画像形成装置
【課題】装置個々の部品の固有振動のバラツキに影響を受けることなく、画像の濃度ムラを効果的に低減することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、像担持体である回転体101に駆動力を伝達するモータ103と、モータ103に対して回転体101の回転数に応じた駆動パルスをモータドライバ回路104を介して出力するとともに、画像の濃度ムラを発生させる要因となる周波数として設定される前記駆動パルスの対象周波数に対して、所定の変調周期及び所定の変調範囲で周波数拡散制御を行う制御手段105と、を備える。
【解決手段】画像形成装置は、像担持体である回転体101に駆動力を伝達するモータ103と、モータ103に対して回転体101の回転数に応じた駆動パルスをモータドライバ回路104を介して出力するとともに、画像の濃度ムラを発生させる要因となる周波数として設定される前記駆動パルスの対象周波数に対して、所定の変調周期及び所定の変調範囲で周波数拡散制御を行う制御手段105と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機やプリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の画像形成装置としては、例えば、図12及び図13に示すものがある。
【0003】
この画像形成装置は、図12に示すように、Y(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色毎の画像を形成する4組の画像形成部1300を備える。
【0004】
各画像形成部1300には、感光ドラム1301、現像器1306、クリーナ1307、帯電器1308、一次転写ローラ1309、レーザ光学系1310が配置される。
【0005】
画像形成動作は、図13に示すシステムコントローラ1320によって制御され、画像読取部1321や画像処理部1322からカラー画像データが各画像形成部1300に供給される。
【0006】
感光ドラム1301は、帯電器1308により表面が均一に帯電され、この状態でレーザ光学系1310から感光ドラム1301の表面にレーザ光Bが照射されることで、該表面に静電潜像が形成される。
【0007】
感光ドラム1301の表面に形成された静電潜像は、現像器1306で現像されてトナー像とされ、駆動ローラ1302により駆動される中間転写ベルト1311に一次転写ローラ1309を介して一次転写される。
【0008】
上記一連の動作を各画像形成部で行うことにより、中間転写ベルト1311上には各色Y,M,C,Kのトナー像が重なり合った状態で形成される。
【0009】
中間転写ベルト1311に転写されたトナー像は、二次転写ローラ1211を介してシートPに二次転写され、トナー像が転写されたシートPは、定着器1313を通過する際に、トナー像が加熱及び加圧されて定着された後、外部に排出される。
【0010】
なお、感光ドラム1301に残ったトナーは、ドラムクリーナ1307により除去され、中間転写ベルト1311に残ったトナーは、ベルトクリーナ1314により除去される。
【0011】
ところで、前述した画像形成装置では、像担持体としての感光ドラム1301や中間転写ベルト1311等の速度変動が、画像の濃度ムラ(ピッチムラ、バンディングとも呼ばれる)を発生させる要因となることが知られている。
【0012】
像担持体の速度変動要因としては、ギアピッチや回転系の固有振動、回転系にかかる負荷変動等が挙げられる。
【0013】
従来、フライホイール等や弾性部材の配置を工夫することにより、駆動装置全体の剛性を変更して、駆動源の回転による振動や伝達機構の噛合いによる振動の周波数との共振を防止する技術が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0014】
この提案では、回転系の慣性(イナーシャ)を機械的に変更・調整することにより、回転系の振動周波数をシフトさせて、画像の濃度ムラを低減するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3823474号公報
【特許文献2】特開2006−317474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上記従来例で、回転系の固有振動は、装置個々の部品のサイズや重量のバラツキにより、振動成分の周波数が低周波数域や高周波数域にシフトすることが多いため、画像の濃度ムラの低減効果のバラツキが大きいという問題がある。
【0017】
そこで、本発明は、装置個々の部品の固有振動のバラツキに影響を受けることなく、画像の濃度ムラを効果的に低減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体を回転させるための駆動力を発生するモータと、該モータに対して駆動パルスを送信する送信手段と、画像の濃度ムラを発生させる要因となる周波数として設定される前記駆動パルスの対象周波数に対して、所定の変調周期及び所定の変調範囲で周波数拡散制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置個々の部品の固有振動のバラツキに影響を受けることなく、画像の濃度ムラを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態である画像形成装置における回転体の駆動系を説明するための制御ブロック図である。
【図2】(a)は回転体の回転駆動時における速度変動データの一例を示すグラフ図、(b)は速度変動データに対して、FFT解析を実施することにより得られる振動プロファイルの一例を示すグラフ図である。
【図3】周波数拡散制御における周波数変調波形の一例を示すグラフ図である。
【図4】周波数拡散制御後の振動スペクトルの一例を示すグラフ図である。
【図5】画像形成装置における周波数拡散制御例について説明するためのフローチャート図である。
【図6】本発明の第2の実施形態である画像形成装置における回転体の駆動系を説明するための制御ブロック図である。
【図7】エンコーダの出力信号を用いて回転体の角速度変動を検出する方法を説明するためのタイミングチャート図である。
【図8】画像形成装置の動作例を説明するためのフローチャート図である。
【図9】回転体の振動スペクトル及びフィルタ特性を示すグラフ図である。
【図10】帯域通過型フィルタの係数プロファイルを示すグラフ図である。
【図11】(a)はフィルタ演算後の回転体の速度変動データを示すグラフ図、(b)はフィルタ演算後の回転体の回転駆動時における振動プロファイルを示すグラフ図である。
【図12】従来の画像形成装置を説明するための概略断面図である。
【図13】従来の画像形成装置の制御系を説明するための概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である画像形成装置における回転体の駆動系を説明するための制御ブロック図である。なお、本実施形態の画像形成装置の概略構成例については、既に図13で説明したものと略同様であるので、その説明を省略する。
【0023】
本実施形態では、図1に示す回転体101として、トナー像を担持する感光ドラム(感光体)、又は感光ドラムに担持されたトナー像が転写される中間転写ベルト(中間転写体)を駆動する駆動ローラを例に採る。
【0024】
回転体101の回転軸101aの端部には、駆動ギア102が同心に取り付けられている。駆動ギア102は、モータ103の出力軸に対して予め設計された減速比となるような所定の歯数Ngear(任意の正整数)を有する。
【0025】
モータ103の出力軸には、駆動ギア102に噛合する所定の歯数Nshaft(任意の正整数)のギア103aが形成されている。モータ103は、ギア103a,102を介して回転体101に駆動力を伝達する。なお、本実施形態では、モータ103をステッピングモータ(パルスモータ)とするが、これに限定されない。
【0026】
モータドライバ回路104は、制御ユニット105から送信されるモータ103の回転数に応じた駆動パルスをモータ103に出力する。
【0027】
モータ103は、モータドライバ回路104から出力される駆動パルスの周波数Fstm[pps]に応じて駆動され、駆動パルスにおける1パルス当りの回転角度θ0[rad]が規定されている。
【0028】
モータ103が1回転するのに必要なパルス数Mstm(任意の正整数)は次式(1)により与えられる。
Mstm=2π/θ0 …(1)
従って、モータ103の回転速度Vstm[min-1]は、次式(2)により与えられる。
Vstm=(Fstm/Mstm)×60 …(2)
例えば、2相ステッピングモータの場合には、1パルス当りの回転角度θ0[rad]=0.01πである。
【0029】
従って、1回転当りに必要なパルス数Mstmは、200パルスとなり、駆動周波数Fstm=3000[pps:Hz]とすると、回転速度Vstm=900[min-1]となる。
【0030】
また、モータ103により駆動ギア102を駆動して回転体101を回転させる場合、回転体101の回転角速度(=回転周波数)Vrot[min-1]は、次式(3)により与えられる。
Vrot=Vstm/(Ngear/Nshaft)=Vstm/Rgear…(3)
ここで、Rgear(= Ngear/Nshaft) は、駆動ギア102とモータ103の出力軸に形成されたギア103aとのギア比(減速比)である。
【0031】
ギア比Rgear=15とすると、回転体101の回転角速度Vrot=900/15=60[min-1](周波数では、60[min-1]/60[s]=1.0[Hz])となる。
【0032】
図2(a)は、回転体101の回転駆動時における速度変動データの一例を示すグラフ図であり、横軸が時間(入力データ数に相当する)、縦軸が速度変動(任意単位)を表す。
【0033】
図2(b)は、図2(a)に示す回転体101の速度変動データに対して、次式(4)に基づいてFFT解析を実施することにより得られる振動プロファイルの一例を示すグラフ図であり、横軸が周波数(Hz)、縦軸(任意単位)がパワースペクトルを表す。
X(k)=Σx(n)×exp(−2πknj/N) …(4)
x(n)は、取得されたn数の標本化データである。jは、虚数単位で、jj=√−1である。また、kは、周波数成分変換後の周波数軸単位を表し、X(k)は、周波数kにおいて算出されたパワースペクトル(該当周波数成分の強度:任意単位)を表す。
【0034】
ここで、FFT解析について簡単に説明する。
【0035】
図2(b)において、F0は回転体101の1回転の回転ムラ、F1は駆動ギア102の回転ムラであり、F0とF1との関係は、次式(5)で表される。
F1=F0×Rgear …(5)
前述の数値例からF0=1.0Hz、ギア比Rgear=15とすると、F1=15Hzとなる。
【0036】
F2は、回転系の固有振動成分(駆動源であるモータ103の固有振動成分も含む)を示しており、該周波数成分が、画像形成時において、濃度ムラを顕著に発生させる周波数成分となることが本発明者等により確認された。
【0037】
F3も、F2と同様に、回転系の固有振動成分を含むスペクトルであるが、F2に対して強度レベルが小さいため、濃度ムラへの影響は低い状態であることが本発明者等により確認された。
【0038】
一般的に画像形成装置においては、回転系の振動スペクトルのピークが急峻、つまり振動周期が安定している場合に、濃度ムラが、人間の視覚において顕著に認識される傾向にあることが知られている。
【0039】
次に、図3を参照して、周波数拡散制御について説明する。
【0040】
図3において、縦軸は周波数[Hz]、横軸は時間[s]を示している。周波数拡散制御は、対象周波数Faを所定の範囲±△%内で所定の変調周期Tmにて変化させる制御である。
【0041】
周波数拡散制御により、図4に示すように、対象となる周波数の振動スペクトルのピークを所定レベルに平滑化ができることが一般的に知られている。図4において、縦軸はパワースペクトル[a.u]、横軸は周波数[Hz]を示している。
【0042】
そこで、図2におけるF2の周波数成分に対して、図3及び図4に示す周波数拡散制御を行うことにより、F2の振動スペクトルのピークを平滑化すること、つまり、振動周期を変化させることができるため、画像形成時における濃度ムラを低減することができる。
【0043】
次に、周波数拡散制御の具体例について説明する。
【0044】
実際の周波数拡散制御は、制御ユニット105からモータ103を駆動するモータドライバ回路104に送信される駆動パルスFstmに対して行われる。
【0045】
このときの制御パラメータの設定は、駆動パルスの周波数Fstmに対する変調範囲の設定、及び変調周期Tmの設定がある。
【0046】
駆動パルスの周波数Fstmに対する変調範囲を設定するには、まず、+側の変調範囲幅Δと−側の変調範囲幅Δを同一とする。これは、+側の範囲と−側の範囲に偏りがある場合、出力画像の倍率に偏りを生じてしまうためである。
【0047】
変調範囲幅Δは、変調対象の周波数の振動スペクトル(本実施形態では、図2におけるF2スペクトルとする)と該振動スペクトルに最も隣接する周波数の振動スペクトル(図2におけるF3スペクトル)とが重ならない範囲になるように設定する。これは、対象周波数の振動スペクトルと隣接する周波数の振動スペクトルとの共振を防止するためである。
【0048】
例えば、図2では、変調対象の周波数の振動スペクトルF2が36Hzの場合、振動スペクトルF2に最も隣接する周波数の振動スペクトルF3が40Hzであるため、36Hzの変調範囲幅Δは、+側及び−側で約10%以下となる。
【0049】
なお、中心周波数の変調は、その変調範囲幅Δ(各々の回転系により調整される)に応じて出力画像の倍率を変動させることになるため、実際には、可能な限り小さい幅にて変調を行う。
【0050】
一方、変調周期Tmを設定するには、変調周期Tmは、実際の画像形成装置の出力画像における濃度ムラの発生周期以上に設定する。これは、濃度ムラの発生周期がより長い周期であるほど、人間の視覚的に認識が難しくなるためである。
【0051】
例えば、回転体101の周長:250mm、回転角速度Vrot=60[min-1](1.0Hz)とすると、出力画像で5mmの回転体101に起因するピッチムラが生じている場合、変調周期Tm=5mm/(250mm/s)=20ms以上となる。
【0052】
上述した変調範囲幅△および変調周期Tmは、出力画像における濃度ムラの発生レベルにより調整される。
【0053】
次に、図5を参照して、本実施形態の画像形成装置における周波数拡散制御例について説明する。図5での各処理は、不図示のROMやHDD等の記憶部に記憶されたプログラムがRAMにロードされて、制御ユニット105のCPU等により実行される。
【0054】
ここで、上述した変調範囲±△および変調周期Tmは、回転系の振動系事前検証により予め設定されているものとする。また、実際のモータ103の駆動には、加速時間、定速安定時間(加速中の振動が所定レベルまで減衰するまでの時間)が必要であり、該時間経過後に、図5の制御が実行される。
【0055】
まず、ステップS501では、制御ユニット105は、モータドライバ回路104に対する駆動パルスの周波数Fstm[pps]、周波数Fstmの変調範囲±△[%]、及び変調周期Tm[s]を設定し、ステップS502に進む。
【0056】
ステップS502では、制御ユニット105は、回転体101の回転動作開始と同期して、ステップS501で設定された制御パラメータに基づいて、駆動パルスの周波数Fstmを変調し、モータドライバ回路104を介してモータ103を駆動する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、像担持体に駆動力を伝達するモータ103の駆動パルスに対して所定の周波数拡散制御を行うことにより、装置個々の部品の固有振動のバラツキに影響を受けることなく、画像の濃度ムラを効果的に低減することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、図6〜図12を参照して、本発明の第1の実施形態である画像形成装置について説明する。なお、上記第1の実施形態に対して重複又は相当する部分については、図に同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
本実施形態の画像形成装置は、図6に示すように、回転体101の回転軸101aにおける駆動ギア102の反対側の端部にコードホイール108が同心に取り付けられ、コードホイール108には、エンコーダ106,107が対向配置されている。
【0060】
コードホイール108は、予め設計された所定幅Lwheel[m]のスリットパターンを所定数Nwheel有しており、エンコーダ106,107は、コードホイール108のスリットパターンの入力間隔に同期したエンコーダ信号を出力する。
【0061】
また、エンコーダ106,107は、互いに相反する位相に設定されている。このようにした理由は、回転体101自体の偏心成分やコードホイール108の偏心成分による回転体101の角速度への影響をキャンセルするためである。
【0062】
ここで、回転体101の角速度ωRは、エンコーダ106からの信号により検出される速度データVencA、エンコーダ107からの信号により検出される速度データVencBとすると、次式(6)により与えられる。
ωR=(VencA+VencB)/2 …(6)
制御ユニット105は、基準クロックC0[Hz](1クロックの周期=1/C0[sec])により動作し、エンコーダ106,107の出力信号を用いてコードホイール108のスリットパターンの入力間隔をカウントする。
【0063】
図7は、エンコーダ106,107の出力信号を用いて回転体101の角速度変動を検出する方法を説明するためのタイミングチャート図である。
【0064】
図7(a)は、基準クロックC0を示し、図7(b)は、エンコーダ106(又は107)入力を示しており、エンコーダ出力信号(本実施形態では、エンコーダ106の信号入力を基準とする)を0番目の入力としている。
【0065】
図7(c)は、エンコーダ出力信号の立ち上がりエッジを基準として計測されたカウント数を示し、図7(d)は、カウント数によって検出される速度データを示す。
【0066】
制御ユニット105は、任意のN番目のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジが計測されると、N−1番目のエンコーダデータe(N−1)dataを取得する。
【0067】
ここで、制御ユニット105が取得するエンコーダデータe(N−1)dataは、時間[sec]と同義であり、N−1番目の速度データ Ve(N−1)は、次式(7)により与えられる。
Ve(N−1)=Lwheel[m]/e(N−1)data[sec] …(7)
ここで、Lwheelは一定値であるため、取得したエンコーダデータにより任意の位相における回転体101の角速度変動が検出可能である。
【0068】
次に、図8を参照して、本実施形態の画像形成装置の動作例について説明する。図8での各処理は、不図示のROMやHDD等の記憶部に記憶されたプログラムがRAMにロードされて、制御ユニット105のCPU等により実行される。
【0069】
ステップS801では、制御ユニット105は、回転体101の回転動作開始と同期して、駆動パルスの周波数Fstmをモータドライバ回路104に送信して、モータ103を駆動する。
【0070】
そして、制御ユニット105は、エンコーダ106,107の出力信号に基づき、上述した手法で回転体101の角速度変動データを取得し、ステップS802に進む。
【0071】
ステップS802では、制御ユニット105は、取得した角速度変動データに対して、例えば、予め設定された所定の周波数通過特性を有するフィルタ演算及びFFT解析を実施して、所定の周波数領域における振動スペクトルを抽出し、ステップS803に進む。
【0072】
ここで、振動スペクトルを抽出方法の一例を具体的に説明する。
【0073】
図9において、フィルタFIL0は、30Hz〜50Hzの周波数帯域を通過させるフィルタである。なお、この周波数帯域は、出力画像において濃度ムラが顕著に認識可能な帯域として本発明者等が実験等により求めた一例であり、個々の画像形成装置において、濃度ムラが顕著に発生する周波数領域を任意に設定可能である。
【0074】
フィルタFIL0の周波数通過特性は、帯域通過型フィルタと呼ばれ、遮断周波数Fc1、Fc2は次式(8)の条件を満たすとものする。
F1<Fc1<F2,F2<Fc2<Fspl …(8)
ここで、Fsplは、速度データを取得するサンプリング周波数であり、エンコーダ信号入力周波数とほぼ同周期である。
【0075】
次に、フィルタ演算について説明する。
【0076】
フィルタ演算は、次式(9)に示すように、検出される標本化データ(エンコーダデータe(n)data相当)と、帯域通過型フィルタFIL0の係数値hM(図10参照)との積和演算として定義される。
【0077】
【数1】
【0078】
図10に示すように、検出された元のエンコーダデータをバッファリングするメモリエリアDataOriginal[n](フィルタ係数の数と同サイズ)の先頭番地に「現在」のデータが入力されると、次式(9)による積和演算が実行される。そして、フィルタ係数テーブルによる演算後のエンコーダデータDataFilterPass[n]が出力される。
【0079】
フィルタ係数値h0〜hMは、合計すると「1」になるように設計されている。また、図10に示すように、フィルタ係数値は、中心値が最も大きくなるように重み付けされおり、信号処理の際に任意点におけるデータに対して重み付け係数を変化させる。つまり、デジタルフィルタの周波数特性を変化させることにより、必要とする周波数成分のみを持つデータプロファイルが得られる。
【0080】
図11(a)は、検出されたエンコーダデータに対して上記フィルタ演算を行った結果を示すグラフ図であり、横軸は入力データ数(時間レンジに相当)、縦軸は速度変動データである。
【0081】
図11(b)は、上式(9)を用いたフィルタ演算により得られたエンコーダデータプロファイルに対してFFT解析を行った結果を示すグラフ図であり、横軸は周波数、縦軸はパワースペクトルである。
【0082】
上記フィルタ演算及びFFT解析を実施することにより、上記第1の実施形態において濃度ムラの要因となる周波数として設定された振動スペクトルF2及びF3が抽出される。なお、振動スペクトルを抽出方法は、特に限定されず、上記以外の手法を用いて振動スペクトルを抽出してもよい。
【0083】
ステップS803では、制御ユニット105は、ステップS802で抽出された振動スペクトルが予め設定された所定値Pth以上か否かを判断する。所定値Pthは、画像出力時にピッチムラ画像が顕著に見られないレベルで設定される。
【0084】
そして、制御ユニット105は、振動スペクトルが所定値Pth未満の場合は、ステップS805に進んで、画像形成動作を実行し、振動スペクトルが所定値Pth以上の場合は、ステップS804に進む。
【0085】
ステップS804では、制御ユニット105は、モータドライバ回路104に送信する駆動パルスの周波数Fstmに対して上記第1の実施形態と同様の周波数拡散制御を行い、ステップS805に進む。
【0086】
本実施形態では、所定値Pth以上の振動スペクトルはF2となり、このときの変調範囲±Δ及び変調周期Tmは、上記第1の実施形態と同様に、抽出した振動スペクトルの周波数から算出される。
【0087】
例えば、変調対象の周波数スペクトルが36Hzの場合、回転体101の1周の長さを250mmとし、1Hzにて回転しているとすると、濃度ムラ周期は、250mm/36Hz=約7mmとなる。従って、変調周期Tmは、7mm/250mm=28ms以上となる。その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0088】
なお、本発明は、上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0089】
例えば、上記各実施形態では、変調対象の周波数の振動スペクトルが1つの場合を例示したが、これに限定されず、変調対象の周波数の振動スペクトルが複数存在する場合においても本発明を適用可能である。
【0090】
具体的に説明すると、図11(a)に示すように、回転体101の速度変動は、回転時の回転体101の位相に強く依存しており、位相により振動周波数及び変動幅が変化する。回転体101の1周で1sの正弦波速度変動をしている場合、36Hzの振動は、位相Aの時点が最も強く、40Hzの振動は、位相Bの時点で最も強くなる状況が生じる。
【0091】
従って、例えば、回転体101が位相Aの時点では、40Hzの振動成分低減効果が大きい制御パラメータによって周波数拡散制御を実施し、位相Bの時点では、45Hzの振動成分低減効果が大きい制御パラメータによって周波数拡散制御を実施する。
【0092】
このように、回転体101の位相に応じて制御パラメータを変更することにより、変調対象の周波数の振動スペクトルが複数存在する場合、つまり複数の濃度ムラが存在する場合においても、画像の濃度ムラの低減が可能となる。
【符号の説明】
【0093】
101 回転体
101a 回転軸
102 駆動ギア
103a ギア
103 モータ
104 モータドライバ回路
105 制御ユニット
106 エンコーダ
107 エンコーダ
108 コードホイール
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機やプリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の画像形成装置としては、例えば、図12及び図13に示すものがある。
【0003】
この画像形成装置は、図12に示すように、Y(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色毎の画像を形成する4組の画像形成部1300を備える。
【0004】
各画像形成部1300には、感光ドラム1301、現像器1306、クリーナ1307、帯電器1308、一次転写ローラ1309、レーザ光学系1310が配置される。
【0005】
画像形成動作は、図13に示すシステムコントローラ1320によって制御され、画像読取部1321や画像処理部1322からカラー画像データが各画像形成部1300に供給される。
【0006】
感光ドラム1301は、帯電器1308により表面が均一に帯電され、この状態でレーザ光学系1310から感光ドラム1301の表面にレーザ光Bが照射されることで、該表面に静電潜像が形成される。
【0007】
感光ドラム1301の表面に形成された静電潜像は、現像器1306で現像されてトナー像とされ、駆動ローラ1302により駆動される中間転写ベルト1311に一次転写ローラ1309を介して一次転写される。
【0008】
上記一連の動作を各画像形成部で行うことにより、中間転写ベルト1311上には各色Y,M,C,Kのトナー像が重なり合った状態で形成される。
【0009】
中間転写ベルト1311に転写されたトナー像は、二次転写ローラ1211を介してシートPに二次転写され、トナー像が転写されたシートPは、定着器1313を通過する際に、トナー像が加熱及び加圧されて定着された後、外部に排出される。
【0010】
なお、感光ドラム1301に残ったトナーは、ドラムクリーナ1307により除去され、中間転写ベルト1311に残ったトナーは、ベルトクリーナ1314により除去される。
【0011】
ところで、前述した画像形成装置では、像担持体としての感光ドラム1301や中間転写ベルト1311等の速度変動が、画像の濃度ムラ(ピッチムラ、バンディングとも呼ばれる)を発生させる要因となることが知られている。
【0012】
像担持体の速度変動要因としては、ギアピッチや回転系の固有振動、回転系にかかる負荷変動等が挙げられる。
【0013】
従来、フライホイール等や弾性部材の配置を工夫することにより、駆動装置全体の剛性を変更して、駆動源の回転による振動や伝達機構の噛合いによる振動の周波数との共振を防止する技術が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0014】
この提案では、回転系の慣性(イナーシャ)を機械的に変更・調整することにより、回転系の振動周波数をシフトさせて、画像の濃度ムラを低減するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3823474号公報
【特許文献2】特開2006−317474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上記従来例で、回転系の固有振動は、装置個々の部品のサイズや重量のバラツキにより、振動成分の周波数が低周波数域や高周波数域にシフトすることが多いため、画像の濃度ムラの低減効果のバラツキが大きいという問題がある。
【0017】
そこで、本発明は、装置個々の部品の固有振動のバラツキに影響を受けることなく、画像の濃度ムラを効果的に低減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体を回転させるための駆動力を発生するモータと、該モータに対して駆動パルスを送信する送信手段と、画像の濃度ムラを発生させる要因となる周波数として設定される前記駆動パルスの対象周波数に対して、所定の変調周期及び所定の変調範囲で周波数拡散制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置個々の部品の固有振動のバラツキに影響を受けることなく、画像の濃度ムラを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態である画像形成装置における回転体の駆動系を説明するための制御ブロック図である。
【図2】(a)は回転体の回転駆動時における速度変動データの一例を示すグラフ図、(b)は速度変動データに対して、FFT解析を実施することにより得られる振動プロファイルの一例を示すグラフ図である。
【図3】周波数拡散制御における周波数変調波形の一例を示すグラフ図である。
【図4】周波数拡散制御後の振動スペクトルの一例を示すグラフ図である。
【図5】画像形成装置における周波数拡散制御例について説明するためのフローチャート図である。
【図6】本発明の第2の実施形態である画像形成装置における回転体の駆動系を説明するための制御ブロック図である。
【図7】エンコーダの出力信号を用いて回転体の角速度変動を検出する方法を説明するためのタイミングチャート図である。
【図8】画像形成装置の動作例を説明するためのフローチャート図である。
【図9】回転体の振動スペクトル及びフィルタ特性を示すグラフ図である。
【図10】帯域通過型フィルタの係数プロファイルを示すグラフ図である。
【図11】(a)はフィルタ演算後の回転体の速度変動データを示すグラフ図、(b)はフィルタ演算後の回転体の回転駆動時における振動プロファイルを示すグラフ図である。
【図12】従来の画像形成装置を説明するための概略断面図である。
【図13】従来の画像形成装置の制御系を説明するための概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である画像形成装置における回転体の駆動系を説明するための制御ブロック図である。なお、本実施形態の画像形成装置の概略構成例については、既に図13で説明したものと略同様であるので、その説明を省略する。
【0023】
本実施形態では、図1に示す回転体101として、トナー像を担持する感光ドラム(感光体)、又は感光ドラムに担持されたトナー像が転写される中間転写ベルト(中間転写体)を駆動する駆動ローラを例に採る。
【0024】
回転体101の回転軸101aの端部には、駆動ギア102が同心に取り付けられている。駆動ギア102は、モータ103の出力軸に対して予め設計された減速比となるような所定の歯数Ngear(任意の正整数)を有する。
【0025】
モータ103の出力軸には、駆動ギア102に噛合する所定の歯数Nshaft(任意の正整数)のギア103aが形成されている。モータ103は、ギア103a,102を介して回転体101に駆動力を伝達する。なお、本実施形態では、モータ103をステッピングモータ(パルスモータ)とするが、これに限定されない。
【0026】
モータドライバ回路104は、制御ユニット105から送信されるモータ103の回転数に応じた駆動パルスをモータ103に出力する。
【0027】
モータ103は、モータドライバ回路104から出力される駆動パルスの周波数Fstm[pps]に応じて駆動され、駆動パルスにおける1パルス当りの回転角度θ0[rad]が規定されている。
【0028】
モータ103が1回転するのに必要なパルス数Mstm(任意の正整数)は次式(1)により与えられる。
Mstm=2π/θ0 …(1)
従って、モータ103の回転速度Vstm[min-1]は、次式(2)により与えられる。
Vstm=(Fstm/Mstm)×60 …(2)
例えば、2相ステッピングモータの場合には、1パルス当りの回転角度θ0[rad]=0.01πである。
【0029】
従って、1回転当りに必要なパルス数Mstmは、200パルスとなり、駆動周波数Fstm=3000[pps:Hz]とすると、回転速度Vstm=900[min-1]となる。
【0030】
また、モータ103により駆動ギア102を駆動して回転体101を回転させる場合、回転体101の回転角速度(=回転周波数)Vrot[min-1]は、次式(3)により与えられる。
Vrot=Vstm/(Ngear/Nshaft)=Vstm/Rgear…(3)
ここで、Rgear(= Ngear/Nshaft) は、駆動ギア102とモータ103の出力軸に形成されたギア103aとのギア比(減速比)である。
【0031】
ギア比Rgear=15とすると、回転体101の回転角速度Vrot=900/15=60[min-1](周波数では、60[min-1]/60[s]=1.0[Hz])となる。
【0032】
図2(a)は、回転体101の回転駆動時における速度変動データの一例を示すグラフ図であり、横軸が時間(入力データ数に相当する)、縦軸が速度変動(任意単位)を表す。
【0033】
図2(b)は、図2(a)に示す回転体101の速度変動データに対して、次式(4)に基づいてFFT解析を実施することにより得られる振動プロファイルの一例を示すグラフ図であり、横軸が周波数(Hz)、縦軸(任意単位)がパワースペクトルを表す。
X(k)=Σx(n)×exp(−2πknj/N) …(4)
x(n)は、取得されたn数の標本化データである。jは、虚数単位で、jj=√−1である。また、kは、周波数成分変換後の周波数軸単位を表し、X(k)は、周波数kにおいて算出されたパワースペクトル(該当周波数成分の強度:任意単位)を表す。
【0034】
ここで、FFT解析について簡単に説明する。
【0035】
図2(b)において、F0は回転体101の1回転の回転ムラ、F1は駆動ギア102の回転ムラであり、F0とF1との関係は、次式(5)で表される。
F1=F0×Rgear …(5)
前述の数値例からF0=1.0Hz、ギア比Rgear=15とすると、F1=15Hzとなる。
【0036】
F2は、回転系の固有振動成分(駆動源であるモータ103の固有振動成分も含む)を示しており、該周波数成分が、画像形成時において、濃度ムラを顕著に発生させる周波数成分となることが本発明者等により確認された。
【0037】
F3も、F2と同様に、回転系の固有振動成分を含むスペクトルであるが、F2に対して強度レベルが小さいため、濃度ムラへの影響は低い状態であることが本発明者等により確認された。
【0038】
一般的に画像形成装置においては、回転系の振動スペクトルのピークが急峻、つまり振動周期が安定している場合に、濃度ムラが、人間の視覚において顕著に認識される傾向にあることが知られている。
【0039】
次に、図3を参照して、周波数拡散制御について説明する。
【0040】
図3において、縦軸は周波数[Hz]、横軸は時間[s]を示している。周波数拡散制御は、対象周波数Faを所定の範囲±△%内で所定の変調周期Tmにて変化させる制御である。
【0041】
周波数拡散制御により、図4に示すように、対象となる周波数の振動スペクトルのピークを所定レベルに平滑化ができることが一般的に知られている。図4において、縦軸はパワースペクトル[a.u]、横軸は周波数[Hz]を示している。
【0042】
そこで、図2におけるF2の周波数成分に対して、図3及び図4に示す周波数拡散制御を行うことにより、F2の振動スペクトルのピークを平滑化すること、つまり、振動周期を変化させることができるため、画像形成時における濃度ムラを低減することができる。
【0043】
次に、周波数拡散制御の具体例について説明する。
【0044】
実際の周波数拡散制御は、制御ユニット105からモータ103を駆動するモータドライバ回路104に送信される駆動パルスFstmに対して行われる。
【0045】
このときの制御パラメータの設定は、駆動パルスの周波数Fstmに対する変調範囲の設定、及び変調周期Tmの設定がある。
【0046】
駆動パルスの周波数Fstmに対する変調範囲を設定するには、まず、+側の変調範囲幅Δと−側の変調範囲幅Δを同一とする。これは、+側の範囲と−側の範囲に偏りがある場合、出力画像の倍率に偏りを生じてしまうためである。
【0047】
変調範囲幅Δは、変調対象の周波数の振動スペクトル(本実施形態では、図2におけるF2スペクトルとする)と該振動スペクトルに最も隣接する周波数の振動スペクトル(図2におけるF3スペクトル)とが重ならない範囲になるように設定する。これは、対象周波数の振動スペクトルと隣接する周波数の振動スペクトルとの共振を防止するためである。
【0048】
例えば、図2では、変調対象の周波数の振動スペクトルF2が36Hzの場合、振動スペクトルF2に最も隣接する周波数の振動スペクトルF3が40Hzであるため、36Hzの変調範囲幅Δは、+側及び−側で約10%以下となる。
【0049】
なお、中心周波数の変調は、その変調範囲幅Δ(各々の回転系により調整される)に応じて出力画像の倍率を変動させることになるため、実際には、可能な限り小さい幅にて変調を行う。
【0050】
一方、変調周期Tmを設定するには、変調周期Tmは、実際の画像形成装置の出力画像における濃度ムラの発生周期以上に設定する。これは、濃度ムラの発生周期がより長い周期であるほど、人間の視覚的に認識が難しくなるためである。
【0051】
例えば、回転体101の周長:250mm、回転角速度Vrot=60[min-1](1.0Hz)とすると、出力画像で5mmの回転体101に起因するピッチムラが生じている場合、変調周期Tm=5mm/(250mm/s)=20ms以上となる。
【0052】
上述した変調範囲幅△および変調周期Tmは、出力画像における濃度ムラの発生レベルにより調整される。
【0053】
次に、図5を参照して、本実施形態の画像形成装置における周波数拡散制御例について説明する。図5での各処理は、不図示のROMやHDD等の記憶部に記憶されたプログラムがRAMにロードされて、制御ユニット105のCPU等により実行される。
【0054】
ここで、上述した変調範囲±△および変調周期Tmは、回転系の振動系事前検証により予め設定されているものとする。また、実際のモータ103の駆動には、加速時間、定速安定時間(加速中の振動が所定レベルまで減衰するまでの時間)が必要であり、該時間経過後に、図5の制御が実行される。
【0055】
まず、ステップS501では、制御ユニット105は、モータドライバ回路104に対する駆動パルスの周波数Fstm[pps]、周波数Fstmの変調範囲±△[%]、及び変調周期Tm[s]を設定し、ステップS502に進む。
【0056】
ステップS502では、制御ユニット105は、回転体101の回転動作開始と同期して、ステップS501で設定された制御パラメータに基づいて、駆動パルスの周波数Fstmを変調し、モータドライバ回路104を介してモータ103を駆動する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、像担持体に駆動力を伝達するモータ103の駆動パルスに対して所定の周波数拡散制御を行うことにより、装置個々の部品の固有振動のバラツキに影響を受けることなく、画像の濃度ムラを効果的に低減することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、図6〜図12を参照して、本発明の第1の実施形態である画像形成装置について説明する。なお、上記第1の実施形態に対して重複又は相当する部分については、図に同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
本実施形態の画像形成装置は、図6に示すように、回転体101の回転軸101aにおける駆動ギア102の反対側の端部にコードホイール108が同心に取り付けられ、コードホイール108には、エンコーダ106,107が対向配置されている。
【0060】
コードホイール108は、予め設計された所定幅Lwheel[m]のスリットパターンを所定数Nwheel有しており、エンコーダ106,107は、コードホイール108のスリットパターンの入力間隔に同期したエンコーダ信号を出力する。
【0061】
また、エンコーダ106,107は、互いに相反する位相に設定されている。このようにした理由は、回転体101自体の偏心成分やコードホイール108の偏心成分による回転体101の角速度への影響をキャンセルするためである。
【0062】
ここで、回転体101の角速度ωRは、エンコーダ106からの信号により検出される速度データVencA、エンコーダ107からの信号により検出される速度データVencBとすると、次式(6)により与えられる。
ωR=(VencA+VencB)/2 …(6)
制御ユニット105は、基準クロックC0[Hz](1クロックの周期=1/C0[sec])により動作し、エンコーダ106,107の出力信号を用いてコードホイール108のスリットパターンの入力間隔をカウントする。
【0063】
図7は、エンコーダ106,107の出力信号を用いて回転体101の角速度変動を検出する方法を説明するためのタイミングチャート図である。
【0064】
図7(a)は、基準クロックC0を示し、図7(b)は、エンコーダ106(又は107)入力を示しており、エンコーダ出力信号(本実施形態では、エンコーダ106の信号入力を基準とする)を0番目の入力としている。
【0065】
図7(c)は、エンコーダ出力信号の立ち上がりエッジを基準として計測されたカウント数を示し、図7(d)は、カウント数によって検出される速度データを示す。
【0066】
制御ユニット105は、任意のN番目のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジが計測されると、N−1番目のエンコーダデータe(N−1)dataを取得する。
【0067】
ここで、制御ユニット105が取得するエンコーダデータe(N−1)dataは、時間[sec]と同義であり、N−1番目の速度データ Ve(N−1)は、次式(7)により与えられる。
Ve(N−1)=Lwheel[m]/e(N−1)data[sec] …(7)
ここで、Lwheelは一定値であるため、取得したエンコーダデータにより任意の位相における回転体101の角速度変動が検出可能である。
【0068】
次に、図8を参照して、本実施形態の画像形成装置の動作例について説明する。図8での各処理は、不図示のROMやHDD等の記憶部に記憶されたプログラムがRAMにロードされて、制御ユニット105のCPU等により実行される。
【0069】
ステップS801では、制御ユニット105は、回転体101の回転動作開始と同期して、駆動パルスの周波数Fstmをモータドライバ回路104に送信して、モータ103を駆動する。
【0070】
そして、制御ユニット105は、エンコーダ106,107の出力信号に基づき、上述した手法で回転体101の角速度変動データを取得し、ステップS802に進む。
【0071】
ステップS802では、制御ユニット105は、取得した角速度変動データに対して、例えば、予め設定された所定の周波数通過特性を有するフィルタ演算及びFFT解析を実施して、所定の周波数領域における振動スペクトルを抽出し、ステップS803に進む。
【0072】
ここで、振動スペクトルを抽出方法の一例を具体的に説明する。
【0073】
図9において、フィルタFIL0は、30Hz〜50Hzの周波数帯域を通過させるフィルタである。なお、この周波数帯域は、出力画像において濃度ムラが顕著に認識可能な帯域として本発明者等が実験等により求めた一例であり、個々の画像形成装置において、濃度ムラが顕著に発生する周波数領域を任意に設定可能である。
【0074】
フィルタFIL0の周波数通過特性は、帯域通過型フィルタと呼ばれ、遮断周波数Fc1、Fc2は次式(8)の条件を満たすとものする。
F1<Fc1<F2,F2<Fc2<Fspl …(8)
ここで、Fsplは、速度データを取得するサンプリング周波数であり、エンコーダ信号入力周波数とほぼ同周期である。
【0075】
次に、フィルタ演算について説明する。
【0076】
フィルタ演算は、次式(9)に示すように、検出される標本化データ(エンコーダデータe(n)data相当)と、帯域通過型フィルタFIL0の係数値hM(図10参照)との積和演算として定義される。
【0077】
【数1】
【0078】
図10に示すように、検出された元のエンコーダデータをバッファリングするメモリエリアDataOriginal[n](フィルタ係数の数と同サイズ)の先頭番地に「現在」のデータが入力されると、次式(9)による積和演算が実行される。そして、フィルタ係数テーブルによる演算後のエンコーダデータDataFilterPass[n]が出力される。
【0079】
フィルタ係数値h0〜hMは、合計すると「1」になるように設計されている。また、図10に示すように、フィルタ係数値は、中心値が最も大きくなるように重み付けされおり、信号処理の際に任意点におけるデータに対して重み付け係数を変化させる。つまり、デジタルフィルタの周波数特性を変化させることにより、必要とする周波数成分のみを持つデータプロファイルが得られる。
【0080】
図11(a)は、検出されたエンコーダデータに対して上記フィルタ演算を行った結果を示すグラフ図であり、横軸は入力データ数(時間レンジに相当)、縦軸は速度変動データである。
【0081】
図11(b)は、上式(9)を用いたフィルタ演算により得られたエンコーダデータプロファイルに対してFFT解析を行った結果を示すグラフ図であり、横軸は周波数、縦軸はパワースペクトルである。
【0082】
上記フィルタ演算及びFFT解析を実施することにより、上記第1の実施形態において濃度ムラの要因となる周波数として設定された振動スペクトルF2及びF3が抽出される。なお、振動スペクトルを抽出方法は、特に限定されず、上記以外の手法を用いて振動スペクトルを抽出してもよい。
【0083】
ステップS803では、制御ユニット105は、ステップS802で抽出された振動スペクトルが予め設定された所定値Pth以上か否かを判断する。所定値Pthは、画像出力時にピッチムラ画像が顕著に見られないレベルで設定される。
【0084】
そして、制御ユニット105は、振動スペクトルが所定値Pth未満の場合は、ステップS805に進んで、画像形成動作を実行し、振動スペクトルが所定値Pth以上の場合は、ステップS804に進む。
【0085】
ステップS804では、制御ユニット105は、モータドライバ回路104に送信する駆動パルスの周波数Fstmに対して上記第1の実施形態と同様の周波数拡散制御を行い、ステップS805に進む。
【0086】
本実施形態では、所定値Pth以上の振動スペクトルはF2となり、このときの変調範囲±Δ及び変調周期Tmは、上記第1の実施形態と同様に、抽出した振動スペクトルの周波数から算出される。
【0087】
例えば、変調対象の周波数スペクトルが36Hzの場合、回転体101の1周の長さを250mmとし、1Hzにて回転しているとすると、濃度ムラ周期は、250mm/36Hz=約7mmとなる。従って、変調周期Tmは、7mm/250mm=28ms以上となる。その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0088】
なお、本発明は、上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0089】
例えば、上記各実施形態では、変調対象の周波数の振動スペクトルが1つの場合を例示したが、これに限定されず、変調対象の周波数の振動スペクトルが複数存在する場合においても本発明を適用可能である。
【0090】
具体的に説明すると、図11(a)に示すように、回転体101の速度変動は、回転時の回転体101の位相に強く依存しており、位相により振動周波数及び変動幅が変化する。回転体101の1周で1sの正弦波速度変動をしている場合、36Hzの振動は、位相Aの時点が最も強く、40Hzの振動は、位相Bの時点で最も強くなる状況が生じる。
【0091】
従って、例えば、回転体101が位相Aの時点では、40Hzの振動成分低減効果が大きい制御パラメータによって周波数拡散制御を実施し、位相Bの時点では、45Hzの振動成分低減効果が大きい制御パラメータによって周波数拡散制御を実施する。
【0092】
このように、回転体101の位相に応じて制御パラメータを変更することにより、変調対象の周波数の振動スペクトルが複数存在する場合、つまり複数の濃度ムラが存在する場合においても、画像の濃度ムラの低減が可能となる。
【符号の説明】
【0093】
101 回転体
101a 回転軸
102 駆動ギア
103a ギア
103 モータ
104 モータドライバ回路
105 制御ユニット
106 エンコーダ
107 エンコーダ
108 コードホイール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体を回転させるための駆動力を発生するモータと、
該モータに対して駆動パルスを送信する送信手段と、
画像の濃度ムラを発生させる要因となる周波数として設定される前記駆動パルスの対象周波数に対して、所定の変調周期及び所定の変調範囲で周波数拡散制御を行う制御手段と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記変調周期は、画像の濃度ムラの発生周期以上に設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変調範囲は、前記対象周波数の振動スペクトルと該対象周波数に隣接する周波数の振動スペクトルとが重ならない範囲に設定される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体の速度変動を検出する検出手段と、
該検出手段により検出された速度変動データに基づいて、前記対象周波数の振動スペクトルを抽出する抽出手段と、を備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記像担持体の位相に応じて前記変調周期及び前記変調範囲を変更して、前記周波数拡散制御を行う、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体は、トナー像を担持する感光体、及び該感光体に担持されたトナー像が転写される中間転写体を含む、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体を回転させるための駆動力を発生するモータと、
該モータに対して駆動パルスを送信する送信手段と、
画像の濃度ムラを発生させる要因となる周波数として設定される前記駆動パルスの対象周波数に対して、所定の変調周期及び所定の変調範囲で周波数拡散制御を行う制御手段と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記変調周期は、画像の濃度ムラの発生周期以上に設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変調範囲は、前記対象周波数の振動スペクトルと該対象周波数に隣接する周波数の振動スペクトルとが重ならない範囲に設定される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体の速度変動を検出する検出手段と、
該検出手段により検出された速度変動データに基づいて、前記対象周波数の振動スペクトルを抽出する抽出手段と、を備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記像担持体の位相に応じて前記変調周期及び前記変調範囲を変更して、前記周波数拡散制御を行う、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体は、トナー像を担持する感光体、及び該感光体に担持されたトナー像が転写される中間転写体を含む、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−224476(P2010−224476A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74479(P2009−74479)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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