説明

画像形成装置およびプロセスカートリッジ

【課題】現像剤供給部材を単に接触させる場合と比べ、潜像保持体に液体現像剤を供給すると共に、潜像保持体表面の溶媒および非画像部に付着したトナーを効率良く回収し、紙しわ等の欠陥を抑制すること。
【解決手段】磁気ドラム10と、磁気ドラム10条に潜像を形成する潜像形成手段と、トナーおよび水性媒体を含む液体現像剤24を貯留する現像剤貯留手段14bと、表面が発泡体32によって形成され、発泡体32が液体現像剤24に浸漬されると共に、発泡体32が磁気ドラム10に圧縮されて接触するよう配置され、液体現像剤24を磁気ドラム10に供給して潜像をトナー像として顕像化する現像剤供給部材と、トナー像26を用紙30に転写する転写手段28と、を有し、磁気ドラム10の表面の撥水性が、現像剤供給部材の表面の撥水性より高い画像形成装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一回の潜像形成で必要な部数が印刷される磁気印写装置が知られている。この磁気印写装置では、磁気記録媒体(磁気潜像保持体)に磁気的に形成された磁気潜像を保持させ、現像領域でその磁気記録媒体に磁性トナーを供給して磁気潜像をトナー像として顕像化し、転写領域で紙などの記録媒体を磁気記録媒体へ押し当て、顕像化されたトナー像を記録媒体へ転写し、更に転写後の記録媒体を定着領域に搬送して定着処理することにより印写を完成させる。
【0003】
前記磁気印写装置に関しては、粉体の磁性トナーを利用したいわゆる乾式の画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。具体的なプロセスとしては、例えば磁性トナーは磁気記録媒体に対して離間位置に配置された供給ローラによって供給される。供給ローラは磁性トナー層をその周面上に保持し、磁性トナー層を磁気記録媒体へ接触させて、磁気記録媒体の磁気潜像へ磁性トナーを供給し、付着させる。
【0004】
一方、磁性トナーを液体中に分散させた液体現像剤を用いた画像形成装置も検討されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0005】
また、記録体表面に加熱温度に応じた後退接触角を示す潜像を形成させる方法によって画像を形成する方式が知られている。この方式において、記録体表面への記録剤の供給の際に、記録剤を保持した多孔質体を前記記録体表面に押し当て、記録剤を染み出させることにより供給を行う方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平6−4008号公報
【特許文献2】特開平9−156150号公報
【特許文献3】特公平5−87834号公報
【特許文献4】特開平5−188827号公報
【特許文献5】特開平5−16515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、現像剤供給部材を単に接触させる場合と比べ、潜像保持体に液体現像剤を供給すると共に、潜像保持体表面の溶媒および非画像部に付着したトナーを効率良く回収し、紙しわ等の欠陥を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、潜像保持体と、前記潜像保持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナーおよび水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、表面が吸液性の部材によって形成され、該吸液性の部材が前記現像剤貯留手段内の液体現像剤に浸漬されると共に、前記吸液性の部材が前記潜像保持体に圧縮されて接触するよう配置され、前記液体現像剤を前記潜像保持体に供給して前記潜像をトナー像として顕像化する現像剤供給部材と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、前記潜像保持体の表面の撥水性が、前記現像剤供給部材の表面の撥水性より高いことを特徴とする画像形成装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記吸液性の部材の保水率が900%より大きいことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記現像剤供給部材が回転し、該回転によって前記吸液性の部材から飛散する液滴を遮蔽する遮蔽部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記現像剤供給部材が前記潜像保持体に対して鉛直方向下方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置である。
【0011】
請求項5に係る発明は、潜像保持体と、トナーおよび水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、表面が吸液性の部材によって形成され、該吸液性の部材が前記現像剤貯留手段内の液体現像剤に浸漬されると共に、前記吸液性の部材が前記潜像保持体に圧縮されて接触するよう配置され、前記液体現像剤を前記潜像保持体に供給する現像剤供給部材と、を有し、前記潜像保持体の表面の撥水性が、前記現像剤供給部材の表面の撥水性より高いことを特徴とするプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明によれば、現像剤供給部材を単に接触させる場合と比べ、潜像保持体への液体現像剤の供給と、潜像保持体表面の溶媒および非画像部に付着したトナーの回収が効率良くできる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、保水率を考慮しない場合に比べ、潜像保持体表面の溶媒および非画像部に付着したトナーを効率よく回収できる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、遮蔽部材を有さない場合に比べ、飛散する液滴による汚染が抑制される。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、現像剤供給部材と潜像保持体との配置の方向を考慮しない場合に比べ、現像剤供給部材が圧縮から開放される箇所にて潜像保持体表面の溶媒および非画像部に付着したトナーが回収される。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、現像剤供給部材を単に接触させる場合と比べ、潜像保持体への液体現像剤の供給と、潜像保持体表面の溶媒および非画像部に付着したトナーの回収が効率良くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、望ましい実施形態について詳細に説明する。尚、本実施形態に係るプロセスカートリッジについては、下記の画像形成装置の実施形態において併せて説明する。
本実施形態の画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナーおよび水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、表面が吸液性の部材(以下単に「吸液性部材」と称す)によって形成され、該吸液性部材が前記現像剤貯留手段内の液体現像剤に浸漬されると共に、前記吸液性部材が前記潜像保持体に圧縮されて接触するよう配置され、前記液体現像剤を前記潜像保持体に供給して前記潜像をトナー像として顕像化する現像剤供給部材と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、前記潜像保持体の表面の撥水性が、前記現像剤供給部材の表面の撥水性より高いことを特徴とする。
【0018】
本実施形態では、現像剤として、水性媒体にトナーを分散させた液体現像剤を用いる。ここで、上記水性媒体とは、水を50質量%以上含む溶媒を意味する。また「水」とは、蒸留水、イオン交換水、超純水等、精製した水を意味する。
【0019】
本実施形態では、表面が吸液性部材によって形成された現像剤供給部材を、潜像保持体に圧縮されて接触するように配置している(以下、当該圧縮されて接触する領域を「圧縮領域」と称す。)ことにより、現像剤供給部材表面の吸液性部材に現像剤貯留手段にて保持された液体現像剤が、前記圧縮領域にて染み出し、潜像保持体表面の潜像が現像される。
また、現像剤供給部材表面の吸液性部材が圧縮から開放される箇所にて、毛管現象によって液体現像剤中の溶媒および非画像部に付着したトナーが回収され、潜像保持体上の残留溶媒が低減される。
更に、液体現像剤における溶媒として水性媒体を用いることにより、水は水素結合によって表面張力が大きいため、現像剤供給部材よりも高い撥水性を有する潜像保持体と組み合わせることで、現像の際に液体現像剤が潜像保持体と接触しても溶媒が潜像保持体に転移しにくくなる。転移せずに現像剤供給部材側に残った上記溶媒は、前述の現像剤供給部材表面の吸液性部材の毛管現象によって回収され、潜像保持体上の残留溶媒が低減される。
【0020】
本実施形態に適用される画像形成プロセスは、潜像保持体上に潜像を形成し、前記液体現像剤によってトナー像を形成するプロセスであり、その構成は、前述の本実施形態における特徴を具備する限り、特に制限されない。例えば、磁気現像プロセス、印刷などの現像剤として水性溶媒中に分散されたトナーやインクが用いられるプロセス等に適用される。
下記において、本実施形態における液体現像剤を用いた現像プロセスの中でも、特に望ましい磁気現像プロセスによる画像形成装置について簡単に説明する。なお、用いる液体現像剤の構成材料等の詳細については後述する。
【0021】
図1は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置100は、磁気ドラム(磁気潜像保持体)10、磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)12、現像剤貯留手段14bおよび現像剤供給手段14aを備える現像装置14、中間転写体(転写手段)16、クリーナ18、消磁装置20、転写定着ローラ(転写手段)28を含んで構成される。磁気ドラム10は円柱形状を有し、該磁気ドラム10の外周に磁気ヘッド12、現像装置14、中間転写体16、クリーナ18および消磁装置20が順次に設けられている。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0022】
まず、磁気ヘッド12が、例えば図示しない情報機器と接続され、該情報機器から送られた2値化された画像データを受ける。磁気ヘッド12は、磁気ドラム10の側面上を走査しながら磁力線を放出することによって、磁気ドラム10に磁気潜像22を形成する。なお、図1では磁気潜像22は磁気ドラム10における斜線を付した部分で示される。
現像装置14は、現像ローラ(現像剤供給手段)14aと現像剤貯留容器(現像剤貯留手段)14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、その表面が吸液性部材としての発泡体32によって形成され、現像剤貯留容器14bに貯蔵される液体現像剤24に該発泡体32の一部が浸漬するようにして設けられる。また、前記発泡体32の他の部分が前記磁気ドラム10に圧縮されて接触するよう設けられる。尚、磁気ドラム10と現像ローラ14aとは、それぞれ図1にて矢印Aおよび矢印Bで示すごとく、逆方向に回転させる。また、現像ローラ14aは磁気ドラム10に対して鉛直方向下方(図1においては下方向)に設けられる。現像ローラ14aの、液体現像剤24と浸漬する領域の下流側(矢印A方向下流側)には、現像ローラ14aの回転によって、発泡体32から飛散する液滴の飛び散りを抑制する遮蔽部材34が設けられている。
【0023】
液体現像剤24は、水性媒体とトナー粒子とを含んで構成される。トナー粒子は磁性体を含んで構成される磁性トナーである。水性媒体やトナー粒子の詳細については後述する。
液体現像剤24中では、液体現像剤24を現像剤貯留容器14b内に設けられる攪拌部材15(図2参照)によって所定の回転速度で攪拌している。
【0024】
現像ローラ14a表面の発泡体32に供給された液体現像剤24は、磁気ドラム10に搬送され、発泡体32が磁気ドラム10に圧縮される位置(圧縮領域N)で磁気潜像22に供給される。これによって磁気潜像22は顕像化されてトナー像26となる。
また、発泡体32が圧縮から開放される箇所にて、液体現像剤24中の溶媒および非画像部に付着したトナーが回収される。
【0025】
上記現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する磁気ドラム10に搬送され用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、記録媒体への転写と同時に定着を行うため、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。
中間転写体16への転写は、トナー粒子が電荷をほとんど有していないため、シアリング転写(非電界転写)により行うことが好適である。具体的には、矢印B方向に回転する磁気ドラム10と矢印C方向に回転する中間転写体16とを一定の接触領域(移動方向の接触幅を有する接触面)を持って接触させ、トナー像26に対して磁気ドラム10との磁気力以上の吸着力により中間転写体上にトナー像26を移行させる。このとき、磁気ドラム10および中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0026】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像は、転写定着ローラ28との接触位置において用紙30に転写され、同時に定着される。
転写定着ローラ28および中間転写体16によって用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像を転写すると共に用紙30上にトナー像が定着される。トナー像の定着は、トナーの特性により加圧によってのみ行っても、転写定着ローラ28に発熱体を設けて加圧および加熱により行ってもよい。
【0027】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した磁気ドラム10では、転写残トナーがクリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。クリーニング後、磁気潜像22を保持したまま磁気ドラム10は消磁位置まで回転移動する。
消磁装置20は、磁気ドラム10に形成された磁気潜像22を消去する。前記クリーナ18と消磁装置20とによって磁気ドラム10は画像形成前の磁性層の帯磁状態にばらつきがない状態に戻される。以上の動作を繰返すことによって、前記情報機器から送られてくる画像を連続的に短時間で形成する。なお、上記画像形成装置100に備えられる磁気ヘッド12、現像装置14、中間転写体16、転写定着ローラ28、クリーナ18および消磁装置20は、すべて磁気ドラム10の回転速度と同期をとって動作されている。
【0028】
次に、本実施形態の画像形成装置の各構成を順次説明する。
(磁気潜像保持体)
磁気ドラム(磁気潜像保持体)10の構成は、例えばアルミニウムなどの金属でできたドラム上に、Ni、Ni−Pなどの下地層をおよそ1μm以上30μm以下の厚さで形成し、この上にCo−Ni、Co−P、Co−Ni−P、Co−Zn−P、Co−Ni−Zn−Pなどの磁気記録層を0.1μm以上10μm以下程度の厚さで形成し、更にNi、Ni−Pなどの保護層を0.1μm以上5μm以下程度の厚さで形成する。下地層のメッキにピンホールなどの欠陥がなく、細密でむらのないメッキを行うことが好適である。メッキ以外にも、スパッタや蒸着などの方法もある。更に、下地層および保護層については、非磁性であることが望ましい。各層の表面はテープ研磨などで表面精度を保つことが好適である。
【0029】
磁気記録層の膜厚は0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが望ましく、磁気記録層の磁気特性は、保磁力が16000A/m以上80000A/m以下(200エルステッド以上1000エルステッド(Oe)以下)、残留磁束密度を100mT以上200mT以下(1000ガウス以上2000ガウス(G)以下)とすることが好適である。
以上は、水平磁気記録式の場合の磁気ドラム10の構成であるが、垂直磁気記録式の場合には、非磁性層の上にCo−Ni−Pなどの記録層を設けた構成としたり、該記録層の下に透磁率の高い軟磁性層を設けた構成としてもよく、いずれかに限定されるものではない。また磁気潜像保持体としては、本実施形態におけるドラム状のものに限られず、ベルト状に形成されたものでもよい。
【0030】
本実施形態では、磁気ドラム10の表面の撥水性は、後述の発泡体32よりも高く設定される。ここで撥水性とは水をはじく性質のことを意味し、具体的には純水との接触角により判断される。
上記磁気ドラム10の表面の純水に対する接触角は、70度以上であることが望ましく、100度以上であることがより望ましい。
【0031】
なお、上記磁気ドラム10表面の接触角は、接触角計(協和界面科学(株)製:CA−X)を用い、25℃、50%RHの環境下で、純水を磁気ドラムの表面に3.1μl滴下し、15秒後の接触角を求めた。なお、測定は端部、中央部で周方向に4点測定し、これらの平均値を接触角とした。また、後述の発泡体32(あるいは吸液性部材)における接触角も、上記方法によって測定される。
【0032】
磁気ドラム10の表面を上記好適な接触角を有する表面とするには、前記のようにして構成される磁気ドラム表面に表面コートを行うことが望ましい。
上記表面コートとしては、フッ素潤滑メッキ、フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを用いたコーティング等が挙げられる。フッ素潤滑メッキとは、無電解ニッケルメッキにフッ素樹脂(ポリ四弗化エチレン:PTFE)を複合・共析させた機能メッキであり、形成される皮膜中にはPTFE粒子が偏りなく析出しており無電解ニッケルメッキとPTFE樹脂の両特性を兼ね備える。
また、前記フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを使用したコーティングとしては、例えば、含フッ素環状構造を有するポリマー、フルオロオレフィンとビニルエーテルとの共重合体、光重合型フッ素樹脂組成物等を前記保護層表面に塗布してもよいし、該保護層表面にフッ素原子含有ポリマーをスパッタリングし全面を被覆してもよい。
【0033】
これらのうちでは、フッ素潤滑メッキが好適である。なお、上記フッ素潤滑メッキやフッ素樹脂コーティングは、前記保護層を形成した上に行ってもよいし、フッ素潤滑メッキ等により形成した層をそのまま保護層としてもよい。
表面コートにより形成される表面層の膜厚は0.1μm以上5μm以下とすることが望ましく、0.3μm以上3μm以下とすることがより望ましい。
【0034】
(磁気潜像形成手段)
磁気潜像形成装置(磁気潜像形成手段)は、基本的には磁気ヘッド12とその駆動回路から成る。磁気ヘッド12には、おもにフルライン型磁気ヘッドとマルチチャンネル型磁気ヘッドがあり、フルライン型磁気ヘッドの場合には磁気ヘッド12を走査する必要はないが、マルチチャンネル型磁気ヘッドの場合には磁気ドラム10に対して磁気ヘッド12を走査する必要がある。走査の方法にはシリアル走査とヘリカル走査とがあり、ヘリカル走査の方は潜像形成工程だけ特別に磁気ドラム12の回転速度を変更することにより、記録速度が速くなる。
【0035】
一方、フルライン型磁気ヘッドの場合としては、例えば解像度600dpi(1インチ当たりのドット数)とするとA4サイズの紙の幅方向の記録幅をカバーするためには500チャネル程度のヘッドが必要である。それらを並べてフルライン化すればヘッドを走査する必要がなく極めて高速で記録し得る。また上記フルライン化するためには、ヘッドコアとヘッドコアとの重ね合わせが必要になるが、高解像度になるにしたがいトラックピッチも狭くなるためヘッドコアに挿入されるコイルも可能な限り薄いもの、例えば平面状のシートコイルが用いられる。
【0036】
磁気ヘッド12の各チャンネルのコイルに電流を流すことにより磁極先端部から漏洩磁束が生じ、これにより磁気記録媒体を磁化することによって磁気潜像を形成する。磁気ヘッド12からの出力は、磁気ドラム10における磁気記録層の保磁力の2倍以上3倍以下必要である。ここで形成した磁気潜像は消磁装置20で消去しない限り消えることはなく、現像、転写、定着、クリーニングの各工程を繰り返せば多数のコピーを得る機能を有する。
【0037】
(現像剤貯留手段、現像剤供給手段)
図2に、図1における現像領域を拡大した模式図を示す。
現像装置(現像剤供給手段)14は、現像剤貯留容器14bと、現像剤貯留容器14b内に貯留された液体現像剤24を磁気ドラム10へ供給する現像ローラ14aとを具備する(例えば、この磁気ドラム10および現像装置14によりプロセスカートリッジが構成される)。
図2に示すように、現像剤貯留容器14bには、トナー粒子26aと水性媒体とを含む液体現像剤24が貯留されている。また、現像ローラ14aはその表面が発泡体32によって形成されている。発泡体32が上記現像剤貯留容器14b内の液体現像剤24に浸漬されて、該発泡体32に液体現像剤24が染み込むことにより、液体現像剤24は現像ローラ14aに保持される。また、現像ローラ14a表面の発泡体32は磁気ドラム10に圧縮されて接触するよう設けられ、圧縮領域Nにて発泡体32に保持された液体現像剤24が染み出して磁気ドラム10の磁気潜像22にトナー像が現像される。更に、発泡体32が圧縮から開放される箇所では、液体現像剤24中の溶媒および非画像部に付着したトナーを回収する。
【0038】
また、磁気ドラム10と現像ローラ14aとは、それぞれ図1にて矢印Aおよび矢印Bで示すごとく、逆方向に回転させる。現像ローラ14aは磁気ドラム10に対して鉛直方向下方(図1においては下方向)に設けられる。更に、現像ローラ14aの、液体現像剤24と浸漬する領域の下流側(矢印A方向下流側)には、現像ローラ14aの回転によって、発泡体32から飛散する液滴の飛び散りを抑制する遮蔽部材34が設けられている。
【0039】
ここで、上記発泡体32について説明する。発泡体32とは、細孔を有し毛管現象によって液体を吸液しうる部材をさす。
発泡体32の具体例としては、スポンジ、不織布等が挙げられる。
【0040】
本実施例に用いられる発泡体32の保水率は、後述の発泡体32の食い込み量によっても異なるが、900%より大きいことが望ましく、950%以上であることがより望ましい。
尚、上記保水率は以下の方法により測定される。
まず、20mm×20mm×20mmのサイズに加工した乾燥状態の発泡体32を用意し、質量を電子天秤等によって測定する。次に乾燥状態の発泡体32に純水を供給し吸収が飽和した状態での質量を測定する。そこで得られた質量から乾燥状態での発泡体32の質量を減ずることで発泡体32に吸収された純水の質量を求める。最後に、発泡体32に吸収された純水の質量を乾燥状態の発泡体32の質量で除することにより保水率の算出を行った。これらの測定を3回行い、その平均を最終的な保水率として採用した。また保水率の標準偏差も併せて計算を行い、保水率の評価項目とした。
本明細書に記載の保水率は上記方法によって測定したものである。
【0041】
また、発泡体32の細孔の径は以下の方法により測定される。
まず、研磨機等を使用して細孔の形状を保ち、かつ断面が平面である状態の発泡体32を作製する。前記断面を光学顕微鏡などを用いて拡大観察し、観察範囲にある100個の細孔の径を計測する。計測し得られた細孔の径の平均値を発泡体32の細孔の径とした。尚、細孔の径は、100個の細孔の径を測定する前に決定した一方向での最大長さとした。
本明細書に記載の細孔の径は上記の方法によって測定したものである。
【0042】
また、発泡体32の硬度は以下の方法により測定される。
100mm以上の厚さの発泡体32に対してアスカーC硬度計を用いて測定を行い、発泡体32の異なる3点について得られた値の平均値を発泡体32の硬度として採用した。
本明細書に記載の硬度は上記の方法によって測定したものである。
【0043】
発泡体32が圧縮領域Nにおいて食い込む量(食い込み量)は、前述の発泡体32の保水率と現像ローラ14aの外径によっても異なるが、現像ローラ14aの外径を25mmの場合を例とすると0.1mm以上10mm以下であることが望ましく、0.5mm以上8mm以下であることがより望ましく、1mm以上5mm以下であることが特に望ましい。
【0044】
尚、本実施形態においては、現像ローラ14aの表面を発泡体32にて形成した例を示したが、液体を吸収する性質を有する吸液性部材であれば特に制限なく用いられる。該吸液性部材としては、例えば、布部材(具体的にはフェルト)等が挙げられる。
【0045】
(転写手段、定着手段)
現像装置14で顕像化されたトナー像は、転写手段によって用紙30に転写される。前述のように、本実施形態では磁気ドラム10から直接用紙上にトナー像を転写するのではなく、中間転写体16に一旦転写した後、用紙30に転写定着する方式を用いている。まず、中間転写体16への転写について説明する。
【0046】
中間転写体16は、磁気ドラム10に接触してトナー像を転写する。転写方式としては、一般に静電転写方式、圧力転写方式、これらを併用した静電圧力方式などがあるが、前記のように、本実施形態ではトナー粒子が電荷を有していないため、静電転写方式や静電圧力方式は使用されない。一方、前記圧力転写方式は、通常は磁気ドラム10および転写媒体間の圧力により、トナー像を塑性変形させながら転写媒体の表面に付着させ転写するものであり、シアリング転写と併用されてもよい。
【0047】
本実施形態では、前記のように磁気ドラム10上のトナー像26に対して、磁気ドラム10との磁気力以上の吸着力により中間転写体上にトナー像26を移行させるため、中間転写体16に粘着性を持たせて粘着転写を行うことが好適である。このため、中間転写体16の表面には例えば低硬度シリコーンゴム層を形成することが望ましい。
【0048】
次いで、中間転写体16に転写されたトナー像26は用紙に転写される。
図1における中間転写体16を挟んで磁気ドラム10の反対側には、転写定着ローラ28が中間転写体16に対して接触領域を形成するように配置されており、中間転写体16上のトナー像26にタイミングを合わせて、用紙30が中間転写体16および転写定着ローラ28間の接触領域へ送給される。転写定着ローラ28は、例えば、ステンレス基体、シリコーンゴム層、フッ素ゴム層により構成されており、接触領域を通過する用紙30に中間転写体16と転写定着ローラ28とで圧力をかけて挟持することにより、中間転写体16上のトナー像が用紙30に転写される。
【0049】
本実施形態では、上記中間転写体16から用紙30にトナー像26が転写されると共に、該トナー像26が用紙30に定着される構成となっている。具体的には、中間転写体16が図1に示すようにローラ形状であれば、転写定着ローラ28とローラ対を構成するため、中間転写体16、転写定着ローラ28が各々定着装置における定着ローラ、加圧ローラに準じた構成となって定着機能を発揮させてもよい。すなわち、用紙30が前記接触領域を通過する際、トナー像が転写されると同時に転写定着ローラ28により中間転写体16に対して加圧され、これにより、トナー像を構成するトナー粒子が軟化すると共に用紙30の繊維中に浸潤する。
【0050】
この状態でも、用いるトナー粒子によっては用紙30へ固定し得るが、定着が十分でない場合には、転写定着ローラ28等により加熱することでトナー像は溶融し用紙30の繊維の中まで入り込み固着して定着像29となる。
【0051】
なお、本実施形態では用紙30への転写と共に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。この場合には、磁気ドラム10からトナー像を転写する転写ローラが、前記中間転写体16に準じた機能を有することとなる。
【0052】
(クリーナ)
一方、前記磁気ドラム10から中間転写体16へのトナー像の転写効率が100%に至らない場合には、転写後の磁気ドラム10上にトナー像26の一部分が残留することになる。これを除去するのがクリーナ18であり、基本的に、ゴムなどのクリーニングブレードと残留磁性トナーの容器とから構成される。
なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設ける必要がない。
【0053】
(消磁手段)
再度新しい画像形成を行なう場合には、磁気ヘッド12で磁気潜像を形成する前に磁気潜像を消去する必要がある。消磁装置20には、永久磁石式と電磁石式との2通りがある。永久磁石式の場合には、磁気ドラム10の円周方向に磁化して局所的に磁束が漏洩しないようにするもので、電力等のエネルギーが不要で安価である。ただし、磁気潜像を消去しない場合には、消磁装置20を磁気ドラム10に対して移動させ磁気的な距離を大きくして消去磁界を弱くする必要がある。これに対して電磁石式は、ヨークとコイルとから成り電流を流す必要があるが、磁気潜像を消去する必要がない場合には電流を切ることにより消去磁界がゼロになるため制御が比較的自由である。
本実施形態では、前記永久磁石式および電磁石式のいずれも用いられる。
【0054】
(液体現像剤)
次に、上記構成の画像形成装置100に用いられる液体現像剤24について説明する。
本実施形態に用いる液体現像剤24は、水性媒体中に磁性トナー26aを分散させて構成される。また、前記磁性トナー26aとしては、一般的に高分子化合物中に磁性粉を含む磁性重合体粒子を用いる。なお、上記磁性重合体粒子とは、磁性粉が重合体中に分散されてなる磁性粉分散粒子で構成されるものである。
【0055】
−高分子化合物−
高分子化合物としては従来から磁気記録装置に使用されている樹脂が使用される。具体的には、スチレンおよびその置換体の単独重合体およびそれらの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルと他のビニル系モノマーとの多元共重合体樹脂、スチレンと他のビニル系モノマーとのスチレン系共重合体樹脂、および上記各樹脂の一部を架橋したものが使用される。更にはポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、石油樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ワックス系樹脂等の単体またはこれらの混合体などが挙げられる。
【0056】
前記のように、磁性トナー26aとしての前記磁性重合体粒子は水性媒体中に分散されるが、磁性重合体粒子を水性媒体中に偏りなく分散させることは、高分子化合物が疎水性であること、磁性重合体粒子表面が通常の高分子粒子とは異なる特性を有していることから、通常の重合体粒子の構成では容易になし得ない場合がある。
本実施形態では、上記観点から、特に以下のように重合体を構成する単量体種や組成を制御して得られた高分子化合物を用いることにより、磁性重合体粒子の水性媒体に対する分散性が得られ、前記磁気潜像保持体に対してより優れた現像性等が発揮される。以下、本実施形態に好適に用いられる高分子化合物の構成について説明する。
【0057】
前記高分子化合物としては、エチレン性不飽和単量体の重合体を含み、該エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体および疎水性単量体を含み、かつ、前記重合体の水酸基量が0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下であるものを用いることが望ましい。
【0058】
本実施形態における液体現像剤24は、前記のように磁性トナー粒子(磁性重合体粒子)を水性媒体中に分散させて構成される。したがって、磁性トナー粒子として、一定以上の磁力を保持しつつ水性媒体中への分散性を得るためには、粒子表面に水酸基を存在させることが有効である。そして、このためには粒子を構成する重合体の構成成分が水酸基を有していることが望ましい。
本実施形態における高分子化合物として好適に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合体は、水酸基を有する親水性単量体および疎水性単量体の共重合比により、水性媒体における分散性と重合体粒子の安定性との視点、さらには、重合体粒子に一定量含まれる磁性粉の含有量との関係から、重合体の水酸基量を最適の範囲としている。
【0059】
前記水酸基量は、磁性粉の含有量によって異なるので、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量として定義されるものであり、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下であることが望ましく、0.2mmol/g以上4.0mmol/g以下であることがより望ましく、0.3mmol/g以上3.0mmol/g以下であることがさらに好適である。
【0060】
なお上記水酸基量は、一般的な滴定法により求められる。例えば、上記ポリマーに無水酢酸のピリジン溶液等の試薬を一定量加え、加熱して、水を加えて加水分解し、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、該上澄みをフェノールフタレイン等の指示薬を用いて、エタノール性水酸化カリウム溶液等で滴定することにより、その水酸基量が求められる。
【0061】
前記エチレン性不飽和単量体とは、ビニル基などのエチレン性不飽和基を有する単量体をいう。そして、下記親水性単量体および疎水性単量体ともに本実施形態におけるエチレン性不飽和単量体に含まれる。
上記水酸基を有する親水性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
尚ここで、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを表す表現であり、以下においてこれに準ずる。
これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一つを用いることが望ましい。
【0062】
また、本実施形態の磁性重合体粒子は重合体中に水酸基に加えてカルボキシル基を有していることが望ましい。この場合には、エチレン性不飽和単量体として、さらにカルボキシル基を有する単量体を用いることが望ましい。
本実施形態で用いるカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノヘキサヒドロフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノマレエートおよびメタクリロイルオキシエチルモノスクシネートなどが挙げられる。
これらの中では、メタクリロイルオキシエチルモノフタレートを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合体粒子中の磁性粉の分散、重合反応の制御性等の観点から望ましい。
【0063】
前記疎水性のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;炭素数1〜18(より好適には、2〜16)のアルキル基若しくはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等);炭素数1〜12(より好適には、2〜10)のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エキトシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アリクレート、n−ブトキシメチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等);アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等);アクリロニトリル、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0064】
これらの中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが望ましく、更には、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に望ましい。
【0065】
前記親水性単量体と共重合し得る疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、1質量%以上99質量%以下であることが望ましく、5質量%以上95質量%以下であるこことがより望ましい。特に、エチレン性不飽和単量体として前記水酸基を有する単量体に加えてメタクリロオキシエチルモノフタレートなどのカルボキシル基を有する単量体を用いる場合には、疎水性単量体の含有量は、全単量体成分中、20質量%以上99質量%以下であることが望ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好適である。
【0066】
その他の単量体としては、後述する水性媒体に分散される反応性の混合物(前記エチレン性不飽和単量体等を含むもの)には、必要に応じて架橋剤が混合される。単量体混合液中に架橋剤を添加することにより、重合中の凝集が抑制され、分散安定性が確保される。
用いる架橋剤としては、公知の架橋剤が選択して用いられ、好適なものとしては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより望ましく、更には、ジビニルベンゼンが特に好適である。
【0067】
さらに、本実施形態における高分子化合物には定着性向上の観点から非架橋樹脂を含有させてもよい。非架橋樹脂としては、熱、紫外線、電子線等の外部エネルギー、あるいは溶剤蒸気、重合体からの溶剤揮発等で紙、フィルム等の被定着媒体に粒子を定着させる重合体であれば特に制限されない。
具体的には、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;などの単独重合体または共重合体が例示される。
【0068】
−磁性粉−
一方磁性粉としては、磁性を示すMO・FeまたはM・Feの一般式で表されるマグネタイト、フェライト等が望ましく用いられる。ここで、Mは2価あるいは1価の金属イオン(Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Li等)であり、Mとしては単独あるいは複数の金属が用いられる。例えばマグネタイト、γ酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトの如き鉄系酸化物が挙げられる。中でもマグネタイトがより望ましく用いられる。
【0069】
また、他の金属酸化物として、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb等の金属を単独あるいは複数用いた非磁性の金属酸化物および上記磁性を示す金属酸化物が使用される。例えば非磁性の金属酸化物として、Al、SiO、CaO、TiO、V、CrO、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y、ZrO系等が使用される。
【0070】
後述する疎水化処理前の磁性粉の平均一次粒子径は、0.02μm以上2.0μm以下の範囲であることが望ましい。
【0071】
前記磁性粉はその表面が疎水化処理されていることが望ましい。疎水化処理の方法としては特に制限されず、各種カップリング剤、シリコーンオイル、樹脂などの疎水化剤を磁性粉の表面に被覆処理すること等により行われるが、これらの中ではカップリング剤により表面被覆処理することが望ましい。
【0072】
磁性粉の含有量としては、求める磁力によって決定されるのであるが、本実施形態においては、磁性重合体粒子構成成分の総量に対して2質量%以上50質量%以下とすることが望ましく、4質量%以上30質量%以下とすることがより好適である。
【0073】
−その他の成分−
本実施形態の磁性重合体粒子には、更にポリマーの着色を目的とした染料、有機顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどを含有させ得る。その場合には磁性粉が分散された前記単量体等の混合物に前記各添加剤を直接混合させてもよく、例えば、特に有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を混合する場合は、例えば前記非架橋樹脂にあらかじめロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の公知の方法で混合分散し、これを前記重合性単量体等の混合物に混合することが望ましい。
【0074】
以上の各単量体等を含む磁性重合体粒子の作製方法としては、例えば、まず前記エチレン性不飽和単量体、重合開始剤およびその他の必要な成分とを混合して単量体等の混合液を作製する。混合の方法は特に制限されない。
また、上記混合液への磁性粉の分散には公知の方法が適用される。すなわち、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用される。なお、あらかじめ単量体成分を別途重合し、得られた重合体に磁性粉を分散させる場合には、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等の混練機が使用される。
【0075】
本実施形態に好適に用いられる磁性重合体粒子を得るには、公知の方法が利用され、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、シード重合法等が好適に用いられる。さらに、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁重合してもよい。
このようにして得られた磁性重合体粒子は、個数平均粒径が0.1μm以上20μm以下であることが望ましく、1.0μm以上8.0μm以下であることがより望ましい。
【0076】
また、前記高分子化合物がカルボキシル基を有する場合には、カルボキシル基量が0.005mmol/g以上0.5mmol/g以下であることが望ましい。カルボキシル基量は、0.008mmol/g以上0.3mmol/g以下がより望ましく、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下であることがさらに好適である。
【0077】
上記カルボキシル基量は一般的な滴定法により求められる。例えば、上記高分子化合物に水酸化カリウムのエタノール溶液等の試薬を加えて中和反応を行い、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、過剰の水酸化カリウムが含まれる該上澄みを自動滴定装置を用いて、イソプロパノール塩酸溶液等で滴定することにより、そのカルボキシル基量が求められる。
【0078】
本実施形態における液体現像剤は、前記の磁性重合体粒子を水などの水性媒体中に分散させた粒子分散体である。
水性媒体としては、水、若しくは水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を加えたものが好適に用いられる。この中でも水単独が特に好ましい。水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、懸濁させる単量体の性状にもよるが、全溶媒に対し30質量%以下が望ましく、10質量%以下がより好適である。
【0079】
液体現像剤の製造に当たっては、通常の水系の粒子分散体に使用される各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降抑制剤、帯電制御剤、帯電抑制剤、老化抑制剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着抑制剤、離型剤等を併用してもよい。
具体的に、上記界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等、いずれの公知の界面活性剤も使用される。また、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント;等も挙げられる。
【0080】
前記分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体であれば有効に用いられる。例えば、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられ、これら共重合体は、ランダム、ブロックおよびグラフト共重合体等いずれの構造であってもよい。
【0081】
また、本実施形態において、蒸発性制御や界面特性制御の目的で、水溶性有機溶媒が使用される。水溶性有機溶媒としては、水に添加したときに2相に分離しない有機溶剤であって、例えば一価もしくは多価のアルコール類、含窒素溶媒、含硫黄溶媒、その他その誘導体等が挙げられる。
さらに、水性媒体に導電率、インクのpHの調整等を目的として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等が添加される。
【0082】
また、その他に、必要に応じて、防カビ、防腐、防錆等を目的として安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸等を添加してもよい。また、酸化抑制剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、キレート化剤等も添加してもよい。
【0083】
本実施形態において、液体現像剤における磁性重合体粒子の分散粒子径は、平均粒子径で0.1μm以上20μm以下とすることが望ましく、1μm以上8μm以下の範囲とすることが望ましい。なお、上記磁性重合体粒子の分散平均粒子径は、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株))により求めた体積平均粒径である。
【0084】
前記液体現像剤の製造は、以下の手順により行われるが、これに限られるものではない。
まず、主溶媒の水と前記各添加剤とを含む分散媒をマグネチックスターラー等を用いて調製し、これに前記磁性重合体粒子を分散させる。分散には公知の方法が適用される。すなわち、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用される。また、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散する方法、超音波によって分散する方法等が挙げられる。
【0085】
液中で磁性重合体粒子同士が単独の分散状態になったことを分取した分散液の顕微鏡観察等により確認し、その後、防腐剤等の添加物を加えて溶解していることを確認した後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミおよび粗大粒子を除去することにより画像形成用記録液としての液体現像剤24が得られる。
【0086】
本実施形態における液体現像剤24の粘度は、用いる画像形成システムにもよるが、1mPa・s以上500mPa・s以下が望ましい。
【0087】
<試験例>
上記実施形態の作用を確認するため、以下の試験を行った。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0088】
[試験例1]
(磁性重合体粒子の作製)
磁性粉MTS−010(戸田工業(株)製)600部に、スチレンアクリル樹脂(エスレックP−SE−0020、積水化学(株)製)400部を加え、加圧ニーダーで混練して、表面が樹脂被覆処理された磁性粉(磁性粉含有率:60%)を得た。
【0089】
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)17部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)57部、およびジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、これに前記表面処理磁性粉40部を加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)5部を加えて、単量体および磁性粉を含む混合物を作製した。
【0090】
塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、ルミナス)30部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。
この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.5μmであった。
【0091】
一方、攪拌機、温度計、冷却管および窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認されなかった。
反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1Lのイオン交換水で洗浄後、500mlのエタノール中に30分間超音波分散と遠心分離を3回繰り返して洗浄を行い、磁性重合体粒子を得た。
【0092】
この磁性重合体粒子を60℃のオーブンで乾燥し、孔径5μmのメッシュを通して粗大粒子を分離した後、個数平均粒子径を測定したところ、2.7μmであった。
また、熱重量分析(TGA)による、加熱による重量減少量から粒子中の磁性粉含有量を算出したところ、15%であった。
【0093】
また、磁性重合体粒子の水酸基量は0.6mmol/gであった。この水酸基量の測定は、以下のようにして行った。
まず、重合体粒子を秤量してキャップ付き試験管に入れ、あらかじめ調製した無水酢酸(和光純薬(株)製)のピリジン(和光純薬(株)製)溶液を一定量加え、95℃の温度条件で24時間加熱した。更に、蒸留水を加えて試験管中の無水酢酸を加水分解させた後、3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みに分けた。ポリマーを更にエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にフェノールフタレイン(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0094】
ポリマーを用いないブランク実験も行い、その差分から下式(1)に従って水酸基量(mmol/g)を算出した。
水酸基量=((B−C)×0.1×f)/(w−(w×D/100)) : 式(1)
上記式(1)中、Bはブランク実験での滴下量(ml)、Cはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、wは粒子の重量(g)、Dは粒子中の磁性粉含有率(%)である。
【0095】
(液体現像剤の作製)
ポリビニルアルコール(PVA、クラレ(株)製、クラレポバール217、重合度:1700、けん化度:88モル%)5部を冷却したイオン交換水95部に加え、マグネチックスターラーで攪拌しながら分散した後、さらにウォーターバスで70℃に加熱ながら3時間攪拌溶解して、PVA水溶液(5%溶液)を調製した。
【0096】
・磁性重合体粒子:5部
・PVA水溶液:10部
・ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(和光純薬(株)製):0.5部
・イオン交換水:84.5部
以上の成分を混合し、ボールミルで3時間分散し、前記磁性重合体粒子を磁性トナーとした液体現像剤とした。この液体現像剤を0.1ml採取し、測定液アイソトン(ベックマン・コールター(株)製)100mlに分散し、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株)製)を用いて体積平均粒子径(分散平均粒子径)を測定したところ、3.0μmであった。
【0097】
(画像形成)
図1に示した構成の画像形成装置100を用意し、現像剤として前記液体現像剤を用いた。
磁気ドラム10としては、アルミドラム上に、下地層としてNi−Pを膜厚15μm、磁気記録層としてCo−Ni−Pを膜厚0.8μmとなるようにメッキし、さらにその表面に、Ni−P−PTFE粒子によるフッ素潤滑メッキを行い膜厚1.5μmの保護層を形成した。なお、前記磁気記録層の保持力は400Oe、残留磁束密度は7000Gであった。
この磁気ドラム10表面に対する、25℃、50%RHにおける純水の接触角は110度であった。
【0098】
磁気ヘッド12としては、Mn−Znフェライトからなる600dpi(1インチ当たりのドット数)相当の画素を形成できる4チャネルのフルライン型磁気ヘッドを用意した。
【0099】
現像ローラ14aとしては、表面を発泡体32として「アイオン社製、商品名:ベルイータ」にて形成したローラを用いた。尚、前記発泡体32の保水率は1000%、細孔の径は180μm、硬度は2、接触角は0.1度であった。
現像剤貯留容器14bに内部で液体現像剤を攪拌する攪拌羽を設け、この現像剤貯留容器14bに前記液体現像剤を投入した。上記現像ローラ14aを、その一部が図1に示すごとく液体現像剤24に浸漬するように配置し、且つ現像ローラ14a表面の発泡体32が前記磁気ドラム10に圧縮されて接触する、圧縮領域が形成されるように配置した。尚、発泡体32の食い込み量は1mmであった。
【0100】
中間転写体16としては、表面に厚さが7.5mmのシリコーンゴム層を有し、磁気ドラム10と同一周速で回転するアルミニウム製の中間転写ドラムを用いた。また、転写定着ローラ28としては、ステンレス製の芯材の外周にシリコーンゴム層、フッ素ゴム層をこの順に被覆してなる弾性ロールを用い、さらにこの弾性ロールは発熱体により表面温度が170℃となるように加熱される構成とした。
【0101】
以上の構成の画像形成装置100により印字条件を下記のように設定した。
・磁気ドラム線速:100mm/秒。
・現像ローラ周速:100mm/秒。
・転写条件(中間転写):中間転写体の磁気ドラムへの加圧力を0.147MPa(1.5kgf/cm)に設定。
・転写定着条件:中間転写体に対する転写定着ローラの加圧力を0.245MPa(2.5kgf/cm)に設定。
【0102】
以上の条件により、磁気ヘッド12により磁気ドラム10上に30μm/本の縞模様の磁気潜像(ハーフトーン相当)を形成し、これに前記現像ローラにより液体現像剤を接触させて現像を行った。
現像後の磁気ドラム10上でトナー像26が形成されていない部分には液体現像剤24中の水はほとんど付着しておらず、その結果、中間転写ドラム16上や定着後の用紙30上にも液体の付着はなかった。
【0103】
評価として、現像後の磁気ドラム10表面の残留溶媒量(膜厚)を以下の方法により測定した。結果を図3に示す。
磁気ドラム10上の軸方向両端部及び中央部の3点でのトナー像26が形成されていない部分に付着している水分の膜厚をレーザー変位計(キーエンス社製、商品名:LK−G30)を使用して測定し、それらの平均値を残留溶媒量とした。
【0104】
[試験例2]
試験例1において用いた発泡体32を、下記表1に示す保水率、細孔の径、硬度を有する発泡体に変更した以外は、試験例1に示すとおり画像形成を行い、評価した。
尚、試験例2において用いた発泡体はイノアック社製、商品名:SAQ(接触角0.1度)である。
【0105】
【表1】



【0106】
図3に、試験例1および2における保水率と残存溶媒膜厚の関係を示す。尚、図中にプロットされた○は試験例1における保水率の平均値、△は試験例2における保水率の平均値であり、また上記○および△から伸びる線の範囲は標準偏差である。
残存溶媒量が0.5μmである試験例1では、現像像の中間体転写不良の発生がより効果的に抑制され、画質劣化が好適に防止される。試験例2に示すごとく、保水率平均値は850%で残存溶媒量が2μmとなったが、標準偏差を考慮すると、保水率の平均値が900%より大きいことにより画質劣化はより好適に抑制される。よって、保水率は、900%より大きいことがより望ましく、さらに950%以上であることが特に望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例における現像領域の拡大模式図である。
【図3】試験例1および2における保水率と残存溶媒膜厚の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0108】
10 磁気ドラム(磁気潜像保持体)
12 磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)
14 現像装置(現像剤供給手段)
14a 現像ローラ
14b 現像剤貯留容器(現像剤貯留手段)
15 攪拌部材
16 中間転写体
18 クリーナ
20 消磁装置(消磁手段)
22 磁気潜像
24 液体現像剤
26 トナー像
28 転写定着ローラ(転写手段)
29 定着像
30 用紙(記録媒体)
32 発泡体
34 遮蔽部材
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像保持体と、
前記潜像保持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、
トナーおよび水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
表面が吸液性の部材によって形成され、該吸液性の部材が前記現像剤貯留手段内の液体現像剤に浸漬されると共に、前記吸液性の部材が前記潜像保持体に圧縮されて接触するよう配置され、前記液体現像剤を前記潜像保持体に供給して前記潜像をトナー像として顕像化する現像剤供給部材と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、
前記潜像保持体の表面の撥水性が、前記現像剤供給部材の表面の撥水性より高いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吸液性の部材の保水率が900%より大きいことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像剤供給部材が回転し、該回転によって前記吸液性の部材から飛散する液滴を遮蔽する遮蔽部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像剤供給部材が前記潜像保持体に対して鉛直方向下方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
潜像保持体と、
トナーおよび水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
表面が吸液性の部材によって形成され、該吸液性の部材が前記現像剤貯留手段内の液体現像剤に浸漬されると共に、前記吸液性の部材が前記潜像保持体に圧縮されて接触するよう配置され、前記液体現像剤を前記潜像保持体に供給する現像剤供給部材と、を有し、
前記潜像保持体の表面の撥水性が、前記現像剤供給部材の表面の撥水性より高いことを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−237261(P2009−237261A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83110(P2008−83110)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】