説明

画像形成装置

【課題】 本発明は、転写不良及び転写ムラを抑え、高画質な画像を形成できる、画像形成装置及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明の画像形成装置100は、像担持体1と、像担持体に熱溶融性の顕色剤を供給する顕色剤供給手段5と、顕色剤供給手段によって供給された顕色剤に、画像情報に応じたエネルギーを付与し、顕色剤を選択的に活性化させる書き込み手段30と、顕色剤供給手段と対向する位置において像担持体の顕色剤を仮固着させる面と垂直な方向へ像担持体を押圧する像担持体押圧手段19と、書き込み手段により活性化した顕色剤を像担持体に仮固着させる仮固着手段と、像担持体上に仮固着した顕色剤を記録媒体に転写して熱溶着させる転写手段13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、詳細には熱溶融性の顕色剤を像担持体に仮固着させる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に広く知られている電子写真方式の複写機やプリンタといった画像形成装置は、感光体を用いて、感光体を帯電、露光、光書き込み、現像して、現像された像を記録媒体に転写、定着して画像を形成している。また、感光体を使用しない画像形成装置としては、インクジェット方式プリンタや孔版印刷装置が知られている。
【0003】
その他の画像形成方法としては、例えば特許文献1には、耐熱光透過性シートに記録媒体を重ね、耐熱光透過性シートの他方の面から原稿画像に応じた光ビームを照射してトナーを昇温溶融させて記録媒体に熱転写する熱転写画像形成方法が提案されている。また、特許文献2には、周面にトナー層を形成したローラに記憶媒体を接触させ、この記録媒体の裏面からサーマルヘッドにより原稿画像に応じた熱像を与えて記録媒体にトナー像を熱転写する熱転写画像形成装置が提案されている。
【0004】
更に、特許文献3には、像担持体の表面に加熱によって粘着性が発現する像を設け、サーマルヘッドにより画像信号に応じた熱像を与えて粘着性により着色粉体を付着させ、記録媒体に転写する画像形成装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献4には、像担持体の裏面側から画像信号に応じて熱像を与えて像担持体に顕色剤画像を仮固着させて記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置が提案されている。
【特許文献1】特開昭64−069357号公報
【特許文献2】特開平07−314746号公報
【特許文献3】特開平10−000798号公報
【特許文献4】特開平11−091147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の静電潜像を形成するために感光体を用いる電子写真方式の複写機やレーザプリンタは、画像を作像するための工程数が多く、そのために記録装置が大きく、複雑であるという問題がある。また、感光体の感光特性が経時的に劣化あるいは変化する問題や、帯電、転写、除電工程で用いられているコロナ放電を生じさせる高電圧発生装置によるオゾン発生の問題がある。更に、インクジェット方式のプリンタは、画像形成の記録速度が遅いという問題点があり、そして孔版印刷装置にいたっては、マスタを製版しなければならない煩雑さや解像力に問題がある。
【0007】
また、特許文献1、2に記載のトナー像を記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置では、記録媒体にトナーを溶融転写させる十分な高いエネルギーを有する光ビームまたはサーマルヘッドを必要とする問題がある。更に、特許文献3に記載されている像担持体の表面に加熱によって粘着性が発現する層を設け、サーマルヘッドにより画像信号に応じた熱像を与えて粘着性により着色粉体を付着させる画像形成装置では、繰り返し画像を形成することにより、この粘着層の劣化や汚れにより粘着力が低下するという問題がある。
【0008】
これに対して、特許文献4に記載されている、像担持体の裏面側から画像信号に応じて熱像を与えて像担持体に顕色剤画像を仮固着させて記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置では、感光体を有さないために感光体に関する経時劣化の問題が発生せず、小型で電子写真並の記録速度を達成することができる。
【0009】
しかしながら、駆動ローラと従動ローラに掛け渡されて移動する像担持体は、移動時の振動、駆動ローラ又は従動ローラの偏心、像担持体の剛性等の影響により、像担持体の顕色剤を仮固着させる面と垂直な方向への変位が起こり、顕色剤供給及び転写位置において、転写圧力がばらつくこと、または像担持体と顕色剤供給ローラ間のギャップがばらつくことにより、転写不良及び転写ムラが発生するという問題がある。
【0010】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、転写不良及び転写ムラを抑え、高画質な画像を形成できる、画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記問題点を解決するために、本発明の画像形成装置は、像担持体と、像担持体に熱溶融性の顕色剤を供給する顕色剤供給手段と、顕色剤供給手段によって供給された顕色剤に、画像情報に応じたエネルギーを付与し、顕色剤を選択的に活性化させる書き込み手段と、顕色剤供給手段と対向する位置において像担持体の顕色剤を仮固着させる面と垂直な方向へ像担持体を押圧する像担持体押圧手段と、書き込み手段により活性化した顕色剤を像担持体に仮固着させる仮固着手段と、像担持体上に仮固着した顕色剤を記録媒体に転写して熱溶着させる転写手段とを有することに特徴がある。よって、感光体を使用しない簡易な装置構成で、かつ非画像部の顕色剤を繰り返して使用することにより顕色剤の消費量を抑えた画像形成装置において、像担持体の顕色剤を仮固着させる面と垂直な方向への像担持体の変位を抑え、転写不良及び転写ムラを抑えた高画質な画像を形成することができる。
【0012】
また、像担持体押圧手段は、書き込み手段のレーザ光を透過させることが好ましい。
【0013】
更に、像担持体押圧手段は、像担持体と顕色剤供給手段で形成される当接部におけるニップ圧を調整することにより、転写効率を最適な状態に調整して高画質な画像を形成することができる。また、地汚れを低減した高画質な画像を形成することができる。
【0014】
また、像担持体押圧手段は、像担持体と接離可能であることにより、画像形成を行っていないとき、像担持体押圧手段を像担持体に作用させないことで、地汚れ防止や、像担持体の負荷低減及び長寿命化を図ることができる。
【0015】
更に、像担持体の移動方向において、書き込み手段のレーザ光による光書き込み位置を、像担持体と顕色剤供給手段の当接部より上流側とする。よって、十分に粘着力を発現した状態で転写させることにより、高画質な画像を形成することができる。
【0016】
また、熱溶融性の顕色剤は、表面層が少なくとも熱可塑性樹脂と固体可塑剤で構成されることにより、低い書き込みエネルギーで顕色剤を像担持体に仮固着させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像形成装置によれば、像担持体の顕色剤を仮固着させる面と垂直な方向への像担持体の変位を抑えることにより、転写不良及び転写ムラを抑え、高画質な画像を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態例に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。同図に示す本実施の形態例の画像形成装置100における像担持体1は光透過性を有するフィルム状の無端の中間転写ベルトで構成されている。この像担持体1はローラ2とローラ3との間に掛け渡されており、ローラ2が図示していないモータなどの駆動手段により矢印Aの向きに回転駆動されることにより、矢印aの向きに移動する。本実施の形態例においては像担持体1として厚さ100μmのポリイミドフィルムが採用されている。
【0019】
なお、像担持体1には、上記フィルムの代わりに、レーザ光走査装置30により照射されるレーザ光Lの光の波長を透過する光透過性を有すること、この光書き込みによる微小スポット照射の発熱及び熱ローラ13で加熱定着される発熱に耐えうる耐熱性を有すること、繰り返し回転駆動されることによる耐久性があること、張力変動及び環境変動による伸縮が少ないこと等の条件を満たすフィルムであれば用いることができる。
【0020】
また、ローラ2には、像担持体1を挟んで熱溶着手段としての熱ローラ13が接離自在に対向して配置されている。この熱ローラ13は、これとローラ2との間に記録媒体14がレジストローラ対15によって送り込まれたときに、像担持体1を介してローラ2に圧接するように構成されている。
【0021】
更に、ローラ3の近傍には、像担持体1を介してローラ3にクリーニングローラ17を当接させたクリーニング装置16が配置されている。クリーニングローラ17にはブレード18が当接している。
【0022】
また、像担持体1の下面1aには、顕色剤供給装置5により熱溶融性の顕色剤4が供給される。顕色剤供給装置5は、顕色剤4を収容するケース6と、顕色剤4を担持しつつ像担持体1との対向部まで搬送する顕色剤供給手段として顕色剤供給ローラ7と、顕色剤供給ローラ7に顕色剤4を収容するケース6内の顕色剤4を補給する補給ローラ8と、顕色剤供給ローラ7上に担持する顕色剤4の層厚を均一化するブレード9とを含んで主に構成されている。顕色剤供給ローラ7、補給ローラ8は、それぞれ矢印B,Cの向きに回転駆動される。
【0023】
ここで、顕色剤4は、黒色の顕色剤の場合、熱可塑性樹脂と着色剤としてのカーボンブラックを主成分とする熱溶融性の粒子の表面に感熱性粘着層を形成したものである。なお、本実施の形態例の画像形成装置100に使用する顕色剤4としては、表面に感熱性粘着層を設けた感熱粘着性の顕色剤4を用いることが最適であり、より低いエネルギーで書き込みを行うことができる。
【0024】
そして、顕色剤4は、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられ、ブレード9によって規制されることにより、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部に導かれる。顕色剤4を顕色剤供給ローラ7上に汲み上げる方法として、本実施の形態例では、静電的な付着力を利用する。すなわち、顕色剤供給ローラ7と補給ローラ8とがその当接部において速度差を有しつつ接触するようにすることで顕色剤4を摩擦帯電(本実施の形態例では、負帯電)させ、かつ顕色剤供給ローラ7に補給ローラ8に対して正の電位となる電圧を印加することによって顕色剤4を汲み上げる。なお、顕色剤4を顕色剤供給ローラ7に汲み上げる方法としては、本実施の形態例の方法には限定されず、磁力などの非静電的付着力を利用して汲み上げてもよい。
【0025】
更に、顕色剤供給ローラ7により顕色剤4が供給される像担持体1の顕色剤受領部(当接部)の裏面側には、顕色剤画像12を像担持体1に仮固着する光エネルギーが、書き込み手段としてのレーザ光走査装置30により照射される。
【0026】
また、レーザ光走査装置30は、レーザ光源(図示せず)、コリメートレンズ(図示せず)、ポリゴンミラー31、fθレンズ32、像担持体1の幅と略同一長さの短冊形反射鏡33で主に構成されており、像担持体1を介して顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じた光エネルギーをレーザ光Lで与える。なお、本実施の形態例では、光透過性を有する像担持体1の裏面からレーザ光Lを照射しているが、像担持体1を通過させずに顕色剤供給ローラ7に直接照射させる装置構成であってもよい。
【0027】
更に、本実施の形態例では、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じた光エネルギーがレーザ光走査装置30からのレーザ光Lにより、像担持体1を介して照射される。顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4は、ブレード9で与えられた電荷により顕色剤供給ローラ7に静電気力で付着している。
【0028】
そして、本実施の形態例では、像担持体1を挟んで顕色剤供給ローラ7と対向する位置に、像担持体1を像担持体1の顕色剤4を仮固着させる面と垂直な方向への変位を抑える押圧ガイド板19が配置されている。この押圧ガイド板19は、レーザ光走査装置30からのレーザ光Lが照射される光書き込み走査位置にスリットが設けられている。または、押圧ガイド板19は、レーザ光走査装置30からのレーザ光Lの波長の光を透過する光透過性部材で形成されている。なお、押圧ガイド板19は、像担持体1に対して接離可能である。また、画像を作像しない画像形成の開始前及び終了後や、非画像部である各画像間においては、像担持体1に押圧ガイド板19を作用させないように制御することで、地汚れ防止や、像担持体1の負荷低減及び長寿命化を図ることができる。
【0029】
また、顕色剤供給装置5内には、周面にクリーニングブレード11の先端縁を当接させた顕色剤除去手段としての顕色剤除去ローラ10が配置されている。仮固着によって像担持体1に顕色剤画像12を形成する顕色剤画像仮固着工程後における像担持体1の非画像部の顕色剤4は、ブレード9の印加電圧とは逆極性の電圧を印加された顕色剤除去ローラ10の吸引作用で取り除かれる。顕色剤除去ローラ10の顕色剤画像12を形成する顕色剤4に対する吸引力は、顕色剤4の像担持体1に対する仮固着力よりも弱く定められている。この顕色剤除去ローラ10は、本来仮固着されるべき顕色剤以外の顕色剤4が非画像部に付着(いわゆる「地汚れ」)した場合にそれを除去するために設けられており、顕色剤除去ローラ10の吸引力は、顕色剤の像担持体1に対する仮固着力よりも弱く定められる。なお、非画像部に付着する顕色剤4の量が十分少なければ顕色剤除去ローラ10を設けなくてもよい。
【0030】
ここで、顕色剤4が熱可塑性樹脂と着色剤としてのカーボンブラックを主成分とする黒トナーで、かつその表面層が感熱粘着層で形成されている場合について説明する。
【0031】
顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じて照射されるレーザ光Lにより顕色剤4に含有するカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、レーザ光Lの光エネルギーを熱に変換して顕色剤4を昇温させ、その結果、顕色剤4の表面層である感熱性粘着層は粘着性を発現する。
【0032】
このように、レーザ光走査装置30を用いることにより、高密度でかつ高速で画像を形成することができる。また、図1に示す画像形成装置100において、像担持体1に光透過性の中間転写ベルトを用いることにより、像担持体の裏面から光書き込みができるとともに、ローラ2とローラ3の間に掛け渡されて回転駆動する像担持体1の内部にレーザ光走査装置30を配置することができるため、画像形成装置100を小型化することができる。
【0033】
また、粘着性を発現(活性化)した顕色剤4は、粘着性により像担持体1上に顕色剤画像12として仮固着する。像担持体1と押圧ガイド板19は、像担持体1を像担持体1の顕色剤4を仮固着させる面と垂直な方向への変位量を許容できる範囲内に抑える距離をおいて配置され、像担持体1の振動等の影響による変位を最小限に抑えて、像担持体1への顕色剤4の転写不良及び転写ムラを防止する。
【0034】
更に、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、押圧ガイド板19を像担持体1に当接してニップ状態を制御する構成としてもよい。このとき、像担持体1と顕色剤供給ローラ7のニップ状態を制御することにより、非画像部の顕色剤4の付着による地汚れを低減することができる。
【0035】
この仮固着による顕色剤画像12の像担持体1への付着力は、顕色剤4と顕色剤供給ローラ7との静電気力による付着力より強く、後述の顕色剤画像12の記録媒体14への熱定着による付着力より常に弱く、かつ定着後に行われる像担持体1のクリーニングによって像担持体1上の残留顕色剤が容易に除去される値に定められる。
【0036】
その後、像担持体1の非画像部をクリーニングする顕色剤除去工程後の像担持体1上の顕色剤画像12は、熱ローラ13により記憶媒体14に熱溶着により転写され定着される。記録媒体14は、図示しない給紙装置から給紙されたレジストローラ対15によって像担持体1の画像部と同期的に熱ローラ13に送り込まれ、その裏面から加熱されることにより顕色剤画像12を転写定着する。
【0037】
そして、顕色剤画像12を転写定着された熱溶着転写工程後の像担持体1は、クリーニングローラ17によりクリーニングされ一連の記録工程を終え、顕色剤画像仮固着工程から始まる次の記録工程に備える。クリーニングローラ17上の顕色剤4を含む塵埃はブレード18で掻き落とされる。
【0038】
図2は本発明の第2の実施の形態例に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。同図において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。本実施の形態例の画像形成装置200においては、像担持体1を挟んで顕色剤供給ローラ7と対向する位置に、像担持体1をニップする押圧ローラ20が配置されている。この押圧ローラ20は、像担持体1と同一方向に同一速度で回転駆動する。また、押圧ローラ20は、レーザ光走査装置30からのレーザ光Lの波長の光を透過する光透過性部材で形成されている。
【0039】
第1の実施の形態例と同様に、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じて照射されるレーザ光Lにより顕色剤4に含有するカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、レーザ光Lの光エネルギーを熱に変換して顕色剤4を昇温させ、その結果、顕色剤4の表面層である感熱性粘着層は粘着性を発現する。
【0040】
このとき、顕色剤4は像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、押圧ローラ20によりニップされた状態でレーザ光Lの光エネルギーを受光し、当接部付近の表面層の感熱性粘着層は粘着性を発現する。粘着性を発現した顕色剤画像12は、この粘着力と押圧ローラ20のニップ圧により、像担持体1に仮固着される。
【0041】
ここで、押圧ローラ20は、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部におけるニップ圧を調整することが可能である。このニップ圧は、像担持体1の材質、表面性、移動速度、顕色剤4の構成及び形状並びに粒径、画像形成装置内の環境温度等により、最適な仮固着状態、及び非画像部の顕色剤4の付着による地汚れが少ない状態となるように調整される。また、押圧ローラ20は、像担持体1に対して接離可能である。更に、画像を作像しない画像形成の開始前及び終了後や、非画像部である各画像間においては、像担持体1に押圧ローラ20を作用させないように制御することで、地汚れ防止や、像担持体1の負荷低減及び長寿命化を図ることができる。
【0042】
図3は本発明の第3の実施の形態例に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。本実施の形態例の画像形成装置300においては、第2の実施の形態例と同様に、像担持体1を挟んで顕色剤供給ローラ7と対向する位置に、像担持体1をニップする押圧ローラ20が配置されている。この押圧ローラ20は、像担持体1と同一方向に同一速度で回転駆動する。また、押圧ローラ20は、レーザ光走査装置13からのレーザ光Lの光の波長を透過する光透過性部材で形成されている。
【0043】
そして、本実施の形態例において、レーザ光走査装置13から照射されるレーザ光Lは、像担持体1の移動方向において、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部より僅かに上流側の位置で像担持体1を透過し、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に照射される。ここで、レーザ光Lの光路が押圧ローラ20より上流側であれば、レーザ光Lは押圧ローラ20を透過しないため、押圧ローラ20によるレーザ光の損失を低減することができる。
【0044】
なお、本実施の形態例では、光透過性を有する像担持体1の裏面からレーザ光Lを照射しているが、像担持体1を通過させずに顕色剤供給ローラ7に直接照射させる装置構成であってもよい。
【0045】
また、第2の実施の形態例と同様に、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じて照射されるレーザ光Lにより顕色剤4に含有するカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、レーザ光Lの光エネルギーを熱に変換して顕色剤4を昇温させ、その結果、顕色剤4の表面層である感熱性粘着層は粘着性を発現する。この顕色剤4は、粘着性を発現した後においても常温でしばらくの間、粘着性が維持されるため、レーザ光Lによる光書き込み位置は、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部あるいは当接部より上流側の近傍であればよい。
【0046】
そして、表面層の一部が十分に粘着性を発現した画像部の顕色剤4は、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部に移動し、粘着性及び押圧ローラ20のニップ圧により、像担持体1に仮固着される。
【0047】
次に、本発明に係る顕色剤4の表面層を形成する感熱粘着層について説明する。
顕色剤4の表面層は、以下に記載する感熱性粘着剤を薄層化して形成する。顕色剤4の表面層を形成する感熱性粘着剤は、熱可塑性樹脂と固体可塑剤を必須成分とし、これらの成分に必要に応じて粘着付与剤を混合する。感熱性粘着剤を薄層化して形成した感熱性粘着層は、常温では全く粘着性を示さないが、加熱及び外的負荷により粘着性が発現し、熱源を取り去った後でもしばらくの間、粘着性を維持するものであり、加熱によりまず固体可塑剤が溶融し、熱可塑性樹脂と粘着付与剤を溶融することにより、粘着性が発現する。すなわち、粘着性の発現とは、固体可塑剤が熱溶融して熱可塑性樹脂に相溶し、熱可塑性樹脂を可塑化させることで粘着力を発現させるメカニズムである。
【0048】
以下に、顕色剤4の各要素について更に詳細に説明する。
本発明の顕色剤4に用いられる感熱性粘着剤としては、例えば、特開2002−105414号公報に開示される材料を用いることができる。本発明の顕色剤4に用いられる感熱性粘着剤は、粘着性を発現させる材料構成であれば、特に、この構成に限定するものではない。
【0049】
本発明の感熱性粘着剤に用いられる熱可塑性樹脂としては、従来、公知の各種のものを用いることができる。その具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−エチレン−スチレン共重合体、ポリブタジエン、ポリウレタン等の樹脂が挙げられる。これらの共重合体は、いずれも従来からよく知られているものである。
【0050】
本発明の感熱性粘着剤に用いられる固体可塑剤としては、従来公知の各種のものを用いることができる。その具体例としては、例えば、ヒンダ−ドフェノール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、芳香族スルホンアミド化合物、フタル酸化合物等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の感熱性粘着剤において、必要に応じて、その粘着力を向上させるために、粘着付与剤を含有させることができる。その粘着付与剤の具体例としては、テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン誘導体樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。
【0052】
更に、本発明の感熱性粘着剤において、必要に応じて、その粘着力を調整するために、熱可融性物質を含有させることができる。その熱可融性物質の具体例としては、動植物性ワックス、合成ワックス等のワックス類や、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アニリド、芳香族アミンのアセチル化物等が挙げられる。
【0053】
その具体例を示すと、ワックスとしては、パラフィンワックス、木ロウ、カルナウバロウ、シェラック、モンタンロウ、酸化パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。高級脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N−メチルステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンステアリン酸アミド等が挙げられる。高級脂肪族アニリドとしては、ステアリン酸アニリド、リノール酸アニリド等が挙げられる。芳香族アミンのアセチル化物としては、アセトトルイジド等が挙げられる。
【0054】
本発明の感熱性粘着剤において、必要に応じて、その粘着力を調整するために、無機化合物を含有させることができる。その具体例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0055】
本発明の上記各実施の形態例において、顕色剤4に画像信号に応じた光エネルギーをレーザ光Lで照射して光書き込みを行う場合、感熱性粘着層中または感熱性粘着層に覆われている顕色剤4中にレーザ光Lの光の波長を吸収して光エネルギーを熱に変換する光熱変換材料を含有させる。例えば、黒色の顕色剤4の場合、着色剤として用いるカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、レーザ光Lの光エネルギーを熱に変換して顕色剤4を昇温させ、顕色剤4の表面層である感熱性粘着層を活性化させることにより粘着性を発現させる。
【0056】
また、光熱変換機能を付与することができる材料としては、一般的に、染料として、500〜550nmに極大吸収波長を持ち、かつ360〜420nmにおいては光透過率が10%以上で光熱変換機能を付与することができる。一般的に染料として存在する直接染料(アゾ染料)、酸性染料(アゾ染料、アントラキノン染料、金属錯体アゾ染料)、塩基性染料(アゾ染料、トリフェルメタン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、キサンテン染料)、建染料(アントラキノン染料)、油溶染料(アントラキノン染料、アゾ染料、金属錯体染料)、分散染料(アゾ染料、アントラキノン染料)等が挙げられる。
【0057】
更に、780〜850nmに極大吸収を持ち、かつ360〜420nmにおいては、光透過率が10%以上である光熱変換機能を付与することができる材料としては、一般的に染料として存在するシアニン系化合物(ポリメチン系化合物)、フタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、金属錯体化合物、ジインモニウム化合物、アルミニウム塩化化合物等が挙げられる。
【0058】
これらの光熱変換材料を顕色剤4の中に含有させることにより、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じた光エネルギーをレーザ光Lで与えて、顕色剤4を像担持体1上に仮固着させた顕色剤画像14を形成することができる。
【0059】
なお、本発明は上記各実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態例に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態例に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1;像担持体、2,3;ローラ、4;顕色剤、
5;顕色剤供給装置、6;ケース、7;顕色剤供給ローラ、
8;補給ローラ、9,18;ブレード、10;顕色剤除去ローラ
11;クリーニングブレード、12;顕色剤画像、
13;熱ローラ、14;記録媒体、15;レジストローラ対、
16;クリーニング装置、17;クリーニングローラ、
19;押圧ガイド板、20;押圧ローラ、
30;レーザ光走査装置、31;ポリゴンミラー、
32;fθレンズ、33;短冊形反射鏡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
該像担持体に熱溶融性の顕色剤を供給する顕色剤供給手段と、
前記顕色剤供給手段によって供給された前記顕色剤に、画像情報に応じたエネルギーを付与し、前記顕色剤を選択的に活性化させる書き込み手段と、
前記顕色剤供給手段と対向する位置において、前記像担持体の前記顕色剤を仮固着させる面と垂直な方向へ前記像担持体を押圧する像担持体押圧手段と、
前記書き込み手段により活性化した前記顕色剤を前記像担持体に仮固着させる仮固着手段と、
前記像担持体上に仮固着した前記顕色剤を記録媒体に転写して熱溶着させる転写手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体押圧手段は、前記書き込み手段のレーザ光を透過させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体押圧手段は、前記像担持体と前記顕色剤供給手段で形成される当接部におけるニップ圧を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体押圧手段は、前記像担持体と接離可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体の移動方向において、前記書き込み手段のレーザ光による光書き込み位置を、前記像担持体と前記顕色剤供給手段の当接部より上流側とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記熱溶融性の顕色剤は、表面層が少なくとも熱可塑性樹脂と固体可塑剤で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−30279(P2008−30279A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205604(P2006−205604)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】