なくとも帯電し静電潜像を形成し現像する工程を行うと共に、表面電位検知領域の表面電位を検知し、該表面電位の値に基づいて潜像担持体の交換時期を決定することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−175939(P2010−175939A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19716(P2009−19716)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】