説明

画像形成装置

【課題】低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑え、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を防止可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】シート材上にトナーを定着させる定着装置20と、トナーが定着されたシート材を搬送する搬送ロール24と、搬送ロール24の周面に摺接して搬送ロール24の表面に付着した水分を掻き取るブラシ30と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置は、スキャナ、複写機、プリンタ、ファクシミリやデジタル複合機等としてオフィスや家庭等に急速に普及してきている。このような画像形成装置においては、画像形成部で形成された画像は給紙装置から搬送されてきたシート材に転写され、この画像が転写されたシート材を定着装置により加熱して画像を定着させている。
【0003】
このような加熱方式の定着装置では、シート材に転写された画像を加圧、加熱することでシート材に定着させている。このため、定着直後のシート材は100℃を超える高温となり、シート材に含まれていた水分が水蒸気となって放出される。この水蒸気は、周囲の温度の低い部品に触れて結露し、水滴となる。この水滴がシート材に付着すると、紙詰まり等の搬送障害や滲みによる画像不良が生じる。
【0004】
このような課題を解決するための技術が各種検討されており、例えば特許文献1では、定着装置と排出ロールとの間の搬送経路を発熱体が配設されたガイド板により形成し、ガイド板近傍に温度センサーを設けた構造が開示されている。これにより、発熱体を適宜通電加熱して搬送経路内の空気の温度差が生じないよう適宜コントロールし、結露の発生を防止している。
【0005】
特許文献2では、定着装置の容器のシート材排出口を塞ぐように挟持手段を設けた構造が開示されている。これにより、容器内で発生した水蒸気がシート材排出口を通過して容器外に流出することを防止し、定着装置の外部における結露の発生を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−166968号公報
【特許文献2】特開2007−86509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2の技術にあっては、結露の発生を防止可能な画像形成装置を得ることができると考えられるが、以下のように問題点もある。
特許文献1では、加熱により結露を防止しているため、消費電力の増大、ウォームアップ時間の延長による耐久性の低下が懸念される。また、特許文献2では、定着装置の容器内の気密性を高めることにより結露を防止しているが、定着装置の容器外に水蒸気が流出しないレベルまで気密性を高めることは困難である。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑え、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を防止可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、シート材上にトナーを定着させる定着装置と、前記トナーが定着されたシート材を搬送する搬送ロールと、前記搬送ロールの周面に摺接して前記搬送ロールの表面に付着した水分を掻き取るブラシと、を有することを特徴とする。
【0010】
このような構成を採用することによって、本発明では、ブラシが搬送ロール表面に摺接することで搬送ロール表面に付着した水分が掻き取られるので結露によって発生した水分を除去することで、水分がシート材に付着することによる不具合の発生が防止される。また、特許文献1のように加熱により結露を防止する構造となっていないので、低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑えることができる。したがって、低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑え、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を防止可能な画像形成装置が提供できる。
【0011】
また、本発明においては、前記搬送ロールの周面上において前記ブラシと接する部分には、前記搬送ロールの回転軸と平行な溝が形成されているという構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記ブラシが前記搬送ロールの溝に食い込むように押し当てられているという構成を採用する。
【0013】
また、本発明においては、前記搬送ロールは、シリコンゴムによって形成されているという構成を採用する。
【0014】
また、本発明においては、前記ブラシの前記搬送ロールと接する部分の形状が、前記搬送ロールの回転軸方向に沿って波打つような凹凸形状となっているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シート材上にトナーを定着させる定着装置と、前記トナーが定着されたシート材を搬送する搬送ロールと、前記搬送ロールの周面に摺接して前記搬送ロールの表面に付着した水分を掻き取るブラシと、を有するという構成を採用することによって、ブラシが搬送ロール表面に摺接することで搬送ロール表面に付着した水分が掻き取られるので結露によって発生した水分を除去することで、水分がシート材に付着することによる不具合の発生が防止される。また、特許文献1のように加熱により結露を防止する構造となっていないので、低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑えることができる。
したがって、本発明では、低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑え、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を防止可能な画像形成装置が提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】搬送ロールとブラシの配置関係を示す斜視図である。
【図4】搬送ロールの斜視図である。
【図5】本発明の他の形態のブラシの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0018】
図1は、本発明の画像形成装置1の概略構成を示す断面図である。図2は、図1のA部拡大図である。なお、図1はシート材に転写されたトナーをシート材上に加熱定着させる定着装置20の周辺構造を示した図である。また、図2はトナーが定着されたシート材を搬送する搬送ロール23,24の周辺構造を示した図である。
【0019】
図1に示すように、定着装置20は、内部にヒーターを備えた加熱ロール21と、加熱ロール21に圧接される圧接ロール22とを備えて構成されている。この定着装置20は、2つのロール21,22でトナーが転写されたシート材を挟持搬送することでシート材を加熱、加圧して、トナーをシート材上に定着させる機能を有する。そして、定着装置20によってトナーが定着されたシート材は、搬送経路Lに沿って搬送され、一対の搬送ロール23,24、一対の排出ロール25,26を経由して排出口40から排出される。
【0020】
ところで、本実施形態の定着装置20はシート材に転写された画像を加圧、加熱することでシート材に定着させる加熱方式を採用している。このため、定着直後のシート材は100℃を超える高温となり、シート材に含まれていた水分が水蒸気となって放出される。この水蒸気は、周囲の温度の低い部品に触れて結露し、水滴となる場合がある。このとき発生した水滴がシート材に付着すると、紙詰まり等の搬送障害や滲みによる画像不良が発生する。
【0021】
そこで、本実施形態では、定着装置20によってトナーが定着されたシート材を搬送する搬送ロール24に摺接するブラシ30が設けられている。ブラシ30としては、例えばカーボンブラシやナイロンブラシを用いることでき、搬送ロール24の表面に摺接するブラシであればこれに限らない。本実施形態では、ブラシ30として密度19100F/inchからなるカーボンブラシを用いる。このブラシ30は、搬送ロール24表面に摺接して搬送ロール24の表面に付着した水分を掻き取る機能を有する。
【0022】
このような構成により、搬送ロール24表面に付着した水分がブラシ30によって掻き取られるので結露によって発生した水分を除去することで、水分がシート材に付着することによる不具合の発生が防止される。また、特許文献1のように加熱により結露を防止する構造となっていないので、低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑えることができる。
【0023】
図2に示すように、搬送ロール24の周面上においてブラシ30と接する部分には、複数の溝24aが形成されている。ブラシ30は、搬送ロール24の溝24aに食い込むように押し当てられている。例えば、ブラシ30は搬送ロール24に対してブラシ先端が1〜2mm食い込むように押し当てられている。
【0024】
搬送ロール24の形成材料としては、例えば金属やプラスチック、シリコンゴム等のゴム系材料を用いることができ、シート材を搬送可能なものであれば、これに限らない。本実施形態では、搬送ロール24の形成材料としてシリコンゴム等のゴム系材料を用いる。搬送ロール24がシリコンゴムによって形成されていることにより、柔軟性を有するようになるので、ブラシ30が搬送ロール24の溝24aに食い込みやすくなる。
【0025】
図3は、搬送ロールとブラシの配置関係を示す斜視図である。図3において、符号W1は搬送ロール24の幅、符号W2はブラシ30の幅を示している。
【0026】
図3に示すように、搬送ロール24はシャフト(回転軸)27に沿って所定間隔を空けて4つ設けられている。ブラシ30は、搬送ロール24に対応する位置に所定間隔を空けて4つ設けられている。ブラシ30の搬送ロール24と接する部分の形状(先端の形状)は、搬送ロール24表面に倣ってほぼ平坦になっている。また、ブラシ30の幅W2は搬送ロール24の幅W1よりも大きくなっている(W2>W1)。これにより、搬送ロール24表面に付着した水分を確実に掻き取ることが可能になっている。
【0027】
図4は、搬送ロール24の斜視図である。図4において、符号Dは搬送ロール24の直径、符号Pは溝24aの幅を示している。
【0028】
図4に示すように、搬送ロール24表面の複数の溝24aは搬送ロール24のシャフト27と平行に形成されている。例えば、複数の溝24aは搬送ロール24外周を12分割するように形成されている。なお、搬送ロール24の直径Dが16mm程度、搬送ロール24の幅W1が20〜25mmの場合、溝24aの幅Pは2mm程度とするのがよい。
【0029】
このように搬送ロール24表面には複数の溝24aが形成されているので、トナーの定着後にシート材から発生した水分が溝24a内部に侵入するようになる。そして、搬送ロール24に対して先端が食い込むように押し当てられたブラシ30によって、溝24a内部に侵入した水分が掻き取られる。そして、ブラシ30によって掻き取られた水分はブラシ30に沿って流れながら自然蒸発する。
【0030】
したがって、本実施形態では、ブラシ30が搬送ロール24表面に摺接することで搬送ロール24表面に付着した水分が掻き取られるので結露によって発生した水分を除去することで、水分がシート材に付着することによる不具合の発生が防止される。また、特許文献1のように加熱により結露を防止する構造となっていないので、低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑えることができる。したがって、低消費電力化を図るとともに耐久性の低下を抑え、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を防止可能な画像形成装置1が提供できる。
【0031】
また、本実施形態では、搬送ロール24の周面上においてブラシ30と接する部分に搬送ロール24のシャフト27と平行な溝24aが形成されているので、ブラシ30によって溝24a内部に侵入した水分が掻き取られる。したがって、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を格段に防止可能な画像形成装置1が提供できる。
【0032】
また、本実施形態では、ブラシ30が搬送ロール24の溝24aに食い込むように押し当てられているので、溝24a内部に侵入した水分が確実に掻き取られる。したがって、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を確実に防止可能な画像形成装置1が提供できる。
【0033】
また、本実施形態では、搬送ロール24がシリコンゴムによって形成されているので、搬送ロール24が柔軟性を有するようになり、ブラシ30が搬送ロール24の溝24aに食い込みやすくなる。このため、ブラシ30が搬送ロール24の溝24aに確実に食い込むように押し当てられるので、溝24a内部に侵入した水分が確実に掻き取られる。したがって、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を確実に防止可能な画像形成装置1が提供できる。
【0034】
なお、本実施形態では、ブラシ30先端の形状が搬送ロール24表面に倣ってほぼ平坦になっているが、これに限らない。図5は、本実施形態のブラシ30と異なる形態のブラシ30Aを示す正面図である。図5に示すように、ブラシ30Aの先端形状(搬送ロール24と接する部分の形状)が搬送ロール24の回転軸方向に沿って波打つような凹凸形状になっていてもよい。これにより、ブラシ30Aの先端が搬送ロール24の溝24aに格段に食い込みやすくなるので、溝24a内部に侵入した水分が確実に掻き取られる。したがって、水分がシート材に付着することによる不具合の発生を確実に防止可能な画像形成装置1が提供できる。
【符号の説明】
【0035】
1…画像形成装置、20…定着装置、24…搬送ロール、24a…溝、27…シャフト(回転軸)、30…ブラシ、L…搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材上にトナーを定着させる定着装置と、
前記トナーが定着されたシート材を搬送する搬送ロールと、
前記搬送ロールの周面に摺接して前記搬送ロールの表面に付着した水分を掻き取るブラシと、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送ロールの周面上において前記ブラシと接する部分には、前記搬送ロールの回転軸と平行な溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ブラシが前記搬送ロールの溝に食い込むように押し当てられていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送ロールは、シリコンゴムによって形成されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ブラシの前記搬送ロールと接する部分の形状が、前記搬送ロールの回転軸方向に沿って波打つような凹凸形状となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−7928(P2011−7928A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149703(P2009−149703)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】