説明

画像形成装置および方法

【課題】ハーフトーン画像に基づいてトナー消費量を予測する技術において、ドットパターンの違いだけでなく画像形成装置の出力濃度階調特性の違いを考慮することによりさらなる高精度化を実現する。
【解決手段】色材をプリント媒体上に付着させることで画像を形成する画像形成装置または方法において、画像形成装置の出力濃度階調特性を測定する手段と、ハーフトーン画像のドットパターンと出力濃度階調特性に基づいて、色材の消費量を算出する色材消費量算出手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された画像信号に基づいて色材をプリント媒体に付着させる画像形成装置において、消費される色材の量を画像信号から予測するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式をとる画像形成装置では、与えられた画像信号に基づいてトナーを紙媒体上に現像・定着させることで画像を形成する。この電子写真方式の現像材としては一般にトナー粒子とキャリア粒子(磁性体粒子)を主成分とした二成分現像材がよく用いられている。画像を形成することにより現像器内のトナー粒子だけが消費され、キャリア粒子に対するトナー粒子の濃度が低下していく。画質を維持するためには、上記トナー濃度が一定である必要があり、そのためトナー粒子の減少量に応じて随時トナー粒子を現像器に補給する必要がある。
【0003】
減少したトナー粒子の量を測定する手段としては、透磁率センサなどがよく用いられている。この透磁率センサは、トナー粒子が減少すると透磁率が大きくなる性質を利用して、この透磁率の変化を検知することでトナー粒子の減少を検知する。しかしながら、この透磁率センサは高価であるために、透磁率センサを用いずに減少したトナー量を算出する手段が開発されてきた。
【0004】
その一例として、電子写真装置に供給された画像の多値信号からその画像のトナー消費量を予測するという技術がある。予め多値の画素信号とトナー消費量との関係を調べておき、その関係を用いて各画素のトナー消費量の総和をとることによって、画像信号全体のトナー消費量を算出することができる。ただし、この技術では多値の画像信号を必要とするため、紙媒体上でのトナー粒子のドット分布を表すハーフトーン画像信号が電子写真装置に直接供給された場合には対応できないという問題があった。ハーフトーン画像信号が直接供給されるケースとしては、ホストコンピュータで作成したハーフトーン画像信号を受信した場合や、FAXなどの1bitデータを受信した場合、地紋データを生成した場合などが挙げられる。
【0005】
上記課題に対処するため、ハーフトーン画像信号からトナー消費量を予測するという技術が提案されている。例えば隣接ドットの数に応じて注目ドットのトナー量を算出する技術が特許文献1で開示されている。周囲のドットを考慮しているのは、連続ドットと孤立ドットとでは1ドットあたりの露光量が異なること(図19参照)、周囲の静電潜像によって注目ドットの静電電荷量が変化すること(図20参照)、が理由である。特許文献1で開示されている技術のように周囲のドットパターンによるトナー消費量への影響を考慮することで、精度の高いトナー消費量予測を可能としている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−189731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記手法のようにドットパターンを加味するだけではエンジンの出力濃度階調特性の変化に対応できないという課題があった。
【0008】
例えば、経時変化によって電子写真装置の出力濃度階調特性が低下すると、同じパターンのハーフトーン画像信号を入力した場合に得られる印刷物はトナー濃度が経時変化前より低下している。これは即ちトナー消費量が低下したことを意味している(図4参照)。それにも拘らず経時変化前と同じ量のトナーを現像器に補給すると、いずれは現像器よりトナーが溢れるという事態を招いてしまう。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ハーフトーン画像に基づいてトナー消費量を予測する技術において、ドットパターンの違いだけでなく画像形成装置の出力濃度階調特性の違いを考慮することによりさらなる高精度化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、色材をプリント媒体上に付着させることで画像を形成する画像形成装置または方法において、画像形成装置の出力濃度階調特性を測定する手段と、ハーフトーン画像のドットパターンと出力濃度階調特性に基づいて、色材の消費量を算出する色材消費量算出手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、色材消費算出手段として、さらに多値の濃度画像にも基づいて色材の消費量を算出すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、ハーフトーン画像に対してドットパターンの違いだけでなく出力濃度階調特性の変動を加味することができる。よって画像形成装置の固体差や環境変化、経時変化に影響されることなく常に高精度にトナー消費量を算出することが可能となる。
【0013】
また、本発明によって、デバイスの最新の出力濃度階調特性を表す階調補正テーブルさえあればドットパターンの種類に応じてトナー消費量を更新することができる。ユーザにとって新たな手続きは発生せずユーザビリティの悪化を抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明によって、ドットパターンの種類に応じてトナー消費量を更新するために、専用のチャートを出力する必要がないため、紙媒体消費量の増加を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
<第一の実施形態>
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置と画像供給装置との通信関係を概略的に示す図である。画像形成装置101は、ネットワーク伝送路やUSBケーブル等を表すデータ伝送路102を介して各種画像供給装置と繋がっている。画像供給装置として、ホストコンピュータ103、CCDラインスキャナで代表される画像読取装置104、ファクシミリ105、デジカメやフラッシュ等の画像記憶媒体106を図1に挙げている。
【0016】
ホストコンピュータ103では、ユーザがアプリケーションを用いて作成した印刷データをプリンタドライバが印刷コマンドに変換し、画像形成装置101に送信する。また、画像読取装置104やファクシミリ105、デジタルカメラ・フラッシュメモリ106は、取得した画像データを画像形成装置101に送信する。画像読取装置104やファクシミリ105は、画像形成装置101に備え付けの構成でも構わない。
【0017】
図2は、画像形成装置101のシステム構成を示すブロック図である。
【0018】
画像形成装置101は、メインコントローラ201とデバイスコントローラ211とエンジン部301より構成される。
【0019】
メインコントローラ201は、画像供給装置より供給された画像を受信し、画像処理を行いトナーの潜像画像であるハーフトーン画像を出力する。メインコントローラ201は、データ伝送バス202を介して、表示部203、操作部204、外部インタフェース205、CPU206、ROM207、RAM208、外部記憶装置209、デバイスインタフェース210が接続された形で構成される。ユーザは、表示部203に表示された操作画面を見ながら操作部204を使用して画像形成装置に動作の指示を行う。
【0020】
図1のホストコンピュータ103、画像読取装置104、ファクシミリ105、デジカメやフラッシュ等の画像記憶媒体106から送られたデータは、外部インタフェース205が受信する。操作部204から動作の指示または外部インタフェース205がデータを受信すると、CPU206は、ROM207に書かれたプログラムに従って上記コマンドまたはデータを解釈する。データのスプールが必要な場合は、CPU206は、RAM208や外部記憶装置209を使いながら画像処理を行い、ハーフトーン画像信号を生成する。また、CPU206は、トナー消費量(色材消費量)も算出する。そのハーフトーン画像信号およびトナー消費量情報は、デバイスインタフェース210を経由してデバイスコントローラ211に伝送される。
【0021】
デバイスコントローラ211は、メインコントローラ201からハーフトーン画像信号やトナー消費量情報を受け取り、それに応じてエンジン部301の各装置を動作させる。デバイスコントローラ211は、データ伝送路バス212を介して、デバイスインタフェース212、エンジンドライバ214、CPU215、ROM216、RAM217、ハードウェア回路(H/W回路)218より構成される。メインコントローラ201より出力された印刷データは、デバイスインタフェース213が受信する。CPU215やハードウェア回路218は、受信したデータに対して必要な処理を行い、エンジンドライバ214を介してエンジン部301の各装置を適切なタイミングで動作させる。
【0022】
エンジン部301は、主に、搬送装置302、露光装置303、現像装置304、定着装置305、トナー補給器306を有する。
【0023】
図3は画像形成装置101のエンジン部301の外観構成を表す模式図である。
【0024】
エンジン部301は、搬送装置302、露光装置303、現像装置304、定着装置305より構成される。また、現像装置304は、トナー補給器306、感光体ドラム307、帯電器308、現像器309、転写器310、除電器311より構成される。このエンジン部301の動作について説明する。
【0025】
まず、帯電器308は、帯電させた磁性体を感光体ドラム307に接触させ感光体ドラム307を矢印の方向に回転させることで感光体ドラム307全面に静電電荷を付与する。次に、露光装置303は、レーザを照射して感光体ドラム307上に静電潜像を形成する。そして、現像器309は、キャリアとトナー粒子の二成分現像材を感光体ドラム307上に接触させることで感光体ドラム307上にトナー粒子だけを静電潜像の形状に従って付着させる。そして搬送装置302は、適切なタイミングでプリント媒体を転写器310に搬送する。転写器310は、トナー粒子と逆の電荷をかけることで、プリント媒体上にトナー像を付着させる。そして、定着装置305は、高温・高圧でトナー粒子を定着させることでプリント媒体上に所望の画像を形成する。
【0026】
現像器309は、画質を安定化させるためにトナー粒子とキャリア粒子の混合比率を一定に保つ必要がある。そのために、画像形成に使用したトナー量を後述する方法で求め、その分量のトナーをトナー補給器306から現像器309に補給するプロセスが随時実行される。
【0027】
図4は、メインコントローラ201における信号処理の構成を示すブロック図である。
【0028】
データ取得部401は、印刷コマンドや画像信号を受信すると、そのデータをジョブ管理部403に出力する。ジョブ管理部403は、設定値取得部402より操作画面上のユーザ設定を取得し、受信データの内容とユーザ設定とに応じて処理すべき画像処理を選択する。
【0029】
まずは入力データがPDL(印刷記述言語)コマンドである場合についての動作を記述する。ジョブ管理部403は、PDLコマンドをPDL解析部404に送る。PDL解析部404は、PDLコマンドを解釈し、描画コマンドをレンダリング部405に送る。そしてレンダリング部405は、描画コマンドに基づきビットマップ画像を書き出し、色処理部406にRGB画像を送る。色処理部406は、RGB画像をトナーの濃度画像に変換する。ここで生成される濃度画像は各画素に0〜255の8bit値を取るCMYK画像とする。もちろんそのほかの形式でも良いし、色材の種類もCMYKではなくKのみでも構わない。
【0030】
次に階調補正部407は、濃度画像の濃度階調をエンジンの出力濃度階調特性に応じて補正し、補正された濃度画像をハーフトーン処理部408に送る。ハーフトーン処理部408は、受け取った濃度画像をPDLハーフトーン画像に変換し、画像合成部409に送る。ジョブ管理部403が受信したユーザ設定において地紋印刷が指示されていると、地紋生成部411は、地紋様のハーフトーン画像を生成し画像合成部409に送る。
【0031】
画像合成部409は、上記のPDLハーフトーン画像と上記の地紋ハーフトーン画像を合成して1枚のハーフトーン画像を作成する。また、ジョブ管理部403で受信したデータが画像読取装置で読み取られた画像データなどの画像データの場合、PDL解析とレンダリングは不要であるため、色処理部406の処理から開始される。また、ジョブ管理部403で受信したデータがFAXデータや1bitTiff画像の場合、データは既にハーフトーン化されているため画像合成部409に直接出力される。画像合成部409で生成された最終的なハーフトーン画像はエンジン出力部410に渡され、エンジン出力部410は、トナーが定着されたプリント物を出力する。また、同時にハーフトーン画像がトナー量予測部425にも出力され、トナー量予測部425は、消費されるトナー量を算出する。トナー量予測部425がそのトナー量をトナー補給制御部426に送信すると、消費される量のトナーは、トナー補給器306より現像器309に供給される。
【0032】
ここで、トナー量予測部425において用いられているトナー消費量予測方法の仕組みについて説明する。トナー量予測部425では、ハーフトーン画像の各画素について、隣接ドットのパターンを判定してトナー消費量を算出し、全画素の合計値を求めている。
【0033】
図5はその隣接ドットパターンの種類と各パターンにおける中央画素のトナー消費量を示している。この図では注目画素に対して上下左右の隣接ドットパターン16種類を記載しているが、実際には斜め方向の隣接画素も含めた計256種類を用意した方が、精度が高く好ましい。しかし、説明の都合のため本実施形態では上下左右の隣接ドットパターン16種類を用いた例を説明する。図5にはパターンpi(i=[1〜16])ごとにトナー消費量ti(i=1〜16)が記載されている。これらトナー消費量tiは予め印刷実行前に算出されたものである。このトナー消費量tiを求める手法については後述する。パターンIDとそのトナー消費量の関係はルックアップテーブルの形でパターントナー量記憶部424に記憶されている。
【0034】
次に、トナー量予測部425においてハーフトーン画像からトナー消費量を予測する手順について説明する。
【0035】
図6はトナー量予測部425における処理手順のフローチャートを示している。処理S601にてトナー量予測部425は、トナー量カウンタTonerを0に初期化する。また、処理S602ではトナー量予測部425は、ハーフトーン画像の全画素をループするためのイテレータiを0に初期化する。まず、判定処理S603にてトナー量予測部425は、全画素を走査したかどうかを判定し、未完了の場合は処理S604に進む。処理S604では、トナー量予測部425は、ハーフトーン画像の画素iについて、隣接ドットパターンのIDを判定する。ここでいうハーフトーン画像の例として、図7に示すようにトナーを塗布する画素には1が、トナーを塗布しない画素には0が格納されたものとする。ある注目画素に対して隣接ドットパターンのIDを取得するためには、トナー量予測部425は、図8に示す3×3フィルタを用いて式1の畳み込み計算を行う。
【0036】
【数1】

【0037】
式1の計算結果はパターンのIDを表している。そして処理S605にてトナー量予測部425は、パターントナー量記憶部424内のルックアップテーブルからそのパターンIDのトナー消費量を求め、処理S606にてトナー量カウンタTonerに加算する。S607でイテレータiがインクリメントされ、判定処理S603にループする。処理S604〜S606がハーフトーン画像の全画素について実施されると、処理S603にてトナー量予測部425は、Noと判定して処理S608に移り、トナー量カウンタTonerの値を出力して処理を終了する。トナー量予測部425が上記の処理により算出したトナー消費量をトナー補給制御部426に送信すると、消費される量のトナーがトナー補給器306より現像器309に供給される。
【0038】
次に、隣接ドットパターンとトナー消費量との関係を算出する手順について説明する。隣接ドットパターンごとのトナー消費量はエンジンの出力濃度階調特性の変動に影響されるため、階調補正部407の階調補正テーブルの更新と同時にトナー消費量の更新を行うのが望ましい。
【0039】
図8は、ユーザが階調補正テーブルを更新する命令を操作部204にて実施したときに、その更新処理に付随してドットパターンごとのトナー消費量を測定する手順を示している。
【0040】
まず、処理S801では、設定値取得部402は、ユーザが操作部204で「階調補正テーブルの更新」が選択したことを検知し、ジョブ管理部403に通知する。通知を受けたジョブ管理部403は、パッチ画像生成部421に対してパッチ画像を生成する指令を出す。次に処理S802でパッチ画像生成部421は、図5に示す各ドットパターンを用いてパッチ画像を生成する。このパッチ画像は、濃度測定が可能な大きさの正方形となるように各ドットパターンを二次元状に繰り返し、各正方形を図9のようにレイアウトしたものである。次に、処理S803でパッチ画像生成部421は、パッチ画像をエンジン出力部410に送信すると、パッチ画像がエンジン部より出力される。このとき、同時に階調補正テーブルを更新するためのパッチ画像も別に出力されている。エンジンの出力濃度階調特性とトナー消費量特性を画像形成装置にフィードバックするために、ユーザは各パッチ画像出力物を、画像読取装置104を用いて読み込んで画像形成装置101に送信する。処理S804でデータ取得部401は、画像読取装置104から画像データを取得する。ジョブ管理部403は、階調補正部407内の階調補正テーブルを更新し、次いでパッチ画像を色処理部406と階調補正部407を通して濃度画像に変換し、パターントナー量算出部422にパッチ画像を送信する。パターントナー量算出部422は処理S806から処理811までの処理を実行する。まず処理S806にてパターントナー量算出部422は、繰り返し回数を記憶するための変数iを1で初期化する。次に判定処理S807にてパターントナー量算出部422は、隣接ドットパターンの数だけ繰り返したかどうかを判定し、まだ完了していない場合は処理S808に移る。処理S808でパターントナー量算出部422は、パッチ画像からパターンiのトナー濃度平均値dを算出する。パターントナー量算出部422は、トナー濃度平均値dを算出するために、1cm2に相当する画素数Sを画像読取装置104における読取解像度から計算し、パッチ画像内のドットパターンiの領域からS個の画素数を参照してその濃度平均を取る。次に処理S809においてパターントナー量算出部422は、トナー濃度平均値dに相当するトナー消費量T[g/cm2]を、濃度値トナー量変換テーブル423を参照して取得する。この濃度値トナー量変換テーブル423は、図10で例示するグラフデータを登録しており、目標濃度値(階調補正前の濃度値)0〜255(0〜100%に相当)に対して消費されるトナー量[g/pixel]がわかるようになっている。このグラフデータはトナーの種類が決まれば一意に決まるグラフであり、予め実験的に求めておき濃度値トナー量変換テーブル423に記憶されている。次に、処理S810でパターントナー量算出部422は、パッチ画像内のドットパターンiの領域からS個の画素数を参照して1cm2あたりのパターン数Nを算出する。図9に示すようにパターンは4×4画素ごとに繰り返しているため、Sを16で割った数がNとなる。そして処理S811にてパターントナー量算出部422は、TをNで割ることでパターンiの1つ辺りのトナー消費量tiを求める。処理S812でパターントナー量算出部422は、パターンID=iとトナー消費量tiの関係をパターントナー消費量記憶部424に渡すことで図6のトナー消費量を更新する。処理S813でパターントナー量算出部422は、iをインクリメントした後に判定処理S807に戻り、全てのパターンに対する処理が完了した場合は処理を終了する。
【0041】
以上で説明した第一の実施形態によれば、ハーフトーン画像に対してドットパターンの違いだけでなく出力濃度階調特性の変動を加味している。よって画像形成装置の固体差や環境変化、経時変化に影響されることなく常に高精度にトナー消費量を算出することが可能となる。
【0042】
<第二の実施形態>
次に、第二の実施形態について説明する。
第一の実施形態ではドットパターンごとのトナー消費量を更新するのにパッチ画像をエンジンより出力して濃度を測定するという手順が必要であった。本実施形態では、階調補正テーブルを更新すれば新たにパッチ画像を出力して測定しなくてもトナー消費量を更新することができる仕組みについて説明する。
【0043】
基本的なシステム構成は第一の実施形態と同じであるが、メインコントローラの信号処理構成が異なる。
【0044】
図11は、メインコントローラ201における第二の実施形態の信号処理の構成を示すブロック図である。
【0045】
図4に示した第一の実施形態の構成と異なる点は2つある。第1の異なる点は、階調補正LUT算出部1131、階調補正LUT記憶部1132、ディザマトリックス記憶部1133が追加されたことである。第2の異なる点は、ジョブ管理部1103、パターントナー量算出部1122、パッチ画像生成部1121の処理内容である。これは、第二の実施形態はドットパターンの種類に応じたトナー消費量を算出して更新する仕組みが第一の実施形態と異なるところから来ている。
【0046】
本実施形態では、まず濃度階調パッチ画像をエンジンより出力・測定して濃度階調補正テーブルを更新する。そして、濃度階調補正テーブルとディザマトリックスと濃度トナー量変換テーブルの情報を基に、ドットパターンの種類に応じたトナー消費量を算出して更新する。
【0047】
図12は濃度階調補正テーブルを算出する手順を示す。
【0048】
まず、処理S1201では、設定値取得部1102は、ユーザが操作部204で「階調補正テーブルの更新」を選択したことを検知し、ジョブ管理部1103に通知する。通知を受けたジョブ管理部1103は、パッチ画像生成部1121に対してパッチ画像を生成する指令を出す。次に処理S1202でパッチ画像生成部1121は、図13に示すように濃度値0〜100%を所定の段階数にした入力濃度のパッチ画像を生成する。次に、処理S1203でパッチ画像生成部1121は、パッチ画像をハーフトーン処理部1108に送る。ハーフトーン処理部1108、受け取ったパッチ画像をハーフトーン画像に変換した後、エンジン出力部1110に送信する。これによって、パッチ画像はエンジン部より出力される。エンジンの出力濃度階調特性を画像形成装置にフィードバックするために、ユーザは、パッチ画像出力物を、画像読取装置104を用いて読み込んで画像形成装置101に送信する。処理S1204でデータ取得部1101は、画像読取装置104から画像データを取得する。ジョブ管理部1103は、処理S1205にてパッチ画像を色処理部406と階調補正部407を通して濃度画像に変換し、さらに濃度画像の各濃度領域から実際の濃度値を取得する。処理S1206ではパッチ画像を作成したときの入力濃度と実際の濃度値の関係をテーブルとして作成する。このグラフの具体例を図14に示す。このグラフによると、入力濃度が100%のときは測定値が1.4であるのに対し、例えば入力濃度が50%のときの測定値は半分の0.7より小さい0.4となっている。そのため入力濃度が50%のときに測定値が0.7になるように補正する必要がある。それには、測定値が1.4の半分の0.7となる入力濃度を探索する。グラフより、入力濃度72%がその求める濃度であることがわかる。よって階調補正LUT算出部1131は、入力濃度が50%のときに72%になるよう補正するテーブルを作成する。このようにして作成した濃度階調補正テーブルの例を図15に示す。このグラフより、入力濃度50%の場合に72%に補正されることがわかる。階調補正LUT算出部1131は、以上の手順によって作成した濃度階調補正テーブルを階調補正LUT記憶部1132に格納する。
【0049】
次に、隣接ドットパターンごとのトナー消費量を算出する手順について説明する。
【0050】
図16は、隣接ドットパターンごとのトナー消費量を算出する手順を示す図である。まず、処理S1601にてパターントナー量算出部1122は、パターンの回数だけ繰り返すための変数iを1で初期化する。次に判定処理S1602にてパターントナー量算出部1122は、全パターンの個数と同じ回数だけ繰り返したかどうかを判定する。未完了の場合、パターントナー量算出部1122は、処理S1603〜S1608の処理を実行する。このS1603〜S1608の一連の処理では、未知変数で各ドットパターントナー消費量t1〜t16の関係式を1つ出力する処理である。パターントナー量算出部1122は、これを判定処理S1602のループでドットパターンの数と同じ回数だけ繰り返すことによって、未知変数t1〜t16の関係式を16個生成する。図17はこのループの繰り返し処理を概略的に説明した図である。パターントナー量算出部1122は、濃度6%の低濃度から濃度100%の高濃度までの16段階(0%は含まない)のグラデーション画像を用意し、それぞれに階調補正とディザマトリックスをかけてハーフトーン画像に変換する。各ハーフトーン画像において各パターンの個数を数えることにより式2で表す16元一次方程式が作成される。
【0051】
【数2】

【0052】
この連立方程式を解くと各ドットパターンのトナー消費量tiを求めることができる。
【0053】
図16の説明に戻る。処理S1603ではパターントナー量算出部1122は、ディザマトリックスの定数倍サイズSの濃度d= [i ×100% / パターン数]の画像を生成する。次に処理S1604でその画像のトナー消費量Tを、濃度値トナー量変換テーブル1123を参照して取得する。濃度値トナー量変換テーブル1123には、1画素あたりの目標濃度値とトナー量の変換関係が記憶されている。この変換関係はトナーの種類に依存するためトナーの種類が固定であれば予め実験的に求めておくことができる。次に処理S1605でパターントナー量算出部1122は、画像に対して濃度階調補正とディザマトリックスをかけてハーフトーン画像を生成する。そして処理S1606にてパターントナー量算出部1122は、ハーフトーン画像内における各ドットパターンの個数を数え、処理S1607にて未知変数tiの関係式を出力する。最後に処理S1608にてパターントナー量算出部1122は、変数iをインクリメントして判定処理S1602に戻る。パターントナー量算出部1122は、S1603〜S1608の処理をドットパターンの個数と同じ回数だけ繰り返した後、処理S1609に移る。処理S1609ではパターントナー量算出部1122は、式2のように行列の演算式で関係式を表現した後、処理S1610にて逆行列演算を用いて未知変数tiを求める。パターントナー量算出部1122は、求めた未知変数tiを処理S1611にてパターントナー量記憶部1124に記憶し、処理を終了する。
【0054】
メインコントローラに入力された印刷用画像データのトナー消費量は、第一の実施形態と全く同様の手順を取れば算出することが可能である。
【0055】
以上で説明した第二の実施形態によれば、デバイスの最新の出力濃度特性を表す階調補正テーブルさえあればドットパターンの種類に応じてトナー消費量を更新することができる。ユーザにとって新たな手続きは発生せずユーザビリティの悪化を抑制することが可能となる。また、ドットパターンの種類に応じてトナー消費量を更新するために専用のチャートを出力する必要がないため、紙媒体消費量の増加を抑制することが可能となる。
【0056】
<第三の実施形態>
次に、第三の実施形態について説明する。
【0057】
第一・第二の実施形態ではハーフトーン画像に対してトナー消費量を算出する実施形態を記載したが、第三の実施形態として、従来の多値濃度画像からトナー消費量を求める方式と組み合わせることで消費量算出結果の違いを最小限に抑える実施形態を説明する。
【0058】
図18はメインコントローラ201における第二の実施形態の信号処理の構成を示すブロック図である。
【0059】
図11に示した第一の実施形態の信号処理構成と異なる点は、色処理部1806からトナー量予測部1825に画像データを出力している点、トナー量予測部1825は濃度値トナー量変換テーブル1823を参照している点である。通常、データ取得部1801に入力される画像データは多値階調画像であることが多い。そのため、多くのケースでは色処理部1806を通って従来のように目標濃度値に基づいてトナー量予測が行われる。このとき、目標濃度値からトナー消費量を得るには濃度値トナー量変換テーブル1823を直接参照すれば可能である。一方、データ取得部1801に入力された画像データが1bitのハーフトーン画像である場合はハーフトーン画像を画像合成部1809に送信してトナー量予測部1825にて第一の実施形態と同様のトナー消費量算出を行う。また、設定値取得部1802において地紋などのハーフトーン画像の生成が指示されている場合は、生成された地紋ハーフトーン画像の分だけトナー量予測部1825に出力して第一の実施形態と同様のトナー消費量算出を行う。
【0060】
以上で説明した第三の実施形態によれば、多値濃度画像からトナー消費量を求める従来方式と組み合わせてトナー消費量を算出することができる。これにより、従来のトナー消費量予測との差分を最小限に抑えることが可能となる。
【0061】
<他の実施形態>
前述した実施形態の機能を実現するように前述した実施形態の構成を動作させるプログラムを記録媒体に記憶させ、該記録媒体に記憶されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も上述の実施形態の範疇に含まれる。
【0062】
該記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。また、前述のプログラムが記憶された記録媒体はもちろんそのプログラム自体も上述の実施形態に含まれる。
【0063】
かかる記録媒体としてはたとえばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD―ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。
【0064】
また前述の記録媒体に記憶されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウエア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作し前述の実施形態の動作を実行するものも前述した実施形態の範疇に含まれる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲に限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】画像供給装置と画像形成装置を備えるシステムのブロック図である。
【図2】画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置のエンジン部の構成を示す模式図である。
【図4】第一実施形態のメインコントローラの信号処理に拘わる構成を示すブロック図である。
【図5】隣接ドットパターンと中央画素のトナー消費量を示す図である。
【図6】ハーフトーン画像のトナー消費量を算出する手順を示すフローチャートである。
【図7】ハーフトーン画像の各画素についてパターンを判定する仕組みを示す図である。
【図8】隣接ドットパターンごとのトナー消費量を算出する手順を示すフローチャートである。
【図9】ドットパターンのトナー量を測定する為のパッチ画像を示す図である。
【図10】濃度値トナー量変換テーブルに登録されているグラフデータの例を示す図である。
【図11】第二実施形態のメインコントローラの信号処理に係る構成を示すブロック図である。
【図12】濃度階調補正テーブルを算出する手順を示すフローチャートである。
【図13】濃度階調補正用のパッチ画像図である。
【図14】入力濃度と濃度測定値のグラフの例を示す図である。
【図15】図14のグラフ対する階調補正グラフを示す図である。
【図16】隣接ドットパターンごとのトナー消費量を算出する手順を示すフローチャートである。
【図17】各ドットパターンのトナー消費量tiの関係式を求める手順の説明図である。
【図18】第三実施形態のメインコントローラの信号処理に係る構成を示すブロック図である。
【図19】孤立ドットと連続ドットの露光量の違いの例を示す図である。
【図20】ドット間での静電潜像の影響の例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1102 データ取得部、1102 設定値取得部、1103 ジョブ管理部、1104 PDL解析部、1105 レンダリング部、1106 色処理部、1107 階調補正部、1108 ハーフトーン処理部、1109 画像合成部、1110 エンジン出力部、1111 地紋生成部、1121 パッチ画像生成部、1122 パターントナー量算出部、1123 濃度値トナー量変換テーブル、1124 パターントナー量記憶部、1125 トナー量予測部、1126 トナー補給制御部、1131 階調補正LUT算出部、1132 階調補正LUT記憶部、1133 ディザマトリックス記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材をプリント媒体上に付着させることで画像を形成する画像形成装置において、
前記画像形成装置の出力濃度階調特性を測定する測定手段と、
ハーフトーン画像のドットパターンと前記出力濃度階調特性に基づいて、色材の消費量を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記算出手段は、さらに多値の濃度画像にも基づいて色材の消費量を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記算出手段は、ドットの色材消費量を、隣接ドットパターンを判定して算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記算出手段は、隣接ドットパターンに応じた注目画素の色材消費量を出力濃度階調特性に応じて算出することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記出力濃度階調特性としてドットパターンを繰り返したパッチ画像を画像形成装置から出力して濃度を測定した値を取得することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記出力濃度階調特性として低濃度から高濃度までのグラデーション画像を画像形成装置から出力して濃度階調を測定した値を取得することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
色材をプリント媒体上に付着させることで画像を形成する画像形成方法において、
前記画像形成方法の出力濃度階調特性を測定する測定ステップと、
ハーフトーン画像のドットパターンと前記出力濃度階調特性に基づいて、色材の消費量を算出する算出ステップと、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
前記算出ステップは、さらに多値の濃度画像にも基づいて色材の消費量を算出することを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記算出ステップは、ドットの色材消費量を、隣接ドットパターンを判定して算出することを特徴とする請求項7又は8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記算出ステップは、隣接ドットパターンに応じた注目画素の色材消費量を出力濃度階調特性に応じて算出することを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記算出ステップは、前記出力濃度階調特性としてドットパターンを繰り返したパッチ画像を画像形成方法から出力して濃度を測定した値を取得することを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記算出ステップは、前記出力濃度階調特性として低濃度から高濃度までのグラデーション画像を画像形成方法から出力して濃度階調を測定した値を取得することを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項13】
コンピュータに、請求項7乃至12のいずれかに記載の方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項14】
コンピュータに、請求項7乃至12のいずれかに記載の方法を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−101960(P2010−101960A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270993(P2008−270993)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】