説明

画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体

【課題】本発明は、1ページ内の制御目標定着温度を画像情報に応じて制御する。
【解決手段】デジタル複合装置1は、コントローラ2が、印刷対象の画像データからページ毎に文字、写真等を描画した描画データに基づいて感光体上に静電潜像を形成して該静電潜像をトナーで現像したトナー画像が転写された用紙を、定着部30において、ヒータランプによって外周面が複数の加熱領域に分割されて該加熱領域毎に独立して制御目標定着温度に加熱される加熱ローラによって加熱して該トナー画像を用紙Pに定着させるに際して、描画データの文字、写真等の画像情報と加熱ローラの各加熱領域を対応させて、該各加熱領域における制御目標定着温度をそれぞれ設定し、設定した該加熱領域毎の該制御目標定着温度に基づいてヒータランプへの通電を制御して該各加熱領域を該制御目標定着温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体に関し、詳細には、1ページ内の制御目標定着温度を画像情報に応じて制御する画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いたプリンタ装置、複合装置等の画像形成装置においては、トナー(現像材)の転写された用紙を、定着部の加熱ヒータによって所定の定着温度に加熱されている加熱ローラと加圧ローラの間に送り込んで、回転駆動される加熱ローラと加圧ローラによって、加熱しつつ加圧して、用紙上の未定着トナーを用紙に定着させている。
【0003】
そして、従来から、定着部の定着温度を、画像データの画像情報(トナー濃度等)に基づいて制御することで、定着性の向上と消費電力の削減が図られている。
【0004】
また、従来、加熱ローラの軸心の中央部と両端部とにそれぞれ個別のヒータランプを配置して、中央部のヒータランプよりも小さい通紙範囲の小サイズの用紙が通紙されると、通紙後に、両端部のヒータランプの制御を変更する定着装置が提案されている(特許文献1参照)。すなわち、この従来技術は、小サイズの用紙が通紙した後の加熱ローラの局部的な温度上昇による高温オフセットや用紙のカールを防止しつつ、電力の節減を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術にあっては、加熱ローラの中心軸状に、中央と両端部にヒータを配設して、通紙サイズに応じてヒータの加熱を制御しているのみであるため、画像データに応じたヒータの加熱制御を行うことができない。また、従来の画像情報に基づいた制御は、加熱ローラ全体の定着温度の制御であり、定着品質を向上させつつ、省電力を向上させる上で、改良の必要があった。
【0006】
すなわち、適切な定着温度は、画像濃度等の画像条件によって変化するため、1ページの画像内における画像分布を考慮した温度制御が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、定着部材の表面温度分布をページ内の画像情報に応じて制御して、定着性能を向上させつつ、省電力効果を向上させる画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、印刷対象の画像データからページ毎に文字、写真等を描画した描画データに基づいて感光体上に静電潜像を形成して該静電潜像を現像剤で現像した現像剤像が転写された被記録媒体を、加熱手段によって外周面が複数の加熱領域に分割されて該加熱領域毎に独立して制御目標定着温度に加熱される定着部材によって、加熱して該現像剤像を該被記録媒体に定着させるに際して、前記描画データの前記文字、写真等の画像情報と前記各加熱領域を対応させて、該各加熱領域における前記制御目標定着温度をそれぞれ設定し、設定した該加熱領域毎の該制御目標定着温度に基づいて前記加熱手段への通電を制御して該各加熱領域を該制御目標定着温度に加熱させることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、前記定着部材が、前記加熱手段によって軸方向と軸方向に直交する方向のうち少なくともいずれかの方向において複数の加熱領域に分割されて該加熱領域毎に独立して前記制御目標定着温度に加熱されることを特徴としてもよい。
【0010】
さらに、本発明は、前記加熱領域に対応する前記描画データの画像領域を、該加熱領域に対応する該画像領域上の座標によって設定することを特徴としてもよい。
【0011】
また、本発明は、文字、写真等の画像情報毎に予め設定されている制御目標定着温度テーブルを備え、前記描画データの該文字、写真等の画像情報に基づいて該制御目標温度テーブルを参照して、前記制御目標定着温度を設定することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、定着部材の表面温度分布をページ内の画像情報に応じて制御して、定着性能を向上させつつ、省電力効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例を適用した画像形成装置のブロック構成図。
【図2】加熱ローラの正面断面図。
【図3】コントローラの機能ブロック構成図。
【図4】PDL機能部の機能ブロック構成図。
【図5】分割領域毎の定着温度制御処理を示すフローチャート。
【図6】文字領域用温度データベースの一例を示す図。
【図7】写真領域用温度データベースの一例を示す図。
【図8】描画オブジェクトと加熱領域の具体例を示す図。
【図9】加熱ローラの加熱領域と用紙の画像領域の対応関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な実施例であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではなく、また、本実施の形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。
【実施例1】
【0015】
図1〜図9は、本発明の画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体の一実施例を示す図であり、図1は、本発明の画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体の一実施例を適用した画像形成装置1のブロック構成図である。
【0016】
図1において、画像形成装置1は、コントローラ2、プリンタエンジン3、操作パネル4及び外部記憶部5等を備えており、コントローラ2は、CPU(Central Processing Unit )11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、NVRAM(Nonvolatile Random Access Memory)14、ネットワークI/F(インターフェイス)15、エンジンI/F16、パネルI/F17及び外部記憶I/F18等を備えていて、上記各部は、バス19により接続されている。
【0017】
エンジンI/F16には、プリンタエンジン3が接続されており、コントローラ2からプリンタエンジン3への制御信号や描画データ及びプリンタエンジン3からコントローラ2へのステータス信号の授受を行う。特に、エンジンI/F16は、CPU11から渡される印刷ジョブの総印刷ページ数をプリンタエンジン3に通知する。
【0018】
プリンタエンジン(画像形成手段)3は、例えば、電子写真式記録装置のプリンタエンジンが使用されており、定着部30を備えている。プリンタエンジン3は、ホストコンピュータPcから送られてきてネットワークI/Fが受信した印刷データから変換されてエンジンI/F16から渡される描画データに基づいて、給紙部から送られてくる用紙に画像を印刷出力(画像形成出力)して、印刷済みの用紙を、定着部30で定着させた後に、用紙排出口から排紙トレイ上に排出する。すなわち、プリンタエンジン3は、図示しないが、電子写真方式で用紙に描画データに基づいて印刷処理を行うのに必要な部品、例えば、感光体、光書込部、現像部、帯電部、クリーニング部及び定着部30等を備えており、描画データおよび制御信号により光書込部を動作させて感光体上に静電潜像を形成し、現像部によりトナーを感光体上に供給して現像してトナー画像を形成する。プリンタエンジン3は、給紙部から用紙を感光体と転写部との間に給紙して、感光体上のトナー画像を用紙に転写させ、トナー画像の転写された用紙を定着部30に搬送して、定着部30で加熱・加圧して用紙上のトナー画像を定着させることで、印刷処理を行う。
【0019】
定着部30は、図2に示すように、加熱ローラ(定着部材)31の内部に、軸方向全域に延在する複数本(図2では、3本)のヒータランプ(加熱手段)32a、32b、32cが収納されており、ヒータランプ32a、32b、32cは、軸方向においてその加熱領域Ta、Tb、Tcが異なっていて、全てのヒータランプ32a、32b、32cの加熱領域Ta、Tb、Tcで発熱することで、加熱ローラ31の軸方向全域で発熱して加熱したり、一部のヒータランプ32a、32b、32cのみを発熱させることで、加熱ローラ31を部分的に加熱する部分加熱が可能となっている。すなわち、ヒータランプ32aは、加熱ローラ31の軸方向中央部所定領域を加熱領域Ta、ヒータランプ32bは、加熱領域Taに隣接する軸方向両側所定領域を加熱領域Tb、また、ヒータランプ32cは、加熱領域Tbに隣接する軸方向両側外側の端部までを加熱領域Tcとし、それぞれ加熱する。また、定着部30は、各加熱領域Ta、加熱領域Tb、加熱領域Tcの温度を検出する温度センサ23a、23b、23cが設けられており、温度センサ23a、23b、23cは、検出信号を、コントローラ2のエンジンI/F16を介してCPU11に出力する。CPU11は、後述するように、温度センサ23a、23b、23cの検出信号に基づいて、ヒータランプ32a、32b、32cへの通電を制御して、加熱領域Ta、Tb、Tcの温度を制御目標定着温度に制御する。
【0020】
再び、図1において、ROM12は、コントローラ2内でのデータの処理や管理及び周辺モジュールを制御するためのプログラム、具体的には、画像形成装置1としての基本処理プログラム及び後述するプリンタエンジン3の定着部10のヒータランプ32a、32b、32cの通電を画像データに基づいて制御して定着性能と省電力を向上させる画像形成制御方法を実行する画像形成制御プログラム等の各種プログラムを格納しているとともに、これらの各プログラムを実行するのに必要な各種データを格納している。
【0021】
CPU11は、ROM12に格納されているプログラムに基づいて、RAM13をワークメモリとして利用しつつ、画像形成装置1の各部を制御して、印刷処理を行うとともに、後述する画像形成制御処理を実行する。
【0022】
RAM13は、CPU11のワークメモリとして利用されるとともに、ホストコンピュータPcからの印刷データをページ単位に管理して一時記憶するバッファ及びバッファに記憶されたデータを実際の印刷パターンに変換した描画データが展開されるビットマップメモリ等として利用される。RAM13は、この印刷データまたは印刷データから変換された描画データ、あるいは、中間データを、複数ページ分蓄積する容量を有している。
【0023】
NVRAM14は、画像形成装置1の電源が切られているときにも記憶内容を保持するメモリであり、画像形成装置1の電源がオフの際にも保持する必要のあるデータ、特に、システム設定値、印刷枚数カウント値、印刷設定等の各種設定情報及び、特に、後述する画像データに基づくヒータランプ32a、32b、32cの通電制御を行う画像形成制御処理で使用する各種データや設定情報等がCPU11の制御下で格納される。
【0024】
パネルI/F18には、操作パネル4が接続されており、パネルI/F18は、コントローラ2と操作パネル4との間の信号の授受を行う。
【0025】
操作パネル4は、テンキー、スタートキー、モードを選択するモード選択キー等の各種操作キーを備えるとともに、タッチパネル付き液晶ディスプレイ等の表示部を備えており、操作キーのキー操作や表示部のタッチ操作によって、プリント操作等の各種命令が入力され、表示部には、操作キーから入力された命令内容や画像形成装置1からユーザに通知する各種情報が表示される。
【0026】
外部記憶I/F18には、外部記憶部5が接続され、外部記憶部5は、例えば、ハードディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等である。外部記憶部5は、展開された印刷データやホストコンピュータPcから送られてきたデータ(印刷データ等)をCPU11の制御下で蓄積し、また、読み出される。
【0027】
ネットワークI/F15には、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介してホストコンピュータPcが接続されており、ネットワークI/F15は、ホストコンピュータPcから送信されてくる制御信号及びデータ(印刷データ等)を受け取るとともに、画像形成装置1からホストコンピュータPcに送信するステータス信号等の送り出しを行うインターフェイスである。
【0028】
ホストコンピュータPcは、通常のハードウェア構成及びソフトウェア構成のパーソナルコンピュータ等であり、画像形成装置1に、任意のPDL(Page Description Language:ページ記述言語)で生成された印刷データ及びPJL(Printer Job Language)による制御コマンド(印刷制御データ)等を送信する。
【0029】
すなわち、ホストコンピュータPcは、プリンタドライバによって、PJLデータとPDLデータからなる印刷データを生成して、ネットワークを介して画像形成装置1に送信する。
【0030】
そして、画像形成装置1は、ROM、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )、EPROM、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory )、CD−RW(Compact Disc Rewritable )、DVD(Digital Video Disk)、SD(Secure Digital)カード、MO(Magneto-Optical Disc)等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されている本発明の画像形成制御方法を実行する画像形成制御プログラムを読み込んでROM12等に導入することで、後述する印刷データに基づいて1ページ内の複数領域の定着温度制御を行う画像形成制御方法を実行する画像形成装置1として構築されている。この画像形成制御プログラムは、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)等のレガシープログラミング言語やオブジェクト指向ブログラミング言語等で記述されたコンピュータ実行可能なプログラムであり、上記記録媒体に格納して頒布することができる。
【0031】
画像形成装置1は、上記画像形成制御プログラムが導入されて実行されることで、特に、コントローラ2に、図3に示すように、機能部を構築する。すなわち、コントローラ2には、プリンタコントロールシステム機能部21、ネットワークI/F機能部22、PDL機能部23、パネルI/F機能部24、エンジンI/F機能部25等が構築される。
【0032】
ネットワークI/F機能部22は、ホストコンピュータPcから送信されてくる制御信号及びデータ(印刷データ等)を受け取ってプリンタコントロールシステム機能部21に渡すとともに、画像形成装置1からホストコンピュータPcに送信するステータス信号等をプリンタコントロールシステム機能部21から受け取ってホストコンピュータPcに送り出す。
【0033】
PDL機能部23は、印刷データを受け取って、描画データを生成して、RAM13に展開する。具体的には、PDL機能部23は、ホストコンピュータPcから送られてきた印刷データのPJLコマンド及びPDLコマンドの解釈を行って、描画データを生成して、RAM13に展開して、プリンタコントロールシステム機能部21に渡す。
【0034】
パネルI/F機能部24は、プリンタコントロールシステム機能部21の制御下で、操作パネル4の制御を行う。
【0035】
エンジンI/F機能部25は、プリンタコントロールシステム機能部21の制御下で、プリンタエンジン3への印刷指示、特に、定着部30のヒータランプ32a、32b、32cの通電制御等を行う。
【0036】
プリンタコントロールシステム機能部21は、画像形成装置1の各部を制御するとともに、プリンタエンジン3の動作を制御する。特に、プリンタエンジン3の定着部30の定着温度制御を行う。
【0037】
そして、PDL機能部23は、図4に示すように機能ブロック構成されている。PDL機能部23は、図4に示すように、PDLパーサ機能部41、ディザ情報機能部42及び描画コアモジュール機能部43が構築され、描画コアモジュール機能部43には、描画モジュールI/F機能部51、使用ディザ種判定機能部52、使用ディザ位置判定機能部53、中間データ保存機能部54、中間データメモリ機能部55及び描画処理機能部56が構築されている。
【0038】
PDLパーサ機能部41は、PCL(printer control language)、PS(PostScript)、RPCS等のPDLの種類毎に、ディザ情報機能部42のディザ情報を参照して、印刷データの構文解析を行い、解析結果を描画コアモジュール機能部43に出力する。
【0039】
描画コアモジュール機能部43は、テキスト、イメージ、ベクターグラフィックス、描画設定情報を受け取るためのI/Fである描画モジュールI/F機能部41を介して、PDLパーサ機能部41から送られてくる解析結果を受け取って、使用ディザ種判定機能部52及び使用ディザ位置判定機能部53に渡すとともに、テキスト、イメージ、ベクターグラフィックスなどの描画データと色や透過設定等をもつ描画設定情報を中間データ保存機能部54に渡して、中間データメモリ機能部44が中間データメモリ機能部55に保存する。描画コアモジュール機能部43が使用するディザ情報は、起動時に、PDLパーサ機能部41がROM12等から取得して、描画コアモジュール機能部43に提供する。
【0040】
描画処理機能部56は、複数構築されていて、描画データに基づいて出力イメージデータをレンダリングする。
【0041】
使用ディザ種判定機能部52は、描画モジュールI/F41を介してPDLパーサ機能部41から受け取った解析結果と印刷データのページの解像度や深さ、その他設定をもとに、先にPDLパーサ機能部41から渡されていたディザ情報のなかから、該ページで使用するディザIDを選択する。
【0042】
使用ディザ位置判定機能部53は、使用するディザの位置情報から、どの描画領域でどのディザが使用されているかを判定する。
【0043】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例のデジタル複写装置1は、定着部30の加熱ローラ31を複数の加熱領域に分割して、各加熱領域の制御目標定着温度を、印刷データの画像情報、特に、ディザ分布に応じて設定して制御する。
【0044】
すなわち、デジタル複写装置1は、ホストコンピュータPcからネットワークI/F15を介して印刷データを受信すると、CPU11が、ROM12内のプログラムに基づいて、RAM13をワークメモリとして利用して、印刷データを1ページ毎の描画データに展開し、展開した描画データをエンジンI/F16を介してプリンタエンジン3に転送して、プリンタエンジン3で用紙に画像を印刷出力する。
【0045】
このとき、CPU11は、定着部30の部分加熱可能な加熱ローラ31の加熱制御を、1ページ毎に該ページの描画データの画像情報に基づいて実行する。
【0046】
そして、コントローラ2は、本発明の画像形成制御プログラムが導入されることで構築されるプリンタコントロールシステム機能部21がホストコンピュータPcからネットワークI/F機能部22を介して印刷データを受信すると、PDL機能部23で、ページ内の加熱ローラ31の加熱領域Ta〜Tc毎の画像情報、特に、ディザ情報を解析して、この画像情報に基づいて、加熱領域Ta、Tb、Tc毎の制御目標定着温度を設定して、ヒータランプ32a、32b、32cへの通電を制御して、定着制御する。
【0047】
すなわち、PDL機能部23は、図5に示すように、ページ毎の描画データの解析を開始すると(ステップS101)、該ページの描画データのディザ種の判定を、図2に示した加熱領域Ta、Tb、Tc毎に、該加熱領域Ta、Tb、Tcに対応するページの描画データのディザ種別(文字、グラフィック、イメージ)を判定することで、制御目標定着温度のレベルを決定する(ステップS102)。
【0048】
すなわち、ROM12またはNVRAM14には、例えば、図6及び図7に示すように、画像情報に対して、制御目標定着温度として、通常定着温度(Normal)、通常定着温度よりも所定温度(例えば、3度低い第1低定着温度(Level1)、第1低定着温度よりもさらに所定温度(例えば、5度低い第2低定着温度(Level2、通常定着温度よりも8度低い温度)を、文字領域(図6)と写真領域(図7)に対して設定する場合が温度データベース(制御目標定着温度テーブル)として格納されている。すなわち、イメージが描画される写真領域(写真ディザを使用)と、文字が描画される文字領域(文字ディザを使用)でディザ形状が異なるため、それぞれ必要な定着温度が異なる。すなわち、定着温度は、画像の解像度、ビット深さ、CMYK値(いわゆる濃度(0%〜100%))にも影響されるため、図6及び図7に示したように、文字領域と写真領域に分けるとともに、それぞれの領域での文字の領域割合や写真の領域割合、及び、CMYK値によって、制御目標定着温度を設定している。
【0049】
次に、PDL機能部23は、加熱領域Ta、Tb、Tc毎に、制御目標定着温度が通常定着温度(ノーマル)であるかチェックし(ステップS103)、通常定着温度のときには、変更の必要がないと判断して、通常定着温度をプリンタエンジン3の定着部30に通知する(ステップS104)。ステップS103で、通常定着温度ではなく、第1低定着温度または第2低定着温度であると、使用ディザ位置である加熱領域Ta、Tb、Tcを判定して(ステップS105)、加熱領域Ta、Tb、Tcとともに、制御目標定着温度、すなわち、第1低定着温度または第2低定着温度をプリンタエンジン3の定着部30に通知する(ステップS104)。
【0050】
PDL機能部23は、全ての加熱領域Ta、Tb、Tcについて制御目標定着温度の判定と設定を行うと、ジョブが終了したか、すなわち、印刷ページのすべてのページの印刷を終了したかチェックし(ステップS106)、ジョブが終了していないときには、ステップS101に戻って、上記同様に処理する(ステップS101〜S106)。PDL機能部23は、ステップS106で、ジョブが終了すると、定着温度制御処理を終了する。
【0051】
具体的には、図8に示すように、1ページの描画データを、プリンタエンジン3で印刷して、定着部30でトナー画像の転写された用紙を定着する場合、描画データのうち、加熱領域Ta、Tb、Tcに対応して、画像領域Ga、Gb、Gcに分けられるものとすると、画像領域Gaは、本文を構成する「文字」のみが配置、画像領域Gbは、本文を構成する「文字」と写真を構成する「イメージ」が配置、画像領域Gcは、タイトルを構成する「文字」のみが配置される。
【0052】
そして、「文字」は、定着性が高く低温度で定着可能であり、「イメージ」は定着性が低く高温度で定着可能である。したがって、PDL機能部23は、「文字」のみである画像領域Gaと画像領域Gcに対応する加熱領域Ta、Tc対しては、制御目標定着温度として、第1低定着温度または第2低定着温度を設定し、「イメージ」がある画像領域Gbに対応する加熱領域Tbに対しては、高温度での定着が必要であるため、通常定着温度を設定する。
【0053】
定着部30は、上述のようにして設定された制御目標定着温度に基づいて、図9に示すように、トナー画像の定着された用紙Pを定着部30で定着する際に、用紙Pの画像領域Ga及び画像領域Gcに対しては、ヒータランプ32a及びヒータランプ32cで制御目標定着温度として第1低定着温度または第2低定着温度に加熱された加熱ローラ31の加熱領域Ta、Tcで加熱されて定着され、用紙Pの画像領域Gbに対しては、ヒータランプ32bで制御目標定着温度として通常定着温度に加熱された加熱ローラ31の加熱領域Tbで加熱されて定着される。
【0054】
このように、本実施例のデジタル複合装置1は、コントローラ2のPDL機能部23が、印刷対象の画像データからページ毎に文字、写真等を描画した描画データに基づいて感光体上に静電潜像を形成して該静電潜像をトナー(現像剤)で現像したトナー画像(現像剤像)が転写された用紙(被記録媒体)Pを、ヒータランプ(加熱手段)32a、32b、32cによって外周面が複数の加熱領域Ta、Tb、Tcに分割されて該加熱領域Ta、Tb、Tc毎に独立して制御目標定着温度に加熱される加熱ローラ(定着部材)31によって加熱して該トナー画像を用紙Pに定着させるに際して、描画データの文字、写真等の画像情報と各加熱領域Ta、Tb、Tcを対応させて、該各加熱領域Ta、Tb、Tcにおける制御目標定着温度をそれぞれ設定し、設定した該加熱領域Ta、Tb、Tc毎の該制御目標定着温度に基づいてヒータランプ32a、32b、32cへの通電を制御して該各加熱領域Ta、Tb、Tcを該制御目標定着温度に加熱している。
【0055】
したがって、トナー画像の転写された用紙Pを加熱する加熱ローラ31を、加熱領域Ta、Tb、Tcに分割して、各加熱領域Ta、Tb、Tcの制御目標定着温度を、該トナー画像のもとの描画データに基づいて設定して独立して加熱することができ、定着性能を向上させつつ、省電力効果を向上させることができる。
【0056】
また、本実施例のデジタル複合装置1は、加熱ローラ(定着部材)31が、ヒータランプ32a、32b、32cによって軸方向において複数の加熱領域Ta、Tb、Tcに分割されて該加熱領域Ta、Tb、Tc毎に独立して制御目標定着温度に加熱されている。
【0057】
したがって、加熱ローラ(定着部材)31を、主走査方向である軸方向において、複数の領域に分けて加熱して、用紙Pの画像領域を加熱することができ、描画データの文字、写真等に応じて適切な制御目標定着温度を設定して定着させて、定着性能を向上させつつ、省電力効果を向上させることができる。
【0058】
なお、この場合、加熱ローラ31が副走査方向である軸方向に直交する方向において、または、軸方向と該軸方向に直交する方向において、ヒータランプ等の加熱手段によって複数の加熱領域に分割されて、該加熱領域毎に独立して制御目標定着温度に加熱されてもよい。
【0059】
このようにすると、用紙Pの各画像領域における描画データの文字、写真等の画像情報に対してより一層適切な制御目標定着温度を、対応する加熱ローラ31の加熱領域に対して設定して加熱することができて、定着性能をより一層向上させつつ、省電力効果をより一層向上させることができる。
【0060】
さらに、本実施例のデジタル複合装置1は、PDL機能部23が、加熱領域Ta、Tb、Tcに対応する描画データの画像領域Ga、Gb、Gcを、該加熱領域Ta、Tb、Tcに対応する該画像領域Ga、Gb、Gc上の座標によって設定している。
【0061】
したがって、加熱領域Ta、Tb、Tcに対応する該画像領域Ga、Gb、Gcを簡単かつ適切に設定することができる。
【0062】
また、本実施例のデジタル複合装置1は、PDL機能部23が、文字、写真等の画像情報毎に予め制御目標定着温度が設定されている温度データベース(制御目標定着温度テーブル)を備え、描画データの該文字、写真等の画像情報に基づいて該温度データベースを参照して、制御目標定着温度を設定している。
【0063】
したがって、描画データの文字、写真等の画像情報に適した制御目標温度を、速やかにかつ適切に設定することができ、処理能力を向上させつつ、定着性能及び省電力効果を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、電子写真方式で画像形成して定着部で定着するプリンタ装置、複写装置、複合装置等の画像形成装置、画像形成制御方法、画像形成制御プログラム及び記録媒体に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
2 コントローラ
3 プリンタエンジン
4 操作パネル
5 外部記憶部
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 NVRAM
15 ネットワークI/F
16 エンジンI/F
17 パネルI/F
18 外部記憶I/F
19 バス
21 プリンタコントロールシステム機能部
22 ネットワークI/F機能部
23 PDL部
24 パネルI/F機能部
25 エンジンI/F機能部
30 定着部
31 加熱ローラ
32a、32b、32c ヒータランプ
41 PDLパーサ機能部
42 ディザ情報機能部
43 描画コアモジュール機能部
51 描画モジュールI/F機能部
52 使用ディザ種判定機能部
53 使用ディザ位置判定機能部
54 中間データ保存機能部
55 中間データメモリ機能部
56 描画処理機能部
Pc ホストコンピュータ
Ta、Tb、Tc 加熱領域
Ga、Gb、Gc 画像領域
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2005−156977号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の画像データからページ毎に文字、写真等を描画した描画データを生成する描画データ生成手段と、
前記描画データに基づいて感光体上に静電潜像を形成して、該静電潜像を現像剤で現像した現像剤像を被記録媒体上に転写する画像形成手段と、
加熱手段によって外周面が複数の加熱領域に分割されて該加熱領域毎に独立して制御目標定着温度に加熱される定着部材によって前記被記録媒体を加熱して前記現像剤像を該被記録媒体に定着させる定着手段と、
前記描画データ生成手段の生成した前記描画データの前記文字、写真等の画像情報と前記各加熱領域を対応させて、該各加熱領域における前記制御目標定着温度をそれぞれ設定する定着温度設定手段と、
前記定着温度設定手段の設定した前記加熱領域毎の前記制御目標定着温度に基づいて前記加熱手段への通電を制御して該各加熱領域を該制御目標定着温度に加熱させる加熱制御手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着部材は、
前記加熱手段によって軸方向と軸方向に直交する方向のうち少なくともいずれかの方向において複数の加熱領域に分割されて該加熱領域毎に独立して前記制御目標定着温度に加熱されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着温度設定手段は、
前記加熱領域に対応する前記描画データの画像領域を、該加熱領域に対応する該画像領域上の座標によって設定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着温度設定手段は、
文字、写真等の画像情報毎に予め制御目標定着温度が設定されている制御目標定着温度テーブルを備え、前記描画データの該文字、写真等の画像情報に基づいて該制御目標温度テーブルを参照して、前記制御目標定着温度を設定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
印刷対象の画像データからページ毎に文字、写真等を描画した描画データを生成する描画データ生成処理ステップと、
前記描画データに基づいて感光体上に静電潜像を形成して、該静電潜像を現像剤で現像した現像剤像を被記録媒体上に転写する画像形成処理ステップと、
加熱手段によって外周面が複数の加熱領域に分割されて該加熱領域毎に独立して制御目標定着温度に加熱される定着部材によって前記被記録媒体を加熱して前記現像剤像を該被記録媒体に定着させる定着処理ステップと、
前記描画データ生成処理ステップで生成された前記描画データの前記文字、写真等の画像情報と前記各加熱領域を対応させて、該各加熱領域における前記制御目標定着温度をそれぞれ設定する定着温度設定処理ステップと、
前記定着温度設定処理ステップで設定された前記加熱領域毎の前記制御目標定着温度に基づいて前記加熱手段への通電を制御して該各加熱領域を該制御目標定着温度に加熱させる加熱制御処理ステップと、
を有していることを特徴とする画像形成制御方法。
【請求項6】
コンピュータに、
印刷対象の画像データからページ毎に文字、写真等を描画した描画データを生成する描画データ生成処理と、
前記描画データに基づいて感光体上に静電潜像を形成して、該静電潜像を現像剤で現像した現像剤像を被記録媒体上に転写する画像形成処理と、
加熱手段によって外周面が複数の加熱領域に分割されて該加熱領域毎に独立して制御目標定着温度に加熱される定着部材によって前記被記録媒体を加熱して前記現像剤像を該被記録媒体に定着させる定着処理と、
前記描画データ生成処理で生成された前記描画データの前記文字、写真等の画像情報と前記各加熱領域を対応させて、該各加熱領域における前記制御目標定着温度をそれぞれ設定する定着温度設定処理と、
前記定着温度設定処理で設定された前記加熱領域毎の前記制御目標定着温度に基づいて前記加熱手段への通電を制御して該各加熱領域を該制御目標定着温度に加熱させる加熱制御処理と、
を実行させることを特徴とする画像形成制御プログラム。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成制御プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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