説明

画像形成装置

【課題】装置本体から出し入れ可能に設けられた棒状把持部材に簡易な構成で滑り止め機能を付与した画像形成装置を提供する。
【解決手段】支持レール31は鋼板を断面略コ字状に折り曲げて形成された板金部材であり、側面には棒状把持部材30の摺動方向(矢印BB′方向)に延在する長穴33が形成されている。また、支持レール31の上部の装置外側寄りには下向きに突出するロックピン35が取り付けられている。棒状把持部材30は、鋼板を角部が角落としされた断面略矩形状に折り曲げて形成されており、外周面には長手方向に沿って直線状に並ぶ複数の貫通穴37a〜37dが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に画像形成装置の運搬や移動を行う際に把持する取っ手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、重量の大きい中型や大型の装置になると運搬や移動の際の取り扱いが困難であった。従来、装置側面に把持用の凹みを設けることが行われていたが、作業者の指部分のみが引っ掛かる程度であり、十分に力を加えることができなかった。また、装置側面から把持用の取っ手を突出させた場合、運搬作業性は向上する反面、装置の設置スペースが大きくなるという問題点があった。
【0003】
そこで、特許文献1及び2には、装置本体から出し入れ可能な棒状の把持部(取っ手)を複数設けた画像形成装置が開示されている。特許文献1、2の構成によれば、画像形成装置の設置スペースを大きくすることなく運搬作業性を向上できる。また、特許文献1の把持部は軽量化のために中空状に形成され、端部には手が滑り抜けるのを防止するための滑り止め部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−107822号公報
【特許文献2】特開2008−107461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の把持部では滑り止め部が端部にのみ形成されているため、把持部の中程を把持した場合に手が滑ってしまうという不具合があった。また、滑り止め部は金属板を折り曲げて形成されるため、折り曲げ工程数が増加するという問題点もあった。そして、画像形成装置の軽量化の要望に伴い、把持部についても更なる軽量化が求められていた。
【0006】
さらに、装置の設置場所によっては装置側面と壁や他の機器との間隔が狭く、把持部を所定長さまで引き出せない場合がある。しかし、特許文献1及び2の構成では把持部の固定位置は段階的ではなく、把持部を固定位置まで出し切らない状態で運搬する必要があるため、運搬中に把持部が動いてバランスを崩したり、装置本体と把持部との間に手指を挟んだりするおそれがあった。また、予め把持部の長さを短く設定すると、例えば作業者の手が大きい場合に手の一部しか把持部に掛からず危険であった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、装置本体から出し入れ可能に設けられた棒状把持部材に簡易な構成で滑り止め機能を付与した画像形成装置を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、装置本体からの棒状把持部材の引き出し量を簡易な構成で調節可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、装置本体に固定される複数の支持レールと、該支持レールに摺動可能に支持される装置本体の内外方向に出し入れ可能な中空若しくは断面コ字状の棒状把持部材と、を備えた画像形成装置において、前記棒状把持部材の外周面の少なくとも一部には長手方向に沿って複数の滑り止め用の貫通穴が形成されていることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記支持レールの側面には前記棒状把持部材の摺動方向に延在する長穴が形成されており、該長穴には前記棒状把持部材の端部に固定された摺動ピンが摺動自在に係合することを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記棒状把持部材は、金属板を断面略矩形状に折り曲げて形成され、前記貫通穴は少なくとも前記棒状把持部材の両側面に形成されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記棒状把持部材は上面を有するとともに前記貫通穴は前記上面にも形成され、前記支持レールの上部の外側寄りには下向きに突出するロックピンが設けられており、前記棒状把持部材を持ち上げたとき前記ロックピンが前記貫通穴のいずれかに嵌合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の構成によれば、簡易な構成で棒状把持部材全体に滑り止め機能を付与することができ、棒状把持部材の製造も容易となる。また、貫通穴の分だけ棒状把持部材を軽量化することができる。
【0013】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の画像形成装置において、支持レールの側面に形成された長穴に棒状把持部材の端部に固定された摺動ピンが摺動自在に係合することにより、棒状把持部材の摺動が長穴の範囲に規制され、棒状把持部材を装置本体から引き出したり、装置本体へ押し込んだりする際の支持レールからの抜け落ちを防止することができる。
【0014】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の画像形成装置において、金属板を断面略矩形状に折り曲げて棒状把持部材を形成することにより、棒状把持部材が持ち易くかつ強度的に強いものになる。また、少なくとも棒状把持部材の両側面に貫通穴を形成することにより、十分な滑り止め効果を得ることができる。
【0015】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の画像形成装置において、棒状把持部材の上面にも貫通穴を形成し、支持レールの上部の外側寄りに下向きに突出するロックピンが棒状把持部材を持ち上げたとき貫通穴のいずれかに嵌合することにより、棒状把持部材を持ち上げるだけで装置本体からの引き出し量に応じて棒状把持部材を多段階に固定可能となり、装置運搬時の操作性及び安全性が向上する。また、棒状把持部材から手を離すだけで棒状把持部材の固定を簡単に解除可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成装置の内部構造を示す概略断面図
【図2】画像形成装置の外観斜視図
【図3】棒状把持部材及び支持レールを装置内側から見た側面図
【図4】棒状把持部材及び支持レールを装置外側から見た側面図
【図5】棒状把持部材及び支持レールを上方から見た平面図
【図6】図5におけるAA矢視断面図
【図7】棒状把持部材及び支持レールを図3の右方向から見た図
【図8】棒状把持部材を把持して持ち上げた状態を示す側面図
【図9】棒状把持部材を把持して持ち上げた状態を示す断面図
【図10】棒状把持部材及び支持レールを図8の右方向から見た図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の画像形成装置の構成を示す概略断面図であり、ここではモノクロ複写機について示している。図1に示すように、画像形成装置100の装置本体1内部には、画像形成部2、定着装置3、給紙トレイ4a、4b、4c、操作部5、画像読取部6、用紙搬送路7等の種々の装置が内蔵されており、装置本体1の上部には、載置された複数の原稿を連続的に自動搬送できる原稿搬送装置8が搭載されている。一方、装置本体1の側面には、図1の右方に手差し給紙トレイ4dが、左方に排出トレイ9が設けられている。
【0018】
定着装置3は、加熱ローラ10と加圧ローラ11の2つのローラを備えた熱ローラ方式のものを用いている。加熱ローラ10は、例えば、熱伝導性に優れた金属から成る円筒形状の芯金内に、電源に接続されたヒータを内蔵し、その芯金の外周に弾性層が形成される。一方、加圧ローラ11は、芯金の外周に弾性層が形成されていて、補助的に芯金内にヒータが内蔵されることがある。また、これらの加熱ローラ10、加圧ローラ11の表面には、例えばフッ素樹脂による被膜が設けられ、離型性が高められている。
【0019】
そして、これらのローラは圧接されてニップ(定着ニップ部)を形成している。そして、後述する画像形成部2でトナー像が転写された用紙Pが定着ニップ部を通過すると、トナー及び用紙Pが加圧・加熱され、トナー像が用紙Pに定着する。定着装置3における加熱ローラ10と加圧ローラ11は駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで回転駆動される。なお、2つのローラのうち一方が他方に従動するようにしてもよい。また、熱ローラ方式の定着装置3に代えて、定着ベルトを用いるベルト式の定着装置を採用してもよい。
【0020】
画像形成装置100には、例えばA4サイズの用紙Pを収納する大容量の給紙カセット4aと、B5サイズ、A3サイズ等の異なるサイズの用紙Pを収納する給紙カセット4b、4cから成る給紙カセット4a〜4c、及び手差し給紙トレイ4dの計4つの給紙部が備え付けられている。また、各給紙部4a〜4dにはピックアップローラ12が備え付けられている。ピックアップローラ12は、駆動装置(不図示)によって、図1において反時計回りに回転駆動される。そして、このピックアップローラ12と接する最上位の用紙Pが1枚ずつ用紙搬送路7に向けて送り出されるようになっている。
【0021】
次に、画像形成部2を構成するそれぞれの部分について説明する。画像形成部2は、像担持体としての感光体ドラム13、帯電装置14、露光装置15、現像装置16、クリーニング装置17、転写ローラ18等から構成されている。感光体ドラム13は、ドラムの外周表面にアモルファスシリコン感光層や、有機感光層からなる光導電層を有しており、駆動装置(不図示)により所定の回転速度で図1の時計回りに回転駆動される。
【0022】
帯電装置14は、感光体ドラム13の上部に設けられ、感光体ドラム13表面を所定電位に均一に帯電させる。また、露光装置15は、感光体ドラム13及び現像装置16の上方に設けられ、帯電装置14で帯電された感光体ドラム13表面を走査露光することにより、画像読取部6で読み取った原稿画像データや、画像形成装置100と接続されているコンピュータから入力される画像、文字等の画像情報に基づく静電潜像を感光体ドラム13上に形成する。
【0023】
現像装置16は、感光体ドラム13の側部に設けられ、静電潜像が形成された感光体ドラム13にトナーを供給して静電潜像をトナー像として現像する役割を果たす。また、クリーニング装置17は、感光体ドラム13の正面視左側に設けられ、感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去し回収するものであり、例えばクリーニングローラや、弾性体をブレード上に形成したクリーニングブレードで構成される。図1では、クリーニングローラを用いた例を示している。
【0024】
転写ローラ18は、感光体ドラム13の直下に設けられ、例えば、アルミ軸の外周に導電性の素材を巻き付けて形成されている。転写ローラ18は、感光体ドラム13とニップを形成している。用紙Pがこのニップを通過する時に、転写ローラ18にトナーと逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム13上のトナー像が用紙Pに転写される。転写ローラ18は、駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで反時計方向に回転駆動されている。
【0025】
ここで、画像形成部2における画像形成動作について述べる。まず、感光体ドラム13は、帯電装置14により所定の極性及び電位に帯電させられる。次に、形成すべき画像データに基づき制御されるレーザ光が露光装置15から感光体ドラム41に向けて照射され、感光体ドラム13の表面上に画像データに基づく静電潜像が形成される。次に、現像装置16から感光体ドラム13側にトナーが飛翔し、ドラム上の静電潜像がトナー像に現像される。
【0026】
次に、トナー像が転写ローラ18と感光体ドラム13のニップ部で用紙Pに転写される。その後、上述の定着装置3にて、用紙Pのトナー像が、加熱ローラ10及び加圧ローラ11により加圧、加熱されて定着される。定着装置3から排出された用紙Pは、搬送手段により装置外に排出される。トナー像を転写した後の感光体ドラム13は、クリーニング装置17により感光体ドラム13表面の残留トナーが除去され、次の画像形成に備える。
【0027】
操作部5は、画像形成装置100の上方に設けられており、本実施形態では、液晶表示部51、テンキー52等から構成されている(図2参照)。ユーザは、この操作部50に入力して、印刷部数や所望する画像形成装置100の機能(両面印刷機能等)を用いるなど、画像形成装置100の操作を行う。
【0028】
画像読取部6は、複写される原稿画像を読み取るものであり、装置本体1の最上部に設けられたコンタクトガラス20とその下部に設けられた光学系ユニット21から構成されている。コンタクトガラス20は、原稿搬送装置8から送られてくる原稿を読み取る画像読み取り位置に配置されたコンタクトガラス20aと、ユーザが原稿搬送装置8を上方に開閉して原稿を載置するコンタクトガラス20bとからなっている。そして、光学系ユニット21は、コンタクトガラス20aを通過する原稿、またはコンタクトガラス20b上に載置された原稿に対し光を照射し、その反射光が、光学系ユニット21内のミラー及び結像レンズ等を介してCCD(Charge Coupled Device)に入力され、読み取った原稿画像をデータ化する。
【0029】
用紙搬送路7は、給紙部4a〜4dからピックアップされた用紙Pが、画像形成部2、定着装置3を通過して、画像形成装置100の側面に形成された排出部23から排出トレイ9に排出されるように形成されている。更に、本発明の画像形成装置100における用紙搬送路7は、定着装置3を通過した用紙Pが、再び定着装置3の搬送方向上流側に搬送され周回できるように両面搬送路25を含んでいる。具体的にいうと、定着装置3を通過した用紙Pが画像形成部2の用紙搬送上流側に再搬送される。
【0030】
そして、用紙Pを排出トレイ9にそのまま排出するか、或いは両面搬送路25を用いて周回させるかの選択は、定着装置3の搬送方向下流側であって排出部23との間に設けられた切替ガイド26によって行われる。また、用紙搬送路7及び両面搬送路25に沿って複数の搬送ローラ対27が配置されており、搬送ローラ対27は、駆動装置(不図示)により、所定の方向に用紙Pを搬送するように回転駆動される。
【0031】
また、用紙Pを周回させる両面搬送路25の途中には、両面印刷用トレイ28が設けられている。両面印刷をする際に、この両面印刷用トレイ28上で用紙Pがスイッチバックされる。具体的には、切替ガイド26により両面搬送路25に導かれた用紙Pは、両面印刷用トレイ28の一側端部に近接して設けられ、駆動装置(不図示)によって正逆自在に回転駆動可能なスイッチバック用ローラ対29によって、両面印刷用トレイ28上に押し出される。
【0032】
しかし、スイッチバック用ローラ対29は、用紙Pを完全に両面印刷用トレイ28に押し出すのではなく、用紙Pの後端部を保持した状態で逆回転する。この逆回転により、用紙Pが両面印刷用トレイ28から引き出されると、用紙Pは、当初と表裏が反転された状態で画像形成部2方向に搬送される。なお、排出部23に設けられた搬送ローラ対27が正逆回転可能な複写機であれば、排出部23でスイッチバックがなされるようにしてもよい。
【0033】
図2は、本発明の画像形成装置の外観斜視図である。図2においては原稿搬送装置8及び排出トレイ9は記載を省略しており、図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図2に示すように、装置本体1の右側面1aには高さ方向の略中央部に2本の棒状把持部材30が設けられている。棒状把持部材30は、支持レール31(図3参照)を介して装置本体1のフレームに固定されており、支持レール31に沿ってスライドさせることにより右側面1aに対して内外方向へ出し入れ可能となっている。なお、ここでは図示しないが、装置本体1の左側面1bにも右側面1aと対称の位置に2本の棒状把持部材30が出し入れ可能に設けられている。
【0034】
次に、棒状把持部材及び支持レールの構成について説明する。図3及び図4は、それぞれ棒状把持部材及び支持レールを装置内側及び外側から見た側面図、図5は、棒状把持部材及び支持レールを上方から見た平面図、図6は、図5におけるAA矢視断面図、図7は、棒状把持部材及び支持レールを図3の右方向から見た図である。なお、図4、図6では図3を垂直方向に反転させているため、図3と上下が逆になっている。また、以下の説明では右側面1aの装置手前側に設けられる棒状把持部材30及び支持レール31を例示しているが、他の位置に設けられる棒状把持部材30、及び支持レール31も全て同一構成であるため説明を省略する。
【0035】
支持レール31は鋼板を断面略コ字状に折り曲げて形成された板金部材であり、側面には棒状把持部材30の摺動方向(矢印BB′方向)に延在する長穴33が形成され、先端には支持レール31を画像形成装置100の側面1a、1b(図2参照)に取り付ける際の位置決め片31aが形成されている。また、支持レール31の上部の装置外側(図3では右側)寄りには下向きに突出するロックピン35が取り付けられている。棒状把持部材30は、鋼板を角落としされた断面略矩形状に折り曲げて形成されており、外周面には長手方向に沿って直線状に並ぶ複数の貫通穴37a〜37dが設けられている。貫通穴37a〜37dは折り曲げ加工される前の鋼板の打ち抜き加工時に同時形成される。
【0036】
棒状把持部材30の装置内側の端部(図4では左端)には支持レール31の長穴33を介して外側から摺動ピン39が固定されている。摺動ピン39は、頭部39aと軸部39bとで構成され、軸部39bが長穴33内を摺動することで、棒状把持部材30が支持レール31に対し長穴33の範囲で摺動可能に支持される。具体的には、棒状把持部材30が最大限まで引き出された状態では、図4において摺動ピン39が長穴33の右端まで移動する。
【0037】
一方、棒状把持部材30が装置内部に完全に押し込まれた状態では、摺動ピン39が長穴33の左端まで移動する。これにより、棒状把持部材30を装置本体から引き出したり、装置本体へ押し込んだりする際の支持レール31からの抜け落ちを防止できる。また、摺動ピン39の頭部39aの直径は長穴33の幅よりも大きいため、棒状把持部材30が支持レール31の側面の開口方向(図7の左方向)へ外れるおそれもない。
【0038】
また、棒状把持部材30が水平な状態では、棒状把持部材30の上面と支持レール31の間に若干の隙間を有し、かつ、ロックピン35が非接触となるように寸法設定がなされている。棒状把持部材30の素材としては、上述した鋼板に限らず、所望の強度が確保できる金属板を使用することが可能である。
【0039】
図8及び図9は、棒状把持部材を把持して持ち上げた状態を示す側面図及び断面図、図10は、棒状把持部材及び支持レールを図8の右方向から見た図である。図8〜図10を用いて画像形成装置を運搬等する際の棒状把持部材30の使用方法について説明する。
【0040】
通常は、棒状把持部材30は装置内部に押し込まれた収納状態となっている。運搬等を行う作業者は、収納状態から棒状把持部材30の端部を持って水平方向(矢印B方向)に引き出す。このとき、画像形成装置の周囲にスペースが十分にある場合は棒状把持部材30を最大引き出し位置まで引き出す。また、スペースに制限がある場合は棒状把持部材30を引き出し可能な所定長さだけ引き出す。
【0041】
次に、作業者は引き出された棒状把持部材30を把持して、図8〜図10に示すように棒状把持部材30を矢印C方向に持ち上げて傾斜させる。すると、棒状把持部材30の上面と支持レール31との間の隙間が狭くなる。このとき、棒状把持部材30の上面に形成された複数の貫通穴37cのいずれかがロックピン35と重なり合う場合はロックピン35と貫通穴37cとが嵌合する。また、棒状把持部材30の引き出し量によってはロックピン35と貫通穴37cとの位置が重なり合わない場合もあるが、その場合は棒状把持部材30を持ち上げたまま矢印B方向に摺動させることで、ロックピン35が内側直近に位置する貫通穴37cに嵌合する。
【0042】
つまり、棒状把持部材30の引き出し量に係わらずロックピン35が棒状把持部材30の上面に形成された複数の貫通穴37cのいずれかに嵌合し、棒状把持部材30の摺動が規制される。従って、棒状把持部材30を持ち上げた状態では棒状把持部材30が摺動しないため、安定した把持状態を維持できる。
【0043】
そして、棒状把持部材30を把持して画像形成装置を持ち上げるか、或いは画像形成装置を引き回して所望の設置場所に運搬する。棒状把持部材30の上面、側面及び下面には貫通穴37a〜37dが形成されているため、貫通穴37a〜37dに手指が食い込み易くなり、高い滑り止め効果が発揮される。これにより、特に大型の画像形成装置を引き回して運搬、移動する場合に安全に作業を行うことができる。また、貫通穴37a〜37dの分だけ棒状把持部材30を軽量化することができ、ひいては画像形成装置の軽量化にも寄与する。
【0044】
画像形成装置の運搬が終了し、棒状把持部材30から手を離すと、棒状把持部材30は水平状態(図3参照)に戻り、ロックピン35と貫通穴37cとの嵌合が容易に解除される。その後、棒状把持部材30を支持レール31に沿って水平方向(矢印B′方向)に押し込み、装置内部に収納する。
【0045】
本実施形態によれば、棒状把持部材30が金属板の曲げ加工により形成されているので、コストの低廉化が図れる。また、滑り止め用の貫通穴37a〜37dも金属板の打ち抜き加工により一体的に形成されているので、棒状把持部材30を形成する金属板の打ち抜きと同時に滑り止め部を作製でき、作業性良く形成することが可能となり、実質的な軽量化を図り得る。また、棒状把持部材30は角落としされた角筒状に形成されているので、持ち易くかつ強度的に強いものになる。
【0046】
さらに、棒状把持部材30を引き出して持ち上げたとき、装置本体からの引き出し量に応じて棒状把持部材30を多段階に固定可能となり、装置運搬時の操作性も向上する。
【0047】
貫通穴37a〜37dの個数及び配置については特に制限はないが、棒状把持部材30のどの部分を把持したときにも滑り止め効果を得るためには、長手方向の略全域に亘って所定の間隔で複数形成することが好ましい。また、貫通穴37a〜37dが小さすぎると手指が食い込みにくくなって所望の滑り止め効果が得られず、逆に大きすぎると棒状把持部材30の強度が低下するおそれがあるため、滑り止め効果と部材強度とを考慮して形状及び大きさ等を設定すれば良い。さらに、棒状把持部材30の上面に形成される貫通穴37cについては、一直線上に並ぶように形成して各貫通穴37cがロックピン35と確実に嵌合するようにしておく必要がある。
【0048】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では棒状把持部材30の両側面に貫通穴37a、37bを、上面に貫通穴37cを、下面に貫通穴37dを形成しているが、本発明はこれに限らず、棒状把持部材30の少なくとも一面に貫通穴37a〜37dを形成すれば良い。なお、十分な滑り止め効果を得るためには、少なくとも棒状把持部材30の両側面に貫通穴37a、37bを形成しておくことが好ましい。
【0049】
また、上記実施形態では棒状把持部材30の断面形状を角筒状に形成したが、例えば、三角形や五角形等の多角形の筒状にしてもよく、或いは円筒状にしてもよい。また、支持レール31の断面形状も棒状把持部材30の断面形状に合わせて適宜変更すれば良い。但し、円筒状の場合には棒状把持部材30が回転してロックピン35と貫通穴37cとの位置関係がずれ易くなるため、棒状把持部材30と支持レール31とに、例えばキーとキー溝のような回転防止用の凹部と凸部を設けるようにすればよい。
【0050】
また、棒状把持部材30を断面コ字状に形成することもできる。この場合、棒状把持部材30を常に最大限まで引き出した状態で使用するのであれば、ロックピン35と貫通穴37cとの係合は不要となるため、棒状把持部材30は上面を除く3面を有する構造であっても良い。
【0051】
また、本発明は図1に示したモノクロ複写機に限らず、デジタル複合機やアナログ方式の複写機、モノクロプリンタ、各色のトナー像を順次積層してカラー画像を形成するカラー複写機やカラープリンタ、ファクシミリ等、種々のタイプの画像形成装置に適用できるのはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、運搬、移動用の棒状把持部材を備えた画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 装置本体
1a 右側面
1b 左側面
30 棒状把持部材
31 支持レール
31a 位置決め片
33 長穴
35 ロックピン
37a〜37d 貫通穴
39 摺動ピン
39a 頭部
39b 軸部
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に固定される複数の支持レールと、
該支持レールに摺動可能に支持され装置本体の内外方向に出し入れ可能な中空若しくは断面コ字状の棒状把持部材と、を備えた画像形成装置において、
前記棒状把持部材の外周面の少なくとも一部には長手方向に沿って複数の滑り止め用の貫通穴が形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記支持レールの側面には前記棒状把持部材の摺動方向に延在する長穴が形成されており、該長穴には前記棒状把持部材の端部に固定された摺動ピンが摺動自在に係合することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記棒状把持部材は、金属板を断面略矩形状に折り曲げて形成され、前記貫通穴は少なくとも前記棒状把持部材の両側面に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記棒状把持部材は上面を有するとともに前記貫通穴は前記上面にも形成され、前記支持レールの上部の外側寄りには下向きに突出するロックピンが設けられており、前記棒状把持部材を持ち上げたとき前記ロックピンが前記貫通穴のいずれかに嵌合することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−217208(P2010−217208A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60404(P2009−60404)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】