画像形成装置及びクリーニング装置
【課題】トナーパターンクリーニング時のクリーニング不良を抑制することができるクリーニング装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナーパターンをクリーニングブラシローラで除去するとき、(60/R)>(L/V)の条件を満たすように画像形成手段、中間転写ベルトの表面移動速度およびクリーニングブラシローラの回転数のうち少なくともひとつを制御する。ただし、R:クリーニングブラシローラの回転数(rpm)、L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)、V:中間転写ベルト表面移動速度(mm/s)である。
【解決手段】トナーパターンをクリーニングブラシローラで除去するとき、(60/R)>(L/V)の条件を満たすように画像形成手段、中間転写ベルトの表面移動速度およびクリーニングブラシローラの回転数のうち少なくともひとつを制御する。ただし、R:クリーニングブラシローラの回転数(rpm)、L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)、V:中間転写ベルト表面移動速度(mm/s)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転写体にトナー像を転写した後、像担持体に残留した転写残トナーを像担持体から静電的に除去するクリーニング装置を備えた画像形成装置が記載されている。具体的には、像担持体に当接しながら回転するクリーニング部材たるクリーニングブラシローラと、これに当接しながら回転する回収部材たる回収ローラと、回収ローラに当接する掻き取りブレードとを備えている。このクリーニングブラシローラには、トナーの正規帯電極性とは逆極性のクリーニング電圧を印加している。また、回収ローラには、クリーニング電圧と同極性で且つクリーニング電圧よりも値の大きな回収電圧を印加している。転写工程を経た後の像担持体の表面上に残留してしまった転写残トナーは、回転するクリーニングブラシローラによって引っ掻かれながら、像担持体とクリーニングブラシローラとの間の電界によってクリーニングブラシローラへ静電転移する。そして、クリーニングブラシローラから回収ローラ更に静電転移した後、掻き取りブレードによって回収ローラ表面から掻き落とされる。
【0003】
また、画像形成装置は、所定のタイミングでトナーパターンを形成して、画像品質を改善する処理を行っている。具体的には、所定のタイミングでトナーパターンを像担持体に形成し、像担持体上のトナーパターンを光学センサなどで検知し、その検知結果に基づいて、画像の濃度調整や色重ねのズレを補正することで画像品質を改善する。また、紙間などにトナーパターンを形成して、現像器内のトナーをリフレッシュして、画像品質を改善する。このような画像品質改善処理により上記像担持体上に形成されたトナーパターンは、転写体に転写されずにクリーニング装置で除去することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のクリーニング装置においては、クリーニングブラシと像担持体との当接領域にトナーパターンが進入した直後は、トナーパターンを良好に除去していたが、ある一定期間経過すると、トナーパターンを良好に除去できなくなり、クリーニング不良が生じてしまうという課題があった。この課題について、本出願人が、鋭意研究した結果、次のことがわかった。すなわち、上記のようにトナーパターンを除去する場合、クリーニングブラシローラで大量のトナーを除去することになる。しかし、回収ローラでクリーニングブラシに付着した大量のトナーを完全には回収することができず、一部がクリーニングブラシローラに残留してしまう。クリーニングブラシにトナーが残留してしまうと、クリーニングブラシローラの回転で再び像担持体との当接領域を通過するとき、ブラシ繊維に付着する新たなトナー量が減り、クリーニング性が低下してしまう。その結果、トナーパターンが進入した直後は、トナーパターンを良好に除去できていたが、クリーニングブラシ2回転目以降は、トナーパターンを良好に除去することができず、クリーニング不良となったのである。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、トナーパターンクリーニング時のクリーニング不良を抑制することができるクリーニング装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面移動する像担持体と、該像担持体上にトナー像を形成する画像形成手段と、回転しながら像担持体上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材を備えたクリーニング手段とを備え、所定のタイミングで像担持体上にトナーパターンを形成して、画像品質を改善する処理を行う画像形成装置において、転写体に転写されていない未転写の上記トナーパターンを上記クリーニング部材で除去するとき、以下の条件を満たすよう画像形成手段、像担持体表面移動速度およびクリーニング部材の回転数のうち少なくともひとつを制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
(60/R)>(L/V)
R:クリーニング部材の回転数(rpm)
L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)
V:像担持体表面移動速度(mm/s)
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記制御手段は、以下の条件を満たすよう画像形成手段、像担持体表面移動速度およびクリーニング部材の回転数のうち少なくともひとつを制御することを特徴とするものである。
(60/R)<(C/V)
C:トナーパターンの間隔(mm)
また、請求項3の発明は、請求項1または2の画像形成装置において、上記クリーニング手段は、複数のクリーニング部材を有しており、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材には、トナーの正規帯電極性と反対極性のバイアスが印加されて、像担持体上の正規帯電極性に帯電したトナーを静電的に像担持体から除去するものであり、上記回転数Rは、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材の回転数であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、トナー像を担持して表面移動する像担持体に当接し、回転しながら像担持体上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材を備えたクリーニング装置において、画像品質を改善する処理を行うために上記像担持体に形成された転写体に転写されていない未転写のトナーパターンを上記クリーニング部材で除去するとき、クリーニング部材の回転数が、以下の条件を満たすよう、クリーニング部材の回転数を制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
(60/R)>(L/V)
R:クリーニング部材の回転数(rpm)
L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)
V:像担持体表面移動速度(mm/s)
また、請求項5の発明は、請求項4のクリーニング装置において、複数のクリーニング部材を有しており、上記制御手段は、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材の回転数を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記(60/R)>(L/V)の条件を満たすことにより、トナーパターンの像担持体とクリーニング部材との当接領域を通過する時間を、クリーニング部材が一回転する時間よりも短くすることができる。これにより、クリーニングブラシ一回転でトナーパターンを除去することができ、トナーパターンクリーニング時のクリーニング不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図2】階調パターンと光学センサとを示した中間転写ベルト近傍の拡大概略構成図。
【図3】同中間転写ベルトに形成されるシェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図4】同中間転写ベルトに形成されるトナー消費パターンを示す拡大模式図。
【図5】同プリンタのベルトクリーニング装置とその周囲とを拡大して示す拡大構成図。
【図6】第一クリーニングブラシローラの周回数とクリーニング性との関係を評価する評価実験を行った結果を示すグラフ。
【図7】階調パターンを、複数のトナーパターンに分割した実施形態を示す図。
【図8】プレクリーニング部を備えたクリーニング装置の概略構成図。
【図9】トナー粒子の二次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図。
【図10】トナー粒子の二次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図。
【図11】(a)、(b)、(c)はそれぞれトナーの形状を模式的に示す図。
【図12】タンデム型直接転写方式のプリンタの要部を示す概略構成図。
【図13】モノクロプリンタの要部を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、いわゆるタンデム型中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタの要部を示す概略構成図である。本プリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,黒(以下、Y,M,C,Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kを備えている。4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1Y,M,C,Kをそれぞれ有している。感光体1Y,M,C,Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,M,C,K、現像装置5Y,M,C,K、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,K、除電装置(不図示)等を有している。プロセスユニット6Y,M,C,Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。プロセスユニット6Y,M,C,Kの上方には、感光体1Y,M,C,Kの表面に対してレーザー光Lを照射して静電潜像を書き込むための図示しない光書込ユニットが配設されている。
【0010】
プロセスユニット6Y,M,C,Kの下方には、ベルト部材たる無端状の中間転写ベルト8を具備するベルト装置としての転写ユニット7が配設されている。中間転写ベルト8の他、そのループ内側に配設された複数の張架ローラや、ループ外側に配設された2次転写ローラ17、押圧ローラ16、ベルトクリーニング装置100などを有している。
【0011】
中間転写ベルト8のループ内側には、4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kと、テンションローラ10と、駆動ローラ11と、2次転写対向ローラ12と、2個のクリーニング対向ローラ13、14とが配設されている。これらローラのうち、少なくとも4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kと、テンションローラ10と、駆動ローラ11と、2次転写対向ローラ12は、自らの周面の一部に中間転写ベルト8を掛け回してベルト張架を行う張架ローラとして機能している。中間転写ベルト8は、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される駆動ローラ11の回転により、図中時計回り方向に無端移動せしめられる。
【0012】
ベルトループ内側に配設された4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kは、感光体1Y,M,C,Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、感光体1Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。なお、1次転写ローラ9Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によってトナーとは逆極性の1次転写バイアスが印加される。
【0013】
また、ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ12は、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ17との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、2次転写ローラ17とが当接する2次転写ニップが形成されている。なお、2次転写ローラ17には、図示しない電源によってトナーとは逆極性の2次転写バイアスが印加される。また、2次転写ローラと数本の支持ローラと駆動ローラにより紙搬送ベルトを架け渡し、二次転写ローラ18と、二次転写対向ローラ12との間に、中間転写ベルト8及び紙搬送ベルトを挟み込んだ構成としてもよい。
【0014】
また、ベルトループ内側に配設されたベルトクリーニング装置100のクリーニング対向ローラ13、14は、ベルトループ外側に配設されたベルトクリーニング装置100の各クリーニングブラシローラ102、106との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、クリーニングブラシローラ102、106とが当接するクリーニングニップが形成されている。クリーニング対向ローラ13、14は、不図示の駆動手段により回転駆動するものであってもよいし、中間転写ベルト8の回転にともなって従動回転するものでもよい。ベルトクリーニング装置100は中間転写ベルト8と一体的に交換可能になっているが、ベルトクリーニング装置100と中間転写ベルト8とで寿命設定が異なる場合には、ベルトクリーニング装置100を中間転写ベルトとは独立してプリンタ本体に着脱可能としてもよい。
【0015】
本プリンタは、記録紙Pを収容する給紙カセットや、給紙カセットから記録紙Pを給紙路に給紙する給紙ローラなどを有する図示しない給紙部を備えている。また、給紙部から送られてきた記録紙を受け入れて2次転写ニップに向けて所定のタイミングで送り出す図示しないレジストローラ対を、上述した2次転写ニップの図中右側方に備えている。また、2次転写ニップから送り出される記録紙Pを受け入れてその記録紙Pに対してトナー像の定着処理を施す図示しない定着装置を、上述した2次転写ニップの図中左側方に備えている。また、必要に応じて、現像装置5Y,M,C,Kに対してY,M,C,Kトナーを補給する図示しないY,M,C,K用のトナー補給装置も備えている。
【0016】
近年、記録紙として従来広く用いられてきた普通紙に加え、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙が用いられることが増えている。このような特殊紙を用いると、従来の普通紙の場合よりもカラートナーを重ね合わせた中間転写ベルト8上のトナー像を紙に2次転写する際に転写不良が発生し易くなる。そこで、本プリンタでは、中間転写ベルト8に硬度の低い弾性層を設け、転写ニップ部でトナー層や平滑性の悪い記録紙に対して変形できるようにしている。中間転写ベルト8に硬度の低い弾性層を設け、中間転写ベルト8に弾性をもたせることにより、中間転写ベルト8表面が局部的な凸凹に追従して変形できる。これにより、過度にトナー層に対して転写圧を高めることなく、良好な密着性が得られ、文字の転写中抜けがなく、また、平滑性の悪い用紙等に対しても転写ムラのない、均一性に優れた転写画像を得ることができる。
【0017】
本プリンタでは、中間転写ベルト8は、少なくとも基層、弾性層、表面のコート層から構成される。
【0018】
中間転写ベルト8の弾性層に用いられる材料としては、弾性材ゴム、エラストマー等の弾性部材が挙げられ、具体的には、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0019】
弾性層の厚さは、硬度及び層構成にもよるが、0.07〜0.5[mm]の範囲が好ましい。さらに好ましくは0.25〜0.5[mm]の範囲がよい。又、中間転写ベルト8の厚さが0.07[mm]以下と薄いと、二次転写ニップ部で中間転写ベルト8上のトナーに対する圧力が高くなり、転写中抜けが発生しやすくなり、さらに、トナーの転写率が低下する。
【0020】
また、弾性層の硬度は、10°≦HS≦65°(JIS−A)であることが好ましい。中間転写ベルト8の層厚によって最適な硬度は異なるものの、硬度が10°JIS−Aより低いと転写中抜けが生じやすい。これに対して硬度が65°JIS−Aより高いものは、ローラヘの張架が困難となり、また、長期の張架によって延伸するために耐久性が無く早期の交換が必要になる。
【0021】
中間転写ベルト8の基層は、伸びの少ない樹脂で構成している。具体的に、基層に用いられる材料としては、ポリカーボネート、フッ素樹脂(ETFE、PVDF等)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ピニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0022】
また、伸びの大きなゴム材料などからなる弾性層の伸びを防止するために、基層と弾性層との間に帆布などの材料で構成された芯体層を設けてもよい。芯体層に用いられる伸びを防止する材料としては、例えば、綿、絹、などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フエノール繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる1種あるいは2種以上を用い、糸状あるいは織布状のものを使用することができる。もちろん、上記材料に限定されるものではない。上記の糸は1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。もちろん糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方織布は、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり、導電処理を施すことも可能である。
【0023】
中間転写ベルト8表面のコート層は、弾性層の表面をコーティングするためのものであり、平滑性のよい層からなるものである。コート層に用いられる材料としては、特に制限はないが、一般的に、中間転写ベルト8表面へのトナーの付着カを小さくして二次転写性を高める材料が用いられる。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上、又は、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、たとえばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、酸化チタン、シリコンカーバイド等の粒子を1種類あるいは2種類以上、又は必要に応じて粒径を変えたものを分散させて使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素層を形成させ、表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
【0024】
また、必要に応じて、基層、弾性層又はコート層は、抵抗を調整する目的で、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等を用いることができる。ここで、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0025】
パーソナルコンピュータ等から画像情報が送られてくると、本プリンタは、駆動ローラ11を回転駆動して、中間転写ベルト8を無端移動させる。駆動ローラ11以外の張架ローラについては、ベルトに従動回転させる。同時に、プロセスユニット6Y,M,C,Kの感光体1Y,M,C,Kを回転駆動する。また、感光体1Y,M,C,Kの表面を帯電装置2Y,M,C,Kによって一様に帯電させながら、帯電後の表面に対してレーザー光Lの照射によって静電潜像を形成する。そして、感光体1Y,M,C,Kの表面に形成した静電潜像を現像装置5Y,M,C,Kによって現像することで、感光体1Y,M,C,K上にY,M,C,Kトナー像を得る。Y,M,C,Kトナー像は、上述したY,M,C,K用の1次転写ニップにて、中間転写ベルト8のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。すなわち、プロセスユニット6と、図示しない光書込ユニット、一次転写ローラとで像担持体たる中間転写ベルトに画像を形成する画像形成手段が構成される。また、像担持体たる感光体に画像を形成する画像形成手段は、帯電装置、光書込ユニット、現像装置により構成される。
【0026】
一方、不図示の給紙部では、給紙ローラによって給紙カセットから記録紙Pを1枚づつ送り出してレジストローラ対まで搬送する。そして、中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで、レジストローラ対を駆動して記録紙Pを2次転写ニップに送り込んで、ベルト上の4色重ね合わせトナー像を記録紙Pに一括2次転写する。これにより、記録紙Pの表面にフルカラー画像を形成する。フルカラー画像形成後の記録紙Pについては、2次転写ニップから定着装置に搬送してトナー像の定着処理を施す。
【0027】
Y,M,C,Kトナー像を中間転写ベルト8に1次転写した後の感光体1Y,M,C,Kについては、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kによって転写残トナーのクリーニング処理を施す。その後、図示しない除電ランプで除電した後、帯電装置2Y,M,C,Kで一様に帯電せしめて、次の画像形成に備える。また、記録紙Pに一次転写した後の中間転写ベルト8については、ベルトクリーニング装置100によって転写残トナーのクリーニング処理を施す。
【0028】
K用のプロセスユニット6Kの図中右側方には、光学センサユニット150が中間転写ベルト8のおもて面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。この光学センサユニット150は、図2に示すように、中間転写ベルト8の幅方向に並ぶY光学センサ151Y、C光学センサ151C、M光学センサ151M、K光学センサ151Kを有している。これらセンサは何れも反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子から発した光を中間転写ベルト8のおもて面やベルト上のトナー像で反射させ、その反射光量を図示しない受光素子によって検知する。図示しない制御部は、これらセンサからの出力電圧値に基づいて、中間転写ベルト8上のトナー像を検知したり、その画像濃度(単位面積あたりのトナー付着量)を検知したりすることができる。
【0029】
本プリンタにおいては、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、各色の画像濃度を適正化するための画像濃度制御を実行する。
画像濃度制御は、まず、図2に示すような、各色の階調パターンSk、Sm、Sc、Syを中間転写ベルト8上における各光学センサ151Y、M、C、Kに対向する位置に自動形成する。各色の階調パターンは、10個の画像濃度が異なる2[cm]×2[cm]の面積のトナーパッチからなっている。各色の階調パターンSk、Sm、Sc、Syを作成するときの、感光体1Y,M,C,Kの帯電電位は、プリントプロセスにおける一様なドラム帯電電位とは異なり、値を徐々に大きくする。そして、レーザー光の走査によって階調パターン像を形成するための複数のパッチ静電潜像を感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ形成せしめながら、それらをY,M,C,K用の現像装置5Y,M,C,Kによって現像する。この現像の際、Y,M,C,K用の現像ローラに印加される現像バイアスの値を徐々に大きくしていく。このような現像により、感光体1Y,M,C,K上にはY,M,C,Kの階調パターン像が形成される。これらは、中間転写ベルト8の主走査方向に所定の間隔で並ぶように1次転写される。このときの、各色の階調パターンにおけるトナーパッチのトナー付着量は最小で0.1[mg/cm2]、最大で0.55[mg/cm2]ほどあり、また、トナーQ/d分布を測定すると、ほぼ正規帯電極性にそろっている。
【0030】
中間転写ベルト8に形成され各トナーパターン(Sk、Sm、Sc、Sy)は、中間転写ベルト8の無端移動に伴って、光学センサ151との対向位置を通過する。この際、光学センサ151は、各階調パターンのトナーパッチに対する単位面積あたりのトナー付着量に応じた量の光を受光する。
【0031】
次に、各色トナーパッチを検知したときの光学センサ151の出力電圧と、付着量変換アルゴリズムとから、各色のトナーパターンの各トナーパッチにおける付着量を算出し、算出した付着量に基づき作像条件を調整する。具体的には、トナーパッチにおけるトナー付着量を検知した結果と、各トナーパッチを作像したときの現像ポテンシャルとに基づいてその直線グラフを示す関数(y=ax+b)を回帰分析によって計算する。そして、この関数に画像濃度の目標値を代入することで適切な現像バイアス値を演算し、Y、M、C、K用の現像バイアス値を特定する。
【0032】
メモリ内には、数十通りの現像バイアス値と、それぞれに個別に対応する適切なドラム帯電電位とが予め関連付けられている作像条件データテーブルが格納されている。各プロセスユニット6Y,M,C,Kについて、それぞれこの作像条件テーブルの中から、特定した現像バイアス値に最も近い現像バイアス値を選び出し、これに関連付けられたドラム帯電電位を特定する。
【0033】
また、本プリンタは、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、色ずれ量補正処理も実施するようになっている。そして、この色ずれ量補正処理において、中間転写ベルト8の幅方向の一端部と他端部とにそれぞれ、図3に示すようなシェブロンパッチPVと呼ばれるY,M,C,Kの各色トナー像からなる色ずれ検知用画像を形成する。シェブロンパッチPVは、図3に示すように、Y,M,C,Kの各色のトナー像を主走査方向から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このシェブロンパッチPVの付着量は、0.3[mg/cm2]ほどである。
【0034】
中間転写ベルト8の幅方向の両端部にそれぞれ形成したシェブロンパッチPV内の各色トナー像を検知することで、各色トナー像における主走査方向(感光体軸線方向)の位置、副走査方向(ベルト移動方向)の位置、主走査方向の倍率誤差、主走査方向からのスキューをそれぞれ検出する。ここで言う主走査方向とは、ポリゴンミラーでの反射に伴ってレーザー光が感光体表面上で位相する方向を示している。このようなシェブロンパッチPV内のY,M,Cトナー像について、Kトナー像との検知時間差を光学センサ151で読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tyk、tmk、tckについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ちレジストズレ量を求める。そして、そのレジストズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットのポリゴンミラー1面おき、即ち、1走査ラインピッチを1単位として、感光体1に対する光書込開始タイミングを補正して、各色トナー像のレジストズレを低減する。また、ベルト両端部間での副走査方向ズレ量の差に基づいて、各色トナー像の主走査方向からの傾き(スキュー)を求める。そして、その結果に基づいて、光学系反射ミラーの面倒れ補正を実施して、各色トナー像のスキューズレを低減する。以上のように、シェブロンパッチPV内における各トナー像を検知したタイミングに基づいて光書込開始タイミングや面倒れを補正してレジストズレやスキューズレを低減する処理が、色ずれ補正処理である。このような色ずれ補正処理により、温度変化などで各色トナー像の中間転写ベルト8に対する形成位置が経時的にずれていくことに起因する画像の色ずれの発生を抑えることができる。
【0035】
また、低画像面積の画像形成動作が続くと、現像装置内に長時間とどまりつづける古いトナーが増えてくるため、トナー帯電特性が劣化し画像形成に用いると画像品質が悪くなる(現像能力低下、転写性低下)。このような古いトナーが現像装置内に滞留しないように一定のタイミングで感光体1の非画像領域に吐き出させ、吐き出し後にトナー濃度が低下した現像装置に新しいトナーを補給して現像装置内をリフレッシュするリフレッシュモードを備えている。
【0036】
不図示の制御部は、各現像装置5Y,M,C,Kのトナー消費量と、各現像装置5Y,M,C,Kの動作時間とを記憶しておき、所定のタイミングで、現像装置の所定期間の動作時間に対して、トナー消費量が閾値以下である否かを各現像装置について調べ、閾値以下の現像装置について、リフレッシュモードを実行する。
【0037】
リフレッシュモードが実行されると、図4に示すように、感光体の紙間に対応する非画像形成領域にトナー消費パターンが作成され、中間転写ベルト8に転写される。トナー消費パターンの付着量は、現像装置の所定期間の動作時間に対するトナー消費量に基づき決定され、単位面積当りの最大付着量が、1.0[mg/cm2]ほどになることがある。また、中間転写ベルト8に転写されたトナー消費パターンのトナーQ/d分布を測定すると、ほぼ正規帯電極性に揃っている。
【0038】
次に、本プリンタのベルトクリーニング装置100について説明する。
図5は、本プリンタのベルトクリーニング装置100とその周囲とを拡大して示す拡大構成図である。このベルトクリーニング装置100は、像担持体たる中間転写ベルト8上のトナーのうち正規帯電極性である負極性トナーをクリーニングするための第一クリーニング部100aと、中間転写ベルト8上のトナーのうち正規帯電極性と逆極性である正極性トナーをクリーニングする第二クリーニング部100bとを有している。
【0039】
第一クリーニング部100aは、クリーニング回転体としての第一クリーニングブラシローラ102、第一クリーニングブラシローラ102に付着したトナーを回収する回収手段としての第一回収ローラ103、第一回収ローラ103に当接して第一回収ローラ表面からトナーを掻き取るトナー掻き取り部材としての第一トナー掻き取りブレード104を備えている。
【0040】
第一クリーニングブラシローラ102は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備しており、図示しないブラシ用電源によってトナーの正規帯電極性と逆極性である正極性の第一クリーニングバイアスが印加される。また、第一回収ローラ103には、図示しない回収電源より、正極性で且つ第一クリーニングバイアスよりも大きな値の第一回収バイアスが印加される。
【0041】
第二クリーニング部100bは、第一クリーニング部100aよりも中間転写ベルト8移動方向下流側に配置され、第一クリーニング部100aと同様、クリーニング回転体としてのクリーニングブラシローラ106、回収手段としての回収ローラ107、掻き取りブレード108を備えている。
【0042】
第二クリーニングブラシローラ106は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備しており、図示しないブラシ用電源によってトナーの正規帯電極性と同極性である負極性の第二クリーニングバイアスが印加される。また、第二回収ローラ107には、図示しない回収電源より、負極性で且つ第二クリーニングバイアスよりも大きな値の第二回収バイアスが印加される。
【0043】
また、本ベルトクリーニング装置100は、第一、第二クリーニング部100a,100bで除去したトナーを、装置ケーシングの一端部に向けて搬送してベルトクリーニング装置100ケーシングの外に排出する排出スクリュ109が設けられている。排出スクリュ109によってクリーニング装置から排出されたトナーは、プリンタ本体に備えられた図示しない廃トナータンク(不図示)内に落下する。また、廃タンクではなく、現像装置に戻すようにしてもよい。
【0044】
また、中間転写ベルト8表面保護のために、第二クリーニングブラシローラ106で中間転写ベルト8の表面に潤滑剤を塗布してもよい。この場合は潤滑剤を固形化したものを第二クリーニングブラシローラ106に当接させ、潤滑剤を塗布するようにする。また、第二クリーニングブラシローラ106よりも中間転写ベルト8移動方向下流側に、中間転写ベルト表面に塗布した潤滑剤を均す均しブレードを設けてもよい。また、第二クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けてもよい。第二クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けることで、第二クリーニングブラシローラ106で潤滑剤を塗布する場合、第二クリーニングブラシローラ106にはトナーが常時回収されているため、トナーと潤滑剤とが交じり合い、潤滑剤塗布時にいったん回収したトナーが、再度中間転写ベルト上に付着する場合がある。一方、第二クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けることで、回収されたトナーが中間転写ベルト8に再付着するのを抑制できる。
【0045】
本プリンタのベルトクリーニング装置100における具体的な構成条件の一例は、以下のとおりである。
<第一クリーニングブラシローラ102の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000Vの電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ直径:15mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
ブラシ回転数:480rpm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0046】
<第二クリーニングブラシローラ106の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000Vの電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ直径:15mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
ブラシ回転数:480rpm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0047】
第一、第二クリーニングブラシローラ102、106のブラシ繊維は繊維全体としては導電性であるが、繊維表面は絶縁層で覆われているものを用いる。繊維表面に絶縁層を有することで、各クリーニングブラシローラ102、106と中間転写ベルト8とが接触する際に電流が流れ難くなり、ブラシ繊維がベルトからトナーを静電吸引する際に余分な電流が流れ難くなる。このため、トナーに逆極性の電荷を与えてしまうことがなく、いったんブラシ内に捕捉したトナーを中間転写ベルト8に再付着させる恐れが少なくなる。ただし、このようなブラシを使用しても、繊維表面の絶縁を破壊して電流を流すほどの電圧を回転軸に印加すると、結果として中間転写ベルト8にトナーを戻してしまうことになるので、電圧値の設定には注意を要する。繊維の構造についてはこれに限ったものではなく電圧の設定値を調整することで、逆に絶縁層の表面に導電層が形成されたものや繊維全体に導電部材が分散されているものを用いることもできる。
【0048】
各クリーニングブラシローラ102、106は、ブラシロール状に形成後、一方向に毛を倒す斜毛処理を施すと、繊維断面に露出している導電剤を中間転写ベルト8に接触させ難くなる。これにより、トナーへの電荷注入性が低減され、クリーニング性の余裕度が向上する。繊維はナイロン、ポリエステル、アクリル等の絶縁材が一般的で何れの材料の場合も同じ効果である。また、芯鞘構造の代表的な繊維は特開平10−310974号公報、特開平10−131035、特開平01−292116号公報、特公平07−033637号公報、特公平07−033606号公報、特公平03−064604号公報に開示されている。
【0049】
<第一回収ローラ103の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
ローラ回転数:480rpm
回転方向:第一クリーニングブラシローラ102に対してカウンター方向
【0050】
<第二回収ローラ107の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
ローラ回転数:480rpm
回転方向:第二クリーニングブラシローラ106に対してカウンター方向
【0051】
各回収ローラ103,107はSUSローラを用いた。本実施形態で用いた回収ローラ103、107のみならず、導電性芯金に数μm〜100μm程度の高抵抗弾性チューブを被せたもの、あるいはさらに絶縁コーティングしたものでも同じ性能を得られる。回収ローラ103,107の表面の材料としては、PVDFチューブ、PFAチューブ、PIチューブ、アクリルコート、シリコーンコート(例えばシリコーン粒子を含有したPC(ポリカーボネート)をコート)、セラミックス、フッ素コーティングなどがある。
【0052】
<第一掻き取りブレード104の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第一回収ローラ103へのブレード食い込み量:0.6mm
【0053】
<第二掻き取りブレード108の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第二回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6mm
【0054】
表1に各クリーニングブラシローラ、回収ローラの印加電圧の例を示す。
【表1】
【0055】
また、本実施形態の中間転写ベルト8、クリーニング対向ローラ13、14の条件は、以下のとおりである。
<中間転写ベルトの条件>
材質:弾性ベルト
層厚:500μm
移動速度:350mm/s
<クリーニング対向ローラ13、14の条件>
材質:アルミ
直径:14mm
【0056】
2次転写ニップを通過した転写残トナーは、第一クリーニングブラシローラ102の位置に中間転写ベルト8の回転により移送される。第一クリーニングブラシローラ102には、トナーの正規帯電極性と反対極性(正極性)の電圧が印加されており、中間転写ベルト8と第一クリーニングブラシローラ102表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト8上の負極性に帯電したトナーを静電的に吸着して第一クリーニングブラシローラ102へ移動させる。第一クリーニングブラシローラ102に移動した負極性のトナーは、第一クリーニングブラシローラ102よりも値が大きな正極性の電圧が印加された第一回収ローラ103との当接位置まで移送される。そして、第一クリーニングブラシローラ102の表面電位と第一回収ローラ103の表面電位との電位差で形成される電界により、第一クリーニングブラシローラ102上に移動したトナーを静電的に吸着して第一回収ローラ103上へ移動させ、第一回収ローラ103に移動した負極性のトナーは、第一掻き取りブレード104により回収ローラ表面から掻き落とされる。第一掻き取りブレード104により掻き落とされたトナーは、排出スクリュ109で装置外に排出される。
【0057】
第一クリーニングブラシローラ102により除去できたかった中間転写ベルト8上の正極性の転写残トナーは、第二クリーニングブラシローラ106の位置に移送される。第二クリーニングブラシローラ106には、トナーの正規帯電極性と同極性(負極性)の電圧が印加されており、中間転写ベルト8と第二クリーニングブラシローラ106表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト8上の正極性に帯電したトナーを静電的に吸着して第二クリーニングブラシローラ106へ移動させる。第二クリーニングブラシローラ106に移動した正極性のトナーは、第二クリーニングブラシローラ106よりも値が大きな負極性の電圧が印加された第二回収ローラ107との当接位置まで移送される。そして、第二クリーニングブラシローラ106の表面電位と第二回収ローラ107の表面電位との電位差で形成される電界により、第二クリーニングブラシローラ106上に移動したトナーを静電的に吸着して第二回収ローラ107上へ移動させる。第二回収ローラ107に移動した正極性のトナーは、第二掻き取りブレード108により第二回収ローラ表面から掻き落とされる。第二掻き取りブレード108により掻き落とされたトナーは、排出スクリュ109で装置外に排出される。
【0058】
次に、本実施形態の特徴点について説明する。
本プリンタは、各色階調パターン、シェブロンパッチ、トナー消費パターンなどのトナーパターンを中間転写ベルト8に形成し、画像を改善する処理を行っている。これら、画像を改善するために中間転写ベルト8に形成したトナーパターンは、ベルトクリーニング装置100により除去する。トナーパターンはほぼ正規帯電極性(負極性)にそろっている。よって、中間転写ベルト8上のトナーパターンは、第一クリーニングブラシローラ102により中間転写ベルト8から除去される。トナーパターンの付着量は、転写残トナーよりも多いため、中間転写ベルト8からトナーパターンを除去すると、第一クリーニングブラシローラ102に大量のトナーが付着する。この第一クリーニングブラシローラ102に付着した大量のトナーは、第一クリーニングブラシローラ102から第一回収ローラ103へと静電的に移動する。しかし、第一回収ローラ103の回収力不足により、第一クリーニングブラシローラ102に付着した大量のトナーを全て第一回収ローラ103へ静電的に移動させることができず、第一クリーニングブラシローラ102に残留する場合がある。第一クリーニングブラシローラ102にトナーが残ってしまうと、第一クリーニングブラシローラ102の回転で再び中間転写ベルト8との当接領域を通過するとき、ブラシ繊維に付着する新たなトナー量が減り、クリーニング性が低下してしまう。
【0059】
第一クリーニングブラシローラ102の回転数Rは480rpm、中間転写ベルト8の移動速度Vは350mm/sなので、トナーパターンの長さLが43.8mmまでは、(60/R)>(L/V)の関係を満たし、ブラシ一周分でクリーニング可能である。トナー消費パターンは30mm、シェブロンパッチ1セットは36mmなので、(60/R)>(L/V)の関係を満たし、第一クリーニングブラシローラ102一回転以内で中間転写ベルト8から除去することができる。しかし、階調パターンは1つのパッチが10mmで10個、パッチ間隔2mmで形成され、パッチ10個で1つのトナーパターンと考えると、全体で118mmとなり、(60/R)>(L/V)の関係を満たさず、第一クリーニングブラシローラ102一回転以上で除去することになる。上述したように、2回転目は、ブラシ繊維にトナーが残留しているため、第一クリーニングブラシローラ102のクリーニング性が低下している。このため、2回転目は、第一クリーニングブラシローラ102ではトナーパターンのほとんど占める負極性トナーを完全に除去することができない不具合が生じる。この負極性トナーは、第二クリーニングブラシローラ106により中間転写ベルト8から静電的に除去されないため、クリーニング不良となってしまう。
【0060】
図6は、第一クリーニングブラシローラ102の周回数とクリーニング性との関係を評価する評価実験を行った結果を示すグラフである。
評価実験は、第二クリーニングブラシローラ106を外し、A4サイズの未転写トナー像(0.9mg/cm2)を入力し、中間転写ベルト8に残ったクリーニング残トナー量を調べた。クリーニング残トナー量は、第一クリーニングブラシローラ102が一回転するまでの間の中間転写ベルト8に残ったトナーを計測したものである。クリーニングの条件は前記の実施例と同じである。ブラシ一周目(0〜1回転するまでの間)のクリーニング残トナーは、0.05mg/cm2以下であった。クリーニング残トナー量が、0.05mg/cm2以下であれば、後段の第二クリーニングブラシローラ106で機械的に掻き落とすことができ、画像に問題ないレベルである。しかし、2周目以降は、クリーニング残トナー量が、0.05mg/cm2を超えてしまい、周回が増えるにつれ、クリーニング残トナー量が増加していった。これは、第一回収ローラ103の回収力不足のため、第一クリーニングブラシローラ102にトナーが蓄積していき、2周目以降、3,4・・・周目と徐々にクリーニング残トナー量が多くなっていったと考えられる。図6においては、トナー入力が無くなった7周目においても、クリーニング残トナーが生じている。これは、第一クリーニングブラシローラ102に多量のトナーが残留しており、そのトナーの一部が中間転写ベルト8に再付着したものと思われる。この評価実験では、8周目においても、中間転写ベルト8に再付着したトナーが存在し、トナー入力なしで一回転させても、完全に第一クリーニングブラシローラ102に残留した残留トナーを回収することができず、そのため、8周目においても、クリーニング残トナーが確認された。これは、第一クリーニングブラシローラ102には、6回転分の残留トナーが存在し、残留トナーが多すぎたため、一回転では回収できなかったと考えられる。しかし、クリーニングブラシ一回転分の残留トナー量であれば、トナー入力なしで、第一クリーニングブラシローラ102を一回転させれば、第一クリーニングブラシローラ102に残留した残留トナーを第一回収ローラ103でほぼ回収することができる。
【0061】
上述したように、一回転以上、未転写トナー像をクリーニングすると、クリーニング残トナー量が0.05mg/cm2を超えて、クリーニング不良が生じるおそれがあるので、トナーパターンは、第一クリーニングブラシローラ102の一回転以内に留めるのが好ましい。
【0062】
そこで、本実施形態においては、階調パターンSを、図7に示すように、3パッチからなるトナーパターン(S1,S2,S3,S4・・・・)を所定の間隔を開けて複数形成するようにした。このとき3パッチからなるトナーパターンの長さLは34mmで、トナーパターンの間隔Cを43.8mm以上の45mmに設定した。これにより、階調パターンの各トナーパターンを除去するとき、(60/R)>(L/V)の関係を満たし、ブラシ一周分でクリーニングすることができる。また、トナーパターンの間隔Cを43.8mm以上にすることで、(60/R)<(C/V)の関係を満たしている。これにより、前回のトナーパターンを除去してから第一クリーニングブラシローラ102が一回転した後に、次のトナーパターンを第一クリーニングブラシローラ102で除去することができる。その結果、残留トナーが十分に除去された第一クリーニングブラシローラ102で次のトナーパターン(負極性トナー)を良好に除去することができ、クリーニング不良が生じるのを抑制することができる。
【0063】
上述では、画像形成装置の制御手段たる不図示の制御部で、画像形成動作を制御して、トナーパターンの長さLを短くすることで、(60/R)>(L/V)の関係を満たしているが、第一クリーニングブラシローラ102の回転数を制御することにより、(60/R)>(L/V)の関係を満たしてもよい。例えば、第一クリーニングブラシローラ102の回転数Rを160rpmに設定することでパターン長さ131.3mmまでブラシ一周分でクリーニング可能であり、階調パターンも分割して形成することなく、10個一まとめでクリーニングすることができる。この場合は、画像濃度制御が実行されたとき、第一クリーニングブラシローラ102の回転数Rを、480rpmから160rpmに落とす制御を行うことにより、階調パターンを良好にクリーニングすることができる。しかしながら、第一クリーニングブラシローラ102の回転数を落とすと、第一クリーニングブラシローラ102のクリーニングニップを中間転写ベルト8上のトナーが抜けるまでの間のブラシとの接触機会が減り、ブラシ一本あたりのトナー除去量が増えてしまう。1本のブラシ繊維が保持できるトナー量には限界があるので、第一クリーニングブラシローラ102の回転数を落としすぎると、クリーニング性が低下するおそれがある。
【0064】
下記の表2は、第一クリーニングブラシローラ102の対中間転写ベルト8の線速比を変えて、第一クリーニングブラシローラ102のクリーニング性を調べた結果を示したものである。
前記の実験と同様に第二クリーニングブラシローラ106を外し、第一クリーニング部100aだけで実験し、中間転写ベルト8上のクリーニング残IDを調べた。クリーニング残IDは、A3用紙と同じ幅を有するテープを3等分し、これを、第一クリーニングブラシローラ102を通過した中間転写ベルト8にベルト幅方向に並べて貼り付け、クリーニング残トナーをテープに転写させる。そして、これらテープを紙に貼り付けたときの各テープの濃度IDを測定したものである。下記表のFは、中間転写ベルトの装置手前側に貼り付けたテープの濃度であり、Cは、中央のテープの濃度であり、Rは、中間転写ベルトの装置奥側のテープ濃度を示している。
【表2】
【0065】
表2に示すように、ブラシ回転数を96rpm(線速比1/5)にするとクリーニング残IDが、ブラシ回転数480rpm(線速比1/1)のときに比べて1.5倍に多くなっている。また、(線速比1/5)にしたとき、第一、第二クリーニングブラシローラをセットした状態で通紙するとトナーパターンのクリーニング残が次の転写紙に転写され、異常画像が発生してしまった。
【0066】
第一クリーニングブラシローラ102の回転数Rを落として、第一クリーニングブラシローラ102と中間転写ベルト8との線速比を落とさない方法としては、第一クリーニングブラシローラ102の直径を大きくすればよい。ブラシの直径を大きくすることで、同じ回転数でも、第一クリーニングブラシローラ102の線速を速くすることができる。
具体的には第一クリーニングブラシローラ102の実効半径をr、クリーニング性が維持できる線速比の最小値をXとすると、2πr×(R/60)>(V*X)の関係を満たすことで、クリーニング性を維持することができる。実効半径rは、(ブラシ半径)−(中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量)である。また、中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量は、0.5mm以上である。これは、食い込み量を小さくすると、ベルトに接触する機械的な力が弱くなり、クリーニング不良が生じるおそれがある。また、ブラシ実効半径rを用いることで、クリーニングニップにおけるブラシ線速を求めることができる。また、クリーニング性が維持できる線速比の最小値が、1/5のときは、Xは0.2となり、クリーニング性が維持できる線速比の最小値は、実験から容易に求めることができる。
【0067】
また、中間転写ベルト8の移動速度Vを制御して、(60/R)>(L/V)の関係を満たしてもよい。この場合は、画像形成装置の不図示の制御手段たる制御部は、階調パターンが中間転写ベルト8に転写されたら、中間転写ベルト8の移動速度を速める制御を行うのである。この場合も、中間転写ベルト8の移動速度を速めすぎると、クリーニングニップにおける中間転写ベルト8の移動速度と、第一クリーニングブラシローラ102の表面移動速度との線速比が小さくなり、上述と同様な理由で、クリーニング不良が生じる。よって、中間転写ベルト8の移動速度Vを速める場合も、2πr×(R/60)>(V*X)の関係を満たすようにする。
【0068】
また、上述では、トナーパターンの長さL、第一クリーニングブラシローラ102の回転数R、中間転写ベルトの移動速度Vのうちひとつを制御しているが、これらを組み合わせてもよい。例えば、階調パターンをクリーニングするとき、第一クリーニングブラシローラの回転数Rを落とし、階調パターン転写後の中間転写ベルト8の移動速度Vを速めることにより、(60/R)>(L/V)の関係を満たしてもよい。
【0069】
また、第一、第二クリーニング部100a、100bよりも中間転写ベルト移動方向上流側に、プレクリーニング部を備え、このプレクリーニング部で中間転写ベルト上のトナーパターンなどの未転写トナー像を大まかに除去するようにしてもよい。
【0070】
図8は、プレクリーニング部100cを備えたクリーニング装置100−2の概略構成図である。
プレクリーニング部100cは、プレクリーニング部材としてのプレクリーニングブラシローラ111、プレクリーニングブラシローラ111に付着したトナーを回収するプレ回収部材としてのプレ回収ローラ112、プレ回収ローラ112に当接してプレ回収ローラ表面からトナーを掻き取るプレトナー掻き取り部材としてのプレトナー掻き取りブレード113、プレクリーニングブラシローラ111と中間転写ベルト8を挟んで対向するプレ対向部材としてのプレクリーニング対向ローラ15を備えている。
【0071】
また、図8に示すクリーニング装置100−2においては、第一クリーニングブラシローラ102には、負極性のバイアスを印加して、中間転写ベルト8上の正極性トナーを除去し、第二クリーニングブラシローラ106とプレクリーニングブラシローラ111とには、正極性のバイアスを印加して、中間転写ベルト8上の負極性トナーを除去する。下記表3は、クリーニング装置100−2における各部材の芯金に印加される電圧の一例を示したものである。
【表3】
【0072】
表3に示すように、プレクリーニングブラシローラ111には、大量のトナーを付着させるために、第二クリーニングブラシローラ106への電圧よりも大きな電圧を印加している。また、このクリーニング装置100−2においては、第一クリーニングブラシローラ102に印加するバイアスを高くして、中間転写ベルト8上のトナーに負極性の電荷を付与して、無帯電トナーや弱帯電トナーの帯電極性を、正規帯電極性(負極性)に揃える機能を付与している。これにより、中間転写ベルト上のトナーを良好に除去することができる。
【0073】
このクリーニング装置100−2は、中間転写ベルト8に形成された各色階調パターン、シェブロンパッチ、トナー消費パターンなどのトナーパターンは、プレクリーニングブラシローラ111の位置に中間転写ベルト8の回転により移送される。中間転写ベルト8とプレクリーニングブラシローラ111表面電位との電位差で形成されるプレクリーニング電界により、中間転写ベルト8上の負極性に帯電したトナーを静電的に吸着してプレクリーニングブラシローラ111へ移動する。中間転写ベルト8に形成されたトナーパターンは、プレクリーニングブラシローラ111で大まかに除去される。これにより、第一クリーニング部100aや第二クリーニング部100bに入力されるトナー量を減らすことができる。よって、第一、第二クリーニング部100a、100bで、残りのトナーを良好に除去することができる。これにより、中間転写ベルト8に大量のトナーが付着している未転写トナー像でも、良好に中間転写ベルト8から除去することができる。
【0074】
そして、このクリーニング装置100−2においても、プレクリーニングブラシローラ111の回転数Rと、中間転写ベルト8の移動速度V、トナーパターンの長さをLとしたとき、(60/R)>(L/V)の関係を満たして、プレクリーニングブラシローラ111の一回転でトナーパターンをクリーニングするようにする。これにより、トナーパターンを、プレクリーニング部100cで良好に除去でき、クリーニング不良を抑制することができる。また、トナーパターンの間隔Cとしたとき、(60/R)<(C/V)の関係を満たすことにより、前回のトナーパターンを除去してプレクリーニングブラシローラ111が一回転した後に、次のトナーパターンをプレクリーニングブラシローラ111で除去することができる。
【0075】
次に、本プリンタに好適に使用されるトナーについて説明する。
本プリンタに好適に使用されるトナーは、600dpi以上の微少ドットを再現するために、トナーの体積平均粒径が3〜6[μm]のものが好ましい。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.40の範囲にあるトナーが好ましい。(Dv/Dn)が1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0076】
トナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。図9は、形状係数SF−1を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π)/4・・・式(1)
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0077】
また、図10は、形状係数SF−2を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(2)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100/4πを乗じた値である。
SF−2={(PERI)2/AREA}×100/(4π)・・・式(2)
SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0078】
形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算した。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0079】
また、カラープリンタに好適に使用されるトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマーと、ポリエステルと、着色剤と、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
【0080】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。
多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0081】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0082】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0083】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−イソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5/1を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1/1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0084】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
【0085】
2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0086】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2/1超や、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0087】
また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0088】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0089】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。
【0090】
また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0091】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0092】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。
【0093】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
【0094】
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0095】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。
【0096】
また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0097】
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR1、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0098】
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0099】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LR1−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0100】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0101】
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。
【0102】
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
【0103】
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2[μm]であることが好ましく、特に5×10−3〜0.5[μm]であることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500[m2/g]であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−4μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
【0104】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
【0105】
(トナーの製造方法)
(1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0106】
(2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
【0107】
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0108】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0109】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0110】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0111】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0112】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1[μm]、及び3[μm]、ポリスチレン微粒子0.5[μm]及び2[μm]、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1[μm]、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0113】
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0114】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20[μm]にするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000[rpm]、好ましくは5000〜20000[rpm]である。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0115】
(3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。
この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0116】
(4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0117】
(5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。
【0118】
これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0119】
またトナーの形状は略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。図11(a),(b),(c)はトナーの形状を模式的に示す図である。図11(a),(b),(c)において、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定するとき、トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(図11(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(図11(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。
【0120】
なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0121】
また、本発明のクリーニング装置は、中間転写ベルトのおもて面をクリーニングするベルトクリーニング装置100に限らず、図12に示すように、紙搬送ベルト51のクリーニング装置500にも適用することができる。図12に示すように、タンデム型直接転写方式の画像形成装置に用いられる被清掃体としての紙搬送ベルト51は、感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ接触してY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、記録紙Pを自らの表面に保持しながら、自らの無端移動に伴って図中左側から右側に向けて搬送する過程で、記録紙PをY,M,C,K用の一次転写ニップに順次送り込む。これにより、記録紙Pには、Y,M,C,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。K用の一次転写ニップを通過した後の紙搬送ベルト51に付着しているトナーなどの汚れは、搬送ベルトクリーニング装置500によって除去される。また、光学センサユニット150が紙搬送ベルト51のおもて面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。図12に示すプリンタにおいても、所定のタイミングで画像濃度制御や位置ずれ量補正制御を実施し、紙搬送ベルト51に所定のトナーパターン(階調パターン、シェブロンパッチ)を形成し、光学センサユニット150で上記トナーパターンを検知し、検知結果に基づいて所定の補正処理を実行する。光学センサユニット150で検知後のトナーパターンは、搬送ベルトクリーニング装置500で除去される。このように、紙搬送ベルト51は、トナー像を担持する像担持体としての機能を備えている。
【0122】
上記搬送ベルトクリーニング装置500に本発明のクリーニング装置を適用することによって、紙搬送ベルト51に形成されたトナーパターンを良好に除去することができ、記録紙の裏面が、トナーなどで汚れるのを抑制することができる。
【0123】
また、本発明のクリーニング装置は、図13に示すように、ドラムクリーニング装置4にも適用できる。図13に示すモノクロ画像形成装置においては、感光体ドラム1に対して所定の間隔をもって対向する不図示の光学センサユニットを設けており、感光体ドラムに形成された階調パターンは、不図示の光学センサユニットにより検知された後、ドラムクリーニング装置4に入力される。ドラムクリーニング装置4に本発明のクリーニング装置を適用することによってドラムクリーニング装置4に入力されたトナーパターンを良好に除去することができる。
【0124】
以上、本実施の画像形成装置によれば、表面移動する像担持体たる中間転写ベルト8と、中間転写ベルト上にトナー像を形成する画像形成手段(プロセスユニット6と、図示しない光書込ユニット、一次転写ローラで構成)と、回転しながら中間転写ベルト8上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材たるクリーニングブラシローラを備えたクリーニング手段たるベルトクリーニング装置100とを備えている。また、所定のタイミングで中間転写ベルト8上にトナーパターンを形成して、画像品質を改善する処理を行う。そして、トナーパターンをクリーニングブラシローラで除去するとき、(60/R)>(L/V)の条件を満たすように画像形成手段、中間転写ベルトの表面移動速度およびクリーニングブラシローラの回転数のうち少なくともひとつを制御する。ただし、R:クリーニングブラシローラの回転数(rpm)、L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)、V:中間転写ベルト表面移動速度(mm/s)である。上記条件を満たすことにより、クリーニングブラシ一回転でトナーパターンを除去することができ、トナーパターン除去時にクリーニング不良が生じるのを抑制することができる。
【0125】
また、トナーパターンの間隔(mm)をCとしたとき、(60/R)<(C/V)を満たすことにより、トナーパターンの間隔をクリーニングブラシローラが一回転する間よりも長くすることができる。これにより、クリーニングブラシローラに残留する残留トナーが回収ローラにより回収されてクリーニングブラシローラにほとんど残留トナーがない状態で、トナーパターンを除去することができる。これにより、トナーパターン除去時にクリーニング不良が生じるのを抑制することができる。
【0126】
また、ベルトクリーニング装置は、複数のクリーニングブラシローラを有しており、中間転写ベルト表面移動方向最上流に配置されたクリーニングブラシローラには、トナーの正規帯電極性と反対極性のバイアスが印加されて、中間転写ベルト上の正規帯電極性に帯電したトナーを静電的に中間転写ベルトから除去するものであり、上記回転数Rは、中間転写ベルト表面移動方向最上流に配置されたクリーニングブラシローラの回転数である。このような構成においては、最上流のクリーニングブラシローラが、トナーパターンを除去することになるので、最上流のクリーニングブラシローラ一回転でトナーパターンを除去することができ、トナーパターン除去時にクリーニング不良が生じるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0127】
1:感光体
2:帯電装置
4:ドラムクリーニング装置
5:現像装置
6:プロセスユニット
8:中間転写ベルト
9:1次転写ローラ
51:紙搬送ベルト
100:ベルトクリーニング装置
100a:第一クリーニング部
100b:第二クリーニング部
100c:プレクリーニング部
102:第一クリーニングブラシローラ
103:第一回収ローラ
106:第二クリーニングブラシローラ
107:第二回収ローラ
111:プレクリーニングブラシローラ
112:プレ回収ローラ
500:搬送ベルトクリーニング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】
【特許文献1】特開2006−58422号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転写体にトナー像を転写した後、像担持体に残留した転写残トナーを像担持体から静電的に除去するクリーニング装置を備えた画像形成装置が記載されている。具体的には、像担持体に当接しながら回転するクリーニング部材たるクリーニングブラシローラと、これに当接しながら回転する回収部材たる回収ローラと、回収ローラに当接する掻き取りブレードとを備えている。このクリーニングブラシローラには、トナーの正規帯電極性とは逆極性のクリーニング電圧を印加している。また、回収ローラには、クリーニング電圧と同極性で且つクリーニング電圧よりも値の大きな回収電圧を印加している。転写工程を経た後の像担持体の表面上に残留してしまった転写残トナーは、回転するクリーニングブラシローラによって引っ掻かれながら、像担持体とクリーニングブラシローラとの間の電界によってクリーニングブラシローラへ静電転移する。そして、クリーニングブラシローラから回収ローラ更に静電転移した後、掻き取りブレードによって回収ローラ表面から掻き落とされる。
【0003】
また、画像形成装置は、所定のタイミングでトナーパターンを形成して、画像品質を改善する処理を行っている。具体的には、所定のタイミングでトナーパターンを像担持体に形成し、像担持体上のトナーパターンを光学センサなどで検知し、その検知結果に基づいて、画像の濃度調整や色重ねのズレを補正することで画像品質を改善する。また、紙間などにトナーパターンを形成して、現像器内のトナーをリフレッシュして、画像品質を改善する。このような画像品質改善処理により上記像担持体上に形成されたトナーパターンは、転写体に転写されずにクリーニング装置で除去することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のクリーニング装置においては、クリーニングブラシと像担持体との当接領域にトナーパターンが進入した直後は、トナーパターンを良好に除去していたが、ある一定期間経過すると、トナーパターンを良好に除去できなくなり、クリーニング不良が生じてしまうという課題があった。この課題について、本出願人が、鋭意研究した結果、次のことがわかった。すなわち、上記のようにトナーパターンを除去する場合、クリーニングブラシローラで大量のトナーを除去することになる。しかし、回収ローラでクリーニングブラシに付着した大量のトナーを完全には回収することができず、一部がクリーニングブラシローラに残留してしまう。クリーニングブラシにトナーが残留してしまうと、クリーニングブラシローラの回転で再び像担持体との当接領域を通過するとき、ブラシ繊維に付着する新たなトナー量が減り、クリーニング性が低下してしまう。その結果、トナーパターンが進入した直後は、トナーパターンを良好に除去できていたが、クリーニングブラシ2回転目以降は、トナーパターンを良好に除去することができず、クリーニング不良となったのである。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、トナーパターンクリーニング時のクリーニング不良を抑制することができるクリーニング装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面移動する像担持体と、該像担持体上にトナー像を形成する画像形成手段と、回転しながら像担持体上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材を備えたクリーニング手段とを備え、所定のタイミングで像担持体上にトナーパターンを形成して、画像品質を改善する処理を行う画像形成装置において、転写体に転写されていない未転写の上記トナーパターンを上記クリーニング部材で除去するとき、以下の条件を満たすよう画像形成手段、像担持体表面移動速度およびクリーニング部材の回転数のうち少なくともひとつを制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
(60/R)>(L/V)
R:クリーニング部材の回転数(rpm)
L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)
V:像担持体表面移動速度(mm/s)
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記制御手段は、以下の条件を満たすよう画像形成手段、像担持体表面移動速度およびクリーニング部材の回転数のうち少なくともひとつを制御することを特徴とするものである。
(60/R)<(C/V)
C:トナーパターンの間隔(mm)
また、請求項3の発明は、請求項1または2の画像形成装置において、上記クリーニング手段は、複数のクリーニング部材を有しており、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材には、トナーの正規帯電極性と反対極性のバイアスが印加されて、像担持体上の正規帯電極性に帯電したトナーを静電的に像担持体から除去するものであり、上記回転数Rは、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材の回転数であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、トナー像を担持して表面移動する像担持体に当接し、回転しながら像担持体上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材を備えたクリーニング装置において、画像品質を改善する処理を行うために上記像担持体に形成された転写体に転写されていない未転写のトナーパターンを上記クリーニング部材で除去するとき、クリーニング部材の回転数が、以下の条件を満たすよう、クリーニング部材の回転数を制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
(60/R)>(L/V)
R:クリーニング部材の回転数(rpm)
L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)
V:像担持体表面移動速度(mm/s)
また、請求項5の発明は、請求項4のクリーニング装置において、複数のクリーニング部材を有しており、上記制御手段は、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材の回転数を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記(60/R)>(L/V)の条件を満たすことにより、トナーパターンの像担持体とクリーニング部材との当接領域を通過する時間を、クリーニング部材が一回転する時間よりも短くすることができる。これにより、クリーニングブラシ一回転でトナーパターンを除去することができ、トナーパターンクリーニング時のクリーニング不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図2】階調パターンと光学センサとを示した中間転写ベルト近傍の拡大概略構成図。
【図3】同中間転写ベルトに形成されるシェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図4】同中間転写ベルトに形成されるトナー消費パターンを示す拡大模式図。
【図5】同プリンタのベルトクリーニング装置とその周囲とを拡大して示す拡大構成図。
【図6】第一クリーニングブラシローラの周回数とクリーニング性との関係を評価する評価実験を行った結果を示すグラフ。
【図7】階調パターンを、複数のトナーパターンに分割した実施形態を示す図。
【図8】プレクリーニング部を備えたクリーニング装置の概略構成図。
【図9】トナー粒子の二次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図。
【図10】トナー粒子の二次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図。
【図11】(a)、(b)、(c)はそれぞれトナーの形状を模式的に示す図。
【図12】タンデム型直接転写方式のプリンタの要部を示す概略構成図。
【図13】モノクロプリンタの要部を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、いわゆるタンデム型中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタの要部を示す概略構成図である。本プリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,黒(以下、Y,M,C,Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kを備えている。4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1Y,M,C,Kをそれぞれ有している。感光体1Y,M,C,Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,M,C,K、現像装置5Y,M,C,K、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,K、除電装置(不図示)等を有している。プロセスユニット6Y,M,C,Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。プロセスユニット6Y,M,C,Kの上方には、感光体1Y,M,C,Kの表面に対してレーザー光Lを照射して静電潜像を書き込むための図示しない光書込ユニットが配設されている。
【0010】
プロセスユニット6Y,M,C,Kの下方には、ベルト部材たる無端状の中間転写ベルト8を具備するベルト装置としての転写ユニット7が配設されている。中間転写ベルト8の他、そのループ内側に配設された複数の張架ローラや、ループ外側に配設された2次転写ローラ17、押圧ローラ16、ベルトクリーニング装置100などを有している。
【0011】
中間転写ベルト8のループ内側には、4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kと、テンションローラ10と、駆動ローラ11と、2次転写対向ローラ12と、2個のクリーニング対向ローラ13、14とが配設されている。これらローラのうち、少なくとも4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kと、テンションローラ10と、駆動ローラ11と、2次転写対向ローラ12は、自らの周面の一部に中間転写ベルト8を掛け回してベルト張架を行う張架ローラとして機能している。中間転写ベルト8は、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される駆動ローラ11の回転により、図中時計回り方向に無端移動せしめられる。
【0012】
ベルトループ内側に配設された4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kは、感光体1Y,M,C,Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、感光体1Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。なお、1次転写ローラ9Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によってトナーとは逆極性の1次転写バイアスが印加される。
【0013】
また、ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ12は、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ17との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、2次転写ローラ17とが当接する2次転写ニップが形成されている。なお、2次転写ローラ17には、図示しない電源によってトナーとは逆極性の2次転写バイアスが印加される。また、2次転写ローラと数本の支持ローラと駆動ローラにより紙搬送ベルトを架け渡し、二次転写ローラ18と、二次転写対向ローラ12との間に、中間転写ベルト8及び紙搬送ベルトを挟み込んだ構成としてもよい。
【0014】
また、ベルトループ内側に配設されたベルトクリーニング装置100のクリーニング対向ローラ13、14は、ベルトループ外側に配設されたベルトクリーニング装置100の各クリーニングブラシローラ102、106との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、クリーニングブラシローラ102、106とが当接するクリーニングニップが形成されている。クリーニング対向ローラ13、14は、不図示の駆動手段により回転駆動するものであってもよいし、中間転写ベルト8の回転にともなって従動回転するものでもよい。ベルトクリーニング装置100は中間転写ベルト8と一体的に交換可能になっているが、ベルトクリーニング装置100と中間転写ベルト8とで寿命設定が異なる場合には、ベルトクリーニング装置100を中間転写ベルトとは独立してプリンタ本体に着脱可能としてもよい。
【0015】
本プリンタは、記録紙Pを収容する給紙カセットや、給紙カセットから記録紙Pを給紙路に給紙する給紙ローラなどを有する図示しない給紙部を備えている。また、給紙部から送られてきた記録紙を受け入れて2次転写ニップに向けて所定のタイミングで送り出す図示しないレジストローラ対を、上述した2次転写ニップの図中右側方に備えている。また、2次転写ニップから送り出される記録紙Pを受け入れてその記録紙Pに対してトナー像の定着処理を施す図示しない定着装置を、上述した2次転写ニップの図中左側方に備えている。また、必要に応じて、現像装置5Y,M,C,Kに対してY,M,C,Kトナーを補給する図示しないY,M,C,K用のトナー補給装置も備えている。
【0016】
近年、記録紙として従来広く用いられてきた普通紙に加え、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙が用いられることが増えている。このような特殊紙を用いると、従来の普通紙の場合よりもカラートナーを重ね合わせた中間転写ベルト8上のトナー像を紙に2次転写する際に転写不良が発生し易くなる。そこで、本プリンタでは、中間転写ベルト8に硬度の低い弾性層を設け、転写ニップ部でトナー層や平滑性の悪い記録紙に対して変形できるようにしている。中間転写ベルト8に硬度の低い弾性層を設け、中間転写ベルト8に弾性をもたせることにより、中間転写ベルト8表面が局部的な凸凹に追従して変形できる。これにより、過度にトナー層に対して転写圧を高めることなく、良好な密着性が得られ、文字の転写中抜けがなく、また、平滑性の悪い用紙等に対しても転写ムラのない、均一性に優れた転写画像を得ることができる。
【0017】
本プリンタでは、中間転写ベルト8は、少なくとも基層、弾性層、表面のコート層から構成される。
【0018】
中間転写ベルト8の弾性層に用いられる材料としては、弾性材ゴム、エラストマー等の弾性部材が挙げられ、具体的には、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0019】
弾性層の厚さは、硬度及び層構成にもよるが、0.07〜0.5[mm]の範囲が好ましい。さらに好ましくは0.25〜0.5[mm]の範囲がよい。又、中間転写ベルト8の厚さが0.07[mm]以下と薄いと、二次転写ニップ部で中間転写ベルト8上のトナーに対する圧力が高くなり、転写中抜けが発生しやすくなり、さらに、トナーの転写率が低下する。
【0020】
また、弾性層の硬度は、10°≦HS≦65°(JIS−A)であることが好ましい。中間転写ベルト8の層厚によって最適な硬度は異なるものの、硬度が10°JIS−Aより低いと転写中抜けが生じやすい。これに対して硬度が65°JIS−Aより高いものは、ローラヘの張架が困難となり、また、長期の張架によって延伸するために耐久性が無く早期の交換が必要になる。
【0021】
中間転写ベルト8の基層は、伸びの少ない樹脂で構成している。具体的に、基層に用いられる材料としては、ポリカーボネート、フッ素樹脂(ETFE、PVDF等)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ピニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0022】
また、伸びの大きなゴム材料などからなる弾性層の伸びを防止するために、基層と弾性層との間に帆布などの材料で構成された芯体層を設けてもよい。芯体層に用いられる伸びを防止する材料としては、例えば、綿、絹、などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フエノール繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる1種あるいは2種以上を用い、糸状あるいは織布状のものを使用することができる。もちろん、上記材料に限定されるものではない。上記の糸は1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。もちろん糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方織布は、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり、導電処理を施すことも可能である。
【0023】
中間転写ベルト8表面のコート層は、弾性層の表面をコーティングするためのものであり、平滑性のよい層からなるものである。コート層に用いられる材料としては、特に制限はないが、一般的に、中間転写ベルト8表面へのトナーの付着カを小さくして二次転写性を高める材料が用いられる。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上、又は、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、たとえばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、酸化チタン、シリコンカーバイド等の粒子を1種類あるいは2種類以上、又は必要に応じて粒径を変えたものを分散させて使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素層を形成させ、表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
【0024】
また、必要に応じて、基層、弾性層又はコート層は、抵抗を調整する目的で、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等を用いることができる。ここで、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0025】
パーソナルコンピュータ等から画像情報が送られてくると、本プリンタは、駆動ローラ11を回転駆動して、中間転写ベルト8を無端移動させる。駆動ローラ11以外の張架ローラについては、ベルトに従動回転させる。同時に、プロセスユニット6Y,M,C,Kの感光体1Y,M,C,Kを回転駆動する。また、感光体1Y,M,C,Kの表面を帯電装置2Y,M,C,Kによって一様に帯電させながら、帯電後の表面に対してレーザー光Lの照射によって静電潜像を形成する。そして、感光体1Y,M,C,Kの表面に形成した静電潜像を現像装置5Y,M,C,Kによって現像することで、感光体1Y,M,C,K上にY,M,C,Kトナー像を得る。Y,M,C,Kトナー像は、上述したY,M,C,K用の1次転写ニップにて、中間転写ベルト8のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。すなわち、プロセスユニット6と、図示しない光書込ユニット、一次転写ローラとで像担持体たる中間転写ベルトに画像を形成する画像形成手段が構成される。また、像担持体たる感光体に画像を形成する画像形成手段は、帯電装置、光書込ユニット、現像装置により構成される。
【0026】
一方、不図示の給紙部では、給紙ローラによって給紙カセットから記録紙Pを1枚づつ送り出してレジストローラ対まで搬送する。そして、中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで、レジストローラ対を駆動して記録紙Pを2次転写ニップに送り込んで、ベルト上の4色重ね合わせトナー像を記録紙Pに一括2次転写する。これにより、記録紙Pの表面にフルカラー画像を形成する。フルカラー画像形成後の記録紙Pについては、2次転写ニップから定着装置に搬送してトナー像の定着処理を施す。
【0027】
Y,M,C,Kトナー像を中間転写ベルト8に1次転写した後の感光体1Y,M,C,Kについては、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kによって転写残トナーのクリーニング処理を施す。その後、図示しない除電ランプで除電した後、帯電装置2Y,M,C,Kで一様に帯電せしめて、次の画像形成に備える。また、記録紙Pに一次転写した後の中間転写ベルト8については、ベルトクリーニング装置100によって転写残トナーのクリーニング処理を施す。
【0028】
K用のプロセスユニット6Kの図中右側方には、光学センサユニット150が中間転写ベルト8のおもて面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。この光学センサユニット150は、図2に示すように、中間転写ベルト8の幅方向に並ぶY光学センサ151Y、C光学センサ151C、M光学センサ151M、K光学センサ151Kを有している。これらセンサは何れも反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子から発した光を中間転写ベルト8のおもて面やベルト上のトナー像で反射させ、その反射光量を図示しない受光素子によって検知する。図示しない制御部は、これらセンサからの出力電圧値に基づいて、中間転写ベルト8上のトナー像を検知したり、その画像濃度(単位面積あたりのトナー付着量)を検知したりすることができる。
【0029】
本プリンタにおいては、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、各色の画像濃度を適正化するための画像濃度制御を実行する。
画像濃度制御は、まず、図2に示すような、各色の階調パターンSk、Sm、Sc、Syを中間転写ベルト8上における各光学センサ151Y、M、C、Kに対向する位置に自動形成する。各色の階調パターンは、10個の画像濃度が異なる2[cm]×2[cm]の面積のトナーパッチからなっている。各色の階調パターンSk、Sm、Sc、Syを作成するときの、感光体1Y,M,C,Kの帯電電位は、プリントプロセスにおける一様なドラム帯電電位とは異なり、値を徐々に大きくする。そして、レーザー光の走査によって階調パターン像を形成するための複数のパッチ静電潜像を感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ形成せしめながら、それらをY,M,C,K用の現像装置5Y,M,C,Kによって現像する。この現像の際、Y,M,C,K用の現像ローラに印加される現像バイアスの値を徐々に大きくしていく。このような現像により、感光体1Y,M,C,K上にはY,M,C,Kの階調パターン像が形成される。これらは、中間転写ベルト8の主走査方向に所定の間隔で並ぶように1次転写される。このときの、各色の階調パターンにおけるトナーパッチのトナー付着量は最小で0.1[mg/cm2]、最大で0.55[mg/cm2]ほどあり、また、トナーQ/d分布を測定すると、ほぼ正規帯電極性にそろっている。
【0030】
中間転写ベルト8に形成され各トナーパターン(Sk、Sm、Sc、Sy)は、中間転写ベルト8の無端移動に伴って、光学センサ151との対向位置を通過する。この際、光学センサ151は、各階調パターンのトナーパッチに対する単位面積あたりのトナー付着量に応じた量の光を受光する。
【0031】
次に、各色トナーパッチを検知したときの光学センサ151の出力電圧と、付着量変換アルゴリズムとから、各色のトナーパターンの各トナーパッチにおける付着量を算出し、算出した付着量に基づき作像条件を調整する。具体的には、トナーパッチにおけるトナー付着量を検知した結果と、各トナーパッチを作像したときの現像ポテンシャルとに基づいてその直線グラフを示す関数(y=ax+b)を回帰分析によって計算する。そして、この関数に画像濃度の目標値を代入することで適切な現像バイアス値を演算し、Y、M、C、K用の現像バイアス値を特定する。
【0032】
メモリ内には、数十通りの現像バイアス値と、それぞれに個別に対応する適切なドラム帯電電位とが予め関連付けられている作像条件データテーブルが格納されている。各プロセスユニット6Y,M,C,Kについて、それぞれこの作像条件テーブルの中から、特定した現像バイアス値に最も近い現像バイアス値を選び出し、これに関連付けられたドラム帯電電位を特定する。
【0033】
また、本プリンタは、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、色ずれ量補正処理も実施するようになっている。そして、この色ずれ量補正処理において、中間転写ベルト8の幅方向の一端部と他端部とにそれぞれ、図3に示すようなシェブロンパッチPVと呼ばれるY,M,C,Kの各色トナー像からなる色ずれ検知用画像を形成する。シェブロンパッチPVは、図3に示すように、Y,M,C,Kの各色のトナー像を主走査方向から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このシェブロンパッチPVの付着量は、0.3[mg/cm2]ほどである。
【0034】
中間転写ベルト8の幅方向の両端部にそれぞれ形成したシェブロンパッチPV内の各色トナー像を検知することで、各色トナー像における主走査方向(感光体軸線方向)の位置、副走査方向(ベルト移動方向)の位置、主走査方向の倍率誤差、主走査方向からのスキューをそれぞれ検出する。ここで言う主走査方向とは、ポリゴンミラーでの反射に伴ってレーザー光が感光体表面上で位相する方向を示している。このようなシェブロンパッチPV内のY,M,Cトナー像について、Kトナー像との検知時間差を光学センサ151で読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tyk、tmk、tckについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ちレジストズレ量を求める。そして、そのレジストズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットのポリゴンミラー1面おき、即ち、1走査ラインピッチを1単位として、感光体1に対する光書込開始タイミングを補正して、各色トナー像のレジストズレを低減する。また、ベルト両端部間での副走査方向ズレ量の差に基づいて、各色トナー像の主走査方向からの傾き(スキュー)を求める。そして、その結果に基づいて、光学系反射ミラーの面倒れ補正を実施して、各色トナー像のスキューズレを低減する。以上のように、シェブロンパッチPV内における各トナー像を検知したタイミングに基づいて光書込開始タイミングや面倒れを補正してレジストズレやスキューズレを低減する処理が、色ずれ補正処理である。このような色ずれ補正処理により、温度変化などで各色トナー像の中間転写ベルト8に対する形成位置が経時的にずれていくことに起因する画像の色ずれの発生を抑えることができる。
【0035】
また、低画像面積の画像形成動作が続くと、現像装置内に長時間とどまりつづける古いトナーが増えてくるため、トナー帯電特性が劣化し画像形成に用いると画像品質が悪くなる(現像能力低下、転写性低下)。このような古いトナーが現像装置内に滞留しないように一定のタイミングで感光体1の非画像領域に吐き出させ、吐き出し後にトナー濃度が低下した現像装置に新しいトナーを補給して現像装置内をリフレッシュするリフレッシュモードを備えている。
【0036】
不図示の制御部は、各現像装置5Y,M,C,Kのトナー消費量と、各現像装置5Y,M,C,Kの動作時間とを記憶しておき、所定のタイミングで、現像装置の所定期間の動作時間に対して、トナー消費量が閾値以下である否かを各現像装置について調べ、閾値以下の現像装置について、リフレッシュモードを実行する。
【0037】
リフレッシュモードが実行されると、図4に示すように、感光体の紙間に対応する非画像形成領域にトナー消費パターンが作成され、中間転写ベルト8に転写される。トナー消費パターンの付着量は、現像装置の所定期間の動作時間に対するトナー消費量に基づき決定され、単位面積当りの最大付着量が、1.0[mg/cm2]ほどになることがある。また、中間転写ベルト8に転写されたトナー消費パターンのトナーQ/d分布を測定すると、ほぼ正規帯電極性に揃っている。
【0038】
次に、本プリンタのベルトクリーニング装置100について説明する。
図5は、本プリンタのベルトクリーニング装置100とその周囲とを拡大して示す拡大構成図である。このベルトクリーニング装置100は、像担持体たる中間転写ベルト8上のトナーのうち正規帯電極性である負極性トナーをクリーニングするための第一クリーニング部100aと、中間転写ベルト8上のトナーのうち正規帯電極性と逆極性である正極性トナーをクリーニングする第二クリーニング部100bとを有している。
【0039】
第一クリーニング部100aは、クリーニング回転体としての第一クリーニングブラシローラ102、第一クリーニングブラシローラ102に付着したトナーを回収する回収手段としての第一回収ローラ103、第一回収ローラ103に当接して第一回収ローラ表面からトナーを掻き取るトナー掻き取り部材としての第一トナー掻き取りブレード104を備えている。
【0040】
第一クリーニングブラシローラ102は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備しており、図示しないブラシ用電源によってトナーの正規帯電極性と逆極性である正極性の第一クリーニングバイアスが印加される。また、第一回収ローラ103には、図示しない回収電源より、正極性で且つ第一クリーニングバイアスよりも大きな値の第一回収バイアスが印加される。
【0041】
第二クリーニング部100bは、第一クリーニング部100aよりも中間転写ベルト8移動方向下流側に配置され、第一クリーニング部100aと同様、クリーニング回転体としてのクリーニングブラシローラ106、回収手段としての回収ローラ107、掻き取りブレード108を備えている。
【0042】
第二クリーニングブラシローラ106は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備しており、図示しないブラシ用電源によってトナーの正規帯電極性と同極性である負極性の第二クリーニングバイアスが印加される。また、第二回収ローラ107には、図示しない回収電源より、負極性で且つ第二クリーニングバイアスよりも大きな値の第二回収バイアスが印加される。
【0043】
また、本ベルトクリーニング装置100は、第一、第二クリーニング部100a,100bで除去したトナーを、装置ケーシングの一端部に向けて搬送してベルトクリーニング装置100ケーシングの外に排出する排出スクリュ109が設けられている。排出スクリュ109によってクリーニング装置から排出されたトナーは、プリンタ本体に備えられた図示しない廃トナータンク(不図示)内に落下する。また、廃タンクではなく、現像装置に戻すようにしてもよい。
【0044】
また、中間転写ベルト8表面保護のために、第二クリーニングブラシローラ106で中間転写ベルト8の表面に潤滑剤を塗布してもよい。この場合は潤滑剤を固形化したものを第二クリーニングブラシローラ106に当接させ、潤滑剤を塗布するようにする。また、第二クリーニングブラシローラ106よりも中間転写ベルト8移動方向下流側に、中間転写ベルト表面に塗布した潤滑剤を均す均しブレードを設けてもよい。また、第二クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けてもよい。第二クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けることで、第二クリーニングブラシローラ106で潤滑剤を塗布する場合、第二クリーニングブラシローラ106にはトナーが常時回収されているため、トナーと潤滑剤とが交じり合い、潤滑剤塗布時にいったん回収したトナーが、再度中間転写ベルト上に付着する場合がある。一方、第二クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けることで、回収されたトナーが中間転写ベルト8に再付着するのを抑制できる。
【0045】
本プリンタのベルトクリーニング装置100における具体的な構成条件の一例は、以下のとおりである。
<第一クリーニングブラシローラ102の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000Vの電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ直径:15mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
ブラシ回転数:480rpm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0046】
<第二クリーニングブラシローラ106の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×107Ω(1000Vの電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ直径:15mm
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1mm
ブラシ回転数:480rpm
回転方向:ベルトに対してカウンター方向
【0047】
第一、第二クリーニングブラシローラ102、106のブラシ繊維は繊維全体としては導電性であるが、繊維表面は絶縁層で覆われているものを用いる。繊維表面に絶縁層を有することで、各クリーニングブラシローラ102、106と中間転写ベルト8とが接触する際に電流が流れ難くなり、ブラシ繊維がベルトからトナーを静電吸引する際に余分な電流が流れ難くなる。このため、トナーに逆極性の電荷を与えてしまうことがなく、いったんブラシ内に捕捉したトナーを中間転写ベルト8に再付着させる恐れが少なくなる。ただし、このようなブラシを使用しても、繊維表面の絶縁を破壊して電流を流すほどの電圧を回転軸に印加すると、結果として中間転写ベルト8にトナーを戻してしまうことになるので、電圧値の設定には注意を要する。繊維の構造についてはこれに限ったものではなく電圧の設定値を調整することで、逆に絶縁層の表面に導電層が形成されたものや繊維全体に導電部材が分散されているものを用いることもできる。
【0048】
各クリーニングブラシローラ102、106は、ブラシロール状に形成後、一方向に毛を倒す斜毛処理を施すと、繊維断面に露出している導電剤を中間転写ベルト8に接触させ難くなる。これにより、トナーへの電荷注入性が低減され、クリーニング性の余裕度が向上する。繊維はナイロン、ポリエステル、アクリル等の絶縁材が一般的で何れの材料の場合も同じ効果である。また、芯鞘構造の代表的な繊維は特開平10−310974号公報、特開平10−131035、特開平01−292116号公報、特公平07−033637号公報、特公平07−033606号公報、特公平03−064604号公報に開示されている。
【0049】
<第一回収ローラ103の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
ローラ回転数:480rpm
回転方向:第一クリーニングブラシローラ102に対してカウンター方向
【0050】
<第二回収ローラ107の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維食い込み量:1.5mm
ローラ回転数:480rpm
回転方向:第二クリーニングブラシローラ106に対してカウンター方向
【0051】
各回収ローラ103,107はSUSローラを用いた。本実施形態で用いた回収ローラ103、107のみならず、導電性芯金に数μm〜100μm程度の高抵抗弾性チューブを被せたもの、あるいはさらに絶縁コーティングしたものでも同じ性能を得られる。回収ローラ103,107の表面の材料としては、PVDFチューブ、PFAチューブ、PIチューブ、アクリルコート、シリコーンコート(例えばシリコーン粒子を含有したPC(ポリカーボネート)をコート)、セラミックス、フッ素コーティングなどがある。
【0052】
<第一掻き取りブレード104の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第一回収ローラ103へのブレード食い込み量:0.6mm
【0053】
<第二掻き取りブレード108の条件>
材質:SUS
厚み:100μm
ブレード当接角度:20°
第二回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6mm
【0054】
表1に各クリーニングブラシローラ、回収ローラの印加電圧の例を示す。
【表1】
【0055】
また、本実施形態の中間転写ベルト8、クリーニング対向ローラ13、14の条件は、以下のとおりである。
<中間転写ベルトの条件>
材質:弾性ベルト
層厚:500μm
移動速度:350mm/s
<クリーニング対向ローラ13、14の条件>
材質:アルミ
直径:14mm
【0056】
2次転写ニップを通過した転写残トナーは、第一クリーニングブラシローラ102の位置に中間転写ベルト8の回転により移送される。第一クリーニングブラシローラ102には、トナーの正規帯電極性と反対極性(正極性)の電圧が印加されており、中間転写ベルト8と第一クリーニングブラシローラ102表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト8上の負極性に帯電したトナーを静電的に吸着して第一クリーニングブラシローラ102へ移動させる。第一クリーニングブラシローラ102に移動した負極性のトナーは、第一クリーニングブラシローラ102よりも値が大きな正極性の電圧が印加された第一回収ローラ103との当接位置まで移送される。そして、第一クリーニングブラシローラ102の表面電位と第一回収ローラ103の表面電位との電位差で形成される電界により、第一クリーニングブラシローラ102上に移動したトナーを静電的に吸着して第一回収ローラ103上へ移動させ、第一回収ローラ103に移動した負極性のトナーは、第一掻き取りブレード104により回収ローラ表面から掻き落とされる。第一掻き取りブレード104により掻き落とされたトナーは、排出スクリュ109で装置外に排出される。
【0057】
第一クリーニングブラシローラ102により除去できたかった中間転写ベルト8上の正極性の転写残トナーは、第二クリーニングブラシローラ106の位置に移送される。第二クリーニングブラシローラ106には、トナーの正規帯電極性と同極性(負極性)の電圧が印加されており、中間転写ベルト8と第二クリーニングブラシローラ106表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト8上の正極性に帯電したトナーを静電的に吸着して第二クリーニングブラシローラ106へ移動させる。第二クリーニングブラシローラ106に移動した正極性のトナーは、第二クリーニングブラシローラ106よりも値が大きな負極性の電圧が印加された第二回収ローラ107との当接位置まで移送される。そして、第二クリーニングブラシローラ106の表面電位と第二回収ローラ107の表面電位との電位差で形成される電界により、第二クリーニングブラシローラ106上に移動したトナーを静電的に吸着して第二回収ローラ107上へ移動させる。第二回収ローラ107に移動した正極性のトナーは、第二掻き取りブレード108により第二回収ローラ表面から掻き落とされる。第二掻き取りブレード108により掻き落とされたトナーは、排出スクリュ109で装置外に排出される。
【0058】
次に、本実施形態の特徴点について説明する。
本プリンタは、各色階調パターン、シェブロンパッチ、トナー消費パターンなどのトナーパターンを中間転写ベルト8に形成し、画像を改善する処理を行っている。これら、画像を改善するために中間転写ベルト8に形成したトナーパターンは、ベルトクリーニング装置100により除去する。トナーパターンはほぼ正規帯電極性(負極性)にそろっている。よって、中間転写ベルト8上のトナーパターンは、第一クリーニングブラシローラ102により中間転写ベルト8から除去される。トナーパターンの付着量は、転写残トナーよりも多いため、中間転写ベルト8からトナーパターンを除去すると、第一クリーニングブラシローラ102に大量のトナーが付着する。この第一クリーニングブラシローラ102に付着した大量のトナーは、第一クリーニングブラシローラ102から第一回収ローラ103へと静電的に移動する。しかし、第一回収ローラ103の回収力不足により、第一クリーニングブラシローラ102に付着した大量のトナーを全て第一回収ローラ103へ静電的に移動させることができず、第一クリーニングブラシローラ102に残留する場合がある。第一クリーニングブラシローラ102にトナーが残ってしまうと、第一クリーニングブラシローラ102の回転で再び中間転写ベルト8との当接領域を通過するとき、ブラシ繊維に付着する新たなトナー量が減り、クリーニング性が低下してしまう。
【0059】
第一クリーニングブラシローラ102の回転数Rは480rpm、中間転写ベルト8の移動速度Vは350mm/sなので、トナーパターンの長さLが43.8mmまでは、(60/R)>(L/V)の関係を満たし、ブラシ一周分でクリーニング可能である。トナー消費パターンは30mm、シェブロンパッチ1セットは36mmなので、(60/R)>(L/V)の関係を満たし、第一クリーニングブラシローラ102一回転以内で中間転写ベルト8から除去することができる。しかし、階調パターンは1つのパッチが10mmで10個、パッチ間隔2mmで形成され、パッチ10個で1つのトナーパターンと考えると、全体で118mmとなり、(60/R)>(L/V)の関係を満たさず、第一クリーニングブラシローラ102一回転以上で除去することになる。上述したように、2回転目は、ブラシ繊維にトナーが残留しているため、第一クリーニングブラシローラ102のクリーニング性が低下している。このため、2回転目は、第一クリーニングブラシローラ102ではトナーパターンのほとんど占める負極性トナーを完全に除去することができない不具合が生じる。この負極性トナーは、第二クリーニングブラシローラ106により中間転写ベルト8から静電的に除去されないため、クリーニング不良となってしまう。
【0060】
図6は、第一クリーニングブラシローラ102の周回数とクリーニング性との関係を評価する評価実験を行った結果を示すグラフである。
評価実験は、第二クリーニングブラシローラ106を外し、A4サイズの未転写トナー像(0.9mg/cm2)を入力し、中間転写ベルト8に残ったクリーニング残トナー量を調べた。クリーニング残トナー量は、第一クリーニングブラシローラ102が一回転するまでの間の中間転写ベルト8に残ったトナーを計測したものである。クリーニングの条件は前記の実施例と同じである。ブラシ一周目(0〜1回転するまでの間)のクリーニング残トナーは、0.05mg/cm2以下であった。クリーニング残トナー量が、0.05mg/cm2以下であれば、後段の第二クリーニングブラシローラ106で機械的に掻き落とすことができ、画像に問題ないレベルである。しかし、2周目以降は、クリーニング残トナー量が、0.05mg/cm2を超えてしまい、周回が増えるにつれ、クリーニング残トナー量が増加していった。これは、第一回収ローラ103の回収力不足のため、第一クリーニングブラシローラ102にトナーが蓄積していき、2周目以降、3,4・・・周目と徐々にクリーニング残トナー量が多くなっていったと考えられる。図6においては、トナー入力が無くなった7周目においても、クリーニング残トナーが生じている。これは、第一クリーニングブラシローラ102に多量のトナーが残留しており、そのトナーの一部が中間転写ベルト8に再付着したものと思われる。この評価実験では、8周目においても、中間転写ベルト8に再付着したトナーが存在し、トナー入力なしで一回転させても、完全に第一クリーニングブラシローラ102に残留した残留トナーを回収することができず、そのため、8周目においても、クリーニング残トナーが確認された。これは、第一クリーニングブラシローラ102には、6回転分の残留トナーが存在し、残留トナーが多すぎたため、一回転では回収できなかったと考えられる。しかし、クリーニングブラシ一回転分の残留トナー量であれば、トナー入力なしで、第一クリーニングブラシローラ102を一回転させれば、第一クリーニングブラシローラ102に残留した残留トナーを第一回収ローラ103でほぼ回収することができる。
【0061】
上述したように、一回転以上、未転写トナー像をクリーニングすると、クリーニング残トナー量が0.05mg/cm2を超えて、クリーニング不良が生じるおそれがあるので、トナーパターンは、第一クリーニングブラシローラ102の一回転以内に留めるのが好ましい。
【0062】
そこで、本実施形態においては、階調パターンSを、図7に示すように、3パッチからなるトナーパターン(S1,S2,S3,S4・・・・)を所定の間隔を開けて複数形成するようにした。このとき3パッチからなるトナーパターンの長さLは34mmで、トナーパターンの間隔Cを43.8mm以上の45mmに設定した。これにより、階調パターンの各トナーパターンを除去するとき、(60/R)>(L/V)の関係を満たし、ブラシ一周分でクリーニングすることができる。また、トナーパターンの間隔Cを43.8mm以上にすることで、(60/R)<(C/V)の関係を満たしている。これにより、前回のトナーパターンを除去してから第一クリーニングブラシローラ102が一回転した後に、次のトナーパターンを第一クリーニングブラシローラ102で除去することができる。その結果、残留トナーが十分に除去された第一クリーニングブラシローラ102で次のトナーパターン(負極性トナー)を良好に除去することができ、クリーニング不良が生じるのを抑制することができる。
【0063】
上述では、画像形成装置の制御手段たる不図示の制御部で、画像形成動作を制御して、トナーパターンの長さLを短くすることで、(60/R)>(L/V)の関係を満たしているが、第一クリーニングブラシローラ102の回転数を制御することにより、(60/R)>(L/V)の関係を満たしてもよい。例えば、第一クリーニングブラシローラ102の回転数Rを160rpmに設定することでパターン長さ131.3mmまでブラシ一周分でクリーニング可能であり、階調パターンも分割して形成することなく、10個一まとめでクリーニングすることができる。この場合は、画像濃度制御が実行されたとき、第一クリーニングブラシローラ102の回転数Rを、480rpmから160rpmに落とす制御を行うことにより、階調パターンを良好にクリーニングすることができる。しかしながら、第一クリーニングブラシローラ102の回転数を落とすと、第一クリーニングブラシローラ102のクリーニングニップを中間転写ベルト8上のトナーが抜けるまでの間のブラシとの接触機会が減り、ブラシ一本あたりのトナー除去量が増えてしまう。1本のブラシ繊維が保持できるトナー量には限界があるので、第一クリーニングブラシローラ102の回転数を落としすぎると、クリーニング性が低下するおそれがある。
【0064】
下記の表2は、第一クリーニングブラシローラ102の対中間転写ベルト8の線速比を変えて、第一クリーニングブラシローラ102のクリーニング性を調べた結果を示したものである。
前記の実験と同様に第二クリーニングブラシローラ106を外し、第一クリーニング部100aだけで実験し、中間転写ベルト8上のクリーニング残IDを調べた。クリーニング残IDは、A3用紙と同じ幅を有するテープを3等分し、これを、第一クリーニングブラシローラ102を通過した中間転写ベルト8にベルト幅方向に並べて貼り付け、クリーニング残トナーをテープに転写させる。そして、これらテープを紙に貼り付けたときの各テープの濃度IDを測定したものである。下記表のFは、中間転写ベルトの装置手前側に貼り付けたテープの濃度であり、Cは、中央のテープの濃度であり、Rは、中間転写ベルトの装置奥側のテープ濃度を示している。
【表2】
【0065】
表2に示すように、ブラシ回転数を96rpm(線速比1/5)にするとクリーニング残IDが、ブラシ回転数480rpm(線速比1/1)のときに比べて1.5倍に多くなっている。また、(線速比1/5)にしたとき、第一、第二クリーニングブラシローラをセットした状態で通紙するとトナーパターンのクリーニング残が次の転写紙に転写され、異常画像が発生してしまった。
【0066】
第一クリーニングブラシローラ102の回転数Rを落として、第一クリーニングブラシローラ102と中間転写ベルト8との線速比を落とさない方法としては、第一クリーニングブラシローラ102の直径を大きくすればよい。ブラシの直径を大きくすることで、同じ回転数でも、第一クリーニングブラシローラ102の線速を速くすることができる。
具体的には第一クリーニングブラシローラ102の実効半径をr、クリーニング性が維持できる線速比の最小値をXとすると、2πr×(R/60)>(V*X)の関係を満たすことで、クリーニング性を維持することができる。実効半径rは、(ブラシ半径)−(中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量)である。また、中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量は、0.5mm以上である。これは、食い込み量を小さくすると、ベルトに接触する機械的な力が弱くなり、クリーニング不良が生じるおそれがある。また、ブラシ実効半径rを用いることで、クリーニングニップにおけるブラシ線速を求めることができる。また、クリーニング性が維持できる線速比の最小値が、1/5のときは、Xは0.2となり、クリーニング性が維持できる線速比の最小値は、実験から容易に求めることができる。
【0067】
また、中間転写ベルト8の移動速度Vを制御して、(60/R)>(L/V)の関係を満たしてもよい。この場合は、画像形成装置の不図示の制御手段たる制御部は、階調パターンが中間転写ベルト8に転写されたら、中間転写ベルト8の移動速度を速める制御を行うのである。この場合も、中間転写ベルト8の移動速度を速めすぎると、クリーニングニップにおける中間転写ベルト8の移動速度と、第一クリーニングブラシローラ102の表面移動速度との線速比が小さくなり、上述と同様な理由で、クリーニング不良が生じる。よって、中間転写ベルト8の移動速度Vを速める場合も、2πr×(R/60)>(V*X)の関係を満たすようにする。
【0068】
また、上述では、トナーパターンの長さL、第一クリーニングブラシローラ102の回転数R、中間転写ベルトの移動速度Vのうちひとつを制御しているが、これらを組み合わせてもよい。例えば、階調パターンをクリーニングするとき、第一クリーニングブラシローラの回転数Rを落とし、階調パターン転写後の中間転写ベルト8の移動速度Vを速めることにより、(60/R)>(L/V)の関係を満たしてもよい。
【0069】
また、第一、第二クリーニング部100a、100bよりも中間転写ベルト移動方向上流側に、プレクリーニング部を備え、このプレクリーニング部で中間転写ベルト上のトナーパターンなどの未転写トナー像を大まかに除去するようにしてもよい。
【0070】
図8は、プレクリーニング部100cを備えたクリーニング装置100−2の概略構成図である。
プレクリーニング部100cは、プレクリーニング部材としてのプレクリーニングブラシローラ111、プレクリーニングブラシローラ111に付着したトナーを回収するプレ回収部材としてのプレ回収ローラ112、プレ回収ローラ112に当接してプレ回収ローラ表面からトナーを掻き取るプレトナー掻き取り部材としてのプレトナー掻き取りブレード113、プレクリーニングブラシローラ111と中間転写ベルト8を挟んで対向するプレ対向部材としてのプレクリーニング対向ローラ15を備えている。
【0071】
また、図8に示すクリーニング装置100−2においては、第一クリーニングブラシローラ102には、負極性のバイアスを印加して、中間転写ベルト8上の正極性トナーを除去し、第二クリーニングブラシローラ106とプレクリーニングブラシローラ111とには、正極性のバイアスを印加して、中間転写ベルト8上の負極性トナーを除去する。下記表3は、クリーニング装置100−2における各部材の芯金に印加される電圧の一例を示したものである。
【表3】
【0072】
表3に示すように、プレクリーニングブラシローラ111には、大量のトナーを付着させるために、第二クリーニングブラシローラ106への電圧よりも大きな電圧を印加している。また、このクリーニング装置100−2においては、第一クリーニングブラシローラ102に印加するバイアスを高くして、中間転写ベルト8上のトナーに負極性の電荷を付与して、無帯電トナーや弱帯電トナーの帯電極性を、正規帯電極性(負極性)に揃える機能を付与している。これにより、中間転写ベルト上のトナーを良好に除去することができる。
【0073】
このクリーニング装置100−2は、中間転写ベルト8に形成された各色階調パターン、シェブロンパッチ、トナー消費パターンなどのトナーパターンは、プレクリーニングブラシローラ111の位置に中間転写ベルト8の回転により移送される。中間転写ベルト8とプレクリーニングブラシローラ111表面電位との電位差で形成されるプレクリーニング電界により、中間転写ベルト8上の負極性に帯電したトナーを静電的に吸着してプレクリーニングブラシローラ111へ移動する。中間転写ベルト8に形成されたトナーパターンは、プレクリーニングブラシローラ111で大まかに除去される。これにより、第一クリーニング部100aや第二クリーニング部100bに入力されるトナー量を減らすことができる。よって、第一、第二クリーニング部100a、100bで、残りのトナーを良好に除去することができる。これにより、中間転写ベルト8に大量のトナーが付着している未転写トナー像でも、良好に中間転写ベルト8から除去することができる。
【0074】
そして、このクリーニング装置100−2においても、プレクリーニングブラシローラ111の回転数Rと、中間転写ベルト8の移動速度V、トナーパターンの長さをLとしたとき、(60/R)>(L/V)の関係を満たして、プレクリーニングブラシローラ111の一回転でトナーパターンをクリーニングするようにする。これにより、トナーパターンを、プレクリーニング部100cで良好に除去でき、クリーニング不良を抑制することができる。また、トナーパターンの間隔Cとしたとき、(60/R)<(C/V)の関係を満たすことにより、前回のトナーパターンを除去してプレクリーニングブラシローラ111が一回転した後に、次のトナーパターンをプレクリーニングブラシローラ111で除去することができる。
【0075】
次に、本プリンタに好適に使用されるトナーについて説明する。
本プリンタに好適に使用されるトナーは、600dpi以上の微少ドットを再現するために、トナーの体積平均粒径が3〜6[μm]のものが好ましい。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.40の範囲にあるトナーが好ましい。(Dv/Dn)が1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0076】
トナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。図9は、形状係数SF−1を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π)/4・・・式(1)
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0077】
また、図10は、形状係数SF−2を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(2)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100/4πを乗じた値である。
SF−2={(PERI)2/AREA}×100/(4π)・・・式(2)
SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0078】
形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算した。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0079】
また、カラープリンタに好適に使用されるトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマーと、ポリエステルと、着色剤と、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
【0080】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。
多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0081】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0082】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0083】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−イソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5/1を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1/1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0084】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
【0085】
2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0086】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2/1超や、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0087】
また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0088】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0089】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。
【0090】
また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0091】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0092】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。
【0093】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
【0094】
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0095】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。
【0096】
また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0097】
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR1、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0098】
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0099】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LR1−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0100】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0101】
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。
【0102】
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
【0103】
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2[μm]であることが好ましく、特に5×10−3〜0.5[μm]であることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500[m2/g]であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−4μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
【0104】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
【0105】
(トナーの製造方法)
(1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0106】
(2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
【0107】
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0108】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0109】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0110】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0111】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0112】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1[μm]、及び3[μm]、ポリスチレン微粒子0.5[μm]及び2[μm]、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1[μm]、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0113】
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0114】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20[μm]にするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000[rpm]、好ましくは5000〜20000[rpm]である。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0115】
(3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。
この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0116】
(4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0117】
(5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。
【0118】
これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0119】
またトナーの形状は略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。図11(a),(b),(c)はトナーの形状を模式的に示す図である。図11(a),(b),(c)において、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定するとき、トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(図11(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(図11(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。
【0120】
なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0121】
また、本発明のクリーニング装置は、中間転写ベルトのおもて面をクリーニングするベルトクリーニング装置100に限らず、図12に示すように、紙搬送ベルト51のクリーニング装置500にも適用することができる。図12に示すように、タンデム型直接転写方式の画像形成装置に用いられる被清掃体としての紙搬送ベルト51は、感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ接触してY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、記録紙Pを自らの表面に保持しながら、自らの無端移動に伴って図中左側から右側に向けて搬送する過程で、記録紙PをY,M,C,K用の一次転写ニップに順次送り込む。これにより、記録紙Pには、Y,M,C,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。K用の一次転写ニップを通過した後の紙搬送ベルト51に付着しているトナーなどの汚れは、搬送ベルトクリーニング装置500によって除去される。また、光学センサユニット150が紙搬送ベルト51のおもて面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。図12に示すプリンタにおいても、所定のタイミングで画像濃度制御や位置ずれ量補正制御を実施し、紙搬送ベルト51に所定のトナーパターン(階調パターン、シェブロンパッチ)を形成し、光学センサユニット150で上記トナーパターンを検知し、検知結果に基づいて所定の補正処理を実行する。光学センサユニット150で検知後のトナーパターンは、搬送ベルトクリーニング装置500で除去される。このように、紙搬送ベルト51は、トナー像を担持する像担持体としての機能を備えている。
【0122】
上記搬送ベルトクリーニング装置500に本発明のクリーニング装置を適用することによって、紙搬送ベルト51に形成されたトナーパターンを良好に除去することができ、記録紙の裏面が、トナーなどで汚れるのを抑制することができる。
【0123】
また、本発明のクリーニング装置は、図13に示すように、ドラムクリーニング装置4にも適用できる。図13に示すモノクロ画像形成装置においては、感光体ドラム1に対して所定の間隔をもって対向する不図示の光学センサユニットを設けており、感光体ドラムに形成された階調パターンは、不図示の光学センサユニットにより検知された後、ドラムクリーニング装置4に入力される。ドラムクリーニング装置4に本発明のクリーニング装置を適用することによってドラムクリーニング装置4に入力されたトナーパターンを良好に除去することができる。
【0124】
以上、本実施の画像形成装置によれば、表面移動する像担持体たる中間転写ベルト8と、中間転写ベルト上にトナー像を形成する画像形成手段(プロセスユニット6と、図示しない光書込ユニット、一次転写ローラで構成)と、回転しながら中間転写ベルト8上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材たるクリーニングブラシローラを備えたクリーニング手段たるベルトクリーニング装置100とを備えている。また、所定のタイミングで中間転写ベルト8上にトナーパターンを形成して、画像品質を改善する処理を行う。そして、トナーパターンをクリーニングブラシローラで除去するとき、(60/R)>(L/V)の条件を満たすように画像形成手段、中間転写ベルトの表面移動速度およびクリーニングブラシローラの回転数のうち少なくともひとつを制御する。ただし、R:クリーニングブラシローラの回転数(rpm)、L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)、V:中間転写ベルト表面移動速度(mm/s)である。上記条件を満たすことにより、クリーニングブラシ一回転でトナーパターンを除去することができ、トナーパターン除去時にクリーニング不良が生じるのを抑制することができる。
【0125】
また、トナーパターンの間隔(mm)をCとしたとき、(60/R)<(C/V)を満たすことにより、トナーパターンの間隔をクリーニングブラシローラが一回転する間よりも長くすることができる。これにより、クリーニングブラシローラに残留する残留トナーが回収ローラにより回収されてクリーニングブラシローラにほとんど残留トナーがない状態で、トナーパターンを除去することができる。これにより、トナーパターン除去時にクリーニング不良が生じるのを抑制することができる。
【0126】
また、ベルトクリーニング装置は、複数のクリーニングブラシローラを有しており、中間転写ベルト表面移動方向最上流に配置されたクリーニングブラシローラには、トナーの正規帯電極性と反対極性のバイアスが印加されて、中間転写ベルト上の正規帯電極性に帯電したトナーを静電的に中間転写ベルトから除去するものであり、上記回転数Rは、中間転写ベルト表面移動方向最上流に配置されたクリーニングブラシローラの回転数である。このような構成においては、最上流のクリーニングブラシローラが、トナーパターンを除去することになるので、最上流のクリーニングブラシローラ一回転でトナーパターンを除去することができ、トナーパターン除去時にクリーニング不良が生じるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0127】
1:感光体
2:帯電装置
4:ドラムクリーニング装置
5:現像装置
6:プロセスユニット
8:中間転写ベルト
9:1次転写ローラ
51:紙搬送ベルト
100:ベルトクリーニング装置
100a:第一クリーニング部
100b:第二クリーニング部
100c:プレクリーニング部
102:第一クリーニングブラシローラ
103:第一回収ローラ
106:第二クリーニングブラシローラ
107:第二回収ローラ
111:プレクリーニングブラシローラ
112:プレ回収ローラ
500:搬送ベルトクリーニング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】
【特許文献1】特開2006−58422号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面移動する像担持体と、
該像担持体上にトナー像を形成する画像形成手段と、
回転しながら像担持体上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材を備えたクリーニング手段とを備え、
所定のタイミングで像担持体上にトナーパターンを形成して、画像品質を改善する処理を行う画像形成装置において、
転写体に転写されていない未転写の上記トナーパターンを上記クリーニング部材で除去するとき、以下の条件を満たすよう画像形成手段、像担持体表面移動速度およびクリーニング部材の回転数のうち少なくともひとつを制御する制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
(60/R)>(L/V)
R:クリーニング部材の回転数(rpm)
L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)
V:像担持体表面移動速度(mm/s)
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記制御手段は、以下の条件を満たすよう画像形成手段、像担持体表面移動速度およびクリーニング部材の回転数のうち少なくともひとつを制御することを特徴とする画像形成装置。
(60/R)<(C/V)
C:トナーパターンの間隔(mm)
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、
上記クリーニング手段は、複数のクリーニング部材を有しており、
像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材には、トナーの正規帯電極性と反対極性のバイアスが印加されて、像担持体上の正規帯電極性に帯電したトナーを静電的に像担持体から除去するものであり、
上記回転数Rは、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材の回転数であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持して表面移動する像担持体に当接し、回転しながら像担持体上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材を備えたクリーニング装置において、
画像品質を改善する処理を行うために上記像担持体に形成された転写体に転写されていない未転写のトナーパターンを上記クリーニング部材で除去するとき、クリーニング部材の回転数が、以下の条件を満たすよう、クリーニング部材の回転数を制御する制御手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
(60/R)>(L/V)
R:クリーニング部材の回転数(rpm)
L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)
V:像担持体表面移動速度(mm/s)
【請求項5】
請求項4のクリーニング装置において、
複数のクリーニング部材を有しており、
上記制御手段は、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材の回転数を制御することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項1】
表面移動する像担持体と、
該像担持体上にトナー像を形成する画像形成手段と、
回転しながら像担持体上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材を備えたクリーニング手段とを備え、
所定のタイミングで像担持体上にトナーパターンを形成して、画像品質を改善する処理を行う画像形成装置において、
転写体に転写されていない未転写の上記トナーパターンを上記クリーニング部材で除去するとき、以下の条件を満たすよう画像形成手段、像担持体表面移動速度およびクリーニング部材の回転数のうち少なくともひとつを制御する制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
(60/R)>(L/V)
R:クリーニング部材の回転数(rpm)
L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)
V:像担持体表面移動速度(mm/s)
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記制御手段は、以下の条件を満たすよう画像形成手段、像担持体表面移動速度およびクリーニング部材の回転数のうち少なくともひとつを制御することを特徴とする画像形成装置。
(60/R)<(C/V)
C:トナーパターンの間隔(mm)
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、
上記クリーニング手段は、複数のクリーニング部材を有しており、
像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材には、トナーの正規帯電極性と反対極性のバイアスが印加されて、像担持体上の正規帯電極性に帯電したトナーを静電的に像担持体から除去するものであり、
上記回転数Rは、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材の回転数であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持して表面移動する像担持体に当接し、回転しながら像担持体上のトナーを静電的に除去するクリーニング部材を備えたクリーニング装置において、
画像品質を改善する処理を行うために上記像担持体に形成された転写体に転写されていない未転写のトナーパターンを上記クリーニング部材で除去するとき、クリーニング部材の回転数が、以下の条件を満たすよう、クリーニング部材の回転数を制御する制御手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
(60/R)>(L/V)
R:クリーニング部材の回転数(rpm)
L:トナーパターンの像担持体表面移動方向長さ(mm)
V:像担持体表面移動速度(mm/s)
【請求項5】
請求項4のクリーニング装置において、
複数のクリーニング部材を有しており、
上記制御手段は、像担持体表面移動方向最上流に配置されたクリーニング部材の回転数を制御することを特徴とするクリーニング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−88671(P2012−88671A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237825(P2010−237825)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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