説明

画像形成装置及び画像形成装置における液体充填方法

【課題】初期充填時に液体の流動性を高める構成が複雑である。
【解決手段】記録ヘッド34内の共通液室110、液室106、ノズル104などの流路内にインクが充填されていない状態(空の状態)からインクの充填を開始するとき、まず、すべての圧電部材112に共通駆動波形を与えることで圧電部材112を駆動し、圧電部材112が発熱し、流路板101やフレーム部材117が温められるので、この状態でヘッド34に対するインク充填動作を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び画像形成装置における液体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッドともいう。)を記録ヘッドとして用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
ところで、液体吐出ヘッドにあっては、流路内に気泡が混入した場合、吐出された滴の噴射曲がりや吐出不能などの吐出不良が生じ、安定した滴吐出を行うことができなくなり、画像品質が低下することになる。
【0004】
特に、液体吐出ヘッド内に初めて液体を充填するとき、あるいは液体吐出ヘッド内の液体を入れ替えるために一旦空にして洗浄した後、入替液体を充填するとき(以下、これらを併せて「初期充填」という。)を行うときには、気泡が混入し易くなる。そして、液体そのものの粘度が高い場合や、低温環境下で液体粘度が上昇している場合には、液体の流動性が低下することから、混入した気泡の排出が困難になる。
【0005】
そこで、従来、インク供給経路内に加熱手段を設けて、インク温度を上昇させることで粘度を下げ、初期充填時に混入する気泡の排出性を高め、初期充填性を向上するものが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−127417号公報
【特許文献2】特開平9−164702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、供給経路に加熱手段を設ける構成にあっては、構成が複雑になり、コストも高くなるという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、初期充填時の気泡排出性を高めて初期充填性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルと、前記ノズルが連通する液室と、前記液室内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動するヘッド駆動手段と、
前記液体吐出ヘッド内に前記液体が充填されていない状態から前記液体を充填するとき、
前記ヘッド駆動手段により前記圧力発生手段を駆動した後前記液体の充填動作を開始させる手段と、を備えている
構成とした。
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルがそれぞれ連通する複数の個別液室と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室と、前記個別液室内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動するヘッド駆動手段と、
前記液体吐出ヘッド内に前記液体が充填されていない状態から前記液体を充填するとき、
前記共通液室内に前記液体を充填した状態で、前記ヘッド駆動手段により前記圧力発生手段を駆動させ後、前記共通液室より下流側への前記液体の充填動作を開始させる手段と、を備えている
構成とした。
【0011】
ここで、前記液体の充填動作中の少なくとも一部の期間は、前記ヘッド駆動手段により前記圧力発生手段を駆動させる構成とできる。
【0012】
また、前記充填動作では、充填と充填停止を間歇的に行う構成とできる。
【0013】
また、前記ヘッド駆動手段により前記圧力発生手段を前記液室の固有振動周期の整数倍で駆動する構成とできる。
【0014】
また、前記圧力発生手段が積層型圧電部材であり、
前記共通液室の前記積層型圧電部材の伸縮方向における深さが前記前記積層型圧電部材の伸縮方向における長さよりも小さい
構成とできる。
【0015】
本発明に係る画像形成装置における液体充填方法は、
液滴を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルがそれぞれ連通する複数の個別液室と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室と、前記個別液室内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドに前記液体を充填する画像形成装置における液体充填方法であって、
前記液体吐出ヘッド内に前記液体が充填されていない状態から前記液体を充填するとき、
前記液体吐出ヘッド内に前記液体が充填されていない状態又は前記共通液室に前記液体が充填された状態で、前記圧力発生手段を駆動させ後、前記液体の充填動作を開始させ、又は前記共通液室より下流側に前記液体を充填する動作を開始する
構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、液体吐出ヘッド内に液体が充填されていない状態から液体を充填するとき、ヘッド駆動手段により圧力発生手段を駆動した後液体の充填動作を開始させる構成としたので、簡単な構成で、充填される液体の温度を上げて流動性を高めることができ、充填時に混入する気泡の排出性が高まり、初期充填性が向上する。
【0017】
本発明に係る画像形成装置によれば、液体吐出ヘッド内に液体が充填されていない状態から液体を充填するとき、共通液室内に液体を充填した状態で、ヘッド駆動手段により圧力発生手段を駆動させ後、共通液室より下流側への液体の充填動作を開始させる構成としたので、簡単な構成で、充填される液体の温度を上げて流動性を高めることができ、充填時に混入する気泡の排出性が高まり、初期充填性が向上する。
【0018】
本発明に係る画像形成装置における液体充填方法によれば、液体吐出ヘッド内に液体が充填されていない状態から液体を充填するとき、液体吐出ヘッド内に液体が充填されていない状態又は共通液室に液体が充填された状態で、圧力発生手段を駆動させ後、液体の充填動作を開始させ、又は共通液室より下流側に液体を充填する動作を開始する構成としたので、簡単な構成で、充填される液体の温度を上げて流動性を高めることができ、充填時に混入する気泡の排出性が高まり、初期充填性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】同画像形成装置の記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例を示す液室長手方向の断面説明図である。
【図4】同液体吐出ヘッドの膨張行程の説明に供する断面説明図である。
【図5】同じく液体吐出ヘッドの収縮行程の説明に供する断面説明図である。
【図6】同装置のインク供給排出系の説明に供する説明図である。
【図7】同画像形成装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図8】同制御部の印刷制御部及びヘッドドライバの一例を示すブロック説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態における初期充填動作の制御の説明に供するフロー図である。
【図10】圧電部材の印加する駆動波形の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態における初期充填動作の制御の説明に供するフロー図である。
【図12】本発明の第3実施形態における初期充填動作の制御の説明に供するフロー図である。
【図13】同実施形態における温度変化の一例の説明に供する説明図である。
【図14】駆動波形のパルス幅と滴速度の関係の一例の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
【0021】
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0022】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0023】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、記録ヘッド34としては、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
【0024】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部としてのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0025】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0026】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0027】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0028】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0029】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0030】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク99が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0031】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0032】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0033】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターンで帯電され、この帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0034】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0035】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0036】
次に、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドの液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
【0037】
この液体吐出ヘッド100は、流路板101と、振動板部材102と、ノズル板103とを接合して、液滴を吐出するノズル104が連通路105を介して連通する個別液室(加圧室、加圧液室、圧力室、個別流路、圧力発生室などと称されるものを含む意味である。以下、単に「液室」という。)106、液室106に液体を供給する流体抵抗部107、液体導入部108がそれぞれ形成され、後述するフレーム部材117に形成した共通液室110から振動板部材102に形成されたフィルタ109を介して液体(インク)が液体導入部108に導入され、液体導入部108から流体抵抗部107を介して液室106にインクが供給される。
【0038】
流路板101は、SUSなどの金属板101A、101Bを積層して、連通路5、液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの開口部や溝部をそれぞれ形成している。振動板部材102は各液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの壁面を形成する壁面部材であるとともに、フィルタ部109を形成する部材である。なお、流路板101は、SUSなどの金属板に限らず、シリコン基板を異方性エッチングして形成することもできる。
【0039】
そして、振動板部材102の液室106と反対側の面に液室106のインクを加圧してノズル104から液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての柱状の電気機械変換素子である積層型圧電部材112が接合されている。この圧電部材112の一端部はベース部材113に接合され、また、圧電部材112には駆動波形を伝達するFPC115が接続されている。これらによって、圧電アクチュエータ111を構成している。
【0040】
なお、この例では、液体吐出ヘッドはノズル104を4列配列している。また、圧電部材112は積層方向に伸縮させるd33モードで使用しているが、積層方向と直交する方向に伸縮させるd31モードでもよい。
【0041】
このように構成した液体吐出ヘッド100においては、例えば、図4に示すように、圧電部材112に印加する電圧を基準電位Veから下げることによって圧電部材112が収縮し、振動板部材102が変形して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後、図5に示すように、圧電部材112に印加する電圧を上げて圧電部材112を積層方向に伸長させ、振動板部材102をノズル104方向に変形させて液室106の容積を収縮させることにより、液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴301が吐出される。
【0042】
そして、圧電部材112に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0043】
次に、この画像形成装置におけるインク供給排出系について図6を参照して説明する。
まず、インクカートリッジ(以下、「メインタンク」という。)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ポンプユニット24の送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。なお、送液ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する動作と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す動作とを行なえるようにしている。
【0044】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク99に排出される。
【0045】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7を参照して説明する。なお、図7は同制御部のブロック説明図である。
【0046】
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU511と、CPU511が実行する本発明における充填動作の制御を行うプログラムを含む各種プログラムなどの固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0047】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81のキャップ82やワイパ部材83の移動、吸引ポンプ812などを行なう維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、送液ポンプ241を駆動する供給系駆動部512などを備えている。
【0048】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0049】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0050】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像を出力するためドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行なうことも、制御部500で行なうこともできる。
【0051】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0052】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段としての圧電部材112に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成するパルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0053】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0054】
次に、印刷制御部508及びヘッドドライバ509の一例について図8のブロック説明図を参照して説明する。
【0055】
印刷制御部508は、画像形成時に1印刷周期(1駆動周期)内に複数のパルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部701と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部702を備えている。
【0056】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ209の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべきパルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
【0057】
ヘッドドライバ509は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するシフトレジスタ711と、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ713と、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714と、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ715とを備えている。
【0058】
このアナログスイッチ715は、各圧電部材112の選択電極(個別電極)に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形Pvが入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号M0〜M3をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンにすることにより、共通駆動波形Pvを構成する所要のパルス(あるいは波形要素)が通過して(選択されて)圧電部材112に印加される。
【0059】
次に、本発明の第1実施形態における制御部による初期充填動作の制御について図9のフロー図を参照して説明する。
【0060】
記録ヘッド34内の共通液室110、液室106、ノズル104などの流路内にインクが充填されていない状態(空の状態)からインクの充填を開始するとき、まず、すべての圧電部材112に共通駆動波形を与えることで圧電部材112を駆動する。このとき、圧電部材112に与える駆動波形は、滴吐出を目的とするものではなく、例えば、図10に示すような単純なON/OFF波形でよい。この波形もROM502に予め格納保持している。
【0061】
この圧電部材112の駆動によって圧電部材112が発熱し、流路板101やフレーム部材117が温められる。そこで、圧電部材112の駆動開始から流路板101やフレーム部材117が温められるまでの所定時間(これを「所定駆動時間」という。)が経過したか否かを判別する。
【0062】
そして、所定駆動時間が経過したとき、記録ヘッド34に対するインク充填動作を開始する。このインク充填動作は、送液ポンプ241を駆動してメインタンク10からインクを送液し、一方、吸引キャップ82aで記録ヘッド34のノズル面をキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで、加圧吸引供給を行う。
【0063】
このとき、記録ヘッド34の共通液室110に供給されたインクはフレーム部材117が温められていることで加温され、更に流路板101も温められているので液室106でも加温される。これにより、供給されたインクが低粘度化し、記録ヘッド34内でのインクの流動性が高くなり、充填に伴って生じた気泡やインクに混入した気泡はノズル104からインクとともに排出されやすくなる。
【0064】
なお、充填動作としては、送液ポンプ241として連通状態をとれるチューブポンプを使用して、吸引ポンプ812のみを駆動してヘッド34内に吸引供給を行うようにしてもよいし、あるいは、送液ポンプ241のみを駆動してヘッド34内に加圧供給を行うようにしてもよい。
【0065】
また、ここでは所定時間圧電部材112を駆動した後充填を開始しているが、圧電部材112の駆動時間を管理する代わりに、ヘッドの温度を検出する温度検出手段を備え、検出温度が予め定めた所定温度になったときに充填を開始するようにすることもできる。
【0066】
そして、インク充填が完了したか否かを判別し、充填が完了したときには、圧電部材112の駆動を停止して充填動作を終了する。
【0067】
このように、液体吐出ヘッド内に液体が充填されていない状態から液体を充填するとき、ヘッド駆動手段により圧力発生手段を駆動した後液体の充填動作を開始させる構成とすることで、簡単な構成で、充填される液体の温度を上げて流動性を高めることができ、充填時に混入する気泡の排出性が高まり、初期充填性が向上する。
【0068】
次に、本発明の第2実施形態における制御部による初期充填動作の制御について図11のフロー図を参照して説明する。
【0069】
ここでは、まず、記録ヘッド34の共通液室110までインク充填を行った後、圧電部材112を駆動して、共通液室110内でインクを加温した後、共通液室110より下流側へのインクの充填動作を再開するようにしている。この場合も、ヘッド温度やインク温度を検出して、所定温度以上になったときに充填動作を再開するようにすることもできる。
【0070】
このようにすれば、圧電部材112の駆動でフレーム部材117を温めた後にインクを共通液室110に供給することでフレーム部材117の温度が急激に低下することを防止できる。
【0071】
次に、本発明の第3実施形態における初期充填動作の制御について図12のフロー図を参照して説明する。
【0072】
ヘッド内の共通液室110、液室106、ノズル104などの流路内にインクが充填されていない状態(空の状態)からインクの充填を開始するとき、まず、すべての圧電部材112に共通駆動波形を与えることで圧電部材112を駆動する。
【0073】
この圧電部材112の駆動によって圧電部材112が発熱し、流路板101やフレーム部材117が温められる。そこで、圧電部材112の駆動開始から流路板101やフレーム部材117が温められるまでの第1所定時間が経過したか否かを判別する。
【0074】
そして、第1所定時間が経過したとき、ヘッドに対する所定時間(又は所定量)のインク充填動作を開始して、充填動作を停止する。
【0075】
その後、圧電部材112の駆動を停止する。
【0076】
そして、第2所定時間が経過したときに、所定時間(又は所定量)の充填動作を再開する。
【0077】
その後、インク充填が完了したか否かを判別し、充填が完了したときには、圧電部材112の駆動を停止して充填動作を終了する。なお、充填動作を再開するとき、再度圧電部材112を駆動することもでき、この場合には、充填完了時に圧電部材112の駆動を停止する処理を追加する。
【0078】
つまり、圧電部材112を駆動してヘッドを温めた状態でインクを充填を行うことで、温まったヘッドの温度が低下することになる。そこで、所定時間(又は所定量)のインクを充填を行った段階で充填を停止し、圧電部材112の駆動を停止する。
【0079】
このとき、図13に示すように、充填を停止することで新たな低い温度の液体供給がなくなり、圧電部材112の駆動を停止しても、一時的に急激に温度が上昇する。そこで、この状態で、充填を再開することによって、インク粘度が低下して流動性が高まっているので、気泡排出性が向上する。
【0080】
つまり、充填動作では、充填と充填停止を間歇的に行うことで、低い温度の新しい液体供給による温度低下で流動性が低下することを防止し、流動性を高めたまま充填を行うことができて、気泡排出性が向上し、初期充填性が向上する。
【0081】
ここで、圧電部材112の伸縮方向における長さと共通液室110の同方向における深さとの関係について前述した図3も参照して説明する。
【0082】
共通液室110の圧電部材112の伸縮方向における深さを圧電部材112の伸縮方向における長さよりも小さくしている。これにより、共通液室110に供給されたインクを加熱し易くなる。
【0083】
具体的には、積層型圧電部材112はその駆動によって発熱する。ここで、フレーム部材117に設けられた共通液室110は、積層型圧電部材112の近傍にあり、前記共通液室110の深さは積層圧電部材112の長さより短くなっている。また、フレーム部材117の共通液室110の圧電部材112側の隔壁部118は薄く、例えば1mm〜2mm程度としているので、積層型圧電部材112からの熱を伝えやすい。つまり、新たなインクの供給がなくなると、積層型圧電部材112の熱が伝わり、積層型圧電部材112の駆動を停止しても、インクの温度が上昇しやすくなる。当然、振動板部材102からも伝わりインクの温度は上昇することになる。
【0084】
次に、圧電部材112を駆動するための駆動波形について前述した図10及び図14を参照して説明する。
圧電部材112を駆動するための駆動波形の周期は液室6の固有振動周期Tc(又は、固有振動周期Tcの整数倍)としている。このとき、パルス幅PWは、固有振動周期Tc(又は固有振動周期Tcの整数倍)が得られるパルス幅としている。
【0085】
つまり、パルス波形のパルス幅Pw(図10参照)を変えた時の液滴の速度は、図14に示すように変化し、駆動パルスのパルス幅Pwを伸ばしていくと、ヘッドの持つ固有周期で液滴の速度が変動する。このとき、最も効率がよくなる(液滴の速度が速くなる)のは、図14における点PWの位置にあるときである。これを、パルス幅の共振駆動という。さらに、パルス波形の周期を固有周期にすることで液滴の吐出効率が上昇する。これによって、液室6に充填されたインクを効率的に振動させて流動性を高めることができ、更に気泡排出性を向上できる。
【0086】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0087】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0088】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0089】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0090】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10 インクカートリッジ(メインタンク)
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク
100 液体吐出ヘッド
106 個別液室
110 共通液室
112 圧電部材(圧力発生手段)
500 制御部
508 印刷制御部
701 駆動波形生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルと、前記ノズルが連通する液室と、前記液室内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動するヘッド駆動手段と、
前記液体吐出ヘッド内に前記液体が充填されていない状態から前記液体を充填するとき、
前記ヘッド駆動手段により前記圧力発生手段を駆動した後前記液体の充填動作を開始させる手段と、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
液滴を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルがそれぞれ連通する複数の個別液室と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室と、前記個別液室内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動するヘッド駆動手段と、
前記液体吐出ヘッド内に前記液体が充填されていない状態から前記液体を充填するとき、
前記共通液室内に前記液体を充填した状態で、前記ヘッド駆動手段により前記圧力発生手段を駆動させ後、前記共通液室より下流側への前記液体の充填動作を開始させる手段と、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記液体の充填動作中の少なくとも一部の期間は、前記ヘッド駆動手段により前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記充填動作では、充填と充填停止を間歇的に行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ヘッド駆動手段により前記圧力発生手段を前記液室の固有振動周期の整数倍で駆動することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記圧力発生手段が積層型圧電部材であり、
前記共通液室の前記積層型圧電部材の伸縮方向における深さが前記前記積層型圧電部材の伸縮方向における長さよりも小さい
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
液滴を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルがそれぞれ連通する複数の個別液室と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室と、前記個別液室内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドに前記液体を充填する画像形成装置における液体充填方法であって、
前記液体吐出ヘッド内に前記液体が充填されていない状態から前記液体を充填するとき、
前記液体吐出ヘッド内に前記液体が充填されていない状態又は前記共通液室に前記液体が充填された状態で、前記圧力発生手段を駆動させ後、前記液体の充填動作を開始させ、又は前記共通液室より下流側に前記液体を充填する動作を開始する
ことを特徴とする画像形成装置における液体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−52583(P2013−52583A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192190(P2011−192190)
【出願日】平成23年9月4日(2011.9.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】