説明

画像形成装置

【課題】複数の制御部間における制御情報の通信回数を低減可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置100は、作像ボード24と、搬送ボード35と、定着ボード44と、マスターボード10とを備える。作像ボード24および搬送ボード35が行う補正制御に必要な温度情報は、定着ボード44で保持される。定着ボード44は、所定の周期で、当該温度情報をマスターボード10に送信し、マスターボード10は、温度情報を受信するたびに、当該受信した温度情報を、作像ボード24および搬送ボード35の各々へ転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成に必要な機能(作像機能、定着機能等)ごとに、当該機能を制御する制御部が個別に設けられた画像形成装置が知られている。例えば特許文献1には、画像形成に必要な複数の機能と1対1に対応付けられ、それぞれが対応する機能を制御する複数のスレーブ制御部と、各スレーブ制御部を制御するマスター制御部とを備えた画像形成装置が開示されている。
【0003】
ここで、あるスレーブ制御部(「第1スレーブ制御部」と呼ぶ)が行う制御に必要な制御情報が他のスレーブ制御部(「第2スレーブ制御部」と呼ぶ)で保持されている場合、第1スレーブ制御部は、当該制御情報を第2スレーブ制御部から取得する必要がある。この場合、第1スレーブ制御部は、まずマスター制御部に対して制御情報を要求するリクエスト信号を送信する。リクエスト信号を受信したマスター制御部は、当該受信したリクエスト信号を第2スレーブ制御部へ転送する。第2スレーブ制御部は、マスター制御部からリクエスト信号を受信すると、マスター制御部に対して制御情報を送信する。マスター制御部は、第2スレーブ制御部から制御情報を受信すると、その受信した制御情報を第1スレーブ制御部へ転送する。以上のようにして、第1スレーブ制御部は、制御情報を取得することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、第1スレーブ制御部が、第2スレーブ制御部で保持されている制御情報を取得する際の通信回数が多いので、通信負荷が大きくなってしまい、画像形成装置が所望の性能を発揮することが困難になるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の制御部間における制御情報の通信回数を低減可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像形成機能の一部を制御する第1スレーブ制御部と、前記画像形成機能のうち、前記第1スレーブ制御部によって制御される機能とは異なる機能を制御するとともに、前記第1スレーブ制御部が行う制御に用いられる制御情報を有する第2スレーブ制御部と、前記第1スレーブ制御部および前記第2スレーブ制御部の各々と通信可能であるとともに、前記第1スレーブ制御部および前記第2スレーブ制御部を制御するマスター制御部と、を備え、前記第2スレーブ制御部は、所定の周期で、前記制御情報を前記マスター制御部へ送信し、前記マスター制御部は、前記制御情報を受信するたびに、当該受信した前記制御情報を前記第1スレーブ制御部へ転送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2スレーブ制御部は、所定の周期で、制御情報をマスター制御部へ送信し、マスター制御部は、第2スレーブ制御部から制御情報を受信するたびに、当該受信した制御情報を第1スレーブ制御部へ転送するので、第1スレーブ制御部は、マスター制御部に対して制御情報を要求する信号を送信する必要がない。すなわち、第1スレーブ制御部が、第2スレーブ制御部から制御情報を取得する際の通信回数を、従来に比べて低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施形態に係る画像形成装置が印刷処理およびスキャナ処理を行うための構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、実施形態に係る画像形成装置における印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、定着ボードが実行する温度情報送信処理の具体的な内容を示すフローチャートである。
【図5】図5は、マスターボードが実行する温度情報転送処理の具体的な内容を示すフローチャートである。
【図6】図6は、作像ボードが実行する補正制御の具体的な内容を示すフローチャートである。
【図7】図7は、搬送ボードが実行する補正制御の具体的な内容を示すフローチャートである。
【図8】図8は、定着ボードが実行する補正制御の具体的な内容を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置100の概略構成を示すブロック図である。この画像形成装置100は、印刷機能およびスキャナ機能を有する。図1に示すように、画像形成装置100は、マスターボード10と、作像ユニット20と、搬送ユニット30と、定着ユニット40と、コントローラボード50とを備える。
【0011】
作像ユニット20は、記録紙に画像を形成する手段である。本実施形態では、作像ユニット20は、感光体ドラム(不図示)に形成されたトナー画像(可視化された静電潜像)を記録紙に転写するように動作する。図1に示すように、作像ユニット20は、作像系モータ21と、作像系センサ22と、作像系高圧出力部23と、作像ボード24とを備える。作像系モータ21は、作像系の機器(例えば感光体ドラム等)を駆動する手段である。作像系センサ22は、作像系の制御に必要な各種の情報を測定する手段である。作像系高圧出力部23は、感光体ドラムを帯電させるのに必要な電圧を出力する手段である。作像ボード24は、画像形成機能のうち記録紙に画像を形成する機能を制御する手段であり、作像系モータ21、作像系センサ22および作像系高圧出力部23の各々を制御する。
【0012】
搬送ユニット30は、記録紙を搬送する手段である。図1に示すように、搬送ユニット30は、搬送系モータ31と、搬送系センサ32と、搬送系クラッチソレノイド33と、ファン34と、搬送ボード35とを備える。搬送系モータ31は、搬送系の機器(例えば搬送用ローラ等)を駆動する手段である。搬送系センサ32は、搬送系の制御に必要な各種の情報を測定する手段である。搬送系クラッチソレノイド33は、搬送系クラッチを動作させる手段である。ファン34は、機内の温度上昇を抑制する手段である。搬送ボード35は、画像形成機能のうち記録紙を搬送する機能を制御する手段であり、搬送系モータ31、搬送系センサ32、搬送系クラッチソレノイド33およびファン34の各々を制御する。
【0013】
定着ユニット40は、画像を記録紙に定着させる手段である。図1に示すように、定着ユニット40は、定着系モータ41と、定着系センサ42と、定着ヒータ43と、定着ボード44とを備える。定着系モータ41は、定着系の機器(例えば定着ローラ等)を駆動する手段である。定着系センサ42は、定着系の制御に必要な各種の情報を測定する手段である。定着系センサ42には、定着ローラの温度情報を測定する温度センサが含まれる。定着ヒータ43は、定着ローラを加熱する手段である。定着ボード44は、画像形成機能のうち画像を記録紙に定着させる機能を制御する手段であり、定着系モータ41、定着系センサ42および定着ヒータ43の各々を制御する。
【0014】
コントローラボード50は、画像形成装置100全体を制御する手段である。コントローラボード50は、印刷やスキャン等の各種処理の要求を外部から受け付けると、その受け付けた要求に応じた動作を指示する信号を、マスターボード10へ送信する。
【0015】
マスターボード10は、画像形成装置100のエンジンの動作全体を制御する手段である。マスターボード10は、作像ボード24、搬送ボード35、定着ボード44およびコントローラボード50の各々と通信可能に接続される。本実施形態では、作像ボード24、搬送ボード35、定着ボード44およびコントローラボード50の各々と、マスターボード10とは、半二重のシリアル通信で接続される。そして、作像ボード24、搬送ボード35および定着ボード44の各々は、マスターボード10によって制御される。
【0016】
図2は、画像形成装置100が印刷処理およびスキャナ処理を行うための構成を示す機能ブロック図であり、マスターボード10と、3つのスレーブボード(作像ボード24、搬送ボード35、定着ボード44)とに分けられる。マスターボード10は、全体制御サブシステム110と、スキャナサブシステム120と、印刷管理サブシステム130と、作像サブシステム140と、搬送サブシステム150と、定着サブシステム160と、デバイスサブシステム要求層170、ボード間通信システム180とを有する。全体制御サブシステム110は、画像形成装置100のエンジンの動作全体を制御する。スキャナサブシステム120は、スキャン処理の実行を要求するスキャン要求信号をコントローラボード50(図1参照)から受信すると、スキャン処理を実行する。
【0017】
印刷管理サブシステム130は、印刷処理を管理する。より具体的には、印刷管理サブシステム130は、印刷処理の実行を要求する印刷要求信号をコントローラボード50(図1参照)から受信すると、搬送サブシステム150、作像サブシステム140および定着サブシステム160の各々に、印刷処理の実行を指示する印刷指示信号を送信する。
【0018】
作像サブシステム140は、印刷管理サブシステム130から印刷指示信号を受信すると、作像系の負荷(作像系モータ21、作像系センサ22、作像系高圧出力部23)の制御タイミングを決定する。作像サブシステム140は、自身が決定した制御タイミングに到達すると、作像系の負荷の動作を指定する動作指定信号をデバイスサブシステム要求層170へ送信する。また、搬送サブシステム150は、印刷管理サブシステム130から印刷指示信号を受信すると、搬送系の負荷(搬送系モータ31、搬送系センサ32、搬送系クラッチソレノイド33、ファン34)の制御タイミングを決定する。搬送サブシステム140は、自身が決定した制御タイミングに到達すると、搬送系の負荷の動作を指定する動作指定信号をデバイスサブシステム要求層170へ送信する。さらに、定着サブシステム160は、印刷管理サブシステム130から印刷指示信号を受信すると、定着系の負荷(定着系モータ41、定着系センサ42、定着ヒータ43)の制御タイミングを決定する。定着サブシステム160は、自身が決定した制御タイミングに到達すると、定着系の負荷の動作を指定する動作指定信号をデバイスサブシステム要求層170へ送信する。
【0019】
デバイスサブシステム要求層170は、作像サブシステム140、搬送サブシステム150および定着サブシステム160の各々から受信した動作指定信号を、ボード間通信システム180へ送信する。ボード間通信システム180は、作像サブシステム140、搬送サブシステム150および定着サブシステム160の各々から受信した動作指定信号を、対応するスレーブボードへ送信する。例えばボード間通信システム180は、作像サブシステム140から動作指定信号を受信した場合は、その受信した動作指定信号を作像ボード24へ送信し、搬送サブシステム150から動作指定信号を受信した場合は、その受信した動作指定信号を搬送ボード35へ送信するという具合である。
【0020】
図2に示すように、作像ボード24は、高圧サブシステム210と、センササブシステム220と、モータサブシステム230と、ボード間通信システム240と、デバイスサブシステム実行層250とを有する。高圧サブシステム210は作像系高圧出力部23を制御し、センササブシステム220は作像系センサ22を制御し、モータサブシステム230は作像系モータ21を制御する。ボード間通信システム240は、マスターボード10のボード間通信システム180から受信した動作指定信号(作像サブシステム140からの動作指定信号)をデバイスサブシステム実行層250へ転送する。デバイスサブシステム実行層250は、ボード間通信システム240から受信した動作指定信号が、どの負荷の動作を指定する信号であるかを判断し、動作が指定された負荷を制御するサブシステムに対して、当該動作指定信号を転送する。例えばボード間通信システム240から受信した動作指定信号が、作像系高圧出力部23の動作を指定するものであった場合、デバイスサブシステム実行層250は、高圧サブシステム210に対して、当該動作指定信号を転送する。そして、当該動作指定信号を受信した高圧サブシステム210は、当該動作指定信号で指定された内容の動作を実行するように作像系出力部23を制御する。
【0021】
図2に示すように、搬送ボード35は、ファンサブシステム310と、モータサブシステム320と、センササブシステム330と、クラッチ/ソレノイドサブシステム340と、ボード間通信システム350と、デバイスサブシステム実行層360とを有する。ファンサブシステム310はファン34を制御し、モータサブシステム320は搬送系モータ31を制御し、センササブシステム330は搬送系センサ32を制御し、クラッチ/ソレノイドサブシステム340は搬送系クラッチ/ソレノイド33を制御する。ボード間通信システム350およびデバイスサブシステム実行層360の内容は、作像ボード24におけるボード間通信システム240およびデバイスサブシステム実行層250の内容と同様である。例えばデバイスサブシステム実行層360は、ボード間通信システム350から受信した動作指定信号がファン34の動作を指定するものであった場合、ファンサブシステム310に対して、当該動作指定信号を転送する。そして、当該動作指定信号を受信したファンサブシステム310は、当該動作指定信号で指定された内容の動作を実行するようにファン34を制御する。
【0022】
図2に示すように、定着ボード44は、モータサブシステム410と、ヒータサブシステム420と、センササブシステム430と、ボード間通信システム440と、デバイスサブシステム実行層450とを有する。モータサブシステム410は定着系モータ41を制御し、ヒータサブシステム420は定着ヒータ43を制御し、センササブシステム430は定着系センサ42を制御する。ボード間通信システム440およびデバイスサブシステム実行層450の内容は、作像ボード24におけるボード間通信システム240およびデバイスサブシステム実行層250の内容と同様である。例えばデバイスサブシステム実行層450は、ボード間通信システム440から受信した動作指定信号が定着ヒータ43の動作を指定するものであった場合、ヒータサブシステム420に対して、当該動作指定信号を転送する。そして、当該動作指定信号を受信したヒータサブシステム420は、当該動作指定信号で指定された内容の動作を実行するように定着ヒータ43を制御する。
【0023】
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置100における印刷処理について説明する。図3は、印刷処理の手順を示すフローチャートである。まず、ユーザーからの操作により電源がオン状態にされると(ステップS101)、画像形成装置100の各部に対する電力の供給が開始される。そして、各ボードは初期化されて(ステップS102)、互いに通信可能な状態となる。
【0024】
各ボードが初期化された後、画像形成装置100は待機状態に移行し(ステップS103)、印刷要求を待つ。マスターボード10は、印刷要求信号の受信を検知すると(ステップS104:Yes)、作像部20、搬送部30、定着部40を起動して(ステップS105)、印刷を実行する(ステップS106)。マスターボード10は、1枚の印刷が完了するたびに、印刷枚数の累積値が、要求された枚数に到達したか否かを判定する(ステップS107)。マスターボード10は、印刷枚数の累積値が、要求された枚数に到達していないと判定した場合(ステップS107:No)は、再びステップS106に戻って印刷を実行する。一方、マスターボード10は、印刷枚数の累積値が、要求された枚数に到達したと判定した場合(ステップS107:Yes)は、作像部20、搬送部30、定着部40を停止する(ステップS108)。そして、画像形成装置100は再び待機状態となり(ステップS103)、印刷要求を待つ。
【0025】
ここで、上述のステップS106の印刷実行中において、作像ボード24、搬送ボード35および定着ボード44の各々は、定期的に補正制御を行う。より具体的には、作像ボード24は、作像系高圧出力部23の高圧出力値を、最新の温度情報に応じた値に変更(補正)する制御を定期的に実行する。搬送ボード35は、ファン34の回転数を、最新の温度情報に応じた値に変更する制御を定期的に実行する。定着ボード44は、定着ヒータ43への通電制御(PWM制御)のデューティ比を、最新の温度情報に応じた値に変更する制御を定期的に実行する。
【0026】
本実施形態では、定着ボード44は、所定の周期で、定着系センサ42で取得した温度情報をマスターボード10へ送信し、マスターボード10は、温度情報を定着ボード44から受信するたびに、その受信した温度情報を、作像ボード24および搬送ボード35の各々へ送信する。そして、作像ボード24および搬送ボード35の各々は、マスターボード10から受信した温度情報を用いて補正制御を行う一方、定着ボード44は、定着系センサ42で取得した温度情報を用いて補正制御を行う。以下、詳細な内容を説明する。
【0027】
上述したように、定着ボード44は、所定の周期で、定着系センサ42で取得した温度情報をマスターボード10へ送信する処理(「温度情報送信処理」と呼ぶ)を実行する。
ここで、作像ボード24および搬送ボード35の各々は、定着ボード44に対して、温度情報が必要な周期(補正制御のタイミング)を予め送信しておく。より具体的には、図3のステップS102の初期化の段階で、作像ボード24および搬送ボード35の各々は、温度情報が必要な周期を、定着ボード44に送信する。そして、定着ボード44は、作像ボード24および搬送ボード35の各々から受信した周期のうち最短の値を、上述の所定の周期(温度情報をマスターボード10へ送信する周期)として採用する。本実施形態では、作像ボード24が温度情報を必要とする周期と、搬送ボード35が温度情報を必要とする周期とは同じであるが、これに限らず、作像ボード24が温度情報を必要とする周期と、搬送ボード35が温度情報を必要とする周期とは、異なっていてもよい。
【0028】
また、定着ボード44は、作像ボード24および搬送ボード35の各々から受信した周期の値が、前回の初期化の段階で受信した周期の値と同じである場合は、前回の所定の周期の値をそのまま採用する。一方、作像ボード24および搬送ボード35の各々から受信した周期の値が、前回の初期化の段階で受信した周期の値と異なる場合は、所定の周期を選び直す。以上を前提として、定着ボード44が実行する温度情報送信処理の具体的な内容を説明する。
【0029】
図4は、定着ボード44が実行する温度情報送信処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図4に示すように、まず定着ボード44は、予め定められた所定期間(温度情報送信処理の実行周期に相当)が経過するまで待機する(ステップS201)。所定期間が経過すると、定着ボード44は、定着系センサ42から温度情報を取得する(ステップS202)。そして、定着ボード44は、その取得した温度情報をマスターボード10へ送信する(ステップS203)。定着ボード44は、以上の温度情報送信処理を繰り返し実行する。
【0030】
上述したように、マスターボード10は、温度情報を定着ボード44から受信するたびに、その受信した温度情報を、作像ボード24および搬送ボード35の各々へ転送する処理(「温度情報転送処理」と呼ぶ)を実行する。図5は、マスターボード10が実行する温度情報転送処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図5に示すように、マスターボード10は、定着ボード44から温度情報を受信したと判定すると(ステップS301:Yes)、その受信した温度情報を作像ボード24へ転送する(ステップS302)。続いて、マスターボード10は、定着ボード44から受信した温度情報を搬送ボード35へ転送する(ステップS303)。なお、上述のステップS302およびステップS303の順番は逆であってもよい。マスターボード10は、以上の温度情報転送処理を繰り返し実行する。マスターボード10は、定着ボード44から温度情報を受信すると、その受信した温度情報を、次の温度情報を受信するまでの間、自身で保持しておく。マスターボード10が保持する温度情報は、最新の温度情報を定着ボード44から受信するたびに更新される。
【0031】
また、マスターボード10は、印刷実行中において、定着ボード44の補正制御の実行周期よりも長い周期で、定着ヒータ43への通電制御のデューティ比を決定する。より具体的には、マスターボード10は、予め定められた所定期間(デューティ比を決定する周期)が経過するたびに、自身が保持している最新の温度情報を用いてデューティ比を決定する。そして、マスターボード10は、その決定したデューティ比で通電制御を行うように定着ボード44を制御する。
【0032】
上述の温度情報送信処理および温度情報転送処理によって、作像ボード24および搬送ボード35は、所定の周期で、マスターボード10から温度情報を受信する。作像ボード24および搬送ボード35は、マスターボード10から温度情報を受信すると、その受信した温度情報を、次の温度情報を受信するまでの間、保持しておく。作像ボード24および搬送ボード35が保持する温度情報は、最新の温度情報をマスターボード10から受信するたびに更新される。そして、作像ボード24および搬送ボード35は、各々が保持する温度情報を用いて、補正制御を定期的に実行する。
【0033】
図6は、作像ボード24が実行する補正制御の具体的な内容を示すフローチャートである。図6に示すように、まず作像ボード24は、予め定められた所定期間(補正制御の実行周期)が経過するまで待機する(ステップS401)。所定期間が経過すると、作像ボード24は、高圧出力値を、自身が保持している最新の温度情報に応じた値に変更する制御を行う(ステップS402)。前述したように、作像ボード24が補正制御を実行する周期は、上述の所定の周期に一致するので、作像ボード24は、ステップS402の直前に、最新の温度情報をマスターボード10から受信する。そして、作像ボード24は、その受信した最新の温度情報を用いて補正制御を行うという具合である。作像ボード24は、以上の補正制御を繰り返し実行する。
【0034】
図7は、搬送ボード35が実行する補正制御の具体的な内容を示すフローチャートである。図7に示すように、まず搬送ボード35は、予め定められた所定期間(補正制御の実行周期)が経過するまで待機する(ステップS501)。所定期間が経過すると、搬送ボード35は、ファン34の回転数を、自身が保持している最新の温度情報に応じた値に変更する制御を行う(ステップS502)。前述したように、搬送ボード35が補正制御を実行する周期は、上述の所定の周期に一致するので、搬送ボード35は、ステップS502の直前に、最新の温度情報をマスターボード10から受信する。そして、搬送ボード35は、その受信した最新の温度情報を用いて補正制御を行うという具合である。搬送ボード35は、以上の補正制御を繰り返し実行する。
【0035】
図8は、定着ボード44が実行する補正制御の具体的な内容を示すフローチャートである。図8に示すように、まず定着ボード44は、予め定められた所定期間(補正制御の実行周期)が経過するまで待機する(ステップS601)。定着ボード44の補正制御の実行周期は、上述の所定の周期と一致してもよいし、異なってもよい。所定期間が経過すると、定着ボード44は、定着系センサ42から最新の温度情報を取得する(ステップS602)。そして、定着ボード44は、定着ヒータ43への通電制御(PWM制御)のデューティ比を、最新の温度情報に応じた値に変更する制御を行う(ステップS603)。
【0036】
以上に説明したように、本実施形態では、作像ボード24および搬送ボード35は、温度情報が必要な周期で、マスターボード10から温度情報を受信するので、作像ボード24および搬送ボード35は、マスターボード10に対して、温度情報を要求する信号を送信する必要がない。したがって、本実施形態によれば、作像ボード24および搬送ボード35の各々が、定着ボード44から温度情報を取得する際の通信回数を、従来に比べて低減できるという利点がある。
【0037】
図9は、上述の実施の形態にかかる画像形成装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。本図に示すように、この画像形成装置100は、コントローラボード50とエンジン部(Engine)60とをPCI(Peripheral Component Interface)バスで接続した構成となる。コントローラボード50は、画像形成装置100全体の制御と描画、通信、図示しない操作部からの入力を制御する手段である。エンジン部60は、上述のマスターボード10と作像ユニット20と搬送ユニット30と定着ユニット40とを含んで構成される。エンジン部60は、PCIバスに接続可能なプリンタエンジンなどであり、たとえば白黒プロッタ、1ドラムカラープロッタ、4ドラムカラープロッタ、スキャナまたはファックスユニットなどである。なお、このエンジン部60には、プロッタなどのいわゆるエンジン部分に加えて、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれる。
【0038】
コントローラボード50は、CPU51と、ノースブリッジ(NB)53と、システムメモリ(MEM−P)52と、サウスブリッジ(SB)54と、ローカルメモリ(MEM−C)57と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)56と、ハードディスクドライブ(HDD)58とを有し、ノースブリッジ(NB)53とASIC56との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス55で接続した構成となる。また、MEM−P52は、ROM(Read Only Memory)52aと、RAM(Random Access Memory)52bと、をさらに有する。
【0039】
CPU51は、画像形成装置100の全体制御をおこなうものであり、NB53、MEM−P52およびSB54からなるチップセットを有し、このチップセットを介して他の機器と接続される。
【0040】
NB53は、CPU51とMEM−P52、SB54、AGP55とを接続するためのブリッジであり、MEM−P52に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCIマスタおよびAGPターゲットとを有する。
【0041】
MEM−P52は、プログラムやデータの格納用メモリ、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いるシステムメモリであり、ROM52aとRAM52bとからなる。ROM52aは、プログラムやデータの格納用メモリとして用いる読み出し専用のメモリであり、RAM52bは、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いる書き込みおよび読み出し可能なメモリである。
【0042】
SB54は、NB53とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。このSB54は、PCIバスを介してNB53と接続されており、このPCIバスには、ネットワークインターフェース(I/F)部なども接続される。
【0043】
ASIC56は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGP55、PCIバス、HDD58およびMEM−C57をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC56は、PCIターゲットおよびAGPマスタと、ASIC56の中核をなすアービタ(ARB)と、MEM−C57を制御するメモリコントローラと、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などをおこなう複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)と、エンジン部60との間でPCIバスを介したデータ転送をおこなうPCIユニットとからなる。このASIC56には、PCIバスを介してFCU(Facsimile Control Unit)70、USB(Universal Serial Bus)80、IEEE1394(the Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)インターフェース90が接続される。操作表示部95はASIC56に直接接続されている。
【0044】
MEM−C57は、コピー用画像バッファ、符号バッファとして用いるローカルメモリであり、HDD(Hard Disk Drive)58は、画像データの蓄積、プログラムの蓄積、フォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。AGP55は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレーターカード用のバスインターフェースであり、MEM−P52に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレーターカードを高速にするものである。
【0045】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態では、各スレーブボード(作像ボード24、搬送ボード35、定着ボード44)が行う補正制御に必要な温度情報が、定着ボード44で保持されているが、各スレーブボードが行う制御の種類(実施形態では補正制御)、その制御に必要な制御情報の種類(実施形態では温度情報)、制御情報が保持されるスレーブボードの種類(実施形態では定着ボード44)の各々は任意に変更可能である。
【0046】
要するに、本発明に係る画像形成装置は、画像形成機能の一部を制御する第1スレーブ制御部と、画像形成機能のうち第1スレーブ制御部とは異なる部分を制御するとともに、第1スレーブ制御部が行う制御に用いられる制御情報を有する第2スレーブ制御部と、第1スレーブ制御部および第2スレーブ制御部を制御するマスター制御部とを備え、第2スレーブ制御部は、所定の周期で、制御情報をマスター制御部へ送信し、マスター制御部は、制御情報を受信するたびに、その受信した制御情報を第1スレーブ制御部へ転送するものであればよい。上述の実施形態では、作像ボード24および搬送ボード35が「第1スレーブ制御部」に相当し、定着ボード44が「第2スレーブ制御部」に相当する。上述の実施形態では、複数(2つ)のスレーブボードが「第1スレーブ制御部」に相当しているが、これに限らず、1つのスレーブボードが「第1スレーブ制御部」に相当するものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 マスターボード
20 作像ユニット
21 作像系モータ
22 作像系センサ
23 作像系高圧出力部
24 作像ボード
30 搬送ユニット
31 搬送系モータ
32 搬送系センサ
33 搬送系クラッチ/ソレノイド
34 ファン
35 搬送ボード
40 定着ユニット
41 定着系モータ
42 定着系センサ
43 定着ヒータ
44 定着ボード
50 コントローラボード
51 CPU
52 システムメモリ
53 ノースブリッジ
54 サウスブリッジ
55 AGPバス
56 ASIC
57 ローカルメモリ
58 ハードディスクドライブ
60 エンジン部
70 FCU
80 USB
90 IEEE1394インターフェース
95 操作表示部
100 画像形成装置
110 全体制御サブシステム
120 スキャナサブシステム
130 印刷管理サブシステム
140 作像サブシステム
150 搬送サブシステム
160 定着サブシステム
170 デバイスサブシステム要求層
180 ボード間通信システム
210 高圧サブシステム
220 センササブシステム
230 モータサブシステム
240 ボード間通信システム
250 デバイスサブシステム実行層
310 ファンサブシステム
320 モータサブシステム
330 センササブシステム
340 クラッチ/ソレノイドサブシステム
350 ボード間通信システム
360 デバイスサブシステム実行層
410 モータサブシステム
420 ヒータサブシステム
430 センササブシステム
440 ボード間通信システム
450 デバイスサブシステム実行層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開平8−324069号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成機能の一部を制御する第1スレーブ制御部と、
前記画像形成機能のうち、前記第1スレーブ制御部によって制御される機能とは異なる機能を制御するとともに、前記第1スレーブ制御部が行う制御に用いられる制御情報を有する第2スレーブ制御部と、
前記第1スレーブ制御部および前記第2スレーブ制御部の各々と通信可能であるとともに、前記第1スレーブ制御部および前記第2スレーブ制御部を制御するマスター制御部と、を備え、
前記第2スレーブ制御部は、所定の周期で、前記制御情報を前記マスター制御部へ送信し、
前記マスター制御部は、前記制御情報を受信するたびに、当該受信した前記制御情報を前記第1スレーブ制御部へ転送する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1スレーブ制御部は、前記第2スレーブ制御部に対して、前記制御情報が必要な周期を予め送信し、
前記第2スレーブ制御部は、前記第1スレーブ制御部により送信された周期で、前記制御情報を前記マスター制御部へ送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2スレーブ制御部は、前記第1スレーブ制御部から受信した前記周期の値が複数存在する場合は、複数の前記周期の値のうち最短の値を前記所定の周期として採用する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2スレーブ制御部は、前記第1スレーブ制御部から送信される前記周期の値が変更された場合は、前記所定の周期を選び直す、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1スレーブ制御部には、媒体に画像を形成する機能を制御する作像制御部、および、前記媒体を搬送する機能を制御する搬送制御部のうち少なくとも一方が含まれ、
前記第2スレーブ制御部には、前記画像を前記媒体に定着させる機能を制御する定着制御部が少なくとも含まれ、
前記制御情報は温度情報であり、前記定着制御部が当該制御情報を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−126088(P2012−126088A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281715(P2010−281715)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】