説明

画像形成装置

【課題】 用紙に残る拍車跡を低減、あるいは用紙に拍車跡が残らないようにすることのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 転写部Aと定着部B間の用紙搬送路にあって、用紙を規制しない退避位置と用紙を規制する用紙規制位置の間で変位する拍車3を設け、ロール紙が選択されたときは、用紙先端が拍車3に進入する手前から定着部Bに保持されるまでの間だけ拍車3を用紙規制位置に変位し、カット紙が選択されたときは、用紙先端が拍車3に進入する手前から用紙後端が拍車3を通過するまでの間、拍車3を退避位置に変位する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に転写部と定着部間の用紙搬送路に拍車を設けた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体上に形成されたトナー像が転写部で用紙に転写され、その後用紙は定着部に搬送されて、未定着トナー像が定着され、排紙されるようになっている。転写後の用紙は用紙搬送路から浮くようにカールしている場合があるので、この浮きを防止し(浮いている用紙を用紙搬送路に押さえ付け)、確実に定着部に送るために、転写部と定着部間の用紙搬送路に拍車を設けた画像形成装置が知られている。
拍車の可動範囲が限られていることから、転写部で転写された未定着トナー画像と拍車が当たることで、未定着トナー画像拍車跡が残る場合があった。そして、このように拍車跡が残ると、画像品質が損なわれるという問題点があった。
拍車跡を低減、あるいは拍車跡が残らないようにする手段としては、特開2003−285959公報にあるように、用紙を吸引して膨らみを押えるものがある。また、特開2000−118821公報にあるように、インクジェットプリンタに用いられる排紙手段として、排紙ローラと共に狭持する拍車を上下に移動させて用紙Pに加わる拍車の圧力を調整するものがある。
【特許文献1】特開2003−285959公報
【特許文献2】特開2000−118821公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示す技術では、減圧室、吸気装置、ダクト等を配置する必要があり、コストが高く、省スペース化に適さない。また、特許文献2に示す技術では、拍車跡を低減することはできるものの、用紙と拍車が当たることで拍車跡をなくすことはできない。特に用紙が定着部に進入後、用紙の搬送方向と直行する方向の中央部分が膨らむ鼓効果によって、用紙後端は拍車に当たりやすく、用紙先端と比べて、拍車跡が残りやすかった。
また、転写部で画像を転写された用紙を定着部に搬送するために拍車を用いる場合、用紙が定着部に進入後は、用紙は定着部によって搬送されるため、必要とされる拍車の機能は、用紙のカールやねじれを矯正して定着部へ正常に用紙を搬送することであり、あらかじめ拍車の圧力(高さ)を変えると定着シワが発生する問題が残る。
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたものであり、拍車跡が残る範囲を用紙先端だけにし、用紙に残る拍車跡を低減、あるいは用紙に拍車跡が残らないようにすることのできる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、搬送される用紙に感光体上の画像を転写する転写部と、用紙上の未定着画像を定着する定着部と、該転写部と該定着部との間の用紙搬送路に配置されて用紙を規制する拍車と、拍車を用紙搬送路へ向けて進退させる拍車駆動機構と、これらを制御する制御手段と、を備えた画像形成装置において、前記制御手段は、拍車を、用紙を規制しない退避位置と用紙を規制する用紙規制位置との間で変位させると共に、ロール紙が選択されたときは、用紙先端が拍車に進入する手前から定着部に保持されるまでの間だけ拍車を用紙規制位置に変位し、カット紙が選択されたときは、用紙先端が拍車に進入する手前から用紙後端が拍車を通過するまでの間、拍車を退避位置に変位させるように制御することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1において、拍車の駆動手段は、拍車ガイドに設けた駆動軸に連結したソレノイドである画像形成装置を主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、転写部と定着部間の用紙搬送路にあって、用紙を規制しない退避位置と用紙を規制する用紙規制位置の間で変位する拍車を設け、ロール紙が選択されたときは、用紙先端が拍車に進入する手前から定着部に保持されるまでの間だけ拍車を用紙規制位置に変位し、カット紙が選択されたときは、用紙先端が拍車に進入する手前から用紙後端が拍車を通過するまでの間、拍車を退避位置に変位するようにしたので、カールしやすいロール紙であっても拍車跡が残る範囲を用紙先端だけにし、用紙に残る拍車跡を低減、あるいは用紙に拍車跡が残らないようにすることができる。またカールしにくいカット紙の場合は拍車跡が残らないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の要部構成図である。感光体ドラム1、用紙を上面にて搬送ガイドする下ガイド板2、下ガイド板2の上方に配置された2つの拍車3a、3b、各拍車3a、3bを回転自在に支持すると共に同期して上下動させる拍車ガイド4、拍車ガイド4を支持するステー5、定着装置(定着ローラ6、加圧ローラ7)を備えている。用紙搬送方向にあって上流側と下流側の2箇所に設けられた拍車3a、3bは、転写部Aと定着部B(定着ローラ6と加圧ローラ7のニップ部)の間にあって、用紙搬送路を構成する下ガイド板2の上方に、互いに独立して上下動可能、かつ回転自在に配置されている。拍車3a、3bは用紙から離反する退避位置(用紙搬送路から退避した位置)と用紙を規制する用紙規制位置(用紙搬送路に臨む位置)との間で変位する。
本発明では、拍車3a、3bは、拍車駆動機構Cによって作動する。
図示しない原稿サイズセンサによって適切なサイズの用紙Pが選択され、用紙が図示しない給紙ローラにより図示しないレジストローラ(転写部Aの直上流側)に搬送されるようになっていて、レジストローラによって位置合わせされた用紙Pは、転写部Aに搬送されて画像が転写された後、用紙搬送路を経由して定着部Bにて画像が定着されるようになっている。
本発明の各構成要素、特に拍車駆動機構Cの制御は図示しない制御手段(CPU)が実現する。
このように用紙搬送路に拍車3a、3bを設けることにより、感光体ドラム1から用紙搬送路へと搬出された用紙を、拍車3a、3bによって定着部Bへ確実に搬送することができる。また、このように拍車3a、3bを設けることにより、カールやねじれ等の変形を生じている用紙の場合でもその変形が矯正され、その結果、用紙への正常な画像の定着を行うことができる。
そして、外周部が歯になっている拍車3a、3bを設けることで、拍車3a、3bの外周と用紙Pとの接触面積を小さくでき、これにより、用紙上の未定着の画像に対する影響を最小限に抑えることができる。
【0007】
図2は図1に示す拍車が用紙搬送路から退避している状態(退避位置)を示す詳細機構図である。図3は図2の側面図である。用紙Pとしてカセットに収容されたカット用紙が給紙されると、拍車3は退避位置に変位する。ステー5は、ソレノイド(駆動手段)8、拍車ガイド4が設けられた回転可能な軸9、10を備えている。また、ソレノイド8はカム部11を、軸9は切換板12、及びギヤ13を、軸10はギヤ14を備え、ステー5と、切換板12は、スプリング15でつながっている。
ソレノイド8はオンすることによりその回転軸8aに支持されたカム部11を回転させる。カム部11は外周端部の位置(回転軸8aとの間の距離)が一様でないカム片11aを後述する切換板12の内側面に当接させている。
ステー5、ソレノイド8、軸9、10、カム部11を、切換板12、スプリング15等は、拍車駆動機構Cを構成している。
図4は図1に示す拍車が用紙搬送路に臨んでいる状態(用紙規制位置)を示す詳細正面図、図5は同、側面図である。用紙Pとしてロール紙が給紙されると拍車3は用紙規制位置に変位する。ソレノイド8がON(引いた状態)し、カム部11が回動し、切換板12を押すことで、軸9とともに切換板12が時計回り方向に回転し、切換板12はステー5に当接して止まる。また、軸9、10に設けられたギヤ13、14を介して、軸10は軸9と逆方向に回転し、ソレノイド8がONの間は、転写部Aと定着部Bの間の用紙搬送経路に一対の拍車3a、3bを配置することができる。
即ち、拍車ガイド4は、第1と第2の拍車ガイド4a、4bから成り、各拍車ガイド4a、4bは夫々ステー5に対して軸9、10によって各一端部を上下方向に回動自在に軸支されている。各軸9、10には、夫々同軸状にギヤ13、14が固定されている。両ギヤ13、14は互いに噛合している。また、第1の拍車ガイド4aの内側端部からは上方へ向けて切換板12が突出しており、切換板12の上部適所とステー5の下部適所との間はスプリング15によって連結されることにより、第1の拍車ガイド4aは常時においては図2の初期状態にある。従って、ソレノイド8がONしてその回転軸8aが所定角度回動すると、カム片11aがその外周面にて切換板12の内側面を押圧して、スプリング15に抗して第1の拍車ガイド4aを時計回り方向へ回動させる(図3)。この際、第2の拍車ガイド4bはギヤ13を介してギヤ14と噛合しているので、第1の拍車ガイド4aの動作と連動して上下動することができる。一方、ソレノイドがOFFして初期位置に復帰するとカム片11aによる押圧が解除されるので、スプリング15の力によって第1の拍車ガイド4aは図2の位置に復帰する。
【0008】
用紙Pが定着部Bに進入したことが図示しないセンサ等により検知されると、図示しない制御手段は、所定のタイミングにてソレノイド8をOFFし、スプリング15によって切換板12が初期位置に回動復帰することで、軸9が回転し、軸9、10に設けられたギヤ13、14を介して、軸10は軸9と逆方向に回転し、拍車3a、3bは図2のように用紙が当たらない位置まで退避する。
従って、上記実施形態によれば、用紙Pが定着部Bに進入するまで、転写部Aと定着部Bの間の用紙搬送経路に拍車3a、3bを下降させて用紙をガイドし、それ以外は、拍車3a、3bは用紙が当たらない位置まで退避するので、定着シワが発生する心配もなく、拍車跡が残る範囲を用紙先端だけにし、用紙に残る拍車跡を低減、あるいは用紙に拍車跡が残らないようにすることができる。
従って、上記実施形態によれば、用紙Pが定着部Bに進入するまで、転写部Aと定着部Bの間の用紙搬送経路に拍車3を配置し、それ以外は、拍車3は用紙が当たらない位置まで退避するので、定着シワが発生する心配もなく、拍車跡が残る範囲を用紙先端だけにし、用紙に残る拍車跡を低減、あるいは用紙に拍車跡が残らないようにすることができる。
【0009】
本実施形態の画像形成装置においては、用紙先端が用紙をガイドする拍車3に進入する手前から定着部Bに保持されるまでの間だけ、拍車を用紙搬送路に配置し、それ以外は拍車を用紙搬送路から退避させるので、拍車跡が残る範囲を用紙先端だけにし、用紙に残る拍車跡を低減、あるいは用紙に拍車跡が残らないようにすることができ、画像の汚れを低減することができる。
また本実施形態の画像形成装置においては、用紙の搬送方向と直交する方向の中央部分が膨らむ鼓効果によって、用紙後端が膨らんでも、用紙に当たらない位置に拍車3を配置させているので、用紙中央、後端に拍車跡が残らないようにすることができる。
また、本発明では、用紙を規制しない退避位置と用紙を規制する用紙規制位置の間で変位する拍車3a、3bを設け、ロール紙が選択されたときは、用紙先端が拍車に進入する手前から定着部に保持されるまでの間だけ拍車を用紙規制位置に変位させ、カット紙が選択されたときは、用紙先端が拍車に進入する手前から用紙後端が拍車を通過するまでの間、拍車を退避位置に変位させるようにしたので、カールしやすいロール紙であっても拍車跡が残る範囲を用紙先端だけにし、用紙に残る拍車跡を低減、あるいは用紙に拍車跡が残らないようにすることができる。またカールしにくいカット紙の場合は拍車跡が残らないようにすることができる。
尚、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ソレノイド8のON/OFFのタイミングを逆にして、ソレノイドONで拍車3を転写部Aと定着部Bの間の用紙搬送路から退避させ、ソレノイドOFFで拍車3を転写部Aと定着部Bの間の用紙搬送路に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の要部構成図。
【図2】図1に示す拍車が用紙搬送路から退避している状態を示す詳細正面図。
【図3】図1に示す拍車が用紙搬送路から退避している状態を示す側面図。
【図4】図1に示す拍車が用紙搬送路に位置している状態を示す詳細正面図。
【図5】図1に示す拍車が用紙搬送路に位置している状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0011】
A 転写部
B 定着部
3 拍車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される用紙に感光体上の画像を転写する転写部と、用紙上の未定着画像を定着する定着部と、該転写部と該定着部との間の用紙搬送路に配置されて用紙を規制する拍車と、拍車を用紙搬送路へ向けて進退させる拍車駆動機構と、これらを制御する制御手段と、を備えた画像形成装置において、
前記制御手段は、拍車を、用紙を規制しない退避位置と用紙を規制する用紙規制位置との間で変位させると共に、ロール紙が選択されたときは、用紙先端が拍車に進入する手前から定着部に保持されるまでの間だけ拍車を用紙規制位置に変位し、カット紙が選択されたときは、用紙先端が拍車に進入する手前から用紙後端が拍車を通過するまでの間、拍車を退避位置に変位させるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1において、拍車の駆動手段は、拍車ガイドに設けた駆動軸に連結したソレノイドであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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