説明

画像形成装置

【課題】 リボンの弛みを取る際に巻き取るリボンを節約することを目的とする。
【解決手段】 リボン巻取処理が起動されると、まずプラテンを駆動することなくリボン巻取スプールを駆動するリボン巻取モードとする(S10)。このように、プラテンの駆動を行なわずに、リボン巻取スプールを駆動させてリボンを巻き取ることによりリボンの弛みを取るようにしたため、弛みをとる際のリボンの巻き取り量を、プラテンも駆動していた従来の方式に比べて低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ装置、プリンタ、コピー装置等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、こうした画像形成装置において、インクが塗布されたリボンを用いて画像を形成する技術がよく知られている。こうした技術においては、様々な原因でリボンに発生する弛みを解消することが課題の1つとなっている。
【0003】
リボンの弛みを取る方法として、例えば、インクリボンカセットを搭載可能なキャリッジ上に、記録ヘッドをヘッドアップ状態とヘッドダウン状態とに駆動する記録ヘッド駆動手段と、インクリボンカセットのインクリボンを搬送するインクリボン搬送手段とを備え、これら両手段を単一の駆動源でそれぞれ駆動可能に構成された画像形成装置において、ヘッドダウン時にインクリボンを搬送するのに加え、ヘッドアップの際にも、ヘッドアップ後にインクリボンを搬送することによってインクリボンの弛みを防止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一方、記録ヘッドがアップ・ダウンしないタイプの画像形成装置においても、リボンの取り替え時などにリボンに弛みが発生する。例えば、リボンが、2本の軸を有するカセット状のリボンカセットとして構成され、一方の軸から他方の軸へ巻き取られながら、記録ヘッドとプラテンとの間を搬送される記録用紙にそのリボン上のインクが転写される形態の画像形成装置がよく知られている。そして、このような構成の画像形成装置では、リボンカセットを付け外しする際に弛みが発生することが多い。
【0005】
そこで、上記構成の画像形成装置に対し、上記特許文献1に開示された技術を適用してリボンの弛みを取るように構成することも可能である。具体的には、リボンカセットがセットされた後、記録ヘッドとプラテンを相互に分離させて、その分離した状態でリボンを巻き取り、弛みを取るのである。
【0006】
しかし、この方法を実現するためには、記録ヘッドとプラテンを分離させるための機構を設ける必要があるため、装置全体の構成が非常に複雑化する。このように、リボンの弛みを取るために本来は必要のない記録ヘッドとプラテンの分離機構を設けることは、装置小型化の観点からもコストアップ抑制の観点からも現実的ではない。
【0007】
そこで、記録ヘッドがアップ・ダウンしないタイプの画像形成装置に対するリボンの弛みを取るための別の方法として、装置の上カバーを閉じたときにプラテンローラを回転駆動させると共にその回転駆動力をリボン巻取部にも伝達することにより、プラテンローラ及びリボン巻取部を動作させて、リボンの弛みを取る技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−226130号公報
【特許文献2】特公平5−12154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に開示された方法は、リボンの弛みを取ることはできるものの、リボンの弛みを取るためにリボン巻取部だけでなくプラテンまで回転させるため、リボンの巻き取り量が多くなり、画像形成に用いられることなく浪費されるリボンの量が増大してしまうという問題があった。
【0009】
即ち、上記構成の画像形成装置においては、画像を形成するためにプラテンローラを定速で回転させ、尚かつ、リボン巻取部の径が巻き取りの進行と共に増大していくことに鑑みて、通常、リボン巻取部の巻き取り量はプラテンローラによるリボンの搬送量に比べ高くされる。そして、記録ヘッドと対向するプラテンローラとリボンカセットのリボン巻取部とを稼働させること、即ち、画像を形成する場合と同様にこれらを稼働することにより、弛みを取るようにしている。
【0010】
この結果、弛みを取るためにリボン巻取部を回転させると必然的にプラテンローラも回転することとなり、リボンを巻き取って弛みを取っていく過程でプラテンローラによる新たなリボンの供給も行われるため、大量の未使用リボンが浪費されることとなっていた。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、リボンの弛みを取る際に巻き取るリボンの量を節約することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記特許文献2に記載の方法では、通常の画像形成時と同じようにプラテンローラ及びリボン巻取部を動作させて弛みを取るようにしているが故にリボンの大量浪費が生じているのであって、弛みを取っている間は新たなリボンが供給されないようにすればリボンの浪費を防げる、ということに着目し、本発明に至った。
【0013】
即ち、上記課題を解決するためになされた請求項1記載の画像形成装置は、表面にインクが塗布されたリボンがロール状に巻かれたリボン供給部と、このリボン供給部からリボンをロール状に巻き取るリボン巻取部と、このリボン巻取部とリボン供給部との間に設けられ、リボンの裏面に当接してそのリボンの表面に塗布されたインクを被記録媒体へ転写することによりその被記録媒体上へ画像を形成する記録手段と、リボンを挟んでその記録手段と対向する位置に設けられ、リボンの表面側で被記録媒体を搬送する搬送手段とを備えた画像形成装置である。
【0014】
そして特に、請求項1の画像形成装置は、搬送手段を動作させることなくリボン巻取部を駆動できるよう構成されている。
このように構成された画像形成装置によれば、搬送手段を動作させることなくリボン巻取部を駆動することが可能にされているため、リボンの弛みを取る際に、搬送手段の動作を停止しつつリボン巻取部を駆動させてリボンを巻き取ることができる。そのため、リボンの弛みを取る際のリボン巻取部によるリボンの巻き取り量を、リボン巻取部と共に搬送手段(例えばプラテンローラ)も駆動していた従来の方式に比べて少なくすることができる。
【0015】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置であって、当該画像形成装置は、動作モードとして少なくとも、搬送手段が被記録媒体を搬送することなくリボン巻取部がリボンを巻き取るリボン巻取モードを有している。そして、巻取制御手段が、そのリボン巻取モード時に、搬送手段を動作させることなくリボン巻取部を駆動するよう構成されている。
【0016】
このように構成された画像形成装置によれば、リボン巻取モードにすることによって巻取制御手段が動作し、搬送手段を動作させることなくリボン巻取部を駆動することが可能にされているため、リボンの弛みを取る際にリボン巻取部に巻き取られるリボンの量を、リボン巻取部と共に搬送手段(例えばプラテンローラ)も駆動していた従来の方式に比べて少なくすることができる。
【0017】
そして、上記請求項2に記載の画像形成装置は、より具体的には、例えば請求項3のように構成することができる。即ち、請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置であって、記巻取制御手段が、駆動力生成部と、駆動力伝達部と、制御部とを備えている。駆動力生成部は、リボン巻取部を駆動させるための駆動力を生成し、駆動力伝達部は、駆動力生成部の駆動力を、搬送手段には伝達せずリボン巻取部へ伝達する。そして、制御部は、リボン巻取モード時に、駆動力生成部からの駆動力を駆動力伝達部によってリボン巻取部へ伝達させることにより、搬送手段を動作させることなくリボン巻取部を駆動させる。
【0018】
次に、請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の画像形成装置であって、当該画像形成装置は、被記録媒体への画像形成時には、その被記録媒体を搬送手段によって搬送しつつ、リボンの巻取速度が被記録媒体の搬送速度より速い所定の第1巻取速度となるようにリボン巻取部が駆動されるよう構成されている。そして、巻取制御手段は、リボン巻取モード時には、上記第1巻取速度より速い所定の第2巻取速度でリボンが巻き取られるよう、リボン巻取部を駆動する。
【0019】
このように構成された画像形成装置によれば、被記録媒体に画像を形成する際よりも高速でリボン巻取部が駆動されるため、リボンの弛みを取るのに要する時間を従来よりも短くすることができる。
【0020】
次に、請求項5記載の発明は、請求項2〜4いずれかに記載の画像形成装置であって、少なくともリボン巻取部及びリボン供給部が着脱可能に装着される本体部と、その本体部に対して開閉可能に構成され、閉じることによりリボン巻取部及びリボン供給部を覆うことが可能なカバーとを備えている。そして、当該画像形成装置は、カバーが開かれることによってリボン巻取部及びリボン供給部が露出された後、そのカバーによって再びリボン巻取部及びリボン供給部が覆われたときに、リボン巻取モードに設定される。
【0021】
このように構成された画像形成装置によれば、リボンの交換(リボン巻取部とリボン供給部とが一体化したカセットごと交換する形態が多い)等のためにカバーを開け閉めした際に、自動的にリボン巻取モードとなってリボンの巻き取り(弛み取り)が実行されるため、ユーザがリボンの弛みを取るのを忘れた場合に発生する不具合を防止することができる。
【0022】
次に、請求項6記載の発明は、請求項2〜5いずれかに記載の画像形成装置であって、 動作モードとして、搬送手段及びリボン巻取部を共に動作させる記録モードを有し、更に、搬送手段とリボン供給部との間にリボンがあるか否かを検出するリボン検出手段を備えている。そして、当該画像形成装置は、巻取モードに設定される際、その設定に先んじて所定期間の間記録モードに設定され、その所定期間中にリボン検出手段によりリボンが検出されなかった場合は、巻取モードに移行しない。
【0023】
このように構成された画像形成装置によれば、「リボンがないにも拘わらず、弛みを取るためにリボン巻取部を駆動させる」という無駄な動作をせずに済む。
次に、請求項7記載の発明は、請求項1〜6いずれかに記載の画像形成装置であって、リボン巻取部に対し、リボンを破断させる荷重に満たない所定の制限荷重以上の回転荷重が掛かった場合に、当該リボン巻取部の駆動を停止させる駆動制限手段を備えている。
【0024】
このように構成された画像形成装置によれば、駆動制限手段を備えているため、リボンを破断させる荷重が掛かるとリボン巻取部の駆動が確実に停止される。そのため、過大な荷重が掛かってリボンが破断するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明が適用された画像形成装置としてのファクシミリ装置1の概略構成を示す側断面図である。図1に示す如く、本実施形態のファクシミリ装置1は、上カバー2と下カバー4を有している。同図において、右側を当該ファクシミリ装置1の前側、左側を後側とすると、上カバー2の後側上部には記録用紙トレイ6が設けられている。そして、この記録用紙トレイ6に、被記録媒体としての記録用紙3が載置されている。この記録用紙3は、後述する各ローラ等により、図中矢印で示す記録用紙搬送経路17に沿って搬送される。尚、記録用紙3に限らず例えばOHPシートなどの各種媒体に画像を形成させるようにしてもよい。
【0026】
上カバー2と下カバー4は、それぞれの後端側においてカバー開閉軸8を介して回動自在に連結されている。そして、ユーザが図示しないレバーを操作して上カバー2を開けると、上カバー2はカバー開閉軸8を中心として図中反時計回りに回動する。これにより、記録用紙トレイ6や、後述する記録用紙給紙ローラ5、プラテン7、記録用紙排紙ローラ15、ADF(Automatic Document Feeder )ローラ21、LF(Line Feed )ローラ23、キーボード22などの、当該ファクシミリ装置1における上側に搭載された各種構成部品も、上カバー2と共に回動する。
【0027】
記録用紙給紙ローラ5は、後述する駆動モータMやギアを介して回転駆動されるものであり、記録用紙トレイ6に載置された記録用紙3を、規制部材10と協働して記録用紙搬送経路17に沿って一枚ずつ給紙・搬送する。
【0028】
記録用紙搬送経路17における記録用紙給紙ローラ5の下流側には、プラテン7が設けられている。このプラテン7も、後述する駆動モータMやギアを介して回転駆動される。また、プラテン7の下方には、リボン11に塗布されたインクを記録用紙3へ転写することによって記録用紙3上へ画像を形成するための記録ヘッド9が、プラテン7に対向して設けられている。記録ヘッド9は、多数の発熱素子がライン状に形成されたいわゆるラインサーマルヘッドによって構成されている。これにより、記録ヘッド9は、使用される記録用紙3の印字可能範囲をカバーすることができる。
【0029】
尚、記録ヘッド9は、後述する供給リボン収納部4aや巻取リボン収納部4b、CIS(Contact Image Sensor)25、原稿排出用ピンチローラ24、リボンセンサ31などと共に当該ファクシミリ装置1における下側(下カバー4内)に固定して搭載されている。そのため、上カバー2を開けると、記録ヘッド9は動かずにプラテン7がこの記録ヘッド9から離れていく。
【0030】
記録用紙搬送経路17におけるプラテン7の下流側には、画像が形成された記録用紙3を当該ファクシミリ装置1の外部へ排出するための記録用紙排紙ローラ15が設けられている。そして、記録用紙排紙ローラ15の上側には、記録用紙排紙用ピンチローラ16が圧接されている。
【0031】
記録用紙排紙ローラ15も、後述する駆動モータMやギアを介して回転駆動され、記録用紙排紙用ピンチローラ16と協働して画像形成後の記録用紙3を記録用紙搬送経路17に沿って下流側に搬送し、ファクシミリ装置1の外部に排紙する。
【0032】
一方、送信を行う際の原稿は、原稿挿入口26に挿入されると、ADFローラ21やLFローラ23により、原稿搬送経路29に沿って搬送される。即ち、原稿挿入口26に原稿が挿入されると、原稿はまずADFローラ21によって搬送される。ADFローラ21の上側表面には、原稿がADFローラ21によって搬送される際に重送されないよう一枚ずつ分離するための分離片27が当接している。そのため、ADFローラ21は、原稿挿入口26に挿入された原稿を、分離片27と協働して原稿搬送経路29に沿って一枚ずつ搬送する。
【0033】
原稿搬送経路29におけるADFローラ21の下流側には、CIS25が設けられており、このCIS25の上側には、原稿押さえ部材28が圧接されている。CIS25は、原稿搬送経路29に沿って搬送されてきた原稿がこのCIS25と原稿押さえ部材28との間を通過する際に、原稿上の画像を順次読み取る。
【0034】
更に、CIS25の下流側には、LFローラ23及びLFローラ23の下側で圧接された原稿排出用ピンチローラ24が回転可能に配置されている。LFローラ23及び原稿排出用ピンチローラ24は、CIS25を介して画像読み取りが行われた後の原稿をファクシミリ装置1の外部に排出する。
【0035】
また、上部パネル板20には、数字キーや各種ファンクションキー等を有するキーボード22が設けられている。そして、ユーザがこれらのキーを押下することにより、当該ファクシミリ装置1が実行可能な各種の動作が行われる。また、上部パネル板20には、ユーザに対して動作状態を表示するための表示部(図示略)が設けられている。
【0036】
下カバー4には、記録用紙給紙ローラ5の下方に供給リボン収納部4aが形成されると共に、ADFローラ21の下方に巻取リボン収納部4bが形成されている。このうち供給リボン収納部4aには、リボン供給筒体12の周囲にロール状に巻かれたリボン11が収納され、このリボン11は供給リボン収納部4aから引き出された後、プラテン7と記録ヘッド9との間を通過して、巻取リボン収納部4bに設けられたリボン巻取スプール13に巻き取られるようになっている。
【0037】
尚、リボン供給筒体12とリボン巻取スプール13は、本実施形態では、両者が共に図示しないカセット枠に取り付けられた一つのリボンカセットとして構成されており、このリボンカセットは、下カバー4に着脱可能に構成されている。但し、このようなリボンカセットとしての構成はあくまでも一例であり、リボン供給筒体12とリボン巻取スプール13がそれぞれ個々に下カバー4に対して着脱可能となるよう構成してもよい。
【0038】
リボン11は、ラインサーマルヘッドからなる記録ヘッド9の発熱素子による記録可能な範囲をカバーすべく幅広に形成されている。リボン巻取スプール13は、後述する駆動モータMやギアを介して回転駆動され、記録用紙への画像形成に使用されたリボン11を巻き取るものである。
【0039】
このように構成された本実施形態のファクシミリ装置1においては、記録用紙3が、記録用紙給紙ローラ5によりプラテン7と記録ヘッド9の間に供給され、ここでリボン11に塗布されたインクが記録用紙3へ転写されることにより画像が形成される。記録用紙3への画像形成は、プラテン7が回転すると共にリボン供給筒体12に巻かれているリボン11をリボン巻取スプール13が巻き取りつつ、記録ヘッド9を介して行われる。こうして画像が形成された記録用紙3は、記録用紙搬送経路17に沿って上方へ迂回し、記録用紙排紙ローラ15により排出される。送信を行う際の原稿は、原稿搬送経路29に沿ってADFローラ21により搬送され、CIS25により画像を読み取られてLFローラ23により排出される。
【0040】
次に、記録用紙給紙ローラ5、プラテン7、リボン巻取スプール13、記録用紙排紙ローラ15、ADFローラ21、及びLFローラ23を選択的に回転駆動するための駆動力伝達機構について、図2に基づいて説明する。図2に示す駆動力伝達機構35は、図1に示したリボン巻取スプール13等の構成の手前、即ちファクシミリ装置1を前側(図1の右側)から見たときの当該ファクシミリ装置1内の左側に配置されている。尚、図2(a)は図1と同方向から駆動力伝達機構35を見た図、図2(b)は駆動力伝達機構35を裏側から見た図である。
【0041】
駆動力伝達機構35は、駆動フレーム37、軸38を中心として回転する太陽ギア39、第1駆動ギア43、第2駆動ギア44、第3駆動ギア45、第4駆動ギア46、第5駆動ギア47を主たる構成としている。尚、第5駆動ギア47はフリクションギア48に隠れている。
【0042】
第1従動ギア51及び第2従動ギア52は、第5駆動ギア47に伝えられた駆動力を記録用紙給紙ローラ5に伝えるためのギアで(図6参照)、リボン駆動アイドルギア65はフリクションギア48に接続されたギアである(図8(b)参照)。リボン駆動ギア67は、リボン駆動アイドルギア65およびリボン駆動アイドルギア69に歯合している。第5従動ギア68は、リボン11を巻き取るための回転駆動力を伝達するクラッチバネ87(以下「巻取力伝達用クラッチバネ」という)(後述)を介して第3駆動ギア45に接続されており、リボン駆動アイドルギア69は、リボン駆動ギア67および第5従動ギア68に歯合している。
【0043】
第1遊星ギア61及び第2遊星ギア63は、いずれも後述する回転部材71(太陽ギア39と同軸)に設けられているギアである。減速ギア53は、フリクションギア48の駆動力をプラテン7へ伝達するためのギアであり(図6参照)、第6従動ギア101及び第7従動ギア102はそれぞれ、第2駆動ギア44の駆動力をADFローラ21、LFローラ23に伝達するためのギアであるが、その詳細は後述する。また、位置決め孔75a〜75fは、駆動力伝達機構35の駆動状態(動作モード)を規定するためのものである。
【0044】
図3に、図2(a)から太陽ギア39等を除いた駆動力伝達機構35の主要部を示す。回転部材71は、太陽ギア39と同軸にクラッチバネ76(以下「主クラッチバネ」という)(後述)を介して接続されており、その周囲71aには凹凸が形成されている。センサスイッチ74は、この凹凸を検出することにより回転部材71の角度(動作モード)を検出するためのものである。
【0045】
回転部材71には2個の遊星ギア(第1遊星ギア61、第2遊星ギア63)が設けられており、太陽ギア39と一体に形成された小径ギア72(図4(b)参照)が回転されることにより、小径ギア72と逆方向に回転する。各遊星ギア61、63の中心が回転部材71の中心(太陽ギア39の中心)と為す角は135°となっている。第2駆動ギア44および第4駆動ギア46の各中心が回転部材71の中心(太陽ギア39の中心)と為す角、並びに第4駆動ギア46および第1駆動ギア43の各中心が回転部材71の中心(太陽ギア39の中心)と為す角も135°となっている。これにより後述する記録モードおよびコピーモードの実現が可能となっている。尚、図3は、第2遊星ギア63と第2駆動ギア44とが歯合して原稿の読取モードとなっている状態を示している。また、上記角度135°はあくまでも一例であり、所望の動作モードを実現できる限りこれに限定されないことはいうまでもない。
【0046】
図4に回転部材71の駆動機構等を示す。図4(a)は図3と同方向から回転部材71を見た図であり、図4(b)はその下方側面図、図4(c)は規制爪73を説明するための右方側面図である。尚、位置決め孔75は、上述した各位置決め孔75a〜75fの任意の1つを示す。また、図4(c)は、規制爪73が位置決め孔75に係合した様子を示している。
【0047】
図4(b)に示すように、太陽ギア39は駆動モータMの回転駆動力がモータギア88を介して伝達されることにより回転するよう構成されており、太陽ギア39と回転部材71との間には主クラッチバネ76が介装されている。主クラッチバネ76は、太陽ギア39が正転(図4(a)の反時計方向に回転)したときには、大きなトルク(締まりトルク)を生じて太陽ギア39と回転部材71とを連結する。これにより、太陽ギア39の回転と共に、回転部材71も、センサスイッチ74(図4では省略。図3参照。)が回転部材71の周囲71aに形成された凹凸を確実に検出するまで回転される。
【0048】
一方、太陽ギア39が逆転(図4(a)の時計方向に回転)するときは、太陽ギア39と回転部材71とが主クラッチバネ76の小さなトルク(緩みトルク)によって連結され、規制爪73が位置決め孔75に係合するまで両者が共に回転する。そして、規制爪73が位置決め孔75に係合すると、主クラッチバネ76がスリップして太陽ギア39と回転部材71との連結が解除され、回転部材71の回転は停止して太陽ギア39のみが回転するようになる。このとき、主クラッチバネ76の緩みトルクを使用して回転しているため、スリップによる摩擦負荷が小さく、駆動モータMへの負荷も少ない。
【0049】
尚、上記のように正転時は主クラッチバネ76の締まりトルクを使用し、逆転時は緩みトルクを使用して回転部材71を回転させるようにしているのは、次の理由による。
即ち、本実施形態では、センサスイッチ74によるOFF期間のパルス数に基づいて回転部材の位置(延いては動作モード)が決まる。具体的には、回転部材71が一定速度で一回転すると、OFF期間が長い区間が一つと、OFF期間が短い区間が五つ生じる。そして、長いOFF期間が検出されたときの動作モードがホームポジションとして設定され、そこを基準に回転部材71が反時計回りに回転(正転)されるときのON・OFFの変化に基づいて、動作モードが判断される。
【0050】
このように、回転部材71の正転時(動作モード設定時)は、回転部材71がスリップしないよう確実に回転させて、センサスイッチ74によるON・OFFの判断、及びOFF期間中のパルス数の測定を確実に行う必要がある。そのため、主クラッチバネ76の締まりトルクを使用して正転させるようにしているのである。
【0051】
逆転時は、最終的にはそのときの動作モードに対応したローラを駆動モータMの駆動力によって駆動させることになるため、駆動モータMには、所定の負荷以外になるべく余計な負荷をかけないようにするのが望ましい。そのため、緩みトルクを使用して回転させるようにしている。このようにすれば、規制爪73が位置決め孔75に係合した後は緩みトルクのスリップ力(非常に小さい負荷)が駆動モータMの負荷として加わることになるため、締まりトルクが負荷として加わる場合に比べて駆動モータMの負荷を軽減できるのである。
【0052】
規制爪73は、回転部材71における、第1遊星ギア61と第2遊星ギア63との間の略中間位置に設けられている。この規制爪73は、図4(c)に示すように点Qを軸として揺動可能に回転部材71に取り付けられており、図4(b)に示すように回転部材71の下面71bからその先端が突出するようにされている。この規制爪73は、回転部材71の外周方向から見て右下方(図4(c)の右上方)の角のR(半径)が、左下方(図4(c)の右下方)の角のRよりも大きくされた略長方形の部材であり、ネジリバネ77により図4(c)の方向から見て反時計回りに付勢されている。この規制爪73が図4(c)に示すように位置決め孔75に係合することにより、駆動力伝達機構35の動作モードが規定される。
【0053】
図5に、回転部材71の回転と規制爪73との関係を示す。図5(a)のように回転部材71が反時計方向に回転(正転)されるときには、前述のように太陽ギア39と回転部材71とが一体的に回転され、動作モードが変化する。このとき、規制爪73は図5(b)に示すように状態が変化する。
【0054】
図5(b)は、回転部材71の中心(太陽ギア39の中心)から規制爪73を見た様子を示しており、回転部材71が正転されるのに伴い、右から左へと状態が変化して行く。すなわち、規制爪73と駆動フレーム37の位置決め孔75とが正対していない状態(図5(b)の右図)では、規制爪73のRの大きい方の角が駆動フレーム37面に乗り上げた状態となっている。規制爪73と駆動フレーム37の位置決め孔75とが正対すると、規制爪73が位置決め孔75内に入り込むが、なおも回転部材71が同方向に回転されることにより、規制爪73はその丸い角が位置決め孔75の左壁面を滑り上がり(図5(b)の中央図)、位置決め孔75から出てしまう(図5(b)の左図)。この際に、回転部材71の周囲71aに形成された凹凸により、センサスイッチ74が一旦ONにされたのちOFFとなり、更に再びONとなる。
【0055】
この2回目にONとなった状態が図5(b)の左図であり、この状態となったときに、現在の回転部材71の回転角度を検出することができる。より詳しくは、既述のように、回転部材71の周囲71aに形成された凹凸部によりセンサスイッチ74がON→OFF→ONと変化する際におけるOFF期間の長い場所をホームポジションとし、そこからスタートしてセンサスイッチ74がONとなり、更にOFFとなる、という状況が何回発生したかにより、回転部材71の回転角度を検出する。
【0056】
こうしてセンサスイッチ74が一旦ONとなってその後にOFFとなり、更に再びONとなることによって、所定の回転角度を検出すると、図5(c)のように回転部材71が時計回りに回転(逆転)される。回転部材71が逆転を開始すると、前述のように太陽ギア39と回転部材71が主クラッチバネ76の緩みトルクによって一体に回転される。そして、規制爪73が位置決め孔75に係合することにより動作モードが固定される。
【0057】
図5(b)の左図の状態から回転部材71が逆転されると、規制爪73は図5(d)のように状態が変化する。図5(d)も、図5(b)と同じように回転部材71の中心(太陽ギア39の中心)から規制爪73を見た様子を示しているが、本図では、回転部材71が逆転されるのに伴い、左から右へと状態が変化して行く。
【0058】
即ち、規制爪73と駆動フレーム37の位置決め孔75とが正対していない状態(図5(d)の左図)では、規制爪73の丸い角が駆動フレーム37面に乗り上げた状態となっている。そして、回転部材71の逆転により規制爪73が駆動フレーム37に対して右方へ移動すると、ネジリバネ77の付勢により規制爪73が位置決め孔75内に入り込み(図5(d)の中央図)、なおも回転部材71が同方向に回転されようとすると、規制爪73の角張った側が位置決め孔75の右壁面に当接する。
【0059】
この状態になると、規制爪73は、回転部材71の下面71bと位置決め孔75の右壁面とに挟まれて位置が決まり、それ以上逆転しても規制爪73は位置決め孔75から出ることができなくなって(図5(d)の右図)、回転部材71の位置が固定される。そのため、この回転部材71の位置固定後は、駆動モータMによって太陽ギア39が逆転されても、主クラッチバネ76がスリップして回転部材71は回転しない。
【0060】
以上説明した各種ギア(駆動力伝達機構35)と、図1で説明した各種ローラ等の位置・駆動の関係は、図6、図7のようになる。尚、実際にはプラテン7への駆動力は、プラテン7と同軸に設けられたギア(プラテンギア)が受けるのだが、本図では簡単のためにプラテンの符号7をそのままプラテンギアの符号として用い、あたかもプラテン7が直接ギアで駆動されているかのように示している(他のローラのギアも同様)。
【0061】
第1遊星ギア61又は第2遊星ギア63により第1駆動ギア43が駆動されると、記録用紙排紙ローラ15が駆動される。また、第1遊星ギア61又は第2遊星ギア63により第2駆動ギア44が駆動されると、第6従動ギア101が駆動されることによりADFローラ21が駆動され、更にその第6従動ギア101の駆動によって第7従動ギア102を介してLFローラ23も駆動される。
【0062】
また、第2遊星ギア63により第3駆動ギア45が駆動されると、その駆動力が第5従動ギア68(図2(b)参照)→リボン駆動アイドルギア69→リボン駆動ギア67→リボンカセットギア79→リボン巻取スプール13の順に伝達されて、リボン巻取スプール13が駆動される。
【0063】
尚、この駆動力は、フリクションギア48と同軸に設けられたリボン駆動アイドルギア65(図2(b)、図8(b)参照)にも伝達されてフリクションギア48を回転させようとするが、後述するようにフリクションギア48とリボン駆動アイドルギア65との間のスベリにより、フリクションギア48は回転しない。また、リボンカセットギア79は、リボン巻取スプール13(図1参照)と同軸且つ一体に形成されたものである。そのため、リボン巻取スプール13は、リボンカセットギア79に駆動力が伝達されたときにそのリボンカセットギア79の回転に伴って回転することとなる。
【0064】
また、第1遊星ギア61又は第2遊星ギア63により第4駆動ギア46が駆動されると、その駆動力がフリクションギア48→リボン駆動アイドルギア65(図2(b)参照)→リボン駆動ギア67→リボンカセットギア79→リボン巻取スプール13の順に伝達されてリボン巻取スプール13が駆動されると共に、フリクションギア48の駆動力が減速ギア53にも伝達され、これによりプラテン7も駆動される。
【0065】
更に、第1遊星ギア61により第5駆動ギア47が駆動されると、その駆動力が第1従動ギア51→第2従動ギア52→第3従動ギア54→第4従動ギア55→記録用紙給紙ローラ5の順に伝達されて、記録用紙給紙ローラ5が駆動される。
【0066】
フリクションギア48について、図8(a)及び図8(b)に基づいて説明する。フリクションギア48が駆動されると、減速ギア53(図2、図6参照)が駆動され、これによりプラテン7が駆動される。その一方で、フリクションギア48が回転されることにより摩擦部材85を介してリボン駆動アイドルギア65が回転し、この駆動力がリボン駆動ギア67からリボンカセットギア79へと伝わってリボン巻取スプール13が駆動される。
【0067】
プラテン7のギアとリボン駆動アイドルギア65のギア比は、リボン巻取スプール13が、リボンの巻き取り量に関わらずプラテン7の周速度よりも速い速度でリボンを巻き取る(実際にはプラテン7がこれに抗し、プラテン7の周速度で規定される速度で巻き取られる)ように設定されている。
【0068】
但しこのようにすると、リボン巻取スプール13がリボン11を巻き取っていくに連れて巻取径が増大していくので、リボン巻取スプール13がリボン11を巻き取ろうとする速度が過大となる虞がある。そしてこれにより、プラテン7からリボン巻取スプール13までの間のリボン11に大きな張力が掛かり、リボン11が破断してしまう。
【0069】
そこで、リボン11を破断させる虞のない所定の力(例えばリボン11上で換算して5.9N)が掛かるとフリクションギア48・リボン駆動アイドルギア65間でスベリが発生するように摩擦部材85が構成されている。即ち、本実施形態では、リボン11の巻取力は摩擦部材85の摩擦力より発生し、プラテン7を回転させる力よりは小さくなるように設定されており、これら各力はいずれもリボンが破断する力よりも小さくなるよう設定されている。そのため、リボン11の巻き取り力が過大になると、摩擦部材85がスリップして、フリクションギア48は回転するもののリボン駆動アイドルギア65は回転しないようになる。
【0070】
また、リボン駆動ギア67は、第4駆動ギア46の駆動により駆動されるだけでなく、上述のように、第2遊星ギア63が第3駆動ギア45に歯合した際(図11(a)参照)にも駆動される。この場合、図8(c)に示すように、第3駆動ギア45に巻取力伝達用クラッチバネ87を介して接続されている第5従動ギア68が駆動され、これに歯合しているリボン駆動アイドルギア69が駆動されることによりリボン駆動ギア67が駆動される。
【0071】
巻取力伝達用クラッチバネ87のトルクは、摩擦部材85の摩擦力よりも大きく、且つリボン11が破断しないように設定されている。そのため、フリクションギア48にこのトルクは伝わらない。そのため、プラテン7が回転することなくリボン巻取スプール13が回転することにより、プラテン7からリボン巻取スプール13までの間のリボン11を巻き取って弛みを取ることができる。
【0072】
図9は、ファクシミリ装置1の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すファクシミリ装置1の制御部93には、駆動モータM、センサスイッチ74、リボンセンサ31、カバー開閉センサ91が接続されている。
【0073】
制御部93は、駆動力伝達機構35を含む装置全体の動作を制御するためのものであり、たとえば1チップのマイクロコンピュータからなる。この種のマイクロコンピュータは、CPUを制御中枢としてROMに記憶されたプログラムやRAMに記憶されたデータに基づいて動作することが広く知られているため、ファクシミリ装置1に係るマイクロコンピュータの一般的構成については図示説明を省略する。
【0074】
駆動モータMには、図4(b)でも説明したように、回転部材71を含む駆動力伝達機構35のモータギア88が接続されている。また、駆動力伝達機構35には、動作モードに応じて、記録用紙給紙ローラ5、プラテン7、記録用紙排紙ローラ15、リボン巻取スプール13、ADFローラ21、LFローラ23が接続される。
【0075】
次に、制御部93により実行されるリボン巻取処理について、図10に基づいて説明する。図10は、制御部93内のCPU(図示略)が実行するリボン巻取処理を示すフローチャートである。本処理は、上カバー2が一旦開かれた後、再び閉じられたことがカバー開閉センサ91(図9参照、図1では図示略)により検出されると起動する。
【0076】
本処理が起動されると、まずステップ(以下「S」と略す)10にて、ファクシミリ装置1をリボン巻取モードに遷移させる。具体的には、回転部材71を適宜正転及び逆転させて、図11(a)に示すように第2遊星ギア63を第3駆動ギア45と歯合させる。続くS20で、カウンタに固定値Aを代入する。カウンタは上記RAM(図示略)内に設定される。そしてS30にて、駆動モータMを1ステップ分、正転させる。これによりプラテン7を回転させない状態で、リボン巻取スプール13のみが回転される。
【0077】
そして続くS40にて、カウンタを1減少させ、カウンタ=0と判定される(S50:YES)までS30〜S40の処理を繰り返す。S20〜S50の処理は、ステップ数にして固定値A分だけ駆動モータMを正転させる処理となっている。固定値Aは、リボン11の弛みを取るのに必要最低限の回転量とするとよい。
【0078】
次にS60にて、ファクシミリ装置1を記録モードに遷移させる。具体的には、回転部材71を適宜正転および逆転させ、図11(b)に示すように第1遊星ギア61を第4駆動ギア46に、第2遊星ギア63を第1駆動ギア43に、夫々歯合させる。
【0079】
尚、給紙モードにある駆動力伝達機構35の要部を図12(a)、記録排紙モードにある駆動力伝達機構35の要部を図12(b)に示す。給紙モードにおいては、第1遊星ギア61が第5駆動ギア47と歯合し、記録用紙給紙ローラ5を駆動する。記録排紙モードにおいては、第1遊星ギア61が第1駆動ギア43と歯合し、記録用紙排紙ローラ15を駆動する。
【0080】
また、読取モードにある駆動力伝達機構35の要部を図13(a)、コピーモードにある駆動力伝達機構35の要部を図13(b)に示す。読取モードにおいては、第2遊星ギア63が第2駆動ギア44と歯合し、LFローラ23およびADFローラ21を駆動する。コピーモードにおいては、第1遊星ギア61が第2駆動ギア44と、第2遊星ギア63が第4駆動ギア46と夫々歯合し、LFローラ23、ADFローラ21、リボン巻取スプール13、プラテン7を駆動する。尚、上記各駆動ギア43,44,45,46,47が駆動されることにより対応する各ローラが駆動されるまでの駆動力の伝達経路については、図6等に基づいて既に説明した通りであるため、ここではその詳細説明を省略する。
【0081】
図10に戻り、続くS70では、カウンタに固定値Bを代入する。固定値Bは固定値Aよりも小さな値とする。そしてS80にて、駆動モータMを1ステップ分、正転させる。これによりプラテン7およびリボン巻取スプール13の両者が回転される。そしてカウンタを1だけ減少させ(S90)、リボンセンサ31(図1参照)がONとなっているか否かを判定する(S100)。
【0082】
リボンセンサ31は、プラテン7と供給リボン収納部4aの間にある略ヘ型の部材であり、リボン11がこれを押し下げている状態であれば、図示しないリミットスイッチがこれを検出して「リボン11がある」と判定する。リボンセンサ31がOFFの場合(S100:NO)は、S110に進んでカウンタが0か否かを判定する。そしてカウンタ=0と判定される(S110:YES)までS80〜S100の処理を繰り返す。カウンタ=0となった場合は、S115に進み、エラー処理(具体的には「リボン11がない」旨をユーザなどに報知)を実行して本処理を終了する。
【0083】
S100でリボンセンサ31がONと判定された場合は、S120に進み、カウンタに固定値Cを代入する。固定値Cは固定値Bよりも小さな値とする。そしてS130にて駆動モータMを1ステップ分、正転させる。これによりプラテン7およびリボン巻取スプール13の両者が更に回転される。
【0084】
そしてカウンタを1だけ減少させ(S140)、リボンセンサ31がONとなっているか否かを判定する(S145)。リボンセンサ31がOFFの場合(S145:NO)はS115に進み、上述のエラー処理をする。リボンセンサ31がONの場合(S145:YES)はS150に進み、カウンタが0か否かを判定する。そしてカウンタ=0と判定される(S150:YES)までS130〜S145の処理を繰り返し、カウンタ=0となったときに本処理を終了する。
【0085】
予期せぬ障害等が原因で、リボン11が無いにも拘わらずS100でYES、すなわち「リボン11がある」と判定された場合にも、S120〜S150の処理を行うことにより、駆動モータMを固定値Cステップだけ動かす分、継続してリボンセンサ31がONになっていないと「リボン11がある」と判定しないため、リボン11の有無判定を適切に行うことができる。
【0086】
このようなファクシミリ装置1によれば、リボン巻取モードにすることにより、プラテン7を駆動することなくリボン巻取スプール13を駆動することが可能にされており、はじめにプラテン7からリボン巻取スプール13間のリボン11の弛みを取り、次にプラテン7とリボン供給筒体12の間のリボン11の弛みを取るようにしているため、リボン11の弛みを取る際にリボン供給筒体12からリボン巻取スプール13に巻き取られるリボン11の量を、従来の方式に比べて少なくすることができる。
【0087】
また、リボン11の交換等のために上カバー2を開け閉めした際に、自動的にリボン巻取処理が実行されるため、ユーザがリボン11の弛みを取るのを忘れたために発生する不具合を防止することができる。
【0088】
そして、巻取力伝達用クラッチバネ87(図8(c)参照)を備えているので、仮にリボン11を破断させるような荷重が掛かっても、リボン巻取スプール13の回転が確実に停止され、リボン11が破断するのを防止できる。
【0089】
ここで本実施例と本発明の構成要件との対応関係を示す。リボン巻取スプール13が本発明のリボン巻取部に相当し、リボン供給筒体12が本発明のリボン供給部に相当し、記録ヘッド9が本発明の記録手段に相当し、プラテン7が本発明の搬送手段に相当し、駆動モータMが本発明の駆動力生成部に相当し、下カバー4が本発明の本体部に相当し、上カバー2が本発明のカバーに相当し、巻取力伝達用クラッチバネ87が本発明の駆動制限手段に相当し、リボンセンサ31が本発明のリボン検出手段に相当する。
【0090】
また、モータギア88、太陽ギア39、主クラッチバネ76、回転部材71、第2遊星ギア63、第3駆動ギア45、巻取力伝達用クラッチバネ87、第5従動ギア68、リボン駆動アイドルギア69、リボン駆動ギア67、及びリボンカセットギア79により、本発明の駆動力伝達部が構成される。
【0091】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な態様にて実施することができる。例えば、本発明の画像形成装置をファクシミリ装置1として構成したが、コピー機やプリンタとして実現しても構わない。
【0092】
また、リボン巻取処理を図14に示したようなものに変更しても良い。この処理は、図10に示したリボン巻取処理の、S10〜S50の処理とS60〜S150の処理とを入れ替えたものに近い。特に、S60〜S150の処理については全く同じであるのでステップ番号も同じものを用いている。S160〜S200の処理は図10の処理のS10〜S50に対応している。異なる点は、処理の順序を入れ替えたことにより、「リボン11がない」ことが分かった場合(S110:YESおよびS145:NO)には、リボン11の弛みを取る処理を行わないように(S160にジャンプせずに本処理を終了)している点である。このようにすることにより、リボン11がないにも拘わらず、弛みを取るためにリボン巻取スプール13を回転駆動させる、といった無駄な処理をせずに済む。
【0093】
また、S30の処理やS180で行うリボン11の巻取速度を、通常の記録モードでのリボン11の巻き取り時の速度(本発明の第1巻取速度に相当)よりも速い速度(本発明の第2巻取速度に相当)としてもよい。例えば、1ステップずつではなく2ステップずつ正転させ、S50ではカウンタ≦0になったらS60に移行するようにする。こうすれば、リボン11の弛みを取るのに要する時間を従来よりも短くすることができる。
【0094】
また、駆動力伝達機構35を用いることなく、プラテン7とリボン巻取スプール13とで別々のモータを用いて、記録モードでは双方を駆動、リボン巻取モードではリボン巻取スプール13のみを駆動するようにしてもよい。
【0095】
また第1遊星ギア61、第2遊星ギア63が回転中心と為す角度を135°としたが、これ以外の角度にしても良い。その場合には、第1駆動ギア43〜第5駆動ギア47を対応させて配置し直せばよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態のファクシミリ装置の概略構成を示す側断面図である。
【図2】ファクシミリ装置の駆動力伝達機構の概略構成を示す説明図である。
【図3】原稿の読取状態にある駆動力伝達機構の主要部を示す説明図である。
【図4】回転部材の各部機構を示す説明図である。
【図5】回転部材の動作を説明するための説明図である。
【図6】回転部材から各ローラへ駆動力が伝達される機構を示す説明図である。
【図7】駆動力伝達機構と各ローラの配置を示す内部平面図である。
【図8】フリクションギアおよび第3駆動ギアの説明図である。
【図9】本実施形態のファクシミリ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】制御部により実行されるリボン巻取処理を示すフローチャートである。
【図11】リボン巻取モードにある駆動力伝達機構の要部および記録モードにある駆動力伝達機構の要部を示す説明図である。
【図12】給紙モードにある駆動力伝達機構の要部および記録排紙モードにある駆動力伝達機構の要部を示す説明図である。
【図13】読取モードにある駆動力伝達機構の要部およびコピーモードにある駆動力伝達機構の要部を示す説明図である。
【図14】リボン巻取処理の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
1・・・ファクシミリ装置、2・・・上カバー、3・・・記録用紙、4・・・下カバー、4a・・・供給リボン収納部、4b・・・巻取リボン収納部、5・・・記録用紙給紙ローラ、6・・・記録用紙トレイ、7・・・プラテン、8・・・カバー開閉軸、9・・・記録ヘッド、10・・・規制部材、11・・・リボン、12・・・リボン供給筒体、13・・・リボン巻取スプール、15・・・記録用紙排紙ローラ、17・・・記録用紙搬送経路、21・・・ADFローラ、23・・・LFローラ、29・・・原稿搬送経路、31・・・リボンセンサ、35・・・駆動力伝達機構、37・・・駆動フレーム、38・・・軸、39・・・太陽ギア、43・・・第1駆動ギア、44・・・第2駆動ギア、45・・・第3駆動ギア、46・・・第4駆動ギア、47・・・第5駆動ギア、48・・・フリクションギア、51・・・第1従動ギア、52・・・第2従動ギア、53・・・減速ギア、54・・・第3従動ギア、55・・・第4従動ギア、61・・・第1遊星ギア、63・・・第2遊星ギア、65、69・・・リボン駆動アイドルギア、67・・・リボン駆動ギア、68・・・第5従動ギア、71・・・回転部材、71a・・・周囲、71b・・・下面、72・・・小径ギア、73・・・規制爪、74・・・センサスイッチ、75,75a〜75f・・・位置決め孔、76・・・主クラッチバネ、77・・・ネジリバネ、79・・・リボンカセットギア、85・・・摩擦部材、87・・・巻取力伝達用クラッチバネ、88・・・モータギア、91・・・カバー開閉センサ、93・・・制御部、101・・・第6従動ギア、102・・・第7従動ギア、M・・・駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にインクが塗布されたリボンがロール状に巻かれたリボン供給部と、
前記リボン供給部から、前記リボンをロール状に巻き取るリボン巻取部と、
前記リボン巻取部と前記リボン供給部との間に設けられ、前記リボンの裏面に当接してそのリボンの表面に塗布された前記インクを被記録媒体へ転写することによりその被記録媒体上へ画像を形成する記録手段と、
前記リボンを挟んで前記記録手段と対向する位置に設けられ、前記リボンの表面側で前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、
を備えた画像形成装置であって、
前記搬送手段を動作させることなく前記リボン巻取部を駆動できるよう構成されている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置であって、
当該画像形成装置は、動作モードとして少なくとも、前記搬送手段が前記被記録媒体を搬送することなく前記リボン巻取部が前記リボンを巻き取るリボン巻取モードを有し、
前記リボン巻取モード時に、前記搬送手段を動作させることなく前記リボン巻取部を駆動する巻取制御手段を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置であって、
前記巻取制御手段は、
前記リボン巻取部を駆動させるための駆動力を生成する駆動力生成部と、
前記駆動力生成部の駆動力を、前記搬送手段には伝達せず、前記リボン巻取部へ伝達する駆動力伝達部と、
前記リボン巻取モード時に、前記駆動力生成部からの駆動力を前記駆動力伝達部によって前記リボン巻取部へ伝達させることにより、前記搬送手段を動作させることなく前記リボン巻取部を駆動させる制御部と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の画像形成装置であって、
当該画像形成装置は、前記被記録媒体への画像形成時には、その被記録媒体を前記搬送手段によって搬送しつつ、前記リボンの巻取速度が前記被記録媒体の搬送速度より速い所定の第1巻取速度となるように前記リボン巻取部が駆動されるよう構成されており、
前記巻取制御手段は、前記リボン巻取モード時には、前記第1巻取速度より速い所定の第2巻取速度で前記リボンが巻き取られるよう前記リボン巻取部を駆動する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2〜4いずれかに記載の画像形成装置であって、
少なくとも前記リボン巻取部及び前記リボン供給部が着脱可能に装着される本体部と、
前記本体部に対して開閉可能に構成され、閉じることにより前記リボン巻取部及び前記リボン供給部を覆うことが可能なカバーと、
を備え、
当該画像形成装置は、前記カバーが開かれることによって前記リボン巻取部及び前記リボン供給部が露出された後、そのカバーによって再び前記リボン巻取部及び前記リボン供給部が覆われたときに、前記リボン巻取モードに設定される
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項2〜5いずれかに記載の画像形成装置であって、
動作モードとして、前記搬送手段及び前記リボン巻取部を共に動作させる記録モードを有し、
更に、前記搬送手段と前記リボン供給部との間に前記リボンがあるか否かを検出するリボン検出手段を備え、
当該画像形成装置は、前記巻取モードに設定される際、その設定に先んじて所定期間の間前記記録モードに設定され、その所定期間中に前記リボン検出手段により前記リボンが検出されなかった場合は、前記巻取モードに移行しない
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の画像形成装置であって、
前記リボン巻取部に対し、前記リボンを破断させる荷重に満たない所定の制限荷重以上の回転荷重が掛かった場合に、当該リボン巻取部の駆動を停止させる駆動制限手段を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−7606(P2006−7606A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188229(P2004−188229)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】