画像形成装置
【課題】 画像形成にあたって、高画質、高精細な画像を実現することができる画像形成装置を得る。
【解決手段】 超音波発振部11と超音波透過部12と液剤13からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱14を生成し、対向する記録材15に液柱を触れるようにして記録するにあたって、液柱生成に対するバースト長と駆動電圧条件を満たし、液柱径に対する駆動電圧と電極径の条件を満たし、電極径と駆動電圧を決定し、その電極径と駆動電圧でのバースト長と液柱の長さの条件テーブルを満たすバースト長であって、そのときの液柱の長さと液面と記録媒体までの距離が等しく、また電極のピッチが液柱の径に等しくなるように構成する。
【解決手段】 超音波発振部11と超音波透過部12と液剤13からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱14を生成し、対向する記録材15に液柱を触れるようにして記録するにあたって、液柱生成に対するバースト長と駆動電圧条件を満たし、液柱径に対する駆動電圧と電極径の条件を満たし、電極径と駆動電圧を決定し、その電極径と駆動電圧でのバースト長と液柱の長さの条件テーブルを満たすバースト長であって、そのときの液柱の長さと液面と記録媒体までの距離が等しく、また電極のピッチが液柱の径に等しくなるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置として、従来から種々の構造をもつものが提案されている。
たとえば、ノズルレスの画像記録装置として、記録液体層が形成される記録部材と、記録液体層の自由表面から一定間隔をおいて画像記録媒体を設ける位置決め手段と、記録液体層の自由表面に液柱を形成させる予備駆動手段と、液柱の形成状態において液柱からその一部を画像記録媒体側へ移動させる記録駆動手段とを備えてなる構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、液体ジェットを噴射する液体噴射ヘッドをターゲットに対して相対的に移動し主走査を行う液体噴射装置であって、液体噴射ヘッドが噴射する液体ジェットの最小単位において、この最小単位の液体ジェットの先頭に形成される主液滴と後続の副液滴がターゲット上で同一位置に着滴するよう構成され、連続する最小単位の液体ジェットにおいて、後続の液体ジェットはその先頭がターゲットに着滴する前に、先行する液体ジェットのテール部に追突するように構成されている(例えば、特許文献2,3,4参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−263776号公報
【特許文献2】特開2004−122721号公報
【特許文献3】特開2005−131499号公報
【特許文献4】特開2005−131500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1においては、液柱を生成し、液剤を記録媒体へ移行させる方式について記載されているが、高精細性に関する記載はなされていない。
【0006】
また、上述した特許文献2〜4のものは、インクジェットに関するものであり、付着液剤にむらが発生するという問題があった。
【0007】
さらに、通常のインクジェットでは、インクが飛翔し記録媒体状態に到達した場合に広がるために、インク滴径よりも記録ドットは大きくなり、1plが最小飛翔液滴といわれその直径は12μmに達し、記録媒体に調達した場合には確実にそれよりも大きくなり、10μm解像が必要な2400dpi等の高解像度化は困難である。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、画像形成にあたって、高画質、高精細な画像を実現することができる画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る画像形成装置は、超音波発振部と超音波透過部と液剤からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置において、液柱生成に対するバースト長と駆動電圧条件を満たし、液柱径に対する駆動電圧と電極径の条件を満たし、電極径と駆動電圧を決定し、その電極径と駆動電圧でのバースト長と液柱の長さの条件テーブルを満たすバースト長であって、そのときの液柱の長さと液面と記録媒体までの距離が等しく、また電極のピッチが液柱の径に等しくなるように構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)に係る画像形成装置は、超音波発振部と超音波透過部と液剤からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置において、記録媒体への記録速度を記憶する線速度管理と、ドット長または記録する長さを記録する時間に変換するドット長時間変換ブロックと、基本1ドット用のバースト制御用のバースト1テーブルと、追加単位バースト制御用のバースト2テーブルと、ドット長に応じたバースト信号を発生するバースト発生ブロックと、バースト信号を基に超音波を駆動する超音波駆動ブロックとを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項3記載の発明)に係る画像形成装置は、請求項2記載の画像形成装置において、駆動電圧を2段階可変に構成するとともに、バースト2テーブルの使用電圧がバースト1テーブルの使用電圧よりも低くなるように構成したことを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項4記載の発明)に係る画像形成装置は、請求項2記載の画像形成装置において、高濃度生成用バーストテーブルを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る画像形成装置によれば、駆動バースト長と駆動電圧の関係を液滴が飛翔しない領域に設定し、電極径(振動子径)と駆動電圧を必要な記録媒体上のドット径を満たすように設定し、駆動バースト長による液滴の長さを液面と記録媒体までの距離に合わせたことにより、記録媒体上での解像度に応じた必要なドット径を再現可能とし、真の1200、2400dpiという解像度の実現を可能にすることができる。
【0014】
また、本発明によれば、液柱の太さ、長さという大きさ制御により均一な微細記録を可能にしたことにより、粘度や表面張力に随時に対応可能とし、多種の液剤の記録をも可能にすることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、基本バーストと追加バーストという2種のバーストを設定し、基本バーストに追加バーストを複数開追加可能とし、複合バースト制御を可能にし、記録したいドットの数(記録長)に応じた制御を可能にしたことにより、完全に連続したライン状の記録を可能にすることができる。これにより、従来のドットの重ねうちによる、ラインを引いたときに現れるドットのセンタ位置とドット間位置の太さの違い等の障害をなくし、綺麗な均一幅のラインを再現することができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、安定液柱を維持可能なために、画像印刷はもとより、工業用途、産業用途での多種の液剤の多種媒体への記録を行うことができる。
【0017】
また、本発明によれば、液柱長が液面と記録媒体間隔よりも長くなるようなバーストを設定することにより、液柱は記録媒体上で広がり、グラフ等の高濃度エリアの記録時には多くの液を記録媒体に供給可能になり、高速な印字が可能になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1ないし図11は本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を示す。
これらの図において、まず、画像形成装置を構成するヘッドの外観および概略構造を図9、図10を用いて以下に説明する。
【0019】
ここで、この種のヘッドにおいて、インク飛翔部である出射口1としては、たとえば図9(a)に示すように複数の丸い出射口1をもつ場合や、同図(b)に示すようにライン状に長さをもつ出射口6をもつ場合等がある。
【0020】
このようなインク飛翔部において、図9(a)の場合に対応する詳細は、図10に示す通りである。
すなわち、図中5はPZTやZnO等の圧電材からなる超音波発生材である。この超音波発生材5は図示されていない電極で上下に挟まれており、基材4にスパッタ等の成膜技術で生成されている。
【0021】
超音波発生材5は、図示されていない駆動部により高周波駆動されて超音波を出射する。出射された超音波は液剤層3を伝搬し、液表面での超音波放射圧で液柱を生成する。液面保持のために液面規制板2はあった方が望ましい。勿論、この規制版2はなくてもよい。
【0022】
ここで、液面規制板2に空けられた穴2aは図では円形に示しているが、方形であってもいいし、図9(b)のようにラインスリット状であってもよい。また、液柱は規制板2の穴2a部分に発生するようにされており、このようにして発生した液柱がヘッド対面に置かれた記録媒体(図示せず)に接し、液が移行する。
【0023】
上述したようなヘッド飛翔部において、図1は図10の長手方向を奥行き方向に見たときの図であり、この図1を用いてもう少し詳細に述べる。
すなわち、図1において、超音波発振部(超音波発振膜11)と液剤13の間に超音波透過材12がある。
【0024】
超音波発振部11はPZTやZnO等の圧電膜で生成されており、図示されていない駆動回路により駆動され超音波を発生する。発生した超音波は超音波透過材12を透過し液剤13に進入しその放射圧により液剤13を持ち上げ液柱14を生成する。
【0025】
生成した液柱14は図1(a)のように盛り上がる。そして、発生する超音波の駆動により図1(b)のように、対面する記録媒体15に接触しその液を移転する。記録媒体15は、図1の場合では、左右両方向に移動し、液柱14のon/offにより液の移転のon/offを行う。これにより、液がインクの場合には画像が、AgペーストやCuペーストのような導電材の場合には回路の生成が可能になり、その応用はDNAチップ等のBIOを含め液剤13を選択的に付着させる用途全般への展開が考えられる。
【0026】
実験結果を踏まえ、さらに詳しく説明する。
すなわち、超音波発振材としてZnOを使用し、250MHzの超音波生成をさせる。ここでの超音波発振部11の形状は120μm×120μmの方形とした。また、高速カメラを横方向に設置し、図1のような液柱の形状が観察可能なようにし、観察を行っている。さらに、超音波の駆動はファンクションジェネレータとアンプにより高周波のバースト駆動や各種制御を可能にする。
【0027】
このような場合において、バースト長としては液滴として飛翔しない領域を使い、その範囲の中で短めバーストと長めバーストでの液柱径の測定データを図2に示す。
【0028】
このようにしてバースト長の長さでは液柱径の太さは変化しないことを確認している。また、バースト超音波をoffしても直ぐには液柱はなくならず、ある程度その形状を保つことも確認されている。
【0029】
説明を解りやすくするために、ライン型のプリンタとして説明を続ける。
ここで、図1の奥行き方向を主走査方向とし、左右方向を副走査方向とする。
すると、主走査方向のドット径は超音波の発振径に影響し、今回の場合では120μmの発振部に対し80μmの液柱であるので、その割合はおよそ67%であった。
【0030】
図4に実験時での液面の放射圧をシミュレーションしたグラフを示す。
ここでは、途中に若干の段差のあるグラフであるが、放射面を円形にするとこの段差は取れることがわかっている(図5参照)。
そして、このような図4によれば、超音波はセンタが強く、周囲に行くほど弱い放射圧分布を示しており、液柱発生閾値の位置に液柱が発生する閾値があることがわかる。
【0031】
すなわち、主走査方向の解像度は超音波発振径の大きさで決まり、今回の場合はおよそ300dpi相当であった。また、超音波発振径に関しては、電極の大きさ(今回は共通電極18と駆動電極17の交差面積;図3参照)で決まるために、主走査方向におよそ図6のように電極ピッチが80μmピッチで、電極径120μmの電極を並べれば、80μm径のドットで構成される300dpiが実現できる。
【0032】
このとき、バースト長、駆動電圧は液柱14が記録媒体15の面へ適正に届く長さとする。換言すれば、電圧と電極径から目的の大きさの記録ドットに応じた液柱径を決定し、液柱が記録面に到達するようバ−スト数を決定する。
なお、副走査方向においては詳細な説明はしないが、同じ位置の列にドットが置けるように駆動タイミングを制御する。
【0033】
以上において、電極径a、記録媒体上必要とする1dotの径b、その間隔をd、圧電材駆動電圧v、駆動バースト長wとする。
【0034】
図7は圧電材駆動電圧vと駆動バースト長wと液滴の飛翔する関係を示したグラフである。
このような図7において、液滴発生直線よりも上側のエリアは液滴発生エリア、下のエリアが液滴発生しないエリアであり、この直線は装置条件により非線形になる場合もある。
【0035】
このときのvとwの液滴発生の関係を、関数v=f(w)であらわす。これは、バーストwのときの液滴が発生する最小電圧vとの関係である。
また、液柱径Bはaとv関数のg(a,v)で表される(図8等参照)。
関数f、gは実験により求まる関数である。
【0036】
すなわち、これは図4、5において電極径つまり超音波発振径が大きくなれば、同じ閾値においてその液柱径は広がり、駆動電圧vが大きくなれば放射圧も大きくなり、グラフが縦方向に大きくなることを意味する。そして、この場合も閾値が一定であればその液柱径は大きくなる。
図4、5は放射圧がグラフ内最大値に対する比で表されている。
【0037】
このとき、
v<f(w) ・・・式1
を満たすv,wであって、
b=g(a、v) ・・・式2
を満たす電極径aを駆動電圧vで駆動する。
【0038】
また、液面から記録媒体までの距離Lとしたときバースト長wの時の液柱の長さH(w)がL=H(WL)となるバースト長WLを駆動バースト長とする。
これにより、径aの電極をピッチdで配置することにより、所望の記録径b、ピッチdの記録が可能になる。
【0039】
実際には、図11にあるようなテーブルを作成しこれらのテーブルを上述の関数で説明した考え方を基に、電極径、ピッチ、記録媒体と液面の距離、バースト長、駆動電圧等を決定する。
すなわち、駆動電圧別に液滴生成に必要なバースト長を“液柱生成に対するバースト長と駆動電圧の条件テーブル”を作成及び参照し、電極径に対する液滴径を駆動電圧別に“液柱径に対する駆動電圧と電極径の条件テーブル”に展開及び参照し、これらのテーブルから駆動電圧と電極径を決定しそのときのバースト長による液柱長の関係を“バースト長と液柱長の条件テーブル”に表記し、液面と記録媒体までの距離が液柱長に等しくなるように設定する。
【0040】
以上の構成によれば、駆動バースト長と駆動電圧の関係を液滴が飛翔しない領域に設定し、電極径(振動子径)と駆動電圧を必要な記録媒体上のドット径を満たすように設定し、駆動バースト長による液滴の長さを液面と記録媒体までの距離に合わせたことにより、記録媒体15上での解像度に応じた必要なドット径を再現可能とし、真の1200、2400dpiという解像度の実現を可能にすることができるものである。
【0041】
また、液柱14の太さ、長さという大きさ制御により均一な微細記録を可能にしたことより、粘度や表面張力に随時に対応可能とし、多種の液剤13による記録をも可能にすることができるものである。
【0042】
図12ないし図15は本発明の第2実施形態を示す。
すなわち、上述した第1実施形態では、記録1ドットの大きさを、電極の大きさと駆動電圧で決定していており、これにより主走査方向の連続性を向上させることができる。
また、第1実施形態では、バーストの長さを液柱が記録面に到達するまでの長さとしており、液柱の長さはバースト長の大小に関係することが実験から明らかになったが、超音波の駆動を止めても即座に液柱が消失したり、短くなったりすることはなく、ある時間保持されることも実験から明らかになった。
【0043】
この現象は特開平9−136412号公報にも記載されている。ただし、特開平9−136412号公報に記載されている条件は液滴を飛翔させる十分なエネルギを与えた場合のことであって、本発明では、特開平9−136412号公報にかかれているような長時間の液柱の保持には至らない。
【0044】
すなわち、バースト長wはw=0の場合は全く超音波が照射されないので、液柱は発生せず、wを大きくすれば次第に液柱が成長していき、ある閾値を超えた場合に飛翔にいたる。この閾値は使用する液剤物性や駆動電圧(超音波放射圧)ヘッド構成等により複合的に決まる値である。
【0045】
図12(a),(b)は駆動バーストと発生する液柱長(液柱高さ)との関係を示す。
これを詳述すると、駆動バーストbが第1実施形態で使用するバースト長を示しており、1ドットづつ液柱を生成し記録媒体に液剤を付着させる方式である。
駆動バーストaは駆動バーストbより長い時間バーストを続けた場合である。勿論、飛翔バースト値を超えない範囲においてである。この場合、液柱は図12(a)中aに示すように記録媒体までの距離を越えて液柱が成長してしまう。こうなると液は記録媒体上に予定以上の付着を起こしてしまう。
【0046】
また、同図(b)中、駆動バーストcは液柱高さを一定にするように、短いバーストを断続的に駆動したものである。この場合は、図中cのように一定の液柱を保つことができる。
ここで、同図では液面がギザギザとなっているが、実際の液面はここまで反応は敏感でないためにほぼ一定の高さを保持する(図13参照)。
【0047】
この図13中、1画素形成時の最初の超音波を駆動し所定の液柱に至るまでの時間をts1、その後超音波駆動を停止し液柱の伸びが停止し所定の位置に至るまでの時間をts2、駆動超音波駆動を停止してから再度所定の液柱長まで液柱を持ち上げるのに必要な時間をt1とし、液柱が保持され所定の位置に至るまでの時間をt2とする。
【0048】
ts1+ts2+(t1+t2)×n=wcとする。(nは0を含む自然数)
ここで、wcは連続液柱をwc時間保持するための駆動バーストである。
また、副操作方向への記録媒体の進行速度(線速)をAとする。
【0049】
最小1ドットにかかる時間はn=0のときのts1+ts2である。このときのドットの副操作方向の長さはA×ts2となる。ドットを長くする時の最小増加量はA×(t1+t2)であるので、必要なドットの長さLを記録するには、
L=A×ts2+A×(t1+t2)×n
となる。
なお、装置ごとのts2、t1、t2の時間を求めていれば線速Aに応じたnは容易に計算できる。
【0050】
図14はブロック図、図15はフローチャ−トであり、これらを以下に説明する。
ここでは副走査方向に関しての制御である。
副走査方向にxドットの連続した記録をする場合、ドット長分の連続した記録法について記述する。
すなわち、線速度管理ブロック21から線速度を取得し、xドット記録に必要な時間T1をドット長変換ブロック22にて求める。バースト発生ブロック23にて、バースト1テーブル25から最初の1ドット分の時間TB1を求め、xドット記録に必要なT1と比較する。
【0051】
ここではxドットという表現をしているが、ドット表現ではなく副走査方向の連蔵長の長さでも良い。T1がTB1よりも等しいか小さいきい場合には基本バーストのみを該バーストとして発生し超音波駆動ブロック24へ引き渡し、それ以外の場合にはバースト2テーブル26から追加バースト単位時間TB2を求め、xドット分の必要記録時間T1から基本バースト分TB1を差し引いた残りの時間に対応する追加バーストのバースト数Nを求める。
【0052】
バースト発生ブロック23にて基本バースト+追加バーストN回のバーストを発生し超音波駆動ブロック24へ引き渡し超音波を駆動する。安定した液柱を維持可能であるので、液柱を維持した状態で記録媒体をx−y移動させたり、ヘッド側を移動させたりすることにより、インクジェットではなしえない自在な安定した高精度な連続曲線での記録ができるのである。
換言すれば、高周波超音波を使用し、副走査方向の記録量を駆動バースト制御で行うように構成することで、上述したような所要の記録が行えるのである。
【0053】
以上の構成によれば、基本バーストと追加バーストという2種のバーストを設定し、基本バーストに追加バーストを複数回追加可能とし、複合バースト制御を可能にし、記録したいドットの数(記録長)に応じた制御を可能にしたことにより、完全に連続したライン状の記録が可能となるものである。これにより、従来のドットの重ねうちによる、ラインを引いたときに現れるドットのセンタ位置とドット間位置の太さの違い等の障害をなくし、綺麗な均一幅のラインを再現することができるものである。
【0054】
さらに、このように安定した液柱を維持可能なために、画像印刷はもとより、工業用途、産業用途での多種の液剤の多種媒体への記録が可能となるものである。
【0055】
ここで、上述した第2実施形態では、副走査方向の液柱長を一定に保つために同一駆動電圧にて短いバーストを断続的に駆動したが、これに限らず、駆動電圧によっても液柱長は変化するために、初期の駆動電圧に対し上記第2実施形態で見られるような液柱長の制御ができるように駆動電圧を下げてバースト駆動するように構成してもよい。このような変形例を図16に示す。
【0056】
すなわち、このような図16において、初期電圧V1とし、液柱長を一定に保つための継続電圧をV2とする。換言すれば、副走査方向の記録量を駆動電圧で行うようにする。
そして、V1印加時に対しV2印加時は液柱長の伸びが緩やかとなるために液柱長をほぼ一定に保つことができる。
【0057】
このような構成においても、上述した第2実施形態と同等の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0058】
また、上述した第2実施形態では、第二バーストを同一幅ラインが引けるように設定したが、これに限定されず、液柱長が液面と記録媒体間隔よりも長くなるようなバーストを設定するようにしてもよい。
このように構成すると、液柱は記録媒体上で広がり、グラフ等の高濃度エリアの記録時には多くの液を記録媒体に供給可能になり、高速な印字が可能になるものである。
【0059】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、画像形成装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を示す要部構成図、(b)はその動作説明図である。
【図2】バースト長に対する液柱径の測定データを示す表である。
【図3】圧電膜による超音波発振部の概要を示す図である。
【図4】実験時での液面の放射圧をシミュレーションしたグラフである。
【図5】液面の放射圧を示すグラフである。
【図6】電極径と電極ピッチとの関係を示す図である。
【図7】圧電材駆動電圧と駆動バースト長と液滴の飛翔する関係を示したグラフである。
【図8】液柱径関数を示すグラフである。
【図9】(a),(b)は本発明に係る画像形成装置を構成するヘッドの外観を示す図である。
【図10】図9の概略構成を示す分解斜視図である。
【図11】制御に関する条件テーブルを示す図である。
【図12】本発明に係る画像形成装置の第2実施形態を示し、(a),(b)は駆動バーストと発生する液柱長(液柱高さ)との関係を示すグラフである。
【図13】駆動バーストと発生する液柱長(液柱高さ)との関係を示すグラフである。
【図14】本発明に係る画像形成装置のブロック図である。
【図15】本発明に係る画像形成装置のフローチャートである。
【図16】本発明に係る画像形成装置の第2実施形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…出射口、2…液面規制板、3…液剤層、4…基剤、5…超音波発生材、11…超音波発振部(超音波発振膜)、12…超音波透過材、13…液剤、14…液柱、15…記録媒体、17…駆動電極、18…共通電極、19…圧電膜、21…線速度管理ブロック、22…ドット長時間変換ブロック、23…バースト発生ブロック、24…超音波駆動ブロック、25…バースト1テーブル、26…バースト2テーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置として、従来から種々の構造をもつものが提案されている。
たとえば、ノズルレスの画像記録装置として、記録液体層が形成される記録部材と、記録液体層の自由表面から一定間隔をおいて画像記録媒体を設ける位置決め手段と、記録液体層の自由表面に液柱を形成させる予備駆動手段と、液柱の形成状態において液柱からその一部を画像記録媒体側へ移動させる記録駆動手段とを備えてなる構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、液体ジェットを噴射する液体噴射ヘッドをターゲットに対して相対的に移動し主走査を行う液体噴射装置であって、液体噴射ヘッドが噴射する液体ジェットの最小単位において、この最小単位の液体ジェットの先頭に形成される主液滴と後続の副液滴がターゲット上で同一位置に着滴するよう構成され、連続する最小単位の液体ジェットにおいて、後続の液体ジェットはその先頭がターゲットに着滴する前に、先行する液体ジェットのテール部に追突するように構成されている(例えば、特許文献2,3,4参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−263776号公報
【特許文献2】特開2004−122721号公報
【特許文献3】特開2005−131499号公報
【特許文献4】特開2005−131500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1においては、液柱を生成し、液剤を記録媒体へ移行させる方式について記載されているが、高精細性に関する記載はなされていない。
【0006】
また、上述した特許文献2〜4のものは、インクジェットに関するものであり、付着液剤にむらが発生するという問題があった。
【0007】
さらに、通常のインクジェットでは、インクが飛翔し記録媒体状態に到達した場合に広がるために、インク滴径よりも記録ドットは大きくなり、1plが最小飛翔液滴といわれその直径は12μmに達し、記録媒体に調達した場合には確実にそれよりも大きくなり、10μm解像が必要な2400dpi等の高解像度化は困難である。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、画像形成にあたって、高画質、高精細な画像を実現することができる画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る画像形成装置は、超音波発振部と超音波透過部と液剤からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置において、液柱生成に対するバースト長と駆動電圧条件を満たし、液柱径に対する駆動電圧と電極径の条件を満たし、電極径と駆動電圧を決定し、その電極径と駆動電圧でのバースト長と液柱の長さの条件テーブルを満たすバースト長であって、そのときの液柱の長さと液面と記録媒体までの距離が等しく、また電極のピッチが液柱の径に等しくなるように構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)に係る画像形成装置は、超音波発振部と超音波透過部と液剤からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置において、記録媒体への記録速度を記憶する線速度管理と、ドット長または記録する長さを記録する時間に変換するドット長時間変換ブロックと、基本1ドット用のバースト制御用のバースト1テーブルと、追加単位バースト制御用のバースト2テーブルと、ドット長に応じたバースト信号を発生するバースト発生ブロックと、バースト信号を基に超音波を駆動する超音波駆動ブロックとを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項3記載の発明)に係る画像形成装置は、請求項2記載の画像形成装置において、駆動電圧を2段階可変に構成するとともに、バースト2テーブルの使用電圧がバースト1テーブルの使用電圧よりも低くなるように構成したことを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項4記載の発明)に係る画像形成装置は、請求項2記載の画像形成装置において、高濃度生成用バーストテーブルを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る画像形成装置によれば、駆動バースト長と駆動電圧の関係を液滴が飛翔しない領域に設定し、電極径(振動子径)と駆動電圧を必要な記録媒体上のドット径を満たすように設定し、駆動バースト長による液滴の長さを液面と記録媒体までの距離に合わせたことにより、記録媒体上での解像度に応じた必要なドット径を再現可能とし、真の1200、2400dpiという解像度の実現を可能にすることができる。
【0014】
また、本発明によれば、液柱の太さ、長さという大きさ制御により均一な微細記録を可能にしたことにより、粘度や表面張力に随時に対応可能とし、多種の液剤の記録をも可能にすることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、基本バーストと追加バーストという2種のバーストを設定し、基本バーストに追加バーストを複数開追加可能とし、複合バースト制御を可能にし、記録したいドットの数(記録長)に応じた制御を可能にしたことにより、完全に連続したライン状の記録を可能にすることができる。これにより、従来のドットの重ねうちによる、ラインを引いたときに現れるドットのセンタ位置とドット間位置の太さの違い等の障害をなくし、綺麗な均一幅のラインを再現することができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、安定液柱を維持可能なために、画像印刷はもとより、工業用途、産業用途での多種の液剤の多種媒体への記録を行うことができる。
【0017】
また、本発明によれば、液柱長が液面と記録媒体間隔よりも長くなるようなバーストを設定することにより、液柱は記録媒体上で広がり、グラフ等の高濃度エリアの記録時には多くの液を記録媒体に供給可能になり、高速な印字が可能になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1ないし図11は本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を示す。
これらの図において、まず、画像形成装置を構成するヘッドの外観および概略構造を図9、図10を用いて以下に説明する。
【0019】
ここで、この種のヘッドにおいて、インク飛翔部である出射口1としては、たとえば図9(a)に示すように複数の丸い出射口1をもつ場合や、同図(b)に示すようにライン状に長さをもつ出射口6をもつ場合等がある。
【0020】
このようなインク飛翔部において、図9(a)の場合に対応する詳細は、図10に示す通りである。
すなわち、図中5はPZTやZnO等の圧電材からなる超音波発生材である。この超音波発生材5は図示されていない電極で上下に挟まれており、基材4にスパッタ等の成膜技術で生成されている。
【0021】
超音波発生材5は、図示されていない駆動部により高周波駆動されて超音波を出射する。出射された超音波は液剤層3を伝搬し、液表面での超音波放射圧で液柱を生成する。液面保持のために液面規制板2はあった方が望ましい。勿論、この規制版2はなくてもよい。
【0022】
ここで、液面規制板2に空けられた穴2aは図では円形に示しているが、方形であってもいいし、図9(b)のようにラインスリット状であってもよい。また、液柱は規制板2の穴2a部分に発生するようにされており、このようにして発生した液柱がヘッド対面に置かれた記録媒体(図示せず)に接し、液が移行する。
【0023】
上述したようなヘッド飛翔部において、図1は図10の長手方向を奥行き方向に見たときの図であり、この図1を用いてもう少し詳細に述べる。
すなわち、図1において、超音波発振部(超音波発振膜11)と液剤13の間に超音波透過材12がある。
【0024】
超音波発振部11はPZTやZnO等の圧電膜で生成されており、図示されていない駆動回路により駆動され超音波を発生する。発生した超音波は超音波透過材12を透過し液剤13に進入しその放射圧により液剤13を持ち上げ液柱14を生成する。
【0025】
生成した液柱14は図1(a)のように盛り上がる。そして、発生する超音波の駆動により図1(b)のように、対面する記録媒体15に接触しその液を移転する。記録媒体15は、図1の場合では、左右両方向に移動し、液柱14のon/offにより液の移転のon/offを行う。これにより、液がインクの場合には画像が、AgペーストやCuペーストのような導電材の場合には回路の生成が可能になり、その応用はDNAチップ等のBIOを含め液剤13を選択的に付着させる用途全般への展開が考えられる。
【0026】
実験結果を踏まえ、さらに詳しく説明する。
すなわち、超音波発振材としてZnOを使用し、250MHzの超音波生成をさせる。ここでの超音波発振部11の形状は120μm×120μmの方形とした。また、高速カメラを横方向に設置し、図1のような液柱の形状が観察可能なようにし、観察を行っている。さらに、超音波の駆動はファンクションジェネレータとアンプにより高周波のバースト駆動や各種制御を可能にする。
【0027】
このような場合において、バースト長としては液滴として飛翔しない領域を使い、その範囲の中で短めバーストと長めバーストでの液柱径の測定データを図2に示す。
【0028】
このようにしてバースト長の長さでは液柱径の太さは変化しないことを確認している。また、バースト超音波をoffしても直ぐには液柱はなくならず、ある程度その形状を保つことも確認されている。
【0029】
説明を解りやすくするために、ライン型のプリンタとして説明を続ける。
ここで、図1の奥行き方向を主走査方向とし、左右方向を副走査方向とする。
すると、主走査方向のドット径は超音波の発振径に影響し、今回の場合では120μmの発振部に対し80μmの液柱であるので、その割合はおよそ67%であった。
【0030】
図4に実験時での液面の放射圧をシミュレーションしたグラフを示す。
ここでは、途中に若干の段差のあるグラフであるが、放射面を円形にするとこの段差は取れることがわかっている(図5参照)。
そして、このような図4によれば、超音波はセンタが強く、周囲に行くほど弱い放射圧分布を示しており、液柱発生閾値の位置に液柱が発生する閾値があることがわかる。
【0031】
すなわち、主走査方向の解像度は超音波発振径の大きさで決まり、今回の場合はおよそ300dpi相当であった。また、超音波発振径に関しては、電極の大きさ(今回は共通電極18と駆動電極17の交差面積;図3参照)で決まるために、主走査方向におよそ図6のように電極ピッチが80μmピッチで、電極径120μmの電極を並べれば、80μm径のドットで構成される300dpiが実現できる。
【0032】
このとき、バースト長、駆動電圧は液柱14が記録媒体15の面へ適正に届く長さとする。換言すれば、電圧と電極径から目的の大きさの記録ドットに応じた液柱径を決定し、液柱が記録面に到達するようバ−スト数を決定する。
なお、副走査方向においては詳細な説明はしないが、同じ位置の列にドットが置けるように駆動タイミングを制御する。
【0033】
以上において、電極径a、記録媒体上必要とする1dotの径b、その間隔をd、圧電材駆動電圧v、駆動バースト長wとする。
【0034】
図7は圧電材駆動電圧vと駆動バースト長wと液滴の飛翔する関係を示したグラフである。
このような図7において、液滴発生直線よりも上側のエリアは液滴発生エリア、下のエリアが液滴発生しないエリアであり、この直線は装置条件により非線形になる場合もある。
【0035】
このときのvとwの液滴発生の関係を、関数v=f(w)であらわす。これは、バーストwのときの液滴が発生する最小電圧vとの関係である。
また、液柱径Bはaとv関数のg(a,v)で表される(図8等参照)。
関数f、gは実験により求まる関数である。
【0036】
すなわち、これは図4、5において電極径つまり超音波発振径が大きくなれば、同じ閾値においてその液柱径は広がり、駆動電圧vが大きくなれば放射圧も大きくなり、グラフが縦方向に大きくなることを意味する。そして、この場合も閾値が一定であればその液柱径は大きくなる。
図4、5は放射圧がグラフ内最大値に対する比で表されている。
【0037】
このとき、
v<f(w) ・・・式1
を満たすv,wであって、
b=g(a、v) ・・・式2
を満たす電極径aを駆動電圧vで駆動する。
【0038】
また、液面から記録媒体までの距離Lとしたときバースト長wの時の液柱の長さH(w)がL=H(WL)となるバースト長WLを駆動バースト長とする。
これにより、径aの電極をピッチdで配置することにより、所望の記録径b、ピッチdの記録が可能になる。
【0039】
実際には、図11にあるようなテーブルを作成しこれらのテーブルを上述の関数で説明した考え方を基に、電極径、ピッチ、記録媒体と液面の距離、バースト長、駆動電圧等を決定する。
すなわち、駆動電圧別に液滴生成に必要なバースト長を“液柱生成に対するバースト長と駆動電圧の条件テーブル”を作成及び参照し、電極径に対する液滴径を駆動電圧別に“液柱径に対する駆動電圧と電極径の条件テーブル”に展開及び参照し、これらのテーブルから駆動電圧と電極径を決定しそのときのバースト長による液柱長の関係を“バースト長と液柱長の条件テーブル”に表記し、液面と記録媒体までの距離が液柱長に等しくなるように設定する。
【0040】
以上の構成によれば、駆動バースト長と駆動電圧の関係を液滴が飛翔しない領域に設定し、電極径(振動子径)と駆動電圧を必要な記録媒体上のドット径を満たすように設定し、駆動バースト長による液滴の長さを液面と記録媒体までの距離に合わせたことにより、記録媒体15上での解像度に応じた必要なドット径を再現可能とし、真の1200、2400dpiという解像度の実現を可能にすることができるものである。
【0041】
また、液柱14の太さ、長さという大きさ制御により均一な微細記録を可能にしたことより、粘度や表面張力に随時に対応可能とし、多種の液剤13による記録をも可能にすることができるものである。
【0042】
図12ないし図15は本発明の第2実施形態を示す。
すなわち、上述した第1実施形態では、記録1ドットの大きさを、電極の大きさと駆動電圧で決定していており、これにより主走査方向の連続性を向上させることができる。
また、第1実施形態では、バーストの長さを液柱が記録面に到達するまでの長さとしており、液柱の長さはバースト長の大小に関係することが実験から明らかになったが、超音波の駆動を止めても即座に液柱が消失したり、短くなったりすることはなく、ある時間保持されることも実験から明らかになった。
【0043】
この現象は特開平9−136412号公報にも記載されている。ただし、特開平9−136412号公報に記載されている条件は液滴を飛翔させる十分なエネルギを与えた場合のことであって、本発明では、特開平9−136412号公報にかかれているような長時間の液柱の保持には至らない。
【0044】
すなわち、バースト長wはw=0の場合は全く超音波が照射されないので、液柱は発生せず、wを大きくすれば次第に液柱が成長していき、ある閾値を超えた場合に飛翔にいたる。この閾値は使用する液剤物性や駆動電圧(超音波放射圧)ヘッド構成等により複合的に決まる値である。
【0045】
図12(a),(b)は駆動バーストと発生する液柱長(液柱高さ)との関係を示す。
これを詳述すると、駆動バーストbが第1実施形態で使用するバースト長を示しており、1ドットづつ液柱を生成し記録媒体に液剤を付着させる方式である。
駆動バーストaは駆動バーストbより長い時間バーストを続けた場合である。勿論、飛翔バースト値を超えない範囲においてである。この場合、液柱は図12(a)中aに示すように記録媒体までの距離を越えて液柱が成長してしまう。こうなると液は記録媒体上に予定以上の付着を起こしてしまう。
【0046】
また、同図(b)中、駆動バーストcは液柱高さを一定にするように、短いバーストを断続的に駆動したものである。この場合は、図中cのように一定の液柱を保つことができる。
ここで、同図では液面がギザギザとなっているが、実際の液面はここまで反応は敏感でないためにほぼ一定の高さを保持する(図13参照)。
【0047】
この図13中、1画素形成時の最初の超音波を駆動し所定の液柱に至るまでの時間をts1、その後超音波駆動を停止し液柱の伸びが停止し所定の位置に至るまでの時間をts2、駆動超音波駆動を停止してから再度所定の液柱長まで液柱を持ち上げるのに必要な時間をt1とし、液柱が保持され所定の位置に至るまでの時間をt2とする。
【0048】
ts1+ts2+(t1+t2)×n=wcとする。(nは0を含む自然数)
ここで、wcは連続液柱をwc時間保持するための駆動バーストである。
また、副操作方向への記録媒体の進行速度(線速)をAとする。
【0049】
最小1ドットにかかる時間はn=0のときのts1+ts2である。このときのドットの副操作方向の長さはA×ts2となる。ドットを長くする時の最小増加量はA×(t1+t2)であるので、必要なドットの長さLを記録するには、
L=A×ts2+A×(t1+t2)×n
となる。
なお、装置ごとのts2、t1、t2の時間を求めていれば線速Aに応じたnは容易に計算できる。
【0050】
図14はブロック図、図15はフローチャ−トであり、これらを以下に説明する。
ここでは副走査方向に関しての制御である。
副走査方向にxドットの連続した記録をする場合、ドット長分の連続した記録法について記述する。
すなわち、線速度管理ブロック21から線速度を取得し、xドット記録に必要な時間T1をドット長変換ブロック22にて求める。バースト発生ブロック23にて、バースト1テーブル25から最初の1ドット分の時間TB1を求め、xドット記録に必要なT1と比較する。
【0051】
ここではxドットという表現をしているが、ドット表現ではなく副走査方向の連蔵長の長さでも良い。T1がTB1よりも等しいか小さいきい場合には基本バーストのみを該バーストとして発生し超音波駆動ブロック24へ引き渡し、それ以外の場合にはバースト2テーブル26から追加バースト単位時間TB2を求め、xドット分の必要記録時間T1から基本バースト分TB1を差し引いた残りの時間に対応する追加バーストのバースト数Nを求める。
【0052】
バースト発生ブロック23にて基本バースト+追加バーストN回のバーストを発生し超音波駆動ブロック24へ引き渡し超音波を駆動する。安定した液柱を維持可能であるので、液柱を維持した状態で記録媒体をx−y移動させたり、ヘッド側を移動させたりすることにより、インクジェットではなしえない自在な安定した高精度な連続曲線での記録ができるのである。
換言すれば、高周波超音波を使用し、副走査方向の記録量を駆動バースト制御で行うように構成することで、上述したような所要の記録が行えるのである。
【0053】
以上の構成によれば、基本バーストと追加バーストという2種のバーストを設定し、基本バーストに追加バーストを複数回追加可能とし、複合バースト制御を可能にし、記録したいドットの数(記録長)に応じた制御を可能にしたことにより、完全に連続したライン状の記録が可能となるものである。これにより、従来のドットの重ねうちによる、ラインを引いたときに現れるドットのセンタ位置とドット間位置の太さの違い等の障害をなくし、綺麗な均一幅のラインを再現することができるものである。
【0054】
さらに、このように安定した液柱を維持可能なために、画像印刷はもとより、工業用途、産業用途での多種の液剤の多種媒体への記録が可能となるものである。
【0055】
ここで、上述した第2実施形態では、副走査方向の液柱長を一定に保つために同一駆動電圧にて短いバーストを断続的に駆動したが、これに限らず、駆動電圧によっても液柱長は変化するために、初期の駆動電圧に対し上記第2実施形態で見られるような液柱長の制御ができるように駆動電圧を下げてバースト駆動するように構成してもよい。このような変形例を図16に示す。
【0056】
すなわち、このような図16において、初期電圧V1とし、液柱長を一定に保つための継続電圧をV2とする。換言すれば、副走査方向の記録量を駆動電圧で行うようにする。
そして、V1印加時に対しV2印加時は液柱長の伸びが緩やかとなるために液柱長をほぼ一定に保つことができる。
【0057】
このような構成においても、上述した第2実施形態と同等の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0058】
また、上述した第2実施形態では、第二バーストを同一幅ラインが引けるように設定したが、これに限定されず、液柱長が液面と記録媒体間隔よりも長くなるようなバーストを設定するようにしてもよい。
このように構成すると、液柱は記録媒体上で広がり、グラフ等の高濃度エリアの記録時には多くの液を記録媒体に供給可能になり、高速な印字が可能になるものである。
【0059】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、画像形成装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を示す要部構成図、(b)はその動作説明図である。
【図2】バースト長に対する液柱径の測定データを示す表である。
【図3】圧電膜による超音波発振部の概要を示す図である。
【図4】実験時での液面の放射圧をシミュレーションしたグラフである。
【図5】液面の放射圧を示すグラフである。
【図6】電極径と電極ピッチとの関係を示す図である。
【図7】圧電材駆動電圧と駆動バースト長と液滴の飛翔する関係を示したグラフである。
【図8】液柱径関数を示すグラフである。
【図9】(a),(b)は本発明に係る画像形成装置を構成するヘッドの外観を示す図である。
【図10】図9の概略構成を示す分解斜視図である。
【図11】制御に関する条件テーブルを示す図である。
【図12】本発明に係る画像形成装置の第2実施形態を示し、(a),(b)は駆動バーストと発生する液柱長(液柱高さ)との関係を示すグラフである。
【図13】駆動バーストと発生する液柱長(液柱高さ)との関係を示すグラフである。
【図14】本発明に係る画像形成装置のブロック図である。
【図15】本発明に係る画像形成装置のフローチャートである。
【図16】本発明に係る画像形成装置の第2実施形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…出射口、2…液面規制板、3…液剤層、4…基剤、5…超音波発生材、11…超音波発振部(超音波発振膜)、12…超音波透過材、13…液剤、14…液柱、15…記録媒体、17…駆動電極、18…共通電極、19…圧電膜、21…線速度管理ブロック、22…ドット長時間変換ブロック、23…バースト発生ブロック、24…超音波駆動ブロック、25…バースト1テーブル、26…バースト2テーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発振部と超音波透過部と液剤からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置において、
液柱生成に対するバースト長と駆動電圧条件を満たし、液柱径に対する駆動電圧と電極径の条件を満たし、電極径と駆動電圧を決定し、その電極径と駆動電圧でのバースト長と液柱の長さの条件テーブルを満たすバースト長であって、
そのときの液柱の長さと液面と記録媒体までの距離が等しく、また電極のピッチが液柱の径に等しくなるように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
超音波発振部と超音波透過部と液剤からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置において、
記録媒体への記録速度を記憶する線速度管理と、ドット長または記録する長さを記録する時間に変換するドット長時間変換ブロックと、基本1ドット用のバースト制御用のバースト1テーブルと、追加単位バースト制御用のバースト2テーブルと、ドット長に応じたバースト信号を発生するバースト発生ブロックと、バースト信号をもとに超音波を駆動する超音波駆動ブロックとを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
駆動電圧を2段階可変に構成するとともに、
バースト2テーブルの使用電圧がバースト1テーブルの使用電圧よりも低くなるように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2記載の画像形成装置において、
高濃度生成用バーストテーブルを設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
超音波発振部と超音波透過部と液剤からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置において、
液柱生成に対するバースト長と駆動電圧条件を満たし、液柱径に対する駆動電圧と電極径の条件を満たし、電極径と駆動電圧を決定し、その電極径と駆動電圧でのバースト長と液柱の長さの条件テーブルを満たすバースト長であって、
そのときの液柱の長さと液面と記録媒体までの距離が等しく、また電極のピッチが液柱の径に等しくなるように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
超音波発振部と超音波透過部と液剤からなり、超音波エネルギによって液剤を盛り上がらせて液柱を生成し、対向する記録材に液柱を触れるようにして記録する方式による画像形成装置において、
記録媒体への記録速度を記憶する線速度管理と、ドット長または記録する長さを記録する時間に変換するドット長時間変換ブロックと、基本1ドット用のバースト制御用のバースト1テーブルと、追加単位バースト制御用のバースト2テーブルと、ドット長に応じたバースト信号を発生するバースト発生ブロックと、バースト信号をもとに超音波を駆動する超音波駆動ブロックとを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
駆動電圧を2段階可変に構成するとともに、
バースト2テーブルの使用電圧がバースト1テーブルの使用電圧よりも低くなるように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2記載の画像形成装置において、
高濃度生成用バーストテーブルを設けたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−46908(P2010−46908A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213055(P2008−213055)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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