説明

画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】像担持体の摩耗及びフィルミング、帯電部材の汚染、ならびにトナーすり抜けを防止し、克つ経時に渡ってその効果を維持することができ、外部環境の変化にも対応でき、異常画像の発生を未然に防ぎ、良好な品質の画像を長期間に渡り安定して得ることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明の画像形成装置では、保護層形成装置2を備え、該保護層形成装置2は、少なくとも脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を含む像担持体保護剤21と、該像担持体保護剤を像担持体1表面に塗布または付着させる保護剤供給部材22を備え、且つ、画像形成装置本体には外部環境の温度、湿度を検知する検知手段を備え、前記外部環境の温度、湿度を検知する検知手段の検知結果に基づいて非作像時に像担持体リフレッシュモードを実行する制御手段を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体表面に保護層を形成する保護層形成装置を有する複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ、あるいはこれらの機能を有する複合機等の画像形成装置、及び、その画像形成装置に用いるプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等からなる像担持体上に静電荷による潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電した着色粒子(トナーと言う)を付着させ可視像を形成している。トナーにより形成された可視像は、最終的に紙等の転写媒体に転写後、熱、圧力や溶剤気体等によって転写媒体に定着され、出力画像となる。
【0003】
これらの画像形成の方式は、可視像化のためのトナー粒子を帯電させる方法により、トナー粒子とキャリア粒子の攪拌・混合による摩擦帯電を用いる、いわゆる二成分現像方式と、キャリア粒子を用いずにトナー粒子への電荷付与を行う、いわゆる一成分現像方式とに大別される。また、一成分現像方式では、現像ローラへのトナー粒子の保持に磁気力を使用するか否かにより、磁性一成分現像方式、非磁性一成分現像方式に分類される。
【0004】
これまで、高速性、画像再現性を要求される複写機やこれをベースとした複合機等では、トナー粒子帯電の安定性、立ち上がり性、画像品質の長期的安定性等の要求から、二成分現像方式が多く採用され、省スペース性、低コスト化等の要求が大きい、小型のプリンタ、ファクシミリ等には、一成分現像方式が多く採用されてきていた。
また、特に昨今、出力画像のカラー化が進み、画像の高画質化や画像品質の安定化に対する要求は、これまでにも増して強くなっている。
高画質化のためには、トナーの平均粒径は小さくなり、またその粒子形状は角張った部分がなくなり、より丸い形状になってきている。
【0005】
これら電子写真方式による画像形成装置は、現像方式の違いによらず、一般的にドラム形状やベルト形状をした像担持体(一般には感光体)を回転させつつ一様に帯電し、レーザー光等により像担持体上に潜像パターンを形成し、これを現像装置により可視像化して、更に転写媒体上に転写を行っている。
【0006】
また、転写媒体へトナー像を転写した後の像担持体上へは、転写されなかったトナー成分が残存する。これらの残存物が、そのまま帯電工程に搬送されると、像担持体の均等な帯電を阻害することがしばしば有るため、一般的には、転写工程を経た後に、像担持体上に残存するトナー成分等を、クリーニング工程にて除去し、像担持体表面を十分に清浄な状態とした上で、帯電が行われる。
このように、作像の各工程においては様々な物理的ストレスや電気的ストレスが存在し、像担持体、帯電部材、クリーニング部材が劣化していく。
【0007】
この課題を解消すべく、これまでにも像担持体、帯電部材、クリーニング部材の劣化を低減させるために各種潤滑剤や、潤滑成分の供給・膜形成方法について、多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1(特公昭51−22380号公報)では、感光体やクリーニングブレードの寿命を延ばすため、感光体表面にステアリン酸亜鉛を主成分とする固体潤滑剤を供給し感光体表面に潤滑皮膜を形成することが提案されている。これによって感光体表面の磨耗を抑え、像担持体の寿命を伸ばすことが可能となっている。
【0008】
特許文献2(特開2006−350240号公報)では、像担持体表面にステアリン酸亜鉛を主成分とする固体潤滑剤に、無機潤滑剤の1つである窒化ホウ素を添加した各種潤滑剤を供給することで、帯電工程による像担持体表面への電気的ストレスを受けても、潤滑性が低下し難く、しかも像担持体表面全体に亘って潤滑剤の皮膜を形成して高い潤滑性を維持することができるとしている。
また、トナーのクリーニング性が飛躍的に向上しており、近年の小粒経かつ円形度の高いトナーをクリーニングすることが可能である。さらにクリーニング性が向上したことで帯電部材への汚染が軽減され、帯電部材の長寿命化が可能となった。さらにトナーのすり抜けが無いためにブレード磨耗が少なく、クリーニングブレードの長寿命化も可能となっている。
さらに、特許文献2のように、ステアリン酸亜鉛を始めとする脂肪酸金属塩に無機潤滑剤や無機微粒子を含ませた固体潤滑剤の実現手段の1つとして、圧縮成型によってバー状に固形化する製法が提案されている。
【0009】
特許文献3(特開2001−305907号公報)では、具体的な固体潤滑剤の塗布方法として、潤滑剤供給装置が示されている。この特許文献3に記載された潤滑剤供給装置は、バー状の固体潤滑剤に当接し、これを摺擦することで削り取った微粉末状の潤滑剤を感光体ベルトや中間転写ベルト(潤滑剤供給対象)に供給するブラシローラ(供給部材)を備えている。固体潤滑剤は、潤滑剤保持部材に保持されており、その潤滑剤保持部材にはバネ(付勢手段)が当接している。固体潤滑剤は、このバネの付勢力によりブラシローラへ押圧されている。ブラシローラが回転すると、これに当接している固体潤滑剤が摺擦され、これにより削り取られてブラシローラに付着した潤滑剤が、感光体ベルトや中間転写ベルトの表面に塗布される。また、この潤滑剤供給装置には、潤滑剤均しブレードが設けられている。この潤滑剤均しブレードは、感光体ベルトや中間転写ベルトの表面に塗布された潤滑剤を押し広げて、その表面に厚みの均一な潤滑剤層を形成するためのものである。
【0010】
しかしながら、バネが当接してブラシローラへ押圧される構成においては、固体潤滑剤が削れていくに従いバネが伸びていくため、必然的に押圧力は弱まっていく。その結果、固体潤滑剤の削れ量は低下していき、感光体や中間転写ベルトへ供給される固体潤滑剤の量も低下するため、感光体や中間転写ベルトを十分に保護することができなくなる。
【0011】
これらの問題に対して特許文献4(特開2007−293240号公報)では、固体潤滑剤を保持する部材に、可動の押し当て部材を設け、それをバネ部材で加圧することによって、固体潤滑剤が削れていく経時においても、同じ加圧力を保つことができるとしている。
しかしながら、圧縮成型で得られた固体潤滑剤ブロックにおいては、経時にわたり同じ加圧力を保ったとしても、経時の消費量低下が防止できない事がわかっている。
【0012】
この問題に対して特許文献5(特開2007−65100号公報)では、固体潤滑剤の表裏方向で、表側の硬度が裏側の硬度よりも大きくすることで消費量の低下を抑えることができるとしている。
像担持体へのストレスは、クリーニング工程から受けるものばかりではなく、帯電工程からも受け、その電気的ストレスは像担持体表面の状態を大きく変化させる。また、この電気的ストレスは、像担持体表面近傍で放電現象を伴う、接触帯電方式や近接帯電方式で顕著である。これらの帯電方式では、像担持体表面で多くの活性種や反応生成物が発生し、また、放電領域の大気中で発生した活性種や反応生成物の像担持体表面への吸着が多く生じる。
【0013】
上述の特許文献1のようなステアリン酸亜鉛を用いた潤滑剤は、像担持体表面を比較的均等に覆い良好な潤滑性及び保護性を与える。そのため、像担持体を帯電させる際に交流電圧を印加する作像プロセスで問題になっている感光体摩耗を防止するためにはステアリン酸亜鉛を使用することで容易に解決できる。
しかし、ステアリン酸亜鉛はクリーニング性という面で大きな問題がある。通常の作像プロセスでは転写後の残トナーを感光体上から除去する手段としてブレードクリーニング方式が採用されているが、ステアリン酸亜鉛はこのブレードをトナーがすり抜けやすい性質がある。クリーニングブレードをトナーがすり抜けると、そのトナーが直接画像に出たり、帯電部材の汚染をさらに加速してしまう。帯電部材の汚染のため、濃度ムラ等の異常画像が発生してしまう。このトナーすり抜けは、昨今の小粒経で球形のトナーであるほど顕著に表れる。また、ステアリン酸亜鉛を用いた物はトナーなどのすり抜けが多いため、クリーニングブレードを摩耗させ作像装置が短寿命になってしまう。また、ステアリン酸亜鉛は電気的ストレスを受けやすく、劣化しやすい。その結果、潤滑性がより失われ、トナーすり抜けや帯電部材の汚染をさらに加速させる。
【0014】
特許文献6(特開2005−301201号公報)、特許文献7(特開2006−154412号公報)では、帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛の除去を目的とした制御を行っている。特許文献6では帯電工程で劣化したステアリン酸亜鉛の除去を目的として様々なセンサを搭載させて制御を行っている。しかしながら、多くのセンサを搭載することは画像形成装置の構成が大がかりになり、コストアップにつながる。また、特許文献7では複数の像担持体線速を有する画像形成装置におけるフィルミングの発生を防止するフィルミング除去モードについて開示されている。このフィルミング除去モードとは、実行時には直流電圧に重畳させた交流帯電電流を下げ、像担持体へトナー入力し,クリーニング部材で,トナーとともに削り取る方法である。
【0015】
また、特許文献2では、前述したように、像担持体表面にステアリン酸亜鉛を主成分とする固体潤滑剤に、窒化ホウ素を添加した無機潤滑剤を供給することで、帯電工程による像担持体表面への電気的ストレスを受けても、潤滑性が低下し難く、しかも像担持体表面全体に亘って潤滑剤の皮膜を形成して高い潤滑性を維持することができるとしている。しかしながら,窒化ホウ素を含有した保護剤は、無機潤滑剤自体の像担持体への付着力が高く、低い画像面積率や,非画像部の多い画像出力が,経時で連続して使用して通紙された場合や,高温・高湿環境下で実施された場合、像担持体上に保護剤が堆積し、像担持体上にフィルミングを生じさせる。その結果、帯電不足が原因での不良画像や、画像ボケが発生する。しかしながら、この窒化ホウ素に起因したフィルミング物質は付着力が弱いため、ステアリン酸亜鉛のみの保護剤を使用した場合に生じるフィルミングとは異なり、簡単に取り除くことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記の様な現状の従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、像担持体の摩耗及びフィルミング、帯電部材の汚染、ならびにトナーすり抜けを防止し、克つ経時に渡ってその効果を維持することができ、外部環境の変化にも対応でき、異常画像の発生を未然に防ぎ、良好な品質の画像を長期間に渡り安定して得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。また、本発明では、上記の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明では以下の[1]〜[14]の解決手段を採っている。
[1]:像担持体と、該像担持体に近接または接触して配置された帯電部材を有し該帯電部材に帯電バイアス電圧を印加して前記像担持体表面を均一に帯電する帯電装置と、帯電した前記像担持体の表面を画像データに基づいて露光し潜像を書き込む露光装置と、前記像担持体表面に形成された潜像にトナーを供給し可視像化する現像装置と、前記像担持体表面の可視像を転写媒体に直接または中間転写体を介して転写する転写装置と、転写後の前記像担持体表面をクリーニングするクリーニング装置と、前記像担持体表面に像担持体保護剤を塗布または付着させる保護層形成装置と、を備えた画像形成装置において、前記保護層形成装置は、少なくとも脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を含む像担持体保護剤と、該像担持体保護剤を前記像担持体表面に塗布または付着させる保護剤供給部材を備え、且つ、画像形成装置本体には外部環境の温度、湿度を検知する検知手段を備え、前記外部環境の温度、湿度を検知する検知手段の検知結果に基づいて非作像時に像担持体リフレッシュモードを実行する制御手段を備えることを特徴とする(請求項1)。
[2]:[1]に記載の画像形成装置において、前記像担持体リフレッシュモードは、前記像担持体の空回しを前記帯電部材の帯電状態の有無によらず所定の回転数行うことを特徴とする(請求項2)。
[3]:[1]または[2]に記載の画像形成装置において、前記像担持体リフレッシュモードは、前記像担持体及び前記保護剤供給部材の空回しを所定の回転数行うことを特徴とする(請求項3)。
[4]:[1]〜[3]のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記外部環境の温度、湿度を検知する検知手段は、前記画像形成装置本体に取り付けられた温度センサと湿度センサであることを特徴とする(請求項4)。
[5]:[1]〜[4]のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記像担持体保護剤に含まれる脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛であることを特徴とする(請求項5)。
[6]:[1]〜[5]のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記像担持体保護剤に含まれる無機潤滑剤は、窒化ホウ素であることを特徴とする(請求項6)。
[7]:[1]〜[6]のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記保護層形成装置は、前記像担持体保護剤を、回転するブラシ状部材からなる保護剤供給部材を介して前記像担持体表面へ供給することを特徴とする(請求項7)。
[8]:[1]〜[7]のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記像担持体表面へ供給された前記像担持体保護剤を押圧し皮膜化する層形成部材を有することを特徴とする(請求項8)。
[9]:[8]に記載の画像形成装置において、前記層形成部材は、ブレード状部材であることを特徴とする(請求項9)。
[10:[1]〜[9]のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記像担持体が感光体であることを特徴とする(請求項10)。
[11]:[1]〜[10]のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記トナーの円形度SRを、
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
としたとき、該円形度SRが、0.93〜1.00であることを特徴とする(請求項11)。
[12]:[1]〜[11]のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記トナーの重量平均径(D4)と個数平均径(D1)の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることを特徴とする(請求項12)。
[13]:[1]〜[12]のいずれか一つに記載の画像形成装置に用いるプロセスカートリッジであって、少なくとも、トナー像を担持する工程を経る像担持体と、前記トナー像が転写媒体に転写されたあとの前記像担持体表面に、像担持体保護剤を塗布または付着させる保護層形成装置とを一体に備え、画像形成装置本体に対して着脱自在に装備されることを特徴とする(請求項13)。
[14]:[13]に記載のプロセスカートリッジにおいて、前記像担持体と前記保護層形成装置に加えて、帯電装置、現像装置、クリーニング装置を一体に備えることを特徴とする(請求項14)。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像形成装置において、保護層形成装置に用いる脂肪酸の亜鉛塩と無機潤滑剤を含む保護剤は、潤滑性に優れ、クリーニング部材を摩耗することなく、長期に渉り、トナークリーニングのすり抜けを防止することができる。従って、長期に渉り、像担持体リフレッシュモードの実施が可能となる。また、トナーすり抜けが起きないために、長期に渉り、帯電部材への汚染もない。さらに、フィルミング物質除去のために、帯電部材の交流帯電電流を下げる制御が必ずしも必要でなくなり、従来の方法に比べ非常に簡便になる。
【0019】
より詳しく述べると、本発明の画像形成装置は以下の理由で、像担持体上のフィルミングを抑制できていると考えられる。
電子写真方式の像担持体(例えば感光体)には、帯電及びクリーニングのハザードから像担持体を保護するために像担持体保護剤が塗付される。
しかし、保護剤として、脂肪酸金属塩は帯電の影響により潤滑性が低下していしまい、クリーニング部材において、トナーや保護剤がすり抜けて、帯電部材に飛翔して付着し、帯電部材汚染を引き起こしてしまう。
そこで、無機潤滑剤を添加することにより、潤滑性を補助し、トナーや保護剤のすり抜けを防止し、脂肪酸金属塩が帯電部材に飛翔する量を減らすことができる。
【0020】
現在、多くのカラー機にステアリン酸亜鉛に代表される脂肪酸金属塩を、主原料とする保護剤が一般に使用されている。この保護剤は、原料である脂肪酸金属塩を溶融し、型に流し込むことで成型され、固形化される。
一方、脂肪酸金属塩に無機潤滑剤を添加した保護剤においては、原料を溶融して成型、固形化した場合、非常に硬い固形ブロックとなってしまい、ブラシ等の供給部材では、削り取ることができず、感光体汚染が生じる。これは無機潤滑剤が、フィラーの役割を果たすためと考えられている。そのため、脂肪酸金属塩に無機潤滑剤を添加した保護剤は、一般的に圧縮成型により製造される。
【0021】
窒化ホウ素を含有した保護剤は、無機潤滑剤自体の像担持体への付着力が高く、高温、高湿環境下で作像が実施された場合、像担持体上に保護剤が堆積し、像担持体上にフィルミングを生じさせる。その結果、帯電不足が原因での不良画像や画像ボケが発生する。
そこで、本発明では、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤とを含む像担持体保護剤を用いる保護層形成装置を備えた画像形成装置において、像担持体表面上のフィルミング物質を除去する像担持体リフレッシュモードを有し、外部環境の温度、湿度を検知する検知手段の結果に基づいて作像実行時以外の時間に像担持体リフレッシュモードを実行することで、経時にわたって外部環境によらず安定的に画像を出力することができる。
【0022】
本発明の画像形成装置においては、所定の温度、湿度で像担持体リフレッシュモードを実行することで、像担持体表面が供給部材によって摺擦されるため、像担持体表面のフィルミングを取り除くことができ、経時にわたって安定的に画像を出力することができる。
しかしながら、所定の温度、湿度で像担持体リフレッシュモードを実行しない場合、異常画像が出力され、経時にわたって安定的に画像を出力することができない。
【0023】
本発明においては、脂肪酸金属塩としてステアリン酸を用いたほうが、より良い感光体保護性が得られる。また、高級脂肪酸のなかではステアリン酸はもっとも安価であり、その中でも亜鉛の塩は疎水性に優れた非常に安定な物質である。
また、本発明においては、無機潤滑剤として窒化ホウ素を用いたほうが、より良い帯電部材の汚染防止効果が得られる。
【0024】
本発明においては、像担持体保護剤は、像担持体表面に付着し膜化することにより保護効果を発現するものであるため、比較的塑性変形しやすいものである。従って、塊状の像担持体保護剤成分を直接像担持体表面へ押し付け保護層を形成させようとした場合、供給が過剰になり保護層形成効率が良くないばかりでなく、保護層が多層化し静電潜像を形成する際等の露光工程で光の透過を阻害する要因となることがあるため、使用できる像担持体保護剤の種類が制限されることとなる。これに対して保護層形成装置をブラシ状の供給部材を有する構成とし、像担持体保護剤と像担持体の間にブラシ状の供給部材を介在せることにより、軟質な像担持体保護剤を用いた場合にも、ブラシ状の供給部材で保護剤を像担持体表面へ均等に供給することができる。また、前記保護層形成装置に像担持体保護剤を押圧し皮膜化する層形成部材を設ける場合、層形成部材はクリーニング部材を兼ねても良いが、より確実に保護層を形成するには、予めクリーニング部材にて像担持体上のトナーを主成分とする残存物を除去し、残存物が保護層内に混入しないようにした方が好ましい。
【0025】
本発明においては、前記像担持体保護剤を有する保護層形成装置を用いてプロセスカートリッジを構成することにより、プロセスカートリッジの交換間隔を極めて長く設定することが可能となるため、ランニングコストが低減され、また廃棄物量も大幅に削減できる。
【0026】
また、本発明の像担持体保護剤の成分は、金属成分を実質的に含んでいないため、接触または近接して配設された帯電部材を、金属酸化物等で汚染することなく、帯電部材の経時変化を小さくできる。このため、像担持体や帯電部材等のプロセスカートリッジ構成部品の再使用も容易となり、更なる廃棄物量削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の像担持体保護剤の作製に使用する型の全体斜視図である。
【図2】図1に示す型を長手方向から見た概略断面図である。
【図3】作製した像担持体保護剤ブロックの一例を示す概略斜視図である。
【図4】図3に示す像担持体保護剤ブロックをホルダに取り付けた例を示す概略要部断面図である。
【図5】本発明の保護層形成装置を備えた画像形成装置の画像形成部の要部構成例を示す概略要部構成図である。
【図6】本発明に係る保護層形成装置を用いたプロセスカートリッジの構成例の概略を説明するための概略断面図である。
【図7】本発明の保護層形成装置を具備する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の画像形成装置の制御系の一例を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例と比較例及び評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の画像形成装置では、保護層形成装置に用いる像担持体保護剤は、脂肪酸金属塩と、無機潤滑剤とを含むことを必須としている。さらに、本発明の画像形成装置では、像担持体リフレッシュモードを実行することを必須としている。
【0029】
像担持体保護剤に含まれる脂肪酸金属塩の例としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレインサン銅、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸コバルト、パルミチン酸鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプリン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸カドミウム及びそれらの混合物があるが、これに限るものではない。また、これらを混合して使用してもよい。
【0030】
像担持体保護剤に含まれる無機潤滑剤とは、その物質自身がへき開して潤滑する、または内部滑りを起こすものを指す。この例としては、マイカ、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、グラファイト、などがあるがこれに限るものではない。例えば窒化ホウ素は、原子がしっかりと組み合った六角網面が、広い間隔で重なり、層と層とをつなげるのは、弱いファンデルワールス力のみであるため、その層間は容易にへき開し、潤滑する。
【0031】
以下に図を参照して本発明の像担持体保護剤の実現手段の一例を示す。
図1は本発明の像担持体保護剤の作製に使用する型の全体斜視図であり、図2は図1に示す型を長手方向から見た概略断面図である。
図1、図2に示すように、下型1002を横型1003と端型1004で挟みこんだ場所に、圧縮する前の原材料1005を入れる。
さらに両端部領域に少量かつ同量の原材料を投入し、上型1001でプレスする。その結果、端部領域の密度が中央領域より大きい像担持体保護剤ブロックを作製することができる。
図3は作製した像担持体保護剤ブロックの一例を示す概略斜視図であり、図4は図3の像担持体保護剤ブロックをホルダに取り付けた例を示す概略要部断面図である。
【0032】
次に、前記の方法で製造された像担持体保護剤ブロックを、像担持体保護剤として使用した保護層形成装置と、その保護層形成装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関して説明をする。
【0033】
(保護層形成装置)
図5は本発明の保護層形成装置を備えた画像形成装置の画像形成部の要部構成例を示す概略要部構成図である。
ドラム状の像担持体(例えば感光体ドラム)1に対向して配設された保護層形成装置2は、像担持体1を保護する保護剤を前述した圧縮成形により四角柱状、六角柱状、円柱状等のブロックに固形化した像担持体保護剤21と、この像担持体保護剤21と接触して回転するブラシ状部材(例えばブラシローラ等)を有し像担持体保護剤21からブラシ状部材に移行した保護剤を像担持体1へ供給する保護剤供給部材22と、像担持体保護剤21を保護剤供給部材22のブラシ状部材に押し当てて保護剤を保護剤供給部材22のブラシ状部材に移行させる押圧力付与機構23と、保護剤供給部材22により像担持体上に供給された保護剤を薄層化する層形成部材を有する保護層形成機構24と、保護剤21が左右前後に振れないように支持する保護剤支持部材(ホルダ)25等から主に構成されている。なお、図中に矢印で示す像担持体表面の移動方向(回転方向)で保護剤供給部材22より上流側にはクリーニング機構(クリーニング装置)4が配設されているが、このクリーニング機構4は保護層形成装置2の一部と見做すこともできる。また、像担持体保護剤21や保護剤供給部材22の配置はあくまで一例であり、これに限る物ではない。
【0034】
本発明において、像担持体保護剤21は、バネやスプリング等の部材からなる押圧力付与機構23からの押圧力により、例えばブラシ状部材からなる保護剤供給部材22へ接する。保護剤供給部材22は像担持体1と線速差をもって回転して摺擦し、この際に、保護剤供給部材表面に保持された像担持体保護剤21を像担持体表面に供給する。
像担持体表面に供給された像担持体保護剤21は、物質種の選択によっては供給時に十分な保護層にならない場合があるため、より均一な保護層を形成するために、例えば層形成部材であるブレード状の部材と、そのブレード状の部材を感光体1の表面に押し当てるバネやスプリング等の押圧部材(図示省略)とを有する保護層形成機構24により薄層化され、像担持体表面の保護層となる。
【0035】
前記保護層が形成された像担持体1は、例えば、図示しない高電圧電源等の電圧印加装置により直流バイアス電圧もしくはこれに交流バイアス電圧を重畳させた帯電バイアス電圧を印加した帯電部材(例えば帯電ローラ)3を、接触または近接させて、微小空隙での放電による像担持体の帯電が行われる。この際、保護層の一部は電気的ストレスにより分解や酸化が生じ、また、保護層表面への気中放電生成物の付着が生じて、劣化物となる。
劣化した像担持体保護剤は、通常のクリーニング機構により、像担持体に残存したトナー等の成分と共にクリーニング機構により除去される。このようなクリーニング機構は、上述の保護層形成機構24と兼用にしてもよいが、像担持体表面残存物を除去する機能と、保護層を形成する機能とは、適切な部材の摺擦状態が異なることがあるため、図5に示す構成では、機能を分離し、像担持体1の移動方向(回転方向)の像担持体保護剤供給部より上流側に、クリーニングブレードとクリーニング押圧機構等からなるクリーニング機構(クリーニング装置)4を設けている。
【0036】
(プロセスカートリッジ)
次に本発明に係るプロセスカートリッジの実施形態を説明する。
本発明のプロセスカートリッジは、像担持体1と、前記の保護層形成装置2とを少なくとも一体に有してなり、更に必要に応じて帯電装置、露光装置、現像装置、クリーニング装置などを一体に有してなる。
本発明のプロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置に着脱自在に備えさせることができ、後述する本発明の画像形成装置に着脱自在に備えさせるのが好ましい。
【0037】
ここで、図6は本発明に係る保護層形成装置を用いたプロセスカートリッジの構成例の概略を説明するための概略断面図である。このプロセスカートリッジは、本発明に係る画像形成装置の画像形成部10に着脱可能に具備されるものである。
図6に示す画像形成部10は、像担持体(例えば感光体ドラム)1と、像担持体1を帯電する帯電手段である帯電装置(図示の例では帯電ローラ)3と、帯電された像担持体1にレーザー光L等を照射して静電潜像を形成する静電潜像形成手段(図示せず)と、像担持体1上の静電潜像をトナーで現像して可視像化(トナー像化)する現像手段である現像装置5と、像担持体1上のトナー像を転写媒体(紙等の記録媒体または中間転写体)7に転写する転写手段6と、転写後の像担持体1の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段であるクリーニング装置4と、クリーニング装置4から帯電装置3に至る部分に配置された保護層形成装置2等を有している。そして、この画像形成部10は、像担持体1とともに、保護層形成装置2、帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置4をカートリッジ内に一体に設けたプロセスカーリッジ11を用いて構成されている。なお、本実施形態においては、クリーニング装置4は、保護剤供給前に感光体表面をクリーニングし、保護剤の塗布が良好に行なわれるようにするものであるので、像担持体1の移動方向(回転方向)の転写手段6より下流側で、保護層形成装置2よりも上流側に設けられている。
【0038】
前記プロセスカートリッジ11では、像担持体1である感光体ドラムに対向して配設された保護層形成装置2は、像担持体保護剤21、保護剤供給部材22、押圧力付与機構23、保護層形成機構24、保護剤支持部材(ホルダ)25等から構成される。
また、像担持体1は、転写工程後に部分的に劣化した像担持体保護剤やトナー成分等が残存した表面となっているが、クリーニング装置4のクリーニング部材41により表面残存物が清掃され、クリーニングされる。図6では、クリーニング部材41は、いわゆるカウンタータイプ(リーディングタイプ)に類する角度で当接されているクリーニングブレードである。
なお、保護層形成機構24は、層形成部材であるブレード状の部材(以下、ブレードと言う)24aと、そのブレード24aを感光体1の表面に押し当てるバネやスプリング等の押圧部材24bとを有しており、ブレード24aは、図示の例ではカウンタータイプではないが、このブレード24aもカウンタータイプに類する角度で当接させてもよい。
【0039】
クリーニング装置4により、表面の残留トナーや劣化した像担持体保護剤が取り除かれた像担持体表面へは、保護層形成装置2の保護剤供給部材22から、像担持体保護剤21が供給され、保護層形成機構24により皮膜状の保護層が形成される。この際、本発明で使用する像担持体保護剤21は、必要十分な量を制御性良く安定して像担持体表面に供給できるため、像担持体表面を効率よく保護し、長期間に渡って像担持体自身の劣化の進行を防ぐことができる。
このようにして保護層が形成された像担持体1は、帯電装置(帯電ローラ)3による帯電後、レーザー等の露光Lによって静電潜像が形成され、現像装置5により現像されて可視像化され、プロセスカートリッジ外の転写手段(転写ローラ等)6により、転写媒体(紙等の記録媒体または中間転写体)7へ転写される。
【0040】
本発明に係るプロセスカートリッジ11は、上述したように、像担持体表面状態の変動に対しての許容範囲に優れ、像担持体への帯電性能変動等を高度に抑制した構成であるため、このプロセスカートリッジ11を画像形成装置の画像形成部に用いることにより、極めて高画質な画像を長期にわたって安定に形成することができる。
【0041】
(画像形成装置の構成例)
次に、図7は本発明の保護層形成装置を具備する画像形成装置100の一例を示す概略構成図である。
この画像形成装置100は、画像形成を行う画像形成装置本体(プリンタ部)110と、この本体110の上部に設置された原稿読取部(スキャナ部)120と、その上に設置された原稿自動給紙装置(ADF)130と、画像形成装置本体110の下部に設置された給紙部200とを備えており、複写機の機能を有している。また、この画像形成装置100は、外部装置との通信機能を有しており、装置外部のパーソナルコンピュータ等とLAN等を介して接続することにより、プリンタやスキャナとして用いることができる。また、電話回線や光回線と接続することにより、ファクシミリとして用いることができる。
【0042】
画像形成装置本体110内には、同じ構成で現像装置5のトナー色が異なる画像形成部(例えば図6に示したプロセスカートリッジ)10が4つ並設されており、該4つの画像形成部(プロセスカートリッジ)10でトナー色の異なる画像(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像)を形成し、各色のトナー像を転写媒体または中間転写媒体に重ね合わせて転写して多色またはフルカラー画像を形成することができる。なお、図7の例では、4つの画像形成部10は、複数のローラに張架されたベルト状の転写媒体(以下、中間転写体とする)7に沿って並設されており、各画像形成部で形成された各色のトナー像は、一旦中間転写体7に順次重ね合わせて転写された後、二次転写装置12で紙等のシート状の記録媒体に一括して転写される。
【0043】
各色の画像形成部10は図6と同様の構成であり、像担持体(例えば感光体ドラム)1(1Y,1M,1C,1K)の周囲に、保護層形成装置2、帯電装置3、露光装置8からのレーザー光等の露光部、現像装置5、一次転写装置6、およびクリーニング装置4が配置されている。また、図6と同様に、各色の画像形成部10には、感光体1とともに、保護層形成装置2、帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置4をカートリッジ内に一体に設けたプロセスカーリッジ11を用いている。そして、このプロセスカートリッジ11は、画像形成装置本体110に対して着脱可能に設けられている。
【0044】
次に図7に示す画像形成装置の動作を説明する。ここでは、画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ−ポジプロセスで説明を行う。なお、各画像形成部の動作は同じである。
有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される像担持体1Y,1M,1C,1Kは、除電ランプ(図示せず)等で除電され、帯電部材を有する帯電装置3で均一にマイナスに帯電される。
帯電装置による像担持体の帯電が行われる際には、電圧印加装置(図示せず)から帯電部材(例えば像担持体に接触または近接して配置された帯電ローラ)に、像担持体1Y,1M,1C,1Kを所望の電位に帯電させるに適した、適当な大きさの直流バイアス電圧に交流バイアス電圧を重畳した帯電バイアス電圧が印加される。
帯電された像担持体1Y,1M,1C,1Kは、レーザー光学系等の露光手段からなる露光装置8によって照射される画像データに対応したレーザー光で潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行われる。
レーザー光は半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴンミラー)等により像担持体1Y,1M,1C,1Kの表面を、像担持体の回転軸方向(主走査方向と言う)に走査する。
このようにして形成された潜像が、現像装置5にある現像剤担持体である現像ローラ51の現像スリーブ上に供給されたトナー粒子、又はトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナーの可視像が形成される。
潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像スリーブに、像担持体1Y,1M,1C,1Kの露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0045】
上記のような動作で各色に対応した像担持体1Y,1M,1C,1K上に形成されたトナー像は、一次転写装置6にて中間転写体7上に順次重ね合わせて一次転写される。一方、画像形成動作及び一次転写動作にタイミングを合わせて、給紙部200の多段の給紙カセット201a,201b,201c,201dの中の選択された給紙カセットから、給紙ローラ202及び分離ローラ203からなる給紙機構で紙等のシート状の記録媒体が給紙され、搬送ローラ204,205,206及びレジストローラ207を経て二次転写部に搬送される。そして、二次転写部において、中間転写体7上のトナー画像が二次転写装置(例えば二次転写ローラ)12にて、搬送されてきた記録媒体に二次転写される。なお、上記の転写工程において、一次転写装置6や二次転写装置12には、転写バイアスとして、トナーの帯電極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。
上記の二次転写後、記録媒体は、中間転写体7から分離され、転写像が得られる。また、一次転写後に感光体1上に残存するトナー粒子は、クリーニング装置4のクリーニング部材41によって、クリーニング装置4内のトナー回収室へ回収される。また、二次転写後に中間転写体7上に残存するトナー粒子は、ベルトクリーニング装置9のクリーニング部材によって、ベルトクリーニング装置9内のトナー回収室へ回収される。
【0046】
図7に示した画像形成装置100は、上述の画像形成部(プロセスカートリッジ)10が中間転写体7に沿って複数配置された、いわゆるタンデム型で中間転写方式の画像形成装置であり、複数の画像形成部10によって各感光体1Y,1M,1C,1K上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を一旦中間転写体7上に順次転写した後、これを一括して紙のような記録媒体に転写する。そしてトナー像が転写された記録媒体を、搬送装置13により定着装置14へ送り、加熱・加圧等によってトナーを定着する構成である。定着後の記録媒体は、搬送装置15及び排紙ローラ16により排紙トレイ17に排紙される。また、この画像形成装置100は両面プリント機能も備えており、両面プリント時には、定着装置14の下流の搬送路を切換え、片面の画像が定着された記録媒体を両面用搬送装置210を介して表裏反転し、搬送ローラ206及びレジストローラ207で二次転写部に再給紙して、裏面側に画像の転写を行う。転写後の記録媒体は、上記と同様に定着装置14に搬送されて画像が定着され、定着後の記録媒体は排紙トレイ17に排紙される。
【0047】
なお、上記の構成で、中間転写体を用いずに、タンデム型の直接転写方式の画像形成装置とすることもでき、この直接転写方式の場合は、中間転写体に換えて、記録媒体を担持搬送する転写ベルト等を用い、各画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を直接、転写ベルトで搬送される紙のような記録媒体に順次転写した後、定着装置14へ送り、加熱・加圧等によってトナーを定着する構成としても良い。
【0048】
以上に説明したような画像形成装置では、帯電装置3は、帯電ローラ等の帯電部材を像担持体表面に接触又は近接して配設された帯電装置であることが好ましく、これにより、放電ワイヤを用いた、いわゆるコロトロンやスコロトロンと言われるコロナ放電器と比較して、帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制することが可能となる。
しかしながら、このような帯電部材を像担持体表面に接触又は近接して帯電を行う帯電装置3では、前述のように放電が像担持体表面近傍の領域で行われるため、像担持体への電気的ストレスが大きくなりがちである。そこで、本発明に係る像担持体保護剤21を用いた保護層形成装置2を用い、さらに、後述する像担持体リフレッシュモードを実行するることにより、長期間に渡り像担持体を劣化させることなく維持できるため、経時的な画像の変動や使用環境による画像の変動を大幅に抑制でき、安定した画像品質の確保が可能となる。
【0049】
次に、本発明の画像形成装置に用いられる保護層形成装置2の各部についてより詳しく説明する。
保護層形成装置2の保護層形成機構24に用いる層形成部材(ブレード)の材料は、特に制限されるものではなく、例えばクリーニングブレード用材料として一般に公知の、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を、単独またはブレンドして使用することができる。また、これらのゴムブレードは、像担持体との接点部部分を低摩擦係数材料で、コーティングや含浸処理しても良い。また、弾性体の硬度を調整するために、他の有機フィラーや無機フィラーに代表される充填材を分散しても良い。
【0050】
これらのブレードは、例えば図6に示したように、ブレード支持体に、先端部が像担持体表面へ押圧当接できるように、接着や融着等の任意の方法によって固定される。ブレード厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね0.5〜5mm程度であれば好ましく使用でき、1〜3mm程度であれば更に好ましく使用できる。
また、支持体から突き出し、たわみを持たせることができるブレードの長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える、力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね1〜15mm程度であれば好ましく使用でき、2〜10mm程度であれば更に好ましく使用できる。
【0051】
保護層形成用ブレード部材の他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要によりカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いても良い。
弾性金属ブレードの厚みは、0.05〜3mm程度であれば好ましく使用でき、0.1〜1mm程度であればより好ましく使用できる。
また、弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施しても良い。
表面層を形成する材料としては、PFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂や、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマー等を、必要により充填剤と共に、用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
また、保護層形成機構24のブレード24aで像担持体を押圧する力は、像担持体保護剤が延展し保護層や保護膜の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上60gf/cm以下であることがより好ましい。
【0053】
保護層形成装置2のブラシ状の部材は、保護剤供給部材22として好ましく用いられるが、この場合、像担持体表面への機械的ストレスを抑制するためにはブラシ繊維は可撓性を持つことが好ましい。
可撓性のブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用する事ができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などの内、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。
また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して用いても良い。
【0054】
保護剤供給部材22の支持体には、固定型と回転可能なローラ状のものがあるが、本発明では回転可能なローラ状のものを用いている。ローラ状の供給部材としては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてブラシローラとしたものがある。ブラシ繊維は繊維径10〜500μm程度、ブラシの繊維の長さは1〜15mm、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×10〜4.5×108本)のものが好ましく用いられる。
【0055】
保護剤供給部材22は、供給の均一性やその安定性の面から、極カブラシ密度の高い物を使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作ることも好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。
【0056】
また、ブラシ表面には必要に応じてブラシの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として、被覆層を設けても良い。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定される事無く使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル,ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。
【0057】
次に、本発明の画像形成装置において像担持体として好適に用いられる感光体について説明する。
本発明の画像形成装置に用いる感光体は、導電性支持体の上に感光層が設けられている。感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、あるいは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、あるいは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層の上に保護層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0058】
感光体の導電性支持体としては、体積抵抗10^10Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmのものを用いることができる。ドラム状の支持体の直径が20mm以下では、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、ドラム状の支持体の直径が150mm以上では画像形成装置が大きくなってしまい好ましくない。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好ましい。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0059】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の下引層としては、樹脂、あるいは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的あるいは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種あるいは多種の混合物を例示することができる。
【0060】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料及び染料や、セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種あるいは多種混合して使用することができる。下引層は、一層であっても、複数の層で構成しても良い。
【0061】
本発明の画像形成装置に用いる感光体の電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種あるいは多種を混合して使用することができる。
【0062】
上記電荷発生層、電荷輸送層の感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の光導電性樹脂など一種の結着樹脂あるいは多種と結着樹脂の混合物を挙げることができるが、特にこれらのものに限定されるものではない。
【0063】
酸化防止剤としては、例えば以下のものが使用される。
モノフェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
【0064】
ビスフェノール系化合物
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0065】
高分子フェノール系化合物
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
【0066】
パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0067】
ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0068】
有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0069】
有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0070】
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
【0071】
表面層は前述のように、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため設けられる。表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが例示できる。表面層に用いる高分子は、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、何れの高分子であっても良いが、熱硬化性高分子は機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高いためたいへん好ましい。表面層は薄い膜厚であれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、保護層に用いる高分子を電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。感光層と表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により保護層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、表面層を設ける場合には、表面層は十分な膜厚とすることが重要であり、0.01〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmとすることが好ましい。表面層の膜厚が0.1μm以下では、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうため好ましくない。表面層の膜厚が12μm以上では、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうため好ましくない。
【0072】
表面層に用いる高分子としては、画像形成時の書き込み光に対して透明で、絶縁性、機械的強度、接着性に優れた物が望ましく、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの高分子は熱可塑性高分子であっても良いが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性高分子とすることで、表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
【0073】
前述のように、表面層には電荷輸送能力を有していることが好ましく、表面層に電荷輸送能力を持たせるためには、表面層に用いる高分子と前述の電荷輸送物質を混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する高分子を表面層に用いる方法が考えられ、後者の方法が、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができ好ましい。
【0074】
本発明の像担持体は、感光体上に形成されたトナー像を一次転写して色重ねを行い、更に転写媒体へ転写を行う、いわゆる中間転写方式による画像形成を行う際に使用する、中間転写媒体であってもよい。
中間転写媒体としては、体積抵抗10^5〜10^11Ω・cmの導電性を示すものが好ましい。表面抵抗が10^5Ω/□を下回る場合には、感光体から中間転写媒体上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがあり、10^11Ω/□を上回る場合には、中間転写媒体から紙などの転写媒体へトナー像を転写した後に、中間転写媒体上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。
【0075】
中間転写媒体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独または併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成型したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成型を行い、無端ベルト上の中間転写媒体を得ることもできる。
中間転写媒体に表面層を設ける際には、上述の感光体表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
【0076】
次に、本発明において好適に用いられるトナーについて説明する。
まず、本発明のトナーは、平均円形度が0.93〜1.00であることが好ましい。本発明では、下記の式(1)より得られた値を円形度と定義する。この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長 (1)
【0077】
平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。
トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。
ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。
トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、像担持体の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
【0078】
次に、円形度の測定方法について説明する。
円形度は、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
【0079】
また本発明では、トナーの重量平均径D4が3〜10μmであることが好ましい。
この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。
重量平均径D4が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすい。
重量平均径D4が10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい。
【0080】
また本発明のトナーは、重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることが好ましい。(D4/D1)の値が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味する。
よって、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。
トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。
トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密に、かつ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
【0081】
次に、トナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均径D4、個数平均径D1を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0082】
また、このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーが好ましい。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットの少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
【0083】
トナー作成に使用できる変性ポリエステル系樹脂から成るプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長または架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0084】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0085】
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0086】
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0087】
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0088】
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0089】
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0090】
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0091】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0092】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0093】
これらの反応により、本発明のトナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作成できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0094】
また、本発明においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0095】
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0096】
本発明において、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの高温保管時のブロッキングが悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
【0097】
結着樹脂は以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
【0098】
また、本発明に用いるトナーは概ね以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
【0099】
トナー粒子は、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成しても良いし、あらかじめ製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0100】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0101】
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0102】
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
【0103】
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0104】
またフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ〕−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0105】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(タイキン工莱社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0106】
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−l21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0107】
また水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いる事が出来る。
【0108】
また高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0109】
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0110】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、中でもトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
【0111】
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0112】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0113】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0114】
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
【0115】
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0116】
また、該トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0117】
更に、必要により、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類、鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独または混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用/併用することもできる。
【0118】
また、本発明で用いられるトナー中の着色剤の個数平均径は0.5μm以下であることが望ましく、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下が望ましい。
トナー中の着色剤の個数平均径が0.5μmより大きいときには、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。
0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。
さらに、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすいため、好ましくない。特に、0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下である事が好ましく、5個数%以下である事が、より好ましい。
また、着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておく事により、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行なわれ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得る事ができる。
【0119】
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
前記の結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
【0120】
また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、特に、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤や水が、着色剤の分散性の面から好ましい。
中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から、一層好ましい。
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層良くなる。
【0121】
この他、本発明の構成をとる限り、トナー中に結着樹脂や着色剤とともにワックスに代表される離型剤を含有させることもできる。
離型剤としては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
【0122】
これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。
【0123】
これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。これら離型剤の融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0124】
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。ここで、電荷制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色、白色に近い材料が好ましい。
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カ一リット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0125】
本発明において荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
【0126】
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
【0127】
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0128】
更に、トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
この無機微粒子の一次粒子径は、5μm〜2μmであることが好ましく、特に5μm〜500μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0129】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0130】
また、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0131】
これらのトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。しかしながら、転写装置にて転写媒体もしくは中間転写媒体に転写されず、像担持体上に残存してしまったトナーは、その微細さや転動性の良さのために、クリーニング装置による除去が困難で通過してしまうことがある。トナーを像担持体から完全に除去するには、例えばクリーニングブレードのようなトナー除去部材を像担持体に対して強力に押しつける必要がある。この様な負荷は、像担持体やクリーニング装置の寿命を短くするだけでなく、余計なエネルギーを使用してしまうことになる。
【0132】
像担持体に対する負荷を軽減した場合には、像担持体上のトナーや小径のキャリアの除去が不十分となり、これらはクリーニング装置のクリーニングブレードを通過する際に、像担持体表面を傷つけ、画像形成装置の性能を変動させる要因となる。
【0133】
本発明の画像形成装置は、前述の如く、像担持体表面状態の変動、特に低抵抗部位の存在に対しての許容範囲に優れ、像担持体への帯電性能変動等を、高度に抑制した構成であるため、上記構成のトナーと併用することにより、極めて高画質な画像を、長期にわたって安定して得ることができるものである。
【0134】
また、本発明の画像形成装置は、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成のトナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、装置寿命を大幅に延ばすことは言うまでもない。
このような、粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
【0135】
上記のトナーに使用される一般的な結着剤樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体やその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられ、単独あるいは混合して使用できるが特にこれらに限定するものではない。中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂より選ばれる少なくとも1種以上であることが、電気特性、コスト面等から、より好ましいものである。更には、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂および/またはポリオール系樹脂の使用が、一層好ましい。
【0136】
また、上述の事由により、帯電部材の被覆層に含まれる前記トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものは、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、またはこれらの架橋物の内、少なくとも一種を好ましく用いることができる。
粉砕法のトナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作成すれば良く、また、必要により前述の外添成分を、適宜、添加混合すれば良い。
【0137】
(像担持体リフレッシュモード)
次に、本発明の画像形成装置における像担持体リフレッシュモードについて説明する。
図8は本発明の画像形成装置の制御系の一例を示している。
制御部は、制御装置である中央演算処理装置(CPU)と、各種の制御用プログラムや制御データを記憶したメモリ(ROM,RAM,不揮発RAM等)と、図示しない入出力装置、クロック、タイマー、作像枚数カウンタ、各種制御回路等からなり、操作パネルから入力された設定情報、外部環境の検知手段(温度センサ、湿度センサ)の検知情報、その他の各種センサの検知情報、及び制御用プログラムや制御データに従って、画像形成装置の各部(例えば、露光装置駆動部、像担持体駆動部、帯電装置駆動部、現像装置駆動部、転写手段駆動部、給紙、搬送駆動部、定着装置駆動部、保護層形成装置の供給部材駆動部等)を制御し、前述した一連の画像形成動作を制御する。
そして、この制御部の制御プログラムには、像担持体リフレッシュモードを実行するプログラムが組み込まれている。
なお、外部環境の検知手段である温度センサ、湿度センサは、図7に示した画像形成装置等の本体に取り付けられている。
【0138】
本発明の画像形成装置では、図8に示す制御部により、非作像時に感光体表面の保護剤を除去する像担持体リフレッシュモードを実行する構成になっており、制御部は、像担持体リフレッシュモードを実行する制御手段である。
制御部は、通常、非作像時に、作像枚数カウンタからのカウント情報に基づいて所定の枚数毎に像担持体リフレッシュモードを実行するが、外部環境の温度、湿度が所定の温度、湿度以上になったときにも像担持体リフレッシュモードを実行する。
【0139】
本発明における像担持体リフレッシュモードとは、画像形成装置本体に設置された外部環境の温度、湿度を検知する温度センサと湿度センサにより入力された温度、湿度が、所定の温度、湿度以上になったとき、所定枚数を通紙した後、非作像時に、像担持体である感光体と、像担持体保護剤を供給する保護剤供給部材(例えばブラシローラ)の空回しを行うモードである。
そして、像担持体リフレッシュモードを実行して感光体表面をブラシローラで摺擦することにより、感光体表面のフィルミング物質を取り除くことができる。この像担持体リフレッシュモードを非作像時に実行することで、長期にわたって感光体の汚染を防ぐことができる。
【0140】
本発明の画像形成装置では、像担持体保護剤として、帯電により潤滑性が低下し難く、クリーニング性に非常に優れるステアリン酸亜鉛を主成分とする固体潤滑剤に窒化ホウ素を添加した潤滑剤を使用するため、ステアリン酸亜鉛のみを潤滑剤として使用したシステムと異なり、像担持体リフレッシュモード時に、帯電部材の交流帯電電流を下げるといった制御は必要でない。すなわち、感光体及び保護剤供給部材(ブラシローラ)の空回しを帯電部材の帯電状態の有無によらず所定の回転数行うことができる。
また、外部環境の温度、湿度と、像担持体リフレッシュモードを実行する間隔と、空回しの回転数の関係は、画像形成装置の機種構成によって適宜設定すればよい。
すなわち、像担持体リフレッシュモードにおける感光体や保護剤供給部材(ブラシローラ)の空回しの回転数は、画像形成装置各々のトナーや感光体条件及び、クリーニング装置や保護層形成機構のブレードの当接条件等に応じて適宜設定され、その最適条件が予めメモリのROMや不揮発RAM等にテーブル化されて記憶されており、そのテーブル化された制御データに基づいた制御が行われる。
【実施例】
【0141】
以下に、本発明の具体的な実施例を説明する。
図9の表に本発明における画像形成装置の実施例を比較例と共に示す。
画像形成装置として、リコー製 imagio MP C5000の作像部において、ステアリン酸亜鉛を供給する保護層形成装置の部分から、本発明の像担持体保護剤を供給した。
リコー製 imagio MP C5000は、ステアリン酸亜鉛を加圧する機構に特許文献4の技術が採用されており、加圧力は経時でほぼ一定である。
【0142】
A4版、画像面積率100%の縦帯部を含む原稿の20000枚連続通紙試験を行い、感光体汚染及び帯電部材の汚染を目視で観察した。像担持体リフレッシュモードは100枚作像後ごとに感光体を20回転させる空回しを行った。
摩耗したクリーニングブレードを用い、帯電部材が汚染されやすい加速条件で実験を行った。
また、外部環境が温度32℃、湿度80%の環境と、常温、常湿の実験室環境下の2環境下で実施した。
【0143】
[実施例1]
像担持体保護剤として、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を重量比8対2で混合して圧縮成型したものを使用した場合、脂肪酸金属塩にはステアリン酸亜鉛(日本油脂製)を、無機潤滑剤には窒化ホウ素(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)を使用した。実験室環境で像担持体リフレッシュモード無しの場合と、外部環境が温度32℃、湿度80%で、像担持体リフレッシュモード有りの場合で行った。
【0144】
[実施例2]
像担持体保護剤として、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を重量比8対2で混合して圧縮成型したものを使用した場合。脂肪酸金属塩にはステアリン酸カルシウム(和光純薬製)を、無機潤滑剤には窒化ホウ素(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)を使用した。実験室環境で像担持体リフレッシュモード無しの場合と、外部環境が温度32℃、湿度80%で、像担持体リフレッシュモード有りの場合で行った。
【0145】
[実施例3]
像担持体保護剤として、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を重量比8対2で混合して圧縮成型したものを使用した場合。脂肪酸金属塩にはステアリン酸亜鉛(日本油脂製)を、無機潤滑剤にはマイカ(資生堂製)を使用した。実験室環境で像担持体リフレッシュモード無しの場合と、外部環境が温度32℃、湿度80%で、像担持体リフレッシュモード有りの場合で行った。
【0146】
[比較例1]
像担持体保護剤として、脂肪酸金属塩を溶融し、型に流し込んで冷却して成型したものを使用した場合。脂肪酸金属塩にはステアリン酸亜鉛(日本油脂製)を使用した。現在画像形成装置で使用されている像担持体保護剤は、全てこの方法で製造されている。外部環境が温度32℃、湿度80%の場合と、実験室環境において、像担持体リフレッシュモード無しで行った。
【0147】
[比較例2]
像担持体保護剤として、脂肪酸金属塩を溶融し、型に流し込んで冷却して成型したものを使用した場合。脂肪酸金属塩にはステアリン酸亜鉛(日本油脂製)を使用した。現在画像形成装置で使用されている像担持体保護剤は、全てこの方法で製造されている。外部環境が温度32℃、湿度80%の場合と、実験室環境において、像担持体リフレッシュモード有りで行った。
【0148】
[比較例3]
像担持体保護剤として、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を重量比8対2で混合して圧縮成型したものを使用した場合。脂肪酸金属塩にはステアリン酸亜鉛(日本油脂製)を、無機潤滑剤には窒化ホウ素(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)を使用した。外部環境が温度32℃、湿度80%の場合と、実験室環境において、像担持体リフレッシュモード無しで行った。
【0149】
[比較例4]
像担持体保護剤として、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を重量比8対2で混合して圧縮成型したものを使用した場合。脂肪酸金属塩にはステアリン酸カルシウム(和光純薬製)を、無機潤滑剤には窒化ホウ素(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)を使用した。外部環境が温度32℃、湿度80%の場合と、実験室環境において、像担持体リフレッシュモード無しで行った。
【0150】
[比較例5]
像担持体保護剤として、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を重量比8対2で混合して圧縮成型したものを使用した場合。脂肪酸金属塩にはステアリン酸亜鉛(日本油脂製)を、無機潤滑剤にはマイカ(資生堂製)を使用した。外部環境が温度32℃、湿度80%の場合と、実験室環境において、像担持体リフレッシュモード無しで行った。
以上の実施例及び比較例の評価結果についても、図9の表に表示した。
【0151】
以上に説明した本発明の画像形成装置は以下の理由で、像担持体上のフィルミングを抑制できている。
電子写真方式の画像形成装置の像担持体には、帯電及びクリーニングのハザードから像担持体を保護するために像担持体保護剤が塗付される。
しかし、保護剤として、脂肪酸金属塩は帯電の影響により潤滑性が低下していしまい、クリーニング部材において、トナーや保護剤がすり抜けて、帯電部材に飛翔して付着し、帯電部材汚染を引き起こしてしまう。
そこで、無機潤滑剤を添加することにより、潤滑性を補助し、トナーや保護剤のすり抜けを防止し、脂肪酸金属塩が帯電部材に飛翔する量を減らすことができる。
現在、多くのカラー機にステアリン酸亜鉛に代表される脂肪酸金属塩を、主原料とする保護剤が一般に使用されている。この保護剤は、原料である脂肪酸金属塩を溶融し、型に流し込むことで成型され、固形化される。
一方、脂肪酸金属塩に無機潤滑剤を添加した保護剤においては、原料を溶融して成型、固形化した場合、非常に硬い固形ブロックとなってしまい、ブラシ等の供給部材では、削り取ることができず、感光体汚染が生じる。これは無機潤滑剤が、フィラーの役割を果たすためと考えられている。そのため、脂肪酸金属塩に無機潤滑剤を添加した保護剤は、一般的に圧縮成型により製造される。
【0152】
窒化ホウ素を含有した保護剤は、無機潤滑剤自体の像担持体への付着力が高く、高温高湿環境下で作像が実施された場合、像担持体上に保護剤が堆積し、像担持体上にフィルミングを生じさせる。その結果、帯電不足が原因での不良画像や画像ボケが発生する。
そこで、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤とを含む像担持体保護剤において、像担持体表面上のフィルミング物質を除去する像担持体リフレッシュモードを有し、外部環境の温度、湿度を検知する検知手段の結果に基づいて作像実行時以外の時間に像担持体リフレッシュモードを実行することで、経時にわたって外部環境によらず安定的に画像を出力することができる。
【0153】
本発明においては、実施例1〜3のように、脂肪酸金属塩と無機潤滑剤とを含む像担持体保護剤において、所定の温度、湿度で像担持体リフレッシュモードを実行することで、像担持体表面が供給部材によって摺擦されるため、像担持体表面のフィルミングを取り除くことができ、経時にわたって安定的に画像を出力することができる。
しかしながら、比較例3〜5のように、所定の温度、湿度で像担持体リフレッシュモードを実行しない場合は、異常画像が出力され、経時にわたって安定的に画像を出力することができない。
【0154】
本発明においては、実施例1と実施例2および比較例3と比較例4の比較から、脂肪酸金属塩としてステアリン酸を用いたほうが、より良い感光体保護性が得られる。また、高級脂肪酸のなかではステアリン酸はもっとも安価であり、その中でも亜鉛の塩は疎水性に優れた非常に安定な物質である。
また、本発明においては、実施例1と実施例3および比較例3と比較例5の比較から、無機潤滑剤として窒化ホウ素を用いたほうが、より良い帯電部材の汚染防止効果が得られる。
【0155】
本発明においては、像担持体保護剤は、像担持体表面に付着し膜化することにより保護効果を発現するものであるため、比較的塑性変形しやすいものである。従って、塊状の像担持体保護剤成分を直接像担持体表面へ押し付け保護層を形成させようとした場合、供給が過剰になり保護層形成効率が良くないばかりでなく、保護層が多層化し静電潜像を形成する際等の露光工程で光の透過を阻害する要因となることがあるため、使用できる像担持体保護剤の種類が制限されることとなる。これに対して保護層形成装置を、ブラシ状部材からなる保護剤供給部材(ブラシローラ)を有する構成とし、像担持体保護剤と像担持体の間に保護剤供給部材を介在させることにより、軟質な像担持体保護剤を用いた場合にでも、像担持体表面へ保護剤を均等に供給することができる。また、前記保護層形成装置に像担持体保護剤を押圧し皮膜化する層形成部材(ブレード)を設ける場合、層形成部材はクリーニング部材を兼ねても良いが、より確実に保護層を形成するには、予めクリーニング部材にて像担持体上のトナーを主成分とする残存物を除去し、残存物が保護層内に混入しないようにした方が好ましい。
【0156】
本発明においては、図6に示したように、前記像担持体保護剤を有する保護層形成装置2を用いてプロセスカートリッジ11を構成することにより、プロセスカートリッジの交換間隔を極めて長く設定することが可能となるため、ランニングコストが低減され、また廃棄物量も大幅に削減できる。
また、本発明の像担持体保護剤の成分は、金属成分を実質的に含んでいないため、像担持体に接触または近接して配設された帯電部材を、金属酸化物等で汚染することなく、帯電装置の経時変化を小さくできる。このため、像担持体や帯電部材等のプロセスカートリッジ構成部品の再使用も容易となり、更なる廃棄物量削減も可能となる。
【符号の説明】
【0157】
1(1Y,1M,1C,1K):像担持体(感光体ドラム)
2:保護層形成装置
3:帯電装置(帯電ローラ)
4:クリーニング装置(クリーニング機構)
5:現像装置
6:一次転写装置(転写手段)
7:中間転写体(または転写媒体)
8:露光装置
9:ベルトクリーニング装置
10:画像形成部
11:プロセスカートリッジ
12:二次転写装置
13:搬送装置
14:定着装置
15:搬送装置
16:排紙ローラ
17:排紙トレイ
21:像担持体保護剤
22:保護剤供給部材
23:押圧力付与機構
24:保護層形成機構
24a:ブレード状部材(ブレード)
24b:押圧部材
25:保護剤支持部材(ホルダ)
41:クリーニング部材(クリーニングブレード)
42:クリーニング押圧部材
51:現像ローラ
52,53:攪拌搬送スクリュー
100:画像形成装置
110:画像形成装置本体(プリンタ部)
120:原稿読取部(スキャナ部)
130:原稿自動給紙装置(ADF)
200:給紙部
201a〜201d:給紙カセット
202:給紙ローラ
203:分離ローラ
204,205,206:搬送ローラ
207:レジストローラ
210:両面用搬送装置
L:露光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0158】
【特許文献1】特公昭51−22380号公報
【特許文献2】特開2006−350240号公報
【特許文献3】特開2001−305907号公報
【特許文献4】特開2007−293240号公報
【特許文献5】特開2007−65100号公報
【特許文献6】特開2005−301201号公報
【特許文献7】特開2006−154412号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
該像担持体に近接または接触して配置された帯電部材を有し該帯電部材に帯電バイアス電圧を印加して前記像担持体表面を均一に帯電する帯電装置と、
帯電した前記像担持体の表面を画像データに基づいて露光し潜像を書き込む露光装置と、
前記像担持体表面に形成された潜像にトナーを供給し可視像化する現像装置と、
前記像担持体表面の可視像を転写媒体に直接または中間転写体を介して転写する転写装置と、
転写後の前記像担持体表面をクリーニングするクリーニング装置と、
前記像担持体表面に像担持体保護剤を塗布または付着させる保護層形成装置と、
を備えた画像形成装置において、
前記保護層形成装置は、少なくとも脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を含む像担持体保護剤と、該像担持体保護剤を前記像担持体表面に塗布または付着させる保護剤供給部材を備え、
且つ、画像形成装置本体には外部環境の温度、湿度を検知する検知手段を備え、
前記外部環境の温度、湿度を検知する検知手段の検知結果に基づいて非作像時に像担持体リフレッシュモードを実行する制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記像担持体リフレッシュモードは、前記像担持体の空回しを前記帯電部材の帯電状態の有無によらず所定の回転数行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記像担持体リフレッシュモードは、前記像担持体及び前記保護剤供給部材の空回しを所定の回転数行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記外部環境の温度、湿度を検知する検知手段は、前記画像形成装置本体に取り付けられた温度センサと湿度センサであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記像担持体保護剤に含まれる脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記像担持体保護剤に含まれる無機潤滑剤は、窒化ホウ素であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記保護層形成装置は、前記像担持体保護剤を、回転するブラシ状部材からなる保護剤供給部材を介して前記像担持体表面へ供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記像担持体表面へ供給された前記像担持体保護剤を押圧し皮膜化する層形成部材を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記層形成部材は、ブレード状部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記像担持体が感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記トナーの円形度SRを、
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
としたとき、該円形度SRが、0.93〜1.00であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記トナーの重量平均径(D4)と個数平均径(D1)の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一つに記載の画像形成装置に用いるプロセスカートリッジであって、
少なくとも、トナー像を担持する工程を経る像担持体と、
前記トナー像が転写媒体に転写されたあとの前記像担持体表面に、像担持体保護剤を塗布または付着させる保護層形成装置とを一体に備え、
画像形成装置本体に対して着脱自在に装備されることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスカートリッジにおいて、
前記像担持体と前記保護層形成装置に加えて、帯電装置、現像装置、クリーニング装置を一体に備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−13885(P2012−13885A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149415(P2010−149415)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】