説明

画像形成装置

【課題】クリーニングブレードの寿命および信頼性を確保したまま,放電ノイズを確実に抑制した画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成ユニット1Kは,感光体ドラム2を有し,その周囲には,その回転方向に沿って,帯電装置3,現像装置4,転写装置5,イレース装置70,クリーニング装置6が順次配置されている。イレース装置70は,感光体ドラム2上の転写装置5とクリーニング装置6との間の表面領域を照射する。さらに,感光体ドラム2の表層にはシリカ微粒子が分散され,耐久初期段階においては表面が微小凹凸をなしている。また,感光体ドラム2には,トナーに添加された潤滑剤が付与される。クリーニング装置6は,誘電体のクリーニングブレード62と,導体のブレードホルダ63とを備えている。さらには,ブレードホルダ63は接地されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,ブレード方式のクリーニング装置を備え,像担持体の表面上に潤滑剤を保持する微粒子を付与する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に利用されるクリーニング装置には,クリーニングブレードを像担持体に当接させ,像担持体上のトナーを掻き取るブレード方式が広く採用されている(例えば,特許文献1,特許文献2)。クリーニングブレードによって転写後に像担持体上に残留したトナー(以下,「転写残トナー」とする)を掻き取る場合,クリーニングブレードと像担持体(例えば,感光体ドラム)との摩擦力が問題となる。すなわち,この摩擦力が高いと,ブレードの磨耗,像担持体表面の膜削れ等を引き起こし,互いの寿命を短縮させる原因となる。
【0003】
そこで,ブレード方式のクリーニング装置と併用して,像担持体上に潤滑剤を付与する機構を設けることが行われている。クリーニングブレードの接触箇所に潤滑剤による潤滑層が形成されることによって像担持体表面の摩擦力が下がり,前述の問題が解決される。また,潤滑剤を付与する特別な装置を設置することなく,トナーに外添剤として潤滑剤を混合することにより,クリーニングブレードと像担持体との接触箇所に潤滑剤を供給する画像形成装置が提案されている。トナーに添加することで専用の潤滑剤付与装置を設ける必要がなく,省スペース化に有利になる。
【0004】
しかし,像担持体上に付与された潤滑剤は,像担持体上に強固に保持されているわけではない。そのため,クリーニングブレードのエッジ部で滞留した転写残トナーに再付着し,廃トナーボックスへと持ち去れてしまう。そのため,安定したクリーニング性を損ねるとともに,クリーニングブレードおよび像担持体の減耗が促進されてしまう。このことに鑑みて,像担持体の電荷輸送層,もしくは,別途に設けたオーバコート層等にシリカ等の無機微粒子を分散させ,像担持体表面に凹凸を設ける。そして,その凹凸によって潤滑剤を滞留させる。このように表層の凹凸にて潤滑剤を保持することで,像担持体表面の摩擦係数の低減が確実になる。
【特許文献1】特開2003−208067号公報
【特許文献2】特開2000−75767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,表層にシリカ微粒子を分散させた像担持体を利用する画像形成装置には,次のような問題があった。すなわち,潤滑剤が像担持体の表面を被覆するまでの間に,シリカ微粒子とクリーニングブレード(主としてウレタンゴムを使用)が直接接触する期間が生じる。このとき,シリカ微粒子は負極性に,ウレタンゴムは正極性に摩擦帯電する。この摩擦帯電が続くと,クリーニングブレードのエッジ部と像担持体の表面との間で強い電界が形成され,像担持体とクリーニングブレードとの間に放電が発生する(図6参照)。像担持体上の放電部位は,周囲と比較すると正極側であるため,この部位がエッジ部に到達した時,負極性の転写残トナーが現像されてトナー像となる。前述のように,この放電は,像担持体表面の潤滑剤が少ないときに発生するので,クリーニング性は元来良好ではなく,形成されたトナー像の一部はクリーニングブレードをすり抜けて画像ノイズ(以下,「放電ノイズ」とする)となってしまう。
【0006】
また,近年,画像形成プロセスの高速化が要求されており,同じ印字パターンが続く(印字率が高い部分が連続して存在する)ジョブを実行すると,像担持体表面が潤滑剤によって被覆された耐久中であっても,部分的に像担持体上の潤滑剤が無くなることがある。その部分においてシリカ微粒子とゴムブレードとが直接的に接触することになり,摩擦帯電が促進される。
【0007】
また,像担持体の表面は,1次転写時の正極性バイアスによって除電される。そのため,通常,表面電位の絶対値は小さい。従って,クリーニングブレードが摩擦帯電したとしても,放電ノイズはそれほど頻繁には発生しない。しかし,1次転写後であっても像担持体の表面電位の絶対値が大きいままであることがあり,その際に放電ノイズが顕著に発生する。具体的には,次の2つの状況で,像担持体の表面電位の絶対値が大きい状態のままクリーニングブレードのエッジ部を通過することになる。
【0008】
1つめの状況として,カラー化および高速化に伴って,タンデムプロセスが実用化されている。このタンデムプロセスでは,中間転写体の回転方向の下流に位置する像担持体にてトナー像を転写する際に,中間転写体上に上流側で転写されたトナー像が既に重ね合わせられている。このとき,下流側のトナー像が転写される際も転写バイアスが印加されるが,すでにトナー像が重ね合わせられている部分の抵抗が背景部よりも大きく,当該部分に転写電流があまり流れない。そのため,像担持体の表面電位は,帯電された状態に近いまま残り,負極性で絶対値が大きい状態になる。
【0009】
2つめの状況として,中間転写体にトナー像を転写するシステムにおいて,2次転写ローラへのトナー付着を抑制するため,プリント間(像間)で1次転写出力をオフする対策が行われる。このときにも転写電流が像担持体に流れない。そのため,像担持体の表面電位は,帯電された状態のまま残り,負極性で絶対値が大きい状態になる。
【0010】
このように,像担持体の表面電位が絶対値が大きい状態になり,かつ潤滑剤が十分に供給されずにクリーニングブレードが長期に摩擦帯電されると,前述の放電ノイズが顕著になる。
【0011】
なお,特許文献1に開示された画像形成装置のように,露光光をクリーニングブレードの上流側に照射して像担持体表面を除電し,像担持体上の電位を均一化することで類似の画像ノイズを低減することが提案されている。しかし,特許文献1に開示された画像形成装置は,光源がクリーニングブレードの下流側に位置し,クリーニングブレード越しの露光となるため,ブレード裏面のトナー汚れなどの影響を受け易い。そのため,安定した除電効果が期待できない。また,上流のトナーパターンに接した部位は逆転写トナーが存在し,その上から露光しても不十分な露光となる。一方,クリーニングブレードに蓄積された正電荷は露光によって除電できない。すなわち,像担持体とクリーニングブレードとの間の電界を露光のみで弱めるには限界があり,放電ノイズの抑制は十分でない。
【0012】
また,特許文献2に開示された画像形成装置のように,クリーニング手段を接地することで転写残トナーを除電し,クリーニング性能を長期にわたって維持することが提案されている。しかし,特許文献2に開示された画像形成装置の効果を発揮させるには,導電性のクリーニング部材が必要となる。一般的に導電性微粒子をクリーニング部材に添加したり,表面に導電性の皮膜を形成すると,クリーニング部材の機械的強度を損ねる。その結果,長寿命化や高信頼性の達成には不利である。
【0013】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を少なくとも1つ解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,クリーニングブレードの寿命および信頼性を確保したまま,放電ノイズを確実に抑制した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題の解決を目的としてなされた画像形成装置は,先端面を像担持体に当接する誘電体のブレード部材と,当該ブレード部材を保持する導体のホルダ部材とを有し,像担持体上に付着するトナーを除去するクリーニング装置と,像担持体に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写装置とを備え,像担持体の表層にブレード部材とは摩擦帯電極性が逆極性の微粒子が分散され,像担持体の表面に潤滑剤を付与する画像形成装置であって,像担持体の,転写装置よりも回転方向の下流かつクリーニング装置よりも回転方向の上流に位置する表面領域を除電する除電装置を備え,ホルダ部材が接地されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の画像形成装置は,誘電体のブレード部材を使用することから,導体のブレード部材と比較して機械的強度が高い。そのため,高信頼性を有し,長寿命化に適する。また,像担持体の表層には,クリーニング装置のブレード部材(例えば正極性のウレタン)とは逆極性の微粒子(例えば,負極性のシリカ)が分散されており,当該微粒子とブレード部材との間で摩擦帯電が生じる。すなわち,誘電体のブレード部材が分極し,ブレード部材のうち,ホルダ部材との接合部と先端部との間で電位差が生じる。本発明の画像形成装置は,ブレード部材を保持するホルダ部材が接地されており,摩擦帯電が生じたとしてもブレード部材内の電位差によってブレード部材内で放電が随時起こり,ブレード部材に正電荷が溜まり難い。すなわち,クリーニング装置に,先端部に溜まった電荷が解消される回路が形成される。
【0016】
さらに本発明の画像形成装置は,除電装置によって,像担持体の,転写装置よりも回転方向の下流かつクリーニング装置よりも回転方向の上流に位置する表面領域を除電している。これにより,ブレード部材に達する前に,像担持体の表面電位の絶対値が低くなり,ブレード部材との電位差が小さくなる。
【0017】
このように,クリーニング装置前の除電とクリーニング装置の接地とを組み合わせることで,両方の効果がそのまま併合され,像担持体の表面とブレード部材のエッジ部との間の電界を弱めることができる。これにより,確実に両者間の放電が抑制される。
【0018】
また,除電装置は,像担持体の表面を露光するイレーサ光を発し,当該イレーサ光は,転写装置よりも回転方向の下流かつクリーニング装置よりも回転方向の上流に位置する領域内を通って像担持体の表面に照射されることとするとよりよい。すなわち,像担持体表面を除電する手段として,転写部とクリーニングブレードとの間の位置にコロナ放電器や導電ローラあるいは導電ブラシ等の接触式帯電器を設置し,像担持体の表面電位を正極性側に調整することも考えられる。しかし,コロナ放電器は,オゾンを発生させることから排気機構が別途に必要である。また,接触式の帯電器は,像担持体表面を傷つけたり,自身の汚れの問題があり,長寿命化や信頼性に不安が残る。また,両者とも電源確保のためのスペースも必要であり,コンパクト化を妨げる。よって,露光による除電を行うことで,省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,クリーニングブレードの寿命および信頼性を確保したまま,放電ノイズを確実に抑制した画像形成装置が提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,本発明にかかる画像形成装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式のプリンタのクリーニング装置に本発明を適用したものである。
【0021】
本形態の画像形成装置は,タンデム方式のフルカラープリンタであり,図1に示すように並列に配置された4つの画像形成ユニットを有するものである。具体的に,本形態のカラープリンタ100は,4色の画像形成ユニット1K,1C,1M,1Yを有している。また,その他に露光装置7,中間転写ベルト8,2次転写ローラ50,定着装置9等を有している。各画像形成ユニットは,中間転写ベルト8上に各色の画像を形成するものである。各画像形成ユニットは,画像形成ユニット1Kがブラック(K),画像形成ユニット1Cがシアン(C),画像形成ユニット1Mがマゼンタ(M),画像形成ユニット1Yがイエロー(Y)の各色に対応し,中間転写ベルト8の回転方向(図1中の矢印方向)の上流側から1Y,1M,1C,1Kの順に配置されている。なお,各画像形成ユニットの配置は図1の順序に限定されるものではない。
【0022】
また,画像形成ユニット1Kは,図2に示すように,回転ドラム型の電子写真感光体であり,負帯電性の有機光導電体(OPC)である感光体ドラム2を有している。感光体ドラム2は,図2中の矢印方向に一定の速度(本形態では240mm/s)で回転するようになっている。さらに,感光体ドラム2の表層にはシリカ微粒子が分散され,耐久初期段階においては表面が微小凹凸をなしている。
【0023】
また,感光体ドラム2の周囲には,その回転方向に沿って,帯電装置3,現像装置4,転写装置5,イレース装置70,クリーニング装置6が順次配置されている。なお,帯電装置3と現像装置4との間には,潜像が形成される露光エリアが設けられている。その他の画像形成ユニットについても同様の構成となっている。
【0024】
帯電装置3は,感光体ドラム2の表面を均一に帯電させるものである。本形態では,感光体ドラム2の表面を−600Vに一様に帯電処理する。帯電装置3としては,コロナ放電により帯電させる非接触方式のコロナ帯電装置の他,導電性の接触帯電部材を感光体ドラム2の表面に接触させて帯電させる接触方式の帯電装置が適用可能である。本形態では,非接触方式のコロナ帯電装置を適用する。
【0025】
現像装置4は,感光体ドラム2上の静電潜像を現像し,トナー像を形成するものである。本形態の現像装置4は,現像剤担持体である現像ローラを感光体ドラム2に接触させない非接触型であるが,接触型であってもよい。また,本形態の現像装置4の現像方式は,キャリアを含む2成分現像方式であり,重合法で製造した負帯電性トナーを使用する。また,トナーに対して,外添剤となるステアリン酸亜鉛の添加量が0.15重量%で処理されている。なお,現像方式,トナーおよび外添剤は本形態に限るものではない。例えば,現像方式はキャリアを含まない1成分現像方式であってもよいし,トナーは重合法によらなくてもよい。また,外添剤は,後述するクリーニングブレードに対する潤滑剤として機能するものであればよく,脂肪酸や脂肪酸金属塩が適用可能である。
【0026】
転写装置5は,感光体ドラム2上に形成されたトナー像を中間転写ベルト8上に転写する。本形態では,23μAで定電流制御された転写バイアスが印加される。ただし,プリントとプリントとの間(像間)は,2次転写ローラ50の汚染を抑制するために出力がオフされる。
【0027】
イレース装置70は,感光体ドラム2の表面を均一に露光し,感光体ドラム2の表面を除電して感光体ドラム2の表面電位を均すものである。本形態では,レーザダイオードによって感光体ドラム2上の転写装置5とクリーニング装置6との間の領域を照射する。発光手段は,レーザダイオードに限るものではなく,照射領域を限定したランプであってもよい。なお,本形態では,各画像形成ユニットにイレース装置70を設けているが,これに限るものではない。すなわち,複数の発光手段を備えたイレース装置を1台設置し,イレース光を各画像形成ユニットに分配するとしてもよい。
【0028】
クリーニング装置6は,感光体ドラム2に当接して転写残トナーや微粉体等を感光体ドラム2から除去するクリーニングブレード62と,クリーニングブレード62を保持するブレードホルダ63とを備えている。クリーニングブレード62は,その先端面のエッジ部が感光体ドラム2に当接している。クリーニングブレード62は誘電体であり,その材質としてはウレタンゴムが適用可能である。また,ブレードホルダ63は,導体の板金であり,例えば鉄やステンレス,アルミニウムなどの金属が適用可能である。さらには,ブレードホルダ63は接地されている。
【0029】
続いて,本形態のカラープリンタ100の画像形成動作について説明する。まず,帯電装置3の帯電バイアスにより,感光体ドラム2の表面が−600Vに帯電される。次に,露光エリアにて1ページ目の潜像が形成される。
【0030】
次に,現像装置4により,負帯電性のトナーによる現像が行われ,感光体ドラム2上に1ページ目のトナー像が形成される。次に,転写装置5により,1ページ目のトナー像が中間転写ベルト8上に転写される。すなわち,感光体ドラム2上のトナーは,転写装置5のプラスバイアスにより中間転写ベルト8に転写される。このとき,一部のトナーは,転写されずに感光体ドラム2上に残留し転写残トナーとなる。次に,イレーサ装置70により,感光体ドラム2の表面が除電される。そして,クリーニング装置6により,転写残トナーが掻き取られて回収される。
【0031】
このような動作を画像形成ユニットごとに繰り返し,中間転写ベルト8上にそれぞれの色のトナー画像を重ね合わせる。そして,4色のトナー像が重ね合わせられることにより,中間転写ベルト8上にカラー画像が形成される。このカラー画像が2次転写ローラ50にて記録紙に転写される。そして,その記録紙が定着装置9を介して排出トレイに出力される。
【0032】
続いて,クリーニングブレード62の放電ノイズ抑制作用について詳説する。本形態のカラープリンタ100では,像間での1次転写出力のオフや多層トナー像上への1次転写等によって感光体ドラム2の表面電位の絶対値が高い状態となる。また,耐久初期段階では感光体ドラム2の表面にシリカ微粒子が露出しており,クリーニングブレード62が摺擦することでクリーニングブレード62の先端部が正極性に摩擦帯電する。そのため,クリーニングブレード62の先端面と感光体ドラム2の表面との間で強い電界が形成され,放電が生じることになる。そこで,本形態のカラープリンタ100では,感光体ドラム2の表面とクリーニングブレード62のエッジ部との間の電界を弱めるために2つの対策が取られている。
【0033】
1つめ(第1の手段)は,イレーサ装置70により,感光体ドラム2の,転写装置5よりも回転方向の下流かつクリーニング装置6よりも回転方向の上流に位置する表面領域を露光し,感光体ドラム2の当該表面領域を除電する。イレーサ装置70は,プリント中および像間に関わらず,ジョブの開始から終了までイレーサ光の照射を続ける。
【0034】
具体的に,図3〜図5は,画像形成ユニット1Kの感光体ドラム2の表面電位の履歴を示している。図3は,1層のトナー像(シアン層)が中間転写ベルト8上に存在する場合を,図4は,2層のトナー像(シアン層+マゼンタ層)が中間転写ベルト8上に存在する場合を,図5は,像間の場合を,それぞれ示している。
【0035】
トナー像が重ね合わせられていない(図3),あるいはトナー像が存在しない場合は,1次転写によって感光体ドラム2の表面が除電され,その表面電位の絶対値が200V以上小さくなる。一方,トナー像が重ね合わせられている場合(図4)は,1次転写によって十分に除電されず,帯電された状態に近い電位となる。また,像間の場合(図5)に至っては除電されない。そのため,感光体ドラム2の表面電位が負極性で絶対値が大きい状態となる。
【0036】
そこで,クリーニングブレード62に達する前に感光体ドラム2の表面を除電し,感光体ドラム2の表面電位の負極性での絶対値を小さくする。イレーサ装置70によって,感光体ドラム2の表面電位は,転写残トナーや逆転写トナーが残る部分では−70V〜−150Vに,像間では−50V〜−80Vに,それぞれ調節される。つまり,感光体ドラム2の表面とクリーニングブレード62のエッジ部との間の電界のうち,負極側を弱めることができる。
【0037】
2つめ(第2の手段)は,クリーニングブレード62を保持するブレードホルダ63を接地する。すなわち,クリーニングブレード62と感光体ドラム2表面のシリカ微粒子が帯電摩擦すると,クリーニングブレード62は誘電体であることから内部が誘電分極し,ブレードホルダ63から逆電荷が誘起される。そのため,クリーニングブレード62のうち,ブレードホルダ63との接合部と先端部との間で電位差が生じる。
【0038】
図6に示すようにブレードホルダ63が電気的にフローティング状態の場合,クリーニングブレード62とブレードホルダ63との間で充放電が生じ難い。結果として,気中放電か感光体ドラム2への放電によって電荷を放出することになる。
【0039】
一方,図7に示すようにブレードホルダ63が接地されている場合,クリーニングブレード62内での電位差による放電が随時生じる。すなわち,クリーニングブレード62のエッジ部で摩擦帯電したとしても,正電荷が蓄積されない。つまり,感光体ドラム2の表面とクリーニングブレード62のエッジ部との間の電界のうち,正極側を弱めることができる。
【0040】
なお,絶縁性のクリーニングブレード62を保持するブレードホルダ63を接地することで,クリーニングブレード62に蓄積される正電荷の上限は決まるが,シリカ微粒子を表面に塗された感光体ドラム2との組み合わせでは,正電荷の蓄積量が十分に大きい。そのため,クリーニングブレード62の接地のみでは,感光体ドラム2とクリーニングブレード62との間の電界を弱めるには自ずから限界がある。また,イレーサ装置70による除電では,クリーニングブレード62に蓄積した正電荷を除電できない。すなわち,露光のみでも電界を弱めるには限界がある。すなわち,一方の手段のみでは,放電ノイズの抑制は十分でない。
【0041】
従って,第1の手段と第2の手段とを併用して感光体ドラム2の表面とクリーニングブレード62のエッジ部との間の電界を弱める。これにより,両者間の電界が負極側(第1の手段)からと,正極側(第2の手段)からと両方から弱められ,確実に両者間の放電が抑制される。
【0042】
[実施の形態の評価]
続いて,本形態のカラープリンタ100の評価結果について説明する。本評価では,上流色のトナー像が中間転写ベルト上に存在するK色の画像形成ユニット1Kにおいて,イレース装置70のオン(ON)/オフ(OFF)と,ブレードホルダ63のグラウンド(GND)/フロート(FLT)の組み合わせについて実験を行った。
【0043】
本実験では,図8に示すようなテストパターンをA3縦通紙で印字した。テストパターンは,シアン帯(シアン1層)パターンとブルー帯(シアン1層とマゼンタ1層)パターンとをそれぞれ有し(両パターンとも220mm×30mm),さらにブラック文字による文字パターン(印字率2.5%)を有している。
【0044】
本評価では,初期から3000枚目までの耐久を行い放電ノイズの発生具合を評価した。放電ノイズは,シリカ微粒子が潤滑剤に覆われるまでの間に発生する。図9は,耐久印字評価を行った際の静止摩擦係数の耐久履歴を示している。本評価は,摩擦計(「HEIDON・ポータブル摩擦計ミューズTYPE94i−II」(新東科学株式会社製))のプローブに綿100%のコットンフランネルを貼付して感光体ドラムの静摩擦係数を測定している。図9に示したように,初期から750枚目までは摩擦係数が上昇傾向にある。この区間では,製造上,感光体ドラムの表面に存在するシリコンオイルがなくなっていくためである。そして,750枚目以降3000枚目までの間は摩擦係数が徐々に低下していく。この区間では潤滑剤となるステアリン酸亜鉛が少しずつ感光体ドラムの表面に馴染む。この区間でシリカ微粒子がウレタンブレードと摺接し,放電ノイズが頻発することになる。そのため,本評価では,3000枚目までの出力画像に着目した。なお,3000枚目以降は,潤滑剤の供給が安定し,摩擦係数の変動は殆どない。そして,シリカ微粒子が潤滑剤に覆われるため,放電ノイズは終息する。
【0045】
結果を表1に示す。表1中,「○」はノイズが確認できないレベル,「△」は軽微の発生であり許容範囲内のレベル,「×」は許容できないレベル,「××」は大量に発生しているレベルを意味している。なお,判定はいずれも目視で行っている。
【表1】

【0046】
表1に示すように,本実施例(実験番号1)では,感光体ドラムのいずれの確認部でも放電ノイズの発生は確認できなかった。一方,従来の形態(実験番号4)では,感光体ドラムのどの確認部でも放電ノイズが発生し,さらにその放電ノイズは許容し難い量となった。また,比較例(実験番号2(第1の手段のみ),実験番号3(第2の手段のみ))では従来の形態との比較では改善は見られたものの,放電ノイズを許容できる範囲内までに抑えることはできなかった。すなわち,本評価結果が示すように,第1の手段および第2の手段のいずれか一方だけではなく,両手段を組み合わせることで確実に放電ノイズを抑制することができることがわかった。
【0047】
以上詳細に説明したように本形態のカラープリンタ100では,ブレードホルダ63が接地されており,クリーニングブレード62内の電位差によってクリーニングブレード62内で放電が随時起こり,先端部に溜まった電荷が解消される回路が形成される。つまり,クリーニングブレード62に正電荷が溜まり難くなる。さらに本形態のカラープリンタ100では,イレーサ装置70によって,感光体ドラム2の,転写装置5よりも回転方向の下流かつクリーニング装置6よりも回転方向の上流に位置する表面領域を除電している。これにより,クリーニングブレード62に達する前に,感光体ドラム2の表面電位の絶対値が低くなり,クリーニングブレード62との電位差が小さくなる。
【0048】
このように,クリーニング装置6前の除電とクリーニング装置6の接地とを組み合わせることで,両方の効果がそのまま併合され,感光体ドラム2の表面とクリーニングブレード62のエッジ部との間の電界を弱めることができる。これにより,確実に両者間の放電が抑制される。また,誘電体のクリーニングブレード62を使用することから,導体のブレード部材と比較して機械的強度が高い。そのため,高信頼性を有し,長寿命化に適する。よって,クリーニングブレードの寿命および信頼性を確保したまま,放電ノイズを確実に抑制した画像形成装置が実現している。
【0049】
また,本形態のカラープリンタ100は,露光により感光体ドラム2の表面を除電しており,接触式の除電部材を利用するものと比較して省スペースである。また,露光光が転写装置5よりも回転方向の下流かつクリーニング装置6よりも回転方向の上流に位置する領域内を通って感光体ドラム2上に入射する。つまり,クリーニングブレード62越しでの照射ではなく,直接的に感光体ドラムを照射する。よって,クリーニングブレード62の裏面のトナー等の影響を受けることなく,安定した除電が可能である。
【0050】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置としては,プリンタ,複写機,スキャナ,FAX等であって電子写真方式にて画像を形成するものであれば適用可能である。また,カラー画像を形成するものであってもモノクロ画像専用のものであってもよい。また,タンデム方式であっても4サイクル方式であってもよい。また,2次転写方式であっても直接転写方式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態にかかるカラープリンタの構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態にかかる画像形成ユニットの構成を示す概略図である。
【図3】感光体の表面電位の履歴(シアン層有り)を示す図である。
【図4】感光体の表面電位の履歴(シアン層およびマゼンタ層有り)を示す図である。
【図5】感光体の表面電位の履歴(像間)を示す図である。
【図6】クリーニングブレードの分極の概念(ブレードホルダがフロート)を示す図である。
【図7】クリーニングブレードの分極の概念(ブレードホルダがグラウンド)を示す図である。
【図8】実験で使用したテストパターンを示す図である。
【図9】実施の形態にかかるカラープリンタの静止摩擦係数の耐久履歴を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1K 画像形成ユニット
2 感光体ドラム(像担持体)
3 帯電装置
4 現像装置
6 クリーニング装置
62 クリーニングブレード(ブレード部材)
63 ブレードホルダ(ホルダ部材)
70 イレーサ装置(除電装置)
100 カラープリンタ(画像形成装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面を像担持体に当接する誘電体のブレード部材と,前記ブレード部材を保持する導体のホルダ部材とを有し,前記像担持体上に付着するトナーを除去するクリーニング装置と,前記像担持体に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写装置とを備え,前記像担持体の表層に前記ブレード部材とは摩擦帯電極性が逆極性の微粒子が分散され,前記像担持体の表面に潤滑剤を付与する画像形成装置において,
前記像担持体の,前記転写装置よりも回転方向の下流かつ前記クリーニング装置よりも回転方向の上流に位置する表面領域を除電する除電装置を備え,
前記ホルダ部材が接地されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像形成装置において,
前記除電装置は,前記像担持体の表面を露光するイレーサ光を発し,当該イレーサ光は,前記転写装置よりも回転方向の下流かつ前記クリーニング装置よりも回転方向の上流に位置する領域内を通って前記像担持体の表面に照射されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像形成装置において,
前記ブレード部材は,正極性に摩擦帯電する材料で形成され,
前記微粒子は,シリカ微粒子であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−216884(P2008−216884A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57259(P2007−57259)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】