説明

画像形成装置、画像形成装置の時計補正方法、プログラム及び記録媒体

【課題】画像形成装置の様々な使用条件により変化する温度に対応した内蔵時計の補正を行えるようにする。
【解決手段】電源ON時(S1)に、RTCに通常動作時用の時計誤差補正値を設定(S2)し、動作中(S3)はその設定を使い続ける。省エネ移行発生時(S4)に、RTCに省エネ用時計誤差補正値を設定する(S5)。省エネ中(S6)から通常動作状態へ移行した(S7)際には、動作時用時計誤差補正値の設定(S2)に変更する。省エネ時には、装置の一部の電源OFFにより通常動作時との温度が違うので、この温度の違いに応じてRTCの時刻を補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵時計を有する画像形成装置、その時計補正方法、この方法を実行するプログラム及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の内蔵時計(RTC:リアルタイムクロック)に使用される音叉型水晶振動子は、2次曲線を描き、25℃を中心としてそれより温度が高くても低くても時刻が遅れる特性を持っている。そのため、なんらかの方法で時刻の補正を行わないと、時間が遅れつづけることになる。時刻を補正する方法自体は様々あるが、画像形成装置が周辺装置から計時情報を受信する方法(例えば、特許文献1参照)、ネットワーク越しに外部との比較を行う方法(例えば、特許文献2参照)、システム特性に合わせて発信周波数を補正する方法(例えば、特許文献3参照)、RTCを2台搭載して比較するなどの手法(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。また、温度計を併用し周波数を修正する方法も知られている。
【特許文献1】特開平8−116399号公報
【特許文献2】特開2003−248076号公報
【特許文献3】特開平10−325888号公報
【特許文献4】特開2005−121396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、各特許文献1〜4の技術は、画像形成装置の様々な使用条件により変化する温度に対応した補正を行うことができないという問題があった。
本発明は、使用条件による温度変化に対応してRTCの誤差補正を行う方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の画像形成装置は、現在時刻の計時を行う内蔵時計手段と、前記内蔵時計手段が計時した時刻の補正を行う補正手段と、前記補正手段が用いる補正値を変更する変更手段とを有することを特徴とする。
【0005】
また、前記変更手段は、装置の通常動作時と省エネ時とで、前記補正手段が用いる補正値を変更することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の画像形成装置は、装置の使用環境に応じて電源OFF時に前記補正手段が用いる補正値を変更することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の画像形成装置は、前記補正手段が用いる補正値を月ごとに変更することを特徴とする。
【0008】
また、前記変更手段は、前記補正手段が用いる補正値を1週間のスケジュールに応じて変更することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像形成装置は、一定枚数印刷動作を行ったことを検知する検知手段を有し、前記変更手段は、前記一定枚数の印刷動作を行ったことが検知されたとき、前記補正手段が用いる補正値を変更することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の画像形成装置は、エンジンの定着ウォームアップタイムを検知する検知手段を有し、前記変更手段は、前記検知された定着ウォームアップタイムに応じて前記補正手段が用いる補正値を変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像形成装置の時計補正方法は、現在時刻の計時を行う内蔵時計を有し、前記内蔵時計が計時した時刻の補正を行うようにした画像形成装置の時計補正方法において、前記補正に用いる補正値を変更することを特徴とする。
【0012】
また、前記補正値の変更は、装置の動作時と省エネ時とで、変更することを特徴とする。
【0013】
また、前記補正値の変更は、装置の使用環境に応じて電源OFF時に変更することを特徴とする。
【0014】
また、前記補正値の変更は、補正値を月ごとに変更することを特徴とする。
【0015】
また、前記補正値の変更は、補正値を1週間のスケジュールに応じて変更することを特徴とする。
【0016】
また、前記補正値の変更は、一定枚数印刷動作を行ったことが検知されたとき、補正値を変更することを特徴とする。
【0017】
また、前記補正値の変更は、エンジンの定着ウォームアップタイムを検知し、検知された定着ウォームアップタイムに応じて補正値を変更することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のプログラムは、上記方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の記録媒体は、上記プログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通常動作と省エネ時とで補正値を変更することで、温度による時計のズレへの影響を最小限にすることができる。
また、現使用環境ごとに電源OFF時の設定を変えることで、使用環境ごとに最適な設定を行うことができる。
また、電源OFF時の補正値を月ごとに設定することで、季節ごとに最適な時計誤差設定を行うことができる。
また、休日用の補正値を用いることで、時計誤差を最小限に抑えることができる。
また、一定枚数印刷動作を行ったとき、補正値を変化させることで、温度に大きな変化があったときに誤差を修正することができる。
また、エンジンの定着ウォームアップタイムに応じて補正値を変更させることで、温度による誤差補正に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の実施の形態による画像形成装置の構成を示すブロック図である。
画像形成装置は、操作部8、画像形成部9、コントローラ部10を備える。コントローラ部10には、ASIC2が設けられ、このASIC2にCPU1、RTC(内蔵時計)3、RAM4、ROM5、各種I/F6が接続されている。RTC3には電池7が接続され、電源OFF時の時計のバックアップを行っている。また、CPU1は、RTC3が計時した時刻の誤差補正を指示し、時計誤差の補正値を用いた補正制御を行う。
【0022】
図2は本発明の第1の実施の形態による動作を示すフローチャートである。
電源ON時(S1)に、RTC3に通常動作時用の時計誤差補正値を設定(S2)し、動作中(S3)はその補正値を使い続ける。省エネ移行発生時(S4)に、RTC3に省エネ用の時計誤差補正値を設定する(S5)。省エネ中(S6)から通常動作状態へ移行した(S7)ときには、動作時用時計誤差補正値の設定(S2)に変更する。
【0023】
現在の内蔵時計の設定は、どの場合でも一定値で温度による変化を全く考慮にいれていない。そのため、保管時(電源OFF時:25〜30℃)であればほとんど時計がずれることはないが、通常動作時では周囲温度が高い(40〜50℃)ので、RTC3が計時した時刻のズレは大きくなってしまう。また省エネ時には、熱源である制御基板等の一部の電源がOFFになるので、周囲温度が低くなり、計時した時刻のズレは通常動作時とは違うものとなる。
【0024】
本実施の形態によれば、印刷時、StandBy時、省エネ時などの動作モードに応じて時計誤差の補正値を変更するので、温度による時計のズレへの影響を最小限にすることができる。
【0025】
図3は誤差補正の具体的な方法の一例を示すもので、20秒に1回だけ補正を行う。即ち、図示のように、19回は一定の補正値T0で補正を行うが、20回目には補正値T1で補正を行う。本実施の形態では、このT1の長さを動作モードに応じて調整するようにしている。尚、T0は周囲温度25℃の設定で決める。
【0026】
本発明の第2の実施の形態は、電源OFF時の平均気温を操作部8により設定し、電源OFF時の時計誤差設定を変更するものである。
画像形成装置の使用環境ごとに平均気温が違うため、電源OFF時に誤差が生じ、影響が出やすくなるが、本実施の形態によれば、使用環境ごとに最適な補正値設定を行うことができる。
【0027】
本発明の第3の実施の形態は、各月ごとの時計誤差設定を保持し、月が変わるごとに電源OFF時の時計誤差設定を変更するものである。
季節により周囲の温度が違うため、電源OFF時の誤差変動が大きくなるが、本実施の形態によれば、季節ごとに最適な時計誤差設定を行うことができる。
【0028】
本発明の第4の実施の形態は、1週間のうち、稼働率の低い日の時計誤差設定を変更するように、操作部8より設定するものである。
ほとんど使用されない土曜日/日曜日などの休日では、普段の動作時と周囲温度が違うため時計の誤差が大きくなるが、本実施の形態によれば、休日用設定を用いることで、時計誤差を最小限に抑えることができる。
【0029】
本発明の第5の実施の形態は、予め設定された印刷枚数を連続で実施された場合に、RTC3の時計誤差設定を高温時の設定に変更し、一定時間印刷動作がなされない場合には、待機時の設定にまた戻すように設定するものである。
印刷動作による温度上昇の変化が大きく、動作時と非動作時との時計誤差が大きくなるが、本実施の形態によれば、印刷枚数をカウントし一定枚数経過したときに設定を変更し、温度に大きな変化があったときに誤差を修正することができる。
【0030】
本発明の第6の実施の形態は、省エネからの復帰時に、復帰時の時間を画像形成部9より通知し、その時間に対応した設定テーブルによってRTC3の時計誤差設定を変更するものである。
省エネ復帰時の温度状態がまちまちで、その際の時計誤差の修正の情報を取得するので、
エンジンの定着のウォームアップタイムは現在の定着温度に依存するため、温度による誤差補正に使用することができる。
本実施の形態によれば、エンジンの定着ウォームアップタイムを検知し、時計誤差設定を変更することにより、温度に応じた誤差補正に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態による画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態による画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態による誤差補正方法の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0032】
1 CPU
3 RTC(内蔵時計)
8 操作部
9 画像形成部
10 コントローラ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在時刻の計時を行う内蔵時計手段と、
前記内蔵時計手段が計時した時刻の補正を行う補正手段と、
前記補正手段が用いる補正値を変更する変更手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記変更手段は、装置の通常動作時と省エネ時とで、前記補正手段が用いる補正値を変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変更手段は、装置の使用環境に応じて電源OFF時に前記補正手段が用いる補正値を変更することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記補正手段が用いる補正値を月ごとに変更することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記変更手段は、前記補正手段が用いる補正値を1週間のスケジュールに応じて変更することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
一定枚数印刷動作を行ったことを検知する検知手段を有し、
前記変更手段は、前記一定枚数の印刷動作を行ったことが検知されたとき、前記補正手段が用いる補正値を変更することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
エンジンの定着ウォームアップタイムを検知する検知手段を有し、
前記変更手段は、前記検知された定着ウォームアップタイムに応じて前記補正手段が用いる補正値を変更することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
現在時刻の計時を行う内蔵時計を有し、前記内蔵時計が計時した時刻の補正を行うようにした画像形成装置の時計補正方法において、
前記補正に用いる補正値を変更することを特徴とする画像形成装置の時計補正方法。
【請求項9】
前記補正値の変更は、装置の動作時と省エネ時とで、変更することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置の時計補正方法。
【請求項10】
前記補正値の変更は、装置の使用環境に応じて電源OFF時に変更することを特徴とする請求項8又は9記載の画像形成装置の時計補正方法。
【請求項11】
前記補正値の変更は、補正値を月ごとに変更することを特徴とする請求項8から10の何れか1項に記載の画像形成装置の時計補正方法。
【請求項12】
前記補正値の変更は、補正値を1週間のスケジュールに応じて変更することを特徴とする請求項8から11の何れか1項に記載の画像形成装置の時計補正方法。
【請求項13】
前記補正値の変更は、一定枚数印刷動作を行ったことが検知されたとき、補正値を変更することを特徴とする請求項8から12の何れか1項に記載の画像形成装置の時計補正方法。
【請求項14】
前記補正値の変更は、エンジンの定着ウォームアップタイムを検知し、検知された定着ウォームアップタイムに応じて補正値を変更することを特徴とする請求項8から13の何れか1項に記載の画像形成装置の時計補正方法。
【請求項15】
請求項8〜14の何れか1項記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−204543(P2009−204543A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48770(P2008−48770)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】