説明

画像形成装置及びメンテナンス制御方法

【課題】メンテナンス動作(記録ヘッドの回復処理)による無駄なインク消費を軽減できる画像形成装置及びメンテナンス制御方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、受信した印刷ジョブを蓄積する記憶装置を備え、記録ヘッドからインク液滴を吐出して印刷を行う装置であって、印刷されていない時間の計測値が、予め設定しておいた所定時間に達したか否かを判定する経過時間判定手段311と、印刷されていない時間が所定時間に達したと判定された場合に、蓄積された印刷ジョブが存在するか否かを判定する蓄積ジョブ有無判定手段312と、蓄積された印刷ジョブが存在すると判定された場合に、蓄積された印刷ジョブを実行し、記録ヘッドからインク液滴を吐出させ、記録ヘッドの回復処理を制御する制御手段31と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、画像品質の保持を目的とする記録ヘッドの回復処理を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドからインク液滴を吐出して印刷を行う画像形成装置では、印刷されていない時間が一定時間経過すると、記録ヘッドの吐出口付近のインクが乾燥し、印刷結果である画像品質に悪影響を及ぼす問題がある。
【0003】
そのため、画像形成装置では、印刷されていない時間が一定時間経過すると、記録ヘッドから所定量のインクを吐出させ、吐出口付近の乾燥したインク(残留インク)を洗い流す記録ヘッド回復処理(以下「メンテナンス動作」と言う)が実行される。
【0004】
例えば、特許文献1には、利用場面(稼働環境)に応じて、メンテナンス動作の実行タイミングを制御し、メンテナンス動作による印刷実行待ちなどの利用者の使用感が悪化することを防ぐ技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、メンテナンス動作による無駄なインク消費を軽減する点について十分考慮されていない。
【0006】
メンテナンス動作によるインク消費量は、印刷されていない時間(経過時間)とともに増加する傾向がある。それも、増加傾向は、時間経過に対して一定でなく、時間が経過すればするほど、インク消費量が大きくなると言う特性がある。つまり、印刷されていない時間(経過時間)が長ければ、その分、メンテナンス動作によるインク消費量は、多くなる。
【0007】
そのため、従来の方法では、印刷されていない時間(経過時間)が長ければ、印刷に関係なく(印刷によるインク消費ではなく)、メンテナンス動作のためだけにインクが消費(吐出後、廃棄)される。このようなインクの消費は、利用者にとって望ましくない。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点を鑑み提案されたものであり、メンテナンス動作(記録ヘッドの回復処理)による無駄なインク消費を軽減できる画像形成装置及びメンテナンス制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、受信した印刷ジョブを蓄積する記憶装置を備え、記録ヘッドからインク液滴を吐出して印刷を行う画像形成装置であって、印刷されていない時間の計測値が、予め設定しておいた所定時間に達したか否かを判定する経過時間判定手段と、前記経過時間判定手段により、印刷されていない時間が前記所定時間に達したと判定された場合に、蓄積された印刷ジョブが存在するか否かを判定する蓄積ジョブ有無判定手段と、前記蓄積ジョブ有無判定手段により、蓄積された印刷ジョブが存在すると判定された場合に、蓄積された印刷ジョブを実行し、前記記録ヘッドからインク液滴を吐出させ、前記記録ヘッドの回復処理を制御する制御手段と、を有している。
【0010】
このような構成によって、本発明に係る画像形成装置は、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達すると、当該装置に蓄積された印刷ジョブ(以下「蓄積ジョブ」と言う)が存在するか否かを判定する。画像形成装置は、蓄積ジョブが存在すると判定されると、蓄積ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷によりインクを吐出することで、メンテナンス動作を行う。
【0011】
これによって、本発明に係る画像形成装置では、メンテナンス動作と同期して実行された蓄積ジョブ印刷にインクが消費される。そのため、本発明に係る画像形成装置では、メンテナンス動作による無駄なインク消費が軽減される。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るメンテナンス制御方法は、受信した印刷ジョブを蓄積する記憶装置を備え、記録ヘッドからインク液滴を吐出して印刷を行う画像形成装置における前記記録ヘッドのメンテナンス制御方法であって、印刷されていない時間の計測値が、予め設定しておいた所定時間に達したか否かを判定する経過時間判定手順と、前記経過時間判定手順により、印刷されていない時間が前記所定時間に達したと判定された場合に、蓄積された印刷ジョブが存在するか否かを判定する蓄積ジョブ有無判定手順と、前記蓄積ジョブ有無判定手順により、蓄積された印刷ジョブが存在すると判定された場合に、蓄積された印刷ジョブを実行し、前記記録ヘッドからインク液滴を吐出させ、前記記録ヘッドの回復処理を制御する制御手順と、を有している。
【0013】
このような手順によって、本発明に係るメンテナンス制御方法は、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達すると、蓄積ジョブが存在するか否かを判定し、蓄積ジョブが存在すると判定されると、蓄積ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷によりインクを吐出することで、メンテナンス動作を行うと言う動作を実現する。
【0014】
これによって、本発明に係るメンテナンス制御方法では、メンテナンス動作による無駄なインク消費を軽減可能な環境を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達すると、蓄積ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷のインク吐出によりメンテナンス動作を行うことで、メンテナンス動作による無駄なインク消費が軽減される画像形成装置及びメンテナンス制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るメンテナンス制御機能の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る印刷ジョブの投入実行画面例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るジョブ情報のデータ例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る蓄積ジョブの一覧表示画面例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る印刷されていない時間と記録ヘッドの回復に要するインク消費量との関係を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るメンテナンス制御の処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」と言う)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る印刷システム1の構成例を示す図である。
図1には、画像形成装置100が、複数の情報処理装置200〜200(以降総称する場合「情報処理装置200」と言う)と、ネットワークなどのデータ伝送路N(例えば「LAN:Local Area Network」)で接続されるシステム構成例が示されている。
【0019】
情報処理装置200は、利用者端末などで、画像形成装置100に対して画像処理を要求する機器である。つまり、情報処理装置200は、ジョブ投入機器にあたる。一方、画像形成装置100は、画像形成機能(印刷機能)を有する機器である。つまり、画像形成装置100は、ジョブ実行機器にあたる。
【0020】
本実施形態に係る印刷システム1では、次のような印刷サービスを利用者に提供する。例えば、利用者は、情報処理装置200から、ジョブ実行先である画像形成装置100と実行モード(直接印刷モード/蓄積印刷モード)とを指定し、印刷ジョブを送信する。このとき、印刷ジョブは、指定された実行モードが蓄積印刷モードの場合、指定先の画像形成装置100に蓄積(一時的に保持)される。その後、画像形成装置100では、蓄積している印刷ジョブ(以下「蓄積ジョブ」と言う)の指定画面を介して、利用者からの実行要求を受け付け、要求された印刷ジョブを実行する。
【0021】
このように、本実施形態に係る印刷システム1では、画像形成装置100によって、利用者から受け付けた要求ジョブ(情報処理装置から投入された印刷ジョブなど)が管理される。なお、印刷ジョブは、指定された実行モードが直接印刷モードの場合、指定先の画像形成装置100に蓄積されず、そのまま実行される。
【0022】
以上のように、本実施形態に係る印刷システム1では、上記システム構成により、印刷サービスを提供することができる。
【0023】
<ハードウェア構成>
次に、本実施形態に係る画像形成装置100のハードウェア構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置100のハードウェア構成例を示す図である。なお、本実施形態では、インクジェット記録装置を例に説明する。
【0024】
図2に示すように、画像形成装置100は、コントローラ110、操作パネル120、及びプロッタ130などを備え、それぞれが相互にバスBで接続されている。
【0025】
操作パネル120は、入力部や表示部を備えており、機器情報などの各種情報を利用者に提供したり、動作設定や動作指示などの各種利用者操作を受け付けたりする入力・表示装置である。プロッタ130は、記録ヘッドからインク液滴を吐出して印刷を行う画像形成部を備えており、用紙に出力画像を形成する印刷装置である。なお、記録ヘッドには、1又は複数のインクカートリッジ(インク格納部材)から、各色のインクが供給される。
【0026】
コントローラ110は、CPU(Central Processing Unit:処理装置)111、記憶装置112、ネットワークI/F113、及び外部記憶I/F114などを備える制御基板であり、それぞれが相互にバスBで接続されている。
【0027】
記憶装置111は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びHDD(Hard Disk Drive)などを含み、各種プログラムやデータを格納及び/又は保持する装置である。CPU112は、ROMやHDDから、プログラムやデータをRAM上に読み出し、処理を実行する(記憶装置から読み出したプログラムやデータの処理を実行する)ことで、装置全体の制御や搭載機能を実現する処理装置である。
【0028】
ネットワークI/F113は、画像形成装置100をデータ伝送路Nに接続するインタフェースである。これにより、画像形成装置100は、ネットワークI/F113を介して、情報処理装置200とデータ通信を行うことができる。
【0029】
外部記憶I/F114は、外部記憶装置にあたる記録媒体114aとのインタフェースである。記録媒体114aには、例えば、SDメモリカード(SD Memory Card)やUSB(Universal Serial Bus)メモリなどがある。これにより、画像形成装置100は、外部記憶I/F114を介して、記録媒体114aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0030】
以上のように、画像形成装置100では、上記ハードウェア構成により、画像形成サービスを提供することができる。
【0031】
<メンテナンス制御機能>
本実施形態に係るメンテナンス制御機能について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置100では、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達すると、蓄積ジョブが存在するか否かを判定する。画像形成装置100は、蓄積ジョブが存在すると判定されると、蓄積ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷によりインクを吐出することで、メンテナンス動作を行う。本実施形態に係る画像形成装置100は、このようなメンテナンス制御機能を有している。
【0032】
従来の方法では、印刷されていない時間(経過時間)が長ければ、印刷に関係なく(印刷によるインク消費ではなく)、メンテナンス動作のためだけにインクが消費される。このようなインクの消費は、利用者にとって望ましくない。
【0033】
このように、従来の方法では、メンテナンス動作による無駄なインク消費を軽減する点について十分考慮されていない。
【0034】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置100では、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達すると、蓄積ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷のインク吐出によりメンテナンス動作を行う仕組みとした。
【0035】
これによって、本実施形態に係る画像形成装置100では、メンテナンス動作と同期して実行された蓄積ジョブ印刷にインクが消費され、メンテナンス動作による無駄なインク消費が軽減される。
【0036】
以下に、本実施形態に係るメンテナンス制御機能の構成とその動作について説明する。
図3は、本実施形態に係るメンテナンス制御機能の構成例を示す図である。
図3に示すように、本実施形態に係るメンテナンス制御機能は、ジョブ管理部21、ジョブ情報保持部22、メンテナンス制御部(記録ヘッド回復処理制御部)31、及び印刷実行部41などを有している。
【0037】
ジョブ管理部21は、情報処理装置200から送信された印刷ジョブを蓄積し、画像形成装置100で管理する機能部である。
【0038】
印刷ジョブは、例えば、情報処理装置200により、図4に示すような画面を介して、利用者からの指示を受け付けることで、画像形成装置100に送信される。
【0039】
図4は、本実施形態に係る印刷ジョブの投入実行画面例を示す図である。
図4には、名称「○×報告書.doc」の印刷ジョブが、画像形成装置100に投入されるときの操作画面W1の例が示されている。また、操作画面W1では、画像形成装置100において受信した際の印刷ジョブの実行モードとして「印刷ジョブを蓄積する」が指定されている。
【0040】
本実施形態に係る実行モードには、「今すぐ印刷する」と言う直接印刷モードと、上記「印刷ジョブを蓄積する」と言う蓄積印刷モードと、がある。また、蓄積印刷モードが指定された場合には、印刷期限とデータ種とが設定できる。印刷期限は、印刷ジョブの最大蓄積期間を示す日時情報(以下「印刷期限情報」と言う)である。また、データ種は、印刷ジョブのデータ種別を示す情報(以下「データ種別情報」と言う)である。
【0041】
このように、図4に示す操作画面W1では、名称「○×報告書.prn」の印刷ジョブに対して、印刷期限「2010/07/26 16:00」及びデータ種「テキスト」が設定された蓄積印刷モードが指定されている。また、これらの指定情報(及び設定情報)は、例えば、操作画面W1の[OK]ボタン(送信指示用GUI(Graphical User Interface))が押下された際(送信指示を受け付けた際)に、印刷ジョブ(印刷データ)に付加される。
【0042】
図3の説明に戻る。ジョブ管理部21は、上記方法により送信された印刷ジョブを受信し、画像処理装置100が備える記憶装置112(例えば「HDD」)の所定の記憶領域に格納することで、印刷ジョブを蓄積する。また、ジョブ管理部21は、印刷ジョブを蓄積する際に、印刷ジョブに関する情報をジョブ情報として記録する。記録されたジョブ情報は、ジョブ情報保持部22に保持される。なお、ジョブ情報保持部22は、例えば、画像処理装置100が備える記憶装置112(例えば「HDD」)の所定の記憶領域にあたる。
【0043】
ここで、ジョブ情報保持部22が保持するジョブ情報について説明する。
図5は、本実施形態に係るジョブ情報22Dのデータ例を示す図である。
図5に示すように、ジョブ情報22Dは、ジョブ識別、書誌情報、印刷条件情報、及び格納先などの各情報項目が対応づけられている。
【0044】
[ジョブ識別]項目は、蓄積ジョブの識別子(以下「ジョブ識別情報」と言う)が記録される項目であり、項目値には、例えば、ジョブIDなどがある。「書誌情報」項目は、蓄積ジョブの書誌情報が記録される項目である。記録される書誌情報の項目値には、例えば、ジョブ名を示す値(文字列:以下「ジョブ識別情報」と言う)、オーナー(ジョブ作成者)を示す値(利用者ID:以下「利用者識別情報」と言う)、ページ数を示す値(数値:以下「ページ数情報」と言う)、データ種を示す値(文字列:以下「データ種別情報」と言う)、蓄積日時(記録日時)を示す値(日時:以下「蓄積日時情報」と言う)、及び印刷期限を示す値(日時:以下「印刷期限情報」と言う)などがある。
【0045】
[印刷条件情報]項目は、蓄積ジョブの印刷条件情報が記録される項目である。記録される印刷条件の項目値には、例えば、カラー/モノクロ印刷の指定値(文字列:以下「カラー印刷指定情報」と言う)や片面/両面の指定値(文字列:以下「両面印刷指定情報」と言う)などがある。[格納先]項目は、蓄積ジョブの格納先を示す情報(以下「格納先情報」と言う)が記録される項目であり、項目値には、例えば、ファイルパス、ディレクトリパス、URI(Uniform Resource Identifier)などがある。
【0046】
また、ジョブ情報22Dの各項目値は、例えば、次のように記録される。[ジョブ識別]項目の項目値は、印刷ジョブを蓄積する際に発行(採番)され記録される。[書誌情報]項目の項目値は、印刷ジョブの付加情報から各項目に該当する値が取得され記録される。[印刷条件情報]項目の項目値は、印刷ジョブ内の設定情報(例えば「ヘッダ部のPJLデータ(Printer Job Language data)」)から各項目に該当する値が取得され記録される。
【0047】
このように、ジョブ管理部21は、印刷ジョブを蓄積する際に記録した上記ジョブ情報22Dにより、蓄積ジョブを管理している。
【0048】
また、ジョブ管理部21は、ジョブ情報22Dにより、例えば、図6に示すような操作画面W2を表示することで、利用者に蓄積後のジョブ実行環境を提供する。
【0049】
図6は、本実施形態に係る蓄積ジョブの一覧表示画面例を示す図である。
図6には、ジョブ名「○×報告書」、「△△資料」、「■■企画書」などの複数の蓄積ジョブが一覧表示され、実行する蓄積ジョブを選択指示可能な操作画面W2の例が示されている。また、操作画面W2では、一覧表示される情報に、ジョブ名の他、蓄積日時や印刷期限などの情報が表示される。
【0050】
利用者は、これらの表示情報に基づき、例えば、操作画面W2の右に位置するラジオボタン(ジョブ選択用GUI)を押下することで、実行する蓄積ジョブを選択指定することができる。また、利用者は、選択指定後、[印刷]ボタン(実行指示用GUI)を押下することで、選択指定した蓄積ジョブの実行を指示することができる。
【0051】
このように、ジョブ管理部21は、ジョブ情報22Dに基づき、蓄積ジョブ一覧を表示し、所定のGUIを介して、実行する蓄積ジョブの選択指定や実行指示などを受け付ける。その結果、ジョブ管理部21は、選択指定された蓄積ジョブのジョブ識別情報に基づき特定した格納先情報に従って、格納先である記憶領域から、該当するジョブデータを取得する。ジョブ管理部21は、取得したジョブデータを印刷実行部41へと渡し、蓄積ジョブの実行を指示する。
【0052】
なお、印刷実行部41は、印刷を実行する機能部である。印刷実行部41は、受け取ったジョブデータに基づき、画像形成装置100が備えるプロッタ130が処理可能なラスタイメージ(ビットマップデータ)を生成する。印刷実行部41は、生成したラスタイメージをプロッタ130へと渡し、印刷の実行を指示する。このように、印刷実行部41には、例えば、PDLパーサー(Page Description Language parser)などがある。
【0053】
図3の説明に戻る。メンテナンス制御部31は、画像形成装置100がプロッタ130のメンテナンス動作に係る処理を制御する機能部である。つまり、メンテナンス制御部31は、印刷されていない時間の経過に伴う記録ヘッド(非図示)の回復処理を制御する機能部である。
【0054】
ここで、印刷されていない時間(経過時間)と記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量との関係について、図7を用いて説明する。
【0055】
図7は、本実施形態に係る印刷されていない時間(経過時間)と記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量との関係を示す図である。
図7には、印刷されていない時間(経過時間)が48時間を超えると、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量が0.5(cc)から1.0(cc)に増加し、96時間を超えると、インク消費量が1.0(cc)から3.0(cc)に増加し、144時間を超えると、インク消費量が3.0(cc)から6.0(cc)に増加する関係が示されている。
【0056】
このように、メンテナンス動作によるインク消費量は、印刷されていない時間(経過時間)とともに増加する傾向がある。それも、増加傾向は、時間経過に対して一定でなく、時間が経過すればするほど、インク消費量が大きくなると言う特性がある。つまり、印刷されていない時間(経過時間)が長ければ、その分、メンテナンス動作によるインク消費量は、多くなる。
【0057】
そこで、本実施形態では、メンテナンス制御部31により、インク消費の増分が大きく変化する直前のタイミングで、蓄積ジョブを用いてメンテナンス動作を行うように制御し、インク消費の無駄を軽減する。例えば、図7に示す関係では、インク消費の増分が大きく変化する直前のタイミングとして、印刷されていない時間(経過時間)である48時間、96時間、及び144時間が考えられる。メンテナンス制御部31は、これらのタイミングで、蓄積ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷によりインクを吐出することで、メンテナンス動作を行う。
【0058】
なお、上記関係の特性は、画像形成装置ごと(又は画像形成装置の機種ごと)に異なる。よって、メンテナンス制御部31では、印刷されていない時間(経過時間)と記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量との関係を示す機器特性情報31Dを、メンテナンス動作の制御情報として保持している。
【0059】
機器特性情報31は、経過時間、インク消費量、テキスト枚数、及び画像枚数などの情報項目が、経過時間単位で対応づけられている。
【0060】
[経過時間]項目は、印刷されていない期間(前回の印刷からの経過時間:経過時間情報)を設定する項目である。[インク消費量]項目は、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量(インク消費情報)を設定する項目である。[テキスト枚数]項目は、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインクを消費するテキストデータの枚数(テキスト枚数情報)を設定する項目である。[画像枚数]項目は、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインクを消費する画像データの枚数(画像枚数情報)を設定する項目である。これらの項目値は、例えば、機器管理者により、画像形成装置100の機器特性に基づき予め設定される。よって、メンテナンス制御部31では、機器管理者に対して、機器特性情報31Dの設定画面を提供するようにしてもよい。
【0061】
図3の説明に戻る。メンテナンス制御部31は、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達すると、蓄積ジョブが存在するか否かを判定し、蓄積ジョブが存在すると判定されると、蓄積ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷によりインクを吐出することで、メンテナンス動作を行う。そこで、メンテナンス制御部31は、経過時間判定部311、蓄積ジョブ有無判定部312、メンテナンス状態確認部313、及び経過時間調整部314などを有している。
【0062】
経過時間判定部311は、印刷されていない時間(経過時間)が、所定時間に達したか否かを判定する機能部である。ここで言う「所定時間」は、上述したインク消費の増分が大きく変化する直前のタイミングにあたる経過時間(予め設定しておいた経過時間)であり、蓄積ジョブ印刷の実行開始判断する基準値である。なお、基準値である所定時間は、例えば、機器管理者により、画像形成装置100の機器特性に基づき、機器特性情報31Dとともに予め設定される。
【0063】
経過時間判定部311は、例えば、画像形成装置100が備える時計回路(非図示)により、印刷されていない時間(経過時間)を取得し、取得した時間(時計回路による計測値)が所定時間に達したか否かを判定する。経過時間判定部311は、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達した場合、蓄積ジョブ印刷の実行開始タイミングであると判断する。
【0064】
蓄積ジョブ有無判定部312は、画像形成装置100に蓄積ジョブが存在するか否かを判定する機能部である。蓄積ジョブ有無判定部312は、経過時間判定部311により、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達していると判定されると、蓄積ジョブが存在するか否かを判定する。このとき、蓄積ジョブ有無判定部312は、ジョブ管理部21を介してジョブ情報22Dを参照し、蓄積ジョブの有無を判定する。なお、蓄積ジョブの有無は、蓄積ジョブの格納先にあたる記憶領域を参照して確認する方法であってもよい。
【0065】
メンテナンス制御部13は、蓄積ジョブ有無判定部312により、蓄積ジョブが存在すると判定されると、存在が確認された蓄積ジョブのジョブデータを取得後、取得したジョブデータを印刷実行部41へと渡し、蓄積ジョブの実行を指示する。このとき、メンテナンス制御部31は、ジョブ情報22Dの格納先情報に基づき、蓄積ジョブのジョブデータを取得する。
【0066】
メンテナンス状態確認部313は、蓄積ジョブ印刷実行後のメンテナンス状態を確認する機能部である。ここで言う「メンテナンス状態」とは、記録ヘッド(非図示)の回復状態を意味する。
【0067】
メンテナンス状態確認部313は、蓄積ジョブ印刷を実行したことにより、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインクが消費されたか否かを判定する。つまり、メンテナンス状態確認部313は、蓄積ジョブ印刷のインク消費量が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量に達したか否かを判定する。メンテナンス状態確認部313は、インク消費量が達した場合、メンテナンスされた状態(記録ヘッドが回復した状態)であると判断する。
【0068】
メンテナンス状態確認部313は、機器特性情報31Dを参照し、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報に基づき、対応づけられたインク消費情報を取得し、蓄積ジョブ印刷のインク消費量が、取得したインク消費情報の値に達したか否かを判定する。このとき、メンテナンス状態確認部313は、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)を、次のような方法で算出する。
【0069】
例えば、メンテナンス状態確認部313は、ジョブ管理部21を介してジョブ情報22Dを参照し、印刷実行部41に渡した蓄積ジョブのジョブ識別情報に基づき、対応づけられたページ数情報及びデータ種別情報を取得する。メンテナンス状態確認部313は、印刷実行部41に渡した蓄積ジョブが複数の場合、それぞれの蓄積ジョブに対応して取得したページ数情報の値を、データ種別情報に基づき、データ種ごとに積算(累積)する。また、メンテナンス状態確認部313は、機器特性情報31Dを参照し、ページ数情報及びデータ種別情報に基づき特定したインク消費情報から、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)を算出する。
【0070】
具体的には、次の通りである。
メンテナンス状態確認部313は、機器特性情報31Dが図7に示す情報で、ページ数情報の値が"5(枚)"かつデータ種別情報の値が"画像"であった場合、まず、機器特性情報31Dにおいて、ページ数情報に一致する値が設定された画像枚数情報が存在するか否かを判定する。図7に示す機器特性情報31Dには、"5(枚)"の画像枚数情報が存在する。その結果、メンテナンス状態確認部313は、該当情報に対応づけられたインク消費情報の値"0.5(cc)"を取得し、取得した値をインク消費量(予想値)とする。
【0071】
これにより、メンテナンス状態確認部313では、経過時間情報の値"48(時間)"であった場合、インク消費量情報の値が"0.5(cc)"であることから、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値:0.5)が、取得したインク消費情報の値に達していると判定され、メンテナンスされた状態(記録ヘッドが回復した状態)であると判断される。
【0072】
また、例えば、メンテナンス状態確認部313は、ページ数情報の値が"15(枚)"かつデータ種別情報の値が"テキスト"であった場合、まず、機器特性情報31Dにおいて、ページ数情報に一致する値が設定されたテキスト枚数情報が存在するか否かを判定する。図7に示す機器特性情報31Dには、"15(枚)"のテキスト枚数情報が存在しない。そのため、メンテナンス状態確認部313は、ページ数情報の値に最も近い値が設定されたテキスト枚数情報が存在するか否かを判定する。図7に示す機器特性情報31Dには、"20(枚)"のテキスト枚数情報が存在する。そこで、メンテナンス状態確認部313は、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインクを消費するページ数(テキスト枚数情報の値)に対する蓄積ジョブ印刷のページ数(ページ数情報の値)の比率[15(枚)/20(枚)=0.75]を算出する。これにより、メンテナンス状態確認部313は、算出した比率"0.75"を、テキスト枚数情報に対応づけられたインク消費情報の値"0.5(cc)"に乗算し、インク消費量(予想値)[0.75×0.5(cc)=0.375(cc)]を算出する。
【0073】
これにより、メンテナンス状態確認部313では、経過時間情報の値"48(時間)"であった場合、インク消費情報の値が"0.5(cc)"であることから、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値:0.375)が、取得したインク消費情報の値に達していない[0.5(cc)>0.375(cc)]と判定され、メンテナンスされていない状態(記録ヘッドが回復していない状態)であると判断される。
【0074】
なお、メンテナンス状態確認部313は、蓄積ジョブ印刷のインク消費量を印刷実行部41から取得する方法であってもよい。この場合、プロッタ130は、蓄積ジョブ印刷実行によるインク消費量を検出する機能を有しており、メンテナンス状態確認部313は、印刷実行部41を介して、検出結果を取得する。
【0075】
経過時間調整部314は、蓄積ジョブ印刷の実行によるメンテナンス状態(記録ヘッドの回復率)に応じて、印刷されていない時間(経過時間)を調整する機能部である。
【0076】
経過時間調整部314は、メンテナンス状態確認部313により、蓄積ジョブ印刷のインク消費量が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量に達していると判定されると、経過時間判定部311による取得時間の計測値をゼロクリアする。
【0077】
一方、経過時間調整部314は、メンテナンス状態確認部313により、蓄積ジョブ印刷のインク消費量が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量に達していないと判定されると、経過時間判定部311による取得時間の計測値を、現時点でのメンテナンス状態(記録ヘッドの回復状態)に応じて算出した時間(以下「調整時間」と言う)により調整する。ここで言う「調整時間」とは、メンテナンス状態に応じて、印刷されていない時間(経過時間)を遡る時間を意味する。
【0078】
経過時間調整部314は、メンテナンス状態に応じた調整時間を、次のような方法で算出する。まず、蓄積ジョブ印刷のインク消費量が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量に達していないと判定される場合には、メンテナンス状態確認部313により算出された、テキスト枚数情報の値に対するページ数情報の値の比率が1未満(%単位であれば100未満)となっている。そこで、経過時間調整部314は、メンテナンス状態確認部313により算出された比率を、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報の値に乗算し、調整時間を算出する。
【0079】
メンテナンス状態確認部313により算出された比率は、蓄積ジョブ印刷による記録ヘッド(非図示)の回復率を表している。そのため、経過時間調整部314は、回復率を表す比率を経過時間情報の値に乗算することで、蓄積ジョブ印刷のインク消費量で記録ヘッド(非図示)が回復状態となる時間を算出し、算出した時間を、印刷されていない時間(経過時間)を遡る調整時間としている。
【0080】
具体的には、次の通りである。
経過時間調整部314は、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報が"48(時間)"かつメンテナンス状態確認部313により算出された比率が"0.75"であった場合、算出された比率"0.75"を、経過時間情報の値"48(時間)"に乗算し、調整時間[0.75×48(時間)=36(時間)]を算出する。
【0081】
これにより、経過時間調整部314では、経過時間判定部311による取得時間の計測値"48(時間)"から調整時間の値"36(時間)"を減算した時間[48−36=12(時間)]が、調整後の印刷されていない時間(経過時間)となる。つまり、経過時間調整部314は、蓄積ジョブ印刷のインク消費量で、記録ヘッド(非図示)の状態が、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間の48時間から36時間前の状態に回復しているとし、印刷されていない時間(経過時間)を12時間経過した時点に調整する。
【0082】
また、メンテナンス状態確認部313が、蓄積ジョブ印刷のインク消費量を印刷実行部41から取得する場合、経過時間調整部314では、次のように調整時間が算出される。まず、経過時間調整部314は、機器特性情報31Dから経過時間情報を基に取得したインク消費情報の値に対して、取得した蓄積ジョブ印刷のインク消費量の比率を算出する。その結果、経過時間調整部314は、算出した比率に基づき、調整時間を算出する。
【0083】
メンテナンス制御部31は、経過時間調整部314により、印刷されていない時間(経過時間)が調整されると、再び、経過時間判定部311により、印刷されていない時間(経過時間)の到達判定が行われる。
【0084】
その結果、メンテナンス制御部31では、上記各機能部により、印刷されていない時間の経過に伴う記録ヘッド(非図示)の回復処理が、繰り返し制御される。
【0085】
以上のように、本実施形態に係るメンテナンス制御機能は、上記各機能部が連携動作することにより実現される。なお、本実施形態に係るメンテナンス制御機能は、画像形成装置100に搭載(インストール)されるプログラム(メンテナンス制御機能を実現するソフトウェア)が、処理装置(例えば「CPU」)により、記憶装置112(例えば「ROM」など)からメモリ(RAM)上に読み出され、各機器において、以下の処理が実行されることで実現される。
【0086】
本実施形態に係るメンテナンス制御機能の詳細な動作(機能部群の連携動作)について、処理手順を示すフローチャートを用いて説明する。
【0087】
《メンテナンス制御の主な処理》
図8は、本実施形態に係るメンテナンス制御の処理手順例を示すフローチャートである。なお、以下には、ジョブ管理部21により、複数の蓄積ジョブが管理される画像形成装置100において、メンテナンス制御部31により実行される処理例が示されている。また、以下の処理を行う画像形成装置100は、図7に示した機器特性を有している。よって、画像形成装置100には、48時間、96時間、144時間が、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断する基準値として設定されているものとする。
【0088】
図8に示すように、メンテナンス制御部31は、経過時間判定部311により、前回の印刷からの経過時間(印刷されていない時間の計測値)[T]を取得する(ステップS101)。
【0089】
(1)印刷されていない時間(経過時間)が48時間に達した場合
経過時間判定部311は、取得した時間(計測値)[T]が、予め設定しておいた所定時間[48(時間)]に達したか否かを判定する(ステップS102)。
【0090】
メンテナンス制御部31は、経過時間判定部311で、経過時間(印刷されていない時間の計測値)が所定時間に達していると判定された場合(ステップS102:YES)、蓄積ジョブ有無判定部312により、蓄積ジョブが存在するか否かを判定する(ステップS103)。このとき、蓄積ジョブ有無判定部312は、ジョブ管理部21を介してジョブ情報22Dを参照し、蓄積ジョブの有無を判定する。
【0091】
メンテナンス制御部31は、蓄積ジョブ有無判定部312で、蓄積ジョブが存在すると判定された場合(ステップS103:YES)、存在が確認された蓄積ジョブの実行を印刷実行部41に指示する。このとき、メンテナンス制御部31は、ジョブ情報22Dの格納先情報に基づき、蓄積ジョブのジョブデータを取得し、取得したジョブデータを印刷実行部41へと渡すことで、蓄積ジョブの実行を指示する。
【0092】
その結果、印刷実行部41では、プロッタ130により、蓄積ジョブの印刷が実行され(ステップS104)、記録ヘッド(非図示)からインクが吐出される。
【0093】
その後、メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313により、蓄積ジョブ印刷のインク消費量が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[0.5(cc)]に達したか否かを判定する(ステップS105)。このとき、メンテナンス状態確認部313は、機器特性情報31Dを参照し、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報の値"48(時間)"に基づき、対応づけられたインク消費情報の値"0.5(cc)"を取得する。メンテナンス状態確認部313は、蓄積ジョブ印刷のインク消費量が、取得したインク消費情報の値に達したか否かを判定する。なお、メンテナンス状態確認部313では、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインクを消費するページ数(機器特性情報におけるテキスト枚数情報の値)と蓄積ジョブ印刷におけるページ数(ジョブ情報におけるページ数情報の値)とから算出された比率に基づき、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)を算出する。
【0094】
メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313で、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[0.5(cc)]に達していると判定された場合(ステップS105:YES)、メンテナンスされた状態(記録ヘッドが回復した状態)であると判断され、次のような処理が実行される。
【0095】
経過時間調整部314では、ステップS101で取得された時間(計測値)[T]がゼロクリアされ(ステップS106)、前回の印刷からの経過時間(印刷されていない時間の計測値)[T]が調整[T=0]される。
【0096】
一方、メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313で、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[0.5(cc)]に達していないと判定された場合(ステップS105:NO)、メンテナンスされていない状態(記録ヘッドが回復していない状態)であると判断され、次のような処理が実行される。
【0097】
経過時間調整部314は、メンテナンス状態確認部313により算出された比率(蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)算出に用いた比率)を、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報の値に乗算し、調整時間[X]を算出する(ステップS107)。
【0098】
その結果、経過時間調整部314では、ステップS101で取得された時間(計測値)[T]から調整時間[X]が減算され[T−X]、前回の印刷からの経過時間(印刷されていない時間の計測値)[T]が調整[T=T−X]される(ステップS108)。
【0099】
その後、メンテナンス制御部31は、再び、ステップS101の処理に移行し、印刷されていない時間の経過に伴う記録ヘッド(非図示)の回復処理を、繰り返し制御する。
【0100】
なお、メンテナンス制御部31は、蓄積ジョブ有無判定部312で、蓄積ジョブが存在しないと判定された場合(ステップS103:NO)、上記ステップS104〜S108の処理を行わず、ステップS101の処理へと移行する。つまり、メンテナンス制御部31は、メンテナンス動作と同期して実行する蓄積ジョブがない場合、次の蓄積ジョブ印刷の実行開始タイミング[96(時間)]まで待つ(ステップS102:NO)。
【0101】
(2)印刷されていない時間(経過時間)が96時間に達した場合
経過時間判定部311は、取得した時間(計測値)[T]が、予め設定しておいた所定時間[96(時間)]に達したか否かを判定する(ステップS201)。
【0102】
メンテナンス制御部31は、経過時間判定部311で、経過時間(印刷されていない時間の計測値)が所定時間に達していると判定された場合(ステップS201:YES)、蓄積ジョブ有無判定部312により、蓄積ジョブが存在するか否かを判定する(ステップS202)。
【0103】
メンテナンス制御部31は、蓄積ジョブ有無判定部312で、蓄積ジョブが存在すると判定された場合(ステップS202:YES)、存在が確認された蓄積ジョブの実行を印刷実行部41に指示する。
【0104】
その結果、印刷実行部41では、プロッタ130により、蓄積ジョブの印刷が実行され(ステップS203)、記録ヘッド(非図示)からインクが吐出される。
【0105】
その後、メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313により、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[1.0(cc)]に達したか否かを判定する(ステップS204)。このとき、メンテナンス状態確認部313は、機器特性情報31Dを参照し、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報の値"96(時間)"に基づき、対応づけられたインク消費情報の値"1.0(cc)"を取得する。メンテナンス状態確認部313は、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、取得したインク消費情報の値に達したか否かを判定する。
【0106】
メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313で、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[1.0(cc)]に達していると判定された場合(ステップS204:YES)、メンテナンスされた状態(記録ヘッドが回復した状態)であると判断され、次のような処理が実行される。
【0107】
経過時間調整部314では、ステップS101で取得された時間(計測値)[T]がゼロクリアされ(ステップS205)、前回の印刷からの経過時間(印刷されていない時間の計測値)[T]が調整[T=0]される。
【0108】
一方、メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313で、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[1.0(cc)]に達していないと判定された場合(ステップS204:NO)、メンテナンスされていない状態(記録ヘッドが回復していない状態)であると判断され、次のような処理が実行される。
【0109】
経過時間調整部314は、メンテナンス状態確認部313により算出された比率を、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報の値に乗算し、調整時間[X]を算出する(ステップS206)。
【0110】
その結果、経過時間調整部314では、ステップS101で取得された時間(計測値)[T]から調整時間[X]が減算され[T−X]、前回の印刷からの経過時間(印刷されていない時間の計測値)[T]が調整[T=T−X]される(ステップS207)。
【0111】
その後、メンテナンス制御部31は、再び、ステップS101の処理に移行し、印刷されていない時間の経過に伴う記録ヘッド(非図示)の回復処理を、繰り返し制御する。
【0112】
なお、メンテナンス制御部31は、蓄積ジョブ有無判定部312で、蓄積ジョブが存在しないと判定された場合(ステップS202:NO)、上記ステップS203〜S207の処理を行わず、ステップS101の処理へと移行する。つまり、メンテナンス制御部31は、メンテナンス動作と同期して実行する蓄積ジョブがない場合、次の蓄積ジョブ印刷の実行開始タイミング[144(時間)]まで待つ(ステップS201:NO)。
【0113】
(3)印刷されていない時間(経過時間)が144時間に達した場合
経過時間判定部311は、取得した時間(計測値)[T]が、予め設定しておいた所定時間[144(時間)]に達したか否かを判定する(ステップS301)。
【0114】
メンテナンス制御部31は、経過時間判定部311で、経過時間(印刷されていない時間の計測値)が所定時間に達していると判定された場合(ステップS301:YES)、蓄積ジョブ有無判定部312により、蓄積ジョブが存在するか否かを判定する(ステップS302)。
【0115】
メンテナンス制御部31は、蓄積ジョブ有無判定部312で、蓄積ジョブが存在すると判定された場合(ステップS302:YES)、存在が確認された蓄積ジョブの実行を印刷実行部41に指示する。
【0116】
その結果、印刷実行部41では、プロッタ130により、蓄積ジョブの印刷が実行され(ステップS303)、記録ヘッド(非図示)からインクが吐出される。
【0117】
その後、メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313により、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[3.0(cc)]に達したか否かを判定する(ステップS204)。このとき、メンテナンス状態確認部313は、機器特性情報31Dを参照し、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報の値"144(時間)"に基づき、対応づけられたインク消費情報の値"3.0(cc)"を取得する。メンテナンス状態確認部313は、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、取得したインク消費情報の値に達したか否かを判定する。
【0118】
メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313で、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[3.0(cc)]に達していると判定された場合(ステップS304:YES)、メンテナンスされた状態(記録ヘッドが回復した状態)であると判断され、次のような処理が実行される。
【0119】
経過時間調整部314では、ステップS101で取得された時間(計測値)[T]がゼロクリアされ(ステップS305)、前回の印刷からの経過時間(印刷されていない時間の計測値)[T]が調整[T=0]される。
【0120】
一方、メンテナンス制御部31は、メンテナンス状態確認部313で、蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)が、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインク消費量[3.0(cc)]に達していないと判定された場合(ステップS304:NO)、メンテナンスされていない状態(記録ヘッドが回復していない状態)であると判断され、次のような処理が実行される。
【0121】
経過時間調整部314は、メンテナンス状態確認部313により算出された比率(蓄積ジョブ印刷のインク消費量(予想値)算出に用いた比率)を、蓄積ジョブ印刷の実行開始を判断した経過時間情報の値に乗算し、調整時間[X]を算出する(ステップS306)。
【0122】
その結果、経過時間調整部314では、ステップS101で取得された時間(計測値)[T]から調整時間[X]が減算され[T−X]、前回の印刷からの経過時間(印刷されていない時間の計測値)[T]が調整[T=T−X]される(ステップS307)。
【0123】
その後、メンテナンス制御部31は、再び、ステップS101の処理に移行し、印刷されていない時間の経過に伴う記録ヘッド(非図示)の回復処理を、繰り返し制御する。
【0124】
なお、メンテナンス制御部31は、蓄積ジョブ有無判定部312で、蓄積ジョブが存在しないと判定された場合(ステップS302:NO)、次のような処理を実行してもよい。
【0125】
メンテナンス制御部31は、その後、ジョブ管理部21によって蓄積された印刷ジョブを、メンテナンス動作と同期させて強制実行する。このとき、メンテナンス制御部31は、蓄積された印刷ジョブを、記録ヘッド(非図示)の回復に要するインクを消費するまで(記録ヘッドが回復するまで)、順に実行する。
【0126】
なお、メンテナンス制御部31では、ジョブ管理部21が、直接印刷モードが指定された印刷ジョブを受信した場合、ステップS101で取得された時間(計測値)[T]をゼロクリアし、前回の印刷からの経過時間(印刷されていない時間の計測値)[T]を調整[T=0]する。
【0127】
<まとめ>
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置100によれば、メンテナンス制御部31により、次のような処理が実行される。
【0128】
メンテナンス制御部31は、印刷されていない時間(経過時間)が所定時間に達すると、蓄積ジョブが存在するか否かを判定し、蓄積ジョブが存在すると判定されると、蓄積ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷によりインクを吐出することで、メンテナンス動作を行う。
【0129】
これによって、本実施形態に係る画像形成装置100では、メンテナンス動作と同期して実行された蓄積ジョブ印刷にインクが消費される。そのため、本実施形態に係る画像形成装置100では、メンテナンス動作による無駄なインク消費が軽減される。
【0130】
ここまで、上記実施形態の説明を行ってきたが、上記実施形態に係る「メンテナンス制御機能」は、図を用いて説明を行った各処理手順を、動作環境(プラットフォーム)にあったプログラミング言語でコード化したプログラムが、画像形成装置の処理装置(例えば「CPU」)により実行されることで実現される。
【0131】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体114aに格納することができる。これにより、例えば、上記プログラムは、外部記憶I/F114を介して、画像形成装置100にインストールすることができる。また、画像形成装置100は、ネットワークI/F113を備えていることから、電気通信回線を用いて上記プログラムをダウンロードし、インストールすることもできる。
【0132】
また、上記実施形態では、利用者が画像形成装置100に蓄積した印刷ジョブを実行し、蓄積ジョブ印刷によりインクを吐出することで、メンテナンス動作を行う機能について説明を行ったが、この限りでない。例えば、画像形成装置100に対して、予めメンテナンス用の印刷ジョブを蓄積しておき、メンテナンス動作時には、この蓄積ジョブを実行するようにしてもよい。また、例えば、利用者が、図6に示した蓄積ジョブの一覧表示から選択された蓄積ジョブを、メンテナンス動作時に用いるようにしてもよい。
【0133】
最後に、上記実施形態に挙げた形状や構成に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した要件に、本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0134】
1 印刷システム
21 ジョブ管理部
22 ジョブ情報保持部(D:ジョブ情報)
31 メンテナンス制御部(D:機器特性情報)
311 経過時間判定部
312 蓄積ジョブ有無判定部
313 メンテナンス状態確認部
314 経過時間調整部
41 印刷実行部
100 画像形成装置
110 コントローラ(制御基板)
111 本体制御装置(CPU:処理装置)
112 記憶装置(ROM,RAM,HDDなど)
113 ネットワークI/F
114 外部記憶I/F(a:記録媒体)
120 操作パネル
130 プロッタ(画像形成部)
200 情報処理装置
B バス
N データ伝送路(ネットワーク)
W 操作画面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【特許文献1】特開2007−098706号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した印刷ジョブを蓄積する記憶装置を備え、記録ヘッドからインク液滴を吐出して印刷を行う画像形成装置であって、
印刷されていない時間の計測値が、予め設定しておいた所定時間に達したか否かを判定する経過時間判定手段と、
前記経過時間判定手段により、印刷されていない時間が前記所定時間に達したと判定された場合に、蓄積された印刷ジョブが存在するか否かを判定する蓄積ジョブ有無判定手段と、
前記蓄積ジョブ有無判定手段により、蓄積された印刷ジョブが存在すると判定された場合に、蓄積された印刷ジョブを実行し、前記記録ヘッドからインク液滴を吐出させ、前記記録ヘッドの回復処理を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
蓄積された印刷ジョブの実行により、前記記録ヘッドが回復状態となったか否かを確認する状態確認手段と、
前記記録ヘッドの回復状態に応じて、前記計測値を調整する調整手段と、を有し、
前記状態確認手段は、
印刷されていない時間に伴う前記記録ヘッドの回復に要するインク消費量と、前記印刷ジョブの実行によるインク消費量と、に基づき、前記印刷ジョブの実行による前記記録ヘッドの回復状態を確認し、
前記調整手段は、
前記状態確認手段により、前記記録ヘッドが回復状態となったことが確認された場合に、
前記計測値をゼロクリアすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記状態確認手段により、前記記録ヘッドが回復状態となっていないことが確認された場合に、
前記記録ヘッドの回復に要するインク消費量に対する前記印刷ジョブの実行によるインク消費量の比率に基づき、前記計測値を調整することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記調整手段は、
前記所定時間に前記比率を乗算することで、前記計測値を調整する調整値を算出し、
算出した調整値を前記計測値から減算することで、前記計測値を調整することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記状態確認手段は、
実行した印刷ジョブの書誌情報に基づき、前記印刷ジョブの実行によるインク消費量の予想値を算出し、
印刷されていない時間に伴う前記記録ヘッドの回復に要するインク消費量に、算出した予想値が達しているか否かを判定し、判定結果に基づき、前記印刷ジョブの実行による前記記録ヘッドの回復状態を確認することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
インクを消費するページ数と、インク消費量と、が対応づけられている機器特性情報を保持する情報保持手段を有し、
前記状態確認手段は、
前記機器特性情報を参照し、
実行した印刷ジョブの書誌情報に含まれるページ数に基づき、前記印刷ジョブの実行によるインク消費量の予想値を算出することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記状態確認手段は、
前記印刷ジョブの実行によるインク消費量の検出値を取得し、
印刷されていない時間に伴う前記記録ヘッドの回復に要するインク消費量に、取得した検出値が達しているか否かを判定し、判定結果に基づき、前記印刷ジョブの実行による前記記録ヘッドの回復状態を確認することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
蓄積された印刷ジョブの一覧表示を介して選択された印刷ジョブを実行することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記記録ヘッドの回復処理に用いるために予め蓄積しておいた印刷ジョブを実行することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
受信した印刷ジョブを蓄積する記憶装置を備え、記録ヘッドからインク液滴を吐出して印刷を行う画像形成装置における前記記録ヘッドのメンテナンス制御方法であって、
印刷されていない時間の計測値が、予め設定しておいた所定時間に達したか否かを判定する経過時間判定手順と、
前記経過時間判定手順により、印刷されていない時間が前記所定時間に達したと判定された場合に、蓄積された印刷ジョブが存在するか否かを判定する蓄積ジョブ有無判定手順と、
前記蓄積ジョブ有無判定手順により、蓄積された印刷ジョブが存在すると判定された場合に、蓄積された印刷ジョブを実行し、前記記録ヘッドからインク液滴を吐出させ、前記記録ヘッドの回復処理を制御する制御手順と、を有することを特徴とするメンテナンス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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