説明

画像形成装置

【課題】 読取器への汚れ付着の進行を従来以上に抑え、メンテナンス性に優れた画像形成装置の提供。
【解決手段】 光学式の読取器(102)は、読取窓(209)と、これに対して開閉する光透過性のシャッタ(208)を備える。読み取る情報に応じて、シャッタ(208)を開けた状態で読み取りを行なう第1モードと、シャッタ(208)を閉じた状態で、シャッタ(208)を通して読み取りを行なう第2モードとを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディアに画像形成を行なうプリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリントに用いるメディアの情報、例えばメディアサイズや位置合わせ情報、カラーパッチなどの情報を、メディア自身から読み取って、プリンタを自動的に設定する試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1は、記録ヘッドを移動させるキャリッジに光学的な読取器を取り付けて、メディアから情報の読み取りを行って、プリント条件を自動設定することができる装置を開示している。
【0004】
この装置では、読取器に開閉可能なシャッタを設けて、インクミスト(インク滴のしぶきが浮遊したもの)、粉塵、紙毛羽などで、読取器の光学レンズに汚れが付くことを防いでいる。非使用時にはシャッタを閉じることで、汚れの付着が軽減される。シャッタが無いものに較べると、汚れを除去するメンテナンスの頻度を抑えることができる優れた方式である。
【特許文献1】特開平11−227176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、読取器の用途が多様化すると、汚れが発生しやすい状況下でも読み取りを行いたい場合が出てくる。例えば、プリントシーケンス中のメディアの端部の検出である。プリント中はインクミストの飛散が激しいので、その時にシャッタを開けて読み取りを行なうと、汚れの付着は避けられない。そのため、用途によっては、それなりの頻度でのメンテナンスは必要である。
【0006】
本発明は上述の課題の認識に鑑みてなされたものである。
【0007】
本発明の目的は、読取器への汚れ付着の進行を従来以上に抑え、メンテナンス性に優れた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、メディアに画像を形成する画像形成装置であって、読取窓と、該読取窓に対して開閉する光透過性のシャッタを備え、前記読取窓を通してメディアから情報を読み取る読取器と、読み取る情報に応じて、前記シャッタを開けた状態で読み取りを行なう第1モードと、前記シャッタを閉じた状態で前記シャッタを通して読み取りを行なう第2モードとを切り替える切替手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、読取器への汚れ付着の進行を従来以上に抑え、メンテナンス性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示する。ただしこの実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する主旨のものではない。
【0011】
以下、画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタを説明する。なお、本発明の適用範囲はこれに限らない。例えば、電子写真方式、サーマル方式、ドットインパクト方式などの様々な方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機などのオフィスユースやホームユースの機器や、商業用や工業用の印刷装置等の各種画像形成装置にも適用可能である。
【0012】
図1は、プリンタの全体の構成図である。キャリッジ101には、インクジェット方式の記録ヘッド103と、光学式の読取器102とが搭載されている。このキャリッジ101は、搬送ベルト104によって主走査方向に往復動作可能となっている。メディア(記録シート)106は、プラテン107上まで搬送ローラによって搬送される。プラテンはプリント領域においてメディアを平坦に保持する構成となっている。ここで、キャリッジの主走査方向をX、メディア106の搬送方向(副走査方向)をYとし、これらXY平面に対し垂直な方向をZとする。また図示されたXYZ方向の矢印側を下流側、その反対側を上流側と定義する。
【0013】
読取器102は、記録ヘッド103より下流側に設けられており、記録ヘッド103より先の領域に検出領域を持つように構成されている。記録ヘッド103のインクジェット方式は、発熱体を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式など、さまざまなインクジェット方式を用いることができる。
【0014】
図2は、読取器の構成図を示す。読取器102は、受光素子として2つのフォトダイオードを、発光素子として3つの可視LED、および1つの赤外LEDを一体的に備えた光学センサユニットである。それぞれの素子は外部回路の制御により駆動される。これらの素子は全て直径が最大部分で約4mmの砲弾型素子である。可視LEDと赤外LEDが照射部を構成し、フォトダイオードが受光部を構成している。赤外LED201は、XY平面と平行なメディア106の表面(測定面)に対して45度の照射角を持ち、その照射光中心(照射光の光軸であり、照射軸と称する)が測定面の法線(Z軸)と平行なセンサ中心軸202と所定の位置で交差するように配置されている。この交差する位置(交点)のZ軸上における位置を基準位置とし、読取器102から基準位置までの距離を基準距離とする。赤外LED201の照射光は、基準位置にある測定面に直径約4〜5mmの照射面(照射領域)を形成する。
【0015】
フォトダイオード203、204は、可視光から赤外光までの波長の光に対し感度を持つものを用いている。測定面が基準位置にあるときに、フォトダイオード203、204の受光軸が赤外LED201の反射光の中心軸と平行となる角度で配置される。フォトダイオード203の受光軸は、X方向に+2mm、Z方向に+2mm移動した位置となるように配置される。一方、フォトダイオード204の受光軸は、X方向に−2mm、Z方向に−2mm移動した位置となるように配置される。測定面が基準位置にあるときの赤外LEDから照射された光の反射光の反射角は45度で、照射角と等しい角度で反射した反射光を特に正反射光と呼ぶ。図2(b)に示すように、受光素子203、204は、正反射光の光軸(反射軸)と受光素子203、204が受光可能な光の光軸とが一致しないため、正反射光を直接受光しているものではない。しかし、測定面が基準位置にあるときの正反射光の光軸と受光素子の受光軸とが平行になるように受光素子を配置しているので、正反射光に近い反射光を受光することが可能である。また、フォトダイオード203、204のそれぞれの光軸と赤外LED201が測定面へ照射した光の照射光軸は交差しないように配置され、二つの受光素子は測定面が変位した際に正反射光成分が互いにずれる方向に配置されている。
【0016】
LED205は緑色の発光波長(約510〜530nm)を持つ単色可視LEDであり、センサ中心軸202と可視LED205の光軸とが一致するように設置される。このLED205と、フォトダイオード203、204もまた、それぞれの光軸が交差しないような配置をしている。図2に示すように、測定面が基準位置にあるときには、緑色の可視LED205の光軸と測定面の交点と、赤外LED201の光軸と測定面の交点は一致する。緑色の可視LED205から照射された光の反射光は、フォトダイオード203、204の両方で受光することができる。検出対象面に照射光を照射したときに、測定対象(記録画像)の光の吸収率や反射率の関係から、照射光の色によってフォトダイオードで検出できる色が異なる。緑色の光は、赤色、青色の光と比較して、CMYの吸収スペクトルとの重なりが少ないためCMYパッチの検出に適している。このような緑色LED205を可視LED205〜207の中心に配置し、緑色LED205からの反射光をフォトダイオード203、204の両方で受光することで、さまざまな検出動作を精度良く行なうことが可能となる。
【0017】
LED206は青色の発光波長(約460〜480nm)を持つ単色可視LEDであり、図2(a)に示すように可視LED205に対しX方向に+2mm、Y方向に−2mm移動した位置にある。LED206は、測定面が基準位置にあるとき、その照射軸と測定面との交点においてフォトダイオード203の受光軸と交差するように配置されている。LED207は赤色の発光波長(約620〜640nm)を持つ単色可視LEDであり、図2(a)に示すように可視LED205に対しX方向に−2mm、Y方向に+2mm移動した位置にある。測定面が基準位置にあるとき、LED207は、その照射軸と測定面との交点においてフォトダイオード204の受光軸と交差するように配置されている。図2(b)に示すように、LED205〜207から照射された光が測定面で反射したときの反射光の反射角は、照射角と異なる。照射角と異なる角度で反射した反射光を拡散反射光(散乱反射光、乱反射光)と呼ぶ。
【0018】
読取器102は、開口である読取窓209を有し、この読取窓209を通して、各LEDからの光がメディアに照射され、且つメディアからの反射光が各フォトダイオードに導かれるようになっている。さらに読取器102には、読取窓209に対して開閉する、光透過性のシャッタ208が設けられている。シャッタ208は透明のアクリル板で構成されている。そのため赤外LED201、可視LED205〜207が照射する光は、シャッタ208を透過することができ、また紙面上で反射される光もシャッタ208を透過してフォトダイオード203、204で受光することが可能である。
【0019】
図3は、読取器の入出力信号の処理、およびプリンタ全体の制御を行なうコントローラの構成を示すブロック図である。CPU301は、赤外LED201及び可視LED205〜207のオン/オフ制御や、フォトダイオード203、204のデジタル出力のサンプリング、さらにはプリンタ全体の制御を司る。LED駆動回路302は、CPU301から送られるオン信号を受けてそれぞれのLEDへ定電流を流し発光させる。I/V変換回路303は、フォトダイオード203、204から電流値として送られてきた出力信号を電圧値に変換する。増幅回路304は、電圧値を最適なレベルまで増幅する。A/D変換回路305は、増幅された信号をデジタル値に変換してCPU301に入力する。メモリはROM306とRAM307を有し、ROM306は、プリンタを動作させるために必要なプログラムや、CPU301の演算に必要な参照データテーブル等を記憶する。RAM307は、サンプリングされたフォトダイオード203、204の出力の一時的な記憶等に用いる。比較回路308は、フォトダイオード203、204の出力を比較して割り込み信号をCPU301に送る。
【0020】
図4は、読取器102が備えるシャッタ208の構成を示す斜視図である。シャッタ208は光透過性の透明アクリルからなる板状の部材である。読取器102の光は領域401を通過するので、最低限この部分が透明となっていればよい。シャッタ208は、開閉の際に両側のスライド部分403に沿ってスライド可能である。シャッタ208の開閉は、キャリッジ101とは独立してプリンタ本体側に設けた、上下方向に移動する爪部材405を用いて行なう。爪部材405は後述するカム機構により上下動する。爪部材405が押し上げられると、ツメ部分404がシャッタ208の引掛部402に噛み合う構造となっている。
【0021】
図5は、シャッタ208が取り付けられた読取器102の斜視図である。読取器102の下部の読取窓209を覆うように取り付けられ、引掛部402だけが外に飛び出している。シャッタ208は、読取窓209に対して開閉するために、X方向にスライド可能となるようスライド押さえ部503で支持されている。
【0022】
図6、図7の模式図を用いて、シャッタ208の開閉の動作について説明する。シャッタ208は、主走査方向における本体の所定位置に設定されたシャッタ開閉位置において、自動的に開閉するようになっている。このシャッタ開閉位置に、カム601と爪部材405が設けられている。カム601は駆動モータによって回転して、これにより爪部材405が上下動する。
【0023】
まず、シャッタ208を閉から開にする動作を説明する。キャリッジ101を、読取器102がシャッタ開閉位置の近傍に来るように移動させる。そして、閉状態にあるシャッタ208の引掛部402が、爪部材405と噛み合う位置の直上で停止する(図6)。次いで、カム601が回転して爪部材405を押し上げ、シャッタ208の引掛部402をホールドする(図7)。この状態でキャリッジ101をホームポジション側に僅かに移動させると、その移動量だけシャッタ208がスライドして開き、読取器102の読取窓209が開放される。その後、カム601を回転させて爪部材405を下げ、シャッタ208の引掛部402をリリースする。以上の手順でシャッタ208が読取窓209に対して閉から開になる。
【0024】
次に、シャッタ208を開から閉にする動作を説明する。キャリッジ101はシャッタ開閉位置よりもホームポジション側で待機させる。爪部材405は予め押し上げておく。その状態でキャリッジ101を低速でバックポジション側へ移動させ、爪部材405の背面に引掛部402を押し当てる。押し当てたままキャリッジ101をさらにバックポジション側に移動させると、その移動量だけシャッタ208がスライドして閉じ、読取窓209がシャッタ208で塞がれる。以上の手順でシャッタ208が読取窓209に対して開から閉になる。
【0025】
読取器102は、シャッタ208を開けた状態で読み取りを行なう開モード(第1モード)と、シャッタ208を閉じた状態でシャッタ208を通して読み取りを行なう閉モード(第2モード)、の2つの動作モードを切り替えて動作する。これらの動作モードは、読取器102で読み取ろうとする情報に応じて切り替える。以下に例を挙げてそれぞれ詳細に説明する。
【0026】
<閉モードの例>
閉モードで読み取りを行なう例として、メディアの端部(エッジ)検出がある。これはプラテン上のメディア表面からの反射光の強度変化から、メディアの端部の位置情報を検出するものである。閉モードで行なう理由は次のとおりである。一つは、プラテンとメディアそれぞれの表面での反射強度の差を識別できれば十分であるため、それほど高い検出精度は要求されないこと。二つ目は、プリント中はインクミストの飛散が激しく、読取窓からのインクミストの進入を防ぐことが望ましいためである。
【0027】
メディア106の端部検出は、読取器102のフォトダイオード203、204の出力の差分を演算して行なう。初期状態ではシャッタ208は閉まっているので、そのまま読取器102をメディア106上で移動させ、赤外LED201を点灯させる。この際、シャッタ208を透過した光がメディア106上に照射され、その反射光の一部が再度シャッタ208を透過してフォトダイオード203、204で受光される。増幅回路304は、フォトダイオード203、204の出力が同程度となるように調整を行ない、そのときの利得(ゲイン)で固定する。続いて、フォトダイオード203、204の出力値を一定周期でサンプリングしながら、メディア106の端部を検出可能な範囲で、キャリッジ101を走査移動する。
【0028】
読取器102がメディア106上にある場合は、フォトダイオード203、204の出力値は共に最初の利得調整時と同じレベルであるため、出力値の差異はほとんど見られない。読取器102がメディア106の端部付近に差し掛かると、まず片方のフォトダイオードの受光領域がメディア106から外れる。すると、片方のフォトダイオードの出力が低くなる。フォトダイオード203、204からの出力各々を監視し、最初の調整時の出力の50%を閾値として、その閾値を下回った時の読取器102の位置をそれぞれ記録する。それらの位置の中間位置をMPU601で演算して求める。この中間位置は、フォトダイオード203、204の中間位置がちょうどメディア106の端部を通過したときの位置である。
【0029】
こうして、メディア106の絶対的な位置や、メディア106の幅を求める。コントローラは、この情報を用いて画像形成の条件、すなわちプリント範囲を設定する。これにより、周囲に余白を設けないふち無しプリントや、ユーザがメディアのサイズを本来よりも大きく誤って設定してしまった場合にも、メディアからはみ出してプリントすることを防ぐことができる。これはプラテンの汚れ防止に非常に有効である。さらに、読取器102の内部のLEDやフォトダイオード等への、インクミストやメディア表面の毛羽などの付着を防ぐことができ、読取精度が劣化することをが抑止される。
【0030】
<開モードの例>
開モードで読み取りを行なう例として、カラーキャリブレーションのためのカラーパッチの濃度検出がある。カラーパッチに光を照射した際、色濃度によって吸収される光の量が異なり、それが反射強度に反映されることを捉えて濃度情報の検出を行なう。開モードで行なう理由は次のとおりである。一つは、色濃度の検出には高い検出精度が要求されること。二つ目は、カラーパッチの乾燥を待ってから読取動作を行なうため、インクミスト飛散による汚れ付着の懸念が小さいためである。
【0031】
まずメディア106を搬送し、所定領域をプラテン107上に位置させて所望のカラーパッチ(複数の色パターン)のプリントを行なう。このプリント中は、シャッタ208は閉状態とする。例えば、シアンインクを用いて、5×5mmサイズの3つのパッチを、それぞれ打ち込み量10%、50%、100%でプリントする。他の色のインクについても同様である。パッチのプリントが終了すると、キャリッジ101はホームポジションに戻って所定時間だけ待機して、パッチのインクが乾燥するのを待つ。乾燥を待つのは、インク溶媒が乾燥していない状態ではパッチの発色が本来の色とは異なるためである。また所定時間待つことで、パッチのプリントの際に発生したインクミストが、プリンタ内部から外へ排出され、内部雰囲気のクリーン度が向上するという効果も奏する。
【0032】
その後、キャリッジ101をシャッタ開閉位置に移動させ、先に説明したように、読取器102のシャッタ208を閉から開にする。次いで、濃度を測定する色の補色となる発光波長のLEDを点灯させる。例えば。シアンパッチの濃度を測定する場合、シアンの捕色である赤色の発光波長(620〜640nm)を持つLED207を点灯させる。
【0033】
読み取りは、最初に、カラーパッチが形成されていないメディア上の領域に読取器102を移動させ、そのときの反射光の強度(反射強度)をLED207に対応するフォトダイオード204で測定する。これを基準値としてRAM307に記録する。続いて、読取器102をシアンパッチの領域へ移動させ、同様に反射強度を測定する。照射された赤色光の一部がシアンインクによって吸収されるため、先の基準値に比べて弱くなる。この反射強度はRAM307に記録する。他の色のパッチについても同様に繰り返す。
【0034】
メディア106上のパッチのない領域での反射強度Vr、パッチでの反射強度Vpとすると、メディア106における相対的なカラー濃度Dは次式で求められる。
【0035】
D=log10(Vr/Vp)
使用するメディア106の種類に応じて、プリントされるカラー特性が異なるので、予めメディアの種類に応じて変換テーブルを作成して記憶しておく。この変換テーブルを参照することで、使用するメディアに応じた変換を行ない、相対的なカラー濃度Dから最終的なカラー濃度を求める。
【0036】
そして、コントローラは、パッチのカラー濃度を元にカラーキャリブレーションを行なって、プリントされる画像が本来の濃度となるように、画像形成の条件を設定する。また、パッチが、プリント位置合わせのためのマークでもある場合には、パッチの検出位置からプリントの位置合わせの設定を行なう。
【0037】
以上のとおり、読み取る情報に応じて、シャッタを開けた状態で読み取りを行なう開モード(第1モード)と、シャッタを閉じた状態で、シャッタを通して読み取りを行なう閉モード(第2モード)とを切り替える。これにより、読取器の汚れの進行を最小限に抑え、メンテナンスの手間、頻度、コスト等のメンテナンス性に優れた装置とすることができる。
【0038】
ところで、プリンタの長期間の使用に伴って、シャッタ208自体にインクミスト等が付着して経時的に汚れ(光透過性の低下)が蓄積していくのは避けられない。そこで、この汚れの状態を判断してユーザーに警告する機能(保守動作)を持っている。
【0039】
光透過性の透明アクリルからなるシャッタ208上に付着したインク等の汚れは、透過する光の光量を減衰させる。そのため、閉モードで読み取りを行なった際の出力は、汚れの進行に伴って徐々に低下する。これに対して、開モードでの出力は、上述したとおり読取器102の内部へのインク付着は少ないため、使用に伴う低下はさほど無い。そこで、開モードと閉モードでそれぞれ同一物の読み取りを行なって、それらの出力を比較することで、シャッタ208の汚れの程度を判断することができる。この判断は、吐出したインク滴の総カウント値(ドットカウント)が所定値に達する毎に実行する。最も大きな汚れの原因は、インク吐出に伴って発生するインクミストだからである。
【0040】
図8は保守動作の動作シーケンスを示すフローチャート図である。保守動作は、一連のプリントジョブの終了後など、ユーザを待たせないタイミングで行なう。
【0041】
保守動作を開始すると、シャッタ208を閉じる(S1)。次に、ドットカウントが所定値に達しているか否かの判定を行なう(S2)。所定値に達していない場合は、保守動作を終了する(S11)。ドットカウントが所定値以上である場合は、プリントを行なっていないブランクのメディアを給送する(S3)。その際、ユーザから指定されているメディアの種類を取得し、保守動作に適しているメディアであるかを判定する(S4)。適さないメディアとしては、例えばOHPフィルムなどがある。適さないメディアだった場合はユーザにメディアの交換を要求するか、保守動作を断念しシーケンスを終了する(S11)。保守動作に適しているのは白色のメディアであるが、閉モードと開モードとの相対比較によって判断を行なうため、厳しく制約しなくても良い。
【0042】
メディアが適切であれば次に進み、シャッタ208が閉じた読取器102をメディア106上に移動させる。そして各色のLEDを順次点灯し、メディア106からの反射光を対応するフォトダイオードで受光する。フォトダイオードから出力された反射強度VcloseをRAM307に記憶する(S5)。この反射強度は各色LEDについて順次取得する。以上のとおり閉モード時の出力を取得する。
【0043】
次に、キャリッジ101で読取器102をシャッタ開閉位置に移動させ、シャッタ208を閉から開にする(S6)。次いで、再びキャリッジ101によって読取器102を移動させ、閉モードで検出を行った時と同じ場所へ戻す。そして、各色のLEDを順次点灯し、反射強度Vopenを各色LEDについて取得する。取得したVopenはRAM307に記憶する(S7)。この後、キャリッジ101をシャッタ開閉位置に移動させ、シャッタを開から閉にする(S8)。そして、キャリッジ101をホームポジションへ移動させ待機させる。
【0044】
上記のようにRAM307に記憶した値を、各色それぞれについて、Vclose/Vopenを計算する。シャッタ208汚れが進行するに従ってVcloseが大きく低下するため、Vclose/Vopenの値は低下していく。この値を所定値(閾値)と比較する(S9)。閾値以下でなければ、汚れはまだ許容できると判断し保守動作シーケンスを終了する(S11)。もし、閾値以下であれば許容できない汚れであると判断して、本体パネルに警告メッセージを表示して、ユーザーに対して、シャッタ208のクリーニングや交換等のメンテナンスを促す(S10)。そして、保守動作動作を終了する。
【0045】
シャッタ208は、読取器102の外側に取り付けた部材であり、また取り外すのも容易であるため、そのクリーニングや交換も極めて容易である。読取器の内部のLEDやフォトダイオードをクリーニングしたり、読取器自体を交換することに較べると、メンテナンスの手間、頻度、コスト等のメンテナンス性を大きく向上させることができ、実用性の高い装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】プリンタの全体構成図
【図2】読取器の構成図
【図3】コントローラのブロック図
【図4】読取器が備えるシャッタの構成を示す斜視図
【図5】読取器を斜め方向から見た斜視図
【図6】シャッタ開閉動作を説明するための模式図
【図7】シャッタ開閉動作を説明するための模式図
【図8】保守動作のフローチャート図
【符号の説明】
【0047】
101 キャリッジ
102 読取器
103 記録ヘッド
106 メディア
208 シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアに画像を形成する画像形成装置であって、
読取窓と、該読取窓に対して開閉する光透過性のシャッタを備え、前記読取窓を通してメディアから情報を読み取る読取器と、
読み取る情報に応じて、前記シャッタを開けた状態で読み取りを行なう第1モードと、前記シャッタを閉じた状態で前記シャッタを通して読み取りを行なう第2モードとを切り替える切替手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記読取器は、発光素子と受光素子を有し、前記発光素子からの光を前記読取窓を通してメディアに照射して、前記メディアからの反射光を前記読取窓を通して前記受光素子で受光するものであり、且つ、前記シャッタを閉じた状態でも、前記シャッタを透過する光で読み取りを行なうことができることを特徴とする、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記切替手段は、カラーパッチの濃度を読み取る場合は前記第1モードとすることを特徴とする、請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記切替手段は、メディアの端部を読み取る場合に前記第2モードとすることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記シャッタの光透過性の状態を判断する手段を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1モードと前記第2モードでそれぞれ読み取りを行ない、これらの読み取りの結果を比較して、前記シャッタの光透過性の状態を判断することを特徴とする、請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記メディアから読み取った情報に基いて、画像形成の条件を設定する手段を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項8】
記録ヘッドを搭載して、メディアに対して移動させるキャリッジを有し、前記読取器は前記キャリッジに搭載されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドは、インクジェット方式で記録を行なうものである、請求項8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58393(P2010−58393A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226989(P2008−226989)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】