説明

画像形成装置

【課題】NTCサーミスタの抵抗値が高いままACコンセントプラグインから装置本体の動作が開始された場合に装置異常と誤検出される。
【解決手段】印刷ジョブをホスト側から受信したときに、PSU600のNTCサーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値以上であるか否かを判別し、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態でないときには、第1印刷動作での印刷を制御し、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるときには、第1印刷動作よりも消費電流を低減した第2印刷動作での印刷を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特にNTCサーミスタを含む電源ユニットを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、本願は液体吐出方式の画像形成装置に限らず、その他の画像形成手段を用いる画像形成装置にも適用できるが、以下ではインクジェット記録装置で説明する。
【0004】
画像形成装置において、一般的に、AC電源装置(以下、「PSU」という。)に、ACコンセントプラグイン時(装置本体のACプラグをコンセントに差し込んだ時)の突入電流を防止するために、NTCサーミスタを使用する技術が知られている。NTCサーミスタは、流した電流量(自身の発熱量)に対して抵抗値が低くなるという特性を持つものである。このNTCサーミスタをACプラグとAC電圧変換トランスとの間に介装することにより、ACコンセントプラグイン時には熱量が低いため抵抗値が高く、突入電流を防止する役割を果たし、ACコンセントプラグイン後しばらくすると自身の発熱により抵抗値が低くなり、抵抗値による無駄な消費電流を発生させることがない。
【0005】
また、画像形成装置における急激な消費電流のピークを低減するために、画像形成手段を主走査方向に移動させる主走査と用紙を副走査方向に送る副走査の駆動開始タイミングをずらす制御方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−202713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したNTCサーミスタを用いた電源装置にあっては、冬季の朝一番の環境(以下「冬季朝一環境」という。)下においてACコンセントプラグインから間をおかずに画像形成装置本体を駆動すると、急激な消費電流値の増加に対応できす、装置異常となってしまうという課題がある。
【0008】
具体的には、上述したように、主走査と副走査を行うために2個以上のモータを同時に駆動したとき、モータへの電流供給が十分に行えず、モータが意図した速度まで上昇しないという問題である。例えば、主走査モータに十分に電流供給ができずに速度不足となった場合、装置本体内に用紙詰まり等が発生して主走査をできなくなって速度異常が発生しているものと誤検知される。
【0009】
これは、ACコンセントプラグイン時からしばらくはNTCサーミスタが充分に温まっておらず、抵抗値が高いため、AC電源装置から電流を供給し難くなっていることに起因する。特に、冬季朝一環境ではNTCサーミスタが冷え切っているため、上記の不具合が発生しやすい。
【0010】
この場合、NTCサーミスタ本来の目的である突入電流防止と、冬季朝一環境温度において消費電流増加に対応できる抵抗値とのバランスがとれたNTCサーミスタを選定することで対応できるものの、PSU特性によっては対応可能なNTCサーミスタが得られないという問題がある。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、NTCサーミスタの抵抗値が高いままACコンセントプラグインから装置本体の動作が開始された場合の装置異常の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
サーミスタを含む電源ユニットと、
前記サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを判断する判断手段と、
前記サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断されたときに、第1画像形成動作よりも消費電流が低減した第2画像形成動作での画像形成を制御する手段と、を備えている
構成とした。
【0013】
ここで、前記判断手段は、環境温度が設定温度以下であることを検知する手段と、最後に装置本体の電源がオフされた時から電源がオンされた時までの第1経過時間を算出する手段とを備え、環境温度が設定温度以下であり、前記第1経過時間が予め定めた時間以上であるときに前記サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断する構成とできる。
【0014】
この場合、装置本体の電源がオンされた時から印刷データを受領するまでの第2経過時間を算出する手段を備え、環境温度が設定温度以下である、前記第1経過時間が予め定めた時間以上で、前記第2経過時間が予め定めた時間以下であるときに前記サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断する構成とできる。
【0015】
また、前記画像形成動作では、画像形成手段を搭載したキャリッジを主走査方向に移動走査させ、被記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向に移動させて画像形成を行い、前記第1画像形成動作では主走査と副走査を同じタイミングで開始し、前記第2画像形成動作では主走査と副走査とを異なるタイミングで開始する構成とできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断されたときに、第1画像形成動作よりも消費電流が低減した第2画像形成動作での画像形成を制御する構成としたので、NTCサーミスタの抵抗値が高いままACコンセントプラグインから装置本体の動作が開始された場合の装置異常の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】同装置の制御部の概要を説明するブロック説明図である。
【図4】PSUの概要を説明する説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態における制御の説明に供するフロー図である。
【図6】第1印刷動作と第2印刷動作の説明に供するフロー図である。
【図7】同じく駆動電流の説明に供する説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態における制御の説明に供するフロー図である。
【図9】本発明の第3実施形態における制御の説明に供するフロー図である。
【図10】本発明の第4実施形態の説明に供する説明図である。
【図11】同じく同実施形態における制御の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0019】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0020】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0021】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部であるサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色の第1インク供給部であるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、インク供給ユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0022】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0023】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0024】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0025】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0026】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0027】
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、この空吐出受け84に一体形成され、ワイパブレード83に付着したインクを除去するための清掃部材であるワイパクリーナ部85と、ワイパブレード83のクリーニング時にワイパブレード83をワイパクリーナ85側に押し付けるワイパクリーナ86と、キャリッジ22をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0028】
また、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0029】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0030】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0031】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0032】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0033】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図3を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、この画像形成装置全体の制御を司るマイクロコンピュータなどで構成した主制御部501及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部502とを備えている。なお、主制御部501は、本発明におけるサーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値より高い状態か否かを判断する手段、第1画像形成動作と第2画像形成動作を制御する手段を兼ねている。
【0034】
この制御部は、情報処理装置400から通信回路500を介して画像データを受信する。情報処理装置400は、アプリケーション401を通してユーザより印刷命令があった場合、OS(例えばGDI:Graphic Device Interface)402が画像形成装置で出力する画像データをプリンタドライバ403に伝達する。プリンタドライバ403は、アプリケーション401から伝達された画像データを、画像形成装置本体が処理できる形式の印写画像データに変換して、通信回路500を経由して画像形成装置に入力する。
【0035】
主制御部501は、通信回路500から入力される印写画像データに基づいて用紙42に画像を形成するために、前述したように、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ531や搬送ローラ52を回転駆動する副走査モータ532を主走査モータ駆動回路503及び副走査モータ駆動回路504を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行なう。
【0036】
主制御部501には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路505からの検出信号が入力され、主制御部501はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路505は、キャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシート214のスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサ213で読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。主走査モータ駆動回路503は、主制御部501から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ531を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0037】
主制御部501には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路506からの検出信号が入力され、主制御部501はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路506は、例えば、搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路504は、主制御部501から入力される搬送量に応じて副走査モータ532を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0038】
主制御部301は、図示しない給紙コロ駆動回路に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路511を介してモータ533を回転駆動することにより、キャップ82の昇降、ワイパブレード83の昇降などを行なわせる。
【0039】
主制御部501には、インク供給モータ303の回転を検出するエンコーダセンサ304の検出信号に基づいてインク供給モータ303の回転速度を検出する供給モータ速度検出回路513からの検出結果が入力される。制御部501は、供給モータ速度検出回路513からの検出信号に基づいてインク供給モータ駆動回路512を介してインク供給ユニット24のポンプ301を駆動するためのインク供給モータ303をPWM制御でフィードバック制御し、インクカートリッジ10からサブタンク35に対するインク補充供給を制御する。
【0040】
主制御部501には、サブタンク35が満タン状態にあることを検知する検知信号、装置の環境温度を検出する図示しない温度センサ、キャリッジ33に搭載されている用紙先端位置検知などに用いる用紙センサ91(図1参照)などの各種検知信号が入力される。
【0041】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路515を通じて、各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ516に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行なって、本体側記憶手段である不揮発性メモリ(例えば、EEPROM)514に格納保持する。
【0042】
印刷制御部502は、主制御部501からの信号とキャリッジ位置検出回路505及び搬送量検出回路506などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、ヘッド駆動回路510に与える。
【0043】
ヘッド駆動回路510は、印刷制御部502からの印刷データに基づいて記録ヘッド34の圧力発生手段(ピエゾ型ヘッドであれば圧電素子)を駆動して、所要のノズルから液滴を吐出させる。
【0044】
この制御部の各部には、PSU600から所要の電圧が供給される。
【0045】
次に、このPSU600について図4を参照して説明する。
PSU600は、AC電圧変換トランス601と、AC電圧変換トランス601の一次側とACプラグ700との間に介装したNTCサーミスタ602とを備えている。NTCサーミスタ602は、前述したようにACプラグ700のプラグイン時の突入電流を防止するためのものである。
【0046】
このPSU600から、例えば、主走査モータ駆動回路503及び副走査モータ駆動回路504を含むモータドライバ603に対して駆動電圧が供給される。
【0047】
ここで、前述したように、冬季朝一環境下においてACコンセントプラグインから間をおかずに主走査モータ531及び副走査モータ532の駆動を同時に開始して画像形成動作を行うと、モータ531、532への電流供給が十分に行えず、モータ531、532が所要の速度まで上昇せず、装置異常と誤検出されることになる。
【0048】
そこで、本発明では、サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断されたときに、第1画像形成動作よりも消費電流が低減した第2画像形成動作での画像形成を制御する構成としている。以下に具体的に説明する。
【0049】
次に、本発明の第1実施形態における制御について図5のフロー図を参照して説明する。
まず、印刷ジョブ(JOB)をホスト側から受信したときに、PSU600のNTCサーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値以上であるか否か、つまり、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを判別する。
【0050】
このとき、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値未満であるとき、すなわち、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態でないときには、第1画像形成動作である第1印刷動作(予め定めた消費電流初期設定を用いての正常印刷動作)で印刷を制御する。
【0051】
これに対し、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値以上であるとき、すなわち、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるときには、第1画像形成動作よりも消費電流を低減した第2印刷動作で印刷を制御する。
【0052】
ここで、第1印刷動作と第2印刷動作について図6のフロー図及び図7の説明図を参照して説明する。
図6を参照して、印刷ジョブを受信して実行するとき、第1印刷動作では、副走査モータ532の駆動を開始して給紙を開始するとともに、主走査モータ531も同時に駆動を開始してキャリッジ33を用紙先端位置検知位置まで移動させる。
【0053】
一方、第2印刷動作では、副走査モータ532の駆動を開始して給紙を開始した後、予め定めた所定時間(例えば1sec)経過後に、主走査モータ531の駆動を開始してキャリッジ33を用紙先端位置検知位置まで移動させる。
【0054】
つまり、第1印刷動作のように主走査と副走査を同時に開始した場合、図7(a)に示すように、副走査駆動電流(副走査モータ532を駆動するときの電流)と主走査駆動電流(主走査モータ531を駆動するときの電流)とを合せた駆動電流のピークが大きくなるので、大きな消費電流が必要となる。
【0055】
これに対し、第2印刷動作のように主走査と副走査をずらした開始した場合、図7(b)に示すように、副走査駆動電流と主走査駆動電流とを合せた駆動電流のピークが第1印刷動作の場合よりも小さくなるので、消費電流が低減され、小さな電流でも正常な駆動を行なうことができる。
【0056】
したがって、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値以上であるとき、例えば、冬季朝一環境下においてACコンセントプラグインから間をおかずに印刷動作を開始するときに、サーミスタ602の抵抗値が大きくて十分な消費電流に対応できない場合であっても、消費電流が相対的に少ない第2印刷動作で印刷制御を行なうことで装置異常と誤検出されることを防止できる。
【0057】
次に、本発明の第2実施形態における制御について図8のフロー図を参照して説明する。
ここでは、装置本体の電源スイッチがオフされた時、電源オフ時の日時t1を内部のRTC(リアルタイムクロック)より読み取って主制御部501内部の図示しない不揮発性メモリに記憶する。なお、電源オフ時でも上記動作に必要な時間は電力供給が行なわれている。
【0058】
そして、装置本体の電源がオンされた時、電源オン時の日時t2を同様にRTCより読み取って主制御部501内部の図示しない不揮発性メモリに記憶する。
【0059】
次いで、電源オフ時の日時t1から電源オン時の日時t2までの経過時間(第1経過時間)を、t2−t1の演算をして算出し、第1経過時間が予め定めた所定時間(例えば5時間)以上であるか否かを判別する。
【0060】
このとき、第1経過時間が所定時間以上でなければ、第1印刷動作で印刷を行なう。
【0061】
これに対し、第1経過時間が所定時間以上であれば、電源オン時の環境温度(ここでは、装置本体内の温度が予め定めた設定温度以下、例えば15℃以下であるか否かを判別する。
【0062】
このとき、電源オン時の環境温度が設定温度以下でなければ、第1印刷動作で印刷を行なう。
【0063】
これに対し、電源オン時の環境温度が設定温度以下であれば、第2印刷動作で印刷を行なう。
【0064】
つまり、ここでは、サーミスタ602が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを、環境温度が設定温度以下であり、かつ電源オフ時から電源オン時までの第1経過時間が所定時間以上であるかによって判断し、環境温度が設定温度以下で、かつ電源オフ時から電源オン時までの第1経過時間が所定時間以上であるときに、サーミスタ602が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断して、第2印刷動作での印刷を行なうようにしている。
【0065】
これは、通常冬季朝一環境下ではサーミスタ602が冷え切っている可能性が高いが、例えば、夜間電源がオンされた状態で放置され、朝一で電源のオフ→オンが行なわれたような場合にはサーミスタ602の抵抗値が高くなっていないことになる。そこで、環境温度に加えて、当該環境温度で装置本体が電源オフ状態で放置された継続時間(第1経過時間)をも判別して、サーミスタ602が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを判断することにより、より正確に検出(判断)することができる。
【0066】
次に、本発明の第3実施形態における制御について図9のフロー図を参照して説明する。
ここでは、装置本体の電源スイッチがオフされた時、電源オフ時の日時t1を内部のRTC(リアルタイムクロック)より読み取って主制御部501内部の図示しない不揮発性メモリに記憶する。なお、電源オフ時でも上記動作に必要な時間は電力供給が行なわれている。
【0067】
そして、装置本体の電源がオンされた時、電源オン時の日時t2を同様にRTCより読み取って主制御部501内部の図示しない不揮発性メモリに記憶する。
【0068】
さらに、印刷ジョブを受信した時、印刷ジョブ受信時の日時t3を同様にRTCより読み取って主制御部501内部の図示しない不揮発性メモリに記憶する。
【0069】
次いで、電源オフ時の日時t1から電源オン時の日時t2までの経過時間(第1経過時間)を、t2−t1の演算をして算出し、第1経過時間が予め定めた所定時間(例えば5時間)以上であるか否かを判別する。
【0070】
このとき、第1経過時間が所定時間以上でなければ、第1印刷動作で印刷を行なう。
【0071】
これに対し、第1経過時間が所定時間以上であれば、電源オン時の日時t2から印刷ジョブ受信時の日時t3までの経過時間(第2経過時間)を、t3−t2の演算をして算出し、第2経過時間が予め定めた所定時間(例えば1分間)以下であるか否かを判別する。
【0072】
このとき、第2経過時間が所定時間以下でなければ、第1印刷動作で印刷を行なう。
【0073】
これに対し、第2経過時間が所定時間以上であれば、電源オン時の環境温度(ここでは、装置本体内の温度が予め定めた設定温度以下、例えば15℃以下であるか否かを判別する。
【0074】
このとき、電源オン時の環境温度が設定温度以下でなければ、第1印刷動作で印刷を行なう。
【0075】
これに対し、電源オン時の環境温度が設定温度以下であれば、第2印刷動作で印刷を行なう。
【0076】
ここでは、サーミスタ602が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを、環境温度が設定温度以下であり、かつ電源オフ時から電源オン時までの第1経過時間が所定時間以上で、電源オン時から印刷ジョブ受信時までの第2経過時間が所定時間以下であるかによって判断し、環境温度が設定温度以下で、かつ電源オフ時から電源オン時までの第1経過時間が所定時間以上で、電源オン時から印刷ジョブ受信時までの第2経過時間が所定時間以下であるときに、サーミスタ602が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断して、第2印刷動作での印刷を行なうようにしている。
【0077】
これは、環境温度が設定温度以下であり、かつ電源オフ時から電源オン時までの第1経過時間が所定時間以上であっても、電源オン後から印刷ジョブの受信までの時間、即ち印刷動作の実行開始までの時間がある程度経過すれば、サーミスタ602が予め定めた抵抗値は小さくなるので、第1印刷動作での印刷を行なっても装置異常は生じないことによる。
【0078】
次に、本発明の第4実施形態について図10の説明図及び図11のフロー図を参照して説明する。
ここでは、図10に示すように、PSU600のサーミスタ602の両端の電圧V1、V2を検出する電圧検知部610を備えている。この電圧検知部610で検出した電圧V1、V2の差によってサーミスタ602の抵抗値を直接検出することができる。なお、電圧V1はACコンセントとNTCサーミスタの間の電圧で、電圧V2はサーミスタ602とAC電圧変換トランス601の一次側との間の電圧である。
【0079】
そして、図11に示すように、まず、電源オン後、印刷ジョブをホスト側から受信したときに、PSU600のNTCサーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値以上であるか否か、つまり、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを、電圧検知部610で検出した電圧V1と電圧V2との差(V1−V2)が予め定めた設定電圧(例えば1.0V)以上であるか否かをチェックして判別する。
【0080】
このとき、電位差V1−V2が設定電圧以上でなければ(設定電圧未満であれば)、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値未満、すなわち、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態でないので、第1印刷動作で印刷を制御する。
【0081】
これに対し、電位差V1−V2が設定電圧以上であれば、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値以上、すなわち、サーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるので、第2印刷動作で印刷を制御する。
【0082】
このように、サーミスタ602の抵抗値に相当する電位差を検出してサーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを判断することによって、より正確にサーミスタ602の抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを判断することができる。
【0083】
このように、この画像形成装置における画像形成方法では、サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断されたときに、第1画像形成動作よりも消費電流が低減した第2画像形成動作での画像形成を制御する。
【0084】
また、上述したサーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断されたときに、第1画像形成動作よりも消費電流が低減した第2画像形成動作での画像形成を制御する処理は、前述したように主制御部を構成するROMなどに格納されたプログラムによってコンピュータが行なわれる。
【0085】
このサーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断されたときに、第1画像形成動作よりも消費電流が低減した第2画像形成動作での画像形成を制御する処理をコンピュータに行なわせるプログラムは、記憶媒体に記憶して提供することができ、或はインターネットネットなどのネットワークを通じてダウンロードすることで提供される。
【符号の説明】
【0086】
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
531 主走査モータ
532 副走査モータ
600 PUS(電源装置)
602 NTCサーミスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーミスタを含む電源ユニットと、
前記サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であるか否かを判断する判断手段と、
前記サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断されたときに、第1画像形成動作よりも消費電流が低減した第2画像形成動作での画像形成を制御する手段と、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記判断手段は、環境温度が設定温度以下であることを検知する手段と、最後に装置本体の電源がオフされた時から電源がオンされた時までの第1経過時間を算出する手段とを備え、環境温度が設定温度以下であり、前記第1経過時間が予め定めた時間以上であるときに前記サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
装置本体の電源がオンされた時から印刷データを受領するまでの第2経過時間を算出する手段を備え、環境温度が設定温度以下であり、前記第1経過時間が予め定めた時間以上で、前記第2経過時間が予め定めた時間以下であるときに前記サーミスタの抵抗値が予め定めた抵抗値よりも高い状態であると判断することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成動作では、画像形成手段を搭載したキャリッジを主走査方向に移動走査させ、被記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向に移動させて画像形成を行い、前記第1画像形成動作では主走査と副走査を同じタイミングで開始し、前記第2画像形成動作では主走査と副走査とを異なるタイミングで開始することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−5740(P2011−5740A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151471(P2009−151471)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】