説明

画像形成装置

【課題】 良質な画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】 一対のレジストローラ17A、17Bのニップ部P1に用紙が到達したときに、内側レジストローラ17Aを逆転の向きに回転させる。これにより、一対のレジストローラ17A、17Bに突入して挟持(ニップ)された用紙先端は、内側レジストローラ17Aにより外側レジローラ17Bに擦り付けられるようにしごかれるので、用紙先端が波打つように歪んでいる場合であっても、その歪みを矯正することができる。したがって、用紙の歪みも矯正しつつ、用紙の斜行をより確実に矯正して、良質な画像形成を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成部の入口側で記録シートの斜行を矯正する一対のレジストローラを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、一対のレジストローラのうち一方のレジストローラを駆動ローラとし、他方のレジストローラを記録シートに接触して従動回転する従動ローラとするとともに、記録シートの先端が一対のレジストローラのニップ点に到達して僅かに挟持(ニップ)された時に、駆動ローラをなす一方のレジストローラを停止させた後、逆転の向きに回転させることにより、記録シートの斜行を矯正(補正)している。
【0003】
なお、レジストローラを正転の向きに回転させるとは、記録シートを画像形成部側に搬送するための向きにレジストローラを回転させることをいい、レジストローラを逆転の向きに回転させるとは、レジストローラを正転の向きと逆向きに回転させることをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−318883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、多湿環境下に放置されて水分を多く含んだ(吸湿した)用紙等の記録シートでは、記録シートの先端部が波打つように歪んでしまうことがあるが、この歪んだ記録シートをそのまま画像形成部に搬送して画像形成を行うと、記録シートの歪みがしわ(皺)となって、いわゆる「転写しわ」等が発生し、記録シートに形成された画像も歪んでしまうので、良質な画像形成を行うことができない。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、良質な画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、記録シートに画像を形成する画像形成部と、画像形成部の入口側において記録シートをその厚み方向から挟持することができるように配設され、画像形成部に搬送される記録シートの斜行を矯正する一対のレジストローラと、一対のレジストローラのニップ部に記録シートが到達するときに、一対のレジストローラのうち一方のレジストローラを逆転の向きに回転させた後、正転の向きに回転させる回転制御手段と、少なくとも回転制御手段の作動時に、一対のレジストローラのうち他方のレジストローラに回転抵抗を作用させる抵抗手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、「レジストローラのニップ部に記録シートが到達するとき」とは、記録シートの搬送方向先端(以下、シート先端という。)がニップ部に到達して、シート先端がニップ部にて僅かに挟持(ニップ)された時をいう。
【0009】
また、「一方のレジストローラを逆転の向きに回転させ」とは、記録シートがニップ部に到達する時点で、仮に、一方のレジストローラが正転の向きに回転している場合には、
その一方のレジストローラを一旦停止させた後に逆転の向きに回転させる場合、及び一旦停止させることなく、そのまま逆回転させる場合のいずれでもよい。なお、記録シートがニップ部に到達する時点で一方のレジストローラが停止している場合には、そのまま逆回転させればよい。
【0010】
そして、請求項1に記載の発明では、一対のレジストローラのニップ部に記録シートが到達するときに、一方のレジストローラを逆転の向きに回転させるので、特許文献1に記載の発明と同様に、記録シートの斜行を矯正(補正)することができる。
【0011】
また、他方のレジストローラは抵抗手段から回転抵抗を受けているので、一方のレジストローラを逆転の向きに回転させたときには、他方のレジストローラは、停止又は一方のレジストローラの周速に比べて小さい周速で回転することとなる。
【0012】
このため、一対のレジストローラに突入した記録シートの先端は、一方のレジストローラにより他方のレジストローラに擦り付けられるようにしごかれるので、シート先端が波打つように歪んでいる場合であっても、その歪みを矯正することができる。
【0013】
したがって、請求項1に記載の発明では、記録シートの歪みを矯正しつつ、記録シートの斜行を矯正することができるので、斜行の矯正をより確実に行うことができるとともに、歪みの少ない良質な画像形成を行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、他方のレジストローラは、記録シートに付着した紙粉を記録シートから除去する紙粉取り機能も有しており、さらに、回転制御手段の作動時には、他方のレジストローラの回転が停止していることを特徴とする。
【0015】
ところで、仮に、紙粉取り機能を有する他のレジストローラが逆向きに回転してしまうと、除去された紙粉が記録シートや画像形成部等に流出してしまうという不具合が発生するおそれが高くなるが、請求項2に記載の発明では、一方のレジストローラが逆向きに回転しているときには、他方のレジストローラの回転は停止するので、上記のような不具合は殆ど発生しない。
【0016】
また、請求項3に記載の発明では、一方のレジストローラに回転力を供給する第1モータ、及び他方のレジストローラに回転力を供給する第2モータを備えているので、各レジストローラの作動を独立して制御することができ、容易に請求項1に記載の発明を構成することができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明では、第2モータから他方のレジストローラに至る回転力伝達経路に設けられ、回転力の伝達を断続するクラッチ手段を備え、第2モータは、他方のレジストローラ以外にも回転力を供給しており、さらに、回転制御手段の作動時には、クラッチ手段により他方のレジストローラへの回転力の伝達が遮断されることを特徴とするので、他方のレジストローラを速やかに、停止又は一方のレジストローラの周速に比べて小さい周速で回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の中央断面図である。
【図2】本発明の実施形態における駆動力の伝達経路を示す説明図である。
【図3】ベルトユニット19等を上方側から見た図である。
【図4】搬送経路L1及びその周囲の拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置の電気系を示すブロック図である。
【図6】一対のレジストローラ17A、17Bの作動制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態は、本発明に係る画像形成装置を、いわゆるレーザプリンタに適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.画像形成装置の概略構造
画像形成装置1の筐体3内には、図1に示すように、記録用紙やOHPシート等の記録シート(以下、用紙という。)に現像剤像を転写することにより、用紙に画像を形成する電子写真方式の画像形成部5が収納されている。
【0020】
画像形成部5は、周知のごとく、プロセスカートリッジ7、感光ドラム7Aを露光する露光器9、感光ドラム7Aに形成された現像剤像を用紙に転写させる転写ローラ11、及び用紙に転写された現像剤像を加熱定着させる定着器13等から構成されている。
【0021】
なお、本実施形態に係る画像形成部5は、用紙の搬送方向に沿って複数個(本実施形態では、4個)のプロセスカートリッジ7K〜7Cが直列に配設され、複数種類の現像剤像を直接的に用紙に転写するダイレクトタンデム方式のものである。
【0022】
そして、本実施形態では、4個のプロセスカートリッジ7は、スライダケーシング(図示せず。)に収納されて一体化されたドロワーユニットとして、筐体3内に着脱可能に組み付けられている。
【0023】
このため、筐体3の前面側に設けられたフロントカバー3Aを開いてスライダケーシングを水平方向に出し入れすることにより、4個のプロセスカートリッジ7を一体的に装置本体に対して脱着することができる。
【0024】
また、各プロセスカートリッジ7K〜7Cは、現像剤像が担持される感光ドラム7A、及び感光ドラム7Aを帯電させる帯電器7B等から構成され、露光器9は、感光ドラム7Aの軸方向と平行な方向にレーザ光を走査する、いわゆるレーザスキャナにて構成され、定着器13は、用紙に転写された現像剤を加熱する加熱ローラ13A及び用紙を加熱ローラ13Aに押し付ける加圧ローラ13B等から構成されている。
【0025】
また、給紙カセット15は、画像形成部5に搬送される用紙が積層された状態で収納される収納トレイであり、この給紙カセット15は、装置本体(筐体3)に対して着脱可能に装着されている。
【0026】
そして、給紙カセット15に収納されている用紙は、ピックアップローラ15Aにより画像形成部5に向けて搬出された後、分離ローラ15B及び分離パッド15Cにより1枚ずつ分離され、搬送ローラ16Aにより搬送力が付与された後、その搬送方向が上方側に略180度転向される。因みに、ローラ16Bは、用紙を搬送ローラ16Aに押し付けるコロである。
【0027】
また、搬送ローラ16Aより搬送方向下流側であって、画像形成部5の入口側には、搬送されてくる用紙の幅方向(画像形成装置1の左右方向)に延びて幅方向全域で用紙に接触することにより、搬送されてきた用紙の斜行を矯正する一対のレジストローラ17A、17Bが設けられている。
【0028】
そして、一対のレジストローラ17A、17Bは、搬送されてきた用紙をその厚み方向から挟持(ニップ)するような位置、つまり用紙を挟んで対向する位置に配設されているとともに、用紙の搬送方向先端が一対のレジストローラ17A、17Bに到達したことが
第1用紙センサ18(以下、レジ前センサ18という。)により検出されたときに、その回転が所定時間だけ逆転され、用紙を堰き止めるようにして斜行を矯正する。
【0029】
なお、レジ前センサ18は、図4に示すように、一対のレジストローラ17A、17Bの入口側に揺動可能に設けられたアクチュエータ18Aの状態を透過型光センサ(図示せず。)にて検出することより、用紙の搬送方向先端が一対のレジストローラ17A、17Bの入口に到達したか否かを検出する。
【0030】
また、一対のレジストローラ17A、17Bのうちレジストローラ17A(以下、このレジストローラを内側レジストローラ17Aという。)は、第1電動モータM1(図5参照)から駆動力を得ており、この第1電動モータM1の回転を制御することにより内側レジストローラ17Aの回転が制御される。
【0031】
一方、レジストローラ17B(以下、このレジストローラを外側レジローラ17Bという。)は、用紙を内側レジストローラ17Aに押し付けるとともに、加熱ローラ13A等に駆動力を供給する第2電動モータM2(図5参照)から駆動力を得て回転する。
【0032】
そして、第2電動モータM2から外側レジローラ17Bに至る駆動力(回転力)の伝達経路には、図2に示すように、駆動力の伝達を断続するクラッチ機構17Cが設けられており、このクラッチ機構17Cの作動、つまり外側レジローラ17Bへの駆動力の伝達は、後述する制御部31により制御されている。
【0033】
因みに、本実施形態に係るクラッチ機構17Cは、駆動力伝達用の摩擦板を電磁ソレノイドにて変位させる電磁クラッチを採用しているが、クラッチ機構17Cは電磁クラッチに限定されるものではなく、例えば、駆動力を伝達する歯車を電磁ソレノイドにて変位させるクラッチ機構でもよい。
【0034】
なお、本実施形態に係るクラッチ機構17Cでは、クラッチ機構17C(電磁ソレノイド)への通電が遮断されているときには駆動力が伝達可能な状態(以下、この状態をクラッチ機構17CがON状態であるという。)となり、逆に、クラッチ機構17C(電磁ソレノイド)へ通電されているときは、駆動力の伝達が遮断された状態(以下、この状態をクラッチ機構17CがOFF状態であるという。)となる。
【0035】
また、外側レジローラ17Bは、後述する紙粉除去部21と接触することにより摩擦帯電されて電荷を帯びており、この電荷による静電吸引力を利用して用紙に付着した紙粉等の異物(以下、単に紙粉という。)を外側レジローラ17Bに吸着させて回収するように構成されている。このため、本実施形態では、外側レジローラ17Bは紙粉取りローラとしての機能も備える。
【0036】
そして、外側レジローラ17Bの外周面側には、図4に示すように、外側レジローラ17Bの外周面に接触して摩擦帯電させるとともに、その外側レジローラ17Bの外周面に吸着回収された紙粉を掻き取るための紙粉除去部21が設けられており、この紙粉除去部21により掻き取られた紙粉はオーガ23により紙粉貯留部(図示せず。)まで移送される。
【0037】
因みに、本実施形態では、紙粉除去部21は、外側レジローラ17を摩擦帯電させるのに適した材質からなるスポンジ等の多孔質弾性部材に構成されており、オーガ23はスクリュー状のロータであって、スクリューポンプ方式の粉体輸送ポンプを構成するものである。
【0038】
また、紙粉除去部21は、幅方向略全域に延びて外側レジローラ17Bに接触し、かつ、保持部材21Aに両面テープや接着剤等を介して固定されており、保持部材21Aは、紙粉除去部21を外側レジローラ17Bに押し付ける板バネ状の金属製部材である。因みに、保持部材21Aは、オーガ23を囲むハウジングフレーム23A等に固定されている。
【0039】
このため、紙粉除去部21は、保持部材21Aの弾性力により常に所定以上の接触面圧にて外側レジローラ17Bの外周面に接触することとなるので、紙粉除去部21は、外側レジローラ17Bを摩擦帯電させながら、その静電吸引力により外側レジローラ17Bに吸着回収された紙粉を掻き取る紙粉除去機能を発揮するとともに、外側レジローラ17Bに所定の回転抵抗を作用させて、自由回転(連れ回り回転)ができないようにする抵抗手段としても機能する。
【0040】
また、一対のレジストローラ17A、17Bより搬送方向下流側であって、画像形成部5(後述するベルトユニット19)の入口側には、図1に示すように、用紙が一対のレジストローラ17A、17Bから排出されたか否かを検出する第2用紙センサ20(以下、レジ後センサ20という。)が設けられており、このレジ後センサ20が用紙の搬送方向先端を検出した時を基準として、画像形成動作を開始するタイミング、すなわち、各感光ドラム7Aに対して露光を開始するタイミング、あるいは、各感光ドラム7Aに担持された現像剤像を用紙に転写するタイミング等が制御される。
【0041】
つまり、一対のレジストローラ17A、17Bの出口側からベルトユニット19に至る用紙の搬送経路には、図4に示すように、一対のレジストローラ17A、17Bから斜め上方側に向けて排出された用紙を、後述する転写ベルト19D(従動ローラ19B)側に転向させる用紙ガイド部17F、17Gが設けられており、これら用紙ガイド部17F、17Gにより構成された用紙搬送経路L1に、レジ後センサ20のアクチュエータ20Aが揺動可能に配設されている。
【0042】
なお、レジ後センサ20は、一対のレジストローラ17A、17Bの出口側に揺動可能に設けられたアクチュエータ20Aの状態を透過型光センサ(図示せず。)にて検出することにより、用紙の搬送方向先端が一対のレジストローラ17A、17Bから排出されたか否かを検出する。
【0043】
また、ピックアップローラ33Aは、MPトレイ(図示せず。)に載置されている用紙を一対のレジストローラ17A、17B側に搬出するものであり、このピックアップローラ33Aにより搬出された用紙は、分離ローラ33B及び分離パッド33Cにより1枚ずつ分離されて一対のレジストローラ17A、17Bに向けて搬送される。因みに、MPトレイ(マルチパーパス給紙トレイ)とは、手差しトレイ等の給紙カセット15以外から用紙を画像形成部5に供給する際に用いる給紙部をいう。
【0044】
また、ベルトユニット19は、図1に示すように、筐体3や本体フレーム等の装置本体に着脱可能に装着されているとともに、回転軸が感光ドラム7Aの軸方向と平行に配設された一対のローラ19A、19B、これらのローラ19A、19Bを保持するベルトフレーム19C(図3参照)、及び一対のローラ19A、19B間に架け渡された転写ベルト19Dを有して構成されている。
【0045】
すなわち、ローラ19Aは、第2電動モータM2から駆動力が供給されて回転する駆動ローラであり、ローラ19Bは、転写ベルト19Dの回転に従動して回転する従動ローラであり、転写ベルト19Dは、その展張部19Eが4個のプロセスカートリッジ7(感光ドラム7A)と対向した状態で回転しながら用紙を定着器13側に搬送する無端ベルトで
ある。
【0046】
なお、「転写ベルト19Dの展張部19E」とは、転写ベルト19Dのうち張力が作用することにより平面状に緊張した部分をいい、具体的には、転写ベルト19Dのうち一対のローラ19A、19B間に形成される平面部をいう。
2.画像形成装置の電気系の概略構成
第1電動モータM1、第2電動モータM2、クラッチ機構17C及び画像形成部5等は、図5に示すように、制御部31により制御されており、この制御部31にはレジ前センサ18及びレジ後センサ20から出力された信号が入力されている。
【0047】
そして、制御部31は、レジ前センサ18及びレジ後センサ20から信号、並びに予め決められたプログラムに従って第1電動モータM1、第2電動モータM2、クラッチ機構17C及び画像形成部5等を制御する。
【0048】
なお、制御部31は、CPU、RAM及びROM等からなる周知のマイクロコンピュータにて構成されたもので、以下の制御を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶手段に記憶されており、制御部31(CPU)は、ROMからプログラムを読み込んで予め決められた制御作動を実行する。
3.一対のレジストローラの作動制御
図6に示すフローチャートは、一対のレジストローラ17A、17Bの回転制御を示すフローチャートであり、この制御は、画像形成装置1に対して印刷指令がされ、加熱ローラ13A(第2電動モータM2)等が回転し始めると同時に起動され、用紙への画像形成が終了したときに終了する。
【0049】
そして、第2電動モータM2が正転の向きに回転駆動されると、クラッチ機構17CをON状態としたまま、内側レジストローラ17Aの周速と外側レジローラ17Bの周速とが同一となるように、第1電動モータM1も正転の向きに回転駆動される(S1)。
【0050】
次に、レジ前センサ18が搬送されてくる用紙の搬送方向先端(以下、用紙先端という。)を検出した時から所定時間(本実施形態では、約0.2秒)が経過したか否かが判定される(S3)。
【0051】
なお、このS3による判定は、一対のレジストローラ17A、17Bのニップ部P1(図4参照)に用紙先端が到達したか否かを判定するものであり、「ニップ部P1に用紙先端が到達するとき」とは、用紙先端がニップ部P1に到達して、用紙先端がニップ部P1にて僅かに挟持(ニップ)された時をいい、本実施形態では、レジ前センサ18により用紙先端を検出した時からの経過時間に基づいて、用紙先端がニップ部P1に到達したか否かを判定するようにしている。
【0052】
そして、用紙先端がニップ部P1に到達していないと判定された場合には(S3:NO)、現在の状態(S1)が維持され、一方、用紙先端がニップ部P1に到達したと判定された場合には(S3:YES)、第1電動モータM1(内側レジストローラ17A)が逆転の向きに回転駆動されると同時に、クラッチ機構17CがOFF状態とされる(S5)。
【0053】
これにより、S5では、外側レジローラ17Bへの駆動力の伝達が遮断され、かつ、外側レジローラ17Bは紙粉除去部21から回転抵抗を受けるため、外側レジローラ17Bの回転が停止する。すなわち、内側レジストローラ17Aが逆向きに回転駆動されたとしても、その逆回転に伴って、外側レジローラ17Bが連れ回り回転することはない。
【0054】
次に、第1電動モータM1(内側レジストローラ17A)が逆転し、かつ、クラッチ機構17CがOFF状態となった時から所定時間(本実施形態では、0.2秒)が経過したか否かが判定され(S7)、所定時間が経過していないと判定された場合には(S7:NO)、内側レジストローラ17Aが逆転し、かつ、クラッチ機構17CがOFF状態となった状態が維持される(S5)。
【0055】
一方、S7にて、所定時間が経過したと判定された場合には(S7:YES)、クラッチ機構17CがON状態とされると同時に、内側レジストローラ17Aの周速と外側レジローラ17Bの周速とが同一となるように、第1電動モータM1も正転の向きに駆動される(S1)。
4.本実施形態に係る画像形成装置の特徴
本実施形態では、一対のレジストローラ17A、17Bのニップ部P1に用紙が到達するときに、内側レジストローラ17Aを逆転の向きに回転させるので、特許文献1に記載の発明と同様に、用紙の斜行を矯正することができる。
【0056】
また、前述したように、外側レジローラ17Bは紙粉除去部21から常に回転抵抗を受けているので、内側レジストローラ17Aを逆転の向きに回転させたとき、つまりクラッチ機構17CがOFFとされたときには、外側レジローラ17Bは、ほぼ停止状態となる。
【0057】
このため、一対のレジストローラ17A、17Bに突入して、ニップ部P1に挟持(ニップ)された用紙先端は、内側レジストローラ17Aの逆向きの回転に伴って、レジ前センサ18側に戻される際、停止状態にある外側レジローラ17Bの外周面に擦り付けられるようにしごかれる(扱かれる)。したがって、先端部が波打つように歪んでいた場合であっても、上記のようなしごき作用を与えることによって、波打つような歪みを矯正して、ほぼ平坦とさせることができる。
【0058】
なお、内側レジストローラ17Aが逆向きに回転する際、外側レジローラ17Bの外周面に対して用紙はスリップすることになるが、内側レジストローラ17Aと用紙との間では、多少のスリップが生ずるようにしてもよいし、スリップがほとんどしないようにしてもよい。これらは、たとえば、上記各ローラの外周面の材質、あるいは表面粗さ等を適宜設定することにより、用紙表面との間で最適な摩擦力が発生するようにすればよい。
【0059】
そして、内側レジストローラ17Aの逆向きの回転に伴って、少なくとも、用紙幅方向の全域に亘ってニップ部P1から外れる位置まで戻された用紙は、その先端付近の部分にできた反りを解消しようとする復元力が働くため、ニップ部P1に対してほぼ並行となるように用紙先端が突き当てられる。
【0060】
その後、内側レジストローラ17Aが正転の向きに回転させられるのに伴い、ニップ部P1に突き当たっていた用紙先端は、すでに、波打つような歪みも解消されていることから、斜行の矯正も確実に行われつつ、画像形成部5に向かって搬送されることとなる。
【0061】
したがって、本実施形態では、用紙の先端に波打つような歪みがあったとしても、用紙の歪みを矯正しつつ、斜行をより確実に矯正することができる。これにより、用紙の歪みがしわ(皺)となって、いわゆる「転写しわ」等が発生する虞もなく、良質な画像形成を行うことが可能となる。
【0062】
ところで、仮に、紙粉取り機能を有する外側レジローラ17Bが逆向きに回転してしまうと、外側レジローラ17Bに吸着されていた紙粉が、内側レジストローラ17Aに付着して、用紙や画像形成部5等に流出してしまうという不具合が発生するおそれが高くなる

【0063】
しかし、本実施形態では、内側レジストローラ17Aが逆向きに回転しているときには、外側レジローラ17Bの回転が停止するので、上記のような不具合は殆ど発生しない。
また、本実施形態では、内側レジストローラ17Aに回転力を供給する第1電動モータM1、及び外側レジローラ17Bに回転力を供給する第2電動モータM2を備えているので、各レジストローラ17A、17Bの作動を独立して制御することができ、容易に本実施形態を構成することができる。
【0064】
また、本実施形態では、内側レジストローラ17Aを逆転させる際には、クラッチ機構17Cにより外側レジローラ17Bへの回転力の伝達が遮断されるので、外側レジローラ17Bを速やかに停止させることができ、確実に用紙の斜行を矯正することができる。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、一対のレジストローラ17A、17Bのニップ部P1に用紙が到達するときに、内側レジストローラ17Aを逆転の向きに回転させ、外側レジローラ17Bをほぼ停止状態としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、これとは逆に、外側レジローラ17Bを逆転の向きに回転させ、内側レジストローラ17Aをほぼ停止状態としてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、紙粉除去部21を利用して一対のレジストローラ17A、17Bのうち他方のレジストローラに回転抵抗を作用させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ブレーキ等の制動手段を設け、その他方のレジストローラに回転抵抗を作用させてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態では、一対のレジストローラ17A、17Bのうち他方のレジストローラをほぼ停止状態としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、一方のレジストローラの周速に比べて小さい周速で回転させてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、一対のレジストローラ17A、17Bそれぞれ別の駆動源から駆動力を得ていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第2電動モータM2から供給される駆動力を反転又は停止させることが可能な歯車機構を介して内側レジストローラ17Aに駆動力を供給するとともに、この歯車機構を制御することにより、内側レジストローラ17Aの回転を制御してもよい。
【0068】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0069】
1…画像形成装置、3…筐体、3A…フロントカバー、5…画像形成部、
7…プロセスカートリッジ、7A…感光ドラム、7B…帯電器、
9…露光器、11…転写ローラ、13…定着器、13A…加熱ローラ、
15…給紙カセット、17A、17B…外側レジローラ、17C…クラッチ機構、
17F…用紙ガイド部、18…レジ前センサ、19…ベルトユニット、
20…レジ後センサ、21…紙粉除去部、23…オーガ、31…制御部、
M1…第1電動モータ、M2…第2電動モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部の入口側において記録シートをその厚み方向から挟持することができるように配設され、前記画像形成部に搬送される記録シートの斜行を矯正する一対のレジストローラと、
前記一対のレジストローラのニップ部に記録シートが到達するときに、前記一対のレジストローラのうち一方のレジストローラを逆転の向きに回転させた後、正転の向きに回転させる回転制御手段と、
少なくとも前記回転制御手段の作動時に、前記一対のレジストローラのうち他方のレジストローラに回転抵抗を作用させる抵抗手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記他方のレジストローラは、記録シートに付着した紙粉を記録シートから除去する紙粉取り機能も有しており、
さらに、前記回転制御手段の作動時には、前記他方のレジストローラの回転が停止していることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一方のレジストローラに回転力を供給する第1モータ、及び前記他方のレジストローラに回転力を供給する第2モータを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2モータから前記他方のレジストローラに至る回転力伝達経路に設けられ、回転力の伝達を断続するクラッチ手段を備え、
前記第2モータは、前記他方のレジストローラ以外にも回転力を供給しており、
さらに、前記回転制御手段の作動時には、前記クラッチ手段により前記他方のレジストローラへの回転力の伝達が遮断されることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−235248(P2010−235248A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84372(P2009−84372)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】