説明

画像形成装置、画像形成方法およびコンピュータープログラム

【課題】転写順位が上位のトナー像の逆転写に因る画像再現性の低下を低減する。
【解決手段】カラー画像を形成する電子写真式の画像形成装置は、露光の要否を画素ごとに示すラスター画像を補正する。画像形成装置が有するラスター画像補正部は、色別の複数のラスター画像のうち、最後に転写されるトナー像の色を除いた色のラスター画像を補正対象とし、当該補正対象における潜像の現像に際してトナーが付着すべきドットに該当する画素である有色画素の割合が閾値以下である低濃度領域内に在る有色画素に注目し、当該補正対象に対応するトナー像の次に転写されるトナー像に対応するラスター画像における画素配列位置が当該補正対象内の注目画素の画素配列位置と同一である画素が有色画素でない場合に、当該注目画素に該当するドットのトナー付着量が増大するように、低濃度領域内の少なくとも一つの画素の画素値を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法によって用紙上に画像を形成する電子写真式の画像形成装置、画像形成方法および画像形成装置のためのコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置は、電源投入時や積算画像形成数が設定値に達した時点などに電子写真プロセスを自動調整する画像安定化機能を有している。中間調を含む画像の形成において滑らかな階調再現性を得る上で、孤立する微小なドットが正しく形成されることは重要である。また、画像の中に複写の禁止(偽造防止)や印刷履歴の追跡などのために複数のドットの位置関係によって情報を表すパターンを埋め込む場合には、微小なドットが正しく形成されることが必要である。このため自動調整では、微小なドットが他のドットから離れて孤立するようなテストパターンのトナー像が形成され、トナー像の濃度測定結果に基づいて必要に応じて画像形成動作の設定が変更される。
【0003】
自動調整に関して、特許文献1には、フルドットの濃度パッチの検出濃度に基づいて現像バイアス値を変更した後、複数の孤立ドットからなる濃度パッチを像担持体上に形成し、濃度パッチの濃度検出結果に基づいて像担持体に対する露光条件を変更する画像形成装置が開示されている。特許文献2には、パルス幅変調された光信号によって感光体を露光する画像形成装置において、感光体に形成される微小点を含む画像パッチの現像画像または被転写体に形成される上記画像パッチの転写画像の濃度情報が基準濃度の範囲内となるように、光信号のパワーやパルス幅といった露光パラメータを変更することが記載されている。
【0004】
情報の埋め込みに関して、特許文献3には、形成しようとする画像に追跡情報を追加する場合に、印刷後に追跡情報を確実に解析することができかつ目視では追跡情報が目立たないようにするため、画像データの値に基づいて追跡情報のデータのレベルを設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−331658号公報
【特許文献2】特開2008−33268号公報
【特許文献3】特開平8−88757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
色の異なる複数のトナー像を被転写体上で順に重ねるカラー画像の形成において、色の異なる複数の微小なドットが適正に形成されるように各色のトナー像形成や転写の動作設定を自動調整するのは難しい。それは、転写順位が上位である色のトナー像Aに重ねて下位の色のトナー像Bを転写するときに、トナー像A中の微小なドットの上にトナー像Bのドットが重なるかどうかによって、“逆転写”の発生の度合いが異なるからである。ここでいう逆転写とは、被転写体上のトナー像Aを構成するトナーの一部が、トナー像Bの形成に用いられた潜像担持体に付着してトナー像Aのトナー量が減少する現象である。トナー像Aにおけるトナー像Bのドットが重なるドットではトナー像Aとの潜像担持体との間にトナー像Bが介在するので、逆転写が起こり難い。これに対して、トナー像Aにおけるトナー像Bのドットが重ならないドットではトナー像Aが潜像担持体と接触するので、逆転写が起こり易い。逆転写に因るトナー量の減少の度合いがドット間で異なることは、微小なドットの分散配置によって中間調が再現される低濃度領域における濃度むらや色むらを生じさせる。また、トナー量の減少によりドットが消失すると、情報を埋め込む場合に情報を読み取ることができなくなってしまう。
【0007】
トナー像Aの逆転写は、トナー像Bの形成時においてトナーが付着すべきでない位置にトナーが付着してしまういわゆる“かぶり”の影響を受ける。かぶりトナー量が多いほど、かぶりトナーがトナー像Aの微小なドットに重なる確率が大きく、逆転写が軽微になる。かぶりは、システム速度(プロセス速度)、トナー像形成に関わるデバイスの累積使用量(耐久時間内の経時変化)、および湿度や温度といった使用環境に依存する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、転写順位が上位のトナー像の逆転写に因る画像再現性の低下を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する画像形成装置は、色の異なる複数のトナー像を被転写体上で順に重ねてカラー画像を形成する電子写真式の画像形成装置であって、前記複数のトナー像のそれぞれに対応する潜像形成における露光の要否を画素ごとに示すラスター画像を色別に生成するラスター画像生成部と、前記ラスター画像生成部によって生成された色別の複数のラスター画像のうち、前記被転写体に最後に転写されるトナー像の色を除いた色のラスター画像を補正対象とし、当該補正対象における潜像の現像に際してトナーが付着すべきドットに該当する画素である有色画素の割合が閾値以下である低濃度領域内に在る有色画素に注目し、当該補正対象に対応するトナー像の次に転写されるトナー像に対応するラスター画像における画素配列位置が当該補正対象内の前記注目した有色画素の画素配列位置と同一である画素が有色画素でない場合に、当該補正対象内の前記注目した有色画素に該当するドットのトナー付着量が増大するように、前記低濃度領域内の少なくとも一つの画素の画素値を変更するラスター画像補正部と、前記ラスター画像補正部によって補正されたラスター画像に従って、当該ラスター画像に対応する色のトナー像を形成するための露光を制御する露光制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トナー像に対応する露光制御のためのラスター画像のデータ補正によって逆転写によるトナーの減少が補われるので、画像再現性の良好な画像形成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略の構成を示す図である。
【図2】中間転写ベルトから感光体ドラムへの逆転写を模式的に示す図である。
【図3】画像形成装置における画像データ補正に関わる構成要素を示すブロック図である。
【図4】逆転写によるトナーの減少を補うデータ補正における補正対象と補正量との関係を示す図である。
【図5】逆転写によるトナーの減少を補うために有色画素を増やすデータ補正における補正対象と補正後のドットとの関係を示す図である。
【図6】注目画素を含む画素マトリクスの画素配置パターンを示す図である。
【図7】補正前の周辺有色画素数が2である場合の補正後の画素配置の一例を示す図である。
【図8】ラスター画像補正部の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に例示される電子写真式の画像形成装置1は、コピーおよびネットワークプリンティングを含む多様な用途をもつMFP(Multi-functional Peripheral)である。画像形成装置1は、電子写真法によってカラーまたはモノクロの画像を形成するタンデム式のプリンターエンジンを備えている。プリンターエンジンは、4個のイメージングユニット11,12,13,14を用いてイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナー像を並行して形成することができる。イメージングユニット11,12,13,14は、潜像担持体としての感光体ドラム15,16,17,18を一つずつ有し、装置本体に対して個々に着脱可能である。イメージングユニット11,12,13,14のそれぞれにおいて、筒状の感光体の周囲に、帯電チャージャー、現像器、およびクリーナーといったトナー像の形成に必要なデバイスが配置されている。現像器には該当する色のトナーがトナーカートリッジ25,26,27,28からホッパーを介して適時に補給される。例示では、4色のうちの使用頻度の高いK(ブラック)に対応したイメージングユニット14が他のイメージングユニット11,12,13よりも大型化されている。
【0013】
画像形成装置1には、操作パネル35による直接の操作またはネットワーク9を介して接続される外部装置(典型的にはパーソナルコンピューター)からのアクセスによって、印刷ジョブが与えられる。印刷ジョブにはイメージスキャナー30によって原稿画像を読み取って複製するコピージョブが含まれる。例えば、カラー画像を形成する印刷ジョブが与えられたとき、画像形成装置1は次のように動作する。
【0014】
画像形成装置1は、原稿から読み取ったスキャン画像データまたは外部装置から与えられる画像データに基づいてY,M,C,Kの各色の露光パターンを決めるデータであるラスター画像を生成する。感光体ドラム15,16,17,18が回転する状態で、帯電した感光体に向けてプリントヘッド22がレーザー光を照射する。このとき、プリントヘッド22はラスター画像に従って光源を制御し、それによって感光体に対する色別の主走査を行なう。主走査と副走査(感光体の回転)とによって感光体上に静電潜像が形成される。各イメージングユニット11,12,13,14の現像器が感光体にトナーを吸着させて静電潜像に対応するトナー像を形成する。形成されたトナー像は、感光体の配列に沿って移動する無端の被転写体である中間転写ベルト23に一次転写される。トナー像の形成順序および一次転写の順序はイメージングユニット11,12,13,14の配置によって決まっており、本例では上流側からY、M、C、Kの順である。4色についての潜像形成および一次転写のタイミングは、中間転写ベルト23の上で4色のトナー像が互いにずれることなく適切な位置関係で重なり合うように設定されている。用紙の1紙面あたり四つずつトナー像を形成する動作と並行して、多段式の用紙スタッカー40から給紙ローラー41によって用紙Pが取り出されて搬送される。図中の一点鎖線は用紙Pの搬送経路を示す。一対のレジストローラー44が用紙を一旦保持し、適切なタイミングで二次転写位置へ給紙する。二次転写位置は中間転写ベルト23と圧接ローラー45とがニップ部を形成するように対向する位置である。二次転写位置を通過する用紙Pに中間転写ベルト23から4色の重なり合ったトナー像が一括に二次転写される。その後、用紙Pは定着ユニット29の内部を通って排紙トレイ46上に排紙される。用紙が定着ユニット29を通過する際に、加熱・加圧を受けてトナーが溶融し、トナー像が印刷画像として用紙に定着する。
【0015】
図2は中間転写ベルトから感光体ドラムへの逆転写を模式的に示している。図2において、一次転写の順序の上での第1色であるY(イエロー)のトナー8yの逆転写が生じている。感光体ドラム15上で形成されて中間転写ベルト23に一次転写されたYのトナー像は、第2色から第4色の各一次転写位置を通過する。例えば、図示のように第2色であるM(マゼンタ)の一次転写位置を通過するとき、Yのトナー8yがMのトナー8mを重ねる色重ねドットに対応する場合であれば、Mに対応する感光体ドラム16と中間転写ベルト23上のYのトナー8yとの間にMのトナー8mが介在するので、既に一次転写されているYのトナー8yの逆転写は起こりにくい。図中の中間転写ベルト23の右端部分では、Mのトナー8mが重なって逆転写が起こらずに一時転写時の付着量の保たれたYのトナー8yを含むドットが描かれている。これに対して、Mのトナー8mを重ねないドットに対応するYのトナー8yは、転写ローラー236によって感光体ドラム16に押圧されるとき、感光体ドラム16に接する。このため、静電吸引力に打ち勝つような機械的な力を受けて、Yのトナー8yの一部が感光体ドラム16に移る逆転写が起こる。図中では、Mの一次転写位置を通り過ぎた直後のYのドットにおいて、一部のYのトナー8yが中間転写ベルト23上に残り、他の一部が感光体ドラム16上に逆転写した様子が描かれている。
【0016】
図2ではYのトナー8yの逆転写が示されたが、最後に一次転写される第4色であるK(ブラック)を除いて、第2色のMおよび第3色のC(シアン)の各色についても、その色よりも転写順位が下位の色のトナーが重ならないドットにおいて逆転写が起こる。このような逆転写による画像の乱れを低減するため、画像形成装置1は逆転写によるトナー付着量の減少を見込んで、トナー像形成に際してドットのトナー付着量を増大させる画像データ補正を行う。画像データ補正の対象は、色別の画像のうちの逆転写の影響が比較的に大きい低濃度領域のドットの画素値である。
【0017】
図3は画像形成装置1における画像データ補正に関わる構成要素を示すブロック図である。画像形成装置1は、印刷ジョブにおいてイメージスキャナー30またはドキュメントを記憶するストレージ36から入力される原画像Diをプリンターエンジン10に適したYMCKのラスター画像D2y,D2m,D2c,D2kに変換するプリンターコントローラー50を有する。プリンターコントローラー50は、CPU(central processing unit)を含むハードウェアとCPUに所定の機能を実現させるソフトウェアとから構成され、ラスター画像生成部51およびラスター画像補正部52としての機能を有する。
【0018】
ラスター画像生成部51は、色の異なる複数のトナー像のそれぞれに対応する潜像形成における露光の要否を画素ごとに示すラスター画像D1y,D1m,D1c,D1kを色別に生成する。ラスター画像生成部51は、ネットワークプリンティングにおいてページ記述言語(Page Description Language :PDL)で記述されたジョブを解釈して描画すべき内容を表す中間データを生成する言語解析部、中間データに基づいてYMCKの4色のそれぞれに対応したラスター形式の画像データ(フレーム)を生成するラスターライズ部、各フレームの階調を補正する階調補正部、およびディザ法を適用して中間調を再現するスクリーン処理部を有する。
【0019】
ラスター画像補正部52は、ラスター画像生成部51によって生成された色別の複数のラスター画像データD1y,D1m,D1c,D1kのうち、中間転写ベルト23に最後に転写されるトナー像の色(第4色)を除いた第1色、第2色および第3色のラスター画像D1y,D1m,D1cを補正対象としてデータ補正を行う。データ補正は、補正対象における潜像の現像に際してトナーが付着すべきドットに該当する画素である有色画素の割合が閾値以下である低濃度領域内に在る有色画素に注目し、当該補正対象に対応するトナー像の次に転写されるトナー像に対応するラスター画像における画素配列位置が当該補正対象内の注目した有色画素(以下、「注目画素」という)の画素配列位置と同一である画素(以下、「対応画素」という)が有色画素でない画素(以下、これを無色画素という)である場合に、注目画素に該当するドットのトナー付着量が増大するように、低濃度領域内の少なくとも一つの画素(注目画素またはその周辺の画素)の画素値を変更するデータ処理である。
【0020】
また、ラスター画像補正部52が行なうデータ補正には、各イメージングユニット(IU)11,12,13,14の稼動情報DUおよび動作モードの指定に従って切替えられる電子写真プロセスのシステム速度情報DSに応じてデータ補正量を調整する。この調整は、トナー像形成に関わるデバイスや資材(特に現像材)の累積使用量、システム速度および湿度や温度といった使用環境に依存するかぶりトナー量が多いほど逆転写が軽微になることから、補正によって必要以上にトナーを付着させないために実施される。ラスター画像補正部52は、補正対象に対応するイメージングユニットよりもベルト移動方向の下流側に配置されたイメージングユニットの累積使用量が多いほど、注目画素の画素値の変更幅を小さくする。また、ラスター画像補正部52は、システム速度が大きいほど、注目画素の画素値の変更幅を小さくする。システム速度が第1速度である低速モードとシステム速度が第1速度よりも速い第2速度である高速モードとの切替えが行なわれる場合、高速モードにおけるデータ補正の変更幅は低速モードでの変更幅よりも小さくされる。稼動情報DUおよびシステム速度情報DSは、イメージングユニット11,12,13,14の累積使用量の計量および動作モードの管理を受け持つ図示しないメインコントローラーから与えられる。ラスター画像補正部52から出力されるラスター画像D2y,D2m,D2c,D2kのうち、Kのラスター画像データD2kはラスター画像生成部51が出力するラスター画像D1kと同じである。
【0021】
プリンターエンジン10は、ラスター画像D2y,D2m,D2c,D2kに基づいてプリントヘッド22の光源を制御する露光制御回路21を有する。ラスター画像D2y,D2m,D2c,D2kが多値画像である場合、露光制御回路21は画素値に応じて光源をオンオフ制御する。ここで、画像形成装置1における静電画像の現像形式が反転現像であるとする。反転現像では、感光体上のトナーを付着させるべきドット部分に光を照射する。したがって、露光制御回路21はラスター画像D2y,D2m,D2c,D2kにおける有色画素に対して光源をオンにするとともに、その画素値に応じて1画素当りの照射光量を制御する。その制御には、光源の出力パワーを変更する方法と、光源のオンオフを決めるパルスのパルス幅の変調によって照射時間を変更する方法とがある。無色画素に対して露光制御回路21は光源をオフとする。
【0022】
ラスター画像D2y,D2m,D2c,D2kが2値画像である場合、露光制御回路21は画素値に応じて光源をオンオフ制御する。露光制御回路21はラスター画像D2y,D2m,D2c,D2kにおける有色画素に対して光源をオンとし、無色画素に対して光源をオフとする。
【0023】
図4は逆転写によるトナーの減少を補うデータ補正における補正対象と補正量との関係を示している。上述のとおり、ラスター画像補正部52によるデータ補正の補正対象は、第1色(Y)、第2色(M)および第3色(C)のラスター画像D1y,D1m,D1cである。
【0024】
図示のように、補正対象がラスター画像D1y,D1m,D1cのいずれであっても、一次転写順位が補正対象の次(一つ下位)であるラスター画像の対応画素が有色画素であれば、さらに下位のラスター画像の対応画素の如何にかかわらず、基本的には注目画素についての補正は行われない。すなわち、注目画素に対応するドットの元のトナー付着量をQとしたとき、当該ドットに付着させる補正後のトナーの量は元のQのままであり、補正によるトナー量の増加倍率は1である。“基本的に”とは、稼動情報DUやシステム速度情報DSに基づく調整を行なわないとした場合の補正を意味する。
【0025】
補正対象より一つ下位のラスター画像の対応画素が無色画素であった場合、補正対象より下位の全てのラスター画像の各対応画素に注目して数えた無色画素の個数に応じて、トナー量の増加倍率a,b,c(c>b>a>1)が選択される。詳しくは、対応画素を一次転写順に仮想的に一列に並べたときの無色画素の連続数が多いほど、注目画素に該当するドットのトナー付着量がより多くなるようにトナー量の増加倍率a,b,cが選択される。例えば、補正対象が第1色のラスター画像D1yである場合、第2色〜第4色のラスター画像D1m,D1c,D1kの対応画素が無色画像であるとき、無色画素の連続数は最大の3であって、このときトナー量の増加倍率はcとされる。補正対象が第2色のラスター画像D1mである場合、第3色〜第4色のラスター画像D1c,D1kの対応画素が無色画像であるとき、無色画素の連続数は2であって、このときトナー量の増加倍率はbとされる。また、補正対象が第3色のラスター画像D1cである場合、第4色のラスター画像D1kの対応画素が無色画像であるとき、無色画素の連続数は1であって、このときトナー量の増加倍率はaとされる。
【0026】
選択された増加倍率a,b,cに応じて補正対象における注目画素またはその周囲の画素の画素値がその最大値を超えない範囲内で変更される。増加倍率a,b,cは、イメージングユニット11,12,13,14の各デバイスおよび一次転写条件に応じて、実験により最適化することができる。
【0027】
図5は逆転写によるトナーの減少を補うために有色画素を増やすデータ補正における補正対象と補正後のドットとの関係を示している。
【0028】
図示のように、補正対象がラスター画像D1y,D1m,D1cのいずれであっても、補正対象より一つ下位のラスター画像の対応画素が有色画素であれば、さらに下位のラスター画像の対応画素が有色か無色かにかかわらず、有色画素が追加されない。追加数は0である。図中の黒丸は有色画素を表している。表形式の図の欄「補正対象」および欄「形成するドット」に描かれている2本の垂直線および2本の水平線で囲まれた有色画素が注目画素である。
【0029】
補正対象より一つ下位のラスター画像の対応画素が無色画素であった場合、補正対象より下位の全てのラスター画像の各対応画素に注目して数えた無色画素の個数に応じて、追加する有色画素の数(0,1,2,3)が選択される。詳しくは、対応画素を一次転写順に一列に並べたときの無色画素の連続数が多いほど、注目画素に該当するドットが大きくなってトナー付着量がより多くなるように注目画素の周囲に有色画素が追加される。例えば、補正対象が第1色のラスター画像D1yである場合、第2色〜第4色のラスター画像D1m,D1c,D1kの対応画素が無色画像であるとき、無色画素の連続数は最大の3であって、このときの追加数は3とされる。補正対象が第2色のラスター画像D1mである場合、第3色〜第4色のラスター画像D1c,D1kの対応画素が無色画像であるとき、無色画素の連続数は2であって、このとき追加数は2とされる。また、補正対象が第3色のラスター画像D1cである場合、第4色のラスター画像D1kの対応画素が無色画像であるとき、無色画素の連続数は1であって、このとき追加数は1とされる。
【0030】
ここで、注目画素は、補正対象(ラスター画像)を3×3の画素マトリクスの集合としたときのマトリクス中心の画素である。ラスター画像補正部52は、各画素マトリクスにおいて画素値を調べ、中心画素が有色画素であってかつ周辺の有色画素の個数が予め定められた閾値(0〜7のいずれか)以下である場合に、中心画素を注目画素とする。例えば、閾値を0とすると、単位サイズの孤立ドットに対応する孤立有色画素が注目画素となる。また、閾値を2とすると、注目画素を含む画素マトリクスの画素配置パターンは図6に示される37通りのパターンである。有色画素を追加する補正は、注目画素の周辺の無色画素を有色画素に変更する処理である。ラスター画像補正部52は、図7に示されるように、予め定められたルールに従って所定の数(0,1,2,3)の有色画素を追加する。
【0031】
図7において、補正前の周辺有色画素数が2である場合の補正後の画素配置の一例が示されている。例示では、一つの有色画素g1を追加する場合、原則として注目画素g0の右隣に有色画素g1を配置する。右隣は追加順序が第1位の位置である。右隣の画素が元から有色画素であった場合には、第2位である左隣が無色画素であればそれを有色画素に変更する。左隣も元から有色画素であった場合には、残りの位置の中で無色画素の配置された最も上位の位置に在る無色画素を有色画素に変更する。二つの有色画素g1、g2を追加する場合および三つの有色画素g1、g2、g3を追加する場合も同様の手順で二つまたは三つの無色画素を有色画素に変更する。
【0032】
図8はラスター画像補正部の他の構成を示している。図8において、プリンターコントローラー51bは、ラスター画像生成部51bとラスター画像補正部53とを有している。ラスター画像生成部51bは、原画像Diを印刷するために生成する4色の各色のラスター画像D1y,D1m,D1c,D1kのいずれか一つまたは複数に、複写の抑制や印刷履歴の解析などのために用意された埋め込み情報DXを埋め込む。すなわち、複数のドットの位置関係によって埋め込み情報DXを表す隠しパターンを含むラスター画像D1y,D1m,D1c,D1kをラスター画像生成部51bは生成する。どのラスター画像D1y,D1m,D1c,D1kに埋め込み情報DXを埋め込んだかがラスター画像補正部53に通知される。一般的には、隠しパターンが目立ちにくいようにY(イエロー)のラスター画像D1yに埋め込み情報DXが埋め込まれるが、混合色の隠しパターンを形成する場合や複数種の情報を種類ごとに色を変えて埋め込む場合もある。
【0033】
ラスター画像補正部53は、ラスター画像生成部51bによって生成された色別の複数のラスター画像D1y,D1m,D1c,D1kのうち、第4色を除いた残りの3色のいずれかに対応しかつ埋め込み情報DXの埋め込まれたラスター画像のみを補正対象として、逆転写によるトナーの減少を補うデータ補正を行う。ラスター画像補正部53による補正後のラスター画像D3y,D3m,D3c,D3kは、露光制御回路21によるプリントヘッド22の制御に用いられる。
【0034】
以上の実施形態によれば、中間転写体を使うフルカラー画像の形成において、下流でのトナー逆転写量を考慮して上流色のドット形成を行うことで、安定した階調再現と適正な埋め込み情報パターンの再現が可能となる。システム速度情報DSおよび稼動情報DUに応じて上流色のラスター画像の補正量を調整することで、画質に対する逆転写の影響をより厳密に低減することができる。
【0035】
上述の実施形態において、画像形成装置1の構成を本発明に沿う範囲内で適宜変更することができる。例えば、被転写体は中間転写ドラムであってもよい。色重ねをするトナー像の最大数は例示の4に限らず、2以上であればよい。タンデム式に限らず、上流色のトナーの逆転写が生じるような順次の転写をする形式の装置に本発明を適用することができる。所定のセンサーを用いて湿度や温度といった使用環境を測定し、測定値に応じてラスター画像の画素値の補正量を調整してもよい。
【0036】
露光の要否を画素ごとに示すラスター画像の画素値が多値である場合、注目画素の画像値を変更する補正と、注目画素に隣接させて有色画素を追加する補正とを併用することができる。2種の補正方法を併用する場合、注目画素の画素値と追加する有色画素の画素値とを等しくしてもよいし、異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 画像形成装置
23 中間転写ベルト(被転写体)
D1y,D1m,D1c,D1k ラスター画像
51,51b ラスター画像生成部
g0 注目画素
52,53 ラスター画像補正部
21 露光制御部
11,12,13,14 イメージングユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色の異なる複数のトナー像を被転写体上で順に重ねてカラー画像を形成する電子写真式の画像形成装置であって、
前記複数のトナー像のそれぞれに対応する潜像形成における露光の要否を画素ごとに示すラスター画像を色別に生成するラスター画像生成部と、
前記ラスター画像生成部によって生成された色別の複数のラスター画像のうち、前記被転写体に最後に転写されるトナー像の色を除いた色のラスター画像を補正対象とし、当該補正対象における潜像の現像に際してトナーが付着すべきドットに該当する画素である有色画素の割合が閾値以下である低濃度領域内に在る有色画素に注目し、当該補正対象に対応するトナー像の次に転写されるトナー像に対応するラスター画像における画素配列位置が当該補正対象内の前記注目した有色画素の画素配列位置と同一である画素が有色画素でない場合に、当該補正対象内の前記注目した有色画素に該当するドットのトナー付着量が増大するように、前記低濃度領域内の少なくとも一つの画素の画素値を変更するラスター画像補正部と、
前記ラスター画像補正部によって補正されたラスター画像に従って、当該ラスター画像に対応する色のトナー像を形成するための露光を制御する露光制御部と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ラスター画像補正部は、前記補正対象内の前記注目した有色画素の画素配列位置と同一でありかつ有色画素でない画素を有しかつ当該補正対象に対応するトナー像より後に転写されるトナー像に対応するラスター画像の個数に応じて、当該補正対象の画素値を変更する
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ラスター画像補正部は、前記注目した有色画素に該当するドットのトナー付着量を増大させる補正として、当該注目した有色画素に隣接する有色画素でない少なくとも一つの画素を有色画素に変更する
請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ラスター画像生成部が生成する前記色別の複数のラスター画像は、露光の要否とともに階調濃度を画素ごとに示す多値画像であり、
前記ラスター画像補正部は、前記注目した有色画素に該当するドットのトナー付着量を増大させる補正として、当該注目した有色画素の画素値をより大きい階調濃度を示す値に変更し、
前記露光制御部は、前記ラスター画像補正部によって補正されたラスター画像の各画素値に応じて、露光の光強度または露光時間を制御する
請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ラスター画像生成部は、色別に生成する前記複数のラスター画像のうちの少なくとも一つに、複数のドットの位置関係によって情報を表す隠しパターンを埋め込み、
前記ラスター画像補正部は、前記ラスター画像生成部によって生成された色別の複数のラスター画像のうち、前記被転写体に最後に転写されるトナー像の色を除いた色に対応しかつ前記隠しパターンの埋め込まれたラスター画像のみを補正対象とする
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記被転写体としての中間転写ベルトの移動方向に沿って並び、前記複数のトナー像を色別に形成する複数のイメージングユニットを備え、
前記ラスター画像補正部は、補正対象に対応するイメージングユニットよりも前記移動方向の下流側に配置されたイメージングユニットの累積使用量が多いほど、前記注目した有色画素の画素値の変更幅を小さくする
請求項4記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記複数のトナー像を形成するシステム速度が第1速度である低速モードと前記システム速度が前記第1速度よりも速い第2速度である高速モードとの切替えが可能であり、
前記ラスター画像補正部は、前記高速モードにおいて、前記注目した有色画素の画素値の変更幅を前記低速モードでの変更幅よりも小さくする
請求項4または6記載の画像形成装置。
【請求項8】
色の異なる複数のトナー像を被転写体上で順に重ねてカラー画像を形成する電子写真式の画像形成装置のための画像形成方法であって、
前記複数のトナー像のそれぞれに対応する潜像形成における露光の要否を画素ごとに示すラスター画像を色別に生成し、
生成した色別の複数のラスター画像のうち、前記被転写体に最後に転写されるトナー像の色を除いた色のラスター画像を補正対象とし、当該補正対象における潜像の現像に際してトナーが付着すべきドットに該当する画素である有色画素の割合が閾値以下である低濃度領域内に在る有色画素に注目し、当該補正対象に対応するトナー像の次に転写されるトナー像に対応するラスター画像における画素配列位置が当該補正対象内の前記注目した有色画素の画素配列位置と同一である画素が有色画素でない場合に、当該補正対象内の前記注目した有色画素に該当するドットのトナー付着量が増大するように、前記低濃度領域内の少なくとも一つの画素の画素値を変更し、
補正したラスター画像に従って、当該ラスター画像に対応する色のトナー像を形成するための露光を行なう
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
色の異なる複数のトナー像を被転写体上で順に重ねてカラー画像を形成する電子写真式の画像形成装置において実行されるコンピュータープログラムであって、
前記画像形成装置が有するコンピューターによって実行されたときに、
前記複数のトナー像のそれぞれに対応する潜像形成における露光の要否を画素ごとに示すラスター画像を色別に生成するラスター画像生成部と、
前記ラスター画像生成部によって生成された色別の複数のラスター画像のうち、前記被転写体に最後に転写されるトナー像の色を除いた色のラスター画像を補正対象とし、当該補正対象における潜像の現像に際してトナーが付着すべきドットに該当する画素である有色画素の割合が閾値以下である低濃度領域内に在る有色画素に注目し、当該補正対象に対応するトナー像の次に転写されるトナー像に対応するラスター画像における画素配列位置が当該補正対象内の前記注目した有色画素の画素配列位置と同一である画素が有色画素でない場合に、当該補正対象内の前記注目した有色画素に該当するドットのトナー付着量が増大するように、前記低濃度領域内の少なくとも一つの画素の画素値を変更するラスター画像補正部と、を前記コンピューターに実現させる
ことを特徴とするコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−242665(P2012−242665A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113680(P2011−113680)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】