説明

画像形成装置及びプロセスカートリッジ、

【課題】高耐久性と優れたクリーニング性を併せ持つクリーニングブレードを用いることにより、長期に亘って高品質の画像形成が可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供すること。
【解決手段】クリーニングブレードは、感光体と当接する面である当接面において、有機微粒子が接着剤によって固定されてなり、前記接着剤は、赤外分光法による測定で1618〜1716cm-1にピークを有し、且つ、前記当接面の表面から含浸してなり、前記クリーニングブレードの切片の透過法による顕微赤外分光法により得られた1618〜1716cm-1のピーク面積値A及び1402〜1423cm-1のピーク面積値Bから算出される値A/Bと、前記接着剤を塗布していないクリーニングブレードの1618〜1716cm-1のピーク面積値A0及び1402〜1423cm-1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0との比率が1.1以上である含浸領域は、前記当接面の表面から5〜100μmまでの範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐久クリーニングブレードを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置では、感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を施すことにより画像形成が行われる。帯電工程で生成し感光体表面に残る放電生成物および転写工程後に感光体表面に残る(転写)残トナーまたはトナー成分はクリーニングプロセスを経て除去される。
【0003】
画像形成装置の信頼性向上の観点から、感光体には、アモルファスシリコンのような無機系材料を用いたり、有機感光体の表面にアクリレート系材料や無機微粒子を分散させた表面層を有する高耐久感光体が用いられたりするようになってきた。これらの感光体は、クリーニングブレードに対する耐摩耗性に優れるため、従来よりも遥かに長い寿命を実現することができ、メンテナンスの回数を大幅に減らし、感光体の交換を少なくでき、コスト的にも、環境的にも非常に好ましいものであった。
【0004】
しかし、感光体の長寿命化が図れても、クリーニングブレードの寿命も長くできなければ、メンテナンスの回数を減らすことはできない。また、最近の電子写真装置においては、メンテナンスを容易にするため、感光体とクリーニングブレード等の部材を一体にした、所謂プロセスカートリッジが用いられることが多くなってきた。そのため、感光体は十分に使用可能であるにもかかわらず、クリーニングブレードの寿命が律速となってしまい、プロセスカートリッジを交換しないといけなくなっていた。
【0005】
クリーニングブレードは、一般的には、ポリウレタンゴムなどの短冊形状の弾性体であり、クリーニングブレードの基端が支持部材で支持されて先端稜線部が感光体の周面に押し当てられ、感光体上に残留するトナーをせき止めて掻き落とし除去する。
【0006】
近年の高画質化の要求に応えるべく、重合法等により形成された小粒径で球形に近いトナー(以下、重合トナーと称する。)を用いた画像形成装置が知られている。この重合トナーは、従来の粉砕トナーに比べて転写効率が高いなどの特徴があり、シャープな画像形成が可能である。しかし、重合トナーは、クリーニングブレードを用いて感光体表面から除去しようとしても十分に除去することが困難であり、クリーニング不良が発生してしまうという問題を有している。これは、小粒径で且つ球形度に優れた重合トナーが、クリーニングブレードと感光体との間に形成される僅かな隙間をすり抜けるからである。
【0007】
かかるすり抜けを抑えるには、感光体とクリーニングブレードとの当接圧力を高めてクリーニング能力を高める必要がある。しかし、クリーニングブレードの当接圧を高めると、図8(a)に示すように、感光体23とクリーニングブレード262との摩擦力が高まり、クリーニングブレード262が感光体23の移動方向に引っ張られて、クリーニングブレード262の先端稜線部262cがめくれてしまう。このクリーニングブレード262の先端稜線部262cがめくれた状態でクリーニングをし続けると、図8(b)に示すように、クリーニングブレード262の先端面262aの先端稜線部262cから数[μm]離れた場所に局所的な摩耗が生じてしまう。このような状態で、さらにクリーニングを続けると、この局所的な摩耗が大きくなり、最終的には、図8(c)に示すように、ブレード先端面262a及びブレード下面262bから先端稜線部262cが欠落してしまう。先端稜線部262cが欠落してしまうと、トナーを正常にクリーニングできなくなり、クリーニング不良を生じてしまい、クリーニングブレードの寿命となる。
【0008】
従来から、クリーニングブレードのめくれ防止として、クリーニングブレードの上にステアリン酸亜鉛やPTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)などの微粒子を塗ることが一般的に行われてきた。しかしながら、これらは画像形成を行うと直ぐに取れるため、初期のめくれ防止にはなるものの、長期的なめくれ防止にはならなかった。
【0009】
クリーニングブレードの高寿命化に対し、例えば特許文献1(特開2005−107376号公報)には、ポリウレタンエラストマーからなるブレード材料の感光体との当接部に、イソシアネートを0.1mm積層したクリーニングブレードが開示されている。しかしながらこのクリーニングブレードは、アモルファスシリコンのように、表面が平滑な感光体に対しては優れた性能を示すものの、クリーニング性あるいは感光体の耐摩耗性を向上させた、無機微粒子を表面層に用いた有機感光体等の表面を荒らした感光体においては、感光体と接する先端が早期に欠けてしまい、クリーニング不良を発生することが多かった。
【0010】
また、特許文献2(特許第3112362号公報)には、PTFE粒子をアクリル系エマルジョンあるいはアクリル系ディスパージョンを含む水系溶媒に分散して塗布し、ついで該水系溶媒を乾燥させることによってPTFE粒子をクリーニングブレードの表面に固定させたクリーニングブレードが開示されている。このクリーニングブレードは、初期においてはクリーニング性が良好であった。しかし、PTFE粒子を固定するには接着層が厚い必要があるため、クリーニングブレードの表面が硬くなってしまい、長期の画像形成を行うと部分的に欠けて、クリーニング不良が発生した。また、接着層を薄くしてもPTFE粒子が部分的に取れてしまい、長期のクリーニング性の維持は不可能であった。
【0011】
さらに、特許文献3(特許第2853598号公報)には、PMMA粒子をフッ素系不活性液体に分散させた潤滑剤分散液を塗布し、乾燥させることによってPMMA粒子をクリーニングブレードの表面に固定させたクリーニングブレードが開示されている。このクリーニングブレードは、初期においてはクリーニング性が良好であった。しかし、画像形成の線速を250mm/sec以上にすると、クリーニングブレードの感光体と当接しているニップ部近傍が大きく変形し、固定されていたPMMA粒子が取れ、クリーニング不良になってしまった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来からの諸問題を解決し、高耐久性と優れたクリーニング性を併せ持つクリーニングブレードを用いることにより、長期に亘って高品質の画像形成が可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジは、具体的には以下の記載の技術的特徴を有する。
即ち本発明は、感光体と、該感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナー像化する現像手段と、現像されたトナー像を転写体へ転写する転写手段と、転写残のトナー像をクリーニングブレードによりクリーニングするクリーニング手段と、を備える画像形成装置であって、前記クリーニングブレードは、当該クリーニングブレードが前記感光体と当接する面である当接面において、有機微粒子が接着剤によって固定されてなり、前記接着剤は、赤外分光法による測定で1681〜1716cm−1にピークを有し、且つ、前記クリーニングブレードの当接面の表面から含浸してなり、前記クリーニングブレードの切片の透過法による顕微赤外分光法により得られた1681〜1716cm−1のピーク面積値A及び1402〜1423cm−1のピーク面積値Bから算出される値A/Bと、前記接着剤を塗布していないクリーニングブレードの1681〜1716cm−1のピーク面積値A0及び1402〜1423cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0と、の比率、(A/B)/(A0/B0)が1.1以上である含浸領域は、前記クリーニングブレードの当接面の表面から5〜100μmまでの範囲であることを特徴とする画像形成装置である。
また本発明は、上記記載の画像形成装置に用いられることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高耐久性と優れたクリーニング性を併せ持つクリーニングブレードを用いることにより、長期に亘って高品質の画像形成が可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施の形態におけるクリーニングブレード62の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1のクリーニングブレード62の拡大断面図である。
【図3】IRスペクトルからピーク面積値Aを測定している図である。
【図4】IRスペクトルからピーク面積値Bを測定している図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置の一実施の形態におけるプリンタの要部を示す概略構成図である。
【図6】(a)実際のトナー投影形状の外周長C1、その投影面積Sを示す説明図である。(b)投影面積Sと同じ面積の真円の外周長C2を示す説明図である。
【図7】摩耗幅及び摩耗形態を説明するためのクリーニングブレードを下面側から見た説明図である。
【図8】従来のクリーニングブレードの構成を示す説明図である。
【図9】感光体とクリーニングブレードとのニップ部262d近傍を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<本発明者らが開発した技術について(特願2009−276475号参照)>
本発明について説明するに先立ち、まず、本発明者らが既に開発した技術について以下に述べる。なお、かかる技術は特願2009−276475号において出願済みである。
【0017】
本発明者らは、クリーニングブレードの表面にアクリルウレタンモノマーを含浸させ、硬化させたクリーニングブレード、特に、酸素濃度が2%以下の環境でUV光を照射して硬化させたクリーニングブレードを開発した。このクリーニングブレードは、従来のクリーニングブレードに比べて耐久性が大幅に向上した。しかし、画像形成の線速を450mm/sec以上にすると、画像にはほとんど影響ないものの、微量にトナーの抜けが発生していた。
【0018】
これに対して本発明者らは、線速を450mm/sec以上にするとトナーが微量に抜ける理由を詳細に調べたところ、クリーニングブレードの感光体とのニップ部近傍において、残留トナーが回転しながらニップ部の下にもぐりこむことにより微量な残留トナーの抜けが発生していることを突き止めた。
【0019】
そこで本発明者らは、クリーニングブレードの感光体と当接する面(以下当接面と称する)に赤外分光法(infrared spectroscopy:以下、略してIRと称する。)で1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤によってアクリル系微粒子等の有機微粒子を強固に固定する構成とすることで、残留トナーの抜けを防止できることを見出した。より詳しくは、上記構成によって、図9に示す感光体23とクリーニングブレード262のニップ部262d近傍で、アクリル系微粒子264が小粒径トナー粒子263をダム効果でせき止め、残留した小粒径トナー粒子263が抜けなくなることを見出した。
【0020】
また、本発明者らは、IRで1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤であれば極少量で前記アクリル系微粒子等の有機微粒子を強固に固定できることから、接着層が薄くでき、クリーニングブレードの柔軟性を損なうことなく、当接面表面の含浸によるクリーニングブレードの高耐久性も維持できることを見出した。
【0021】
さらに、前記接着剤としてアクリル系接着剤を使用することで、アクリル系微粒子の固定も特に強固になり、図9に示すニップ部262d近傍のアクリル系微粒子264がより確実に固定されることを見出した。
【0022】
以上の構成により、長期においてクリーニングブレードの高耐久性と優れたクリーニング性を同時に維持できることを見出した。
【0023】
<本発明に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジ>
しかして、本発明に係る画像形成装置は、感光体と、該感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナー像化する現像手段と、現像されたトナー像を転写体へ転写する転写手段と、転写残のトナー像をクリーニングブレードによりクリーニングするクリーニング手段と、を備える画像形成装置であって、前記クリーニングブレードは、当該クリーニングブレードが前記感光体と当接する面である当接面において、有機微粒子が接着剤によって固定されてなり、前記接着剤は、赤外分光法による測定で1681〜1716cm−1にピークを有し、且つ、前記クリーニングブレードの当接面の表面から含浸してなり、前記クリーニングブレードの切片の透過法による顕微赤外分光法により得られた1681〜1716cm−1のピーク面積値A及び1402〜1423cm−1のピーク面積値Bから算出される値A/Bと、前記接着剤を塗布していないクリーニングブレードの1681〜1716cm−1のピーク面積値A0及び1402〜1423cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0と、の比率、(A/B)/(A0/B0)が1.1以上である含浸領域は、前記クリーニングブレードの当接面の表面から5〜100μmまでの範囲であることを特徴とする。
【0024】
波長1650〜1800cm−1のピークはC=Oの伸縮振動に対応しており、C=Oの濃度が高いほどピーク面積値が大きくなる。C=Oはウレタンゴム中にも元々存在しているが、これらは主にエステルとして存在し、ピークトップが1734cm−1のピークとして現れる。そのため、カルボキシル基に対応する1681〜1716cm−1のピークはほとんど現れない。
【0025】
一方、アクリル系接着剤に含まれるC=Oは主にカルボキシル基であるため、1681〜1716cm−1にピークが強く現れる。そのため、1681〜1716cm−1にピークを持つアクリル系接着剤がウレタンゴムに含浸していれば、その濃度が高い程1681〜1716cm−1のピーク面積値Aは大きくなることから、ピーク面積値Aの大きさを定量化できれば接着剤の含浸度合いを把握することができる。
ピーク面積値Aの大きさを定量化は、ウレタンゴム中のC−H面内変角振動に対応した波長1402〜1423cm−1のピーク面積値Bで規格化し、値A/Bを算出することで行った。この値A/Bがウレタンゴムへの接着剤の含浸度合いの指標といえる。
【0026】
そして、値A/Bを接着剤含浸前のウレタンゴムにおける波長1681〜1716cm−1のピーク面積値A0、及び波長1402〜1423cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0と比較することにより、ウレタンゴムへの接着剤の含浸が薄い場合でも把握することができる。
つまり、比率〔(A/B)/(A0/B0)〕の値が1以上であればIRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤がウレタンゴムへ含浸していると考えられるが、微量な測定誤差も考慮すると、値が1.1以上であれば接着剤は確実にウレタンゴムへ含浸していると言える。比率〔(A/B)/(A0/B0)〕の値が1.1になる箇所が、ウレタンゴムへの接着剤の含浸深さに対応している。
即ち、比率〔(A/B)/(A0/B0)〕の値が1.1以上の領域をアクリル系接着剤の含浸領域とし、値が1.1未満の領域をアクリル系接着剤の非含浸領域とする。
【0027】
実際に比率〔(A/B)/(A0/B0)〕の値が1.1以上の領域を求める方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
クリーニングブレードの切片(厚み0.1〜300μm)を作製し、顕微IR法により、クリーニングブレード表面から内部に向かい、場所を変えながらIRスペクトルを測定し、各場所での比率〔(A/B)/(A0/B0)〕を計算する。そして、クリーニングブレード表面からの距離に対する、比率〔(A/B)/(A0/B0)〕をプロットし、各プロットの近似曲線を描き、その近時曲線の比率〔(A/B)/(A0/B0)〕が、1.1となるクリーニングブレード表面からの距離を、含浸領域の長さ(深さ)とした。
顕微IR法には、透過法とATR法(減衰全反射法:attenuated total reflection)がある。ATRは、サンプルを測定できる厚みが波長により異なってしまうため、1681〜1716cm−1付近のピークの測定が完全に測定することができる切片の厚みにのみ適用可能である。具体的には、切片の厚みは0.1〜0.3μmである。透過法の場合は、切片の厚みが0.1〜3μmで、測定することができる。
【0028】
本発明者らは、顕微IR法(透過法)を用いることにより、前記クリーニングブレードのIRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤の含浸深さを正確に把握することで、前記含浸深さを5μm〜100μmに制御できることを見出した。
【0029】
次に、本発明に係る画像形成装置についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0030】
<クリーニングブレード>
図1は、クリーニングブレード62の斜視図であり、図2は、クリーニングブレード62の拡大断面図である。
クリーニングブレード62は、金属や硬質プラスチックなどの剛性材料からなる短冊形状のホルダー621と、短冊形状の弾性体ブレード622とで構成されている。弾性体ブレード622は、ホルダー621の一端側に接着剤などにより固定されており、ホルダー621の他端側は、クリーニング装置6のケースに片持ち支持されている。
【0031】
〔弾性体ブレード〕
本発明の画像形成装置の用いられるクリーニングブレードの母体に使用される弾性体ブレード(以下、クリーニングブレードの母体とも称する。)622は、従来公知の組成、工法で製造することができる。
弾性体ブレード622としては、感光体3の偏心や感光体表面の微小なうねりなどに追随できるように、高い反発弾性率を有するものが好ましく、ウレタン基を含むゴムであるウレタンゴム(ポリウレタンエラストマー)などが好適である。また、この弾性体ブレード622は後述する表面層623をその表面に有する構成とすることが好ましい。
【0032】
ポリウレタンエラストマーは、通常、ポリオール成分としてポリエチレンアジペートエステルやポリカプロラクトンエステルを用い、ポリイソシアネート成分として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いてプレポリマーを調製し、これに硬化剤及び必要に応じて触媒を加えて、所定の型内にて架橋し、炉内にて後架橋させた後、常温で放置熟成することによって製造されている。
【0033】
高分子量ポリオールとしては、例えば、アルキレングリコールと脂肪族二塩基酸との縮合体であるポリエステルポリオール、例えば、エチレンアジペートエステルポリオール、ブチレンアジペートエステルポリオール、ヘキシレンアジペートエステルポリオール、エチレンプロピレンアジペートエステルポリオール、エチレンブチレンアジペートエステルポリオール、エチレンネオペンチレンアジペートエステルポリオールのようなアルキレングリコールとアジピン酸とのポリエステルポリオール等のポリエステル系ポリオール、カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンエステルポリオール等のポリカプロラクトン系ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等のポリエーテル系ポリオール等が用いられる。
【0034】
他に低分子量ポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノン−ビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフエニルメタン、4,4'−ジアミノジフエニルメタン等の二価アルコールや、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、1,1,1−トリス(ヒドロキシエトキシメチル)プロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の三価及びそれ以上の多価アルコールを挙げることができる。
【0035】
硬化触媒の具体例として、例えば、2−メチルイミダゾールや1,2−ジメチルイミダゾールを挙げることができるが、特に、1,2−ジメチルイミダゾールが好ましく用いられる。このような触媒は、通常、主剤100重量部に対して、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で用いられる。
【0036】
IRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤は、クリーニングブレードの当接面表面から5μm〜100μm、好ましくは8μm〜80μm、さらに好ましくは10μm〜60μmの深さまで含浸している。
【0037】
IRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤がクリーニングブレードの当接面に含浸している深さ(含浸領域)が5μmより小さいと、当接面近傍の硬度を適度に上げることができないため、耐摩耗性を向上させることができない。また、接着剤が含浸している深さをクリーニングブレードの長手方向全体にわたって均一にすることは難しいため、クリーニングブレードの機械的特性にばらつきが生じてしまい、機械的特性の弱い場所からクリーニングブレードが欠けやすくなってしまう。
【0038】
IRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤がクリーニングブレードの当接面に含浸している深さが100μmより大きいと、クリーニングブレード全体の柔軟性が低下するため、クリーニング性が低下するとともに、クリーニングブレードの欠けも生じやすくなる。
【0039】
クリーニングブレード母体(弾性体ブレード)の当接面にIRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤を含浸させる際には、接着剤の硬化前の材料であるモノマーもしくはオリゴマーをクリーニングブレード母体にスプレー、ディッピング等の方法により塗布する。塗布後、数十秒〜数分間放置して含浸させた後、表面を有機溶剤が染み込んだウェス等で軽く拭く。これにより表面の余分な接着剤を除去することができる。
【0040】
その後、さらにその上に、エタノール等のアルコールやフッ素系溶剤中に有機微粒子を分散させた微粒子分散液をスプレー塗布する。有機微粒子はエタノール等のアルコールやフッ素系溶剤が揮発すると同時に、当接面表面から微量に染み出してくる硬化前の接着剤により、当接面に吸着される。
【0041】
さらにその後、接着剤が室温硬化型であれば必要に応じて溶剤を飛ばすために加熱乾燥し、ラジカル重合するものであればUV光、電子線等のエネルギー線を照射させることにより接着剤を硬化させ、有機微粒子を固定させる。
接着剤が室温硬化型であれば、溶媒を飛ばす際、同時に減圧をするとさらに効率よく溶剤を飛ばすことができる。接着剤がラジカル重合をする接着剤で、加熱硬化付与形であれば、UV光、電子線等のエネルギー線の照射の後に加熱させる。
上記IRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤として、反応性の接着剤を例示したが、既に高分子となっているものを適当な溶媒に溶解させてクリーニングブレードに含浸させた後、溶剤が完全に蒸発してない状態で有機微粒子を塗布し、溶剤を完全に蒸発させ有機微粒子を固定させることもできる。
【0042】
上記の方法により、クリーニングブレード母体中に接着剤を含浸させると共に、クリーニングブレードの当接面に有機微粒子を固定させることができる。
【0043】
IRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤が室温硬化型であり、溶剤を加熱で飛ばす場合、高温槽、温風を吹きかける等の方法により行う。加熱条件は、アクリル微粒子等の有機微粒子の耐熱性を考慮し、30〜80℃、好ましくは30〜60℃で、数秒から数分間、クリーニングブレードを加熱することにより行う。上記加熱と同時に減圧を行うと、さらに効率よく溶剤を飛ばすことができる。減圧時の圧力は5Torr以下にすると効果が得られる。
【0044】
IRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤がラジカル重合するものであれば、エネルギー線を照射する際のクリーニングブレード付近の酸素濃度は、2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。クリーニングブレード付近の酸素濃度が2%より高くなると、クリーニングブレード内部のモノマーもしくはオリゴマーは、未反応で内部でのクリーニングブレードの強度を低下させてしまい、クリーニングブレードの欠けが生じやすく、好ましくない。
【0045】
必要によりモノマーもしくはオリゴマーの粘度を下げる溶剤には、溶存酸素を通常含んでいるため、ヘリウムやアルゴン、窒素等の不活性ガスをバブリングしたり、減圧脱気を行うことにより、溶存酸素を除去していることが好ましい。
【0046】
〔接着剤〕
IRで波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤の主は、アクリル系の接着剤である。アクリル系接着剤は主構成となる主モノマー、凝集力を付与する副モノマー、架橋基点となる官能基含有モノマーを目標性能に合わせて選定、共重合する。
【0047】
主モノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
副モノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル、メチルアクリレート等が挙げられる。
官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアマイド、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート等が挙げられる。
上記のモノマー共重合体に必要に応じて有機溶剤、硬化剤、増粘剤、架橋剤等を添加する。有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、2−ブタノール等が挙げられる。
【0048】
アクリル系接着剤はアクリル微粒子と親和性がよいため、クリーニングブレード表面に極少量でアクリル微粒子を強固に固定することができる。
【0049】
接着層の厚みは50[nm]以下にすることが好ましい。層厚を50[nm]より大きくすると、含浸の効果もなくなり、当接面の表面が局所的に硬くなるため、クリーニングブレードの欠けが発生しやすくなり、クリーニング不良になる。
なお、接着層とは、クリーニングブレード母体当接面の表面から、接着剤により形成される層の表面までのことを言い、基本的に接着剤のみの層である。即ち、クリーニングブレード母体にアクリル系接着剤が含浸している含浸領域は接着層からは除く。
本発明では後述するアクリル微粒子等の有機微粒子を接着した後の状態で測定される厚さを、接着層の厚みとする。即ち、接着層の厚みとは、クリーニングブレード母体当接面の表面から、有機微粒子の一部分が浸っている接着剤のみからなる層の表面までの厚さである。
【0050】
〔有機微粒子〕
有機微粒子としては、アクリル微粒子、ポリアミド微粒子等が例示できるが、波長1681〜1716cm−1にピークを持つ接着剤との接着性が良く、残留トナーのする抜けを防止する効果の高いアクリル微粒子が特に好ましい。
アクリル微粒子の主成分としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−アクリル、スチレン−アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、エチレン−アクリル酸共重合物等を挙げることができる。
その中でも、安価で、強度と剛性が大きく、接着層が薄くても容易に固定されやすいポリメタクリル酸メチルが好適である。
【0051】
アクリル微粒子の形状は、潤滑性の観点から球形が好ましい。粒径は300〜800nm、好ましくは500〜700nmである。粒径が300nmより小さいと、効率的にトナーをせき止めることができず、トナーの微量な抜けが発生してしまう。800nmより大きいと、極少量の接着剤でクリーニングブレードの当接面に強固に固定することができず、画像形成を行うと徐々に取れてしまい、ムラが発生してクリーニング不良になってしまう。
【0052】
<顕微IR法(透過法)>
次に本発明に用いた顕微IR法(透過法)について説明する。
本発明のクリーニングブレードの顕微IR法(透過法)は、クリーニングブレードの切片の測定を行う。前記クリーニングブレードの切片はクライオミクロトームで切片を作製したものであり、前記切片をシリコンウェハ上に載せ、測定を行う。
【0053】
〔切片作製〕
本発明で用いたクライオミクロトームの装置はEM FCS(Leica社製)である。液体窒素により、サンプルの温度を−100℃に冷却して切削する。クライオミクロトームの切削方向は、当接面及びカット面に垂直な方向に行う。切削する箇所は当接先端部から当接面及びカット面に沿って5〜10mmの距離である。前記箇所であると、クライオミクロトームによる切片作製が安定して行える。切片の厚さは300〜500nmが望ましい。300nm以下であると、薄すぎるために測定データの感度が下がり、正確な含浸深さを測定できない上、切片が途中で切れてしまうことがある。500nm以上であると、厚すぎるために光が透過せずに測定データがうまく得られない上、切片が丸まりやすく回収しにくい。
【0054】
〔ピーク面積値測定〕
前記クライオミクロトームにより作製した切片をシリコンウェハ上に載せ、顕微IR(透過法)により測定する。本発明で用いたIR装置本体はFT/IR−6100、赤外顕微鏡はIRT−5000(日本分光社製)である。アパーチャサイズは当接面の垂直方向×当接面方向で、3×20μm角で行い、シリコンウェハ上の切片の当接面及びカット面表面側から垂直方向に2μmずつずらして連続で測定する。各測定点における当接面及びカット面表面からの距離は、切片にかかる測定領域の表面側端部とした。
前記測定方法で得られたスペクトルの1681〜1716cm-1付近を拡大した様子を図3に、スペクトルの1402cm-1付近を拡大した様子を図4に示す。本発明で用いる1681〜1716cm-1のピーク面積値Aとは、ピークトップが1734cm-1のピークの低波長側の肩の部分の面積である。図3は面積値Aを測定している様子である。三つの直線囲んだ領域が面積値Aに該当する。1402〜1423cm-1のピーク面積値Bとは、ピークトップが1402〜1423cm-1のピークの面積である。図4は面積値Bを測定している様子である。三つの直線囲んだ領域が面積値Bに該当する。前記A及びBを求める際のバックグラウンドの始点及び終点の波数及び面積の積分範囲を下記の表1に示す。
A0及びB0の算出方法も前記と同様で、アクリレート重合体を塗布していないクリーニングブレードの切片を顕微IR(透過法)で測定することで得られる。
上記の方法を用いれば、顕微ATR法でも同様の結果が得られる。
【0055】
【表1】

【0056】
〔A/BのA0/B0との比率〕
前記A、B、A0、B0から、A/B及びA0/B0を算出し、A/BのA0/B0に対する比率を求める。前記比率はクリーニングブレード中のアクリレート重合体の含浸濃度が小さくなるに伴い1に近づく。本発明では前記比率が1.1に達した箇所をアクリレート重合体の含浸深さと判断し、含浸深さの制御に用いる。前記比率が1.1以上であれば、アクリレート重合体の含浸が確実であると判断でき、1.1に達した箇所を読むことで正確に含浸深さ判定が行える。
【0057】
<画像形成装置>
次に本発明に係る画像形成装置の一実施の形態である電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。
図5は、本実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図である。プリンタは、単一色の複写を行うものであり、図示しない画像読み取り部で読み取った画像データに基づいてモノクロ画像形成を行う。
【0058】
図5に示すように、プリンタは、像担持体としてのドラム状の感光体3を備えている。感光体3はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
【0059】
感光体3の周囲には帯電手段としての帯電装置4、潜像をトナー像化する現像手段である現像装置5、トナー像を記録媒体としての転写紙(転写体)に転写する転写手段としての転写装置7、転写後の感光体3上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニング装置6、感光体3上に滑剤を塗布する滑剤塗布手段としての潤滑剤塗布装置10、感光体3を除電する除電ランプ(不図示)等が配置されている。
【0060】
帯電装置4は、感光体3に所定の距離を持って非接触で配置され、感光体3を所定の極性、所定の電位に帯電するものである。帯電装置4によって一様帯電された感光体3は、図示しない潜像形成手段たる露光装置から画像データに基づいて光Lが照射され静電潜像が形成される。
【0061】
現像装置5は、現像剤担持体としての現像ローラ51を有している。この現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加されるようになっている。現像装置5のケーシング内には、ケーシング内に収容された現像剤を互いに逆方向に搬送しながら攪拌する供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53が設けられている。また、現像ローラ51に担持された現像剤を規制するためのドクタ54も設けられている。供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53の2本スクリュによって撹拌・搬送された現像剤中のトナーは、所定の極性に帯電される。そして、現像剤は、現像ローラ51に汲み上げられ、汲み上げられた現像剤は、ドクタ54により規制され、感光体3と対向する現像領域でトナーが感光体3上の潜像に付着する。
【0062】
クリーニング装置6は、クリーニングブレード62を有しているがファーブラシをさらに有する構成としてもよい。クリーニングブレード62は、感光体3の表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体3に当接している。なお、クリーニングブレード62の詳細については前述したとおりである。
【0063】
潤滑剤塗布装置10は、固形潤滑剤103、潤滑剤加圧スプリング(不図示)、ファーブラシ101等を備え、固形潤滑剤103を感光体3上に塗布する塗布ブラシとしてファーブラシ101を用いている。固形潤滑剤103は、図示しないブラケットに保持され、潤滑剤加圧スプリング(不図示)によりファーブラシ101側に加圧されている。そして、感光体3の回転方向に対して連れまわり方向に回転するファーブラシ101により固形潤滑剤103が削られて感光体3上に潤滑剤が塗布される。感光体への潤滑剤塗布により感光体表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。
【0064】
帯電装置4には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)を始めとする公知の手段が用いられる。
これらの帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式がより望ましく、帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能である等のメリットを有する。接触帯電方式あるいは非接触の近接配置方式の場合、感光体3からトナーなどが帯電装置4に移行し汚染されるため、帯電装置4のクリーニング機構8を設けることが好ましい。
【0065】
また、図示しない露光装置、除電ランプ等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、また600〜800[nm]の長波長光を有するため、良好に使用される。
【0066】
次に、プリンタにおける画像形成動作を説明する。
図示しない操作部などからプリント実行の信号を受信したら、帯電装置4、現像ローラ51にそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。同様に、露光装置及び除電ランプなどにもそれぞれ所定の電圧又は電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段としての感光体駆動モータ(不図示)により感光体3が時計回りの方向に回転駆動される。
【0067】
感光体3が時計回りの方向に回転すると、まず感光体表面が、帯電装置4によって所定の電位に帯電される。そして、図示しない露光装置から画像信号に対応した光Lが感光体3上に照射され、光Lが照射された部分の感光体3上が除電され静電潜像が形成される。
【0068】
静電潜像の形成された感光体3は、現像装置5との対向部で現像ローラ51上に形成された現像剤の磁気ブラシで感光体3表面を摺擦される。このとき、現像ローラ51上の負帯電トナーは、現像ローラ51に印加された所定の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。このように、本実施形態では、感光体3上に形成された静電潜像は、現像装置5によって、負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。本実施形態では、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
【0069】
感光体3上に形成されたトナー像は、図示しない給紙部から上レジストローラと下レジストローラとの対向部を経て、感光体3と転写装置7との間に形成される転写領域に給紙される転写紙に転写される。このとき、転写紙は上レジストローラと下レジストローラとの対向部で画像先端と同期を取り転写ベルト14上に供給される。また、転写紙への転写時には、所定の転写バイアスが印加される。トナー像が転写された転写紙は感光体3から分離され、図示しない定着手段としての定着装置へ搬送される。そして、定着装置を通過する事により、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙上に定着されて、転写紙は機外に排出される。
【0070】
一方、転写後の感光体3の表面は、クリーニング装置6で転写後の残留トナーが除去され、潤滑剤塗布装置10によって潤滑剤が塗布された後、除電ランプで除電される。
【0071】
尚、以上説明した例は感光体3から転写体としての転写紙にトナー像を直接転写される方式を採用した実施形態であるが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。即ち、感光体3から中間転写体としての中間転写ベルトにトナー像を1次転写し、この中間転写ベルト上のトナー像を転写紙に2次転写する、所謂中間転写方式を採用しても良い。
この他、各色に対応した複数の現像装置5を有しカラー画像を形成する、周知慣用のカラー画像形成方式を採用したカラー画像形成装置としても良い。
【0072】
また、本プリンタにおいては、感光体3と、プロセス手段として帯電装置4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10などが枠体2に収められており、プロセスカートリッジ1として装置本体から一体的に着脱可能となっている。なお、本実施形態では、プロセスカートリッジ1としての感光体3とプロセス手段とを一体的に交換するようになっているが、感光体3、帯電装置4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10のような単位で新しいものと交換するような構成でもよい。
【0073】
〔トナー〕
次に、本プリンタに好適なトナーについて説明する。
本プリンタに用いるトナーとしては、画質向上のために、高円形化、小粒径化がし易い懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法により製造された重合トナーを用いるのが好ましい。特に、円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]以下の重合トナーを用いるのが好ましい。平均円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]のものを用いることにより、より高解像度の画像を形成することができる。
【0074】
ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製、商品名)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150[ml]中に、分散剤として界面活性剤好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5[ml]加え、更に測定試料(トナー)を0.1〜0.5[g]程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000〜1[万個/μl]となるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、図6(a)に示す実際のトナー投影形状の外周長をC1、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ図6(b)に示す真円の外周長をC2としたときのC2/C1を求め、その平均値を円形度とした。
【0075】
体積平均粒径については、コールターカウンター法によって求めることが可能である。具体的には、コールターマルチサイザー2e型(コールター社製)によって測定したトナーの個数分布や体積分布のデータを、インターフェイス(日科機社製)を介してパーソナルコンピューターに送って解析するのである。より詳しくは、1級塩化ナトリウムを用いた1%NaCl水溶液を電解液として用意する。そして、この電解水溶液100〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5[ml]加える。更に、これに被検試料としてのトナーを2〜20[mg]加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理する。そして、別のビーカーに電解水溶液100〜200[ml]を入れ、その中に分散処理後の溶液を所定濃度になるように加えて、上記コールターマルチサイザー2e型にかける。アパーチャーとしては、100[μm]のものを用い、50,000個のトナー粒子の粒径を測定する。チャンネルとしては、2.00〜2.52[μm]未満;2.52〜3.17[μm]未満;3.17〜4.00[μm]未満;4.00〜5.04[μm]未満;5.04〜6.35[μm]未満;6.35〜8.00[μm]未満;8.00〜10.08[μm]未満;10.08〜12.70[μm]未満;12.70〜16.00[μm]未満;16.00〜20.20[μm]未満;20.20〜25.40[μm]未満;25.40〜32.00[μm]未満;32.00〜40.30[μm]未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00[μm]以上32.0[μm]以下のトナー粒子を対象とする。そして、「体積平均粒径=ΣXfV/ΣfV」という関係式に基づいて、体積平均粒径を算出する。但し、Xは各チャンネルにおける代表径、Vは各チャンネルの代表径における相当体積、fは各チャンネルにおける粒子個数である。
【実施例】
【0076】
表面層623の材質、層厚、含浸処理、及びアクリル微粒子の粒径をそれぞれ変化させて、耐久試験を行った。
【0077】
[母体の弾性体ブレード]
弾性体ブレード622としては、リコー製imagio Neo C4500で用いられているポリウレタン製のクリーニングブレードを使用した。
【0078】
[実施例1]
(接着剤の処方)
クリーニングブレードの当接面に塗工する接着剤は、以下の処方で作製した。なお、各材料は、モリキュラーシーブにより脱水したものを用いた。
・日立ケミカル製FA―512A:20部
・チバケミカル製I−184:1部
・2−ブタノール:79部
【0079】
(接着剤の塗工)
接着剤をクリーニングブレードの当接面にスプレー塗工する方法を用いた。
スプレー装置は、オリンポス社製PC−308WIDEを用い、当接先端部から40[mm]離れたところから、0.5[MPa]の圧力で7[mm/s]の速度でスプレーガンを移動させながら所定の層厚となるように吐出量を調整して塗工した。その後、5分間放置して接着剤を含浸させた後、2−ブタノールを染み込ませたウェスで当接面表面を軽く拭き、余分な接着剤を除去した。
【0080】
(微粒子分散液の処方)
クリーニングブレードの当接面に塗工する微粒子分散液は、以下の処方で作製した。
・エタノール:90部
・東洋インキ製アクリル微粒子(平均粒径560nm):10部
アクリル微粒子の分散は超音波ホモジナイザーで行った。装置は、ブランソン社製のソニファイアー250−Dを用い、3分間分散することにより微粒子分散液を得た。
【0081】
(微粒子分散液の塗工)
微粒子分散液をクリーニングブレードの当接面にスプレー塗工する方法を用いた。
接着剤のスプレー塗工と同じ装置を用い、当接先端部から60[mm]離れたところから、0.3[MPa]の圧力で7[mm/s]の速度でスプレーガンを移動させながら微粒子が適当な密度になるように吐出量を調整して塗工した。
なお、塗工はガラス製容器内で酸素濃度が70ppm以下の環境で行った。
【0082】
(接着剤の硬化)
微粒子分散液塗工後のクリーニングブレードを圧力5Torr以下で40℃、3分間真空乾燥を行い、紫外線(UV)照射(1000mJ/cm)を行い、接着剤を重合させると共に、アクリル微粒子を固定させた。乾燥は、ガラス製容器内で酸素濃度が70ppm以下の環境で行った。
【0083】
(顕微IR測定方法)
以上の実施例1、ならびに以下に示す実施例2〜9および比較例1〜5のそれぞれについて、同一条件で作製したクリーニングブレードを二本準備し、一本の長手方向中央をクライオミクロトームで厚さ400nmの切片を作製し、シリコンウェハ上に切片を載せ、光学顕微鏡及びSEMにより当接面表面層及びカット面表面層の膜厚を測定した。また、クリーニングブレードの端部より当接面に沿って5mmの箇所から内側に向かって、顕微IR(透過法)により測定を行い、当接面のアクリル系接着剤の含浸の深さを測定した。アクリル系接着剤の含浸の深さは、前記A/BのA0/B0に対する比率が1.1に達した箇所で評価した。
なお、作製した二本のクリーニングブレードのうちの残りの一本は、後述する検証実験に用いられる。
【0084】
[実施例2]
実施例1において、接着剤スプレー塗工後の放置時間を30秒にする以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0085】
[実施例3]
実施例1において、接着剤スプレー塗工後の放置時間を2分にする以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0086】
[実施例4]
クリーニングブレードの当接面に塗工する接着剤は、以下の処方で作製した。
(接着剤の処方)
・日立ケミカル製FA−129A:20部
・チバケミカル製I−184:1部
・2―ブタノール:79部
【0087】
(接着剤の塗工)
接着剤の凍結真空脱気を行い酸素を除去したこと、スプレー塗工をガラス製容器内で酸素濃度が100ppm以下の環境で行ったこと、スプレー塗工後の放置時間を3分間にしたこと以外は実施例1と同様にして接着剤の塗工を行った。
【0088】
(微粒子分散液の処方)
実施例1と同じ微粒子分散液を用いた。
【0089】
(微粒子分散液の塗工)
微粒子分散液の凍結真空脱気を行い酸素を除去したこと、スプレー塗工をガラス製容器内で酸素濃度が100ppm以下の環境で行ったこと以外は実施例1と同様にして微粒子分散液の塗工を行った。
【0090】
(接着剤の硬化)
微粒子分散液塗工後のクリーニングブレードを圧力5Torr以下で30℃で10分間真空乾燥を行った後、紫外線(UV)照射(1000mJ/cm)を行い、接着剤を重合させると共に、アクリル微粒子を固定させた。乾燥は、ガラス製容器内で酸素濃度が100ppm以下の環境で行った。
【0091】
[実施例5]
実施例4において、接着剤スプレー塗工後の放置時間を5分にする以外は実施例4と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0092】
[実施例6]
実施例1において、アクリル微粒子をコアフロント株式会社の(平均粒径250nm)にする以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0093】
[実施例7]
実施例1において、アクリル微粒子を東洋紡のポリメタクリル酸メチルのタフチックF−167(平均粒径300nm)にする以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0094】
[実施例8]
実施例1において、アクリル微粒子を東洋インキのアクリル微粒子(平均粒径800nm)にする以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0095】
[実施例9]
実施例1において、アクリル微粒子を東洋インキのアクリル微粒子(平均粒径900nm)にする以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0096】
[比較例1]
母体の弾性体ブレードの未処理品をそのままクリーニングブレードとした。
【0097】
[比較例2]
実施例1において、接着剤処方の2−ブタノールを79部から200部とする以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0098】
[比較例3]
実施例4において、接着剤処方の2−ブタノールを78部から150部とし、スプレー塗工、乾燥、UV照射を全て大気中で行う以外は実施例4と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0099】
[比較例4]
実施例4において、接着剤スプレー塗工後の放置時間を10分にする以外は実施例4と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0100】
[比較例5]
実施例1において、接着剤スプレー塗工後の放置時間を設けず、ウェスで拭くことを行わず、直ぐに微粒子分散液のスプレー塗工を行う以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0101】
次に、検証実験を行った画像形成装置の構成について説明する。
リコー製カラー複合機imagio Neo C4500を線速が450mm/secになるように改造した装置を用いた。上記装置に上記クリーニングブレードを取り付け、実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例5の画像形成装置を作製した。また、トナーは重合法により作製したトナーを用いた。なお、トナーの物性は、以下のとおりである。
【0102】
トナー母体:円形度0.98、平均粒径4.9[μm]
外添剤 :小粒径シリカ1.5部(クラリアント製H2000)
小粒径酸化チタン0.5部(テイカ製MT−150AI)
大粒径シリカ1.0部(電気化学工業製UFP−30H)
【0103】
検証実験は、実験室環境:21[℃]・65[%RH]、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、200,000枚(A4横)で行った。そして、以下の項目を評価した。
【0104】
[評価項目]
トナーのすり抜け評価:クリーニングブレードの直後の感光体上に白色のフエルト部材をとりつけ、すり抜けるトナーを採取し、スキャナーで取り込むことでトナーすり抜け量を測定(良好なものから順に◎、○、×、××で評価し、◎及び○を合格とした。)
評価時画像:縦帯パターン(紙進行方向に対して)43[mm]幅、3本チャート出力20枚(A4横)
クリーニングブレードエッジ摩耗形態:図7に示すようにクリーニングブレード下面側からみた摩耗幅、摩耗形態
【0105】
以下に実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例5のクリーニングブレード検証実験の結果を示す。なお、接着層の層厚は、別途同様に塗工した弾性体ブレード切片を、日本電子製電界放射電子顕微鏡JSM−7400Fの透過電子検出モードで観察することにより測定した。明確に接着層であると判断するには少なくとも30nmの厚さが必要であり、それ以下は測定限界以下であった。切片はクライオミクロトーム装置、EM FCS(Leica社製)用いて作製した。
【0106】
【表2】

【0107】
上記表2は、実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例5の検証実験の結果をまとめたものである。
実施例1〜実施例9においては、いずれも、トナーすり抜けもほとんどなく、摩耗形態もエッジから綺麗な摩耗をしており、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができた。その中でも、実施例1、3、4、7、8、はトナーのすり抜けが確認できず、実施例2、5、6、9よりもさらに良好であった。
一方、比較例1はえぐれが発生し、クリーニング不良が発生してしまった。比較例2、3、5は細かな欠けが発生し、トナーのすり抜けが多量に確認された。比較例4は、欠けは見られなかったものの、トナーのすり抜けが多く見られた。
【符号の説明】
【0108】
1 プロセスカートリッジ
2 枠体
3 感光体
4 帯電装置
5 現像装置
6 クリーニング装置
7 転写装置
10 潤滑剤塗布装置
14 転写ベルト
23 感光体
51 現像ローラ
52 供給スクリュ
53 攪拌スクリュ
54 ドクタ
62 クリーニングブレード
62a 先端面
62b ブレード下面
62c 先端稜線部
101 ファーブラシ
103 固形潤滑剤
262 クリーニングブレード
262a 先端面
262b ブレード下面
262c 先端稜線部
262d ニップ部
263 トナー
264 有機微粒子(アクリル微粒子)
621 ホルダー
622 弾性体ブレード
623 表面層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2005−107376号公報
【特許文献2】特許第3112362号公報
【特許文献3】特許第2853598号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
該感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナー像化する現像手段と、
現像されたトナー像を転写体へ転写する転写手段と、
転写残のトナー像をクリーニングブレードによりクリーニングするクリーニング手段と、を備える画像形成装置であって、
前記クリーニングブレードは、当該クリーニングブレードが前記感光体と当接する面である当接面において、有機微粒子が接着剤によって固定されてなり、
前記接着剤は、赤外分光法による測定で1681〜1716cm−1にピークを有し、且つ、前記クリーニングブレードの当接面の表面から含浸してなり、
前記クリーニングブレードの切片の透過法による顕微赤外分光法により得られた1681〜1716cm−1のピーク面積値A及び1402〜1423cm−1のピーク面積値Bから算出される値A/Bと、前記接着剤を塗布していないクリーニングブレードの1681〜1716cm−1のピーク面積値A0及び1402〜1423cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0と、の比率、(A/B)/(A0/B0)が1.1以上である含浸領域は、前記クリーニングブレードの当接面の表面から5〜100μmまでの範囲であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記接着剤の接着層の厚みが、50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記有機微粒子は、球形のアクリル微粒子であり、直径が300〜800nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記接着剤は、アクリル系材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置に用いられることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−242475(P2012−242475A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110204(P2011−110204)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】