説明

画像形成装置

【課題】 アモルファスシリコン感光体をプラス帯電しても、NOxガスの発生量を低減することができる画像形成装置の提供を課題とする。
【解決手段】 アモルファスシリコン感光体12と、放電ワイヤー32がシールド30内に設けられ、アモルファスシリコン感光体12を均一に帯電させるグリッド34が設けられたスコロトロン帯電器14と、を備えた画像形成装置10において、シールド30内で、かつ放電ワイヤー32の近傍に、バイアスが印加される電極36を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法又は静電記録法等を利用した複写機、プリンター等の画像形成装置に関し、更に詳しくは、その画像形成装置に用いられるアモルファスシリコン感光体を帯電させるスコロトロン帯電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、高速かつ高印字品質が得られるため、複写機、プリンター等の分野において広く利用されている。これらの電子写真技術に用いられる電子写真用感光体は、従来から種々のものが提案され、実用化されている。中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型の有機積層型感光体(OPC感光体)は、感度、帯電性及びその繰り返し安定性等、電子写真特性の点で優れており、種々の提案がなされ、実用化に至っている。
【0003】
一方、高速機分野においては、OPC感光体と比較して、高耐久、長寿命であるという点から、アモルファスシリコン感光体を用いた画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、アモルファスシリコン感光体を用いた画像形成装置では、アモルファスシリコンの誘電率が高く、アモルファスシリコン感光体を帯電させるためには、OPC感光体と比較して3倍〜5倍の帯電電流が必要となる問題がある。しかも、そのような高い帯電電流でマイナス帯電させると、図6で示すように、オゾン(O3)ガスの発生量が多くなる不具合がある。
【0004】
また、オゾンガスを発生させないためには、アモルファスシリコン感光体をプラス帯電させるが、プラス帯電の場合で、マイナス帯電と同じ帯電電流を得るためには、図6で示すように、ワイヤー電流当たりのNOxガスの発生量が多くなり、環境上好ましくない問題が起きる。また、NOxがアモルファスシリコン感光体に付着堆積すると、アモルファスシリコン感光体の表面抵抗を低下させるので、所謂画像流れなどの不具合が発生する。そのため、エアフローの制御や、アモルファスシリコン感光体を加熱して放電生成物を除去するなどの対策が必要となる問題があった。
【特許文献1】特開2003−270912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、アモルファスシリコン感光体をプラス帯電しても、NOxガスの発生量を低減することができる画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の画像形成装置は、アモルファスシリコン感光体と、放電ワイヤーがシールド内に設けられ、前記アモルファスシリコン感光体を均一に帯電させるグリッドが設けられたスコロトロン帯電器と、を備えた画像形成装置において、前記シールド内で、かつ前記放電ワイヤーの近傍に、バイアスが印加される電極を配置したことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、シールド内に配置された電極にバイアスを印加することにより、放電効果を向上させることができるので、アモルファスシリコン感光体の帯電効率を向上させることができる。したがって、放電ワイヤーのワイヤー電流を抑えることができ、アモルファスシリコン感光体をプラス帯電しても、NOxガスの発生量を低減することができる。よって、画像流れなどの不具合の発生を防止することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記電極が、プレート状に形成され、前記放電ワイヤーに対して前記アモルファスシリコン感光体と反対側に配置されることを特徴としている。そして、請求項3に記載の画像形成装置は、請求項2に記載の画像形成装置において、前記電極のバイアスが、前記放電ワイヤーの電位と前記シールドの電位の間の値であることを特徴としている。
【0009】
請求項2及び請求項3に記載の発明によれば、放電ワイヤーの放電が、プレート状電極よりもアモルファスシリコン感光体側で行われるようにできるので、その放電効果を向上させることができ、アモルファスシリコン感光体の帯電効率を向上させることができる。したがって、放電ワイヤーのワイヤー電流を抑えることができ、NOxガスの発生量を低減することができる。
【0010】
また、請求項4に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記電極が、前記放電ワイヤーよりも大径のワイヤーとされ、該放電ワイヤーに対して前記アモルファスシリコン感光体と反対側に配置されることを特徴としている。そして、請求項5に記載の画像形成装置は、請求項4に記載の画像形成装置において、前記電極のバイアスが、前記放電ワイヤーの電位と同じ値であることを特徴としている。
【0011】
請求項4及び請求項5に記載の発明によれば、放電ワイヤーの放電が、大径ワイヤーよりもアモルファスシリコン感光体側で行われるようにできるので、その放電効果を向上させることができ、アモルファスシリコン感光体の帯電効率を向上させることができる。したがって、放電ワイヤーのワイヤー電流を抑えることができ、NOxガスの発生量を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、アモルファスシリコン感光体をプラス帯電しても、NOxガスの発生量を低減することができる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。まず最初に、本発明に係る画像形成装置の構成について説明する。図1で示すように、この画像形成装置10は、アモルファスシリコン感光体12と、アモルファスシリコン感光体12の表面を帯電するスコロトロン帯電器14と、スコロトロン帯電器14に電圧を印加するための電源16と、アモルファスシリコン感光体12の表面に潜像を形成する露光器18と、アモルファスシリコン感光体12表面の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像器20と、形成されたトナー像を用紙Pの表面に転写する転写器22と、アモルファスシリコン感光体12の表面の残存トナー等を除去するクリーニング器24と、アモルファスシリコン感光体12の表面の残存電位を除去する光除電器26と、用紙Pの表面に転写されたトナー画像を熱及び/又は圧力等により定着する定着器28と、を備えている。
【0014】
アモルファスシリコン感光体12は、例えば、直径84mm、表面硬度約2000kg/mm2のドラム状であり、アモルファスシリコン感光体12の上方には、コロナ放電方式(非接触帯電方式)のスコロトロン帯電器(コロナ帯電器)14が配置されている。このスコロトロン帯電器14の放電ワイヤー32には、例えば+5kV(+5000V)、グリッド34には、例えば+520Vの電圧が印加されている(帯電電流:約650μA)。そして、例えば、350mm/secの周速度で回転するアモルファスシリコン感光体12の表面を約+500Vに帯電するようになっている。
【0015】
なお、スコロトロン帯電器14は、電源16から供給された電圧により作動する。また、スコロトロン帯電器14に印加される帯電バイアスの電流値は500μA〜800μAの範囲が好ましく、550μA〜750μAの範囲がより好ましい。電流値が500μAに満たないと、充分な帯電電位を得ることができない場合がある。また、電流値が800μAを超えると、画像形成装置10の稼動時に、問題となるレベルの放電生成物が発生してしまう場合がある。
【0016】
露光器18としては、半導体レーザー及び走査装置の組み合わせや、光学系からなるレーザーROS、LEDヘッド、あるいは、ハロゲンランプなどの公知の露光手段を採用することができる。露光像の領域、即ちトナー像を形成するアモルファスシリコン感光体12表面の位置を、所望に応じて変化させるためには、レーザーROS又はLEDヘッドを使用することが好ましく、ここではレーザーROSを採用している。
【0017】
現像器20としては、アモルファスシリコン感光体12の表面に均一なトナー像を形成できる機能を有する限り、1成分系、2成分系を問わず、従来公知の現像装置を採用することができる。ここでは、現像器20に、スチレン系樹脂を含むトナーとキャリアとからなる2成分現像剤が使用され、トナーはプラス(+)極性に帯電している。
【0018】
転写器22としては、例えば、電圧を印加した導電性又は半導電性のローラー、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いて、アモルファスシリコン感光体12と用紙Pとの間に電界を作り、荷電されたトナーを転写する手段など、従来公知の手段を採用することができる。ここでは、転写器22に、転写ロールが用いられ、−600Vの電圧が印加されており、現像されたトナー像は、この電界によって用紙Pへ転写される。
【0019】
トナー像の用紙Pへの定着は、定着器28として公知の接触型熱定着装置を用いて行うことができる。具体的には、例えば、芯金上にゴム弾性層を有し、必要に応じて定着部材表面層を具備した加熱ローラーと、芯金上にゴム弾性層を有し、必要に応じて定着部材表面層を具備した加圧ローラーとからなる定着部材を具備する熱ローラー定着装置や、定着部材として、このようなローラーとローラーとの組み合わせを、ローラーとベルトとの組み合わせや、ベルトとベルトとの組み合わせに代えた定着装置が採用できる。ここでは、定着器28として、加熱ローラーと加圧ローラーとからなる熱ローラー定着装置を採用している。
【0020】
クリーニング器24としては、例えば、アモルファスシリコン感光体12の周面(表面)に摺接するブレード25を備えたものが採用され、光除電器26としては、例えば、タングステンランプ、LEDなどが挙げられ、光除電器26に用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光などが挙げられる。ここでは、波長660nmのLEDを光源として採用している。
【0021】
次に、以上のような構成の画像形成装置10の画像形成プロセスを簡単に説明する。まず、図1の矢印方向に回転するドラム状のアモルファスシリコン感光体12は、電圧が印加されたスコロトロン帯電器14によって、その表面が一様に帯電される。帯電されたアモルファスシリコン感光体12はレーザー光学系等の露光器18により静電潜像が書き込まれる。アモルファスシリコン感光体12の表面に書き込まれた静電潜像は、現像器20によりトナー像に現像される。
【0022】
そして、トナー像は転写器22により、図示しない給紙トレイから搬送されてくる用紙Pに転写される。転写されたトナー像は定着器28により用紙Pに定着され、その後、用紙Pは装置外に排出される。また、トナー像が用紙Pに転写された後、アモルファスシリコン感光体12の表面に残留していたトナーはクリーニング器24のブレード25により除去され、次いで光除電器26により除電されて、次の画像形成プロセスに備える。
【0023】
以上のような画像形成装置10において、次にスコロトロン帯電器14について詳細に説明する。本発明では、スコロトロン帯電器14のシールド30内で、かつ放電ワイヤー32の近傍に、バイアス電圧を印加する電極を設ける構成としている。これによれば、放電ワイヤー32のワイヤー電流を抑えつつ、帯電電流を維持することができるため、アモルファスシリコン感光体12に対する帯電効率を向上させることができるとともに、放電生成物の発生を抑制することができる。
【0024】
なお、グリッド34の開口率を大きくすると、同じワイヤー電流であっても、アモルファスシリコン感光体12の帯電電位を上昇させることができる。しかしながら、グリッド34の開口率を大きくすると、アモルファスシリコン感光体12の帯電均一性が低下するため、本発明では、グリッド34の開口率を大きくしない構成としている。また、グリッド34の電位は、シールド30の電位と略同等とされている。
【0025】
図2で示すように、このスコロトロン帯電器14には、シールド30内において、放電ワイヤー32の近傍、即ち放電ワイヤー32に対してアモルファスシリコン感光体12と反対側に、バイアス電圧を印加する電極としての金属製プレート36が配置されている。そして、このプレート36には、放電ワイヤー32に対する印加電圧値(放電ワイヤー32の電位)と、シールド30に対する印加電圧値(シールド30の電位)の間の電圧値が印加されている。
【0026】
例えば、放電ワイヤー32に+5000V(+5kV)の電圧が印加され、シールド30に+500Vの電圧が印加されている場合、金属製プレート36の印加電圧Eは、+500V<E<+5000V、好ましくは放電ワイヤー32により近い値、例えば+3000V<E<+5000Vとされている。このような構成にすると、グリッド34の開口率が同じであっても、アモルファスシリコン感光体12の帯電電位を上昇させることができる。
【0027】
すなわち、金属製プレート36の電位を、シールド30よりも高電位とし、放電ワイヤー32により近い電位とすると、グリッド34(アモルファスシリコン感光体12)と反対側への放電を、そのプレート36によって妨げることができ、プレート36よりもグリッド34側(アモルファスシリコン感光体12側)で放電させることが可能となるので、グリッド34側(アモルファスシリコン感光体12側)での放電効果を向上させることができ、アモルファスシリコン感光体12の帯電効率を向上させることができる。
【0028】
したがって、放電ワイヤー32のワイヤー電流を低減することができる。つまり、例えば図4で示すように、アモルファスシリコン感光体12に帯電電位+300Vを得るために必要なワイヤー電流は、グリッド34の開口率が93%の場合、従来では約440μAであったが、金属製プレート36を設けて、それに上記のようなバイアス電圧を印加した場合には、約240μAまで低減することができる。これにより、NOxガスの発生を抑制することができる。
【0029】
また、図3で示すように、シールド30内において、放電ワイヤー32の近傍、即ち放電ワイヤー32に対してアモルファスシリコン感光体12と反対側に、バイアス電圧を印加する電極としての大径ワイヤー38を配置してもよい。この大径ワイヤー38の径は、例えば、放電ワイヤー32の径がφ=30mmの場合、12倍のφ=360mmとされる。
【0030】
なお、大径ワイヤー38の配設位置は、図示の仮想線K1及び仮想線K2と常に交わる(接する場合を含む)範囲内であれば、その位置が多少ずれても構わない。また、ここで言う仮想線K1、K2とは、図示するように、放電ワイヤー32の中心と、シールド30のグリッド34とは反対側の隅角部とをそれぞれ直線で結んだ線である。
【0031】
また、この大径ワイヤー38には、放電ワイヤー32と同じ電圧値が印加される。例えば、放電ワイヤー32に+5000V(+5kV)の電圧が印加されるとすると、大径ワイヤー38にも+5000V(+5kV)の電圧が印加される。したがって、放電ワイヤー32と大径ワイヤー38は、図示のように、互いに反発し合って接することはない。
【0032】
このような大径ワイヤー38を設けても、上記と同様に、アモルファスシリコン感光体12の帯電電位を上昇させることができる。すなわち、グリッド34(アモルファスシリコン感光体12)と反対側への放電を、その大径ワイヤー38によって妨げることができ、大径ワイヤー38よりもグリッド34側(アモルファスシリコン感光体12側)で放電させることが可能となるので、グリッド34側(アモルファスシリコン感光体12側)での放電効果を向上させることができ、アモルファスシリコン感光体12の帯電効率を向上させることができる。
【0033】
したがって、放電ワイヤー32のワイヤー電流を低減することができる。つまり、例えば図4、図5で示すように、アモルファスシリコン感光体12に帯電電位+300Vを得るために必要なワイヤー電流は、グリッド34の開口率が86%の場合、従来では約790μAであったが、大径ワイヤー38を設けて、それに放電ワイヤー32と同じバイアス電圧を印加した場合には、約340μAまで低減することができる。これにより、NOxガスの発生を抑制することができる。
【0034】
以上、説明したように、スコロトロン帯電器14において、シールド30内の放電ワイヤー32の近傍に、バイアス電圧を印加する電極(金属製プレート36や大径ワイヤー38)を配置することにより、アモルファスシリコン感光体12の帯電効率を向上させることができるので、放電ワイヤー32のワイヤー電流を低減することができる。したがって、プラス放電時(アモルファスシリコン感光体12のプラス帯電時)において、NOxガスの発生量を図6で示す値よりも低減することができ、画像流れなどの不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】画像形成装置の概略構成図
【図2】シールド内にプレートを配置したスコロトロン帯電器の概略構成図
【図3】シールド内に大径ワイヤーを配置したスコロトロン帯電器の概略構成図
【図4】ワイヤー電流と帯電電位との関係をグリッドの開口率及びプレートの有無別に示したグラフ
【図5】ワイヤー電流と帯電電位との関係を大径ワイヤーの有無別に示したグラフ
【図6】ワイヤー電流と放電生成物の発生量との関係を示したグラフ
【符号の説明】
【0036】
10 画像形成装置
12 アモルファスシリコン感光体
14 スコロトロン帯電器
16 電源
18 露光器
20 現像器
22 転写器
24 クリーニング器
26 除電器
28 定着器
30 シールド
32 放電ワイヤー
34 グリッド
36 プレート(電極)
38 大径ワイヤー(電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファスシリコン感光体と、
放電ワイヤーがシールド内に設けられ、前記アモルファスシリコン感光体を均一に帯電させるグリッドが設けられたスコロトロン帯電器と、
を備えた画像形成装置において、
前記シールド内で、かつ前記放電ワイヤーの近傍に、バイアスが印加される電極を配置したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電極は、プレート状に形成され、前記放電ワイヤーに対して前記アモルファスシリコン感光体と反対側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電極のバイアスは、前記放電ワイヤーの電位と前記シールドの電位の間の値であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電極は、前記放電ワイヤーよりも大径のワイヤーとされ、該放電ワイヤーに対して前記アモルファスシリコン感光体と反対側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電極のバイアスは、前記放電ワイヤーの電位と同じ値であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−163028(P2006−163028A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355193(P2004−355193)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】