説明

画像形成装置及び湿式画像形成方法

【課題】小粒子径トナーで非加熱定着を達成する一方で、優れたクリーニング性及び転写性を示す画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光装置と、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する液体現像装置と、現像された画像を記録媒体に転写する転写装置とを備える画像形成装置であって、前記液体現像剤が、電気絶縁性液体、分散安定剤、及び色材と結着樹脂とを含有したトナー母粒子を含み、10mPa・s以上175mPa・s以下の粘度(測定温度20℃)を有し、前記トナー母粒子のD50が0.05μm以上1μm以下であり、かつ液体現像剤で現像ローラ表面に薄層を形成し、その薄層を現像ローラ帯電装置で帯電する際に、薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となる、液体現像剤であること、並びに加熱定着機構を持たないことを特徴とする、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び湿式画像形成方法に関する。特に、小粒子径トナーを用いた場合において非加熱定着を達成する一方で、優れたクリーニング性及び転写性を示す画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式により用紙に画像を形成する複写機やプリンタあるいはディジタル複合機等の画像形成装置においては、像担持体である感光体ドラムの周面上に形成された静電荷像(静電潜像)が、現像装置によってトナーを用いて現像され、トナー像として顕像化される。そして、感光体ドラム上のトナー像は、転写装置によって用紙上に転写された後、定着装置によって用紙に定着される。トナー像が定着された用紙は、最終的に画像形成装置の機外に排出される。この定着装置としては、従来、定着ローラ対によって記録紙を挟持して搬送しながら、トナー像を溶融して固着させる、いわゆる加熱ローラ方式の定着ユニットが広く使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、環境負荷低減やランニングコスト低減を目的として、前記定着工程を従来と比較してかなり低温又は非加熱で行うことが提案され始めている。
【0004】
ところで、液体現像剤においてはトナー粒子径が比較的小さいため、低温定着に有利だと考えられがちだが、キャリアオイルも感光体ドラムを経て記録紙に付着するため、実際はトナー粒子だけでなくキャリアオイルも加熱する必要があり、必ずしも低エネルギーで加熱定着できるとは言えない。これについては、トナー粒子をより小さくすることでトナー粒子の付着力を増大させて、かつトナー粒子を記録媒体から引き離す力を低減させることで対応できるという考えもある。つまりトナー粒子を極めて小さくすることで非加熱定着を達成するという考えである。しかし、一方で小粒子径化することにより液体現像剤の粘性抵抗力が増すため、現像ローラにおけるクリーニング性及び転写性が悪くなるという問題があった。
【0005】
液体現像剤のクリーニング性の改善に関しては、これまでにトナー層の電位の減衰の適正化する技術が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−134507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の液体現像剤は、非加熱定着の画像形成装置のためものではなく、さらに高粘度であるため、トナー粒子を小粒子径化して非加熱定着を達成する目的で使用できるようなものではない。また、現像ローラのクリーニング性を課題とするものでもない。
【0008】
乾式の電子写真では、現像ローラ上のトナーは、そのまま磁力を用いた現像剤の現像ローラからの剥離等の方法によって現像期中に回収されて再利用されるが、液体現像では一般に現像ローラ上のトナーは、非極性のキャリア液に分散されているので、現像ローラから磁力や電界の作用によって剥離することができない。また感光体上の非画像部に接触する現像剤層のトナー濃度も、キャリア液が感光体との接触で感光体に若干量移動するためトナー濃度が適正値から変化するためそのまま次の現像に用いることはできない。したがって現像ローラから一旦トナーを含む現像剤をクリーニングによって回収してトナー濃度を再調整した後、現像に再度用いる。このクリーニングが不十分だとトナー濃度が変化した現像剤と供給ローラ(アニロックスローラ)側から供給された濃度が適正範囲に調整された現像剤が現像ローラにおいて混じり、現像剤のトナー濃度が不適切な状態になって良好な画像が形成できなくなるため、現像ローラのクリーニングを適切に行うことが良好な画像形成を行う上で重要になる。なお、現像ローラ以外の部分のクリーニングにおいては、転写残トナーのクリーニングとなるので、再利用はほとんどされることがない。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、現像ローラにおけるクリーニング性を高め、小粒子径トナーで非加熱定着を達成する一方で、優れたクリーニング性及び転写性を示す画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を有する画像形成装置を用いることにより前記課題が解決することを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0011】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光装置と、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する液体現像装置と、現像された画像を記録媒体に転写する転写装置とを備える画像形成装置であって、前記液体現像剤が、電気絶縁性液体、分散安定剤、及び色材と結着樹脂とを含有したトナー母粒子を含み、10mPa・s以上175mPa・s以下の粘度(測定温度20℃)を有し、前記トナー母粒子のD50が0.05μm以上1μm以下であり、かつ、液体現像剤で現像ローラ表面に薄層を形成し、その薄層を現像ローラ帯電装置で帯電する際に、薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となる、液体現像剤であること、並びに加熱定着機構を持たないことを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、非加熱定着の画像形成において用いられる小粒子径トナーを含む液体現像剤を用いて、適度なクリーニング性及び転写性を達成することができる。
【0013】
また、前記画像形成装置において、前記液体現像剤100重量部に対し、分散安定剤をさらに5〜15重量部添加させた液体現像剤を用いて現像ローラ表面に薄層を形成することが好ましい。これにより、確実に、現像ローラ表面の薄層における電位の減衰を前記のように調整することができ、ひいては画像形成時のクリーニング性及び転写性をより確実に向上させることができると考えられる。
【0014】
さらに、前記画像形成装置における、プロセス速度が50mm/s以上、400mm/s未満であればより好ましい。これにより、適度なクリーニング性が得られる。
【0015】
また、前記液体現像剤に含まれる樹脂がポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0016】
現像ローラ上に形成する薄層の厚みが1.5〜8.0μmであれば、より好ましい。
【0017】
前記課題を解決するための本発明のさらに他の局面は、液体現像剤を用いて現像ローラ表面に薄膜を形成し、現像ローラ帯電装置で帯電し、感光体ドラム表面の静電潜像を現像する現像工程であって、該液体現像剤として、電気絶縁性液体、分散安定剤、色材、樹脂からなり、10mPa・s以上175mPa・s以下の粘度(測定温度20℃)を有し、前記色材を含んだ前記樹脂粒子のD50が0.05μm以上1μm以下であり、かつ前記現像ローラ帯電装置により帯電させた薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となる、液体現像剤を用いる現像工程と、現像された画像を記録媒体に転写する転写工程と、画像が転写された記録媒体を排出部に排出する排出工程とを有すること、ならびに加熱定着工程を有さないことを特徴とする、湿式画像形成方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小粒子径トナーで非加熱定着を達成する一方で、優れたクリーニング性及び転写性を示す画像形成装置及び画像形成方法を提供することができる。すなわち、本発明の画像形成装置及び画像形成方法は優れたクリーニング性及び転写性を保ちつつ、画像形成における定着工程を非加熱とすることでエネルギー浪費の抑制及びコスト削減を達成した装置であり、環境対応性及び産業利用性の観点からもきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示される画像形成装置が備える液体現像装置の周辺の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
[画像形成装置]
本実施形態に係る画像形成装置は、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光装置と、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する液体現像装置と、現像された画像を記録媒体に転写する転写装置とを備える画像形成装置であって、前記液体現像剤が、電気絶縁性液体、分散安定剤、及び色材と結着樹脂とを含有したトナー母粒子を含み、10mPa・s以上175mPa・s以下の粘度(測定温度20℃)を有し、前記トナー母粒子のD50が0.05μm以上1μm以下であり、かつ液体現像剤で現像ローラ表面に薄層を形成し、その薄層を現像ローラ帯電装置で帯電する際に、薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となる、液体現像剤であること、並びに加熱定着機構を持たないことを特徴とする。
【0022】
〔液体現像剤〕
本実施形態に係る液体現像剤は、基本的構成として、電気絶縁性液体、分散安定剤、及び色材と結着樹脂とを含有したトナー母粒子を有する。また、測定温度20℃における粘度が10mPa・s以上175mPa・s以下であること、前記トナー母粒子のD50が0.05μm以上1μm以下であること、並びに、液体現像剤を用いて現像ローラ表面に薄層を形成した際に、現像ローラ帯電装置により帯電させた薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となることを特徴とする。
【0023】
(電気絶縁性液体)
本実施形態において、電気絶縁性液体は液体キャリアの役割を果たし、得られる液体現像剤の電気絶縁性を高めることを目的として用いられる。電気絶縁性のキャリア液としては、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。
【0024】
また、液体現像剤全体の粘度(測定温度20℃)を10mPa・s以上175mPa・s以下とするために、キャリア液の粘度・種類・配合量を適宜調整・選択する必要がある点にも留意する。
【0025】
このような電気絶縁性の有機溶剤としては、例えば、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油等が挙げられる。
【0026】
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素、又はそれらの混合物等が好ましい。より具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタン等が用いられ得る。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤、及び揮発性の相対的に低い有機溶剤(例えば沸点が200℃以上のもの等)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィン等が好ましく用いられ得る。
【0027】
また、植物油の具体的な例示としては、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油等が挙げられ、なかでもトール油脂肪酸等が好ましく用いられ得る。
【0028】
前記キャリア液としては市販のものを用いてもよく、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−120」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートールFA−1P」、「ハートールFA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」、「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」等が好ましく用いられ得る。
【0029】
液体現像剤全体における前記キャリア液の含有量は、液体現像剤の粘度が前記範囲となるようなものであれば特に限定はされないが、例えば、50〜95質量%であることが好ましい。より好ましくは、70〜90質量%である。50質量%未満では、トナー母粒子などを分散させることが困難となる。また、95質量%を超えると、高い画像濃度を得るために必要な現像ローラ上でのトナー薄層が厚くなりすぎるため、均一に形成できなくなる。
【0030】
なお、本実施形態では、液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。
【0031】
(樹脂)
本発明において、結着樹脂としては、従来からトナー母粒子の結着樹脂として用いられるものを特に制限なく用いることができる。その具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましい樹脂としては、ポリエステル系樹脂が挙げられ、特に、酸化の低いポリエステル系樹脂がより好ましく用いられる。これらは、1種単独で用いても又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明において、結着樹脂としては、定着性が良好な観点から前記のような熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂のみを用いる必要はなく、架橋剤を添加したり、熱硬化性樹脂を一部用いてもよい。このように結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性又は耐久性を向上させることができる。
【0033】
本発明において用いることができる熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(色材)
本実施形態における色材としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0035】
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等が挙げられる。黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等が挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等が挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等が挙げられる。
【0036】
トナー粒子中の色材の含有量は、10〜80質量%が好ましい。より好ましくは、20質量%以上であり、さらに好ましくは、30質量%以上である。また、より好ましくは、60質量%以下であり、さらに好ましくは、50質量%以下である。
【0037】
また、結着樹脂に対する色材の配合量は、例えば、結着樹脂100重量部に対して10〜400重量部である。
【0038】
(トナー母粒子)
本実施形態でいうトナー母粒子は、前記結着樹脂に前記色材が配合されたものである。トナー母粒子は、例えば、公知の混錬粉砕法等によって製造される。より具体的には、これらの原料をミキサー等で混合し、押出機等で溶融混練し、冷却し、得られた固形物を粉砕し、分級すること等により製造され得る。
【0039】
さらに電気絶縁性液体に加えられて分散・粉砕処理される。
【0040】
また、本実施形態において、トナー母粒子の平均粒子径すなわち体積基準の中位径(D50)は、0.05〜1μmである。前記トナー母粒子のD50が0.05μm未満であると、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性がある。D50が1μmを超えると、定着性が低下する可能性がある。ここで、体積基準の中位径(D50)とは、一般に、粒度分布が求められている1群の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたときの累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
【0041】
前記トナー母粒子の平均粒子径(D50)を算出するためには、その粒度分布を測定する必要がある。粒度分布は、例えば次のようにして測定することができる。製造された液体現像剤を所定量サンプリングし、液体現像剤に用いられているキャリア液と同じキャリア液で10〜100倍(体積)に希釈し、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」を用いて、フロー方式により測定する。
【0042】
(分散安定剤)
本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するものであれば特に限定はされないが、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」等が好ましく用いられ得る。
【0043】
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、1〜40質量%程度、好ましくは、10〜20質量%程度である。
【0044】
(液体現像剤の物性)
本実施形態に係る液体現像剤は、上述したような電気絶縁性液体、分散安定剤、トナー母粒子からなる液体現像剤である。その測定温度20℃における粘度は、10mPa・s以上175mPa・s以下であり、好ましくは、20mPa・s以上120mPa・s以下である。粘度が10mPa・s未満だと良好な転写性が得られず、また175mPa・sを超えると良好なクリーニング性を得ることができない。
【0045】
液体現像剤の粘度は、測定温度20℃において、(株)セコニック製の振動式粘度計「VM−10A」等を用いて測定することができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係る液体現像剤は、画像形成の現像工程において、液体現像剤で現像ローラに薄膜を形成し、現像ローラ帯電手段によってその薄層を帯電する際、その時の薄層の表面電位が、帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となるような減衰率を示す。このような表面電位の測定は、例えば、後述の実施例において記載したような方法等で行うことができる。
【0047】
また、液体現像剤からなる薄層の表面電位のこのような減衰率は、例えば、上述したような分散安定剤の種類を適宜選択することやその配合量を適切な範囲に調整すること等により調節することができる。
【0048】
上述したような構成及び物性を有する液体現像剤を用いることにより、優れたクリーニング性及び転写性を達成することができる。
【0049】
〔画像形成装置〕
次に、図面を参照して、本実施形態に係る画像形成装置を説明する。なお、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を表す用語は、単に説明の明瞭化を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、以下の説明で用いられる「シート」という用語は、例えば、上質普通紙、プリント専用紙、コピー用紙、トレーシングペーパ、厚紙、OHPシート等、画像を形成することが可能なあらゆる記録媒体を意味する。
【0050】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。なお、本実施形態に係る画像形成装置はカラープリンタであるが、例えば、モノクロプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機等、シート、すなわち記録媒体に画像を形成することができるその他のあらゆる画像形成装置でも構わない。
【0051】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置1は、画像形成のための様々なユニットや部品を収納している。画像形成装置1は、図1に示された部分の下部に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色用の液体現像剤循環装置をさらに収納しているが、ここではその図示を省略している。
【0052】
画像形成装置1は、画像データに基づいて画像を形成するタンデム式の画像形成部5と、シートを給紙する給紙カセット2と、画像形成部5で形成された画像をシート上に転写する二次転写ローラ6と、画像の定着が完了したシートを機外に排出する排出ローラ8とを備え、給紙カセット2から排出ローラ8までシートを搬送する。
【0053】
一般に、画像形成装置は、通常は、二次転写ローラ6と排出ローラ8との間に、転写された画像をシートに定着させるための加熱定着部(シートを挟んで対向配置された加熱ローラ及び加圧ローラを備える)が配置される。しかし、本実施形態に係る画像形成装置1では、そのような加熱定着部がなく、代わりに、単なるシート搬送用のローラ4が備えられているだけである。つまり、本実施形態に係る画像形成装置1では、前述の本実施形態に係る液体現像剤を用いることにより、加熱定着部を必要とすることなく、シートに転写された画像をシートに定着させることができる。よって、この場合には、従来から用いられてきた熱や光のエネルギーを用いた加熱定着部を削減することができ、画像形成装置1の簡素化やコストダウンを行うこともできる。
【0054】
画像形成部5は、中間転写ベルト10と、中間転写ベルト10のクリーニングブレード14と、各画像形成ユニット(図にはカラープリンタなので4つ図示されている)とを備える。
【0055】
中間転写ベルト10は、導電性を有する、幅広の、無端状のベルト部材であり、図1において時計回りに循環駆動される。中間転写ベルト10の循環駆動において外側を向く面を「表面」と記し、内側を向く面を「裏面」と記す。
【0056】
画像形成ユニットは、中間転写ベルト10の下側走行面に沿って並べて配置されている。画像形成ユニットは、感光体ドラム25と、帯電装置21と、露光装置20と、液体現像装置26と、一次転写ローラ23と、クリーニング装置27と、除電装置22とを備える。
【0057】
円柱状の感光体ドラム25の表面(周面)は、帯電(本実施形態ではプラス極性に帯電)された着色粒子(トナー母粒子)で顕像化された画像を担持可能である。図示される感光体ドラム25は、反時計回りに回転可能である。
【0058】
帯電装置21は、感光体ドラム25の表面を一様に帯電させる。この帯電装置21の動作は、帯電工程を構成する。
【0059】
露光装置20は、例えば、LEDを光源として有し、外部の機器から入力された画像データに基づいて、一様に帯電された感光体ドラム25の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム25の表面に、画像データに基づいた静電潜像が形成される。この露光装置20の動作は、露光工程を構成する。
【0060】
液体現像装置26は、上述したような液体現像剤を、感光体ドラム25の表面に形成された静電潜像に対向するように保持する。これにより、帯電された着色粒子で感光体ドラム25表面の静電潜像がトナー像(顕像)化され、トナー像として現像される。この液体現像装置26の動作は、現像工程を構成する。
【0061】
図2は、図1に示される画像形成装置が備える液体現像装置の周辺の概略構成図である。図2に示されるように、液体現像装置26は、現像容器140、現像ローラ17、供給ローラ(アニロックスローラ)16、汲み上げローラ15、薄膜規制ブレード14、クリーニングローラ7現像剤回収装置146及び現像ローラ帯電装置19を含む。
【0062】
現像容器140は、その内部に、液体現像剤が供給され、液体現像剤を貯留する。液体現像剤は、キャリア液と着色粒子との濃度調整が予め行われた後、供給ノズル278から現像容器140の内部へ供給される。その場合、液体現像剤は、汲み上げローラ15から供給ローラ16へ向けて供給される。
【0063】
供給ローラ16の周面には液体現像剤を保持するための溝が設けられる。図中に点線矢印で示すように、汲み上げローラ15は回転軸周りに反時計方向に、供給ローラ16は回転軸周りに時計方向に回転する。
【0064】
供給ノズル278から供給される液体現像剤は、両ローラ15,16の回転に伴って、供給ローラ16の溝に保持された状態で上方へ運ばれる。薄膜規制ブレード14は、供給ローラ16の周面に圧接され、供給ローラ16の溝に保持される液体現像剤の量が所定量になるように規制する。薄膜規制ブレード14により掻き落とされた余剰の液体現像剤は、現像容器140の底部に貯留される。
【0065】
現像ローラ17は、現像容器140の上部開口部に、供給ローラ16と接するように配置される。現像ローラ17は供給ローラ16と同方向に回転される。この結果、現像ローラ17と供給ローラ16とが当接するニップ部では、現像ローラ17の表面は供給ローラ16の表面と逆方向に移動する。これにより、現像ローラ17の周面には、供給ローラ16の周面に保持された液体現像剤が受け渡される。供給ローラ16の溝に保持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)が所定値に規制されているので、現像ローラ17の表面に担持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)もまた所定値に保たれる。
【0066】
現像ローラ帯電装置19は、現像ローラ上に形成された前記液体現像剤の薄層を帯電する。より具体的には、着色粒子の帯電極性と同極性のバイアス電位(本実施形態ではプラス極性のバイアス電位)を現像ローラ17に外表面側から与えること(現像コロナチャージ)により、現像ローラ17の表面に担持された液体現像剤の薄層中の着色粒子を現像ローラ17の表面側に移動させる。この結果、液体現像剤の薄層中の着色粒子が電界的作用により現像ローラ17側に集合・圧縮され(コンパクション処理)、現像ローラ17側に高濃度の着色粒子の層が形成される。この際、本実施形態においては、前記液体現像剤の薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となる。その後、液体現像剤の薄層は、感光体ドラム25に供給されて、感光体ドラム25上の静電潜像が現像される。これにより、転写性および現像効率が向上されるので、精細な画像が形成される。
【0067】
なお、現像ローラ帯電装置19は、現像ローラ17と供給ローラ16との間の接触部よりも現像ローラ17の回転方向下流側であって、現像ローラ17と感光体ドラム25との間の接触部よりも現像ローラ17の回転方向上流側において、現像ローラ17の周面に対向するように設けられる。つまり、現像ローラ帯電装置19は、現像コロナチャージによって電界を発生させる。これにより、現像ローラ17上の液体現像剤の薄層が、現像ローラ17表面上の着色粒子層と、着色粒子層上のキャリア液層とに2層化する。現像領域(現像ローラ17と感光体ドラム25との対接領域及びその周辺領域)においては、現像ローラ17上の液体現像剤の薄層がこのように2層化した状態で感光体ドラム25表面に接触する。このとき、現像ローラ17側に集合・圧縮された着色粒子が電気泳動の原理により現像ローラ17表面から感光体ドラム25表面に移動し、感光体ドラム25表面の静電潜像を画像として顕像化する。現像ローラ帯電装置19による現像コロナチャージによって、現像前に、現像ローラ17上の液体現像剤の薄層内の着色粒子が現像ローラ17の表面上に圧縮されているので(コンパクション処理)、感光体ドラム25上の非画像域においては、着色粒子が感光体ドラム25表面に接触しないため、カブリを抑制することができる。また、現像コロナチャージによる電界形成によって、現像ローラ17上の液体現像剤の薄層内の着色粒子に電荷が注入されるので、現像電界によって着色粒子が感光体ドラム25上の静電潜像上に反応よく現像されるとともに、感光体ドラム25の表面上に着色粒子が静電気的に強固に付着する。
【0068】
現像ローラ17は感光体ドラム25と接し、感光体ドラム25の表面の静電潜像の電位と現像ローラ17に印加される現像電界との電位差によって、画像データに基づいたトナー像が感光体ドラム25の表面に形成される。
【0069】
現像クリーニングローラ7は、現像ローラ17の感光体ドラム25との接触部の回転方向下流側に接触するように配置され、感光体ドラム25への現像動作を終えた現像ローラ17の表面の液体現像剤を除去する。
【0070】
現像剤回収装置146は、現像クリーニングローラ7で除去された液体現像剤を回収して、液体現像剤循環装置のパイプ81へ液体現像剤を送り出す。
【0071】
一次転写ローラ23は、中間転写ベルト10の裏面に、感光体ドラム25と対向して配置される。一次転写ローラ23には、電源(図示せず)から画像中の着色粒子とは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧を印加される。一次転写ローラ23は、中間転写ベルト10と接触している位置で、中間転写ベルト10に着色粒子と逆極性の電圧を印加する。中間転写ベルト10は導電性を有するので、この印加電圧によって、中間転写ベルト10の表面側及びその周辺に着色粒子が引き付けられる。つまり、感光体ドラム25の表面に現像された画像が中間転写ベルト10に転写される。中間転写ベルト10は、画像を担持して、シートまで搬送する像担持体として機能する。
【0072】
本実施形態に係る画像形成装置では、前述の本実施形態に係る液体現像剤を用いることにより、転写性及び現像ローラのクリーニング性を向上させることができ、優れた画像を得ることができる。
【0073】
クリーニング装置27は、感光体ドラム25から中間転写ベルト10に転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングするための装置である。クリーニング装置27は、残留現像剤搬送スクリュー261と、クリーニングブレード262とを備える。クリーニング装置27内に配置される残留現像剤搬送スクリュー261は、クリーニングブレード262によって掻き取られ、クリーニング装置27内に収納された残留現像剤をクリーニング装置27の外部に搬送する。
【0074】
板状のクリーニングブレード262は、感光体ドラム25の表面に残留した液体現像剤を掻き取るように、感光体ドラム25の回転軸方向に延びる。クリーニングブレード262の一端部は、感光体ドラム25の表面に摺接し、感光体ドラム25の回転に伴って感光体ドラム25上に残留した液体現像剤を掻き取る。
【0075】
除電装置22は、除電用の光源を有し、次の周回による画像形成に備えて、クリーニングブレード262による液体現像剤の除去後、感光体ドラム25の表面を光源からの光によって除電する。
【0076】
図1に示されるシート収容部2は、その表面に画像を形成させるシートを収容する。シート収容部2は、画像形成装置1の下部に配置される。また、シート収容部2は、シートを収容可能に形成された給紙カセット(図示せず)を含む。
【0077】
二次転写ローラ6によって、中間転写ベルト10上に形成された画像をシートに転写する。二次転写には、中間転写ベルト10を支持する中間転写駆動ローラ9と、中間転写駆動ローラ9に対向して配置された二次転写ローラ6とが用いられる。なお、本実施形態では、この二次転写ローラ6と、前記中間転写ベルト10、前記一次転写ローラ23とが、転写装置を構成する。そして、この二次転写ローラ6の動作、前記中間転写ベルト10の動作及び前記一次転写ローラ23の動作は、転写工程を構成する。
【0078】
二次転写ローラ6の上側には、前述したように、加熱定着部に代えて、フィードローラ4,4が備えられている。
【0079】
画像形成装置1の上面に設けられた排出ローラ8によって、画像が転写され、画像の定着が完了したシートが排出される。シート搬送には、複数のローラ対(フィードローラ4、レジストローラ5)が用いられ、シート収容部2から、二次転写部4を経て、排出ローラ8までシートを搬送する。この画像が転写されたシートを排出ローラ8が排出する動作は、排出工程を構成する。
【0080】
[画像形成方法]
前記画像形成装置1を用いてシートに画像を形成することにより、本実施形態に係る湿式画像形成方法が達成される。すなわち、本実施形態に係る湿式画像形成方法は、感光体ドラム25の表面を帯電させる帯電工程と、帯電された感光体ドラム25の表面に静電潜像を形成させる露光工程と、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する現像工程であって、該液体現像剤として、電気絶縁性液体、分散安定剤、及び色材と結着樹脂とを含有するトナー母粒子を含み、10mPa・s以上175mPa・s以下の粘度(測定温度20℃)を有し、前記トナー母粒子のD50が0.05μm以上1μm以下であり、かつ、液体現像剤で現像ローラ表面に薄層を形成し、その薄層を現像ローラ帯電装置で帯電する際に、薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となる、液体現像剤を用いる現像工程と、現像された画像を記録媒体に転写する転写工程と、画像が転写された記録媒体を排出部に排出する排出工程とを有すること、ならびに加熱定着工程を有さないことを特徴とする。これにより、画像形成における転写性及びクリーニング性を向上させることができ、高品質な画像を得ることが可能となる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0082】
[現像剤の調製]
(液体現像剤1)
混錬粉砕法により、色材C.I.Pigment Blue15−3をPES(1)(酸化:14、重量平均分子量(Mw):6000)樹脂100重量部に対して100重量部含有する平均粒子径7μmのトナー母粒子を作製した。この粒子40重量部をモレスコホワイトP120((株)松村石油研究所社製)356重量部に加え、更に分散安定剤としてソルスパース13940(ルーブリゾール社製)4重量部を加え、ボールミルにて48時間、湿式分散することでシアン液体現像剤1を調製した。
【0083】
(液体現像剤2)
分散安定剤の分散時間を24時間にした以外は、現像剤1と同様にして液体現像剤2を調製した。
【0084】
(液体現像剤3)
分散安定剤の分散時間を96時間にした以外は、現像剤1と同様にして液体現像剤2を調製した。
【0085】
(液体現像剤4)
液体現像剤3を14000rpm/4hr/20℃で遠心分離処理した上澄みを液体現像剤4とした。
【0086】
(液体現像剤5〜9)
液体現像剤1を14000rpm/24hr/20℃で遠心分離処理し、上澄みを注意深く除いた。除いた上澄みと同量のモレスコホワイトP120を加えて液体現像剤5とした。次に、100重量部の現像剤1、3にソルスパース13940を7.6重量部混合・攪拌し、それぞれ液体現像剤6,7とした。111重量部の液体現像剤1、3にソルスパース13940を20重量部混合・攪拌し、それぞれ液体現像剤8,9とした。
【0087】
(液体現像剤10〜14)
液体現像剤1のキャリア液を、粘度の低いモレスコホワイトP40,P55、粘度の高いモレスコホワイトP200,P260,P350Pに変更し、それぞれ液体現像剤10〜14とした。
【0088】
(液体現像剤15及び16)
液体現像剤1の樹脂を同じポリエステル系で酸価が低く、分子量も小さいPES(2)(酸化:10、重量平均分子量:3500)に変更して液体現像剤15を調製し、アクリル系樹脂(酸化:20、重量平均分子量:5000)に変更した現像剤16を調製した。
【0089】
[画像形成と評価]
(D50)
体積基準の中位径、D50の測定は、液体現像剤をモレスコホワイトP−55で100倍に希釈し、マルバーン社製レーザー回折式粒度分布測定装置マスターサイザー2000にてフロー測定した。
【0090】
(粘度)
液体現像剤の粘度は振動式粘度計VM−10A((株)セコニック製)で20℃での値を測定した。
【0091】
(画像形成)
前記液体現像剤で現像ローラ上に層厚5μmの薄層を形成し、下記表1に示すそれぞれのプロセス速度で、現像電界400Vを印加してトナーを感光体ドラム上に移動させ、中間転写を経て上質普通紙(王子製紙製C2紙90g/m2)上に画像を作成した。このとき、現像前トナー帯電機通過直後のトナー層電位をV0、1s後のトナー層電位をV1として、V1/V0の値を求めた。
【0092】
(クリーニング性)
また、現像ローラ上で現像ニップ通過後の現像剤量G1、現像クリーニングローラ7通過後の現像剤量をG2とすると、クリーニング性C1は:
C1[%]=(G1−G2)/G1×100
で表され、90%以上を合格(○)、それ以下を不合格(×)とした。
【0093】
(転写性)
また、2次転写前の現像剤量G3、2次転写通過後の現像剤量をG4とすると、転写性T1は:
T1[%]=(G3−G4)/G3×100
で表され、90%以上を合格(○)、それ以下を不合格(×)とした。
【0094】
(定着性)
さらに、得られた画像の光学濃度をD1、上質普通紙に100g/cmの荷重をかけて画像に密着させた後の光学濃度をD2とすると、定着性S1は:
S1[%]=(D1−D2)/D1×100
で表され、90%以上を合格(○)、それ以下を不合格(×)とした。
【0095】
[実施例1、2および比較例1、2]
粒子径の影響
前記液体現像剤1〜4(実施例1、2および比較例1、2)を用いて、上記各評価を行った。結果を表1に示す。表1から明らかなように、粒子径が大きいとクリーニング性はよいが、定着性が悪くなることがわかった。また、小さすぎるとクリーニングブレードに引っかからずにすり抜けてしまい、クリーニングしにくいこともわかった。
【0096】
[実施例1、3〜4と比較例3〜5]
余剰分散剤の影響
余剰分散剤の量を変えた液体現像剤1及び5〜9を用いて、上記各評価を行った。結果を表1に示す。表1から明らかなように、遠心処理により余剰分散剤を減らした現像剤5(比較例3)はトナーの帯電が下がらず、クリーニング性が低下した。分散安定剤を少量添加した現像剤6,7(実施例3〜4)はクリーニング位置でのトナー電位が下がり、クリーニング性が向上した。分散安定剤を多量添加した現像剤8(比較例4),9(比較例5)はクリーニング位置でのトナー電位が下がり、クリーニング性が向上したが、転写位置でのトナー電位が下がりすぎ、転写性が低下した。
【0097】
[実施例1、5〜6と比較例6]
プロセス速度の影響
実施例1、2および比較例1、2と同じように液体現像剤1〜4を用いて、プロセス速度を58(実施例5),230(実施例6),400mm/s(比較例6)と変更した。結果を表に示す。表1から明らかなように、プロセス速度が400mm/sになると、クリーニング位置でトナー電位が十分下がらず、クリーニング性が低下した。
【0098】
[実施例1、7〜9と比較例7〜8]
キャリア液・粘度の影響
液体現像剤1と粘度を変えた液体現像剤10(比較例7)、11(実施例7)、12(実施例8)、13(実施例9)、14(比較例8)を用いて上記評価を行った。結果を表1に示す。表1から明らかなように、粘度が低いほどトナー電位の減衰が大きく、クリーニングには有利であったが、転写性には不利であることがわかった。また、極端に粘度が低い実施例13では、現像ローラ上でトナー層が5μmにならず、十分な画像濃度が出せなかった。よって転写率と定着率は高い値であるが、判定としては×である。一方、粘度が高いとクリーニング部で堆積してしまい、クリーニングには不利だが、電位の減衰は小さく転写に有利であることがわかった。以上より、現像剤の粘度は10mPa・s以上175mPa・s以下でなくてはならないことが明らかとなった。
【0099】
[実施例1、10〜11]
樹脂の影響
液体現像剤1と液体現像剤15(実施例10)及び現像剤16(実施例11)で上記評価を行った。結果を表1に示す。表1から明らかなように、酸価の低いPES(2)を用いた実施例18では減衰が大きく、クリーニング性が向上した。これはPES(2)の極性が低いために、余剰分散剤が増加したためだと考えられる。逆に酸価の高いアクリル系樹脂を用いた実施例19ではトナー電位の減衰が小さくなった。
【0100】
【表1】

表中の分散後処理:
1.14000rpm/4hr/20℃遠心処理後の上澄み。
2.14000rpm/24hr/20℃遠心分離処理後、上澄み除去。除いた上澄みと同量のモレスコホワイトで希釈。
3.現像剤100重量部にソルスパース13940を7.6重量部混合・攪拌。
4.現像剤111重量部にソルスパース13940を20重量部混合・攪拌。
【0101】
[まとめ]
以上の結果より、本発明に係る画像形成装置であれば、加熱定着機構を用いることなく、きわめて転写性及びクリーニング性の優れた画像形成装置を得られることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0102】
1 画像形成装置(カラープリンタ)
5 画像形成部
6 二次転写ローラ(転写装置)
7 薄膜規制ブレード
8 排出ローラ
10 中間転写ベルト
14 薄膜規制ブレード
16 供給ローラ
17 現像ローラ
19 現像ローラ帯電装置
20 露光装置
21 帯電装置
23 一次転写ローラ(転写装置)
25 感光体ドラム
26 液体現像装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光装置と、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する液体現像装置と、現像された画像を記録媒体に転写する転写装置とを備える画像形成装置であって、
前記液体現像剤が、
電気絶縁性液体、分散安定剤、及び色材と結着樹脂とを含有したトナー母粒子を含み、
10mPa・s以上175mPa・s以下の粘度(測定温度20℃)を有し、
前記トナー母粒子のD50が0.05μm以上1μm以下であり、かつ
液体現像剤で現像ローラ表面に薄層を形成し、その薄層を現像ローラ帯電装置で帯電する際に、薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となる、液体現像剤であること、並びに
加熱定着機構を有さないことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記液体現像剤100重量部に対し、分散安定剤をさらに5〜20重量部添加させた液体現像剤を用いて現像ローラ表面に薄層を形成する、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
プロセス速度が50mm/s以上、400mm/s未満である、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記液体現像剤に含まれる樹脂がポリエステル系樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
現像ローラ上に形成する薄層の厚みが1.5〜8.0μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
感光体ドラムの表面を帯電させる帯電工程と、
帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光工程と、
液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する現像工程であって、
該液体現像剤として、
電気絶縁性液体、分散安定剤、及び色材と結着樹脂とを含有したトナー母粒子を含み、
10mPa・s以上175mPa・s以下の粘度(測定温度20℃)を有し、
前記トナー母粒子のD50が0.05μm以上1μm以下であり、かつ
液体現像剤で現像ローラ表面に薄層を形成し、その薄層を現像ローラ帯電装置で帯電する際に、薄層の表面電位が帯電1秒後に0秒時の電位の10%以上80%以下となる、液体現像剤を用いる現像工程と、
現像された画像を記録媒体に転写する転写工程と、
画像が転写された記録媒体を排出部に排出する排出工程とを有すること、並びに
加熱定着工程を有さないことを特徴とする、湿式画像形成方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−22134(P2012−22134A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159741(P2010−159741)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】