説明

画像形成装置

【課題】ケーシングとカバーとの間に設けられた帯状部材の曲がり方が異常であるためにカバーが正常に閉じなくなり、または帯状部材が破損することを防止する。
【解決手段】ケーシング2とフロントカバー6との間に、フロントカバー6を開けたときのフロントカバー6の変位を制限する一対の帯状部材8を有する画像形成装置において、フロントカバー6とケーシング2とを接続する各アーム7に深溝部13Aを形成し、フロントカバー6が閉じる間に、曲がった状態となる各帯状部材8が各アーム7の深溝部13Aに挿入されるようにする。これにより、各帯状部材8の曲がり方が深溝部13Aにより規制され、各帯状部材8が正常に曲がるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコピー機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置は、当該画像形成装置に設けられたスキャナにより読み取った画像データ、または当該画像形成装置に設けられた通信手段により受信した画像データに基づいて画像を形成し、この画像を用紙に印刷する機能等を実現するための画像形成機構を備えている。例えば、レーザー式の画像形成装置の場合、画像形成機構は、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、定着装置、用紙搬送機構、トナーカートリッジ等から構成されている。
【0003】
一般に、画像形成装置は、その外殻を形成すると共に上記画像形成機構を収容するケーシングを備えている。ケーシングにおいて、画像形成装置の正面側の面には、開口部が設けられている。画像形成装置を取り扱う者は、ケーシング内に収容された画像形成機構に開口部を介して触れ、画像形成機構のメンテナンスを行うことができる。
【0004】
また、画像形成装置の正面側には、ケーシングの上記開口部を閉塞するカバーが設けられている。カバーはヒンジ等によりケーシングに連結されており、画像形成装置を取り扱う者が容易に開閉することができる。カバーは、通常使用時は閉じられており、画像形成機構のメンテナンスを行うとき等には開けられる。
【0005】
下記の特許文献1に記載された画像形成装置では、カバーは、その下部がアームを介してケーシングに回動可能に支持され、アームの下端部を軸心として揺動する構成となっている。そして、カバーは、垂直に立ち上がることによりケーシングの開口部を閉塞する閉状態となり、カバーの上部がケーシングから外側に張り出すように傾斜することにより、ケーシングの開口部を開放する開状態となる(特許文献1の図1ないし図4参照)。
【0006】
また、特許文献1に記載された画像形成装置では、カバーが開状態であるときに、カバーの姿勢をその状態に維持するために、ケーシングとカバーとの間に一対の帯状部材が設けられている。各帯状部材は、可撓性を有する材料により帯状に形成され、一端側がケーシングの横枠部に接続されると共に他端側がカバーの横縁部に接続され、カバーが閉状態であるときには曲がった状態でケーシングとカバーとの間に収容され、カバーが開状態となったときには伸びた状態となり、カバーが開く方向におけるカバーの揺動を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−206201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の画像形成装置では、各帯状部材は、カバーが閉状態であるときには曲がった状態でケーシングとカバーとの間に収容される構造となっている。しかしながら、カバーが開状態から閉状態に変位する間に、例えば使用者の手が帯状部材に触れるなどして外部から帯状部材に力が加わると、帯状部材が設計通りに正しく曲がらず、異常な曲がり方をすることがある。この場合、帯状部材が、その一部が外部にはみ出した状態でケーシングとカバーとの間に挟まり、このためカバーが正常に閉じなくなり、あるいは帯状部材に大きな力が加わることで帯状部材が破損してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、ケーシングとカバーとの間に設けられた帯状部材の曲がり方が異常であるためにカバーが正常に閉じなくなり、または帯状部材が破損することを防止することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の画像形成装置は、開口部を有するケーシングと、前記ケーシングの開口部を閉塞するカバーと、一端側が前記カバーに固定され、他端側が前記カバーから伸長して前記ケーシングに回動可能に支持されることにより、前記カバーと前記ケーシングとを接続すると共に、前記カバーを、前記ケーシングの開口部を閉塞する閉状態から、当該カバーが前記ケーシングから外側に張り出すように傾斜して前記ケーシングの開口部を開放する開状態へ変位可能にするアームと、可撓性を有する材料により帯状に形成され、一端側が前記ケーシングに接続されると共に他端側が前記カバーに接続され、前記カバーが前記閉状態であるときには曲がった状態で前記ケーシングと前記カバーとの間に収容され、前記カバーが前記開状態であるときには伸びた状態で前記アームの回動による前記カバーの変位を規制する帯状部材とを備え、前記アームには、前記カバーが前記開状態から前記閉状態へ変位する間に前記帯状部材の少なくとも一部が挿入され、前記帯状部材の曲がり方向を規制する深溝部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の画像形成装置によれば、カバーを閉じるときに、深溝部により帯状部材の曲がり方向が規制されるので、帯状部材を常に正常に曲げることができる。これにより、異常に曲がった帯状部材が障害となってカバーが正常に閉じなくなることを防止することができ、また、異常に曲がった帯状部材がカバーとケーシングとの間に大きな力が加えられた状態で挟まれることで帯状部材が破損することを防止することができる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第2の画像形成装置は、上述した本発明の第1の画像形成装置において、前記カバーが開状態であり前記帯状部材が伸びた状態であるときには前記帯状部材が前記深溝部に挿入されず、前記カバーが前記開状態から前記閉状態へ変位するのに伴って前記帯状部材が曲がったときに前記帯状部材の少なくとも曲がった部分が前記深溝部に挿入されるように前記アームにおける前記深溝部の位置が設定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の画像形成装置によれば、帯状部材が伸びた状態のときには帯状部材を規制せず、帯状部材が曲がったときに帯状部材を規制することにより、カバーの開閉時における帯状部材の変形の円滑性を確保しながら、帯状部材を正常に曲げることができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第3の画像形成装置は、上述した本発明の第1または第2の画像形成装置において、前記帯状部材は、幅寸法が他の部分の幅寸法よりも小さい幅細部を有し、前記カバーが前記開状態から前記閉状態へ変位する間に前記幅細部が前記深溝部に挿入されることを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の画像形成装置によれば、帯状部材が曲がったときに、帯状部材の一部を深溝部に容易にかつ確実に挿入させることができ、帯状部材を確実に正常に曲げることができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第4の画像形成装置は、開口部を有するケーシングと、前記ケーシングの開口部を閉塞するカバーと、一端側が前記カバーに固定され、他端側が前記カバーから伸長して前記ケーシングに回動可能に支持されることにより、前記カバーと前記ケーシングとを接続すると共に、前記カバーを、前記ケーシングの開口部を閉塞する閉状態から、当該カバーが前記ケーシングから外側に張り出すように傾斜して前記ケーシングの開口部を開放する開状態へ変位可能にするアームと、可撓性を有する材料により帯状に形成され、一端側が前記ケーシングに接続されると共に他端側が前記カバーに接続され、前記カバーが前記閉状態であるときには曲がった状態で前記ケーシングと前記カバーとの間に収容され、前記カバーが前記開状態であるときには伸びた状態で前記アームの回動による前記カバーの変位を規制する帯状部材とを備え、前記アームには、前記帯状部材の少なくとも一部が挿入され、前記帯状部材の曲がり方向を規制する深溝部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第4の画像形成装置によれば、カバーを閉じるときに、深溝部により帯状部材の曲がり方向が規制されるので、帯状部材を常に正常に曲げることができる。これにより、異常に曲がった帯状部材が障害となってカバーが正常に閉じなくなることを防止することができ、また、異常に曲がった帯状部材がカバーとケーシングとの間に大きな力が加えられた状態で挟まれることで帯状部材が破損することを防止することができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第5の画像形成装置は、上述した本発明の第4の画像形成装置において、前記カバーが前記開状態であるときに前記帯状部材の一部が前記深溝部内に留まることを特徴とする。
【0019】
本発明の第5の画像形成装置によれば、カバーが開状態のときに帯状部材の一部が深溝部内に留まっているので、例えば使用者の手が帯状部材に触れるなどして外部から帯状部材に力が加わっても、帯状部材の変位が深溝部によって規制される。これにより、帯状部材が位置ずれするのを防止でき、カバーを閉じるときには帯状部材を常に正常に曲げることができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第6の画像形成装置は、上述した本発明の第5の画像形成装置において、前記深溝部の縁部に設けられ、前記カバーが前記開状態であるときに前記帯状部材の一部が前記深溝部内に留まるように前記帯状部材の一部を抑える規制部材を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明の第6の画像形成装置によれば、カバーが開状態のときに帯状部材の一部を深溝部内に留まる構造を容易に形成することができる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の第7の画像形成装置は、上述した本発明の第6の画像形成装置において、前記規制部材は、前記深溝部の互いに向かい合う縁部間を架橋する架橋部を備え、前記帯状部材は、前記カバーが開状態であるときに前記深溝部内において前記架橋部の下をくぐり抜けるように配置されることを特徴とする。
【0023】
本発明の第7の画像形成装置によれば、規制部材の架橋部に帯状部材をくぐらせる構成としたことにより、帯状部材が深溝部から飛び出してしまうことを確実に防止することができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の第8の画像形成装置は、上述した本発明の第4ないし第7のいずれかの画像形成装置において、前記帯状部材は、幅寸法が他の部分の幅寸法よりも小さい幅細部を有し、前記カバーが前記開状態であるときに前記幅細部の少なくとも一部が前記深溝部内に留まることを特徴とする。
【0025】
本発明の第8の画像形成装置によれば、帯状部材において、深溝部内に留める部分を幅細部とすることにより、帯状部材を深溝部内に容易に挿入することが可能となり、帯状部材の一部を深溝部内に留める構造を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ケーシングとカバーとの間に設けられた帯状部材の曲がり方が異常であるためにカバーが正常に閉じなくなり、または帯状部材が破損することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態による画像形成装置を示す外観斜視図である。
【図2】フロントカバーが開いた状態の本発明の第1の実施形態による画像形成装置を示す外観斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による画像形成装置においてフロントカバーを閉状態と開状態との間で変位させる構造を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による画像形成装置におけるカバー支持部を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による画像形成装置におけるアームの構造を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による画像形成装置における帯状部材を示す正面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による画像形成装置においてフロントカバーに帯状部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による画像形成装置においてフロントカバーが開閉する過程で帯状部材がアームの深溝部に挿入される様子を示す説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による画像形成装置においてフロントカバーに帯状部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による画像形成装置においてフロントカバーが開いた状態を示す説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による画像形成装置における規制部材を示す斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施形態による画像形成装置において規制部材が深溝部の縁部に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について図1ないし図8を参照しながら説明する。図1および図2は本発明の第1の実施形態による画像形成装置をそれぞれ示しており、図1はフロントカバーが閉じた状態を示し、図2はフロントカバーが開いた状態を示している。図1において、本発明の第1の実施形態による画像形成装置1は、例えば、画像読取機能、通信機能、コピー機能、印刷機能、ファクシミリ機能等を備えたレーザー式の複合機である。画像形成装置1は、その外殻を形成する略箱状のケーシング2を備え、ケーシング2内の上部には、図2に示すように、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、定着装置、用紙搬送機構、トナーカートリッジ等から構成された画像形成機構5が収容されている。
【0029】
図2に示すように、画像形成装置1の正面側の面にはフロント開口部3が設けられている。画像形成装置1を取り扱う者は、フロント開口部3から手を差し入れ、ケーシング2内に収容された画像形成機構5に触れ、画像形成機構5のメンテナンス(トナーカートリッジの交換、紙詰まりの解消、クリーニング、修理等)を行うことができる。
【0030】
また、画像形成装置1の正面側には、図1に示すように、ケーシング2のフロント開口部3を閉塞するフロントカバー6が設けられている。フロントカバー6は、図2に示すように、一対のアーム7を介してケーシング2に連結されており、画像形成装置1を取り扱う者が容易に開閉することができる。フロントカバー6は、通常使用時には、図1に示すように垂直に立ち上がり、フロント開口部3を閉塞している。以下、この状態を「閉状態」という。一方、画像形成機構5のメンテナンスを行うとき等には、フロントカバー6は、図2に示すようにその上部がケーシング2の正面から外側(手前側)に張り出すように傾斜してケーシング2のフロント開口部3を開放する。以下、この状態を「開状態」という。
【0031】
また、ケーシング2とフロントカバー6との間には、フロントカバー6が開状態のときに、フロントカバー6をその状態に維持するための一対の帯状部材8が設けられている。
【0032】
また、ケーシング2内の下部には、用紙を収容するための給紙トレイ9が設けられている。給紙トレイ9は、箱状に形成され、その中に用紙を入れるときには、ケーシング2の正面から外側(手前側)に引き出すことができる。
【0033】
図3はフロントカバー6を閉状態と開状態との間で変位させるための構造を示している。図4はケーシング2に設けられた右側のカバー支持部を示している。図5(1)はフロントカバー6に固定された右側のアーム7を示し、図5(2)は、図5(1)中の矢示V−V方向から見た右側のアーム7を示している。
【0034】
図3に示すように、フロントカバー6は、当該フロントカバー6に固定された左右一対のアーム7を、ケーシング2に設けられた左右一対のカバー支持部14により回動可能に支持することにより、ケーシング2に接続されている。なお、図3では、右側(画像形成装置1の前方に立って画像形成装置1の正面を見たときの右側)のアーム7および右側のカバー支持部14のみを示している。
【0035】
右側のカバー支持部14は、図4に示すように、ケーシング2の右側の横枠部4から前方に突出しており、比較的大きな面積を有する側板部14Aと、比較的小さな面積を有する底板部14Bとから大略構成されている。右側のカバー支持部14の側板部14Aには軸部15が設けられている。軸部15は、その基端側が側板部14Aの右面に固定され、先端側が側板部14Aから右方に伸長した短尺の円筒状または円柱状の部材である。また、右側のカバー支持部14の底板部14Bには、後述するように、フロントカバー6が閉状態と開状態との間を変位する間にフロントカバー6を上方向に移動させるためのカム部16が設けられている。左側のカバー支持部14並びに左側のカバー支持部14に設けられた軸部15およびカム部16は、右側のカバー支持部14並びに右側のカバー支持部14に設けられた軸部15およびカム部16と左右対称である点を除き、これらと同様に形成されている。
【0036】
一方、フロントカバー6に固定された右側のアーム7は、図5(1)に示すように、その基端側がフロントカバー6の裏面側の右側縁部に固定されている。また、右側のアーム7の先端側は、フロントカバー6の後ろ方向に伸長した後、フロントカバー6の下方に伸長し、さらにその後、フロントカバー6の前方向に伸長している。これにより、右側のアーム7は全体的に見て略コ字状に形成されている。また、右側のアーム7の先端部7Aには穴部11が形成されている。穴部11はアーム7の先端部7Aを貫通する小判型の穴であり、前後方向(図5(1)中の左右方向)に比較して上下方向に長い形状を有している。また、右側のアーム7の先端部7Aの下端側には、摺接部12が形成されている。摺接部12は、図3に示すように、右側のカバー支持部14に設けられたカム部16に接触する。また、右側のアーム7には、図5(2)に示すように、フロントカバー6が開状態と閉状態との間で変位することにより曲げられた帯状部材8の一部が挿入される溝部13(深溝部13A)が形成されている。溝部13の詳細については後述する。左側のアーム7は、その形状が右側のアーム7の形状と左右対称である点を除き、右側のアーム7と同様に形成されている。
【0037】
図3に示すように、フロントカバー6は、当該フロントカバー6に固定された左右一対のアーム7の先端部7Aに形成された穴部11を、ケーシング2に設けられた左右一対のカバー支持部14に固定された軸部15に挿入することにより、ケーシング2に回動可能に支持されている。各アーム7の先端部7Aが軸部15周りを回転することにより、フロントカバー6がケーシング2に対して回動し、フロントカバー6が閉状態と開状態との間で変位する。また、ケーシング2の横枠部4には、フロントカバー6が閉状態のときに、アーム7および帯状部材8を収容するための収容部4Aが形成されている。
【0038】
また、フロントカバー6が閉状態から開状態へ変位する間に各アーム7の先端部7Aが軸部15周りを反時計回りに回転すると、各アーム7の先端部7Aに形成された摺接部12が各カバー支持部14に設けられたカム部16上を摺動する。これにより、摺接部12がカム部16により徐々に上方向に押し上げられ、この結果、フロントカバー6および一対のアーム7が全体的に上方向に押し上げられる。これにより、フロントカバー6が開状態から閉状態へ変位する間に、フロントカバー6が、その下側において隣り合うように配置された給紙トレイ9のフロント板部(給紙トレイ9において画像形成装置1の正面側に位置する外壁部)と接触することを防止することができる。
【0039】
図6は帯状部材8を示し、図7はフロントカバー6に帯状部材8が取り付けられた状態を示している。上述したように、ケーシング2とフロントカバー6との間には左右一対の帯状部材8が設けられている(図2参照)。帯状部材8は、図6に示すように、例えば樹脂等の可撓性を有する材料により所定の長さを有する帯状に形成されている。また、当該帯状部材8の一端側には係止部21が形成され、他端側には係止部22が形成されている。一端側の係止部21は、当該帯状部材8の伸長方向(前後方向)に突出し、他端側の係止部22は、当該帯状部材8の伸長方向に対して直交する方向(左方向)に突出している。また、当該帯状部材8の伸長方向におけるほぼ中間部には、幅寸法が当該帯状部材8の他の部分の幅寸法よりも小さい幅細部23が形成されている。
【0040】
帯状部材8の一端側は、図3に示すように、ケーシング2の横枠部4に設けられた取付部17に接続されている。取付部17には、係止部21の突出形状に対応した孔(図示せず)が形成されており、係止部21を取付部17の孔に挿入すると、係止部21の先端に形成された一対の係り部21Aが取付部17の孔の周縁部に引っ掛かる。これにより、係止部21と取付部17とが接続され、当該帯状部材8を引っ張っても外れない状態になる。
【0041】
また、帯状部材8の他端側は、図7に示すように、フロントカバー6の裏面側の右縁部に設けられた取付部18に接続されている。取付部18には、係止部22の突出形状に対応した孔(図示せず)が形成されており、係止部22を取付部18の孔に挿入すると、係止部22の先端に形成された一対の係り部22Aが取付部18の孔の周縁部に引っ掛かり、これにより、係止部22と取付部18とが接続され、当該帯状部材8を引っ張っても外れない状態になる。
【0042】
また、一対の帯状部材8において、右側の帯状部材8と左側の帯状部材8は、両者の形状が互いに左右対称である点を除き、同様に形成されている。
【0043】
一方、図7に示すように、左側のアーム7において、左側の帯状部材8の中間部に対応する位置には溝部13が形成されている。溝部13は、図5に示すように、左側のアーム7の基端部から中間部にかけて形成されており、概ね後ろ方向に開口している。また、溝部13のうち、アーム7の基端部に位置する部分には、深さが溝部13の他の部分よりも深い深溝部13Aが形成されている。アーム7における深溝部13Aの位置は、フロントカバー6が開状態であり帯状部材8が伸びた状態であるときには帯状部材8が当該深溝部13Aに挿入されず、フロントカバー6が開状態から閉状態へ変位するのに伴って帯状部材8が曲がったときに帯状部材8の曲がった部分およびその周辺部が当該深溝部13Aに挿入されるように設定されている。右側のアーム7にも、左側のアーム7と同様に深溝部13Aを有する溝部13が形成されている。
【0044】
図8はフロントカバー7が開閉する過程において各帯状部材8が各アーム7の深溝部13Aに挿入される様子を示している。図8(1)に示すように、フロントカバー6が開状態であるとき、各帯状部材8はまっすぐ伸びた(張った)状態となる。これにより、各アーム7の反時計回りの回動が制限され、フロントカバー6の変位が規制される。そして、フロントカバー6はほぼ水平に倒れた状態のまま維持される。この状態では、各帯状部材8は、各アーム7に形成された深溝部13Aに挿入されていない。
【0045】
フロントカバー6が開状態から閉状態に向かって変位し、取付部17、18にそれぞれ接続された各帯状部材8の一端側と他端側とが互いに接近してくると、図8(2)に示すように、各帯状部材8が曲がる。このとき、各帯状部材8は、幅細部23の概ね中間部分が下方向に突出するように曲がる。そして、各帯状部材8の幅細部23の一部または全部が、各アーム7に形成された深溝部13Aの中に入り込む。これにより、各帯状部材8の曲がり方向が規制される。すなわち、画像形成装置1において、各帯状部材8は、当該帯状部材8の一端側と他端側とが前後方向に向かい合うようにして曲がり、曲がった後に、当該帯状部材8が、ケーシング2の上下方向に伸びる横枠部4に沿うように設計されている。各帯状部材8の幅細部23の一部または全部が深溝部13Aに挿入されることにより、このような各帯状部材8の設計通りの正常な曲がり方が確保される。つまり、各帯状部材8の曲がり方向が左方向または右方向にずれることが防止され、各帯状部材8が曲がった後に、当該帯状部材8が横枠部4に沿わなくなることが防止される。
【0046】
その後、フロントカバー6が閉状態に達すると、図8(3)に示すように、各帯状部材8は折れ曲がった状態でケーシング2の各横枠部4に形成された収容部4Aとフロントカバー6との間に収容される。このとき、本実施形態において、各帯状部材8の折れ曲がった部分の先端側は、各アーム7の基端部における深溝部13が形成されていない部分に押されて後ろ方向に曲がり、深溝部13Aから出る。なお、各アーム7の基端部の基端ぎりぎりの位置まで深溝部13Aを形成し、フロントカバー6が閉状態に達したときでも、各帯状部材8の折れ曲がった部分の先端側が深溝部13Aに挿入された状態となるようにしてもよい。
【0047】
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態による画像形成装置1によれば、フロントカバー6を閉じるときに、深溝部13Aにより各帯状部材8の曲がり方向を規制することができるので、各帯状部材8を常に正常に曲げることができる。これにより、帯状部材8が異常に(例えば左方向や右方向にずれて)曲がることにより、帯状部材8が障害となってフロントカバー6が正常に閉じなくなることを防止することができ、また、異常に曲がった帯状部材8がフロントカバー6とケーシング2との間に大きな力が加えられた状態で挟まれることで帯状部材8が破損することを防止することができる。
【0048】
また、画像形成装置1によれば、各帯状部材8が伸びた状態のときには帯状部材8を深溝部13Aに挿入しないようにし、各帯状部材8が曲がったときに帯状部材8を深溝部13Aに挿入することにより、フロントカバー6の開閉時における各帯状部材8の変形の円滑性を確保しながら、各帯状部材8を正常に曲げることができる。
【0049】
また、画像形成装置1によれば、各帯状部材8に幅細部23を形成したから、各帯状部材8が曲がったときに、各帯状部材8の幅細部23を深溝部13Aに容易にかつ確実に挿入させることができ、各帯状部材8を確実に正常に曲げることができる。また、各アーム7の深溝部13Aの幅を小さくすることができ、これにより各アーム7の幅を小さくすることができ、画像形成装置1の小型化を図ることができる。
【0050】
また、画像形成装置1によれば、フロントカバー6の開閉時にフロントカバー6が上下方向に移動する構造であっても、深溝部13Aにより各帯状部材8を正常に曲げることができる。
【0051】
なお、上述した第1の実施形態では、各帯状部材8が伸びた状態のときには帯状部材8を深溝部13Aに挿入せず、各帯状部材8が曲がったときに帯状部材8を深溝部13Aに挿入する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、各帯状部材8を、それが伸びているときでも曲がっているときでも常に深溝部13Aに挿入された状態としてもよい。また、帯状部材8の全部が深溝部13A内に収容される構成としてもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図9ないし図12を参照しながら説明する。なお、図9ないし図12に示す第2の実施形態おいて、図1ないし図8に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図9は、本発明の第2の実施形態による画像形成装置においてフロントカバー6に帯状部材8が取り付けられた状態を示し、図10は、本発明の第2の実施形態による画像形成装置においてフロントカバー6が開いた状態を示している。図9に示すように、本発明の第2の実施形態による画像形成装置において、アーム7に形成された深溝部13Aには、帯状部材8の一部、具体的には帯状部材8の幅細部23が挿入されており、その状態で、深溝部13Aの縁部13B、13Cに規制部材31が取り付けられている。規制部材31は深溝部13Aの縁部13B、13Cに固定されているので、図10に示すように、フロントカバー6が開状態となり、帯状部材8が伸びた(張った)状態になっても、規制部材31は深溝部13Aから出ない。これにより、フロントカバー6が開状態である間、帯状部材8の幅細部23は深溝部13A内に留まる。なお、フロントカバー6が開状態から閉状態に向かって変位するとき、帯状部材8は深溝部13A内において弛んだ状態となって曲がる。この曲がり方は、第1の実施形態とほぼ同じである(図8(2)参照)。
【0054】
図11は規制部材31を示し、図12は規制部材31が深溝部13Aの縁部13B、13Cに取り付けられた状態を示している。なお、図12において帯状部材8の図示を省略している。図11において、規制部材31は、例えば樹脂材料等により形成された略直方体状または略立方体状の部材であり、深溝部13Aの開口部に配置され、深溝部13Aの縁部13B、13Cを跨ぐように、深溝部13Aの縁部13B、13Cに取り付けられている。規制部材31には、深溝部13Aの一方の縁部13Bと当接する段部32と、深溝部13Aの他方の縁部13Cが挿入される凹部33と、深溝部13Aの互いに向かい合う縁部13B、13C間を架橋する架橋部34とが形成され、深溝部13Aの開口部に係合している。また、規制部材31には一対の突起状の係止部35が形成されている。一方、図12に示すように、深溝部13Aの一方の縁部13Bには一対の係止穴13Dが形成されている。そして、係止部35が係止穴13Dに挿入されることにより、規制部材31は深溝部13Aに固定されている。帯状部材8の幅細部23は、図9に示すように、深溝部13A内において、規制部材31の架橋部34の下をくぐり抜けるように配置されている。以上、右側のアーム7および帯状部材8について説明したが、左側のアーム7および帯状部材8も、左右対称であるものの、右側のアーム7および帯状部材8と同じ構成である。
【0055】
このように、本発明の第2の実施形態による画像形成装置によれば、フロントカバー6が開状態のときに帯状部材8の幅細部23が深溝部13A内に留まっているので、例えばフロントカバー6が開状態のときに使用者の手が帯状部材8に触れるなどして外部から帯状部材8に力が加わっても、帯状部材8の左右方向の変位が深溝部13Aによって規制される。これにより、帯状部材8が左右方向に位置ずれするのを防止でき、フロントカバー6を閉じるときには帯状部材8を常に正常に曲げることができる。したがって、帯状部材8の一部が外部にはみ出してケーシング2とフロントカバー6との間に挟まり、フロントカバー6が閉まらなくなったり、また、このときに帯状部材8に大きな力が加わり帯状部材8が破損してしまうことを防止することができる。
【0056】
なお、第2の実施形態において、図10に示すように、フロントカバー6が開状態であるとき、帯状部材8は、伸びた(張った)状態であるが、その一部が規制部材31により抑えられているため、帯状部材8の一端から他端にかけて完全にまっすぐに伸びた状態ではない。しかしながら、アーム7の形状や帯状部材8の取付位置等を適宜調整することにより、フロントカバー6が開状態であるとき帯状部材8がその一端から他端にかけて完全にまっすぐに伸びた状態となるようにしてもよい。
【0057】
また、上述した各実施形態では、各帯状部材8に幅細部23を形成する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、各帯状部材8に幅細部23を形成せず、各帯状部材8を全長にわたってほぼ均一の幅としてもよい。この場合には、各帯状部材8が深溝部13Aに入るように深溝部13Aの幅を調整する。
【0058】
また、上述した各実施形態では、フロントカバー6の開閉時にフロントカバー6が上下方向に移動する構造を有する画像形成装置1に本発明を適用した場合を例にあげたが、本発明は、フロントカバー6の開閉時にフロントカバー6が上下方向に移動しない構成を有する画像形成装置にも適用することができる。
【0059】
また、上述した各実施形態では、帯状部材8を樹脂により形成する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、帯状部材8を繊維からなる布ないし紐により形成することも可能である。
【0060】
また、上述した各実施形態では、本発明を複合機に適用する場合を例にあげたが、本発明は、コピー機、プリンタ、ファクシミリ等、他の画像形成装置にも適用することができる。
【0061】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う画像形成装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
2 ケーシング
3 フロント開口部(開口部)
6 フロントカバー(カバー)
7 アーム
7A 先端部
8 帯状部材
13 溝部
13A 深溝部
13B、13C 縁部
14 カバー支持部
15 軸部
23 幅細部
31 規制部材
34 架橋部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するケーシングと、
前記ケーシングの開口部を閉塞するカバーと、
一端側が前記カバーに固定され、他端側が前記カバーから伸長して前記ケーシングに回動可能に支持されることにより、前記カバーと前記ケーシングとを接続すると共に、前記カバーを、前記ケーシングの開口部を閉塞する閉状態から、当該カバーが前記ケーシングから外側に張り出すように傾斜して前記ケーシングの開口部を開放する開状態へ変位可能にするアームと、
可撓性を有する材料により帯状に形成され、一端側が前記ケーシングに接続されると共に他端側が前記カバーに接続され、前記カバーが前記閉状態であるときには曲がった状態で前記ケーシングと前記カバーとの間に収容され、前記カバーが前記開状態であるときには伸びた状態で前記アームの回動による前記カバーの変位を規制する帯状部材とを備え、
前記アームには、前記カバーが前記開状態から前記閉状態へ変位する間に前記帯状部材の少なくとも一部が挿入され、前記帯状部材の曲がり方向を規制する深溝部が形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記カバーが開状態であり前記帯状部材が伸びた状態であるときには前記帯状部材が前記深溝部に挿入されず、前記カバーが前記開状態から前記閉状態へ変位するのに伴って前記帯状部材が曲がったときに前記帯状部材の少なくとも曲がった部分が前記深溝部に挿入されるように前記アームにおける前記深溝部の位置が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記帯状部材は、幅寸法が他の部分の幅寸法よりも小さい幅細部を有し、前記カバーが前記開状態から前記閉状態へ変位する間に前記幅細部が前記深溝部に挿入されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
開口部を有するケーシングと、
前記ケーシングの開口部を閉塞するカバーと、
一端側が前記カバーに固定され、他端側が前記カバーから伸長して前記ケーシングに回動可能に支持されることにより、前記カバーと前記ケーシングとを接続すると共に、前記カバーを、前記ケーシングの開口部を閉塞する閉状態から、当該カバーが前記ケーシングから外側に張り出すように傾斜して前記ケーシングの開口部を開放する開状態へ変位可能にするアームと、
可撓性を有する材料により帯状に形成され、一端側が前記ケーシングに接続されると共に他端側が前記カバーに接続され、前記カバーが前記閉状態であるときには曲がった状態で前記ケーシングと前記カバーとの間に収容され、前記カバーが前記開状態であるときには伸びた状態で前記アームの回動による前記カバーの変位を規制する帯状部材とを備え、
前記アームには、前記帯状部材の少なくとも一部が挿入され、前記帯状部材の曲がり方向を規制する深溝部が形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記カバーが前記開状態であるときに前記帯状部材の一部が前記深溝部内に留まることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記深溝部の縁部に設けられ、前記カバーが前記開状態であるときに前記帯状部材の一部が前記深溝部内に留まるように前記帯状部材の一部を抑える規制部材を備えていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記規制部材は、前記深溝部の互いに向かい合う縁部間を架橋する架橋部を備え、前記帯状部材は、前記カバーが開状態であるときに前記深溝部内において前記架橋部の下をくぐり抜けるように配置されることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記帯状部材は、幅寸法が他の部分の幅寸法よりも小さい幅細部を有し、前記カバーが前記開状態であるときに前記幅細部の少なくとも一部が前記深溝部内に留まることを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−133333(P2012−133333A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248577(P2011−248577)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】