説明

画像形成装置

【課題】 簡単な構造で像担持体の周回駆動のための駆動力伝達面を増やすことで、駆動負荷を分散し、駆動負荷による像担持体の速度変動を軽減する。
【解決手段】 駆動ローラ14と同軸上に主プーリー46を取り付け、一方、特定従動ローラ16Bと同軸上に副プーリー48を設け、これらに平ベルト50を巻き掛け、駆動ローラ14の駆動力を特定従動ローラ16Bへも伝達することで、駆動負荷を分散することができ、感光体ベルト12の滑りを軽減することができる。このとき、プーリー−平ベルト間の動摩擦係数を駆動ローラー感光体ベルト間の動摩擦係数よりも低くし、かつ若干特定従動ローラ16Bの方を速く回転させるようにすると共に、速度差分はプーリー−平ベルト間のスベリで相殺させるため、安定した駆動ローラ14と特定従動ローラ16Bとによる駆動負荷軽減搬送が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用したプリンタ、複写機、ファクシミリなどの画像形成装置に関し、光ビームによる帯電露光によって形成される静電潜像を現像し顕像化されたトナー画像を像担持体から被転写部材へ転写する画像形成エンジン部を備え、所定のプリントシーケンスに従い画像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、像担持体として感光体ベルトが用いられたモノクロの画像形成装置では、前記感光体ベルトの速度変動が生じると、仕上がり画像に伸び縮みが発生し、当該画像に歪みが生じたり、バーコード等の情報を持った画像においては、情報が読み取れないという問題が生じる。
【0003】
一方、同一構成(感光体ベルト適用)における2色以上を重ねて仕上がり画像を形成するカラー画像形成装置では、感光体ベルトや転写ベルトの回転速度むらが発生するという、上記単色での画像の伸び縮み等の不具合に加え、各色間の色ずれが増加するといった致命的な問題をおこすことになる。
【0004】
ここで、感光体ベルトの速度変動は、駆動負荷が大きくなると発生する傾向にあり、カラー画像形成装置では、特に感光体ベルトの外周に現像器が複数台並べられている構造や、感光体ベルトの内外周側に、従動せずに(或いは、逆方向に回転しながら)摺接している部材等があると、さらに駆動負荷が増大する傾向となる。
【0005】
感光体ベルトは、上記駆動負荷を起因として、駆動源自体、例えばモータの周期的な回転駆動むらを発生させる場合と、感光体ベルトの内周面が巻き掛けられ、感光体ベルトの周回移動を案内する弾性部材で形成された駆動ローラ表面とが微小スリップして、不規則な回転むらを生じさせる場合がある。
【0006】
このような駆動むらを解消するために、特許文献1では、駆動系に慣性部材を設けるなどして、変動を相殺することが提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、潜像形成部の前後で感光体ベルトにたるみを設けて、他の負荷が伝わらないようにしている構成が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献3では、感光体ベルトの張り側と緩み側とで別々の衝撃緩衝用テンションローラを用いることが提案されている。
【特許文献1】特開平2−199464号公報
【特許文献2】特開平4−155352号公報
【特許文献3】特開平10−268595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術では、前述した微小スリップには効果がない。また、特許文献2では、たるみ量の制御が困難な上にカラー機であると、スペース上レイアウトが複雑となり、装置の大型化を余儀なくされる。
【0010】
さらに、特許文献3では、安定的に大きな負荷によるベルトスリップに対応することができない。
【0011】
本発明は上記事実を考慮し、簡単な構造で像担持体の周回駆動のための駆動力伝達面を増やすことで、駆動負荷を分散し、駆動負荷による像担持体の速度変動を軽減することができる画像形成装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、駆動源からの駆動力を受けて駆動する少なくとも1つの駆動ローラと、駆動力を持たない従動ローラとで構成された複数のローラに巻き掛けられ、予め定められた移動軌跡に沿って周回する無端ベルト状の像担持体を備え、前記像担持体の周回軌跡上の適宜位置において少なくとも帯電、露光、現像、転写の各処理を実行し、前記転写処理において被転写部材へ画像を転写する画像形成装置であって、前記駆動ローラと少なくとも1つの特定従動ローラとを所定の動摩擦係数の下で動摩擦連結することで、前記駆動ローラの駆動力で前記特定従動ローラを動摩擦駆動させる動摩擦連結手段を有することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、駆動ローラと少なくとも1つの特定従動ローラとを所定の動摩擦係数の下で動摩擦連結する。この結果、駆動ローラの駆動力で特定従動ローラを動摩擦駆動させる。すなわち、像担持体へ駆動力を伝える点が増加し、その分、駆動負荷も分散されるため、当該駆動負荷に起因する像担持体と駆動ローラとのスリップを軽減することができる。
【0014】
上記発明おいて、前記動摩擦連結手段が、前記駆動ローラと同軸に形成された駆動プーリーと、前記特定従動ローラと同軸に形成された従動プーリーと、前記駆動プーリーと前記従動プーリーとのそれぞれに巻き掛けられた非弾性部材で形成された平ベルトと、で構成され、前記従動プーリーと前記平ベルトとの動摩擦係数が、前記所定の動摩擦係数よりも低く設定されていることを特徴としている。
【0015】
動摩擦連結手段の構成としては、駆動ローラと同軸に形成された駆動プーリーと、前記特定従動ローラと同軸に形成された従動プーリーと、前記駆動プーリーと前記従動プーリーとのそれぞれに巻き掛けられた非弾性部材で形成された平ベルトと、を備えており、従動プーリーと平ベルトとの動摩擦係数を、前記所定の動摩擦係数よりも低く設定する。
【0016】
これは、駆動ローラと特定従動ローラとの回転速度を一定に維持することができる。
【0017】
また、本発明において、前記像担持体から加わる負荷を0とした場合での、前記駆動ローラの表面速度Vmainと、前記特定従動ローラの表面速度Vsubの比が、印字精度によって特定される下限値と、駆動負荷によって特定される上限値の範囲であることを特徴としている。
【0018】
さらに、前記VmainとVsubとの比が、(1)式の範囲であることを特徴とする。
【0019】
1.02≦(Vsub/Vmain)≦1.06・・・(1)
像担持体から加わる負荷を0とした場合、すなわち、駆動ローラと特定従動ローラとが無負荷で駆動するとき、駆動ローラの表面速度Vmainと、前記特定従動ローラの表面速度Vsubの比の範囲として、下限値は印字精度によって特定され、上限値は駆動負荷によって特定される。
【0020】
前記比が所定値(実験結果によるしきい値としては、Vsub/Vmain=1.02)よりも小さい場合は、駆動負荷があったときに駆動ローラと特定従動ローラとの速度安定性が悪く、像担持体の速度変動が発生する。一方、比が所定値(実験結果によるしきい値としては、Vsub/Vmain=1.06)よりも大きい場合には、駆動負荷があったときに特定従動ローラの速度安定までのタイムロスが発生し、迅速な速度安定制御が困難となる。
【0021】
そこで、前記比Vsub/Vmainを特定することで、最適なモードでの画像形成処理を実現することができる。
【0022】
また、本発明において、前記動摩擦係数の相関関係を、前記駆動ローラ又は特定従動ローラと前記像担持体との間の滑りトルクF1が、前記駆動ローラ又は特定従動ローラと前記平ベルトとの間の滑りトルクF2よりも大きくなるように設定することを特徴としている。
【0023】
動摩擦係数の相関関係を設定する具体的な手段として、駆動ローラ又は特定従動ローラと前記像担持体との間の滑りトルクF1を、前記駆動ローラ又は特定従動ローラと前記平ベルトとの間の滑りトルクF2よりも大きくする。この結果、目的とする動摩擦係数の相関関係とすることができる。
【0024】
さらに、本発明において、前記特定従動ローラは、前記駆動ローラに近接し、かつ下流側に設けられていることを特徴としている。
【0025】
特定従動ローラは、複数の従動ローラの中で、駆動ローラに最も近く、かつ下流側にあることで、駆動負荷の分散を最も効率的に行うことができる。また、この駆動ローラと特定従動ローラとの間に駆動負荷に起因する処理(例えば、転写処理)工程を配置することで、駆動負荷の分散を有効に利用することができる。
【0026】
また、本発明では、前記平ベルトへ所定のテンションをかけるテンション調整機構と、テンション調整機構部を制御して、前記駆動ローラが駆動中に前記平ベルトに所定のテンションをかけ、前記駆動ローラが非駆動中に前記平ベルトへのテンションを解除するテンション制御手段と、をさらに有することを特徴としている。
【0027】
さらに、前記テンション制御手段は、前記像担持体の駆動開始から所定の時間前記テンション調整機構部を制御して、前記平ベルトに所定のテンションをかけることを特徴としている。
【0028】
平ベルトには、テンション調整機構によるテンションをかけることができ、当該テンションは、テンション制御手段により、駆動ローラの駆動中のみにかけるようにする。この結果、平ベルトの寿命を延ばすことができる。
【0029】
さらに、像担持体の駆動開始から所定の時間という最も駆動負荷がかかり易いときのみとすることで、平ベルトの寿命をさらに延ばすことができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した如く本発明では、像担持体に対して、駆動ローラに加え特定従動ロールから像担持体へ駆動力を付与することで、簡単な構造で像担持体の周回駆動のための駆動力伝達面が増え、この結果、駆動負荷が分散されて、駆動負荷による像担持体の速度変動を軽減することができる。特定従動ローラは、駆動ローラが微小にスリップし始めようとすると、スリップの起因となる駆動負荷が特定従動ローラに移行し、スリップを回避することができる。
【0031】
従って、像担持体の速度が安定し、単色画像の伸縮、カラー画像(フルカラー画像を含む)の色ずれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(全体構成)
図1及び図2は、本実施の形態に係るモノクロプリンタのエンジン部10が示されている。
【0033】
このエンジン部10は、主構成として像担持体としての感光体ベルト12が1個の駆動ローラ14と複数(本実施の形態では、2個)の従動ローラ16A、16Bに巻き掛けられている。
【0034】
駆動ローラ14は、カップリング18(図2参照)を介して駆動源としてのモータ20(図3参照)の回転軸と連結され、この駆動源の駆動力で一定速度で回転するようになっている。
【0035】
この感光体ベルト12は、前記駆動ローラ14及び従動ローラ16A、16Bに案内支持されることで、前記駆動ローラ14からの駆動力を受け、所定の軌跡に沿って図1の矢印A方向に沿って、周回することが可能となっている。
【0036】
なお、駆動ローラ14、従動ローラ16A、16Bの表層面は弾性部材(ゴム)で被覆され、感光体ベルト12の内周面と接触している。感光体ベルト12の内周面は、PET(ポリエチレンテレフタレート)であり、前記ゴムとの動摩擦係数は高く、特に、駆動ローラ14と感光体ベルト12との駆動負荷によるスリップがほとんどない設計となっている。
【0037】
感光体ベルト12の前記周回軌跡の適宜位置には、前記図1の矢印A方向に沿って、帯電部22、露光部24、現像部26、除電部28、転写部30、クリーナ部32が配設されている。
【0038】
帯電部22は、画像形成処理の第1の工程であり、感光体ベルト12の略水平搬送領域に位置している。この帯電部22では、感光体ベルト12の表面(外周面)を一様に帯電する。
【0039】
この一様に帯電された感光体ベルト12が露光部24に至ると、プラテン24Aと共に感光体ベルト12を挟んで配置される光ビーム走査装置24Bから照射される光ビームを照射することで静電潜像を形成する。なお、本実施の形態では、光源としてLEDが適用され、このLEDが主走査方向に配列されており、当該LEDからの光をセルフォックレンズ等の光学系で集光し、画像データに基づいて点灯/消灯させる。
【0040】
静電潜像が形成された感光体ベルト12は、図1の左端に位置する従動ローラ16Aによって略反転した後、現像部26へ到達するようになっている。
【0041】
現像部26では、トナータンク26Aに貯留されているトナーを攪拌しながら感光体ベルト12の表面(外周面)を供給することで、感光体ベルト12上の前記静電潜像が顕像化される。なお、この現像部26の下流側近傍における感光体ベルト12の内周面には、除電部28が配置されており、感光体ベルト12の帯電状態をリセットする。
【0042】
顕像化された画像(以下、トナー像という)は、除電部28を通過すると、感光体ベルト12が前記駆動ローラ14によって略90°方向転換する位置に到達し、この位置から図1の縦向きとなる領域が転写部30となる。
【0043】
前記駆動ローラ14が配置された位置は、図1の右下部に配設されたガイド部材34並びに搬送ローラ36で構成された被転写部材である記録用紙38の搬送経路部40を構成している。
【0044】
記録用紙38は、搬送経路40に沿って、前記駆動ローラ14の配置位置から、前記縦方向に移動する感光体ベルト12を密着搬送されるようになっている。
【0045】
転写部30には、前記記録用紙38側(記録用紙38の画像転写面とは反対側の面に対向する側)に、転写チャージ部42と除電チャージ部44が設けられている。
【0046】
この転写部30において、前記感光体ベルト12に形成されたトナー像が記録用紙38に転写され、転写後の記録用紙38は、転写部30の搬送方向(縦方向)に沿って、そのまま搬送され、図示しない定着部を通過して、装置外へ排出される。
【0047】
一方、感光体ベルト12は、転写部30の終端(図1の右上端)に位置する従動ローラ16Bによって略90°方向転換され、前記帯電部22と露光部24が配設された略水平搬送領域へ至る。
【0048】
前記帯電部22の上流側には、クリーナ部32が配設され、このクリーナ部32のブラシ32Aにより、感光体ベルト12に残留しているトナーが掻き取られ、感光体ベルト12は1周することになる。
【0049】
(駆動負荷軽減構造)
ここで、本実施の形態では、前述したように、感光体ベルト12と駆動ローラ14との接触は、ゴムとPETであり、動摩擦係数が高いが、予測以上の駆動負荷(駆動開始時、現像部26でのトナー供給、転写部30での記録用紙38への転写等)がかかると、駆動負荷がこの駆動ローラ14と感光体ベルト12との接触面に集中し、スリップが発生することがあった。
【0050】
そこで、本実施の形態では、駆動伝達領域を拡大(分散)する構造を追加した。
【0051】
図2及び図3に示される如く、駆動ローラ14の軸線方向一端部(前記カップリング18が取り付けられた端部とは反対側の端部)には、主プーリー46が取り付けられている。主プーリー46は、少なくともその周面が平滑なアルミニウムで形成されている。
【0052】
一方、従動ローラ16Bの軸線方向一端部には、副プーリー48が取り付けられている。副プーリー48は、少なくともその周面が平滑なアルミニウムで形成されている。
【0053】
この主プーリー46と副プーリー48とには、無端の平ベルト50が巻き掛けられている。
【0054】
この結果、駆動ローラ14の駆動力が、主プーリー46、平ベルト50、副プーリー48を介して従動ローラ16Bに伝達され、この従動ローラ16Bも駆動ローラ14としての機能を有することになる(特定従動ローラとして確立するため、特定従動ローラ16Bという)。
【0055】
ここで、平ベルト50は、伸縮のない可撓性の合成樹脂製であり、主プーリー46と副プーリー48とに巻き掛けられて駆動力が伝達されるときの動摩擦係数は、前記駆動ローラ14と感光体ベルト12との動摩擦係数よりも低い。
【0056】
ここで、駆動ローラ14の外径(すなわち、感光体ベルト12が巻き掛けられている外径)と、特定従動ローラである従動ローラ16Bの外径(すなわち、感光体ベルト12が巻き掛けられている外径)とは同一である。
【0057】
一方、主プーリー46の外径(すなわち、平ベルト50が巻き掛けられている外径)Dmainと、副プーリー48の外径Dsubとを比較すると、Dmain>Dsubの関係となっている。
【0058】
この結果、主プーリー46から平ベルト50を介して副プーリー48が回転するとき、理論的には、主プーリー46よりも副プーリー48が速く回転することになる。
【0059】
しかし、平ベルト50と、主プーリー46及び副プーリー48とは、動摩擦係数が低いため、これらの間にスリップが発生し、速度差が相殺され、駆動ローラ14の回転速度Vmainと特定従動ローラ16Bの回転速度Vsubとが同一となる。
【0060】
結果として、駆動ローラ14と接触している感光体ベルト12の速度(線速度)v1と、特定従動ローラ16Bと接触している感光体ベルト12の速度(線速度)v2とは、ほぼ一致することになる。
【0061】
これにより、感光体ベルト12は、駆動ローラ14の駆動力と、特定従動ローラ16Bの駆動力で周回駆動することになり、駆動力の伝達位置を分散することで、駆動負荷による感光体ベルト12の速度むらの発生を軽減している。
【0062】
本実施の形態では、速度むらの軽減に最も有効である、上記主プーリー46の外径Dmainと、副プーリー48の外径Dsubとの差分が、比で表すと
1.02≦(Dmain/Dsub)≦1.06・・・(2)
の範囲であることが、実験的に確認されている(詳細後述)。
【0063】
これは、感光体ベルト12が無い状態(或いは、無負荷状態)での、前記駆動ローラ14の回転速度Vmainと、特定従動ローラ16Bの回転速度副Vsubに置き換えることができる。
【0064】
1.02≦(Vsub/Vmain)≦1.06・・・(3)
なお、(3)式は、特許請求の範囲の(1)式と同一である。
【0065】
図2に示される如く、平ベルト50には、テンションローラ52が接触している。テンションローラ52は、その回転軸の両端部が平ベルト50に対して接近離反するように案内され、その移動はテンション制御部54によって制御されるようになっている。
【0066】
平ベルト50は、前述したように伸縮がないため、所定のテンションをかけなければ、駆動ローラ14からの駆動力が特定従動ローラ16Bへ確実に伝わらない。このため、前記テンションローラ52を平ベルト50に押し付けることで、駆動ローラ14の駆動力を特定従動ローラ16Bへ伝達している。
【0067】
なお、テンション制御部54では、駆動ローラ14が駆動しているときに平ベルト50にテンションローラ52を押し付けてテンションをかけ、非駆動時に平ベルト50から離反させるようにしている。
【0068】
また、駆動負荷が所定以上かかる時期(例えば、駆動ローラ14の駆動開始時から所定時間等)のみにテンションローラ52を平ベルト50へ押し付けてテンションをかけるようにしてもよい。
【0069】
図4には、前記(2)式((1)式も同様)の関係を確立するための実験結果から得られた印字位置精度特性(図4(A))、駆動負荷特性(図4(B))が示されている。
【0070】
図4(A)に示される如く、印字位置精度は、画像形成装置毎に異なるが、例えば、±200μmが良否のボーダーライン(しきい値)とされ、前記Dmain/Dsub(=Vsub/Vmain)を0〜1.10程度まで適宜の分解能でそれぞれの印字位置精度σを得ている。この図4(A)に示される如く、印字位置精度からみた前記Dmain/Dsub(=Vsub/Vmain)の範囲は、1.02〜1.08(200μm以下)となる。
【0071】
一方、図4(B)に示される如く、駆動負荷は、駆動源であるモータの電流値から読み取ることができる。この電流値の適正値は、画像形成装置毎に異なるがある程度の良否を判別するボーダーライン(しきい値)を設定している。この図4(B)に示される如く、駆動負荷からみた前記Vsub/Vmainの範囲は、1.00〜1.06となる。
【0072】
これらの結果を総合することで、1.02≦Dmain/Dsub(=Vsub/Vmain)≦1.06が導出されることになる。
【0073】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0074】
まず、エンジン部10の画像形成動作について説明する。
【0075】
画像形成指示があると、モータを駆動させ、駆動ローラ14を回転させる。これにより、この駆動ローラ14に巻き掛けられている感光体ベルト12が図1の矢印A方向への周回駆動が開始される。
【0076】
ここで、予め定められた基準位置から、感光体ベルト12の先頭部(予め設定されている位置)が帯電部22を通過することで、感光体ベルト12の表面(外周面)は一様帯電される。
【0077】
一様帯電された感光体ベルト12は、露光部24へ送り出され、プラテン24Aに支持されながら、光走査装置24Bからの光ビームによって、静電潜像が形成される。
【0078】
静電潜像が形成された感光体ベルト12は、従動ローラ16Aによって略反転され、現像部26へと至る。
【0079】
現像部26では、トナーを攪拌しながら、感光体ベルト12の表面へと送り出すと、マイナス(或いはプラス)に帯電されたトナーがプラス(或いはマイナス)に帯電されている静電潜像引き付けられて顕像化され、トナー像が形成される。
【0080】
トナー像が形成された感光体ベルト12は、除電部28を通過し、転写部30の入り口、すなわち駆動ローラ14による90°方向転換位置へと至る。
【0081】
一方、この駆動ローラ14へは、搬送経路40を通って、前記トナー像が形成された位置との同期がとられた状態で、記録用紙38が搬送されてくる。
【0082】
この結果、駆動ローラ14に巻き掛けられ、略90°方向転換した感光体ベルト12の表面には、記録用紙38が密着され、当該密着状態で縦方向(図1の上方向)へ搬送される。
【0083】
この縦方向への搬送途中において、転写チャージ部42及び除電チャージ部44を通過することで、感光体ベルト12のトナー像が記録用紙38へ転写される。
【0084】
転写部30の終端位置には、特定従動ローラ16Bが配置され、感光体ベルト12は、この特定従動ローラ16Bに巻き掛けられて、略90°方向転換され、クリーナ部32で残留するトナーを掻き取った後、基準位置へ戻る。
【0085】
一方、記録用紙38は、前記特定従動ローラ16Bの位置から接線方向にそのまま直進し、図示しない定着部を介して、装置外部へ排出される。
【0086】
(感光体ベルト12の速度むら補正)
ここで、従来では、感光体ベルト12は、駆動ローラ14からのみ駆動力を受けている。感光体ベルト12と駆動ローラ14との接触は、ゴムとPETであり、動摩擦係数が高いが、必要以上の駆動負荷がかかると、この駆動負荷がこの駆動ローラ14と感光体ベルト12との接触面に集中し、スリップが発生することがあった。
【0087】
そこで、駆動ローラ14とは別、特定従動ローラ16Bからも感光体ベルト12へ駆動力を伝達する機能を持たせた。
【0088】
その構成は、上記構成のエンジン部10において、転写部30の入口に位置する駆動ローラ14には、同軸上に主プーリー46が取り付けられ、転写部30の出口に位置する特定従動ローラ16Bには、同軸上に副プーリー48が取り付けられ、これらに、平ベルト50が巻き掛けられることで実現した。
【0089】
主プーリー46及び副プーリー48は、少なくともその周面が平滑なアルミニウムで形成され、平ベルト50は、伸縮のない可撓性の合成樹脂製で形成されているため、主プーリー46と副プーリー48とに巻き掛けられて駆動力が伝達されるときの動摩擦係数は、前記駆動ローラ14と感光体ベルト12との動摩擦係数よりも低い。
【0090】
言い換えれば、主プーリー46による平ベルト50の搬送速度と、副プーリー48による平ベルト50の搬送速度とに差が生じたとき、意図的に滑りを生じさせる構造とした。
【0091】
駆動ローラ14の外径と、特定従動ローラである従動ローラ16Bの外径とを同一とし、主プーリー46の外径Dmainと、副プーリー48の外径DsubとにDmain>Dsubの関係を持たせ、主プーリー46から平ベルト50を介して副プーリー48が回転するとき、理論的には、主プーリー46よりも副プーリー48が速く回転するようにし、前述の如く、平ベルト50と、主プーリー46及び副プーリー48とをスリップさせ、速度差を相殺している。
【0092】
このため、駆動ローラ14の回転速度Vmainと特定従動ローラ16Bの回転速度Vsubとが同一となる。
【0093】
結果として、駆動ローラ14と接触している感光体ベルト12の速度(線速度)v1と、特定従動ローラ16Bと接触している感光体ベルト12の速度(線速度)v2とは、ほぼ一致することになり、感光体ベルト12は、駆動ローラ14の駆動力と、特定従動ローラ16Bの駆動力で周回駆動することになり、駆動力の伝達位置を分散することで、駆動負荷による感光体ベルト12の速度むらの発生を軽減することができる。
【0094】
すなわち、本実施の形態では、理論的には、駆動ローラ14と、特定従動ローラ16Bとが、別の駆動系によって駆動し、かつ同一速度で回転すればよいが、現実的には非常に困難であり、この同一速度での回転を実現するために、主プーリー46及び副プーリー48と、平ベルト50との滑りを利用したものである。
【0095】
これにより、駆動ローラ14と特定従動ローラ16Bとにかかる駆動負荷を、それぞれ1/2ずつとすることができ、駆動負荷による感光体ベルト12の速度むらを軽減することができる。
【0096】
ところで、主プーリー46及び副プーリー48と、平ベルト50との滑り、換言すれば、前記主プーリー46の外径Dmainと、副プーリー48の外径Dsubと比(Dmain/Dsub)は、ある程度の範囲が好ましいことが実験結果で判明した。
【0097】
すなわち、比が小さいと、目的とする印字位置精度がとれない場合がある、これは、比が小さいと、部品精度上、速度差の逆転が発生し、駆動ローラ14側で平ベルト50とのスリップが発生して、かえって負荷を冗長させる場合があると考えられる。
【0098】
一方、比が大きいと、特定従動ローラ16Bと平ベルト50とのスリップ量が増え、かえって、駆動ローラ14に負担がかかってしまうことが考えられる。
【0099】
そこで、本実施の形態では、速度むらの軽減に最も有効である、上記主プーリー46の外径Dmainと、副プーリー48の外径Dsubとの差分(比)を
1.02≦(Dmain/Dsub)≦1.06・・・(2)
の範囲に設定した。
【0100】
駆動ローラ14の回転速度Vmainと、特定従動ローラ16Bの回転速度副Vsubに置き換えると、
1.02≦(Vsub/Vmain)≦1.06・・・(3)
となる。
【0101】
図4(A)は、前記比Dmain/Dsub(=Vsub/Vmain)の下限値を設定するための特性図であり、縦軸を印字位置精度としてる。印字精度は、画像形成装置毎に異なるが、ここでは、±200μmを良否のボーダーライン(しきい値)とし、前記比の良否を判定した。この結果、前記比Dmain/Dsub(=Vsub/Vmain)を1.02〜1.08とすれば、印字精度をしきい値の200μm以下とすることができる。
【0102】
図4(B)は、前記比Dmain/Dsub(=Vsub/Vmain)の上限値を設定するための特性図であり、縦軸をモータ電流値としている。すなわち、駆動負荷は、駆動源であるモータの電流値から読み取ることができる。
【0103】
この電流値の適正値は、画像形成装置毎に異なるがある程度の良否を判別するボーダーライン(しきい値)を設定し、前記比の良否を判定した。この結果、前記Dmain/Dsub(=Vsub/Vmain)を1.00〜1.06とすれば、電流値をしきい値以下とすることができる。
【0104】
この図4(A)並びに(B)の結果に基づいて、1.02≦Dmain/Dsub(=Vsub/Vmain)≦1.06とすれば、駆動負荷を軽減し、かつ印字精度を向上することができる。
【0105】
以上説明したように本実施の形態では、駆動ローラ14と同軸上に主プーリー46を取り付け、一方、特定従動ローラ16Bと同軸上に副プーリー48を設け、これらに平ベルト50を巻き掛け、駆動ローラ14の駆動力を特定従動ローラ16Bへも伝達することで、駆動負荷を分散することができ、感光体ベルト12の滑りを軽減することができる。このとき、プーリー−平ベルト間の動摩擦係数を駆動ローラー感光体ベルト間の動摩擦係数よりも低くし、かつ若干特定従動ローラ16Bの方を速く回転させるようにすると共に、速度差分はプーリー−平ベルト間のスベリで相殺させるため、安定した駆動ローラ14と特定従動ローラ16Bとによる駆動負荷軽減搬送が実現できる。
【0106】
なお、本実施の形態では、特定従動ローラ16Bを駆動ローラ14を上流側側近の従動ローラ16Bとしたが、従動ローラ16Aを適用してもよく、別途従動ローラを追加してもよい。
【0107】
また、モータ→駆動ローラ14(主プーリー46)→平ベルト50→特定従動ローラ16B(副プーリー48)という直列的な系列で駆動力を伝達したが、平ベルト50をモータの回転軸と、主プーリー46及び副プーリー48との3点巻き掛けとして、主プーリー46と副プーリー48とへ直接駆動力を伝達するようにしてもよい(この場合、主従の関係はなくなる)。
【0108】
さらに、本実施の形態では、主プーリー46及び副プーリー48と平ベルト50とのスリップを利用して速度差を相殺するようにしたが、市販のワンウェイクラッチ内蔵の軸受等を用いて、速度差を相殺する構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態に係る画像形成装置のエンジン部の概略図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】転写部近傍の拡大図であり、本発明の駆動負荷軽減構造を詳細に示した正面図である。
【図4】(A)はプーリー径比−印字精度特性図、(B)プーリー径比−駆動負荷(モータ電流値)特性図である。回転制御部の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0110】
10 エンジン部
12 感光体ベルト
14 の駆動ローラ
16A、16B 従動ローラ
(16B) 特定従動ローラ
18 カップリング
20 モータ
22 帯電部
24 露光部
26 現像部
28 除電部
30 転写部
32 クリーナ部
34 ガイド部材
36 搬送ローラ
38 記録用紙
40 搬送経路部
42 転写チャージ部
44 除電チャージ部
46 主プーリー(駆動プーリー)
48 副プーリー(従動プーリー)
50 平ベルト(ベルト)
52 テンションローラ
54 テンション制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力を受けて駆動する少なくとも1つの駆動ローラと、駆動力を持たない従動ローラとで構成された複数のローラに巻き掛けられ、予め定められた移動軌跡に沿って周回する無端ベルト状の像担持体を備え、前記像担持体の周回軌跡上の適宜位置において少なくとも帯電、露光、現像、転写の各処理を実行し、前記転写処理において被転写部材へ画像を転写する画像形成装置であって、
前記駆動ローラと少なくとも1つの特定従動ローラとを所定の動摩擦係数の下で動摩擦連結することで、前記駆動ローラの駆動力で前記特定従動ローラを動摩擦駆動させる動摩擦連結手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記動摩擦連結手段が、前記駆動ローラと同軸に形成された駆動プーリーと、前記特定従動ローラと同軸に形成された従動プーリーと、前記駆動プーリーと前記従動プーリーとのそれぞれに巻き掛けられた非弾性部材で形成された平ベルトと、で構成され、前記従動プーリーと前記平ベルトとの動摩擦係数が、前記所定の動摩擦係数よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体から加わる負荷を0とした場合での、前記駆動ローラの表面速度Vmainと、前記特定従動ローラの表面速度Vsubの比が、印字精度によって特定される下限値と、駆動負荷によって特定される上限値の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記VmainとVsubとの比が、(1)式の範囲であることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
1.02≦(Vsub/Vmain)≦1.06・・・(1)
【請求項5】
前記動摩擦係数の相関関係を、前記駆動ローラ又は特定従動ローラと前記像担持体との間の滑りトルクF1が、前記駆動ローラ又は特定従動ローラと前記平ベルトとの間の滑りトルクF2よりも大きくなるように設定することを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記特定従動ローラは、前記駆動ローラに近接し、かつ下流側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記平ベルトへ所定のテンションをかけるテンション調整機構と、
テンション調整機構部を制御して、前記駆動ローラが駆動中に前記平ベルトに所定のテンションをかけ、前記駆動ローラが非駆動中に前記平ベルトへのテンションを解除するテンション制御手段と、をさらに有することを特徴とする請求項2乃至請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記テンション制御手段は、前記像担持体の駆動開始から所定の時間前記テンション調整機構部を制御して、前記平ベルトに所定のテンションをかけることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−52246(P2007−52246A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237446(P2005−237446)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】