説明

画像形成装置

【課題】像担持体上のトナー付着量のバラツキを無くし、転写画像にチリや像乱れ等の不具合を発生させない、均一な画像濃度の画像形成を行える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】像担持体、静電潜像形成手段、現像手段、及び転写手段を有するとともに、現像領域の下流側で転写領域の上流側の、前記像担持体に近接又は接触して配設され、前記像担持体上のトナー像を均す、トナー均一化部材を有し、前記トナー均一化部材は表面に空隙部を有する回転体からなり、前記像担持体と前記トナー均一化部材の線速度をv1、v2とするとき、線速比はv2/v1であり、両者の線速比の差をΔθとすると、該線速比の差Δθは、Δθ=|1−v2/v1|、となり、前記トナー均一化部材の外周にトナー像が接触する長さとしてのトナー均しニップ幅をc、トナー粒子の平均粒径をbで表すとき、b<c×Δθ<10b、となることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の電子写真技術を用いた画像形成装置に関し、特に像担持体上に形成されるトナー像を均一化するトナー像均一化手段を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、像担持体表面に静電潜像を形成し、この静電潜像は現像手段によりトナー像として像担持体表面に現像され、この現像されて形成されたトナー像を直接又は中間転写体を介して、紙等の転写材に転写させる。更に、このトナー像を転写された転写材を加熱・加圧して転写材表面にトナー像を定着させるという画像形成工程を有するものが一般的である。上記のような画像形成装置では、一定品質の画像を形成するため、現像手段内のトナー濃度を略一定に保つようにトナー濃度制御が行われている。
【0003】
然るに、トナー濃度制御を行っていても環境の変化や経時により、トナーの物性、感光体の特性等の変化により、現像後の像担持体上に形成されるトナー像内のトナー付着量にバラツキを生じさせるという問題がある(図5(a)参照)。このようなトナー付着量のバラツキは、次工程の転写工程において、不安定なトナーの飛び散りを生じさせ易く、転写画像にチリ(トナーの飛び散り)や像乱れ等の不具合を発生させる要因となる。また、画像濃度のバラツキの懸念も生じる。
【0004】
この問題を解決するために、現像領域の下流側で転写領域の上流側に、像担持体上に形成されたトナー像を補正する画像補正部材を設けるという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されている技術は、像担持体上に形成されたトナー像を補正するために像担持体に像担持体との間に電界を形成する画像補正部材と、画像補正部材上のトナーを除去するトナー除去手段とを有するものである。画像補正部材としては、金属、樹脂、ゴム等からなる回転するローラが用いられ、画像補正部材と像担持体との間には電界が形成されている。この技術は、特に画像領域のエッジ部に生じる濃度ムラに有効な技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−152300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然るに、特許文献1の技術では像担持体と画像補正部材との間に電界を形成する必要があり、高圧電源やケーブルが必要となり、コストアップの要因となる。
【0007】
本発明の目的は、上記のような問題を解決し、簡単な構成でありながら、転写画像にチリや像乱れ等の不具合を発生させることのない、均一な画像濃度の画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は下記の発明により達成される。
【0009】
1.回転する像担持体と、前記像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記像担持体上に形成される静電潜像をトナー像に変える現像剤担持体を備えた現像手段と、前記像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写手段とを有する画像形成装置において、
前記現像剤担持体と前記像担持体とが対向する現像領域の転写材移動方向下流側で、かつ前記転写手段と前記像担持体とが対向する転写領域の転写材移動方向上流側に、前記像担持体に近接又は接触する位置に配設され、前記像担持体上に形成されたトナー像を均す、トナー均一化部材を有し、
前記トナー均一化部材は、表面に空隙部を有する回転体からなり、
前記像担持体の線速度をv1、前記トナー均一化部材の線速度をv2とするとき、前記トナー均一化部材の線速比は、v2/v1であり、
前記像担持体と前記トナー均一化部材との線速比の差をΔθとすると、Δθ=|1−v2/v1|、で表され、
前記像担持体上に形成されるトナー像が前記トナー均一化部材の外周の回転方向に接触する領域の長さをトナー均しニップ幅と称し、該トナー均しニップ幅をc、トナー粒子の平均粒径をbで表すとき、前記線速比の差Δθ、前記トナー均しニップ幅c、及びトナー粒子の平均粒径bの関係が、
b<c×Δθ<10b
となることを特徴とする画像形成装置。
【0010】
2.前記トナー均一化部材の空隙部の平均空隙寸法をaで表すとき、該平均空隙寸法aと前記トナー粒子の平均粒径bとの関係が、
0.5b≦a≦5b
となることを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0011】
3.前記トナー均一化部材と前記像担持体との間に電界を形成することを特徴とする前記1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、簡単な構成でありながら、像担持体上のトナー付着量のバラツキを無くし、転写画像にチリや像乱れ等の不具合を発生させることのない、均一な画像濃度の画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る定着装置を有する画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明に係るトナー均一化部材5Yの実施形態の構成及び動作について説明するための画像形成ユニット10Yの感光体ドラム1Y周辺の概略部分断面図である。
【図3】感光体ドラム1Yとの間に電界を形成するトナー均一化部材5Yの実施形態の構成を示す概略図である。
【図4】トナー均一化部材5Yにクリーニング部材CLを接触させる実施形態の構成を示す概略図である。
【図5】感光体ドラム1Y上のトナー像TZのトナー付着量にバラツキが生じた状態と、トナー均一化部材5Yによりそのバラツキを解消した状態とを示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明に係るトナー均一化部材5Yの第1の実施形態(実施例1)について、その構成を説明するための概略断面図である。
【図7】本発明に係るトナー均一化部材5Yの第2の実施形態(実施例2)について、その構成を説明するための概略断面図である。
【図8】本発明に係るトナー均一化部材5Yの第3の実施形態(実施例3)について、その構成を説明するための概略断面図である。
【図9】トナー均しニップ幅c及び線速比差Δθの積と、トナー粒子の平均粒径bとの関係をグラフにした図である。
【図10】トナー均一化部材5Yの空隙部の寸法aと、トナー粒子の平均粒径bとの関係をグラフにした図である。
【図11】トナー均一化部材としてベルト状部材5aYを用いた実施形態の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の構成及び動作について図示の実施の形態を用いて説明するが、本発明は該実施の形態に限られるものではない。
【0015】
図1は本発明の実施の形態に係る定着装置を有する画像形成装置の全体構成を示す図である。
【0016】
本画像形成装置は画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとから構成される。
【0017】
画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K、ベルト状の中間転写体6、給紙搬送手段及び定着装置100等からなる。
【0018】
画像形成装置本体GHの上部には、自動原稿送り装置201と、読取光学系202及び撮像素子CCDを有する画像読取装置YSが設置されている。自動原稿送り装置201の原稿台上に載置された原稿dは搬送手段により搬送され、撮像素子CCDは原稿の画像を読み取る。
【0019】
撮像素子CCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0020】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、像担持体としての感光体ドラム1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、転写手段としての一次転写手段7Y及びクリーニング手段8Yを有する。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、像担持体としての感光体ドラム1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段7M及びクリーニング手段8Mを有する。シアン(C)色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、像担持体としての感光体ドラム1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段7C及びクリーニング手段8Cを有する。黒(K)色の画像を形成する画像形成ユニット10Kは、像担持体としての感光体ドラム1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段7K及びクリーニング手段8Kを有する。
【0021】
帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C、及び帯電手段2Kと露光手段3Kは、静電潜像形成手段を構成する。なお、現像手段4Y、4M、4C、4Kは、現像剤担持体4Ya、4Ma、4Ca、4Kaを備えており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤で静電潜像をトナー像に変える現像を行う。この現像は、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kと、現像手段4Y、4M、4C、4Kの現像剤担持体4Ya、4Ma、4Ca、4Kaとが対峙する現像領域で行われる。
【0022】
本発明に係る転写手段及び転写材としては、一次転写における一次転写手段及び一次転写材と、二次転写における二次転写手段及び二次転写材がある。一次転写材としての中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。一次転写は、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kと、一次転写手段7Y、7M、7C、7Kとが対峙する転写領域で行われる。転写手段としての二次転写手段7Aは中間転写体6上のカラートナー像を二次転写材としての二次転写材としての記録材Pに転写する。二次転写は、中間転写体6と、二次転写手段7Aとが対峙する転写領域で行われる。
【0023】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、中間転写体6と、二次転写手段7Aとは記録材P上に画像を形成する画像形成部を構成する。
【0024】
定着装置100は、加熱ローラ101と定着ベルト102との間に形成されたニップで記録材P上のトナー像を加熱・加圧して定着する。
【0025】
画像形成においては、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kにおいて、帯電、露、及び現像により感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上にトナー像が形成され、一次転写手段7Y、7M、7C、7Kにより、中間転写体6に転写される。
【0026】
各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kにおけるトナー像の形成は、中間転写体6上において、各トナー像が重ね合わされて一つのカラートナー像が形成されるようにタイミング制御されて行われる。
【0027】
給紙カセット20内に収容された記録材Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23等を経て、二次転写手段7Aに搬送され、記録材P上にカラートナー像が二次転写手段7Aにより転写される。
【0028】
カラートナー像が転写された記録材Pは定着装置100において加熱・加圧され、記録材P上のカラートナー像が定着される。その後、記録材Pは排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
【0029】
一方、二次転写手段7Aを通過した中間転写体6は、クリーニング手段8Aによりクリーニングされる。
【0030】
26は両面画像形成において、裏面に画像を形成する工程において、記録材Pを表裏反転して画像形成部に再終始する再給紙部である。再給紙部26は記録材Pをスイッチバック搬送して表裏反転する反転部26Aを有する。27は記録材Pの表裏を反転して排紙する反転排紙部である。裏面画像形成時及び反転排紙時は、記録材Pは再給紙部26に搬送される。裏面画像形成時は、記録材Pは反転部26Aにおいて反転された後に画像形成部へと搬送される。反転排紙時は、記録材Pは再給紙部26においてスイッチバックし、反転排紙部27から排紙トレイ25に排出される。
【0031】
定着装置100を通過した記録材Pを排紙トレイ25へと搬送するか又は再給紙部26に搬送するかの切換は切換ゲート28により行われる。
【0032】
なお、前記に説明した実施の形態はカラー画像を形成する画像形成装置であるが、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってもよいし、中間転写体を用いない画像形成装置にも本発明を適用することも可能である。
【0033】
図2は、本発明に係るトナー均一化部材5Yの実施形態の構成及び動作について説明するための画像形成ユニット10Yの感光体ドラム1Y周辺の概略部分断面図である。なお、図2以下の説明に用いる図面は、イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成ユニット10Yの構成を示す図であるが、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)色の画像を形成する画像形成ユニット10M、10C、10Kについても同様に適用される。即ち、画像形成ユニット10M、10C、10Kについては、それぞれトナー均一化部材5M、5C、5Kが配設されている。以下、画像形成ユニットは10Y、トナー均一化部材は5Y、を代表として説明するが、その説明は、画像形成ユニット10M、10C、10K、及びトナー均一化部材5M、5C、5Kについても同様に適用されることは言うまでもない。
【0034】
図2において、トナー均一化部材5Yは、回転体としてのローラ状部材からなり、現像領域の転写材移動方向下流側で転写領域の転写材移動方向上流側の、感光体ドラム1Yに近接又は接触する位置に配設される。トナー均一化部材5Yは図示しない駆動源に連結されて感光体ドラム1Yと逆方向に回転する(この回転により、感光体ドラム1Y表面とそれに対向するトナー均一化部材5Y表面とはともに転写材移動方向に移動することになる)。本実施形態においては、トナー均一化部材5Yは、感光体ドラム1Yから10〜50μmだけ間隔を空けた位置に近接して配設されている。
【0035】
なお、本実施形態においては、本発明に係るトナー均一化部材5Y、5M、5C、5Kを、中間転写体6を用いるカラー画像形成装置に配設する構成としたが、中間転写体6を用いずにトナー像を直接記録材Pに転写するモノクロの画像形成装置に配設しても良い。
【0036】
図3は、図2に示すトナー均一化部材5Yに電源DGを接続し、感光体ドラム1Yとの間に電界を形成するトナー均一化部材5Yの実施形態の構成を示す概略図である。本発明においては、トナー均一化部材5Yと感光体ドラム1Yとの間に電界を形成しなくても、トナー像TZ内のトナー付着量のバラツキを解消できるが、画像形成の条件によっては電界を形成することにより、画像濃度の更なる均一化が期待できる。図3において、本実施形態の電源DGは直流の電源であるが、直流に交流を重畳して印加するという構成でも良い。直流の電源を接続する場合、トナーの極性と逆極性の電圧を印加する。
【0037】
本実施の形態によれば、感光体ドラム1Y上に付着するトナー付着量にバラツキを有するトナーをより効果的に均すことができる。
【0038】
図4は、図2に示すトナー均一化部材5Yにクリーニング部材CLを接触させる実施形態の構成を示す概略図である。図4において、クリーニング部材CLは回転する繊維状部材を有する構成であるが、クリーニング部材としては固定のブレードやエア吸引装置を用いる構成でも良い。
【0039】
本実施の形態によれば、トナー均一化部材5Y上に貯留されるトナーをより効果的に除去することができる。
【0040】
図5は、感光体ドラム1Y上のトナー像TZのトナー付着量にバラツキが生じた状態と、トナー均一化部材5Yによりそのバラツキを解消した状態とを示す部分拡大断面図である。図5(a)は、像担持体上のトナー像TZのトナー付着量にバラツキを有する状態を示し、図5(b)は、トナー均一化部材5Yによりトナー付着量のバラツキが解消された状態を示す。図から判るように、図5(a)においてトナー付着量にバラツキ(凹凸)があったトナー像TZが、図5(b)においてはトナー均一化部材5Yの作用により均されてほぼ均一な厚みを有するトナー像TZに変えられている。
【0041】
なお、図5(b)に示すように、感光体ドラム1Yとトナー均一化部材5Yとは逆方向に回転するため、トナー像TZを挟んで対向して近接する互いの表面はともに転写材移動方向に移動する。感光体ドラム1Yの線速度はv1、トナー均一化部材5Yの線速度はv2で表すとき、トナー均一化部材5Yの感光体ドラム1Yに対する線速比は、v2/v1で表される。
【0042】
実施の形態におけるトナー均一化部材5Yは樹脂又はゴム等からなる回転自在なローラとして構成され、図示しない駆動手段により駆動回転される。
【0043】
本発明者らは、トナー付着量のバラツキの問題に対し、感光体ドラム1Y上に形成されるトナー像TZに、表面に空隙部を有するトナー均一化部材5Yを回転させながら接触させることにより、トナーの付着状態を改善することができることを発見した。また、トナー付着量バラツキ解消の対策は、トナー粒子の粒径により変化させる必要があること、及び、感光体ドラム1Y上のトナー像TZに接触させるトナー均一化部材5Yにより形成されるトナー均しニップ幅cにより影響を受けること、に着目した。ここでいうトナー均しニップ幅cとは、感光体ドラム1Y上のトナー像TZが、感光体ドラム1Yに近接するトナー均一化部材5Yの外周に接触する領域の回転方向における長さをいう(図5(b)参照)。
【0044】
そこで本発明者らは、トナー粒子の粒径に対して、表面に空隙部を有するトナー均一化部材5Yの空隙部の大きさ、感光体ドラム1Yとトナー均一化部材5Yとの線速比、及びトナー均しニップ幅c、を変化させ、転写画像への影響を確認する実験を行った。その結果については実施例1〜3、及び表1、表2を用いて後述する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明に係るトナー均一化部材5Yの第1〜第3の実施形態の構成について、実施例1〜3、及び図6〜図8を用いて説明する。なお、本実験に用いる画像形成装置は、図1に示す、タンデム型のデジタル複写機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を母体機とし、実験装置に改造したものを用いた。
【0046】
図6は、本発明に係るトナー均一化部材5Yの第1の実施形態(実施例1)について、その構成を説明するための概略断面図である。
【0047】
図6において、トナー均一化部材5Yの第1の実施形態は、ウレタン発泡弾性体等からなる多孔質部材を用いている。実施例1の実験の条件は以下の通りである。
(実施例1)
1.トナー均一化部材5Y:
材料:ウレタン発泡弾性体(ポリウレタンフォーム)
外径:15〜30mm
空隙部形状:発泡セル状、平均空隙寸法としての平均開口径a:2.5〜25μm(トナー平均粒径b=5μmの場合)、又は、5〜50μm(トナー平均粒径b=10μmの場合)、発泡セルの開口径の測定は、レーザ顕微鏡により、非接触で表面の発泡セルの直径を測定距離2mmの範囲で測定を行い、その平均値を求めたものである。
【0048】
アスカーC硬度:25
2.感光体ドラム1Y外径:100mm
3.感光体ドラム1Yの周速v1:200mm/s
4.トナー均一化部材5Yの周速v2:140〜260mm/s
5.感光体ドラム1Yに対するトナー均一化部材5Yの線速比v2/v1:0.7〜1.3
6.感光体ドラム1Yとトナー均一化部材5Yとの間隙:10〜50μm
7.トナー像に対するトナー均一化部材5Yのトナー均しニップ幅c:0.1〜0.7mm(100〜700μm)
なお、本実施の形態においては、発泡セルの構造が単泡のものを用いているが、単泡と連泡とが混在するものを用いても良い。また、発泡弾性体の材料としては、ポリウレタンフォームに限らず、ポリエチレンフォームやメラミンフォームでも良い。
【0049】
図7は、本発明に係るトナー均一化部材5Yの第2の実施形態(実施例2)について、その構成を説明するための概略断面図である。
【0050】
図7において、トナー均一化部材5Yの第2の実施形態は、NBRゴム等からなる繊維状部材が形成される部材を用いている。実施例2の実験の条件は以下の通りである。
(実施例2)
1.トナー均一化部材5Y:
材料:NBRゴム
外径:15〜30mm
空隙部形状:繊維状(静電植毛により形成)、繊維の長さ0.1〜2mm、繊維の太さ0.1〜5dT(デシテックス)、平均空隙寸法としての平均繊維間間隔a:2.5〜25μm(トナー平均粒径b=5μmの場合)、又は、5〜50μm(トナー平均粒径b=10μmの場合)、繊維間間隔の測定は、レーザ顕微鏡により、非接触で繊維間の間隔を測定距離2mmの範囲で測定を行い、その平均値を求めたものである。
【0051】
アスカーC硬度:30
2.感光体ドラム1Y外径:100mm
3.感光体ドラム1Yの周速v1:200mm/s
4.トナー均一化部材5Yの周速v2:140〜260mm/s
5.感光体ドラム1Yに対するトナー均一化部材5Yの線速比v2/v1:0.7〜1.3
6.感光体ドラム1Yとトナー均一化部材5Yとの間隙:10〜50μm
7.トナー像に対するトナー均一化部材5Yのトナー均しニップ幅c:0.1〜0.7mm(100〜700μm)
材料として、本実施の形態ではNBRゴム製のものを用いたが、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、又はレーヨン等の樹脂繊維製のものでも良い。繊維の長さが0.1mmより短くなると、感光体ドラム1Yの表面を傷つけるおそれがある。また、2mmより長くなると、繊維が倒れてトナー粒子の捕捉が不十分になるおそれがある。更に、繊維の太さが0.1dTより細いと、トナーの捕捉が不十分になるおそれがあり、5dTより太くなると、感光体ドラム1Yを傷つけるおそれがある。
【0052】
図8は、本発明に係るトナー均一化部材5Yの第3の実施形態(実施例3)について、その構成を説明するための概略断面図である。
【0053】
図8において、トナー均一化部材5Yの第3の実施形態は、シリコンゴム等からなる基体にアクリル樹脂粒子等を静電吸着させて形成した部材を用いているが、塗膜の形成により粒子状部材を形成しても良い。実施例3の実験の条件は以下の通りである。
(実施例3)
1.トナー均一化部材5Y:
材料:シリコンゴム
外径:15〜30mm
空隙部形状:粒子状(静電吸着により形成)、平均空隙寸法としての平均粒子間間隔a:2.5〜25μm(トナー平均粒径b=5μmの場合)、又は、5〜50μm(トナー平均粒径b=10μmの場合)、粒子間間隔の測定は、レーザ顕微鏡により、非接触で粒子間の間隔を測定距離2mmの範囲で測定を行い、その平均値を求めたものである。
【0054】
アスカーC硬度:30
2.感光体ドラム外径:100mm
3.感光体ドラム1Yの周速v1:200mm/s
4.トナー均一化部材5Yの周速v2:140〜260mm/s
5.感光体ドラム1Yに対するトナー均一化部材5Yの線速比v2/v1:0.7〜1.3
6.感光体ドラム1Yとトナー均一化部材5Yとの間隙:10〜50μm
7.トナー像に対するトナー均一化部材5Yのトナー均しニップ幅c:0.1〜0.7mm(100〜700μm)
静電吸着により形成される粒子部材の材料として、本実施の形態ではアクリル樹脂を用いたが、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等を用いても良い。
【0055】
実施例1〜3を用いて記録材Pに画像形成を実施した結果を表1〜表4に示す。
【0056】
なお、画像評価は、A4サイズの画像を100枚連続プリントして行った。また、表1及び表2に表示した画像評価結果の欄の記号は、社内規格に基づくトナー飛び散り判定用画像見本により行った判定結果であり、合格を○、不合格を×、良品限界を△、で表したものである。
【0057】
【表1】

【0058】
表1は、トナー粒子の平均粒径bが5μmであるトナーを用いて、トナー均しニップ幅cと、感光体ドラム1Yとトナー均一化部材5Yとの線速比差Δθとを変化させたときにおける、出力画像への影響を調べた実験結果を示す表である。ここでいう線速比差Δθとは、感光体ドラム1Yの線速度v1を1としたときのトナー均一化部材5Yの線速比v2/v1を算出し、感光体ドラム1Yの線速度1とトナー均一化部材5Yの線速比v2/v1との差を絶対値で表したものである。即ち、線速比差Δθは、Δθ=|1−v2/v1|で表される。
【0059】
表1から、実施例1〜3のいずれにおいても、線速比差Δθとトナー均しニップ幅cとの積Δθ×cの値が5を超え50未満であるときには、出力画像にトナーの飛び散りが発生せず、合格となることが判る。また、積Δθ×cの値が5未満又は50を超えるときには、出力画像にトナーの飛び散りが発生し、不合格となることが判る。
【0060】
【表2】

【0061】
表2は、トナー粒子の平均粒径bが10μmであるトナーを用いて、トナー均しニップ幅cと、感光体ドラム1Yとトナー均一化部材5Yとの線速比差Δθとを変化させたときにおける、出力画像への影響を調べた実験結果を示す表である。
【0062】
表2から、実施例1〜3のいずれにおいても、線速比差Δθとトナー均しニップ幅cとの積Δθ×cの値が10を超え100未満であるときには、出力画像にトナーの飛び散りが発生せず、合格となることが判る。また、積Δθ×cの値が10未満又は100を超えるときには、出力画像にトナーの飛び散りが発生し、不合格となることが判る。
【0063】
【表3】

【0064】
表3は、トナー粒子の平均粒径bが5μmであるトナーを用いて、空隙部の平均空隙寸法aを変化させたときにおける、出力画像への影響を調べた実験結果を示す表である。但し、トナー均しニップ幅cは、実施例1及び3では0.3mm、実施例2では0.2mmに固定している。また、線速比v2/v1は、実施例1及び3では0.9、実施例2では1.1に固定した。従って、線速比差Δθは、実施例1及び3では、Δθ=|1−0.9|=0.1となり、実施例2では、Δθ=|1−1.1|=0.1となる。
【0065】
表3から、実施例1〜3のいずれにおいても空隙部の平均空隙寸法aが2.5〜25μmの範囲にあるときに出力画像にトナーの飛び散りが発生せず、合格となることが判る。
【0066】
【表4】

【0067】
表4は、トナー粒子の平均粒径が10μmであるトナーを用いて、空隙部の平均空隙寸法aを変化させたときにおける、出力画像への影響を調べた実験結果を示す表である。トナー均しニップ幅cと線速比v2/v1との条件は、表3における条件と同一である。従って、線速比差Δθは、実施例1〜3において、Δθ=0.1となる。
【0068】
表4から、実施例1〜3のいずれにおいても空隙部の平均空隙寸法aが5〜50μmの範囲にあるときに出力画像にトナーの飛び散りが発生せず、合格となることが判る。
【0069】
次に本発明者らは実験の結果から、トナー均一化部材5Yの感光体ドラム1Yに対する線速比v2/v1、線速比差Δθ、トナー粒子の平均粒径b、及びトナー均しニップ幅cの関係を数式で表すことを試みた。
【0070】
トナー均一化部材5Yの線速度v2と、感光体ドラム1Yの線速度v1との線速比の差である線速比差Δθは、
Δθ=|1−v2/v1|
で表されることから、
表1及び表2の結果から、線速比差Δθとトナー均しニップ幅cとの積は、
b<c×Δθ<10b・・・(数式1)、即ち、
b<c×|1−v2/v1|<10b
の範囲内にあることを把握した。
【0071】
また、トナー均一化部材5Yの空隙部の平均空隙寸法をaで表すとき、空隙部の平均空隙寸法aとトナー粒子の平均粒径bとの関係は、表3及び表4の結果から、
0.5b≦a≦5b・・・(数式2)
で表されることを把握した。
【0072】
図9は、上記の数式1に示す、トナー均しニップ幅c及び線速比差Δθの積と、トナー粒子の平均粒径bとの関係をグラフにした図である。
【0073】
図9において、横軸はトナー粒子の平均粒径bを表し、縦軸はトナー均しニップ幅c及び線速比差Δθの積を表す。図9から、トナー均しニップ幅c及び線速比差Δθの積の値は、トナー粒子の平均粒径bが極めて小さい場合には小さくする必要があり、トナー粒子の平均粒径bがある程度の大きさになると、該粒径bの大きさに応じて大きくする必要があることが判る。トナー均しニップ幅cと線速比差Δθとの積(c×Δθ)がトナー粒子の平均粒径bの10倍の値10b以上となるときは、図9に示す「OK」の領域から外れ、縦軸に沿った「像乱れNG」の領域に入り、画像が乱れて不合格となる(表1のトナー均しニップ幅c700μm、線速比差0.1の欄、及び表2のトナー均しニップ幅c400μm、線速比差0.3の欄を参照)。また、トナー均しニップ幅cと線速比差Δθとの積がトナー粒子の平均粒径b以下の値となるときは、図9に示す「OK」の領域から外れ、横軸に沿った「均し効果NG」の領域に入り、均しの作用が働かずに不合格となる(表1のトナー均しニップ幅c100μm、線速比差0.02の欄、及び表2のトナー均しニップ幅c100μm、線速比差0.05の欄を参照)。
【0074】
図10は、上記の数式2に示す、トナー均一化部材5Yの平均空隙寸法aと、トナー粒子の平均粒径bとの関係をグラフにした図である。
【0075】
図10において、横軸はトナー粒子の平均粒径bを表し、縦軸はトナー均一化部材の空隙部の寸法aを表す。図10から、トナー均一化部材5Yの平均空隙寸法aは、トナー粒子の平均粒径bが小さい場合には小さくし、トナー粒子の平均粒径bが大きくなると、該粒径bの大きさに応じて大きくする必要があることが判る。トナー均一化部材5Yの平均空隙寸法aがトナー粒子の平均粒径bの5倍を超える値となるときは、図9に示す「OK」の領域から外れ、縦軸に沿った「NG」の領域に入り、空隙が大きすぎて不合格となる(表3の平均空隙寸法30〜60μm、及び表4の平均空隙寸法60〜100μmの欄を参照)。トナー均一化部材5Yの空隙が大きすぎると、感光体ドラム1Y上のトナー像TZから捕捉したトナー粒子が空隙の内部に入り込んでしまうからである。また、トナー均一化部材5Yの平均空隙寸法aがトナー粒子の平均粒径bの0.5倍未満の値となるときは、図9に示す「OK」の領域から外れ、横軸に沿った「NG」の領域に入り、空隙が小さすぎて不合格となる(表3の平均空隙寸法1.5〜2μm、及び表4の平均空隙寸法4μmの欄を参照)。トナー均一化部材5Yの空隙が小さすぎると、感光体ドラム1Y上のトナー像TZのトナー粒子を捕捉し難く、トナー均しの効果が発揮されないからである。
【0076】
図11は、トナー均一化部材としてベルト状部材5aYを用いた実施形態の構成を示す概略断面図である。本実施形態は図2に示すローラ状部材からなる実施形態に類似しており、同一の機能を有する部材には同一の符番を付しているため説明は省略し、異なる構成についてのみ説明する。本実施形態が図2に示す実施形態と異なる点は、トナー均一化部材がローラ状部材でなく、回転体としてのベルト状部材からなるという点である。ベルト状部材5aYは、バックアップローラ5bYを含む複数のローラに巻回されて保持される。バックアップローラ5bYに保持されるベルト状部材5aYは、現像領域の転写材移動方向下流側で転写領域の転写材移動方向上流側の、感光体ドラム1Yに近接又は接触する位置に配設され、感光体ドラム1Y上のバラツキを有するトナーを均す機能を有する。ベルト状部材5aYの材料は、図6〜8で説明したローラ状部材からなるトナー均一化部材5Yと同様のゴム又は樹脂製の、多孔質体、繊維状部材、又は粒子状表面保有部材からなる。本実施形態においてもローラ状部材からなるトナー均一化部材5Yと同様に、数式1及び数式2の関係式が適用されることは言うまでもない。
【0077】
本実施形態によればトナー均一化部材としてのベルト状部材5aYの長さを長くすることができるため、トナー均一化部材の長寿命化を図ることができる。
【符号の説明】
【0078】
1、1Y、1M、1C、1K 感光体ドラム(像担持体)
2Y、2M、2C、2K 帯電手段(静電潜像形成手段)
3Y、3M、3C、3K 露光手段(静電潜像形成手段)
4Y、4M、4C、4K 現像手段
4Ya、4Ma、4Ca、4Ka 現像剤担持体
5Y、5M、5C、5K トナー均一化部材
5aY ベルト状部材(トナー均一化部材)
5bY バックアップローラ
6 中間転写体(一次転写材)
7A 二次転写手段(転写手段)
7Y、7M、7C、7K 一次転写手段(転写手段)
P 記録材(二次転写材)
a トナー均一化部材の空隙部の平均空隙寸法(平均開口径、平均繊維間間隔、平均粒子間間隔)
b トナー粒子の平均粒径
c トナー均しニップ幅
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
CL クリーニング部材
DG 電源
GH 画像形成装置本体
TZ トナー像
v1、v2 線速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する像担持体と、前記像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記像担持体上に形成される静電潜像をトナー像に変える現像剤担持体を備えた現像手段と、前記像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写手段とを有する画像形成装置において、
前記現像剤担持体と前記像担持体とが対向する現像領域の転写材移動方向下流側で、かつ前記転写手段と前記像担持体とが対向する転写領域の転写材移動方向上流側に、前記像担持体に近接又は接触する位置に配設され、前記像担持体上に形成されたトナー像を均す、トナー均一化部材を有し、
前記トナー均一化部材は、表面に空隙部を有する回転体からなり、
前記像担持体の線速度をv1、前記トナー均一化部材の線速度をv2とするとき、前記トナー均一化部材の線速比は、v2/v1であり、
前記像担持体と前記トナー均一化部材との線速比の差をΔθとすると、Δθ=|1−v2/v1|、で表され、
前記像担持体上に形成されるトナー像が前記トナー均一化部材の外周の回転方向に接触する領域の長さをトナー均しニップ幅と称し、該トナー均しニップ幅をc、トナー粒子の平均粒径をbで表すとき、前記線速比の差Δθ、前記トナー均しニップ幅c、及びトナー粒子の平均粒径bの関係が、
b<c×Δθ<10b
となることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー均一化部材の空隙部の平均空隙寸法をaで表すとき、該平均空隙寸法aと前記トナー粒子の平均粒径bとの関係が、
0.5b≦a≦5b
となることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー均一化部材と前記像担持体との間に電界を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−113025(P2012−113025A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259863(P2010−259863)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】