説明

画像形成装置

【課題】
感光ドラムや中間転写ベルト上のトナーを除去するためのクリーニング手段のクリーニング不良を防ぐとともに、カラー画像の形成の際に色ずれを防止する。
【解決手段】
ドラムクリーニングブレード15a又はベルトクリーニングブレード19を有する画像形成装置において、感光ドラム11a又は中間転写ベルト10の研磨目の方向が回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されている。
また、光学的にトナー画像の位置を検出する画像調整用検知手段221、222を有する画像形成装置において、中間転写ベルト10は、研磨目の方向が中間転写ベルト10の回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファックス等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関する。より詳しくは、表面を研磨加工した像担持体を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファックス等の画像形成装置として、中間転写方式のカラー画像形成装置が知られている。中間転写方式のカラー画像形成装置は、例えば、中間転写体としての中間転写ベルトの上に、それぞれ色の異なるトナーに対応した複数の感光ドラムを並べた構成を取る。各々の感光ドラム上ではそれぞれの色に対応した潜像を静電的に形成し、それを帯電させたトナーによって現像する。各色のトナー像は、順次、中間転写ベルト上で重ねあうように静電的に一次転写し、中間転写ベルト上で多色のトナー像を得る。中間転写ベルト上のトナー像は静電的に紙等の転写材上に一括して2次転写され、その後に加熱及び加圧により定着される。
【0003】
なお、2次転写において転写材に転写しきれずに中間転写ベルト上に残留したトナーは、中間転写ベルトのクリーニング手段によって中間転写ベルト上から除去される。また、1次転写において中間転写ベルトに転写しきれずに感光ドラム上に残留したトナーは、感光ドラムのクリーニング手段によって感光ドラム上から除去される。
【0004】
中間転写ベルトのクリーニング手段、あるいは、感光ドラムのクリーニング手段として、ウレタンゴムなどをブレード状に成型したクリーニングブレードが広く用いられる。以下、それぞれ「ベルトクリーニングブレード」、「ドラムクリーニングブレード」という。ベルトクリーニングブレード、ドラムクリーニングブレードは、それぞれ、中間転写ベルト、感光ドラムに圧接され、摺擦する。
【0005】
中間転写ベルトとしては、材料強度の優れた熱硬化性のポリイミド樹脂のベルトや、紫外線硬化性のアクリル系樹脂で表面コートして表面を強化したベルトが主に使用されている。しかしながら、これらの材料は非常に高価であるという問題がある。そこで、安価な中間転写ベルトとして、材料強度は劣るものの非常に安価である汎用の熱可塑性樹脂のベルトが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、中間転写ベルトの中には、ベルトクリーニングブレードのめくれ防止などのために、ベルト表面を研磨加工して使用されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−155475公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、研磨加工をおこなうと、中間転写ベルトの表面に方向性のある研磨目が形成され、中間転写ベルトの材料や研磨条件によっては、研磨目が長くなる可能性がある。特に、熱可塑性樹脂のベルトでは、研磨加工時に、研磨による摩擦熱によって一時的に粘性が高まるので、研磨目が長くなりやすい。
【0009】
研磨目の長い中間転写ベルトを用いると、ベルトクリーニングブレードとの摺擦によって研磨目がささくれやすい。その結果、ベルトクリーニングブレードが傷つけられ、中間転写ベルトのクリーニング不良が発生して画像品質が劣化するおそれがある。
【0010】
同様に、感光ドラムにおいても、ドラムクリーニングブレードのめくれ防止、またはトナー融着防止のために、感光ドラムの表面を研磨加工する場合がある。この場合でも、研磨目の長い感光ドラムを画像形成装置に用いると、研磨目がささくれてドラムクリーニングブレードを傷つけ、感光ドラムのクリーニング不良が発生して画像品質が劣化するおそれがある。
【0011】
また、カラー画像形成装置の画像調整動作として、色ずれを防止するためのレジ調整制御が提案され(特開平6−018796公報など)、広く実施されている。一般的には、画像形成装置に発光素子と受光素子からなる画像調整用検知手段で、中間転写ベルト上に形成したレジ調整用のトナー像の印字位置を検知する。それによって各色の色ずれ量を把握し、その後のプリント動作時において各色の印字位置を調整するものである。
【0012】
ここで、このようなレジ調整動作を中間転写ベルトの研磨目が逆立った状態でおこなうと、中間転写ベルトに照射された光が乱反射され、レジ調整用のトナー像の位置を検知する精度が低下して、色ずれが発生して画像品質が劣化するおそれがある。
【0013】
そこで本発明の目的は、表面が研磨加工された中間転写ベルトと、中間転写ベルトに当接されるクリーニング手段とを具備する画像形成装置において、クリーニング不良や色ずれを抑制することにある。
【0014】
あるいは、表面が研磨加工された感光ドラムと、感光ドラムに当接されるクリーニング手段とを具備する画像形成装置において、クリーニング不良を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明における代表的な手段は、画像形成するトナーを担持し、回転する像担持体と、前記像担持体に担持されたトナーを被転写材に転写する転写手段と、前記像担持体に当接し、前記転写手段による転写の後に前記像担持体の表面に残留したトナーを除去する像担持体クリーニング手段とを具備し、前記像担持体は、研磨目の方向が前記像担持体の回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
表面が研磨加工された中間転写ベルトと、中間転写ベルトに当接されるクリーニング手段とを具備する画像形成装置において、研磨目がクリーニング手段で逆立つことはない。その結果、クリーニング不良や濃色ずれを抑制することができる。
【0017】
同様に、表面が研磨加工された感光ドラムと、感光ドラムに当接されるクリーニング手段とを具備する画像形成装置において、研磨目のささくれによるクリーニング不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態のベルトクリーニングブレード周辺の模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態の中間転写ベルトの研磨装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態と比較するための比較例1のベルトクリーニングブレード周辺を示す模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態と比較例1とを比較した場合のクリーニング不良の発生の有無を示す表である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の全体概略図を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態の画像調整用検知手段周辺の模式図を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態と比較例2とを比較した場合の色ずれの発生の有無を示す表である。
【図9】本発明の第2実施形態と比較例2の中間転写ベルトの光沢度の耐久変化を示すグラフである。
【図10】本発明の第3実施形態の画像形成装置のドラムクリーニングブレード周辺を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る画像形成装置について図を用いて説明する。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置の全体概略図である。本実施形態の画像形成装置は、感光ドラムから中間転写体にトナー像を1次転写し、そのトナー像を転写材に2次転写してカラー画像を得る中間転写方式の画像形成装置である。
【0021】
<画像形成装置の全体構成>
図1に示す画像形成装置100は、感光ドラム11a〜11dを有する。感光ドラム11a〜11dはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(複数色)のトナーにそれぞれ対応している。各感光ドラム11a〜11dの周囲には、回転周面を取り巻くように、帯電ローラ12a〜12d、スキャナ13a〜13d、現像ローラ14a〜14d、ドラムクリーニングブレード15a〜15dが設けられている。ドラムクリーニングブレード15a〜15dは感光ドラム11a〜11dの表面の不要なトナーを除去する。ドラムクリーニングブレードは感光ドラムクリーニング手段を構成する。
【0022】
感光ドラム(像担持体)11a〜11dの表面は帯電ローラ12a〜12dにより一様に帯電される。さらに感光ドラム11a〜11dにスキャナ13a〜13dにより画像信号に応じた光照射を行うことで静電潜像を形成し、その潜像を現像ローラ14a〜14dによりトナー像として可視像化する。感光ドラム11a〜11d上の各トナー像は、1次転写ローラ(第1の転写手段)17a〜17dへのバイアス印加により、中間転写ベルト(像担持体、被転写材)10に、順次、重ね合うように1次転写される。このようにして中間転写ベルト10にはフルカラー画像が形成される。フルカラートナー像は、2次転写ローラ(第2の転写手段)18へのバイアス印加により、給送部23から搬送される被転写材に2次転写される。なお、感光ドラム11a〜11dと中間転写ベルト10との間の関係では、感光ドラム11a〜11dは、像担持体として、中間転写ベルト10は、被転写材として動作する。また、中間転写ベルト10と被転写材Pとの間の関係では、中間転写ベルト10は像担持体として動作する。
【0023】
その後、被転写材を定着手段16へ搬送して加熱・加圧することでトナー像を転写材に定着した後、被転写材は装置外へと排出される。
【0024】
なお、感光ドラム11a〜11dから中間転写ベルト10にトナー像を1次転写したときに、転写しきれずに感光ドラム11a〜11dに残留したトナーは、ドラムクリーニングブレード15a〜15dによって中間転写ベルト10の上から除去される。
【0025】
また、中間転写ベルト10から転写材にトナー像を2次転写した時に、転写しきれずに中間転写ベルト10に残留したトナーは中間転写ベルト10のクリーニング手段であるベルトクリーニングブレード19により中間転写ベルト10上から除去される。ベルトクリーニングブレード19は、中間転写ベルトクリーニング手段を構成する。さらに、ドラムクリーニングブレード15a〜15d及びベルトクリーニングブレード19は像担持体クリーニング手段を構成する。
【0026】
ここで、画像形成装置100の画像形成部について具体的に説明する。
【0027】
感光ドラム11a〜11dは、不図示の駆動手段によって回転駆動される。この感光ドラム11a〜11dは、導電性基層上に光導電層を有する。本実施形態では、負帯電性の有機感光体(OPC)を使用した。なお、感光体としては、アモルファスシリコン感光体等を使用することも可能である。
【0028】
帯電ローラ12a〜12dは、それぞれ、感光ドラム11a〜11dの表面を所定の極性及び電位に一様に帯電する。帯電ローラ12a〜12dは、不図示の加圧手段で感光ドラム11a〜11dの方向に押圧されて所定の圧力で接しており、感光ドラム11a〜11dの回転に従動して回転する。また、不図示の電源より直流電圧−500Vと周波数1500Hz、ピーク間電圧1400Vの交流電圧を重畳した帯電バイアスを帯電ローラ12a〜12dの芯金にそれぞれ印加した。
【0029】
帯電ローラ12a〜12dとして、金属の芯金上に、カーボン分散EPDM系発泡スポンジゴムの下層、カーボン分散NBR系ゴムの中間層、酸化錫とカーボンを分散させたフッ素系樹脂の表層を順に積層した3層構成のものを使用した。なお、帯電手段としては、コロナ帯電器、磁気ブラシ等を使用してもよい。
【0030】
スキャナ13a〜13dは、それぞれ、感光ドラム11a〜11dの回転方向において、帯電ローラ12a〜12dの下流側を露光する。帯電ローラ12a〜12dで一様に帯電された感光ドラム11a〜11dの表面を、画像情報に基づき光走査し、感光ドラム11a〜11d上にそれぞれの色に対応した静電潜像を形成する。本実施形態では、レーザースキャナを使用した。なお、LEDアレイ等を使用することも可能である。
【0031】
現像ローラ14a〜14dは、感光ドラム11a〜11dの回転方向において、露光位置の下流側に配置され、感光ドラム11a〜11d上の静電潜像を、それぞれの色に対応したトナーで現像する。本実施形態では、負に帯電したトナーにより、感光ドラム11a〜11d上の静電潜像を現像する。現像ローラ14a〜14dは、それぞれ、感光ドラム11a〜11dに対向して最近接距離350μmで配置し、感光ドラム11a〜11dの回転方向に対して逆方向に回転駆動する。現像ローラ14a〜14dの内部には、不図示のマグネットローラを配置し、その磁力により現像ローラ14a〜14dの外周面に帯電されたトナーを静電保持させる。現像ローラ14a〜14dには、不図示の電源より直流電圧−350Vと周波数4000Hz、ピーク間電圧1800Vの交流電圧を重畳させた現像バイアスを印加する。この現像バイアスによって、現像ローラ14a〜14d上のトナーを、感光ドラム11a〜11dの露光部位に現像する。
【0032】
中間転写体としての中間転写ベルト10の詳細については後述する。
【0033】
1次転写ローラ17a〜17dは、中間転写ベルト10を挟んで、感光ドラム11a〜11dに対向する位置にそれぞれ配置され、圧接することによって1次転写ニップをそれぞれ形成する。1次転写ローラ17a〜17dには1次転写バイアスが印加され、その転写電界によって感光ドラム11a〜11d上のトナーを中間転写ベルト10上に1次転写する。本実施形態では、1次転写ローラ17a〜dとして、金属の芯金上に半導電性のポリウレタン系発泡ゴム層を形成した、アスカーC硬度が10で、ローラ抵抗が1×106の半導電性転写ローラを使用した。ローラ抵抗は、温度が23℃、相対湿度が50%RHの環境で、転写ローラ5の芯金の両端に各500gfの錘を載せ、電流計を介してアースされた金属板に押圧し、50Vの電圧を印加した時に金属板に流れる電流を測定して算出した。さらに、中間転写ベルト10を介して感光ドラム11a〜11dに対してそれぞれ総荷重700gfの圧接力で当接させた。なお、1次転写手段としては、コロナ転写帯電器や転写ブレード、転写ブラシ等を使用することも可能である。
【0034】
ドラムクリーニングブレード15a〜15dは、1次転写時に中間転写ベルト10に転写されずに感光ドラム11a〜11dの表面上に残留したトナーを除去する。本実施形態では、ドラムクリーニングブレード15a〜15dとして、デュロメータA硬度が70で2mm厚のウレタン材質のクリーニングブレードを使用し、感光ドラムに40gf/cmの当接圧でそれぞれ当接した。
【0035】
2次転写ローラ18は、中間転写ベルト10を挟んで、中間転写ベルトの張架ローラ1aと対向する位置に配置し、圧接することによって2次転写位置を形成する。2次転写ニップには、給送部23から、中間転写ベルト10上のトナー像のタイミングに合わせて被転写材Pが導入される。その際、2次転写ローラ18には2次転写バイアスが印加され、その転写電界により、中間転写ベルト10上のトナー像が被転写材Pに2次転写される。
【0036】
本実施形態の2次転写ローラ18としては、金属の芯金上に半導電性のNBRゴムとヒドリンゴムを主成分とする発泡ゴム層を形成した、アスカーC硬度35で、ローラ抵抗が1×108の半導電性転写ローラを使用した。ローラ抵抗は、温度が23℃、相対湿度が50%RHの環境で、2次転写ローラ18の芯金の両端に各500gfの錘を載せ、電流計を介してアースされた金属板に押圧し、2000Vの電圧を印加した時に金属板に流れる電流を測定して算出した。さらに、中間転写ベルト10を介して張架ローラ1aに対して総荷重10kgfの圧接力で当接させた。なお、2次転写手段としては、コロナ転写帯電器や転写ブレード、転写ブラシ等を使用することも可能である。
【0037】
ベルトクリーニングブレード(中間転写体クリーニング手段)19は、2次転写時に被転写材に2次転写されずに中間転写ベルト10上に残留したトナーを除去する。本実施形態では、ベルトクリーニングブレード19として、デュロメータA硬度75で2mm厚のウレタン材質のクリーニングブレードを使用し、感光ドラムに50gf/cmの当接圧で当接した。
【0038】
定着手段16は、被転写材上に静電的に保持されたトナー像を、熱と圧力により被転写材P上に定着する。本実施形態では、定着ローラ16a及び加圧ローラ16bのローラ対で構成される熱ローラ方式の定着手段を使用した。なお、定着手段として、オンデマンド方式の定着手段や、磁化発熱方式の定着手段などを使用することも可能である。
【0039】
<中間転写ベルト>
ここで、中間転写体としての中間転写ベルト10について詳細に説明する。
【0040】
中間転写ベルト10は、4つの張架ローラ1a〜dに巻架される無端ベルトである。本実施形態では、張架ローラ1aは中間転写ベルト10の駆動ローラとしての役割を兼ね、張架ローラ1aの駆動によって、中間転写ベルト10は図2に示す矢印方向に回転駆動されるものとした。
【0041】
本実施形態では、中間転写ベルト10として、体積抵抗率が1×1010Ω・cm、表面抵抗率が1×1012Ω/sqで、厚み75μmの熱可塑性ポリフッ化ビニリデンのシームレスベルトを使用した。電気抵抗は、温度が23℃、相対湿度が50%RHの環境で、アドバンテスト製R8340A測定器と、主電極外径50mm、ガード電極70mmのプローブを使用し、印加電圧100V、チャージ時間が10秒の条件で測定した。なお、中間転写体としは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を用いてもよい。電気抵抗は、体積抵抗率が1×108〜1×1011Ω・cm、表面抵抗率が1×1011〜1×1013Ω/sqが適している。
【0042】
中間転写ベルト10の表面は、ベルトクリーニングブレードのめくれ防止のため、あらかじめ、目的の表面粗さになるように研磨加工をおこなった。本実施形態では、10点平均粗さがベルト幅方向で0.5μm、周方向が0.3μmとなるようにした。10点平均粗さ(JIS B0601:2001付属書記載)の測定には、株式会社小坂研究所製表面粗さ測定機SE3500を使用し、カットオフ値が0.8mm、測定長さが4mm、測定速度が0.1mm/秒の条件で測定した。
【0043】
図3に、中間転写ベルト10の研磨装置の一例を示す。図3において、A1は研磨フィルム、B1は研磨ヘッドである。研磨加工時、中間転写ベルト10は、3つのローラR1、R2、R3によって張架されるとともに、矢印方向に回転される。研磨フィルムA1は研磨ヘッドB1を介して2つのローラR4、R5より搬送・回収される。研磨ヘッドB1部では所定の加圧力で研磨フィルムA1と中間転写ベルト10とが当接され、中間転写ベルト10は研磨フィルムA1によって研磨される。本実施形態においては、研磨の条件を、中間転写ベルト10の送り速度が250mm/秒、研磨フィルムA1の送り速度が0.5mm/秒、押付け圧が5kg/400mmとし、目的の表面粗さを得た。この研磨加工によって、中間転写ベルト10の表面には、研磨目が形成される。
【0044】
図2に、第1実施形態のベルトクリーニングブレード周辺の模式図を示す。ここで、本実施形態の特徴は、中間転写ベルト10の研磨目がベルトクリーニングブレード19に対して順方向、すなわち、研磨目の方向が中間転写ベルト10の回転方向の下流に向くように、中間転写ベルト10を画像形成装置内に配置したことにある。
【0045】
続いて、本実施形態の画像形成装置を用いたときの効果を説明する。ここでは、第1実施形態の画像形成装置と比較例1の画像形成装置とを通紙耐久して効果を検証する。図4に、比較例1のベルトクリーニングブレード周辺の模式図を示す。比較例1の画像形成装置として、中間転写ベルト101の研磨目がベルトクリーニングブレード19に対して逆方向、すなわち、研磨目の方向が中間転写ベルトの回転方向の上流に向くように、中間転写ベルトを配置した画像形成装置を用いる。
【0046】
図5は、第1実施形態の画像形成装置と比較例1の画像形成装置とで通紙耐久をおこない、10000枚ごとに定期サンプリングを行った際の、中間転写ベルトのクリーニング不良の発生を比較した表である。本試験は、温度が5℃、湿度が10%の環境で、A4サイズ、坪量80g/cmの紙を1間欠で連続通紙し、画像は1%印字の1次色の横線(2dotの横線を198dotの間隔を空けて繰り返す1次色の横線)とした。また、定期サンプリングでは、上記の紙で、1枚目は2次色ベタ画像を印字し、2〜5枚目はベタ白画像とする5枚で1セットのサンプルとした。そして、紙にクリーニング不良の画像不良が発生していること、さらには、中間転写ベルトを観察してクリーニング不良が中間転写ベルト上で発生していることを確認することで判断した。なお、表中の符号において、中間転写ベルトのクリーニング不良が発生していないときは○、発生しているときを×と表記している。
【0047】
図5の表に示すように、比較例1の画像形成装置では、30000枚以上の定期サンプリングで中間転写ベルトのクリーニング不良が発生した。なお、このときベルトクリーニングブレードの当接部には破損が観察された。
【0048】
一方、第1実施形態の画像形成装置では、100000枚でも中間転写ベルトのクリーニング不良は発生せず、また、ベルトクリーニングブレードの当接部にも破損箇所は観察されなかった。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、表面が研磨加工された中間転写ベルトを用いる画像形成装置で、研磨目の方向が中間転写ベルトの回転方向の下流に向くように画像形成装置内に配置した。このため、研磨目によるベルトクリーニングブレードの破損を防止でき、中間転写ベルトのクリーニング不良を抑制することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の画像形成装置について、図を用いて説明する。
【0051】
図6は、第2実施形態の画像形成装置の全体概略図である。本実施形態の画像形成装置200は、第1実施形態にて図2を用いて説明した画像形成装置に対して、画像調整用検知手段221、222を具備した形態のものである。なお、画像調整用検知手段221、222は、図6の断面位置で、奥行き方向に並べて配置しており、それぞれ、通紙中央から左右110mmの位置に配置した。なお、図5における画像調整用検知手段221、222以外の部材は、第1実施形態にて図2を用いて説明した部材と同様であり、同じ符号を用い、説明は省略する。
【0052】
図7に、第2実施形態の画像調整用検知手段及びその周辺の概略図を示す。なお、画像調整用検知手段221、222は同じ構成である。ここでは画像調整用検知手段221でそれらの構成を説明する。画像調整用検知手段221は、発光素子としてのLED(光照射手段)22aと受光素子としてのフォトダイオード(受光手段)22bからなる。LED22aは中間転写ベルト10に向けて光を照射し、フォトダイオード22bは中間転写ベルト10から反射された反射光量を検知する。
【0053】
本実施形態におけるレジ調整制御部(色ずれ補正手段)において、中間転写ベルト10上にはレジ調整用のトナー像が各色のトナーによって印字される。レジ調整用トナー像は、中間転写ベルト10の周方向にY、M、C、K、Y、M、C、Kと並べたパッチ画像を、画像調整用検知手段221、222で検知可能な位置に2列ならべたものとした。画像調整用検知手段221、222のLED22aは中間転写ベルト10および各パッチ画像に対して光を照射し、フォトダイオード22bはその反射光量を検知する。ここで、中間転写ベルト10の表面からの反射光量に比較して、パッチ画像からの反射光量はトナーによって乱反射されるために少なくなる。この差から各パッチ画像の印字位置が検知できる。さらに、各パッチ画像の印字位置の差から、各色の主走査位置ずれ、副走査位置ずれ、主走査倍率ずれ、副走査倍率ずれが把握できる。把握されたそれらの情報は、その後のプリント動作における各色の印字位置を調整する。すなわち、レジ調整制御部では、フォトダイオード22bによって受光された反射光の量に基づいて感光ドラム11a〜11dから中間転写ベルト10へのトナーの転写のタイミングが制御されて色ずれが補正される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置では、中間転写ベルト10と、中間転写ベルト10に当接するベルトクリーニングブレード19と、画像調整用検知手段221、222を具備している。そして中間転写ベルト10は表面が研磨加工され、研磨目の方向が中間転写ベルト10の回転方向の下流に向くように配置されている。
【0055】
次に、本実施形態の効果を説明する。ここでは、第2実施形態の画像形成装置と比較例2の画像形成装置とを比較して効果を検証する。なお、比較例2の画像形成装置では、第2実施形態の画像形成装置に対して、中間転写ベルトの研磨目がベルトクリーニングブレードに対して逆方向になっている。すなわち、研磨目の方向が中間転写ベルトの回転方向の上流を向くように構成している。
【0056】
図8は、第2実施形態の画像形成装置と比較例2の画像形成装置とで通紙耐久をおこない、所定の耐久枚数での色ずれの発生とベルトの光沢度を比較した表である。なお、同図中の符号において、色ずれが発生していないときは○、発生しているときを×と表記している。
【0057】
図8に示すように、比較例2の画像形成装置では8000枚時点で色ずれが発生したのに対し、第2実施形態の画像形成装置では50000枚においても色ずれの発生はなかった。
【0058】
さらに、図9に、第2実施形態の画像形成装置および比較例2の画像形成装置の、中間転写ベルトの光沢度の耐久変化を示す。なお、光沢度の測定は、株式会社堀場製作所製のハンディ光沢計IG−320を使用した。図9のように、比較例2の中間転写ベルトの光沢度は通紙耐久によって低下した。一方、第2実施形態の中間転写ベルトの光沢度の低下は極めて小さかった。
【0059】
比較例2の中間転写ベルトの光沢度が第2実施形態の中間転写ベルトの光沢度よりも低下している理由は、以下のとおりであると考えられる。すなわち、ベルトクリーニングブレード19との摺擦によって逆立った中間転写ベルト10の研磨目によって、光沢度計の照射光が乱反射し、その結果、光沢度計の受光部で検知される正反射光量が低下したと考えられる。
【0060】
また、図8において、比較例2の画像形成装置において色ずれが発生した理由は、以下のとおりであると考えられる。レジ調整制御において、フォトダイオード22bが中間転写ベルトの正反射光量を受光する際に、ベルトクリーニングブレードとの摺擦によって逆立った中間転写ベルトの研磨目によって、LED22aの照射光が乱反射する。すると、フォトダイオード22bで検知される正反射光量が減少して、レジ調整用のトナー像の位置を正確に把握できず、その結果、レジ調整制御の精度が低下したと考えられる。
【0061】
以上のことから、本実施形態のように、表面が研磨加工された中間転写ベルト10を用いる画像形成装置であっても、研磨目の方向が中間転写ベルトの回転方向の下流に向くように画像形成装置内に配置することで、色ずれを抑制することができる。
【0062】
なお、本実施形態において、中間転写ベルトのクリーニング手段はクリーニングブレードとしたが、デッキブラシでも同様の効果を得る。さらに、クリーニングローラやブラシローラにおいてでも、それらの回転方向が中間転写ベルトの回転方向に対して逆回転、あるいは、順回転でかつ中間転写ベルトよりも遅い回転速度であれば同様の効果を得る。
【0063】
〔第3実施形態〕
第1実施形態は、研磨加工をおこなった中間転写ベルトにおいて、中間転写ベルトのクリーニング不良を抑制する画像形成装置について説明した。
【0064】
第3実施形態では、研磨加工をおこなった感光ドラムにおいて、感光ドラムのクリーニング不良を抑制する画像形成装置について説明する。
【0065】
図10に、第3実施形態のドラムクリーニングブレード15の周辺の模式図を示す。なお、感光ドラム111は、第1実施形態にて図1を用いて説明した画像形成装置に用いることが可能である。それ以外の部分は、第1実施形態にて図1を用いて説明した部分と同様であり、同じ符号を用い、説明は省略する。
【0066】
感光ドラム111は、あらかじめ、研磨装置によって表面を研磨加工されており、表面に研磨目を有する。
【0067】
ここで、本実施形態の特徴は、感光ドラムの研磨目の方向が感光ドラムの回転方向の下流に向くように画像形成装置内に配置されることを特徴とするものである。
【0068】
次に、本実施形態の画像形成装置を用いたときの効果を説明する。ここでは、第3実施形態の画像形成装置と、以下に説明する比較例3の画像形成装置とに対して、第1実施形態と同様の通紙耐久を行った。比較例3の画像形成装置として、感光ドラムの研磨目がドラムクリーニングブレードに対して逆方向、すなわち、研磨目の方向が感光ドラムの回転方向の上流に向くように配置した画像形成装置を用いた。
【0069】
その結果、比較例3の画像形成装置においては、感光ドラムのクリーニング不良が耐久枚数40000枚で発生し、そのときドラムクリーニングブレードの破損が確認された。一方、第3実施形態の画像形成装置においては、耐久枚数100000枚でも感光ドラムのクリーニング不良は発生せず、ドラムクリーニングブレードの破損も確認されなかった。
【0070】
よって、本実施形態のように、表面が研磨加工された感光ドラムを用いる画像形成装置であっても、研磨目の方向が感光ドラムの回転方向の下流に向くように画像形成装置内に配置することで、感光ドラムのクリーニング不良を抑制することができる。
【0071】
なお、上述した第1実施形態から第3実施形態はそれぞれ組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0072】
10,101 …中間転写ベルト
11a,11b,11c,11d,111 …感光ドラム
14a,14b,14c,14d …現像ローラ
15a,15b,15c,15d,15 …ドラムクリーニングブレード
17a,17b,17c,17d …一次転写ローラ
18 …二次転写ローラ
19 …ベルトクリーニングブレード
221,222 …画像調整用検知手段
22a …LED
22b …フォトダイオード
100,200 …画像形成装置
P …被転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成するトナーを担持し、回転する像担持体と、
前記像担持体に担持されたトナーを被転写材に転写する転写手段と、
前記像担持体に当接し、前記転写手段による転写の後に前記像担持体の表面に残留したトナーを除去する像担持体クリーニング手段と
を具備し、
前記像担持体は、研磨目の方向が前記像担持体の回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像形成するトナーを担持し、回転する感光ドラムと、
前記感光ドラムに担持されたトナーが転写され、回転する中間転写ベルトと、
前記感光ドラムに担持されたトナーを前記中間転写ベルトに転写する第1の転写手段と、
前記中間転写ベルトに転写されたトナーを被転写材に転写する第2の転写手段と、
前記感光ドラムに当接し、前記第1の転写手段による転写の後に前記感光ドラムの表面に残留したトナーを除去する感光ドラムクリーニング手段と
を具備し、
前記感光ドラムは、研磨目の方向が前記感光ドラムの回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写ベルトに当接し、前記第2の転写手段による転写の後に前記中間転写ベルトの表面に残留したトナーを除去する中間転写ベルトクリーニング手段をさらに具備し、
前記中間転写ベルトは、研磨目の方向が前記中間転写ベルトの回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成するトナーを担持し、回転する感光ドラムと、
前記感光ドラムに担持されたトナーが転写される中間転写ベルトと、
前記感光ドラムに担持されたトナーを前記中間転写ベルトに転写する第1の転写手段と、
前記中間転写ベルトに転写されたトナーを被転写材に転写する第2の転写手段と、
前記中間転写ベルトに当接し、前記第2の転写手段による転写の後に前記中間転写ベルトの表面に残留したトナーを除去する中間転写ベルトクリーニング手段と
を具備し、
前記中間転写ベルトは、研磨目の方向が前記中間転写ベルトの回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
複数色のトナーによりカラー画像を形成する画像形成装置であって、
前記複数色のトナーに対応して設けられ、前記複数色のトナーを各々担持し、回転する複数の感光ドラムと、
前記複数の感光ドラムに担持された前記複数色のトナーが転写される中間転写ベルトと、
前記複数の感光ドラムに担持されたトナーを前記中間転写ベルトに転写する第1の転写手段と、
前記中間転写ベルトに転写された前記複数色のトナーを被転写材に転写する第2の転写手段と、
前記中間転写ベルトに転写された前記複数色のトナーに対して光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段によって照射された光の反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段によって受光された反射光の量に基づいて、前記複数の感光ドラムから前記中間転写ベルトへのトナーの転写のタイミングを制御することで前記複数色のトナーの色ずれを補正する色ずれ補正手段と
前記中間転写ベルトに当接し、前記第2の転写手段による転写の後に前記中間転写ベルトの表面に残留したトナーを除去する中間転写ベルトクリーニング手段と
を具備し、
前記中間転写ベルトは、研磨目の方向が前記中間転写ベルトの回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記感光ドラムに当接し、前記第1の転写手段による転写の後に前記感光ドラムの表面に残留したトナーを除去する感光ドラムクリーニング手段をさらに具備し、
前記感光ドラムは、研磨目の方向が前記感光ドラムの回転方向の下流に向くように、表面が研磨加工されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体クリーニング手段はブレードであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記感光ドラムクリーニング手段はブレードであることを特徴とする請求項2、3及び6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記中間転写ベルトクリーニング手段はブレードであることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−256778(P2010−256778A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109168(P2009−109168)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】