説明

画像形成装置

【課題】定着後に表裏で水分蒸発量が異なるシートを用いた場合でも、確実にカールを低減することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着部8のシート搬送方向下流側に設けられ、トナー像が定着されたシートSが通過するシート搬送空間Rを弁部材20によって途中から封鎖することにより、弁部材20と、定着部8と、シート搬送空間の定着部側部分とにより、トナー像定着の際、シートSから発生する水蒸気を滞留させる水蒸気滞留空間21を形成する。また、トナー像が定着されたシートSがシート搬送空間Rを通過する際は、弁部材20と、弁部材20に当接したシートSと、定着部8と、シート搬送空間の定着部側部分とにより水蒸気滞留空間21を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特にトナー像を定着する際に発生するシートのカールを低減するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式により画像を形成する複写機やプリンタ等の画像形成装置において、像担持体上に形成されたトナー像をシートに転写し、この後、シートを定着部に導き、シート上の未定着トナーをシートに定着させるようにしている。
【0003】
このような定着部として、定着ローラと加圧ローラとを備え、定着ローラ及び加圧ローラによって熱と圧力を同時にシートに加えることによりトナー像をシートに定着させる熱圧定着方式の定着部がある。この定着部の場合、トナー像をシートに定着させる際、シートがカールすることがあり、このようにシートがカールした場合、搬送部においてジャム(紙詰まり)が発生するばかりでなく、排出トレイ上の積載能力を著しく低下させるおそれがある。
【0004】
ここで、シートのカールは、例えばシート内部の水分状態に応じて生じるものであり、特に定着直後のシートの表裏における水分差によって生じる。一般の定着部では、加熱源である定着ローラの表面温度と、加圧ローラの表面温度が異なるため、定着部を通過する際、シートの表裏において与えられる熱量が異なることから、シートの表裏における水分の吸湿・脱湿の遷移状態が異なる。
【0005】
このように、表裏における水分の吸湿・脱湿の遷移状態が異なると、シートの繊維は吸湿すると膨張し、脱湿すると収縮することから、これに伴って繊維伸縮差が生じるためシートにカールが発生する。
【0006】
そこで、こうしたシート内部の水分状態に応じて生じるカールを低減するために定着後のシート搬送空間を略密閉にすることでシート搬送空間に水蒸気滞留空間を設け、シートからの水分蒸発量を低減させるようにしたものがある(特許文献1参照)。また、最もシートが高温になって水分が蒸発しやすい定着ニップ部直後の雰囲気湿度を高くするためにシート搬送空間の形状を工夫したものがある(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平4−291277号公報
【特許文献2】特開2001−026352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、水蒸気滞留空間を形成してシート全体の水分蒸発量を低減させる構成の従来の画像形成装置において、定着後におけるシート表裏での水分蒸発量が大きく異なるシートを用いる場合がある。そして、このようなシートを用いた場合、シートを水蒸気滞留空間を通過させたとしても、例えば水蒸気滞留空間内の滞留水蒸気の量が十分でない場合には、シート表裏の水分蒸発量差が残り、カールを十分に低減させることができない場合がある。
【0009】
なお、シートから蒸発した水分によって滞留水蒸気量が増え、水蒸気滞留空間の雰囲気湿度が飽和すると、この場合、水蒸気滞留空間を形成する部材に結露による水滴が生じるようになる。そして、このように水滴が生じると、水滴付着による出力シートの品質低下や、定着部内のシート加熱部の部分的な温度低下による画像不良といった問題が発生してしまう。
【0010】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みて成されたものであり、定着後に表裏で水分蒸発量が異なるシートを用いた場合でも、確実にカールを低減することのできる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、画像形成部で形成された後、シートに転写されたトナー像をシートに定着させる定着部を備えた画像形成装置において、前記定着部のシート搬送方向下流側に設けられ、前記トナー像が定着されたシートが通過するシート搬送空間と、前記シート搬送空間を途中から封鎖し、前記定着部及び前記シート搬送空間の定着部側部分と共に、トナー像の定着の際、シートから発生した水蒸気を滞留させる水蒸気滞留空間を形成する弁部材と、を備え、前記弁部材を、前記シート搬送空間を封鎖する位置と前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置に移動可能に設けると共に、シートが前記シート搬送空間を通過する際は、前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置にある前記弁部材と、前記弁部材に当接した状態のシートと、前記定着部と、前記シート搬送空間の定着部側部分とにより前記水蒸気滞留空間を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のように、シート搬送空間をシートが通過する際、弁部材、シート、定着部及びシート搬送空間の定着部側部分によって水蒸気滞留空間を形成することにより、定着後に表裏で水分蒸発量が異なるシートを用いた場合でもカールを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す図である。図1において、1はプリンタ、1Aはプリンタ本体であり、このプリンタ本体1Aには、トナー像を形成する画像形成部1Bが設けられている。なお、この画像形成部1Bは、感光ドラム4と、帯電器3と、現像材(トナー)を備えた現像器5等を備えている。また、画像形成部1Bの側方には、不図示の画像データ入力部からの画像情報に基づき、これに対応したレーザを露光するレーザスキャナユニット2が設置されている。
【0015】
そして、このような画像形成部1Bでは、レーザスキャナユニット2からのレーザ露光により、あらかじめ帯電器3により帯電されている感光ドラム4の表面に潜像を形成する。更に、このように形成された潜像を現像器5によって現像材を用いて現像することにより、感光ドラム4の表面にはトナー像が形成される。
【0016】
6は感光ドラム4上に形成されたトナー像をシートSに転写する転写部、8は転写部6によりシートSに転写されたトナー像を定着させる定着部である。1Cは、プリンタ1によるプリント動作(画像形成動作)及び後述する弁部材移動動作を制御する制御部である。
【0017】
次に、このように構成されたプリンタ1における画像形成動作について説明する。
【0018】
画像形成動作が開始されると、不図示の給紙カセットからシートSが搬送され、このシートSは、レジストローラ対7に搬送され、レジストローラ対7により、斜行が補正される。
【0019】
次に、斜行が補正されたシートSは、この後、レジストローラ対7により、感光ドラム表面に形成されたトナー像をシート上へ転写する転写部6へ順次搬送され、転写部6にてトナー像が転写される。次に、転写されたトナー像は定着部8によりシートSに定着され、更にトナー画像が定着されたシートSは、定着部8を通過した後、搬送ローラ10a及び排紙口9に設けられた排紙ローラ対10によりプリンタ本体1Aの上面に設けられた積載部11へ排紙される。
【0020】
ところで、定着部8は、図2に示すように、セラミックヒータ12の外周に耐熱円筒フィルム13を回転自在に配置した加熱装置であるフィルム定着器14と、フィルム定着器14と対を成しシートSを加圧搬送するための加圧ローラ15とを有している。なお、図2において、16は定着部8の筐体の一部を形成する定着器カバーであり、17はフィルム定着器14と加圧ローラ15によって形成されるシート加熱部である。
【0021】
また、図2において、Rは定着部8のシート搬送方向下流側に設けられ、定着部8を通過したシートSを排紙口9まで導く密閉されたシート搬送空間である。18、19はシート搬送空間Rを形成する第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドである。そして、シート搬送空間Rを構成する対向配置された一対のガイド部材である第1搬送ガイド18及び第2搬送ガイド19は、定着器カバー16との間に隙間が極力無いように設置されている。
【0022】
21は、水蒸気滞留空間であり、定着部8を通過する際、フィルム定着器14によりシートSが加熱され、これに伴ってシートSから水蒸気が発生すると、水蒸気は、この水蒸気滞留空間21に溜まるようになる。なお、水蒸気滞留空間21に溜まる水蒸気の量は、画像形成動作が継続されると増加し、これに伴い水蒸気滞留空間21の雰囲気湿度が高くなる。
【0023】
20は、第1搬送ガイド18及び第2搬送ガイド19の一方に、回転可能に設けられた回転部22に固定された弁部材である。この弁部材20は、通常、シート搬送空間Rを途中から封鎖する位置にあって、シート搬送空間Rの定着部側部分と、定着部8とにより水蒸気滞留空間21を構成するものである。
【0024】
なお、この弁部材20は、後述するように定着部8を通過したシートにより押圧されると、シートに当接しながら上方回動するようになっている。そして、このようにシートに当接しながら弁部材20が上方回動することにより、水蒸気滞留空間は、シート搬送空間Rの定着部側部分と、定着部8と、弁部材20と、弁部材20に当接した状態のシートとにより形成される。
【0025】
ところで、弁部材20の取り付け位置は、シートのカールの方向に応じて決定される。例えば、本実施の形態においては、シートとしてはトナー定着の際は、加圧ローラ側の表面の水分蒸発量が多く、加圧ローラ側へカールするシートを用いている。そして、このようなシートを用いた場合には、弁部材20を、シートのカール方向側に位置する第1搬送ガイド18に取り付けている。
【0026】
通常、弁部材20は付勢バネ23によって、図2の(a)に示すように第2搬送ガイド19に突き当てられおり、これにより高湿な水蒸気滞留空間21が形成されている。一方、トナー像が定着された後、高湿な水蒸気滞留空間21を通過してシートSが、弁部材20に到達すると、図2の(b)に示すように弁部材20はシートSに押圧され、回転部22を中心に上方回動する。
【0027】
ここで、このように回動可能な(移動可能な)弁部材20が上方回動すると、水蒸気滞留空間21は、弁部材20、第1搬送ガイド18、定着部8及びシートSの加圧ローラ側表面の4つによって形成される。この結果、水分蒸発量の多い、シートの加圧ローラ側表面が水蒸気滞留空間内の水蒸気に触れる状態になり、これにより搬送されるシートSの加圧ローラ側表面の雰囲気湿度は高く保たれる。
【0028】
一方、シートのフィルム定着器側表面の雰囲気湿度は、滞留していた水蒸気が放出していくために徐々に低下していく。この結果、加圧ローラ側表面の水分蒸発量が多く、加圧ローラ側へカールするシートSの、加圧ローラ側表面の水分蒸発量を、より低減することができ、シートの加圧ローラ側表面から水分が多く失われることにより発生するカールを低減することができる。
【0029】
なお、図3は弁部材20の有無と、シートのカール量との関係を説明する図であり、図3に示すように、弁部材20を設けた場合、弁部材20を設けない場合に比べて約8%のカール低減効果が確認されている。
【0030】
一方、フィルム定着器側表面の水分蒸発量が多いシートを用いる場合は、定着部8を通過する際、シートはフィルム定着器側へカールする。このようなシートSを用いる場合には、図4のように弁部材20の回転部22を、シートのカール方向側に位置する第2搬送ガイド19に固定するように構成する。
【0031】
このように構成した場合、シート先端が弁部材20に到達すると、図4の(a)に示すように第1搬送ガイド18に突き当てられた状態の弁部材20は、シートSに押圧され、図4の(b)に示すように回転部22を中心に上方回動する。この結果、水蒸気滞留空間21は弁部材20、第2搬送ガイド19、定着部8及びシートSのフィルム定着器側表面の4つによって形成される。
【0032】
これにより、シートSのフィルム定着器側表面が水蒸気滞留空間内の水蒸気に触れる状態になり、搬送されるシートSのフィルム定着器側表面の雰囲気湿度は高く保たれる。この結果、フィルム定着器側表面の水分蒸発量が多いシートSの、フィルム定着器側の水分蒸発量を、より低減することができ、シートSのフィルム定着器側表面から水分が多く失われることにより発生するカールを低減することができる。
【0033】
このように、シート搬送空間Rをシートが通過する際、弁部材20、シートS、定着部8及びシート搬送空間Rの定着部側部分によって水蒸気滞留空間21を形成することにより、定着後に表裏で水分蒸発量が異なるシートSでもカールを低減することができる。
【0034】
なお、これまでの説明では、弁部材20を付勢バネ23によって付勢することにより、水蒸気滞留空間21の形成と、シート先端が到達したときの移動を可能にしている。しかし、本実施の形態は、これに限らず、弁部材自身が弾性体(シートが押しのけられる程度の低剛性のシート状材料)であれば回転部22や付勢バネ23を備えなくても構わない。
【0035】
また、これまでの説明においては、シートSのカール方向側に位置する搬送ガイド18,19に弁部材20を設けるようにしているが、発生するカールの方向を予測できない場合がある。この場合には、例えば図5に示すように、第1搬送ガイド18と第2搬送ガイド19のそれぞれに弁部材20を備えておき、発生したカール方向によってどちらかを取り外すように構成にしておくようにしても良い。
【0036】
また、このように第1搬送ガイドと第2搬送ガイドのそれぞれに弁部材を備えた場合、発生したカール方向に応じて、これら弁部材を選択的に上方回動させ、シート搬送空間Rの封鎖を解除するようにしても良い。
【0037】
次に、このように第1搬送ガイドと第2搬送ガイドのそれぞれに弁部材を備え、これら弁部材を、発生したカール方向に応じて選択的に上方回動させるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0038】
図6は、本実施の形態に係るプリンタ(画像形成装置)の定着部付近の構成と、その動作を説明する図である。なお、図6において、図5と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0039】
図6において、20Aは第1搬送ガイド18に設けられた第1弁部材、20Bは第2搬送ガイド19に設けられた第2弁部材である。そして、これら第1及び第2弁部材20A,20Bは、通常、付勢バネ23によってシート搬送空間内部に向かって回動し、互いにシート搬送空間Rの、シート搬送方向と直交する幅方向の中央で当接するようになっている。
【0040】
また、25A,25Bは第1及び第2弁部材20A,20Bを移動する移動手段である第1及び第2移動部である。24は、渦電流方式やレーザ方式の非接触変位センサなどにより構成され、定着後に発生したシートSのカール方向を検知するカール方向検知手段であり、このカール方向検知手段24からの検知信号は、制御部1C(図1参照)に入力されるようになっている。そして、制御部1Cはカール方向検知手段24からの信号に基づき、シートSのカール方向を判断する。
【0041】
例えば、定着後にシートSがフィルム定着器側にカールした場合、まず、これをカール方向検知手段24が検知し、制御部1Cはカール方向検知手段24からの信号に基づき、シートSのカール方向がフィルム定着器側であると判断する。
【0042】
そして、このように判断した場合は、第2弁部材20BにシートSが達した後、第1移動部25Aにより、カール方向と反対側に位置する第1搬送ガイド18に設けられた第1弁部材20Aを駆動する。これにより、第1弁部材20Aは、図6の(a)に示すシート搬送空間Rを封鎖する位置から、図6の(b)に示す第2弁部材20Bから離間し、シート搬送空間Rの封鎖を解除する位置に移動する。
【0043】
この結果、水蒸気滞留空間21は第2弁部材20B、第2搬送ガイド19、定着部8及びシートSのフィルム定着器側表面の4つによって形成され、シートのフィルム定着器側表面が水蒸気滞留空間内の水蒸気に触れる状態になる。なお、このように第1弁部材20Aが移動した際、第2弁部材20Bが、より傾斜するようにすることにより、確実に第2弁部材20BはシートSと当接するようになり、水蒸気滞留空間21を形成することができるようになる。
【0044】
この結果、搬送されるシートSのフィルム定着器側表面の雰囲気湿度は高く保たれるようになり、フィルム定着器側表面の水分蒸発量が多いシートSの、フィルム定着器側の水分蒸発量を、より低減することができ、カールを低減することができる。
【0045】
このように、シートSに生じるカールの方向に応じて第1及び第2弁部材20A,20Bの一方を上方回動することにより、水蒸気滞留空間21を形成するシート表面を切り替えることができる。これにより、シートの種類混在等によりカール方向の混在が生じても常に高いカール低減効果を得ることができる。
【0046】
ところで、シートが連続して複数枚搬送されると、水蒸気滞留空間21内の雰囲気湿度は徐々に増加し、やがて飽和する(湿度100%)。そして、このように湿度が100%となると、水蒸気滞留空間21を形成する各部材表面に結露による水滴が発生する。そこで、このような結露による水滴の発生を防ぐため、水蒸気滞留空間21が飽和する前に弁部材をシート搬送空間Rの封鎖を解除する位置に移動させて水蒸気滞留空間21を開放し、滞留した水蒸気を放出させるようにする。
【0047】
次に、このように水蒸気滞留空間が飽和する前に弁部材を移動させ、滞留した水蒸気を放出させるようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0048】
図7は、本実施の形態に係るプリンタ(画像形成装置)の定着部付近の構成と、その動作を説明する図である。なお、図7において、図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0049】
図7において、26は抵抗式や静電容量式の湿度センサなどにより構成される湿度検知手段であり、この湿度検知手段26により水蒸気滞留空間21の雰囲気湿度を検知する。そして、湿度検知手段26からの雰囲気湿度に関する情報信号は、制御部1C(図1参照)に入力され、制御部1Cは湿度検知手段26からの情報信号に基づき、第1及び第2弁部材20A,20Bを上方回動させ、水蒸気滞留空間内に滞留した水蒸気を放出させる。
【0050】
例えば、制御部1Cは、湿度検知手段26から情報信号により、水蒸気滞留空間21が飽和する前、例えば湿度が90%となったと判断すると、第1移動部25Aを駆動する。これにより、第1弁部材20Aは図7の(a)に示すシート搬送空間Rを封鎖する位置から、図7の(b)に示す第2弁部材20Bから離間し、シート搬送空間Rの封鎖を解除する位置に移動する。
【0051】
この結果、水蒸気滞留空間21に滞留した水蒸気が放出されて水蒸気滞留空間21内の雰囲気湿度の飽和による結露の発生が防止され、水滴付着による出力シートの品質低下や、定着部8への水滴付着による諸問題の発生を防止できる。なお、本実施の形態においては、湿度に応じて第1弁部材20Aを移動させたが、第2弁部材20Bを移動させても良く、また第1及び第2弁部材20A,20Bの両方を移動させても良い。
【0052】
また、これまでの説明においては、湿度に応じて第1及び第2弁部材20A,20Bの少なくとも一方を移動させるようにした場合について述べてきたが、本実施の形態は、これに限らない。例えば、図8に示すように、蒸気滞留空間21に雰囲気温度の上昇を担うヒーターなどの加熱手段27を設けるようにしても良い。
【0053】
そして、制御部1Cは、湿度検知手段26(図7参照)から情報信号により、例えば湿度が90%となったと判断すると、加熱手段27に対して通電を行うことにより、雰囲気温度を高めるようにする。このように構成することによっても、水滴付着による出力シートの品質低下や、定着部への水滴付着による諸問題の発生を防止できる。
【0054】
ところで、これまで説明した第2及び第3の実施の形態においては、結露の発生を防止するための構成について述べてきたが、水蒸気滞留空間内に吸水材を設けるようにしてもシートへの水滴付着による諸問題の発生を防止できる。
【0055】
次に、水蒸気滞留空間内に吸水材を設けるようにした本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0056】
図9は、本実施の形態に係るプリンタ(画像形成装置)の定着部付近の構成を説明する図である。なお、図9において、図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0057】
図9において、28は水蒸気滞留空間内に設けられた吸水性を有する樹脂等の吸水材であり、このような吸水手段である吸水材28を設けることにより、水蒸気滞留空間21内の雰囲気湿度が飽和して結露が発生した場合でも、水滴を吸収することができる。これにより、定着部8や、シートへの水滴付着を防止し、諸問題の発生を防止できる。
【0058】
なお、本実施の形態においては、水蒸気滞留空間21を形成する部材である第1搬送ガイド18、第2搬送ガイド19、弁部材20A,20Bの表面は図10に示すようなシート搬送方向に延びた凹凸形状30を有している。
【0059】
そして、このような凹凸形状30を設けることにより、シートの搬送を妨げることなく、かつ第1及び第2搬送ガイド18,19、弁部材20A,20Bの表面の、シートとの接触面積を低減することができ、シートに水滴が付着しにくくすることができる。この結果、出力シートの品質低下を抑えることができる。
【0060】
なお、これまで説明した第1〜第4の実施の形態では、第1及び第2搬送ガイド18,19と定着器カバー16とは別体で構成されているが、一体で構成されていても構わない。また、画像形成装置としては、シートを上方向に搬送する構成のプリンタを例に説明しているが、シートを水平方向に搬送する構成のプリンタでも同様の効果を得ることができ、その構成は特に限定されない。さらに、定着部8としてはフィルム定着器14を備えたものを例に説明しているが、熱ローラ定着器でも同様の効果を得ることができ、その構成は特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す図。
【図2】上記プリンタにおけるカール低減動作を説明する図。
【図3】上記プリンタにおける弁部材の有無と、シートのカール量との関係を説明する図。
【図4】上記プリンタの第1の他の構成を示す図。
【図5】上記プリンタの第2の他の構成を示す図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るプリンタ(画像形成装置)の定着部付近の構成と、その動作を説明する図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るプリンタ(画像形成装置)の定着部付近の構成と、その動作を説明する図。
【図8】上記プリンタの他の構成を示す図。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るプリンタ(画像形成装置)の定着部付近の構成を説明する図。
【図10】上記プリンタの水蒸気滞留空間を構成する部材の表面に設けられた凹凸形状を示す図。
【符号の説明】
【0062】
1 プリンタ
1A プリンタ本体
1B 画像形成部
1C 制御部
6 転写部
8 定着部
18 第1搬送ガイド
19 第2搬送ガイド
20 弁部材
20A 第1弁部材
20B 第2弁部材
21 水蒸気滞留空間
24 カール方向検知手段
25A 第1移動部
25B 第2移動部
26 湿度検知手段
27 加熱手段
28 吸水材
30 凹凸形状
R シート搬送空間
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部で形成された後、シートに転写されたトナー像をシートに定着させる定着部を備えた画像形成装置において、
前記定着部のシート搬送方向下流側に設けられ、前記トナー像が定着されたシートが通過するシート搬送空間と、
前記シート搬送空間を途中から封鎖し、前記定着部及び前記シート搬送空間の定着部側部分と共に、トナー像の定着の際、シートから発生した水蒸気を滞留させる水蒸気滞留空間を形成する弁部材と、を備え、
前記弁部材を、前記シート搬送空間を封鎖する位置と前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置に移動可能に設けると共に、シートが前記シート搬送空間を通過する際は、前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置にある前記弁部材と、前記弁部材に当接した状態のシートと、前記定着部と、前記シート搬送空間の定着部側部分とにより前記水蒸気滞留空間を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記弁部材を、前記シート搬送空間を封鎖して前記水蒸気滞留空間を形成する位置から、前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置にシートによる押圧により移動可能としたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記シート搬送空間を構成する対向配置された一対のガイド部材を備え、
前記弁部材を、前記一対のガイド部材のうちの、前記定着部を通過する際、水蒸気を発生することにより発生したシートのカールの、カール方向側に位置するガイド部材に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記シート搬送空間を構成する対向配置された一対のガイド部材を備え、
前記弁部材を前記一対のガイド部材にそれぞれ設け、かつ前記一対のガイド部材にそれぞれ設けられた前記弁部材をシート搬送空間内で当接させて前記シート搬送空間を封鎖することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項5】
シートのカール方向を検知するカール方向検知手段と、
前記一対のガイド部材にそれぞれ設けた前記弁部材を、前記シート搬送空間を封鎖する位置と、前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置とにそれぞれ移動させる移動手段と、を有し、
前記カール方向検知手段からの検知信号に応じてシートのカール方向と反対側に位置するガイド部材に設けられた前記弁部材を、前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置に移動させ、前記シート搬送空間を封鎖する位置にある前記弁部材と、前記弁部材に当接したシートと、前記定着部と、前記シート搬送空間の定着部側部分とにより前記水蒸気滞留空間を形成することを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記水蒸気滞留空間の湿度を検知する湿度検知手段と、
前記弁部材を、前記シート搬送空間を封鎖する位置と、前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置とに移動させる移動手段と、を備え、
前記湿度検知手段からの検知信号に応じて前記弁部材を前記シート搬送空間の封鎖を解除する位置に移動させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記水蒸気滞留空間内の温度を上昇させる加熱手段を備え、
前記湿度検知手段からの検知信号に応じて前記水蒸気滞留空間内の温度を上昇させるよう加熱手段を制御することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記水蒸気滞留空間内に、吸水性を有する吸水手段を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記水蒸気滞留空間を形成する部材の表面に凹凸形状を設けることを特徴とする請求項1乃至8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−186711(P2009−186711A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26077(P2008−26077)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】