説明

画像形成装置

【課題】ギア列を用いた回転力伝達装置において、ギア列に掛かる負荷の変動に基づくギアのバックラッシの隙間がギアの歯の駆動側面に移動するのを防止し、また、ガタつきによるギア騒音を低減する技術を提供する。
【解決手段】駆動伝達要素にギア31〜45を用いた装置において、従動部材または従動要素軸上のすべてのギアに駆動遮断部材、例えばワンウエイクラッチ21を取付け、末端の従動部材または従動要素軸上のギア11、12、13、14、15に、または従動要素軸上のギアの駆動下流側に設けた従動ギア16、17、18に、駆動負荷部材を取付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは印刷媒体を供給又は排出する系に多段のギア装置を用いた画像形成装置のギア列による騒音や画像不良等の問題を改善した装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは印刷媒体を供給又は排出する系に多段のギア装置を用いた画像形成装置のギア列による騒音や画像不良等の問題を改善した装置に係るものである。
【0003】
ギア列が非常に多くつながっている駆動系において、回転開始時のギア噛合い音が非常に大きくなる場合がある。この場合、噛合い音低減のためにベルト駆動を採用することも考えられるが、コストが安く・組立性に優れたギア駆動を選択することが多い。
【0004】
回転開始時のギア噛合い音が非常に大きくなる原因として、ギアのバックラッシがギアの歯の駆動面側の隙間となった場合に、この隙間によって回転開始時に歯間に衝撃が生じ、噛合い振動が大きくなることが考えられる。バックラッシの隙間がギアの歯の駆動面側に発生する理由として、従動負荷の慣性モーメントが大きく、回転停止時に従動側のギアが先回りするケースがあるが、通常は、慣性負荷よりも摩擦負荷の方が大きく、慣性モーメントにより歯の駆動面側には隙間が発生することは現象としては少ない。
【0005】
画像形成装置の印刷媒体を供給又は排出する系において、バックラッシの隙間がギアの歯の駆動面側にが発生する大きな理由として、ギア駆動源が駆動モータだけでなく、従動対象であるロールが用紙によって回転させられる動作があることが挙げられる。
【0006】
ロール軸が用紙により回転させられることによって、ギアの歯当たり面がモータ駆動時とは逆になり、バックラッシの隙間がギアの歯の駆動面側に発生してしまう。このようなバックラッシ隙間の移動による騒音を防止する従来技術としては、
(1)ベルト駆動を採用する案がある。この案ではコストアップや組立性・保全性に難点がある。
(2)シザースギアを採用する案もある。シザースギアは、ギアの歯の当り面が駆動側になるように付勢する付勢装置を内蔵したギアである。ギア列では1個おきにシザースギアを設けなければならず、ギアが多数用いられている画像形成装置では非常にコストアップとなる。
(3)あるいはロールを駆動し続ける手段もある。この手段では駆動モータやクラッチの消費電力が増加し、耐久性の確保が困難になり、また、駆動系の騒音が増加する問題があるので好ましくない。
(4)軟質ギア材料を用いる等の方法があるがギア強度の低下による耐久性不足となる。
【0007】
以上の技術はいずれも問題があり、騒音低減を図ることは困難であった。
【0008】
これらを克服するために、回転力伝達装置として、駆動モータの回転力を回転作動部材であるフィードローラに伝達するギア列と、フィードローラから前記ギア列に伝達される負荷を変動させる負荷変動装置としてのクラッチと、前記クラッチによるギア列の負荷の変動に応じて前記ギア列の末端側に配置されたギアの負荷を常時所定値以上に保持する負荷調節装置とを備えた技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この技術はギア列を用いた回転力伝達装置において、ギア列に掛かる負荷の変動に基づくギアのバックラッシやガタつきによるギア騒音を低減するものであるが、負荷変動装置を備えていない従動ロール軸があり、また負荷調節装置は駆動列の途中に設けてあるので、騒音低減効果が不十分であった。
【特許文献1】特開平9−196152号公報(第2−8頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点を解決し、ギア列を用いた回転力伝達装置において、ギア列に掛かる負荷の変動に基づくギアのバックラッシの隙間がギアの歯の駆動側面に移動するのを防止し、また、ガタつきによるギア騒音を低減する技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、次の技術手段を講じたことを特徴とする画像形成装置である。すなわち、本発明は、駆動伝達要素にギアを用いた装置において、従動部材または従動要素軸上のすべてのギアに駆動遮断部材を取付けたことを特徴とする画像形成装置である。最も肝要な点は「従動部材のすべて」のギアに駆動遮断部材を取付けることである。前記駆動遮断部材としてはワンウエイクラッチを用いると好ましい。
【0012】
また本発明の第2の発明は、駆動伝達要素にギアを用いた装置において、末端の従動部材または従動要素軸上のギアに駆動負荷部材を取付けたことを特徴とする画像形成装置である。
【0013】
さらに本発明の第3の発明は駆動伝達要素にギアを用いた装置において、末端の従動部材または従動要素軸上のギアにさらに駆動下流側に従動ギアを設け、その軸上に駆動負荷部材を取付けたことを特徴とする画像形成装置である。
【0014】
このような画像形成装置において、前記駆動負荷部材はトルクリミッタ又はブレーキとすれば好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ギア列を用いるギア駆動において、従来、難しかったギアのバックラッシの隙間がギアの歯の駆動面側に移動することによる衝撃音対策を、簡単な構成にて達成することができた。なお、このとき、信頼性(耐久性)・消費電力や組立性・保全性・コスト等に悪影響を及ぼすことはなかった。
【0016】
従動対象の速度や負荷が高く、かつ頻繁に回転停止を繰り返すケースでは、騒音レベルが非常に高いが、本発明により大幅な騒音低減が可能となった。また、衝撃振動による画像形成時への悪影響も取り除くことができ、バンディング防止の効果も達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明はギア列のバックラッシの隙間がギアの歯の駆動面側に発生しないように、用紙側からの駆動力によってロール軸が回転する時に、ギアは回転しないようにする仕組みを設けたものである。
【0019】
ギア列のバックラッシによる隙間が、ギアの駆動面側に生ずる現象について図4、図5を参照して説明する。図4、図5は、説明を分かりやすくするために、ギアの歯を薄くやせた形に描いてある。図4において、駆動側のギア100は回転方向101に駆動回転する。歯102の駆動側面103が従動側のギア110の歯112の駆動面113側に当接しており、駆動側ギアの歯102の反駆動側面104と従動側のギアの歯112の反駆動側面114との間にバックラッシ120が生じている。
【0020】
図5は駆動側ギア10が停止し、従動側ギア110がつれ廻り等によってさらに矢印115側に回転したときの状態を示している。駆動側ギア100の歯102の反駆動側面114とが接し、駆動面側面103と113との間に隙間121が生じている。駆動側ギアが図4に示すように再び駆動回転をすると、この隙間121により歯102と112との間に衝撃が生じ騒音の原因となる。
【0021】
そこで、従動側のロールが回転しても軸が回転しないか、あるいはロール軸が回転してもギアが回転しないように、駆動遮断部材を取付けた。これにより、ギアの歯の当たり方は駆動モータ側からの駆動を受けた時と変らないため、バックラッシの隙間がギアの歯の駆動面側に発生しない。
【0022】
図1は実施例の画像処理装置のギア列の平面図である。駆動モータ20の回転力はギア31、32、33を経てテークアウエイロール11を回転させ、分岐してギア33、34、35を経てテークアウエイロール12を駆動し、さらにギア36、37、38を経てテークアウエイロール13を駆動する。また駆動モータ20はギア31、39、40、41、42を経てテークアウエイロール14を駆動すると共に、さらにギア43、44、45を経てテークアウエイロール15を駆動する。
【0023】
駆動モータ20の駆動力はギア31からギア32以降の系列と、ギア39との系列に分岐するが、この分岐するギア32、39に駆動遮断部材として電磁クラッチ21がそれぞれ装着されている。従って、すべてのギア系列に電磁クラッチが介装されている。
【0024】
また各テークアウエイロール11、12、13、14、15の軸にはすべて駆動負荷部材が装着されている。
【0025】
図1の装置によれば、第1の駆動ギア31より下流のすべてのギア列に駆動遮断部材が装着されており、また、すべてのテークアウエイロール11、12、13、14、15に駆動負荷部材が設けられているので、駆動停止時に従動側ギアがつれ廻りを生ずることなく、ギア列の駆動開始時における騒音発生は著しく小さくなった。
【0026】
駆動遮断部材の空転トルクがゼロであれば、上記の通りギアは動かない。しかし、通常わずかな空転トルクが存在する。従って、その空転トルクによってギアがつれ回り動作をし、ギアの歯の駆動面側にバックラッシによる隙間が生ずる場合がある。その動作を阻止するために、空転トルクを若干上回るような負荷を取付けた。負荷の取付位置は、末端の従動ロールのギアの下流側とした。これにより、つれ回り現象がなくなり、ギアのバックラッシによる隙間が歯の駆動面側に移動することによる回転開始時の噛合い騒音の大幅な低減が可能となった。
【0027】
まず、用紙により従動対象のロールが駆動される時にロールのみが回転し、ロール軸又はロール軸上のギアが停止するようにつまり、ギアの噛合い状態が変化しないように、ロール内にワンウエイクラッチ又は電磁クラッチを設ける。ワンウエイクラッチは駆動遮断部材であって一方向駆動伝達手段である。ワンウエイクラッチはロール軸上のギアに入れることとしてもよい。なお、ワンウエイクラッチの代わりに電磁クラッチを用いても良い。ワンウエイクラッチの装着により、駆動モータ側からの駆動に対しては、ワンウエイクラッチがロックしてロールに駆動力を伝えるが、逆にロールが駆動源となった場合はワンウエイクラッチが滑り、ギアが回転しない。従って、噛合い位置や噛合い状態が変化せず、回転開始時のギア噛合い音を非常に小さく抑えることができた。
【0028】
図2は別の実施例を示すもので、末端のテークアウエイロール12、13、15の駆動下流側に従動ギア16、17、18を設け、このギア軸に駆動負荷部材を装着したものである。
【0029】
電磁クラッチで駆動を切っている場合には、ワンウエイクラッチの空転トルクよりもギア列の駆動負荷の方が小さく、つれ回り現象が発生し、噛合い状態が変化してしまう。これを解決するために、図2に示すように、最も末端のギア、すなわち、テークアウエイローラ軸ギア(従動要素のギア)12、13、15に噛合うもう一つの従動ギア16、17、18を追加して設け、その追加して設けた従動ギア16、17、18に回転負荷を与えるようにした。この時、前記回転負荷は、ワンウエイクラッチの空転トルクよりも僅かに大きくし、つれ回りの発生を防止した。回転負荷の与え方としては、トルクリミッタ・各種ブレーキ(電磁ブレーキ等)・ギアへのウエーブワッシャによる与圧等によって行った。ギアへのウエーブワッシャによる与圧は例えば図3に示すギア又はロールの端部に2枚のワッシャを設け、この2枚のワッシャの間にウエーブワッシャを挟んだ構造とした。ず3はこれを例示したものでギア50をフレーム55から突出しているスタッド54に弾性リング51によって押圧して取付け、ギア50とスタッド54の段との間に2枚のナイロンワッシャ52に挟まれたウエーブワッシャ53を取付けたものである。これらの対策により、ギアのバックラッシがギアの歯の駆動面側に生ずることがなく、これによる回転開始時の噛合い騒音の大幅な低減が可能となった。
【0030】
また、上記の通り、最も末端のギアの駆動下流側に追加したギア16、17、18を設けこれに駆動負荷をつけるのが最も理想的であるが、スペース上困難の場合は、効果が若干落ちるが、上記末端ギアの駆動上流側に駆動負荷を取付けることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例のギア列を示す平面図である。
【図2】実施例のギア列を示す平面図である。
【図3】ウエーブワッシャの例を示す説明図である。
【図4】バックラッシの説明図である。
【図5】駆動面側に生じた隙間の説明図である。
【符号の説明】
【0032】
11、12、13、14、15 テークアウエイローラ
16、17、18 従動ギア
20 駆動モータ
21 電磁クラッチ
31〜44、50 ギア
51 弾性リング
52 ナイロンワッシャ
53 ウエーブワッシャ
54 スタッド
55 フレーム
100 駆動側ギア
101 回転方向
102 歯
103 歯の駆動側面
104 歯の反駆動側面
110 従動側ギア
111 回転方向
112 歯
113 歯の被動側面
114 歯の反被動側面
115 回転方向
120 バックラッシ
121 駆動面側に生じた隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動伝達要素にギアを用いた装置において、
従動部材または従動要素軸上のすべてのギアに駆動遮断部材を取付けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動遮断部材がワンウエイクラッチであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
駆動伝達要素にギアを用いた装置において、
末端の従動部材または従動要素軸上のギアに駆動負荷部材を取付けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
駆動伝達要素にギアを用いた装置において、
末端の従動部材または従動要素軸上のギアにさらに駆動下流側に従動ギアを設けその軸上に駆動負荷部材を取付けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動負荷部材がトルクリミッタ又はブレーキであることを特徴とする請求項3〜4の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−82282(P2006−82282A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267253(P2004−267253)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】