説明

画像形成装置

【課題】
インクやトナー等の記録剤が付着する箇所が偏っている場合、ある領域に当接する消耗部品の部分的な消耗は他の部分に比べて激しく、この部分的な消耗により用紙が部分的に汚れることにより印刷不良が発生してしまう。よって、他の領域に当接する部分はあまり消耗していず、まだ使える状態にあっても消耗部品を交換せざるをえないという問題が生じている。
【解決手段】
記録媒体の領域ごとに記録剤を付着させる面積を測定し、測定した面積の累積値が閾値を超えた場合に形成する画像を反転させることによって、消耗部品の消耗する箇所が分散され、消耗部品の交換時期が延ばされることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録剤を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷機や複写機で用いられる感光体ドラム、中間転写ベルト、加圧ローラ等の消耗部品は製造者が定めた印刷枚数(基準枚数)の印刷が行われたときに交換されていた。ところが、印刷枚数ではなく、用紙に記録剤(例えば、トナー、インク等)が付着している面積に比例して消耗部品の消耗は進むので、消耗部品を交換するときを、印刷枚数が基準枚数に達したときとすると、あまり消耗していないのに交換したり、かなり消耗しているのに交換しなかったりするということが起こってしまう。そこで、用紙の印刷される領域に対してインクが付着している面積の割合を計測し、製造者が基準として定めたインクが付着している割合とから、消耗部品の交換までに印刷可能な枚数を算出する技術がある。これにより消耗部品の交換時期を提示することができる。
【0003】
特許文献1では、次のように消耗部品の交換時期を提示する技術が開示されている。基準として、たとえば黒化率5%で印字した場合に10000枚でクリーニングローラを交換する画像生成装置では、用紙を計測して黒化率が10%であった場合には基準の黒化率に比べ2倍であるため、1枚の用紙に対して2をカウンタに加算する。また、黒化率30%で印字した場合には6をカウンタに加算する。このように、計測した黒化率を基準の黒化率で除した値を、カウンタに加算し、カウンタが10000になった時点でプリンタのパネルにクリーニングローラの交換表示をする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、消耗部品は全体が消耗した場合だけではなく、一部が消耗した場合にも印刷品質が悪くなる。印字されている箇所に偏りがある場合には、消耗部品の一部分の消耗が激しいため、印刷枚数が基準枚数に達していなくても印刷不良が発生してしまう。
【0005】
ここで、印字箇所の偏りを説明するために、画像比率について説明する。画像比率とは、用紙にインクが付着しているインク付着面積の用紙全体の面積に対する割合である。図13は画像比率を説明するための図である。A4サイズの用紙に印刷される画像の例である。たとえば600dpiで画像を形成するとき、A4サイズの用紙1枚の全体には約3480万ドットのインクが付着され得る。ここで、図13に示すようなAという文字の画像を形成すると、約174万ドットのインクが付着する。このとき、用紙の画像比率は(174万/3480万)×100=5%となる。
図14は消耗品である加圧ローラと定着ベルトによりインクを記録媒体に定着させる状態を示す図である。ここでは、加圧ローラ、定着ベルトにインクが付着する箇所を斜線で示している。図14に示すように、インクが付着する箇所が偏っている場合、原稿の全体としての画像比率は25%であっても、左側の領域1では画像比率は50%となる。このとき、領域1に当接する消耗部品の部分的な消耗は他の部分に比べて激しく、この部分的な消耗により、印刷枚数が基準枚数に達する前に印刷不良が発生してしまう。よって、領域2に当接する部分はあまり消耗していず、まだ使える状態にあっても消耗部品を交換せざるをえないという問題が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、記録剤を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、前記記録媒体に前記記録剤を付着させる記録剤付着面積を前記記録媒体の記録領域を分割した領域ごとに測定する面積測定手段と、前記面積測定手段で測定した前記記録剤付着面積を前記領域ごとに複数枚の前記記録媒体にわたり累積した累積面積を算出する累積面積算出手段と、前記累積面積算出手段で算出した前記累積面積を前記領域ごとに記憶する累積面積記憶手段と、前記累積面積記憶手段に記憶されている累積面積が予め定められた閾値を超えたときに、前記画像を反転させる画像反転手段と、前記画像反転手段によって反転された前記画像を形成する画像形成手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、記録剤を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、前記記録媒体に前記記録剤を付着させる記録剤付着面積を前記記録媒体の記録領域を分割した領域ごとに測定する面積測定手段と、前記面積測定手段で測定した前記記録剤付着面積を前記領域ごとに複数枚の記録媒体にわたり累積した累積面積を算出する累積面積算出手段と、前記領域のうち所定の領域である第一領域の前記累積面積と、記録媒体を等分する副走査方向の線分に対して前記第一領域と対称に位置する第二領域の前記累積面積との合計である合計累積面積を算出する合計累積面積算出手段と、前記合計累積面積算出手段で算出した前記合計累積面積を前記領域ごとに記憶する合計累積面積記憶手段と、前記合計累積面積記憶手段に記憶されている合計累積面積が予め定められた閾値を超えたときに、前記画像を反転させる画像反転手段と、前記画像反転手段によって反転された前記画像を形成する画像形成手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、消耗部品の消耗する箇所が分散され、消耗部品の交換時期が延ばされることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置の一例である複写機のハードウェア構成図である。
【図2】本実施形態の複写機が有している制御部1のハードウェア構成図である。
【図3】制御部1の機能構成を説明するための図である。
【図4】画像形成装置の操作パネルの画面の一例である。
【図5】領域記憶部に記憶されている用紙サイズに対応した領域に関する情報の例である。
【図6】領域および区画を説明するための図である。
【図7】ビットマップデータを説明するための図である。
【図8】領域ごとにインクを付着させる区画の数を計数し、面積を算出する手順を示すフローチャートである。
【図9】累積面積記憶部117に記憶されているの領域ごとの累積面積の例である。
【図10】反転した画像を形成するための画像情報を作成する処理を示すフローチャートである。
【図11】第二の実施形態の制御部1の機能構成を説明するための図である。
【図12】インクが付着する累積面積の印刷枚数による変化を示すグラフである。
【図13】画像比率を説明するための図である。
【図14】消耗品である加圧ローラと定着ベルトによりインクを記録媒体に定着させる状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1乃至図11を用いて、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0011】
図1は画像形成装置の一例である複写機のハードウェア構成図である。本実施形態の複写機は制御部1(図示しない)、スキャナ部2、プリンタ部3、給紙部4を有している。
【0012】
スキャナ部2は、コンタクトガラス21、読取センサ22等を有する。コンタクトガラス21は、原稿を載せる台である。読取センサ22は、CCD(電荷結合素子)等からなり、コンタクトガラス21に載せられた原稿に光が照射されると、原稿からの反射光を電気信号の画像情報に変換し、読み取った画像情報を制御部1に送信するものである。
【0013】
図2は本実施形態の複写機が有している制御部1のハードウェア構成図である。図2を用いて制御部1のハードウェア構成を説明する。
【0014】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、入力制御部104、表示制御部105、HD(Hard Disk)106、通信制御部107、バスライン108を有している。
【0015】
CPU101はプログラムを実行する。ROM102にはシステム起動プログラムの情報などが格納されている。RAM103はCPU101がプログラムを実行するワーク用エリアとして使用される。
【0016】
入力制御部104は操作パネル等の入力装置109から入力データを受け取り、受け取った入力データをCPU101へ伝達する。表示制御部105は操作パネル等の表示装置110にデータを表示する。HD106はデータを記憶する記憶装置であり、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc Recordable)、DVD(Digital Versatile Disc)等の外部記憶装置に代替可能である。
【0017】
通信制御部107は、通信ネットワークを介して他の通信機器等とデータを送受信する。バスライン108は、上記各部を接続するためのものである。
【0018】
ROM102に記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0019】
ここで図1に戻って、プリンタ部3のハードウェア構成を説明する。
【0020】
プリンタ部3は、カートリッジ31、感光体ドラム32、帯電部33、現像部34、中間転写ベルト35、2次転写ローラ36、定着部37等を有している。
【0021】
カートリッジ31はイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各記録剤(例えば、トナー、インク等)を収容しているものであり、各記録剤の種類に対応した4つのカートリッジ31Y、31M、31C、31Kからなる。
【0022】
感光体ドラム32は、後述する帯電部33により表面が一様に帯電され、制御部1から受け取った画像情報に基づき、表面に静電潜像が形成されるものである。更に、感光体ドラム32は、静電潜像が形成された表面に、後述する現像部34がインクを付着することによって、画像が形成されるものである。感光体ドラム32は、各インクの種類に対応した4つの感光体ドラム32Y、32M、32C、32Kからなる。
【0023】
帯電部33は、感光体ドラム32に接触して電圧を印加することにより、感光体ドラム32の表面を帯電させるものであり、各インクの種類に対応した4つの帯電部33Y、33M、33C、33Kからなる。
【0024】
現像部34は、カートリッジ31内のインクを感光体ドラム32に付着させることにより、各感光体ドラム32の表面に画像を形成するものである。各インクの種類に対応した4つの現像部34Y、34M、34C、34Kからなる。
【0025】
中間転写ベルト35は、感光体ドラム32に当接しながら搬送されることにより、その表面に画像が形成されるものである。また、表面に画像が形成された後、記録媒体にその画像を転写するものである。
【0026】
2次転写ローラ36は、後述する給紙部4から搬送された記録媒体を、中間転写ベルト35との間に挟み込むことにより、中間転写ベルト35に形成された画像を記録媒体に転写し、画像が形成された記録媒体を定着部37に送るものである。
【0027】
定着部37は、2次転写ローラ36から送られた記録媒体に画像を定着させるものであり、加圧ローラ371、定着ベルト372等を有している。
【0028】
加圧ローラ371は、後述する定着ベルト372との間に記録媒体を押し当て、熱を付与することにより、記録媒体に画像を定着させるものである。
【0029】
定着ベルト372は、加圧ローラ371との間に記録媒体を押し当てることにより、記録媒体に画像を定着させるものである。
【0030】
続いて、給紙部4のハードウェア構成を説明する。
【0031】
給紙部4は、用紙等の記録媒体をプリンタ部3に供給するものであり、給紙トレー41、給紙ローラ42、レジストローラ43を有している。
【0032】
給紙トレー41は、用紙等の記録媒体を収容するものである。
【0033】
給紙ローラ42は、給紙トレー41に収容されている記録媒体を取り出し、レジストローラ43に差し入れるものである。
【0034】
レジストローラ43は、給紙ローラ42によって差し入れられた記録媒体を中間転写ベルト35と2次転写ローラ36との間に送り入れるものである。
【0035】
図3は制御部1の機能構成を説明するための図である。図3を用いて、制御部1の機能構成を説明する。制御部1は、領域受付部111、領域記憶部112、画像受付部113、画像変換部114、面積測定部115、累積面積算出部116、累積面積記憶部117、判定部118、画像反転部119、画像送信部120を有している。領域受付部111、画像受付部113、画像変換部114、面積測定部115、累積面積算出部116、画像反転部119、画像送信部120の各部はROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。領域記憶部112、累積面積記憶部117はメモリ等で構成されるものである。
【0036】
領域受付部111は、用紙等の記録媒体にインクを付着させる面積を測定する対象となる領域に関する領域情報を受け付けるもので、入力制御部104により構成される。図4は画像形成装置の入力制御部104が制御する入力装置109の画面の一例である。図4に示す画面に管理者によって領域情報が入力され、OKボタンが押下されると、領域受付部111が領域情報を受け付ける。領域情報とは、例えば、画像を構成する最小単位である点を区画としたときに、用紙等の記録媒体の左上1区画目から主走査方向に876区画目まで、副走査方向に4956区画目までの範囲という情報である。
【0037】
領域記憶部112は、領域受付部111で受け付けた領域情報をメモリ等に記憶するものである。図5は領域記憶部112に記憶されている用紙サイズに対応した分割数の例である。図5に示す例のような情報が領域記憶部112に記憶されているとき、A4サイズの用紙に、横向きに(長辺を主走査方向に平行に)して複写を行う場合には8分割した領域ごとに、A4サイズの用紙に縦向きに(短辺を主走査方向に平行に)して複写を行う場合には4分割した領域でインクを付着させる面積を測定することとなる。なお、この例では、A3サイズの用紙へ横向きに複写を行う場合には主走査方向に10分割した領域で、B5サイズの用紙に横向きにして複写を行う場合には6分割した領域で面積を測定することとなる。図6は領域および区画を説明するための図である。A4サイズの用紙に、横向きに複写を行う場合には8分割した領域を設定した場合には、図6の実線で囲まれる領域ごとにインクを付着させる面積を測定することになる。
【0038】
A4サイズの用紙に600dpiで画像を形成する場合、用紙全体では主走査方向に7009区画、副走査方向に4956区画があることになる。この用紙を8つの領域に等分割すると領域1は主走査方向に1区画目から876区画目、副走査方向に1区画目から4956区画目まで、領域2は主走査方向に877区画目から1752区画目、副走査方向に1区画目から4956区画目までとなる。図6の点線で囲まれる部分が区画に相当する。それぞれの領域ごとにイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4種類それぞれのインクを付着させる区画の数が計数される。同様に領域3から領域8で、インクを付着させる区画の数が計数される。
【0039】
画像受付部113は、スキャナ部2から送られた電気信号の画像情報を受け付けるものである。
【0040】
画像変換部114では画像読取部113で読み取った電気信号の画像情報からビットマップデータとしての画像情報に変換するものである。
【0041】
面積測定部115は、領域記憶部112で記憶している領域ごとに、画像変換部114で変換したビットマップデータから用紙上にインクを付着させる区画の数を計数し、インクを付着させる面積に換算するものである。
【0042】
図7はビットマップデータを説明するための図である。ビットマップデータは1区画ごとにインクを付着させるか否かの情報を有している。図7に示す例ではAの文字が印刷されており、文字を形成するためにインクを付着させる区画に○を、インクを付着させない区画に×を記載している。ビットマップデータとは、このように用紙の各区画にインクを付着させるか、付着させないのかということを表す情報である。
【0043】
累積面積算出部116は、累積面積記憶部117に領域ごとに記憶されている累積面積に、面積測定部115が測定した面積を加算し、新たな累積面積を算出するものである。
【0044】
累積面積記憶部117は、面積測定部115で測定したインクを付着させる面積を累積した累積面積を領域ごとに記憶するものであって、メモリ等で構成される。累積面積記憶部117は、後述する累積面積算出部116が、累積面積を算出すると、その値を新たな累積面積として記憶する。
【0045】
判定部118は、累積面積記憶部117に記憶されている累積面積が閾値を超えているか否かを判定する。
【0046】
画像反転部119は、累積面積記憶部117に記憶されている累積面積が閾値を超えると、画像変換部114で変換された画像情報から、反転させた画像を形成するための画像情報を作成するものである。
【0047】
画像送信部120は、累積面積が閾値を超えないとき、画像変換部114で作成されたビットマップデータとしての画像情報をプリンタ部3に送信し、累積面積が閾値を超えると、画像反転部119で反転させたビットマップデータとしての画像情報をプリンタ部3に送信するものである。
【0048】
続いて、図8乃至図11を用いて、本実施形態に係る画像形成装置における処理を説明する。
【0049】
まず、制御部1の設定の手順を説明する。ここでの設定とは、用紙のサイズごとに所定の領域に対して、インクを付着させる面積を測定するように、測定の対象となる領域を設定することである。
【0050】
画像形成装置の管理者が、領域情報として記録領域の分割数を入力し、領域受付部111が入力された分割数を受け付ける。
【0051】
領域記憶部112は領域受付部111で受け付けた分割数に基づいて等分した領域を用紙のサイズに対応させて記憶する。
【0052】
次に、制御部1の動作を説明する。
【0053】
操作者がスキャナ部2のコンタクトガラス21に原稿をセットし、不図示のスタートスイッチを押すと、コンタクトガラス21に載せられた原稿に光が照射され、読取センサ22が原稿からの反射光を電気信号の画像情報に変換し、読み取った画像情報を制御部1の画像受付部113に送信する。
【0054】
画像受付部113はスキャナ部2から送信された電気信号の画像情報を受け付ける。そして、画像受付部113で受け付けた画像情報を、画像変換部114がビットマップデータとしての画像情報に変換する。
【0055】
読み取った画像情報がビットマップデータの画像情報に変換されたら、面積測定部115はビットマップデータの画像情報に基づいて、インクを付着させる面積を測定する。本実施例では、領域ごとに各種類(Y、M、C、K)のインクを付着させる区画の数が計数され、1区画あたりの面積を乗じることによって、その領域でインクを付着させる面積が算出される。
【0056】
図8は、領域ごとにインクを付着させる区画の数を計数し、面積を算出する手順を示すフローチャートである。
【0057】
図6に示すように記録媒体の記録領域の主走査方向の区画数をP、副走査方向の区画数をQ、主走査方向の分割数を8とするとき、各領域内の主走査方向の区画数はP/8(以降の説明および図9ではXとする)となる。副走査方向には分割しないので、各領域内の副走査方向の区画数はQとなる。
【0058】
以下、面積測定部115が実施する処理を説明する。
【0059】
領域aのインクを付着させる区画の数naは、区画(x,y)がインクを付着させる区画であるか否かを判定することによって計数される。まず、na=0、y=1、累積画素数Na=0とされる(ステップS11)。次に、x=1として(ステップS12)、区画(1,1)はインクを付着させる区画であるか否か判定される(ステップS13)。区画(1,1)がインクを付着させる区画であればna=1とし(ステップS14)、インクを付着させない区画であればna=0とされる。次に、x=2として(ステップS15)、xが領域a内の主走査方向の区画数Xを越えていなければ(ステップS16)、区画(2,1)がインクを付着させる区画であるか否か、判定される(ステップS13)。インクを付着させる区画であればnaに1を加算され(ステップS14)、インクを付着させる区画でなければ加算されない。区画(3,1)、(4,1)、・・・、(X,1)の区画についてもインクを付着させる区画であるか否か判定され、同様の処理が行われる(ステップS13〜ステップS16)。主走査方向の区画数までこの処理が終わると、y=2として(ステップS17)、 次の行の区画(1,2)、(2,2)、・・・、(X,2)の区画についても同様に、各区画にインクを付着させればnaは1加算され、付着されなければ加算されない(ステップS12〜ステップS16)。3行目からQ行目に関しても同様の処理が行われ(ステップS12〜ステップS17)、区画(X,Q)まで処理が終わった(ステップS18)とき、インクを付着させる区画の数naに1区画あたりの面積である0.17平方ミリメートルを乗じ、インクを付着させる面積saを算出される(ステップS19)。
【0060】
次に、算出された面積saを累積面積記憶部117に記憶されている累積面積Saに加算した値が累積面積Saとされる(ステップS20)。
【0061】
2枚目以降の複写についても同様の手順によってsaが算出され、saの値をこれまでに累積面積記憶部117に記憶されている累積面積Saに加算し、累積面積記憶部117が累積面積Saを記憶する。
【0062】
図9は累積面積記憶部117に記憶されているの領域ごとの累積面積の例である。これは、A4サイズの用紙に複写し、主走査方向に8分割し、インクの種類ごとにインクを付着させる面積を算出した場合の例であり、インクの種類ごと、領域ごとにインクを付着させる累積面積を表している。
【0063】
なお、面積を測定する手順は上述のものに限らない。また、上述の例では用紙の大きさを等分割した領域ごとに測定するする例を示したが、必ずしも等分割である必要はない。画像形成装置が利用される傾向に応じて領域ごとに測定してもよい。
【0064】
続いて、このようにして累積面積記憶部117に記憶されている累積面積が所定の閾値を超えているか、判定部118が比較する。超えていない場合には、画像変換部114で変換した画像情報を画像送信部120がプリンタ部3に送信する。累積面積が所定の閾値を超えている場合には、画像反転部119が、画像変換部114で変換された画像情報にかかる画像を反転した画像を形成するための画像情報を作成する。
【0065】
図10は、反転した画像を形成するための画像情報を作成する処理を示すフローチャートである。図10を用いて、反転した画像を形成するための画像情報を作成する処理を説明する。
【0066】
I(x,y)は印刷されたときに区画(x,y)にインクを付着させるか否かを示す情報である。
【0067】
インクを付着させる場合は、I(x,y)=○、インクを付着させない場合はI(x,y)=×となる。記録媒体の記憶領域の主走査方向の区画数をP、副走査方向の区画数をQとする。
【0068】
画像反転部119によって、まず、主走査方向、副走査方向それぞれの区画数Pの1/2となる値P’が算出される(ステップS21)。次にy=1(ステップS22)、x=1(ステップS23)とされ、区画(x,y)にインクを付着させるか否かの情報I(1,1)は、用紙の中心に対して点対称の位置(P,Q)にインクを付着させるか否かの情報I(P,Q)に置き換えられる。同様に、I(P,Q)はI(1,1)に置き換えられる(ステップS24)。次に、x=2として(ステップS25)、xの値がP’を超えていなければ(ステップS26)、I(2,1)はI(P−1,Q)に置き換えられ、I(P−1,Q)はI(2,1)に置き換えられる。同様にI(3,1)、I(4,1)・・・も同様に点対象に位置する区画の情報と置き換えられる(ステップS24〜ステップS25)。xがP’を超えたら、y=2として、次の行の区画(1,2)、(2,2)、・・、(x,2)、・・・にインクを付着させるか否かの情報I(1,2)、I(2,2)、・・、I(x,2)、・・が、それぞれI(P,Q−1)、I(P−1,Q−1)、・・、I(P−(x−1),Q−1)、・・に置き換えられる(ステップS23〜ステップS26)。3行目からQ行目に関しても同様の処理が行われる(ステップS23〜ステップS28)。このようにして得られたI(x,y)は、元の画像とは反転された画像を表すビットマップデータとしての画像情報になる。
【0069】
そして、画像送信部120は、上述のようにして画像反転部119が作成した画像情報を、プリンタ部3に送信する
次に、画像送信部120が送信した画像情報に基づいて、プリンタ部3及び給紙部4が画像を形成する処理を説明する。
【0070】
まず、帯電部33が感光体ドラム32に接触して電圧を印加し、感光体ドラム32の表面を帯電させる。そして、不図示の露光装置から発せられたレーザ光が制御部1から送信された画像情報に基づいて、感光体ドラム32の表面に静電潜像を形成する。そして、現像部34が、静電潜像が形成された感光体ドラム32の表面にカートリッジ31のインクを付着させることによって、感光体ドラム32の表面に画像を形成する。
【0071】
続いて、中間転写ベルト35が、感光体ドラム32に当接しながら搬送される。すると感光体ドラム32の表面に形成された画像が中間転写ベルト35に転写される。
【0072】
一方、給紙ローラ42は、給紙トレー41に収容されている用紙を取り出し、レジストローラ43に差し入れる。そして、レジストローラ43は、差し入れられた用紙を中間転写ベルト35と2次転写ローラ36の間に送り入れる。中間転写ベルト35と2次転写ローラ36の間に送り入れられた用紙は、中間転写ベルト35と2次転写ローラ36に挟まれ、搬送されることによって、中間転写ベルト35上の画像を転写される。次に、加圧ローラ371が、定着ベルト372との間に用紙を押し当て、熱を付与することにより、用紙に画像を定着させる。
【0073】
このように、用紙にインクを付着させる面積の累積に基づいて、印刷する画像を反転させることによって、消耗品が偏って消耗することを防ぎ、消耗品の長寿命化を図ることが可能となる。
【0074】
本発明の第二の実施形態を説明する。第二の実施形態は、閾値を超える前後での消耗品の消耗度合いを鑑みて、画像を反転させるか否かを判定する点が、第一の実施形態と異なる。
【0075】
第二の実施形態のハードウェア構成は第一の実施形態のハードウェア構成と同様であるため、第二の実施形態のハードウェア構成の説明を省略する。
【0076】
図11は第二の実施形態の制御部1の機能構成を説明するための図である。図11を用いて、第二の実施形態の機能構成を説明する。
【0077】
制御部1は、領域受付部131、領域記憶部132、画像受付部133、画像変換部134、面積測定部135、合計累積面積算出部136、合計累積面積記憶部137、判定部138、画像反転部139、画像送信部140、を有している。
【0078】
領域受付部131、領域記憶部132、画像受付部133、画像変換部134、面積測定部135、画像反転部139、画像送信部140は、第一の実施形態の、それぞれ領域受付部111、領域記憶部112、画像受付部113、画像変換部114、面積測定部115、画像反転部119、画像送信部120と同様であるため、各部の説明を省略する。
【0079】
合計累積面積算出部136は、面積測定部135が領域ごとに測定した面積について、所定の領域の面積と、記録媒体を等分する副走査方向の線分に対して対称に位置する領域の面積との合計を累積した合計累積面積を算出するものである。
【0080】
例えば、図6のように、用紙全体を8分割した領域ごとに累積面積を算出する場合、領域1の面積と領域8の面積を合計した値の累積を算出し、合計累積面積とする。また、領域2の面積と領域7の面積を合計した値の累積、領域3の面積と領域6の面積を合計した値の累積、領域4の面積と領域5の面積を合計した値の累積を算出し、それぞれ合計累積面積とする。
【0081】
合計累積面積記憶部137は、合計累積面積算出部136で算出した合計累積面積を記憶するものである。
【0082】
判定部138は、合計累積面積記憶部137で記憶している合計累積面積のいずれかが、予め定められた閾値を超えるものであるか否かを判定するものである。
【0083】
続いて、第二の実施形態に係る画像形成装置における処理を説明する。
【0084】
領域受付部131が入力された分割数を受け付け、領域記憶部132が領域受付部131で受け付けた分割数に基づいて等分した領域を用紙のサイズに対応させて記憶する処理は第一の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
スキャナ部2が読み取った画像情報を制御部1の画像受付部133に送信し、画像受付部133がスキャナ部2から送信された電気信号の画像情報を受け付け、画像受付部133で受け付けた画像情報を、画像変換部134がビットマップデータとしての画像情報に変換し、変換された画像情報をもとに面積測定部135が領域ごとに面積を測定する処理も第一の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
面積測定部135が領域ごとに面積を測定すると、合計累積面積算出部136は所定の領域の面積と、記録媒体を等分する副走査方向の線分に対して対称に位置する領域の面積との合計を、合計累積面積記憶部137に記憶されているそれらの領域に対応する合計累積面積に加算し、新たな合計累積面積を算出する。そして、合計累積面積記憶部137は合計累積面積算出部136が算出した新たな合計累積面積を記憶する。
【0087】
続いて、判定部138は合計累積面積が閾値を超えているか否かを判定する。超えていない場合には、画像変換部134で変換した画像情報を画像送信部140がプリンタ部3に送信する。累積面積が所定の閾値を超えている場合には、ビットマップデータとしての画像情報を画像反転部139に送信する。画像情報を送信された画像反転部139の処理は第一の実施形態と同様であるため、説明を省略する。画像反転部139での処理を終えると、画像送信部140が反転された画像情報をプリンタ部3に送信する。
【0088】
画像送信部140から画像情報を送信されたプリンタ部3が画像を印刷する処理は第一の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
このように、所定の領域の面積と、記録媒体を等分する副走査方向の線分に対して対称に位置する領域の面積との合計の累積値を閾値と比較し、画像を反転させるか否かを判定することにより、反転前および反転後の、消耗品の消耗の度合いを考慮して、消耗部品をより長く使うことが可能となる。
【0090】
なお、第二の実施形態では、閾値は複写機を管理する管理者等により設定できるものとするが、合計累積面積と、製造者が、基準と定めたインクの付着率で消耗品交換の基準となる印刷枚数を印刷した場合にインクを付着させる面積を考慮して決めると好適である。たとえば、感光体ドラム32は用紙全体の5%にインクを付着させる印刷をした場合に1万枚印刷されるまで利用できるという基準があるとする。このとき、8分割した領域ごとに合計累積面積を測定するとすれば、(3480万(区画)×5(%)×0.17(平方ミリメートル))/8=約36980平方ミリメートルを閾値とするとよい。
【0091】
図12は、同様の画像が大量に印刷される場合の、インクを付着させる累積面積の印刷枚数による変化を示すグラフである。図12(a)乃至図12(d)はそれぞれ、領域1の累積面積、領域8の累積面積、領域1の累積面積と領域8の累積面積の合計累積面積の変化を表し、グラフにおけるmeは、消耗品の交換を要するまでに印刷できる記録媒体の枚数を示している。
【0092】
図12(a)は画像を反転する処理を行わない場合のインクが付着する面積の変化である。図12(b)は領域1にインクを付着させる面積と、領域8にインクを付着させる面積の合計値が閾値を超えてから、画像を反転させて印刷する場合の、インクが付着する面積の変化である。図12(c)は、領域1にインクを付着させる面積と、領域8にインクを付着させる面積の合計値が閾値となる前に、画像を反転させて印刷する場合の、インクが付着する面積の変化である。図12(d)は、領域1にインクを付着させる面積と、領域8にインクを付着させる面積の合計値が閾値となったときに、画像を反転させて印刷する場合の、インクを付着させる面積の変化である。図12(a)乃至図12(d)のうち、図12(a)に示す場合に、消耗品を交換するまでの印刷枚数meが最も少なく、図12(d)に示す場合に、消耗品を交換するまでの印刷枚数meが最も多い。
【0093】
また、上述の第一の実施形態及び第二の実施形態では、紙の原稿を複写するときにインクを付着させる面積を測定する処理を説明したが、印刷機能により印刷を実行する場合にもインクを付着させる面積を測定することができる。パーソナルコンピュータ等で作成された電子データはプリンタドライバによりページ記述言語で記述された文書に変換され、画像形成装置に送信される。画像形成装置では、画像変換部114または画像変換部134がページ記述言語で記述された文書画像情報をビットマップデータに変換し、面積測定部115または面積測定部135が領域ごとにインクを付着させる面積を測定する。以降の処理は上述と同様であるので説明を省略する。

【符号の説明】
【0094】
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 入力制御部
105 表示制御部
106 HD
107 通信制御部
108 バスライン
111 領域受付部
112 領域記憶部
113 画像受付部
114 画像変換部
115 面積測定部
116 累積面積算出部
117 累積面積記憶部
118 判定部
119 画像反転部
120 画像送信部
131 領域受付部
132 領域記憶部
133 画像受付部
134 画像変換部
135 面積測定部
136 合計累積面積算出部
137 合計累積面積記憶部
138 判定部
139 画像反転部
140 画像送信部
2 スキャナ部
21 コンタクトガラス
22 読取センサ
3 プリンタ部
31 カートリッジ
32 感光体ドラム
33 帯電部
34 現像部
35 中間転写ベルト
36 2次転写ローラ
37 定着部
371 加圧ローラ
372 定着ベルト
4 給紙部
41 給紙トレー
42 給紙ローラ
43 レジストローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開平11−99692号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録剤を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記記録媒体に前記記録剤を付着させる記録剤付着面積を前記記録媒体の記録領域を分割した領域ごとに測定する面積測定手段と、
前記面積測定手段で測定した前記記録剤付着面積を前記領域ごとに複数枚の前記記録媒体にわたり累積した累積面積を算出する累積面積算出手段と、
前記累積面積算出手段で算出した前記累積面積を前記領域ごとに記憶する累積面積記憶手段と、
前記累積面積記憶手段に記憶されている累積面積が予め定められた閾値を超えたときに、前記画像を反転させる画像反転手段と、
前記画像反転手段によって反転された前記画像を形成する画像形成手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録剤を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記記録媒体に前記記録剤を付着させる記録剤付着面積を前記記録媒体の記録領域を分割した領域ごとに測定する面積測定手段と、
前記面積測定手段で測定した前記記録剤付着面積を前記領域ごとに複数枚の記録媒体にわたり累積した累積面積を算出する累積面積算出手段と、
前記領域のうち所定の領域である第一領域の前記累積面積と、記録媒体を等分する副走査方向の線分に対して前記第一領域と対称に位置する第二領域の前記累積面積との合計である合計累積面積を算出する合計累積面積算出手段と、
前記合計累積面積算出手段で算出した前記合計累積面積を前記領域ごとに記憶する合計累積面積記憶手段と、
前記合計累積面積記憶手段に記憶されている合計累積面積が予め定められた閾値を超えたときに、前記画像を反転させる画像反転手段と、
前記画像反転手段によって反転された前記画像を形成する画像形成手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−118203(P2011−118203A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276216(P2009−276216)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】