説明

画像形成装置及び現像剤

【課題】 ほぼ球状の現像剤を用いた場合でもクリーニング性能を向上することができる画像形成装置及びその現像剤を提供すること。
【解決手段】 画像形成装置は、感光体ドラム1と、感光体ドラム1を帯電させる帯電ローラ2と、帯電した感光体ドラム1に潜像を形成する露光ユニット3、潜像が形成された感光体ドラム1を現像してトナー像とする現像ローラ4と、感光体ドラム1から記録紙13上にトナー像を転写する転写ローラ8と、転写ローラ8により転写されずに残ったトナーを除去するクリーニングブレード9とを備えている。母粒子の円形度が0.94以上であって、トナー1重量部をエタノール3.5重量部及び水100重量部に分散した分散液の濁度が20以上40以下となるようなトナーを用い、クリーニングブレード9の反発弾性を40%以上80%以下とすることで、クリーニング性能を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法を利用して画像を形成するプリンタ、複写機及びファクシミリなどの画像形成装置及びその現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真法を利用して画像を形成するプリンタ、複写機及びファクシミリなどの画像形成装置では、像担持体(例えば、感光体や誘電体)上に静電潜像を形成し、その静電潜像を現像剤であるトナーにより現像し、そのトナー像を記録紙に転写する。このとき、像担持体上のトナーの大部分は記録紙に転写されるが、トナーの一部は像担持体上に残留する場合がある。このような残留トナーは画像不良の原因となるため、クリーニングブレードにより除去される。
【0003】
像担持体上のトナーを効果的に除去するため、母粒子と酸化アルミニウムの外添剤とを混合したトナーを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。前述の文献では、遊離母粒子(外添剤が付着していない母粒子)の割合と、遊離外添剤(母粒子に付着していない外添剤)の割合を調整することで、トナーのクリーニング性能を向上している。
【0004】
【特許文献1】特開2002−207314号公報(第4〜7頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、高画質化の要請から、球状又はそれに近い形状のトナーを使用することが求められている。このような球状等のトナーは、クリーニングブレードと像担持体との間をすり抜け易いため、上述したように遊離母粒子及び遊離外添剤の割合を調整しても、クリーニングブレードでトナーを除去しきれず、その結果、像担持体上の残留トナーが帯電ローラ等に付着して画像不良を生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的は、球状又はそれに近い形状の現像剤を使用した場合でも、クリーニング性能を向上することができる画像形成装置及びその現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電手段により表面が帯電した像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、像担持体に形成された潜像を、母粒子と外添剤とを含む現像剤により可視像化する現像手段と、像担持体から媒体に可視像を転写する転写手段と、転写手段により転写されずに残った現像剤を像担持体から除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを備え、現像剤の母粒子の円形度が0.94以上であり、現像剤1重量部をエタノール3.5重量部及び水100重量部に分散した場合の分散液の濁度が20以上40以下であり、クリーニングブレードの反発弾性が40%以上80%以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、また、像担持体と、像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電手段により表面が帯電した像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、像担持体に形成された潜像を、母粒子と外添剤とを含む現像剤により可視像化する現像手段と、像担持体から媒体に可視像を転写する転写手段と、転写手段により転写されずに残った現像剤を像担持体から除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを備え、現像剤の母粒子の円形度が0.94以上であり、外添剤として平均粒径が100nm以上のものを少なくとも1種含み、現像剤1重量部をエタノール3.5重量部及び水100重量部に分散した場合の分散液の濁度が10以上40以下であり、クリーニングブレードの反発弾性が40%以上80%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、球状又はそれに近い形状のトナーを用いた場合でも、クリーニングブレードのエッジ部と像担持体との間のトナーのすり抜けを防止することができ、その結果クリーニング性能を向上して、画像品質を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の実施の形態.
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の要部を示す側面図である。図2は、図1に示した画像形成装置の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、画像形成装置は、図中Aで示す時計回り方向に一定速度で回転する感光体ドラム(像担持体)1を有しており、この感光体ドラム1の回転方向に沿って、帯電ローラ(帯電手段)2、露光ユニット(潜像形成手段)3、現像ユニット(現像手段)12、転写ローラ(転写手段)8及びクリーニングブレード(クリーニング手段)9が配置されている。
【0011】
感光体ドラム1は、ドラム状の導電性支持体の表面に光導電層を形成したものである。帯電ローラ2は、金属製のシャフトに半導電性のゴム層を形成したものであり、第1の高圧電源(図示せず)により直流電圧が付与されている。この帯電ローラ2は、感光体ドラム1の表面に圧接され又は接触した状態で、図中矢印Bで示す反時計回り方向に一定速度で回転する。露光ユニット3は、例えばLED(Light Emitting Diode)を備え、画像情報に応じて感光体ドラム1の表面に光を照射し、潜像を形成するものである。
【0012】
現像ユニット12は、トナー(現像剤)6を収容する容器12aを備え、さらにこの容器12a内に現像ローラ4とトナー供給ローラ5とを備えている。現像ローラ4は、図中矢印Cで示す反時計回り方向に一定速度で回転する。現像ローラ4には、この現像ローラ4に付着したトナー6が静電気力により感光体ドラム1に付着するように、第2の高圧電源(図示せず)によりバイアス電圧が付与されている。現像ローラ4の外周面にほぼ接するように、ブレード7が設けられており、現像ローラ4の表面に付着するトナー層の厚さを規定するようになっている。トナー供給ローラ5は、現像ローラ4に対向配置されており、図中矢印Dで示す反時計回り方向に一定速度で回転する。トナー供給ローラ5には、このトナー供給ローラ5に付着したトナー6が静電気力により現像ローラ4に付着するように、第3の高圧電源(図示せず)によりバイアス電圧が付与されている。
【0013】
転写ローラ8は、記録媒体13の搬送路を挟んで感光体ドラム1に対向配置されており、図中矢印Eで示す反時計回りに一定速度で回転する。転写ローラ8には、感光体ドラム1に付着したトナー6が記録紙13に付着するように、第4の高圧電源(図示せず)によりバイアス電圧が付与されている。
【0014】
クリーニングブレード9は、感光体ドラム1の表面に接するように配置されたゴム弾性を有する部材であり、ウレタンエラストマーにより形成されている。ウレタンエラストマーの主原料であるイソシアネート及びポリオールの比率を変えることにより、クリーニングブレード9の反発弾性を調整することができる。また、イソシアネートは通常2官能であるが、3官能のイソシアネートを加え、その割合を変えることによっても反発弾性を調整することができる。例えば、2官能のイソシアネートの割合を小さくし、3官能のイソシアネートの割合を大きくすることで反発弾性を小さくすることができる。なお、クリーニングブレード9は、ウレタンエラストマーに限らず、ゴム弾性を有する物質であれば、他の物質で構成することもできる。
【0015】
感光体ドラム1、帯電ローラ2、露光ユニット3、現像ユニット12、転写ローラ8及びクリーニングブレード9は、画像形成ユニット1Aを構成している。図2に示すように、画像形成装置は、画像形成ユニット1Aのほかに、トナーの色のみが異なる画像形成ユニット1B,1C,1Dを有しており、これら画像形成ユニット1A〜1Dは記録紙13の搬送路に沿って配列されている。画像形成ユニット1A〜1Dにより、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各トナー像を記録紙13上に順次転写するようになっている。
【0016】
また、画像形成装置には、記録紙13を積層状態で収容したカセット20と、このカセット20から記録紙13を1枚ずつ繰り出す給紙ローラ21が備えられている。また、画像形成ユニット1A〜1Dに隣接して、給紙ローラ21により繰り出された記録紙13を画像形成ユニット1A〜1Dに搬送する搬送ローラ対22が配置されている。また、画像形成ユニット1A〜1Dの下流側(図中左側)には、加熱ローラ10と加圧ローラ11とを含む定着装置が配置されている。加熱ローラ10及び加圧ローラ11は、各色のトナー像が転写された記録紙13を挟み込み、加熱及び加圧することで、トナー像を記録紙13に定着させるものである。
【0017】
次に、画像形成装置の基本動作について説明する。まず、感光体ドラム1が一定速度で回転を開始する。さらに、高電圧を付与された帯電ローラ2が感光体ドラム1の表面に接触しながら回転し、感光体ドラム1の表面を一様に帯電する。次に、露光ユニット3が、画像情報に応じて感光体ドラム1の表面を露光し、静電潜像を形成する。現像ユニット12では、トナー供給ローラ5が回転し、現像ユニット12内のトナー6を現像ローラ4の表面に付着させる。また、現像ローラ4も回転し、現像ローラ4に付着したトナー6が静電気力により感光体ドラム1の表面の静電潜像に付着し、トナー像が形成される。
【0018】
一方、記録紙13は、給紙ローラ21によりカセット20から繰り出され、搬送ローラ対22により斜行が修正されたのち、画像形成ユニット1A〜1Dに送りこまれる。記録紙13が、各画像形成ユニットの感光体ドラム1と転写ローラ8との間を通過する際、感光体ドラム1に形成されたトナー像が、感光体ドラム1と転写ローラ8との間のバイアス電圧により記録紙13の表面に転写される。画像形成ユニット1A〜1Dを通過することにより、記録紙13の表面にはイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各トナー像が転写される。
【0019】
トナー像が転写された記録紙13は、加熱ローラ10と加圧ローラ11との間を通過して加熱及び加圧され、これにより記録紙13にトナー像が定着する。トナー像が定着された記録紙13は、画像形成装置の外部に排出される。また、各画像形成ユニット1A〜1Dでは、感光体ドラム1の表面に、記録紙13に転写されなかったトナー像が残留する場合があるが、この残留トナー像はクリーニングブレード9により除去される。これにより、感光体ドラム1は、繰り返し利用(像担持)することが可能になる。
【0020】
図3は、クリーニングブレード9による残留トナーの除去を説明するための概略図である。トナーは、粒径が6〜8μmであり、後述する母粒子と外添剤とからなっている。クリーニングブレード9は、感光体ドラム1の軸方向に長い部材であって、その幅方向の一端部(エッジ部9aとする。)が感光体ドラム1に接触するように、支持部材9bに取り付けられている。感光体ドラム1の表面に付着したトナーのうち、記録紙13に転写されずに感光体ドラム1の表面に残った残留トナー15は、感光体ドラム1の回転(矢印A)により、クリーニングブレード9のエッジ部9aに当接し、矢印Fで示すように掻き落とされる。感光体ドラム1の表面から掻き落とされたトナー16は、図示しない廃トナー回収部で回収される。
【0021】
一方、残留トナー15が、クリーニングブレード9と感光体ドラム1との間をすり抜けてしまうクリーニング不良が発生すると、そのトナー17は、さらに帯電ローラ2の表面に付着する可能性がある。帯電ローラ2に付着したトナー18は、帯電ローラ2による感光体ドラム1表面の均一な帯電を妨げ、感光体ドラム1表面に非帯電領域が生じるため、感光体ドラム1表面には現像トナーが付着しにくい部分が生じることとなり、記録紙13上の画像に低濃度の部分(画像不良)が生じることになる。
【0022】
次に、このようなクリーニング不良の発生を防止するための条件を求める実験について説明する。
【0023】
[トナーの製造]
以下の方法で、母粒子と外添剤とからなるトナーを製造した。まず、母粒子を、乳化重合凝集法により作成した。具体的には、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム6重量部と、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物2重量部と、イオン交換水900重量部とを含む水溶液を作成した。
【0024】
続いて、上記水溶液に、スチレン65重量部と、n−ブチルメタクリレート35重量部と、メタクリル酸6重量部と、t−ドデシルメルカプタン3重量部とを含むモノマー溶液を添加して攪拌した。その後、窒素気流の元で攪拌しながら、摂氏75度まで昇温した。
【0025】
さらに、上記水溶液に、過酸化カリウム3重量部とイオン交換水140重量部とを含む水溶液を添加して摂氏75度で6時間反応させ、重合体一次粒子エマルジョン(樹脂エマルジョンとする。)を得た。
【0026】
次に、パラフィンワックスを、熱を加えながら水中で界面活性剤により乳化させ、固形分濃度20重量%のエマルジョン(ワックスエマルジョンとする。)を作成した。このワックスエマルジョン50重量部を、室温で上述した樹脂エマルジョンに添加し、さらにフタロシアニンブルー水分散液を6.7重量部(固形分)添加した。
【0027】
このようにして得られたエマルジョン400重量部に対し、塩化ナトリウム40重量部をイオン交換水103重量部に溶解させた溶液を添加し、さらにイソプロパノール67重量部とポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度は10)3.6重量部とを溶解したイオン交換水30重量部を添加した。そののち、摂氏85度まで昇温して塩析/融着を行った。塩析/融着時間を調整することにより、円形度の異なる2種類の母粒子A,Bを得た。母粒子Aの円形度(複数粒子の平均値)は0.99であり、母粒子Bの円形度は0.94である。
【0028】
なお、円形度は、下記の式(1)に基づき、シスメックス株式会社製「フロー式粒子像分析装置FPIA−2100」を用いて測定した。
円形度=L1/L2 ・・・ (1)
ここで、L1は、粒子投影像の面積と同じ面積を有する円の周囲長であり、L2は、粒子投影像の周囲長である。この円形度が1.00であれば真球であり、円形度が1.00より小さくなるにつれて粒子形状は不定形になる。
【0029】
次に、母粒子A,Bそれぞれ100重量部に対して、外添剤としてシリカR202(日本エアロジル株式会社製)、シリカRX50(日本エアロジル株式会社製)、チタニアT805(日本エアロジル株式会社製)をそれぞれ添加し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)により回転数2100rpmで攪拌した。攪拌時間は、後述する表1に示すとおりである。
【0030】
ここで、シリカR202は、主として流動化剤として役割を有するものである。シリカRX50は、主として経時変化による流動性低下を抑制する役割を有するものである。チタニアT805は、主として帯電を安定させる役割を有するものである。また、シリカR202の平均粒径は14nmであり、シリカRX50の平均粒径は40nmである。チタニアT805の平均粒径は21nmである。
【0031】
ここでは、チタニアT805の添加量(0.2重量部)を一定にし、シリカR202の添加量(0.5重量部、0.7重量部)、シリカRX50の添加量(1.0重量部、2.0重量部)及び攪拌時間(1分〜6分)を変えることにより、10種類のトナー(トナー1〜10とする。)を製造した。各トナーにおける外添剤の添加量と攪拌時間は、表1に示すとおりである。
【0032】
[測定]
次に、濁度測定を行った。上述したトナー1〜10のそれぞれ1重量部に、エタノールを3.5重量部を加えて、超音波分散を5分行った。その後、さらにイオン交換水を100重量部加えて超音波分散を5分間行ったのち48時間静置することにより、分散液を作成した。静置後、沈殿物質及び浮上物質を除いた分散液の濁度を、日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH2000」により測定した。
【0033】
上記のように沈殿物質及び浮上物質を除去することで、母粒子(及び母粒子に付着した状態の外添剤)は分散液から除去される。分散液中に分散されている外添剤は、上記トナー製造段階で加えられた全外添剤のうち、当初(トナー製造段階)から母粒子に付着していなかった外添剤と、当初は母粒子に付着していたが、母粒子との付着力が弱いために分散液作成段階で母粒子から脱離した外添剤とを含んでいる。分散液の濁度は、トナーにストレスが加えられるような画像形成装置内の環境下でトナーから遊離している外添剤量が多いほど、大きな値を示す。
【0034】
分散液の濁度測定を行った結果を表1に示す。なお、この表1において、外添剤の添加量は、いずれも母粒子100重量部に対する値(重量部)である。
【0035】
【表1】

【0036】
次に、上記10種類のトナーのそれぞれを用いて、画像形成装置でのクリーニング性能の評価を行った。画像形成装置では、反発弾性を30〜85%の範囲で5通りに変えたクリーニングブレード9を、それぞれ感光体ドラム1に接触させた。なお、反発弾性とは、JIS−K6255により規定されたものである。記録紙の搬送速度は120mm/秒とし、デューティが100%のパターン(いわゆる全面べた印刷)を連続して30000枚印刷し、クリーニング不良に伴う画像不良の有無を調べた。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2において、「○」は、クリーニング不良による画像不良が観察されなかったことを示す。「×」は、クリーニング不良による画像不良が観察されたことを示す。また、RE(%)は、クリーニングブレード9の反発弾性を示す。
【0039】
表1及び表2から、分散液の濁度が20〜40の範囲にあり(トナー3〜8)、且つクリーニングブレード9の反発弾性が40%〜80%の範囲にあれば、クリーニング不良が生じないことがわかる。これは、外添剤がクリーニングブレード9のエッジ部9aと感光体ドラム1との間に溜まり、後続のトナーがクリーニングブレード9のエッジ部9aと感光体ドラム1との間に侵入するのを防止するためと考えられる。
【0040】
この結果をより詳細に検討する。分散液の濁度が20よりも小さい場合には、クリーニングブレード9のエッジ部と感光体ドラム1との間に溜まる外添剤量が少ないことから、クリーニングブレード9のエッジ部9aと感光体ドラム1との間に侵入してくるトナーを十分に排除することができず、トナーのすり抜けが生じてクリーニング不良を生じると考えられる。一方、分散液の濁度が40よりも大きい場合には、トナーに付着していない外添剤量が過剰であるため、外添剤が感光体ドラム1に生じた傷に付着してフィルミングを引き起こし、その結果、クリーニングブレード9の損傷を招いてトナーのすり抜けが容易になり、クリーニング不良を生じると考えられる。
【0041】
これに対し、分散液の濁度が20〜40の範囲にあれば、クリーニングブレード9のエッジ部9aと感光体ドラム1との間に、後続のトナーを十分に排除できる程度の外添剤が溜まる上、外添剤量がフィルミングを引き起こすほどの量ではないためクリーニングブレードの損傷を招くおそれがなく、その結果、クリーニング不良の発生を防止することができると考えられる。
【0042】
また、クリーニングブレード9の反発弾性が40%よりも小さい場合には、クリーニングブレード9のエッジ部9aと感光体ドラム1との間に侵入するトナーによってエッジ部9aが弾性変形させられ(押し上げられ)、その結果、トナーのすり抜けが容易になり、クリーニング不良を生じると考えられる。一方、クリーニングブレード9の反発弾性が80%よりも大きい場合には、クリーニングブレード9自身の耐久性不足により欠けや磨耗が生じ、その欠け等が生じた部分からトナーがすり抜け易くなり、やはりクリーニング不良を生じると考えられる。
【0043】
これに対し、クリーニングブレード9の反発弾性が40〜80%の範囲にあれば、エッジ部9aがトナーによって弾性変形されにくく、かつクリーニングブレード9自身の欠けや磨耗も生じにくい。その結果、クリーニングブレード9のエッジ部9aと感光体ドラム1との間のトナーのすり抜けを抑制し、クリーニング不良の発生を防止することができると考えられる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、母粒子の円形度が94以上となるような球状又はそれに近いトナーを用いた場合であっても、分散液(トナー1重量部をエタノール3.5重量部及び水100重量部に分散したもの)の濁度が20〜40の範囲にあるトナーを用い、且つクリーニングブレード9の反発弾性を40〜80%とすることにより、クリーニング性能を向上し、画像品質を向上することができる。
【0045】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態は、トナーの外添剤として、平均粒径が100nm以上のものを少なくとも1種含ませるようにしたものであり、それ以外の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0046】
ここでは、平均粒径100nm以上の外添剤の一例として、平均粒径110nmのシリカであるシーホスタKE−P10−S1(株式会社日本触媒製)を添加して、第1の実施の形態と同様に実験を行った。すなわち、第1の実施の形態で説明した方法で作成した母粒子A,Bそれぞれ100重量部に対して、外添剤として、平均粒径が110nmの上記シーホスタKE−P10−S1を添加し、さらに、第1の実施の形態で説明したシリカR202、シリカRX50及びチタニアT805(いずれも日本エアロジル株式会社製)を添加し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)により回転数2350rpmで攪拌した。シリカR202、シリカRX50、チタニアT805の平均粒径は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0047】
ここでは、チタニアT805の添加量(0.1重量部)を一定にし、シーホスタKE−P10−S1の添加量(0.5重量部、1.0重量部、1.5重量部)、シリカR202の添加量(0.5重量部、0.7重量部)、シリカRX50の添加量(0.5重量部、1.0重量部)及び攪拌時間(1分〜7分)を変えることにより、10種類のトナー(トナー11〜20とする。)を作成した。各トナーにおける外添剤の添加量と攪拌時間は、表3に示すとおりである。
【0048】
このように作成した10種類のトナー11〜20を用いて、第1の実施の形態で説明したように分散液を作成し、濁度測定を行った。濁度の測定結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
また、上述した10種類のトナー11〜20のそれぞれを用いて、画像形成装置でクリーニング性能の評価を行った。画像形成装置では、反発弾性が30〜85%の範囲で5通りに変えたクリーニングブレード9を、それぞれ感光体ドラム1に当接させた。印刷条件は、第1の実施の形態で説明したとおりである。評価結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
表3及び表4から、クリーニングブレードの反発弾性が40%〜80%であれば、分散液の濁度が10〜40である場合(トナー13〜18)に、クリーニング不良が生じないことがわかる。
【0053】
クリーニング不良を生じない分散液の濁度の範囲は、第1の実施の形態では20〜40であったのに対し、第2の実施の形態では10〜40であり、より広い範囲でクリーニング性能が向上している。これは、平均粒径100nm以上の大径外添剤が少量でも存在することにより、クリーニングブレード9のエッジ部と感光体ドラム1との間をトナーがすり抜けるのを防止する効果が高まる結果、分散液の濁度が10以上であればクリーニング不良の発生を抑制できるためと考えられる。
【0054】
また、第1の実施の形態でも説明したように、クリーニングブレード9の反発弾性が40〜80%の範囲でクリーニング不良が生じないのは、反発弾性がこの範囲にあれば、トナーによってクリーニングブレード9のエッジ部9aが変形させられにくく、また、クリーニングブレード9自身の耐久性不足による欠けや磨耗も生じにくいため、クリーニングブレード9と感光体ドラム1との間のトナーのすり抜けを抑制でき、その結果、クリーニング不良の発生を抑制できるからと考えられる。
【0055】
なお、上記の実験では、外添剤シーホスタKE−P10−S1の平均粒径を110nmとしたが、少なくとも100nm以上の範囲であれば同様の結果が得られる。これは、大径外添剤の平均粒径が少なくとも100nm以上であれば、クリーニングブレード9のエッジ部9aと感光体ドラム1との間に溜まって後続のトナーを排除する高い効果が得られるためと考えられる。
【0056】
また、上記の実験では、シアンのトナーを用いた場合について説明したが、第1の実施の形態と同様、イエロー、マゼンタ、ブラックのトナーを用いた場合も同様の結果が得られる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態によれば、外添剤として平均粒径100nm以上のものを少なくとも1種類含む場合には、分散液(トナー1重量部をエタノール3.5重量部及び水100重量部に分散したもの)の濁度が10〜40の範囲にあるトナーを用い、且つクリーニングブレード9の反発弾性を40〜80%とすることにより、クリーニング性能を向上し、画像品質を向上することができる。
【0058】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態では、トナーの母粒子を乳化重合凝集法によって作成したが、球状又はそれに近い形状が得られる方法であれば、例えば懸濁重合法であってもよいし、粉砕法と熱処理とを組み合わせた方法であってもよい。また、クリーニングブレード9は、ウレタンエラストマーに限らず、ゴム弾性を有する物質であれば、他の物質で構成してもよい。
【0059】
本発明は、上述した電子写真方式のカラープリンタに限らず、モノクロプリンタ、複写機、ファクシミリ等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の要部を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置のクリーニングブレードの作用を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0061】
1 感光体ドラム
1A,1B,1C,1D 画像形成ユニット
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像ローラ
5 トナー供給ローラ
6,15,16,17,18 トナー
8 転写ローラ
9 クリーニングブレード
9a エッジ部
10 加熱ローラ
11 加圧ローラ
12 現像装置
13 記録紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電した前記像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像担持体に形成された潜像を、母粒子と外添剤とを含む現像剤により可視像化する現像手段と、
前記像担持体から媒体に可視像を転写する転写手段と、
前記転写手段により転写されずに残った現像剤を前記像担持体から除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と
を備え、
前記現像剤の前記母粒子の円形度が0.94以上であり、
現像剤1重量部を、エタノール3.5重量部及び水100重量部に分散した場合の分散液の濁度が20以上40以下であり、
前記クリーニングブレードの反発弾性が40%以上80%以下であること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電した前記像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像担持体に形成された潜像を、母粒子と外添剤とを含む現像剤により可視像化する現像手段と、
前記像担持体から媒体に可視像を転写する転写手段と、
前記転写手段により転写されずに残った現像剤を前記像担持体から除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と
を備え、
前記現像剤の前記母粒子の円形度が0.94以上であり、
前記外添剤として、平均粒径が100nm以上のものを少なくとも1種含み、
現像剤1重量部を、エタノール3.5重量部及び水100重量部に分散した場合の分散液の濁度が10以上40以下であり、
前記クリーニングブレードの反発弾性が40%以上80%以下であること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
母粒子と外添剤とを含む現像剤であって、
前記母粒子の円形度が0.94以上であり、
現像剤1重量部を、エタノール3.5重量部及び水100重量部に分散した場合の分散液の濁度が20以上40以下であること
を特徴とする現像剤。
【請求項4】
母粒子と外添剤とを含む現像剤であって、
前記母粒子の円形度が0.94以上であり、
前記外添剤として、平均粒径が100nm以上のものを少なくとも1種含み、
現像剤1重量部を、エタノール3.5重量部及び水100重量部に分散した場合の分散液の濁度が10以上40以下であること
を特徴とする現像剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−84768(P2006−84768A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269399(P2004−269399)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】