説明

画像形成装置

【課題】加振源が取り付けられた板金を備えた画像形成装置において、加振源の作動に起因した板金から発生する騒音を低減させる。
【解決手段】モータ2の回転駆動により加振力が板金1に加わった場合に、最も大きく振動する平面箇所に2次元的に集中して配列された等間隔の丸穴5aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録媒体上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタを示す概略断面図である。
【0003】
以下、図9に示すレーザビームプリンタの構成について説明する。
【0004】
まず、帯電ローラ108により感光ドラム107表面が一様に帯電される。そして、光学系106より画像データに基づいた走査光が、帯電ローラ108により帯電された感光ドラム107上を露光することにより、感光ドラム107表面に画像に対応する静電潜像が形成される。
【0005】
現像作用により、帯電されたトナーが感光ドラム107上の静電潜像に付着することにより、感光ドラム107上の静電潜像が可視像になる。そして、感光ドラム107上に現像されたトナー像は、転写ベルト109へ転写される。
【0006】
また、記録材給送部にセットされた記録材Pは、給送ローラ111により給送され、レジストローラ112により、転写ベルト109に向けて搬送される。
【0007】
トナーと逆極性に帯電された転写ローラ113により、転写ベルト109上のトナー像が記録材Pに転写される。トナー像が転写された記録材Pは、定着手段114に搬送され、定着手段114により熱と圧力でトナー像が定着された後、排出ローラ対115により機外へ排出される。
【0008】
図6は、レーザビームプリンタのフレーム板金を示す概略図である。
【0009】
図6に示すように、板金101には、加振源としてのモータ102が固定されている。モータ102のプーリーがベルト103と噛み合い、モータ102の回転駆動をベルト103に伝達している。ベルト103はテンショナー104によりテンションが保持されている。
【0010】
モータ102が回転駆動した場合、モータ102の加振力と、ベルトとプーリーの噛み合いによる加振力とが板金101に加わる。これにより、板金101が振動する。板金101の振動により、空気が振動し、騒音を発生させる。
【0011】
モータ102、ベルト103、テンショナー104の特性を変えることなく、モータ102の回転駆動による騒音を低減させるため、従来から、板金101の厚みの増加、絞りやリブの付加による曲げ剛性の増加を施したものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0012】
図7は、板金101に絞り加工を施した例である。図8は、板金101に補強板金を追加した例である。また、光走査装置及びこれを用いる画像形成装置のベースに穴を設けることで、耐振動性を調整しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】第3回静音化設計技術フォーラム、騒音発生原因の解明法と対策の基礎的考え方、2005年、p.18
【特許文献1】特開2001−235699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来例での板金の厚み増加や、絞り、リブの追加では、板金の振動は低減するものの、板金から発生する騒音の低減効果はあまり期待できず、さらに、コストアップになることが懸念される。
【0014】
また、耐振動性を調整するための穴では騒音低減効果が望めない場合もあり、さらに、フレーム剛性の低下から物流過程における衝撃によってフレームの変形を生じる可能性があるため、採用できない場合がある。
【0015】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、加振源が取り付けられた板金を備えた画像形成装置において、加振源の作動に起因した板金から発生する騒音を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
板金と、
前記板金に取り付けられ作動した場合に、前記板金を振動させる原因となる加振源と、
を備え、記録材に画像を形成する画像形成装置において、
前記板金のうち前記加振源の作動により最も振動する領域に、騒音を低減させる穴が複数個設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加振源が取り付けられた板金を備えた画像形成装置において、加振源の作動に起因した板金から発生する騒音を低減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0019】
図5は、本発明の実施例1に係る画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタを示す概略断面図である。
【0020】
以下、図5に示すレーザビームプリンタの構成について説明する。
【0021】
まず、帯電ローラ8により感光ドラム7表面が一様に帯電される。そして、光学系6より画像データに基づいた走査光が、帯電ローラ8により帯電された感光ドラム7上を露光することにより、感光ドラム7表面に画像に対応する静電潜像が形成される。
【0022】
現像作用により、帯電されたトナーが感光ドラム7上の静電潜像に付着することにより、感光ドラム7上の静電潜像が可視像になる。そして、感光ドラム7上に現像されたトナー像は、転写ベルト9へ転写される。
【0023】
また、記録材給送部にセットされた記録材Pは、給送ローラ11により給送され、レジストローラ12により、転写ベルト9に向けて搬送される。
【0024】
トナーと逆極性に帯電された転写ローラ13により、転写ベルト9上のトナー像が記録材Pに転写される。トナー像が転写された記録材Pは、定着手段14に搬送され、定着手段14により熱と圧力でトナー像が定着された後、排出ローラ対15により機外へ排出される。
【0025】
図1は、本実施例の特徴を最もよく表す図面であって、本実施例のレーザビームプリンタにおいて、モータが取り付けられた板金を示す概略図である。
【0026】
図1において、2は加振源としてのモータ、1はモータ2が取り付いている板金、5aはφ3mmの穴である。ここで、モータ2は、板金1に取り付けられ作動した場合に、板金1を振動させる原因となるものである。
【0027】
板金1に固定されたモータ2の駆動力を伝達するプーリー2aがベルト3と噛み合い、モータ2の回転駆動力をベルト3に伝達している。ベルト3は、モータ2の駆動力が伝達されることにより作動可能な駆動伝達部20に連結されている。駆動伝達部20としては、例えば、記録材搬送手段(11,12,15)の駆動部や、感光ドラム7の駆動部や、定着手段14の駆動部等である。また、ベルト3はテンショナー4によりテンションが保持されている。
【0028】
レーザビームプリンタは、プリント(画像形成動作)中、常にモータ2を回転させている。そのため、プリント中は、板金1に取り付けられたモータ2は、板金1に対して常に加振力を与え続けている。これにより、板金1においてモータ2がねじ等で固定されていない箇所で、例えばモータ2取付部近傍の平面箇所では、モータ2の振動が板金に伝搬して大きく振動することになる。この板金1の振動が、空気を振動させ、板金1が音の放射面となって、騒音を発生させる。また、プーリー2aとベルト3との噛み合いにおいても噛み合い振動が発生する。この振動もベルト3からテンショナー4に伝わり、テンショナーを板金1へ固定している固定部から板金1を加振する加振力として作用する。
【0029】
そこで、本実施例においては、モータ2の回転駆動(作動)による加振力(モータ加振力とベルト噛み合い振動)が板金1に加わった場合に、最も大きく振動する平面箇所(領域)に2次元的に集中して配列された等間隔の略円形状の複数の穴(丸穴)5aを設けている。モータ2の回転駆動により加振力が板金1に加わった場合に、最も大きく振動する平面箇所は、実験等により予め求められている。
【0030】
このような穴5aを設けることにより、板金1が空気を押す面積が小さくなるので、空気の振動が小さくなり、騒音を低減させることができる。
【0031】
さらに、モータ2が取り付けられた板金1で、最も大きく振動する平面箇所に穴5aを開けることにより、ベルト3と噛み合うモータ2のプーリー2aの噛み合い周波数の音圧レベルを大幅に低下させる効果を得ることもできる。
【0032】
本発明者の実験結果によれば、図6に示す従来の、穴が開けられていない板金101を備えたレーザビームプリンタに対して、図1に示す、本実施例の、穴5aが開けられた板金1を備えたレーザビームプリンタでは、オーバーオール値で2dB低下した。
【0033】
以上説明したように、本実施例によれば、モータ2が取り付けられた板金1を備えたレーザビームプリンタにおいて、モータ駆動に起因した板金1から発生する騒音を低減させることが可能となる。
【0034】
板金1の加工も穴を開けるだけでよいので、加工作業を容易に、低コストで行うことが
できる。
【0035】
また、本実施例では、板金1のうち騒音低減の寄与度が大きい箇所に、集中して穴を開けているため、単に板金に穴を開けるような場合に比べ、落下時の変形やバンディングの影響を抑制する(最小限に抑える)効果がある。
【0036】
なお、本実施例においては、板金1に設けられる穴を、2次元的に集中して配列された等間隔の丸穴(隣合う穴との間隔が等しくなるように複数設けられた穴)としているが、これに限るものではない。すなわち、板金1のうちモータ2の作動により最も振動する領域に、騒音を低減させる穴が複数個設けられるものであればよい。
【0037】
また、本実施例では、モータ2の駆動により加振力が板金1に加わった場合に、最も大きく振動する平面箇所に2次元的に集中して穴5aを設けているが、これに限るものではない。すなわち、落下時の変形やバンディングの影響を抑制できる範囲であれば、板金1のうち最も大きく振動する領域を含む平面領域に渡って穴5aを設けるものであってもよい。
【実施例2】
【0038】
図2は、本発明の実施例2において、モータ2が取り付けられた板金1を示す概略図である。なお、本実施例に係る画像形成装置は、上述した実施例1に係る画像形成装置と同様の構成であり、同様の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0039】
本実施例では、上述した実施例1に対して、板金1に開けられた穴の大きさ(直径)をより大きくしている。すなわち、本実施例では、板金1に開けられた穴5bの大きさをφ4mmとしている。
【0040】
本実施例によれば、モータ2の加振力が板金1に伝わった場合に板金1のうち最も大きく振動する箇所を含む平面全体に渡って、2次元的に配列された等間隔の穴5bが設けられることにより、騒音を低減させることが可能となる。
【0041】
このように、穴の大きさがφ3mmでもφ4mmでも、モータ2が取り付けられた板金1のうち最も大きく振動する箇所に、2次元的に配列された穴を複数個設けることにより、騒音抑制効果を得ることができる。
【0042】
本実施例では、実施例1の穴5aより大きな穴5bを開けることにより、実施例1に対して、より大きな騒音抑制効果を得ることが可能となる。
【0043】
ここで、板金1に設けられる穴の直径は、1mmより大きく5mm未満であることが好ましい。これは、φ1mm以下の穴では穴の面積が小さいため静音性がダウンし、φ5mm以上の穴では穴が大きいため板金の剛性がダウンすることが懸念されるためである。また、この寸法は、使用者や子供の指が穴に入らないように安全性を考慮した寸法でもある。
【実施例3】
【0044】
図3は、本発明の実施例3において、モータ2が取り付けられた板金1を示す概略図である。なお、なお、本実施例に係る画像形成装置は、上述した実施例1に係る画像形成装置と同様の構成であり、同様の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0045】
上述した実施例1では、板金1に丸穴が開けられていたが、これに対して、本実施例で
は、四角形状の穴5cが板金1に設けられている。
【0046】
本実施例においても、実施例1同様に、レーザビームプリンタの騒音を低減させることが可能である。このように、穴の形状は円形状であっても四角形状であってもよいもので、モータ2が取り付けられた板金1のうち最も大きく振動する箇所に、2次元的に配列された穴を複数個設けることにより、騒音抑制効果を得ることができる。
【実施例4】
【0047】
図4は、本発明の実施例4において、モータ2が取り付けられた板金1を示す概略図である。なお、本実施例に係る画像形成装置は、上述した実施例1に係る画像形成装置と同様の構成であり、同様の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0048】
上述した実施例1では、板金1に丸穴が開けられていたが、これに対して、本実施例では、三角形状の穴5dが板金1に設けられている。
【0049】
本実施例においても、実施例1同様に、レーザビームプリンタの騒音を低減させることが可能である。このように、穴の形状は円形状であっても三角形状であってもよいもので、モータ2が取り付けられた板金1のうち最も大きく振動する箇所に、2次元的に配列された穴を複数個設けることにより、騒音抑制効果を得ることができる。
【0050】
上述した実施例3,4からわかるように、穴の形状は特に限定されるものではなく、モータ2が取り付けられた板金1のうち最も大きく振動する箇所に、2次元的に配列された穴を複数個設けることにより、騒音抑制効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1において、モータ取り付け板金を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例2において、モータ取り付け板金を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例3において、モータ取り付け板金を示す概略図である。
【図4】本発明の実施例4において、モータ取り付け板金を示す概略図である。
【図5】本発明を適用した画像形成装置を示す概略断面図である。
【図6】従来のレーザビームプリンタのフレーム板金を示す概略図である。
【図7】従来のレーザビームプリンタにおいて、絞り加工が施されたフレーム板金を示す概略図である。
【図8】従来のレーザビームプリンタにおいて、補強板金が追加されたフレーム板金を示す概略図である。
【図9】従来の画像形成装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 板金
2 モータ
5a〜5d 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金と、
前記板金に取り付けられ作動した場合に、前記板金を振動させる原因となる加振源と、
を備え、記録材に画像を形成する画像形成装置において、
前記板金のうち前記加振源の作動により最も振動する領域に、騒音を低減させる穴が複数個設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記穴の直径が、1mmより大きく5mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記板金の最も振動する領域において、前記穴は2次元的に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記穴は、隣合う穴との間隔が等しくなるように複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−9016(P2009−9016A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172015(P2007−172015)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】