説明

画像形成装置

【課題】 配線レイアウト等が簡単で、高密度実装が可能になり、高品位なインク記録画像を得ることが可能になる画像形成装置を得る。
【解決手段】 圧電体11を使用し、圧電体の共振により発生した放射圧によりインクIを飛翔させる音響インクジェット方式を利用した画像形成装置において、セグメント電極10と共通電極13間で発生する正弦波交流電界により圧電体11が共振し超音波を発生する。この圧電体11へ記録データに応じて制御装置14から圧電体11の共振周波数を有するバースト波を印加するセグメント電極10と共通電極13のうち、一方の共通電極13を接地されていないフロート状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体の共振により発生した放射圧によりインクを飛翔させる音響インクジェット方式による画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置として、たとえば圧電体基板を挟んで表面と裏面に少なくとも一対の電極を設け、この圧電体基板と平行に配されたノズルプレートとのギャップにインクを保持し、一対の電極間に、この圧電体基板の共振周波数に等しい周期で変化する電圧を選択的に印加することにより、ノズルプレートの前記電極に合わせて設けられたノズル穴からインクをミストとして吐出するインクジェットヘッドを用いた記録装置が従来既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−38809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の音響インクジェット方式では、圧電体を挟み込む形で電極を配置するが、高速印字のためにノズルを多くすると電極の配線が複雑になり、電極の引き回しが複雑になるという問題が生じていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、配線レイアウト等が簡単で、高密度実装が可能になり、高品位なインク記録画像を得ることが可能な画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る画像形成装置は、圧電体を使用し、圧電体の共振により発生した放射圧によりインクを飛翔させる音響インクジェット方式を利用した画像形成装置において、圧電体への電極のうち共通電極をフロートとすることを特徴とする。
【0007】
本発明(請求項2記載の発明)に係る画像形成装置は、請求項1において、セグメント電極毎に独立したフロートの対向電極を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明に係る画像形成装置によれば、圧電体の共振により発生した放射圧によりインクを飛翔させる音響インクジェット方式において、圧電体への電極のうち共通電極をフロートとするように構成したので、配線レイアウトが容易になるために高密度実装が可能になり、高品位なインク記録画像を得ることが可能になるという優れた効果がある。
【0009】
また、本発明によれば、共通電極からそれぞれが独立した対向電極に変更することにより、電極のレイアウトの自由度が非常に高くなり、このため高密度実装が可能になり高品位なインク記録画像を得ることが可能になるという利点がある。
【0010】
さらに、本発明によれば、対向電極の大きさをセグメント電極と同一にする必要がないので、電極レイアウトの自由度が高くなり、高密度実装を容易に実現することができ、高品位なインク記録画像を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1ないし図4は本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を示し、これらの図において、本発明の画像形成装置は、音響インクジェット記録方式によるものであって、インクを記録紙へ選択的に飛翔させて、記録パターンを記録紙上に作成するようになっている。
【0012】
その模式的断面図を図1に示す。
これを簡単に説明すると、この画像形成装置は、大きく分けて給紙部A、記録部B、排紙部Cで構成されている。
給紙部Aは、給紙カセット1、給紙ローラ2で構成され、不図示の中央演算装置から送られて来る給紙データに応じて記録部Bへ用紙Pを供給する。
【0013】
記録部Bは、搬送ローラA3、搬送ローラB7、プラテンローラ4、記録ヘッド5で構成されている。記録ヘッド5はライン型を採用する。記録ヘッド5には、インクタンク6が接続されている。
【0014】
印字データに応じて記録ヘッド5からインクIが用紙Pへ向けて飛翔し、記録が行われる。必要に応じてインクタンク6からインクが記録ヘッド5へ供給される。記録部Bで記録が完了した用紙Pは、搬送ローラB7の回転により排紙部Cへ向かう。排紙部Cでは、記録が完了した用紙Pをスタックする。
【0015】
記録ヘッド5の構成を図2、3に示す。
記録ヘッド5は、振動子ユニットとノズルユニットで構成される。本発明では、音響インクジェット方式を採用する。
【0016】
振動子ユニットは、ガラス基板上9に圧電体11を挟み込む形でセグメント電極10と共通電極13が配置され、共通電極13はフロートの状態で配置されている。セグメント電極10には、印字信号を記録電圧に変換してセグメント電極10に送る制御装置14に接続されている。セグメント電極10には、記録データに応じて制御装置14から圧電体11の共振周波数を有するバースト波が印加される。圧電体11は、ZnO、PZT等の圧電特性を示す物質で構成される。
【0017】
セグメント電極10に共振周波数を有するバースト波が印字データに応じて制御装置14から印加されるとセグメント電極10と共通電極13間で発生する正弦波交流電界により圧電体11が共振し超音波を発生する。共振により発生する超音波は、ガラス基板9を伝播し、ノズルユニット中のインク搬送路12に到達する。インク搬送路12に到達した超音波により放射圧が生じ、インク搬送路12中のインクIをノズル15から用紙Pの方向へ飛翔させ、記録が行われる。
【0018】
本発明では、共通電極13はフロートの状態で配置されている。従来例では、共通電極13は図4に示すように接地されていた。接地することにより、配線が複雑になり、ガラス基板9上に高密度実装が不可能になり印字解像度を向上させることが困難であるという不具合が生じていた。これに対し、本発明によれば、共通電極13はフロートとしているので、接地する必要がない。つまり、従来例よりもガラス電極9上の配線が簡易にすることが可能なり、高密度実装も可能になる。
【0019】
また、本発明では、共通電極12はフロートになっているが、セグメント電極10に信号が印加されると共通電極13は対向電極として内部分極し、セグメント電極10と共通電極13間で電界が発生し、圧電体11が共振する。
【0020】
ここで、図8に共通電極13の状態と飛翔状態の関係を示す。共通電極13を接地またはフロートとしても飛翔状態には変化が見られない。ただし、共通電極がない場合には、インク飛翔を行うことができない。共通電極13がフロートであっても、セグメント電極10との間に発生する交流電界により圧電体11は共振するが、共振により発生した放射圧には特に影響はない。
【0021】
共通電極13がない場合には、セグメント電極10に圧電体11の共振周波数である交流正弦波が印加されても、対向電極がない状態なので圧電体11には交流電界がかからず、圧電体11は共振することができない。したがって、共通電極13を撤去することはできない。
【0022】
本実施形態では、圧電体11にZnOを用いて、共振周波数である260MHzの交流正弦波を用い、バースト長10μsecで駆動したところ、インクが飛翔し用紙Pへ到達することにより、記録を行うことができた。
【0023】
以上の実施形態によれば、共通電極13をフロートにすることにより、配線レイアウトが容易になるために高密度実装が可能になり、高品位なインク記録画像を得ることが可能になる。
【0024】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、画像形成装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【0025】
たとえば図5に示すように、共通電極13の代わりに対向電極16をセグメント電極10毎に配置するようにしてもよい。ここで、上述した第1実施形態と同様に対向電極16は接地されておらずフロートの状態で配置されている。このような構成においても、フロートなので、対向電極16毎に配線をする必要がなく、実装レイアウトの自由度は、第1実施形態よりもさらに高くなる。また、対向電極16の位置は、圧電体11を介せばセグメント電極10上であれば配置場所に制限がなくなる。
【0026】
さらに、上述したように、共通電極からそれぞれが独立した対向電極16に変更することにより、電極のレイアウトの自由度が非常に高くなる。このため、高密度実装が可能になり高品位なインク記録画像を得ることが可能になる
また、対向電極16の大きさをセグメント電極と同一にする必要がないので、さらに電極レイアウトの自由度が高くなり、高密度実装を容易に実現することができるので、高品位なインク記録画像を得ることが可能になる。
【0027】
また、図6に示すように、千鳥配置にする場合でも、対向電極16には配線が不要なので、レイアウトの自由度が高くなる。
【0028】
さらに、図7に示すように対向電極16の大きさを小さくすることにより、セグメント電極10と対向電極16との間に発生する交流電界を絞り込むことが可能になる。
【0029】
また、図9に示すように、ひとつのセグメント電極10に対して複数個の対向電極16を配置することも可能になる。この場合、低濃度用セグメントと高濃度用セグメントと用途によって使用セグメントを使い分けることにより、より高品位な画像を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る画像形成装置の模式的断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を示す記録ヘッドの要部断面図である。
【図3】図2の概略平面図である。
【図4】従来装置における図3に対応する図である。
【図5】共通電極の状態と飛翔状態の関係を示す表である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の別の実施形態を示す概略図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置のさらに別の実施形態を示す概略図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示す概略図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置のさらに他の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0031】
5…記録ヘッド、6…インクタンク、9…ガラス基板、10…セグメント電極、11…圧電体、12…インク搬送部、13…共通電極。14…制御装置、15…ノズル、16…対向電極、P…用紙、I…インク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体を使用し、圧電体の共振により発生した放射圧によりインクを飛翔させる音響インクジェット方式を利用した画像形成装置において、
圧電体への電極のうち共通電極をフロートとすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
セグメント電極毎に独立したフロートの対向電極を配置することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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