説明

画像形成装置

【課題】張力付与の解除によって弛んだ記録媒体が像保持体上に残存するトナー等と接触したときに生じる汚れを低減する。
【解決手段】連続する記録媒体を搬送する搬送手段と、記録媒体に張力を付与する張力付与手段と、記録媒体よりも重力方向下側において回転可能に設けられ、トナー像を保持する像保持体と、像保持体との間で記録媒体を挟んで保持して、像保持体に保持されたトナー像を張力が付与されている記録媒体に転写する転写手段と、像保持体よりも記録媒体の搬送方向下流側において、記録媒体に転写されたトナー像を閃光により当該記録媒体に定着させる定着手段と、張力付与手段が記録媒体へ張力を付与していない状態で、記録媒体を定着手段に対して遠ざける方向に退避させる退避手段とを有し、像保持体から記録媒体に像が転写された後にその回転を停止させ、その停止の後に張力付与手段による記録媒体への張力付与を解除し、記録媒体の退避を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続紙と呼ばれるような長手方向に連続する用紙を用いた画像形成装置において、定着手段で発生する熱による用紙ダメージを抑制するための方法として、以下のものが知られている。特許文献1では、このフラッシュランプを間欠的に点灯させるフラッシュ方式の定着装置を備えた画像形成装置において、用紙の搬送を緊急停止したときに、その用紙がたるんで定着装置のガラス面に接触することを防止するため、用紙のガイドを退避させる構造が開示されている。また、特許文献2には、停止時における記録材への熱的ダメージを軽減するために、記録材停止時に記録材をランプおよび加熱ローラを離間させる仕組みが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−80960号公報
【特許文献2】特開2000−181280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、連続する記録媒体を定着手段から遠ざけるために記録媒体の張力付与が解除されたときに、張力付与の解除によって弛んだ記録媒体が像保持体上に残存するトナー等と接触したときに生じる汚れを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の構成は、連続する記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体に張力を付与する張力付与手段と、前記記録媒体よりも重力方向下側において回転可能に設けられ、トナー像を保持する像保持体と、前記像保持体との間で前記記録媒体を挟んで保持して、前記像保持体に保持されたトナー像を前記張力が付与されている前記記録媒体に転写する転写手段と、前記像保持体よりも前記記録媒体の搬送方向下流側において、前記記録媒体に転写されたトナー像を閃光により当該記録媒体に定着させる定着手段と、前記張力付与手段が前記記録媒体へ張力を付与していない状態で、前記記録媒体を前記定着手段に対して遠ざける方向に退避させる退避手段とを有し、前記像保持体から前記記録媒体に像が転写された後に当該前記像保持体の回転を停止させ、その停止の後に前記張力付与手段による前記記録媒体への張力付与を解除し、前記退避手段による記録媒体の退避を行うことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明の構成は、請求項1に記載の構成において、前記転写手段は、前記像保持体に対向する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記像保持体から遠い第2の位置との間を移動するものであり、前記記録媒体の搬送停止時には、前記像保持体の回転を停止させる前に、前記転写手段を前記第2の位置に移動させて、前記記録媒体を前記像保持体の表面から離間させることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に記載の発明の構成は、請求項1に記載の構成において、前記張力付与手段は、前記像保持体よりも前記記録媒体の搬送方向上流側で回転して、当該記録媒体を搬送する第1回転体と、前記第1回転体よりも前記記録媒体の搬送方向上流側で回転して、前記搬送方向の逆方向の力を前記記録媒体に与える第2回転体と、前記定着手段よりも前記記録媒体の搬送方向下流側で回転して、当該記録媒体を搬送する第3回転体とによって前記記録媒体に張力を付与するように構成されるとともに、回転している前記第1回転体、前記第2回転体及び前記第3回転体のうち、前記第3回転体の回転を前記第1回転体及び前記第2回転体モータの回転よりも先に停止させることで前記張力付与手段による前記記録媒体への張力の付与を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比べて、張力付与の解除によって弛んだ記録媒体が像保持体上に残存するトナー等と接触したときに生じる汚れを低減することができる。
請求項2に記載の発明によれば、記録媒体を像保持体から離すことで、弛んだ記録媒体が像保持体上に残存するトナー等と接触したときに生じる汚れを低減する事ができる。
請求項3に記載の発明によれば、複数の回転体の回転の停止時期を異ならせて、記録媒体を弛ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(構成)
図1は、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を示した図である。
この画像形成装置10は、長手方向に連続する用紙S(以下、連続紙Sという)を、図示せぬ用紙供給源から自装置内に取り込む取込ユニット11と、その連続紙Sにトナー像を形成する画像形成ユニット12Y,12M,12C,12Kと、そのトナー像を連続紙Sに定着させる定着ユニット13とが直列に連結されて構成されている。これらの各ユニット11,12,13の内部には、連続紙Sを図中矢印A方向に搬送する搬送手段の一例としての複数のローラ(回転体)が設けられており、これらのローラ群や図示せぬガイド部材によって連続紙Sの搬送路が形成されている。図1では、連続紙Sが存在する領域がその搬送路の位置を表していることになる。
【0010】
取込ユニット11は、ドライブローラ111、バックテンションローラ112及びこれらのローラ111,112を回転させる駆動源としてのモータ(図示略)のほか、連続紙Sの搬送に従動して回転する複数のローラを備えている。ドライブローラ111は、図中の矢印a方向に回転することで、用紙供給源から供給される連続紙Sを画像形成ユニット12Y,12M,12C,12Kの方向へと搬送する手段である。バックテンションローラ112は、ドライブローラ111よりも連続紙Sの搬送方向上流側に設けられており、矢印B方向に回転することで、連続紙Sの搬送方向の逆方向の力をその連続紙Sに与える手段である。このバックテンションローラ112の作用により、連続紙Sには適度な張力が与えられ、搬送路上でたるまずに搬送されるようになっている。なお、本実施形態において、ドライブローラは第1回転体の一例であり、バックテンションローラは第2回転体の一例であり、この第1回転体、第2回転体と後述する第3回転体とが、本実施形態における搬送手段と張力付与手段の一例の構成している。
【0011】
画像形成ユニット12Y,12M,12C,12Kはそれぞれ、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色およびブラック(K)色の各色のトナーを用いて画像形成を行う手段である。画像形成ユニット12Y、12M,12C,12Kの構成は、トナーの色が異なる点を除けば、全て同じであるから、ここでは、図2に示した画像形成ユニット12Kの構成を例に挙げて説明する。図2に示すように、画像形成ユニット12Kは、連続紙Sの搬送路よりも重力方向下側(図中下方)にて矢印B方向に回転可能に設けられた像保持体の一例としての感光体ドラム121Kと、感光体ドラム121Kの表面を一様に帯電させる帯電部122Kと、K(ブラック)の画像データに応じた光を感光体ドラム121Kに照射して静電潜像を形成する露光部123Kと、静電潜像をブラックのトナーで現像して感光体ドラム121Kの表面にトナー像を形成する現像部124Kと、そのトナー像を連続紙Sに転写する転写部125Kとを備えている。
【0012】
転写部125Kは、転写手段の一例としての転写ローラ126Kと、2つの転写ガイドローラ127Kと、転写密着分離モータ128Kのほか、これらのローラ126K,127Kを回転させる駆動源としてのモータ(図示略)を備えている。転写ローラ126Kと感光体ドラム121Kとで連続紙Sを挟んだ状態で、転写ローラ126K及び感光体ドラム121K間に転写バイアスが印加されると、感光体ドラム121Kから連続紙Sにトナー像が転写される。2つの転写ガイドローラ127Kは、転写ローラ126Kと感光体ドラム121Kとの間に連続紙Sが理想的な状態で搬送されるように、その搬送を案内する手段であり、転写ローラ126Kよりも連続紙Sの搬送方向上流側又は下流側(図1,2では上流側と下流側の両方)の位置にそれぞれ設けられている。転写ローラ126Kは、感光体ドラム121Kに近い第1の位置(図中実線で示した位置)と、その第1の位置よりも感光体ドラム121Kから遠い第2の位置(図中点線で示した位置)との間を移動可能に構成されている。また、転写ガイドローラ127Kは、連続紙Sの搬送路に近い第1の位置(図中実線で示した位置)と、その位置よりも搬送路から遠い第2の位置(図中点線で示した位置)との間で移動可能に構成されている。転写密着分離モータ128Kは、これらの転写ローラ126K及び転写ガイドローラ127Kを第1の位置と第2の位置との間で移動させる手段である。このモータ128Kの回転軸と転写ローラ126K及び転写ガイドローラ127Kとは、図示せぬギアやプーリ及びベルト等からなる駆動力伝達機構によって連結されている。
なお、以下の説明においては、画像形成ユニット12Y、12M,12C,12Kの各構成について、符号Y,M,C,Kを付さずに、感光体ドラム121、帯電部122、露光部123、現像部124、及び、転写部125と呼ぶ。
【0013】
再び図1に戻り、定着ユニット13は、サブドライブローラ131、張力計測ローラ132、サブドライブローラ131を回転させる駆動源としてのモータ(図示略)、及び連続紙Sの搬送に従動して回転する複数のローラを備えるほか、トナー像を連続紙Sに定着させる定着部133を備えている。サブドライブローラ131は、矢印c方向に回転することで、連続紙Sを装置外へと搬送する手段である。張力計測ローラ132は、連続紙Sにかかる張力を計測する手段である。なお、サブドライブローラは本実施形態における第3回転体の一例である。
【0014】
ここで、図3は、定着部133及び張力計測ローラ132の近傍の構造を示す図である。
定着部133は、連続紙Sの搬送路を挟んで互いに対向する位置に設けられた定着手段の一例としての定着器14及び退避手段の一例としての定着対向部15を備えている。定着器14は、連続紙Sのトナー像がある方の側に設けられており、定着対向部15は、その逆側に設けられている。定着器14は、一定の周期に従って間欠的に閃光を発する複数本のフラッシュランプ141と、フラッシュランプ141の前面側(連続紙Sに近い側)が開口するとともに背面側(連続紙Sから遠い側)を覆う反射板142とを備えている。フラッシュランプ141は、その長手方向が連続紙Sの幅方向(搬送方向Aに直交する方向)となるように、搬送方向に沿って一定の間隔を空けて並べて配置されている。反射板142は、フラッシュランプ141から発せられた閃光やその閃光に伴って発生した熱を連続紙Sの方向に反射する役割を担う。
【0015】
定着対向部15は、基部150と、基部150において連続紙Sの搬送方向上流側及び下流側にそれぞれ設けられた定着ガイドローラ151,152と、基部150において連続紙Sの搬送方向下流側にある定着ガイドローラ151のさらに下流側に設けられたガイド部材153と、基部150を定着器14に近づく方向及び定着器14から遠ざかる方向(矢印D方向)に移動させる移動機構15aとを備えている。ガイド部材153は、基部150が定着器14から遠ざかる方向へ移動するのに伴って連続紙Sを定着器14から遠ざかる方向へ移動するように作用する。よって、定着対向部15は基部150の移動に伴って連続紙Sを移動させ、連続紙S上のトナー像を定着する定着位置と、定着位置よりも定着器14から遠ざかり連続紙Sが定着器14から受ける熱の影響が定着位置よりも少ない退避位置とで連続紙が保持されて搬送されるように配置されている。定着ガイドローラ151,152は、図示せぬモータによって矢印d方向に回転させられることで、連続紙Sを搬送する手段である。連続紙Sは、張力によって定着ガイドローラ151,152との接触を保っている。
【0016】
ここで、図4は、定着対向部15を定着器14側から見たときの図である。ガイド部材153は、コの字状の形状をしており、基部150に固定されている。そして、ガイド部材153は、用紙が定着位置に位置している場合には、ガイド部材153と連続紙Sとの間に隙間をもつように設けられており、接触しないようになっている。
【0017】
次に、図5は、定着対向部15の斜め上方から見たときの斜視図である。
この図を参照して移動機構15aの詳細を説明する。モータ162と、クラッチ165と、3本のバネ165と、センサ166と、プーリ群(第1プーリ154、第2プーリ155、第3プーリ156、第4プーリ163、第5プーリ157など)と、ベルト群(第1プーリ154及び第2プーリ155に掛け渡された第1ベルト158、クラッチ165の紙面奥側にあるプーリ及び第3プーリ156に掛け渡された第2ベルト159、第4プーリ163及び第5プーリ157に掛け渡された第3ベルト160)とを備えている。モータ162やクラッチ165は、画像形成装置10の筐体に固定されている。また、第3プーリ156と第4プーリ163とは同じシャフト164に固定されており、このシャフトは画像形成装置10の筐体に回転可能に固定されている。また、第5プーリ157も、画像形成装置10の筐体に回転可能に固定されている。また、第3ベルト160の一部が2つの固定具161により基部150の上面に固定されている。3本のバネ165はいずれも、一端が基部150の上面に固定されており、他端が画像形成装置10の筐体に固定されており、その弾性力により基部150を定着器14から遠ざかる方向に引っ張っている。
【0018】
クラッチ165はいわゆる電磁クラッチであり、励磁された状態でのみ、回転トルクを回転軸に取り付けられたプーリに伝達する手段である。第1プーリ154はモータ162の回転軸に固定されており、クラッチ165がオン状態である場合には、モータ162の回転が、第1プーリ154、第1ベルト158、第2プーリ155、クラッチ165、第2ベルト159、第3プーリ156及び第4プーリ163を経由して、第3ベルト160に伝達される。これにより、第3ベルトは、矢印e方向に回転し、その第3ベルトに固定された基部150及び連続紙Sが定着器14に近づく方向に移動する。そして、基部150が定着器14に近づいてセンサ166によって検知されると、モータ162の回転が停止させられて、基部150及び連続紙Sもその位置に停止する。一方、クラッチがオン状態からオフ状態になると、クラッチ165がフリー状態になるから、3本のバネ165の弾性力により、基部150及び連続紙Sは定着器14から遠ざかる方向に引っ張られて、図示せぬストッパーにつき当たる位置で停止する。
【0019】
次に、図6は、張力計測ローラ132の近傍の構成を示す図である。
張力計測ローラ132は、アーム部134の一端に回転可能に取り付けられており、このアーム部134により、連続紙Sの方向(図中下方)に一定の力で押されている。一方、連続紙Sには張力がかかっているから、この張力によって連続紙Sがアーム部134を上方に押す力と、張力計測ローラ132が連続紙Sを下方に押す力とが拮抗しており、両者が釣り合ったときに張力計測ローラ132の上下方向の位置が定まる。アーム部134の他端は、画像形成装置10の筐体に固定された角度センサ135に連結されている。角度センサ135は、アーム部134が延びる方向と水平方向との間の角度を検出する。この検出角度の符号は、水平方向よりも上側が+であり、水平方向よりも下側が−である。アーム部134が張力計測ローラ132及び連続紙Sを図中下方い押す力は一定であるから、この検出角度は、連続紙Sにかかる張力の大きさを示す指標となる。
【0020】
次に、図7は、画像形成装置10の制御系の構成を示すブロック図である。
制御部200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えており、取込ユニット11、画像形成ユニット12Y,12M,12C,12K又は定着ユニット13のいずれかに内蔵されている。CPUがROMに記憶されている制御プログラムを読み出してRAMに展開し、その制御プログラムに記述された手順に従って処理を実行することで、画像形成装置10の各部、例えばドラムモータ121m、帯電部122、現像部124、転写部125、定着部133及び搬送部170などを制御する。ドラムモータ121mは、感光体ドラム121を回転させる駆動手段である。現像部124は、現像部124の現像剤収容器内のマグロールを回転させる駆動手段であるマグモータ124m1と、現像剤収容器内の攪拌ロールを回転させる駆動手段である攪拌モータ124m2を備えている。転写部125は、前述した転写密着分離モータ128のほか、転写ローラ126を回転させる駆動手段である転写ローラモータ126mを備えている。定着部133は、前述したとおり、定着器14と定着対向部15とを備えている。搬送部170は、ドライブローラ111を回転させる駆動手段であるドライブローラモータ111mと、バックテンションローラ112を回転させる駆動手段であるバックテンションローラモータ113mと、サブドライブローラ131を回転させる駆動手段であるサブドライブローラモータ131mなどを備えている。
【0021】
(動作)
次に、図8に示したタイミングチャートを参照しながら、制御部200が画像形成処理の終了後に連続紙Sを定着器14から遠い位置へ退避させる退避処理について説明する。
制御部200は、連続紙Sに対する転写工程や定着工程を含む画像形成処理を全て終えると、連続紙Sの搬送を継続したまま、或る時刻t1にて、転写密着分離モータ128を密着状態から第1分離状態に切り替える。この切り替えに応じて、転写ローラ126が第1の位置(図2の実線の位置)から第2の位置(図2の点線の位置)に移動し、転写ローラ126の表面が連続紙Sから離れる。次に、制御部200は、時刻t2にて、転写ローラモータ126mをオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、転写ローラ126の回転が停止する。
【0022】
次に、制御部200は、時刻t3にて、転写密着分離モータ128を第1分離状態から第2分離状態に切り替えると共に、帯電部122の帯電バイアスをオン状態からオフ状態にして、感光体ドラム121に対する帯電を停止させる。これにより、転写ガイドローラ127が第1の位置(図2の実線の位置)から第2の位置(図2の点線の位置)に移動する。このとき、連続紙Sには一定の張力がかかっているので、転写ガイドローラ127の移動に伴って、連続紙Sの位置が転写工程時よりもやや上方に移動し、連続紙Sの下面と感光体ドラムとが離れる。このように、転写ローラ126及び転写ガイドローラ127のうち、感光体ドラム121との間で連続紙Sを挟み込む転写ローラ126を先に第2の位置に移動させるので、転写ローラ126が第1の位置にある場合に比べて連続紙Sと感光体ドラム121との接触が低減し、これにより、感光ドラム121上の汚れが連続紙Sについてしまうのを低減する効果が高くなる。
【0023】
次に、制御部200は、時刻t4にて、ドラムモータ121m、マグモータ124m1、攪拌モータ124m2及び現像部124の現像バイアスを全て、オン状態からオフ状態に切り替える。これにより、感光体ドラム121、マグローラ及び攪拌ローラの回転が停止すると共に、感光体ドラム121に対する現像バイアスもゼロとなる。次に、制御部200は、時刻t5にて、定着器14をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、フラッシュランプ141に対する通電が停止され、閃光の出力が停止する。
【0024】
次に、制御部200は、ドラムモータ121mがオフ状態になり、感光ドラム121の回転が停止するよりも後の時刻に設定されている時刻t6にて、バックテンションローラモータ113m、ドライブローラモータ111m及びサブドライブローラモータ131mを全て、オン状態からオフ状態に切り替える。これにより、バックテンションローラ112、ドライブローラ111及びサブドライブローラ131の回転が徐々に遅くなっていく。そして、制御部200は、時刻t6の直後である時刻t7にて、サブドライブローラモータ131mのRUNモードをオン状態からオフ状態に切り替えるとともに、クラッチ165をオン状態からオフ状態に切り替える。この「RUNモード」とはモータ内のサーボ運転のオンオフを切り替える制御モードであり、サブドライブローラモータ131mのRUNモードをオン状態からオフ状態にすると、サーボ制御により、サブドライブローラ131の回転が急減速し、停止するように回転制御される。
【0025】
ここで、図9は、時刻t6〜t7における動作を詳細に説明する図である。
制御部200は、時刻t6にて、バックテンションローラモータ113m、ドライブローラモータ111m及びサブドライブローラモータ131mを全て、オン状態からオフ状態に切り替えるが、これにより、バックテンションローラ112及びドライブローラ111の回転が図中点線で示すように徐々に遅くなり、時刻t7’で完全に停止することになる。ここで、制御部200が、時刻t7にて、サブドライブローラモータ131mのRUNモードをオン状態からオフ状態に切り替えると、サブドライブローラ131の回転だけが、バックテンションローラ112及びドライブローラ111に比べて急速に遅くなり、時刻t7”で完全に停止する。つまり、サブドライブローラ131の回転が停止する時刻t7”は、バックテンションローラ112及びドライブローラ111の回転が停止する時刻t7’よりも、Δtだけ早い。
【0026】
このように搬送方向下流側の搬送手段であるサブドライブローラ131が、搬送方向上流側の搬送手段であるドライブローラ111よりも早く、連続紙Sの搬送を止めることで、連続紙Sに対する張力付与が解除されて張力が小さくなり、連続紙Sは弛むことになる。このとき、弛んだ連続紙Sが重力の作用で下方に垂れ下がり、連続紙Sよりも重力方向で下方にある感光体ドラム121に接触したとしても、その時点では既に感光体ドラム121の回転が停止しているので、ドラム表面の残留トナーが連続紙Sに付着したとしても、その量は感光体ドラム121が回転している場合に比べると少ない。
【0027】
一方、時刻t7にてクラッチ165がオフ状態になり、クラッチ165の伝達機能が解かれて基部150の移動が自由になり、バネ165の弾性力により基部150が連続紙Sをガイド部材153により定着器14から遠ざかる方向に引っ張られる。これにより、定着器14、定着対向部15及び連続紙Sは、図3に示した位置関係から、図11に示すような位置関係となる。このとき、上述のように連続紙Sは緩んだ状態となっているので、連続紙Sに張力がかけられて搬送されている場合に比べて、連続紙Sに対してより少ないダメージで連続紙Sを定着器14から遠ざける退避処理を行うことができる。
【0028】
再び図8に戻り、制御部200は、時刻t5から定着器14が十分に冷える程度の時間が経過した時刻t8が到来すると、次回の画像形成処理に備えて、連続紙Sの弛みを低減する処理を開始するべく、クラッチ165をオフ状態からオン状態に切り替え、移動機構15aのモータ162をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、基部150は、バネ165の弾性力に逆らって、定着器14に近づく方向に移動する。そして、制御部200は、図10に示す弛み低減処理を開始する。
【0029】
図10において、制御部200は、まず、変数N=0とする(ステップS1)。次に、制御部200は、変数N<4であることを確認してから(ステップS2;YES)、張力計測ローラ132の角度センサ135の検出角度が1.5°以上であるか否かを判断する(ステップS3)。この検出角度が1.5°以上である場合には(ステップS3;YES)、連続紙Sにかかっている張力が過大であることを意味するから、制御部200は、バックテンションローラモータ113m及びドライブローラモータ111mをオン状態にする(ステップS4)。これにより、連続紙Sの上流側のみが搬送されて張力は小さくなり、角度センサ135の検出角度も小さくなり、ゼロに近くなる。そして、制御部200は、角度センサ135の検出角度が0.75°以内になったか否かを判断する(ステップS5)。0.75°以内になれば(ステップS5;YES)、計測された弛み量が決められた値の範囲内に収まったことを意味しているから、制御部200は、バックテンションローラモータ113m及びドライブローラモータ111mをオフ状態にする(ステップS6)。そして、制御部200は、変数N=N+1として(ステップS7)、上記の処理を、変数N=4になるまで繰り返す。
【0030】
一方、ステップS3において、角度センサ135の検出角度が1.5°未満である場合には(ステップS3;NO)、制御部200は、その検出角度が−1.5°以下であるか否かを判断する(ステップS8)。検出角度が−1.5°以下である場合には張力が不足していることを意味するから(ステップS8;YES)、制御部200は、サブドライブローラモータ131mをオン状態にする(ステップS9)。これにより、連続紙Sの下流側のみが搬送されて張力は大きくなるから、角度センサ135の検出角度も大きくなり、ゼロに近くなる。そして、角度センサ135の検出角度が−0.75°以内(つまり−0.75°よりも大きい状態)になったか否かを判断し(ステップS10)、0.75°になれば(ステップS10;YES)、制御部200は、サブドライブローラモータ131mをオフ状態にする(ステップS11)。そして、制御部200は、変数N=N+1として(ステップS12)、上記の処理を、変数N=4になるまで繰り返す。
【0031】
そして、N=4となると(ステップS2;NO)、制御部200の処理は終了する。また、ステップS5やステップS10において、角度センサ135の検出角度が0.75°以内又は−0.75°以内にならない場合には、制御部200は、エラーメッセージを出力するなどして処理を終了する(ステップS13,S14)。
【0032】
(変形例)
上述した実施形態は次のような変形が可能である。
記録媒体は、長手方向に連続するものであればよく、紙に限らず、例えばOHPフィルム等のプラスティックや布などであってもよい。
定着部133の位置は、感光体ドラム121よりも連続紙Sの搬送方向下流側であればどこでもよい。
【0033】
実施形態では、転写工程と定着行程を含む画像形成処理を全て終えた後に感光体ドラム121の回転を停止させていた。ただし、少なくとも転写工程を終えると、感光体ドラム121の役割は終了するから、少なくとも転写工程を終えた後に感光体ドラム121の回転を停止させればよい。
【0034】
実施形態では、制御部200は、感光体ドラム121から連続紙Sに像が転写された後に、まず、転写ローラ126を第2の位置に移動させる処理を行い、次に、感光体ドラム121の回転を停止させ、その次に、連続紙Sの搬送を停止する処理を開始し、さらにその次に、連続紙Sを定着器14から遠ざかる方向に移動させる処理を行っていたが、これは、連続紙Sと感光体ドラム121との間の摩擦の機会をできるだけ低減して連続紙Sに生じる汚れを低減するためである。しかし、必ずしもこうである必要はなく、要するに、制御部200は、感光体ドラム121から連続紙Sに像が転写された後に当該感光体ドラム121の回転を停止させ、その停止後に、搬送部170による連続紙Sの搬送を停止する処理と、連続紙Sを定着器14から遠ざかる方向に移動させる処理とを含む退避処理を行えばよい。つまり、搬送部170による連続紙Sの搬送を停止する処理と、連続紙Sを定着器14から遠ざかる方向に移動させる処理とはどちら先に行ってもよいし、これらを同時に行ってもよい。このようにしても、連続紙Sと感光体ドラム121との間の摩擦の機会は低減し、連続紙Sに生じる汚れも低減する。
【0035】
実施形態では、連続紙Sの搬送を停止する前に、定着部133が閃光の出力を停止していたが、これは、連続紙Sに対するフラッシュ光の影響を低減するためである。この影響を無視できるなら、連続紙Sの搬送を停止すると同時に定着部133が閃光の出力を停止してもよいし、連続紙Sの搬送を停止してから定着部133が閃光の出力を停止してもよい。
【0036】
また、実施形態では、感光体ドラム121の回転を停止させる前に、転写ローラ126を第2の位置に移動させて、連続紙Sを感光体ドラム121の表面から離間させる処理を行っていたが、そうでなくてもよい。つまり、感光体ドラム121の回転を停止させると同時に、転写ローラ126を第2の位置に移動させてもよいし、転写ローラ126を第2の位置に移動させてから感光体ドラム121の回転を停止させてもよい。
【0037】
実施形態では、転写ローラ126を第2の位置に移動させてから転写ガイドローラ127を第2の位置に移動させていたが、これに限らず、これらを同時に第2の位置に移動させてもよい。
【0038】
実施形態では、搬送部170による連続紙Sの搬送を停止させつつ、連続紙Sを定着器14上にて弛ませて連続紙Sを定着器14から遠ざかる方向に移動させていた。これを、搬送部170による連続紙Sの搬送を完全に停止させた後に、連続紙Sを搬送路上にて弛ませて、それから、連続紙Sを定着器14から遠ざかる方向に移動させるようにしてもよい。
【0039】
実施形態では、ドライブローラ111、サブドライブローラ131、バックテンションローラ112とによって連続紙Sへ張力を付与していたが、張力付与の方法はこれに限らず、例えば連続紙Sの紙面と交差する方向へ連続紙Sを押す構成を設けて張力を付与するいようにしてもよい。
【0040】
実施形態では、図10のステップS3にて、連続紙Sにかかっている張力が過大であることを検知した場合には、ステップS4にて、制御部200がバックテンションローラモータ113m及びドライブローラモータ111mをオン状態にしてその張力を小さくしていた。これに限らず、このステップS4にて、制御部200がサブドライブローラモータ131mを制御し、サブドライブローラ131を搬送方向とは逆回転させることで、連続紙Sに対する張力を小さくしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】同画像形成装置の画像形成ユニットの構成を示す図である。
【図3】同画像形成装置の定着ユニットの構成を示す図である。
【図4】同画像形成装置の張力計測ローラの構成を示す図である。
【図5】同画像形成装置の定着対向部の構成を示す図である。
【図6】同画像形成装置の定着対向部の移動機構を示す斜視図である。
【図7】同画像形成装置の制御系の構成を示す図である。
【図8】同画像形成装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】同画像形成装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図10】同画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】同画像形成装置の定着ユニットの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10・・・画像形成装置、11・・・取込ユニット、111・・・ドライブローラ、112・・・バックテンションローラ、12Y,12M,12C,12K・・・画像形成ユニット、121K・・・感光体ドラム、125K・・・転写部、13・・・定着ユニット、131・・・サブドライブローラ、133・・・定着部、14・・・定着器、15・・・定着対向部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体に張力を付与する張力付与手段と、
前記記録媒体よりも重力方向下側において回転可能に設けられ、トナー像を保持する像保持体と、
前記像保持体との間で前記記録媒体を挟んで保持して、前記像保持体に保持されたトナー像を前記張力が付与されている前記記録媒体に転写する転写手段と、
前記像保持体よりも前記記録媒体の搬送方向下流側において、前記記録媒体に転写されたトナー像を閃光により当該記録媒体に定着させる定着手段と、
前記張力付与手段が前記記録媒体へ張力を付与していない状態で、前記記録媒体を前記定着手段に対して遠ざける方向に退避させる退避手段とを有し、
前記像保持体から前記記録媒体に像が転写された後に当該前記像保持体の回転を停止させ、その停止の後に前記張力付与手段による前記記録媒体への張力付与を解除し、前記退避手段による記録媒体の退避を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写手段は、前記像保持体に対向する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記像保持体から遠い第2の位置との間を移動するものであり、
前記記録媒体の搬送停止時には、前記像保持体の回転を停止させる前に、前記転写手段を前記第2の位置に移動させて、前記記録媒体を前記像保持体の表面から離間させる
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記張力付与手段は、
前記像保持体よりも前記記録媒体の搬送方向上流側で回転して、当該記録媒体を搬送する第1回転体と、前記第1回転体よりも前記記録媒体の搬送方向上流側で回転して、前記搬送方向の逆方向の力を前記記録媒体に与える第2回転体と、前記定着手段よりも前記記録媒体の搬送方向下流側で回転して、当該記録媒体を搬送する第3回転体とによって前記記録媒体に張力を付与するように構成されるとともに、
回転している前記第1回転体、前記第2回転体及び前記第3回転体のうち、前記第3回転体の回転を前記第1回転体及び前記第2回転体モータの回転よりも先に停止させることで前記張力付与手段による前記記録媒体への張力の付与を解除する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−192812(P2009−192812A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33332(P2008−33332)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】