説明

画像形成装置及びそれに用いられるブラシレスモータ

【課題】画像形成装置において、低コストかつ簡素な構成で、ブラシレスモータの鉄粉等の付着による短絡を防止する。
【解決手段】ブラシレスモータ12のプリント回路基板21の回路パターン形成面21aに、絶縁性を有するスポンジ部材40が装着される。スポンジ部材40は、回路パターン形成面21aの全面に亘って装着され、プリント回路基板21の回路の短絡を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙に画像を形成するプリンタ等の画像形成装置及びそれに用いられるブラシレスモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザビームプリンタ等の画像形成装置においては、記録紙に画像を形成する感光体ドラム、及び形成された画像を定着させる定着ローラ等の回転駆動のため、及び記録紙を搬送するために、ブラシレスモータが使用されている。この感光体ドラム及び定着ローラ等の駆動には、比較的大きなトルクが必要とされるため、ブラシレスモータには、強力なマグネットが適用されている。
【0003】
ところが、このような強力なマグネットは、製造工程の都合により画像形成装置の内部に存在する鉄粉等を引き寄せる力が強いため、ブラシレスモータの回路基板に鉄粉等が引き寄せられると、回路が短絡される可能性がある。そこで、回路基板の回路パターン形成面には、絶縁用の樹脂をコーティングする等の対策が施されている。
【0004】
なお、特許文献1には、回路部品がモールド成形保護部材で保護されるモールド型モータが示されている。また、特許文献2には、シリコンが充填されたプラスチックケースではんだ付け部分を絶縁する絶縁構造が示されている。また、特許文献3には、絶縁材から成るケースを有するアクチュエータが示されている。
【特許文献1】特開2003−319615号公報
【特許文献2】実開平5−38950号公報
【特許文献3】特開平6−261562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した絶縁性の樹脂で回路パターン形成面を絶縁する構成にあっては、塗布した樹脂を乾燥させる工程が必要となり、生産性が悪化する。また、特許文献1に示すモータは、部品単価が高く装置のコストアップを招来する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、低コストかつ簡素な構成で、鉄粉等の付着による短絡を防止できるブラシレスモータ及びそれに用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、表面に感光体が塗布された感光体ドラムと、感光体ドラムの表面を均一に帯電させる帯電手段と、感光体の表面にレーザビームを走査させながら照射して潜像を形成する露光手段と、感光体の表面のうち潜像が形成された部分にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段と、感光体ドラムの回転方向の現像手段よりも下流側の所定の転写位置において、感光体ドラムの表面に対向するように設けられ、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を記録紙の上に転写させる転写手段と、トナー像が転写された記録紙に所定の熱及び圧力を与えてトナー像を記録紙上に定着させる定着手段と、装填された記録紙を保持する記録紙保持手段と、記録紙保持手段に保持された記録紙を転写位置に搬送する記録紙搬送機構と、記録紙搬送機構及び感光体ドラムに回転駆動力を付与するブラシレスモータと、ブラシレスモータの回転駆動力を記録紙搬送機構及び感光体ドラムに伝達する駆動伝達機構と、ブラシレスモータの本体部が装着され、該ブラシレスモータを制御する電子部品が実装されるプリント回路基板と、感光体ドラム、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段、記録紙保持手段、記録紙搬送機構、駆動伝達機構及びプリント回路基板を支持する鉄製フレームとを備えた画像形成装置において、ブラシレスモータは、コイルの外側のロータにマグネットが装着されたアウターロータタイプのモータであり、かつ鉄製出力軸及び鉄製軸受けを有し、該鉄製出力軸がプリント回路基板に対して垂直に貫くように配設され、感光体ドラムの回転軸及びブラシレスモータの鉄製出力軸は、水平に配向され、プリント回路基板は、起立姿勢でフレームに搭載され、その回路パターン形成面には、絶縁性を有するスポンジ部材が全面に亘って装着され、これにより、マグネットに吸引された鉄粉がプリント回路基板上に付着するのを防止し、プリント回路基板が構成する回路の短絡を防止するものである。
【0008】
請求項2の発明は、電子部品が実装されたプリント回路基板を備えたブラシレスモータにおいて、プリント回路基板の回路パターン形成面又は部品実装面には、絶縁性を有するスポンジ部材が装着されているものである。
【0009】
請求項3の発明は、記録紙に画像を形成する画像形成手段と、装填された記録紙を保持する記録紙保持手段と、記録紙保持手段に保持された記録紙を画像形成手段に搬送する記録紙搬送機構と、記録紙搬送機構及び感光体ドラムを駆動するブラシレスモータとを備えた画像形成装置において、ブラシレスモータは、請求項2に記載のブラシレスモータであるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、プリント回路基板の回路パターン形成面には、絶縁性を有するスポンジ部材が装着されているので、仮にマグネットの吸引力により鉄粉等がブラシレスモータ側に吸引されたとしても、鉄粉等がプリント回路基板に付着することはなく、安価かつ簡素な構成で、プリント回路基板の回路の短絡を防止することができる。また、これにより、従来の絶縁性樹脂を塗布・乾燥させる工程が不要となるので、画像形成装置の製造工程が簡素化され、その生産性の向上を図ることができる。また、スポンジ部材が回路パターン形成面の全面に亘って装着されているので、回路の短絡を略完全に防止することができる。また、プリント回路基板を起立姿勢でフレームに搭載する構成を採用しつつ、その回路の短絡を防止できるので、画像形成装置の設計自由度を高めることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、プリント回路基板の回路パターン形成面には、絶縁性を有するスポンジ部材が装着されているので、安価かつ簡素な構成で、プリント回路基板の回路の短絡を防止することができる。また、これにより、従来の絶縁性樹脂を塗布・乾燥させる工程が不要となるので、ブラシレスモータの製造工程が簡素化され、その生産性の向上を図ることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、画像形成装置を安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の実施形態によるレーザビームプリンタについて図面を参照して説明する。図1は、レーザビームプリンタ1の一構成例を示している。レーザビームプリンタ1は、表面に感光体が塗布されている感光体ドラム2、クリーナ3、帯電器(帯電手段)4、レーザスキャンユニット(露光手段)5、現像ブラシ(現像手段)6、転写ローラ(転写手段)7、転写ローラ7に対して記録紙Pの搬送方向の下流側に配置されている定着ローラ(定着手段)8、記録紙Pが装填される給紙トレイ(記録紙保持手段)9、プリント済みの記録紙Pが堆積される排紙部10、給紙トレイ9に装填された記録紙Pを感光体ドラム2の位置まで搬送する記録紙搬送機構11、記録紙搬送機構11及び感光体ドラム2に回転駆動力を付与するブラシレスモータ12と、上記各部を収容する筐体14等によって構成されている。
【0014】
クリーナ3は、感光体ドラム2の表面に付着している1行程(1回転)前のトナー及び紙粉を除去し、ドラム表面を清掃する。帯電器4は、クリーナ3によって清掃された感光体ドラム2の表面を均一に帯電させる。レーザスキャンユニット5は、帯電器4によって帯電された感光体ドラム2の表面にレーザビームLを走査させながら照射して潜像を形成する。現像ブラシ6は、トナーが充填されたトナーカートリッジ15に装着されており、感光体ドラム2の表面のうち潜像が形成された部分にトナーを付着させてトナー像を形成する。転写ローラ7は、感光体ドラム2の表面に対向するように設けられ、記録紙Pを感光体ドラム2の表面に押圧しながら記録紙Pの表面を帯電させて、感光体ドラム2の表面に形成されたトナー像を記録紙Pの上に転写させる。転写ローラ7によって表面に画像が形成された記録紙Pは、定着ローラ8に搬送される。定着ローラ8は、対向して配置された押圧ローラ16と共に記録紙Pを挟みつつ熱と圧力を加えてトナーを定着させる。トナー定着のための熱は、定着ローラ8に内蔵されているヒータ(例えば、ハロゲンランプ等)から供給される。このように、感光体ドラム2、帯電器4、レーザスキャンユニット5、現像ブラシ6、転写ローラ7、定着ローラ8等により画像形成手段が構成される。
【0015】
図2及び図3は、ブラシレスモータ12の構成を示している。ブラシレスモータ12は、鉄製のフレーム22に搭載されている。ブラシレスモータ12の出力軸25の先端には、ギヤ(駆動伝達機構)23が装着されており、ブラシレスモータ12の回転駆動力は、ギヤ23等によって記録紙搬送機構11及び感光体ドラム2に伝達される。
【0016】
ブラシレスモータ12は、回転駆動力を出力する出力軸25と、出力軸25が圧入され、共に回転するアウターロータ26と、アウターロータ26の内面に設けられたマグネット27と、フレーム22に立設され、出力軸25を回転自在に支持する軸受け部材28と、軸受け部材28の周囲に放射状に設けられた鉄心29と、鉄心29に巻回されたコイル30等を有している。出力軸25及び軸受け部材28は、出力軸25の先端の振れを抑制してギア3の駆動伝達ロスを低減するために、鉄によって形成されている。
【0017】
プリント回路基板21は、フレーム22と平行に配設されている。一方、軸受け部材28は、出力軸25がフレーム22に対して垂直に向くように立設されているので、出力軸25は、プリント回路基板21に対して垂直に貫くように配設されることとなる。また、出力軸25を感光体ドラム2の回転軸と平行に水平に配設すると、プリント回路基板21は、フレーム22によって、起立姿勢で支持されることになる。
【0018】
ブラシレスモータ12のコイル30に流れる電流は、プリント回路基板21上のモータ制御回路によって制御される。プリント回路基板21の表面(ブラシレスモータ12と対向される面)、及び/又は裏面(フレーム22と対向される面)には、回路パターンが形成されている。本実施形態においては、ブラシレスモータ12と対向される回路パターン形成面21aには、モータ制御回路を構成する電子部品31が実装されている。
【0019】
ブラシレスモータ12の上方には、例えば、フレーム22と筐体14とを結合するためのタッピングねじが、フレーム22に螺入されている。タッピングねじは、フレーム22の加工工程において、雌ねじを形成する工程を省き、製造工程を簡素化するために使用されており、フレーム22と筐体14との結合の他、例えば、感光体ドラム2又はカートリッジ15を支持するドラム支持部材(図示せず)とフレーム22との結合等にも使用することができる。
【0020】
プリント回路基板21の回路パターン形成面21aには、絶縁性を有するスポンジ部材40が装着されている。プリント回路基板21は、フレーム22よりも広い領域に形成されているが、スポンジ部材40は、プリント回路基板21の前面に亘って装着されている。スポンジ部材40の装着は、フレーム22にプリント回路基板21を組み込む際に、フレーム22とプリント回路基板21との間にスポンジ部材40を配置させ、フレーム22とプリント回路基板21とによってスポンジ部材40を挟み込むことによってなされる。なお、ここで使用されるスポンジ部材は、回路パターン形成面21aに実装された電子部品31に合わせて容易に変形可能であるため、回路パターン形成面21aに凹凸がある場合でも隙間なく装着することができる。
【0021】
以上のように構成されたレーザビームプリンタ1によれば、プリント回路基板21の回路パターン形成面21aには、絶縁性を有するスポンジ部材40が装着されているので、仮にマグネット27の吸引力により鉄粉等がブラシレスモータ12の側に吸引されたとしても、鉄粉等がプリント回路基板21に付着することはなく、安価かつ簡素な構成で、プリント回路基板21の回路の短絡を防止することができる。また、これにより、従来の絶縁性樹脂を塗布・乾燥させる工程が不要となるので、レーザビームプリンタ1の製造工程が簡素化され、その生産性の向上を図ることができる。また、スポンジ部材40が回路パターン形成面21aの全面に亘って装着されているので、回路の短絡を略完全に防止することができる。また、プリント回路基板21を起立姿勢でフレーム22に搭載する構成を採用しつつ、その回路の短絡を防止できるので、レーザビームプリンタ1の設計自由度を高めることができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも、プリント回路基板21の回路パターン形成面21aに、絶縁性を有するスポンジ部材40が装着される構成であればよい。また、本発明は、種々の変形が可能であり、例えば、レーザビームプリンタ1に限られることなく、インクジェットプリンタ等の画像形成装置にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態によるレーザビームプリンタの構成を示す図。
【図2】同プリンタのブラシレスモータの構成を示す側断面図。
【図3】同斜視図。
【符号の説明】
【0024】
1 レーザビームプリンタ
2 感光体ドラム
4 帯電器(帯電手段)
5 レーザスキャンユニット(露光手段)
6 現像ブラシ(現像手段)
7 転写ローラ(転写手段)
8 定着ローラ(定着手段)
9 給紙トレイ(記録紙保持手段)
11 記録紙搬送機構
12 ブラシレスモータ
21 プリント回路基板
22 フレーム
23 ギア(駆動伝達機構)
25 出力軸
26 アウターロータ
27 マグネット
28 軸受け部材
31 電子部品
40 スポンジ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光体が塗布された感光体ドラムと、
前記感光体ドラムの表面を均一に帯電させる帯電手段と、
前記感光体の表面にレーザビームを走査させながら照射して潜像を形成する露光手段と、
前記感光体の表面のうち潜像が形成された部分にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段と、
前記感光体ドラムの回転方向の前記現像手段よりも下流側の所定の転写位置において、前記感光体ドラムの表面に対向するように設けられ、前記感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を記録紙の上に転写させる転写手段と、
トナー像が転写された記録紙に所定の熱及び圧力を与えてトナー像を記録紙上に定着させる定着手段と、
装填された記録紙を保持する記録紙保持手段と、
前記記録紙保持手段に保持された記録紙を前記転写位置に搬送する記録紙搬送機構と、 前記記録紙搬送機構及び感光体ドラムに回転駆動力を付与するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータの回転駆動力を前記記録紙搬送機構及び感光体ドラムに伝達する駆動伝達機構と、
前記ブラシレスモータの本体部が装着され、該ブラシレスモータを制御する電子部品が実装されるプリント回路基板と、
前記感光体ドラム、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段、記録紙保持手段、記録紙搬送機構、駆動伝達機構及びプリント回路基板を支持する鉄製フレームと、を備えた画像形成装置において、
前記ブラシレスモータは、コイルの外側のロータにマグネットが装着されたアウターロータタイプのモータであり、かつ鉄製出力軸及び鉄製軸受けを有し、該鉄製出力軸が前記プリント回路基板に対して垂直に貫くように配設され、
前記感光体ドラムの回転軸及びブラシレスモータの鉄製出力軸は、水平に配向され、
前記プリント回路基板は、起立姿勢で前記フレームに搭載され、その回路パターン形成面には、絶縁性を有するスポンジ部材が全面に亘って装着され、
これにより、前記マグネットに吸引された鉄粉が前記プリント回路基板上に付着するのを防止し、前記プリント回路基板上の回路の短絡を防止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
電子部品が実装されたプリント回路基板を備えたブラシレスモータにおいて、
前記プリント回路基板の回路パターン形成面には、絶縁性を有するスポンジ部材が装着されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項3】
記録紙に画像を形成する画像形成手段と、
装填された記録紙を保持する記録紙保持手段と、
前記記録紙保持手段に保持された記録紙を前記画像形成手段に搬送する記録紙搬送機構と、
前記記録紙搬送機構及び感光体ドラムを駆動するブラシレスモータとを備えた画像形成装置において、
前記ブラシレスモータは、請求項2に記載のブラシレスモータであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−328116(P2007−328116A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158854(P2006−158854)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】