説明

画像形成装置

【課題】吸引キャップでデキャップしたときに吸引キャップ内に排出された廃液が吸引キャップから垂れ落ちる。
【解決手段】吸引キャップ91は、キャップホルダ93に対して移動可能(変位可能)に保持され、キャップホルダ93には、キャッピング時に記録ヘッド24の上方側及び下方側端面に摺動可能に接するガイド部193が設けられ、キャップホルダ93の下方側内壁面と吸引キャップ91の下方側外壁面との間に、吸引キャップ91の下方側端部から垂れ落ちる廃液を受ける誘導部材195が移動可能に配設され、誘導部材195には受け止めた廃液を外部に排出する排出経路197が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
ところで、液体吐出方式の画像形成装置において、記録ヘッドのノズルの吐出安定性を維持し、ノズル内のインク乾燥、ノズル内への埃混入防止のため、記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、記録ヘッドのノズル面を払拭して清浄化するワイパ部材(ワイパブレード、ワイピングブレード、ブレードなどとも称される。)などを含む維持回復機構を備え、例えばノズルから増粘インクをキャップ内に排出した後、ノズル面をワイパ部材で払拭してノズルメニスカスを形成する回復動作などを行なう。
【0005】
従来の維持回復機構として、垂直方向に配設された記録ヘッドのノズル面をキャッピングし、上端部に大気開放口が設けられ、下方側部に吸引口が設けられた吸引キャップを備えるものが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4186557号公報
【特許文献2】特開平09−254401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、記録ヘッドのノズル面を垂直に配設してキャップを水平方向から移動させてノズル面をキャッピングする場合、液体垂れを防止するために、キャッピング→ヘッド吸引→キャップ内大気開放→デキャップ、の順で吸引動作を行なう。
【0008】
しかしながら、キャップ内に排出された廃液を吸引手段で吸引してもキャップ内には廃液が残るため、デキャップすると、キャップの下側部から廃液が垂れ落ち、キャップホルダに付着して固着し、あるいは、固着した廃液によってキャップ位置が目標位置からずれてノズル面の密閉状態が不完全になり、ノズルの乾燥や液体の増粘を引き起こしたり、ノズル回復のための吸引性能が低下したりするという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、特にノズル面が上下方向に配設された記録ヘッドを備える場合でも、デキャップ時にキャップから垂れ落ちる残留廃液がキャップホルダなどに付着しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有するノズル面を上下方向に配置した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面に当接する当接部を有し、前記ノズル面をキャッピングするキャップと、
前記キャップを、弾性部材を介して変位可能の保持し、前記記録ヘッドに対して進退可能に配設されたキャップホルダと、を備え、
前記記録ヘッドは、前記ノズル面が垂直方向に配置されて水平方向に向けて液滴を吐出し、
前記キャップホルダには、前記記録ヘッドの下方側外端面に摺動可能に接するガイド部が設けられ、
前記キャップホルダの下方側内壁面と前記キャップの下方側外壁面との間に、前記キャップの下方側端部から垂れ落ちる廃液を受ける誘導部材が配設され、
前記誘導部材には受け止めた前記廃液を外部に排出する排出経路が接続され、
前記ヘッドホルダを進出位置から後退させて前記キャップを前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態から離間させるとき、前記キャップが前記誘導部材よりも先に後退し、前記誘導部材が前記キャップの当接部よりも前記記録ヘッド側に突出して前記キャップから垂れ落ちる廃液を受ける状態になる
構成とした。
【0011】
ここで、前記誘導部材の前記記録ヘッドに対向する側と反対側と前記キャップホルダとの間に、前記誘導部材を前記記録ヘッド側に向けて付勢する付勢手段が介装されている構成とできる。
【0012】
また、前記誘導部材は、少なくとも前記記録ヘッドのノズル面に当接する部分が弾性体である構成とできる。
【0013】
また、前記誘導部材は、前記記録ヘッドのノズル面に当接する側から前記排出経路に向かって斜め下方向に傾斜する傾斜面を有している構成とできる。
【0014】
また、前記キャップには吸引手段を有する吸引排出経路が接続され、前記誘導部材の排出経路は前記吸引排出経路に接続されている構成とできる。
【0015】
この場合、前記キャップホルダには前記誘導部材の前記排出経路を開閉する開閉部を有している構成とできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、ヘッドホルダを進出位置から後退させて吸引キャップを記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態から離間させるとき、吸引キャップが誘導部材よりも先に後退し、誘導部材が吸引キャップの当接部よりも記録ヘッド側に突出して吸引キャップから垂れ落ちる廃液を受ける状態になる構成としたので、特にノズル面が上下方向に配設された記録ヘッドを備える場合でも、デキャップ時にキャップから垂れ落ちる残留廃液がキャップホルダなどに付着しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の側面説明図である。
【図2】図1を矢示A方向から見た説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態における維持回復機構のキャップ部分の模式的説明図である。
【図4】同実施形態の吸引動作時の説明に供する模式的説明図である。
【図5】同じく図4に続く模式的説明図である。
【図6】同じく図5に続く模式的説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態における維持回復機構のキャップ部分の模式的説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態における維持回復機構のキャップ部分の模式的説明図である。
【図9】本発明の第4実施形態における誘導部材の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の側面説明図、図2は図1を矢示A方向から見た説明図である。
【0019】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、装置本体の内部に画像形成部2、搬送機構部5等を有し、装置本体の下方側に被記録媒体である用紙10を積載可能な給紙トレイ(給紙カセットを含み、給紙部の意味で使用する。)4を備え、この給紙トレイ4から給紙される用紙10を取り込み、搬送機構5によって用紙10を垂直方向(鉛直方向に沿う方向)に間歇的に搬送しながら、画像形成部2によって水平方向に液滴を吐出させて所要の画像を記録した後、排紙部6を通じて画像が形成された用紙10を更に上方向に搬送して、装置本体の上方側に設けられた排紙トレイ7に用紙10を排紙する。
【0020】
また、両面印刷を行うときには、一面(表面)印刷終了後、排紙部6から反転部8内に用紙10を取り込み、搬送機構部5によって用紙10を逆方向(下方向)に搬送しながら反転させて他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構部5に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ7に用紙10を排紙する。
【0021】
ここで、画像形成部2は、左右の側板101L、101R間に横架した主ガイド部材21及び従ガイド部材22で、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ23を摺動自在に保持し、図示しないキャリッジ移動機構の主走査モータによって駆動プーリと従動プーリ間に架け渡したタイミングベルトを介して主走査方向に移動走査する。
【0022】
キャリッジ23には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド24a、24b(区別しないときは「記録ヘッド24」という。)を、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を水平方向に向けて装着している。つまり、液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面が垂直方向に配置され、水平方向に向けて液滴を吐出する記録ヘッド24を備える水平打ち方式を採用している。
【0023】
記録ヘッド24は、それぞれ複数の液滴を吐出するノズルが列設された2つのノズル列を有し、記録ヘッド24aの一方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、他方のノズル列はマゼンタ(Y)の液滴を、記録ヘッド24bの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0024】
また、キャリッジ23には、記録ヘッド24の各ノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク29が搭載され、このヘッドタンク29には、装置本体に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)からインクが供給される。
【0025】
給紙トレイ4の用紙10は、給紙コロ(半月コロ)43と分離パッド44によって1枚ずつ分離されて装置本体内に給紙され、搬送ガイド部材45に沿って、搬送機構部5の搬送ベルト51と押えコロ48との間に送り込まれ、搬送ベルト51に吸着されて搬送される。
【0026】
搬送機構部5は、駆動ローラである搬送ローラ52と従動ローラ53との間に掛け渡した無端状の搬送ベルト51と、この搬送ベルト51を帯電させるための帯電ローラ54と、画像形成部2に対向する部分で搬送ベルト51の平面性を維持するプラテン部材55となどを有している。なお、搬送ベルト51は、図示しない副走査駆動機構の副走査モータによってタイミングベルト及びタイミングプーリを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって、ベルト搬送方向(副走査方向、用紙搬送方向)に周回移動する。
【0027】
排紙部6は、排紙ガイド部材61と、排紙搬送ローラ62及び拍車63と、排紙ローラ64及び拍車65とが配置され、画像が形成された用紙10を排紙ローラ64及び拍車65間から排紙トレイ7上にフェイスダウンで排紙する。
【0028】
また、反転部8は、排紙トレイ7に一部を排出した用紙10をスイッチバック方式で反転して搬送ベルト51と押えコロ48との間に送り込むため、排紙経路と反転経路を切り替える切替爪81と、反転ガイド部材82と、反転ローラ83及び反転コロである拍車84と、従動ローラ53に対向する従動補助ローラ85と、搬送ベルト51の逆送部分51bと、搬送ベルト51の逆送部分51bから分離された用紙10を、帯電ローラ54を迂回させて、搬送ベルト51と押えコロ48との間に案内する迂回ガイド部材86などを備えている。
【0029】
また、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド24のノズル124bの状態を維持し、回復するための維持回復機構9を配置している。この維持回復機構9のフレーム90には、記録ヘッド24の各ノズル面124(図1参照)をキャピングするための吸引キャップ91及び保湿キャップ92と、ノズル面124をワイピング(払拭)するワイパ部材(ワイパブレード)94などが保持されている。吸引キャップ91はキャップホルダ93に保持されている。また、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる予備吐出(空吐出)を行うときの液滴を受ける空吐出受け95を備えている。吸引キャップ91には吸引手段としての吸引ポンプ96を有する吸引排出経路97が接続され、吸引排出経路97は廃液タンク98に通じている。
【0030】
なお、維持回復機構9のフレーム90内部には、図示しないキャッピング機構用ステッピングモータが配設され、キャッピング機構用ステッピングモータを正転回転すると、図示しないギアとカムを通じて、キャップホルダ93とともに吸引キャップ91が、図示しないキャップホルダとともに保湿キャップ92が、それぞれキャッピングとデキャップ動作を行う。また、キャッピング機構用ステッピングモータを逆転回転することで吸引ポンプ96が駆動される。
【0031】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ4から用紙10が1枚ずつ分離給紙され、帯電された搬送ベルト51に用紙10が静電吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙10が垂直方向に搬送される。そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙10にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙10を所定量搬送後、次の行の記録を行い、記録が終了した用紙10を排紙トレイ7に排紙する。
【0032】
そして、記録ヘッド24のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ23をホーム位置である維持回復機構9に対向する位置に移動して、吸引キャップ91によるキャッピングを行ってノズルからの吸引排出を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0033】
また、両面印刷を行う場合には、第1面印刷は上述したとおりの動作を行い、用紙10の後端が反転部分岐(切替爪81)を通過すると、排紙ローラ64が反転駆動されて用紙10がスイッチバックされ、反転ガイド部材82側に案内され、反転ローラ83と拍車84の間で搬送され、搬送ベルト51の逆搬送部分51bと搬送補助ローラ85との間へと用紙10が送り込まれる。
【0034】
これにより、用紙10は搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって搬送され、搬送ローラ52側で搬送ベルト51から分離されて、迂回ガイド部材86で案内され(迂回パスを経由し)、再度搬送ベルト51の正搬送部分51aと押圧コロ48との間に送り込まれて搬送ベルト51に吸着され、再度記録ヘッド24による画像形成領域に吸着搬送されることで第2面印刷が行われた後、排紙トレイ7に排紙される。
【0035】
次に、本発明の第1実施形態における維持回復機構のキャップ部分の詳細について図3ないし図6を参照して説明する。なお、図3は同キャップ部分の模式的説明図、図4ないし図6はクリーニング動作における吸引動作時の説明に供する模式的説明図である。
【0036】
吸引キャップ91には、キャッピング状態で吸引キャップ91の内部を大気に開放する大気開放弁191が設けられた(あるいは接続された)大気開放口191a(図5参照)と、吸引キャップ91内の廃液を排出する吸引排出経路97が接続された吸引口とを有している。ここで、大気開放口及び吸引口は、それぞれ吸引キャップ91の上方側と下方側に設けられている。なお、大気開放口の向きは垂直方向及び水平方向のいずれでもよい。
【0037】
吸引キャップ91は、矢示方向に進退可能に配設されたキャップホルダ93にて弾性部材であるバネ192を介して、キャップホルダ93に対して移動可能(変位可能)に保持されている。
【0038】
キャップホルダ93には、キャッピング時に記録ヘッド24の上方側及び下方側端面に摺動可能に接するガイド部193が設けられ、このガイド部193が記録ヘッド24に端面に摺接することで吸引キャップ91のノズル面124に対する位置決めが行われる。
【0039】
そして、キャップホルダ93の下方側内壁面と吸引キャップ91の下方側外壁面との間に、吸引キャップ91の下方側端部から垂れ落ちる廃液を受ける誘導部材195が移動可能に配設され、誘導部材195には受け止めた廃液を外部に排出する排出経路197が接続されている。また、誘導部材195とキャップホルダ93との間には、誘導部材195を記録ヘッド24側に付勢する付勢手段としてバネ196を介装している。
【0040】
この誘導部材195のノズル面124との当接部(先端面)195aは、吸引キャップ91のノズル面124との当接部(キャップニップ部)91aよりも突出した状態で配設されている。また、誘導部材195は、必ずしも全体が弾性部材である必要はないが、記録ヘッド24のノズル面124と当接する部分(当接部)195aは弾性部材であることが、当接時にノズル面124を傷つけないために好ましい。
【0041】
このように構成したので、記録ヘッド24のノズル120の目詰まりが発生した場合、ヘッドタンク29内の負圧が保たれずノズル120のメニスカスが破壊された場合など、所要の維持回復動作が必要なときには、クリーニング動作を実施する。クリーニング動作では、記録ヘッド24のノズルからインクを吸引する吸引動作、ノズル面124を払拭するワイピング動作、画像形成に寄与しない液滴を吐出させる空吐出動作を行う。
【0042】
吸引動作は、キャッピング→インク吸引→大気開放→キャップ内吸引→デキャップの順で行う。この吸引動作について図4ないし6を参照して説明する。
まず、図3に示す位置にキャップホルダ93がある状態(このときのキャップホルダ93の位置を退避位置とする。)から、図4(a)に示すように、図示しないキャッピング機構用ステッピングモータを駆動して、キャップホルダ93を記録ヘッド24方向に移動(進出)させて、キャップホルダ93のガイド部193を記録ヘッド24の上下端面に倣わせて嵌め込むことにより、同図(b)に示すように、まず誘導部材195の当接部195aがノズル面124に当接し、その後、同図(c)に示すように、吸引キャップ91のニップ部91aがノズル面124に当接する。この状態から更にキャップホルダ93が記録ヘッド24方向に移動して押し込まれることにより、吸引キャップ91がノズル124を確実にキャッピングしてノズル面124との間に密閉空間が形成される。
【0043】
その後、図5(a)に示すように、吸引ポンプ96を駆動して所定量のインクをノズル120から吸引することで、吸引キャップ91内に廃液300が排出される。ここで、同図(b)に示すように、大気開放弁191を開いて吸引キャップ91内を大気開放する。この状態で、再度吸引ポンプ96を駆動することで、同図(c)に示すように、吸引キャップ91内の廃液300が吸引排出経路97を通じて廃液タンク98に排出される。このとき、吸引キャップ91内の廃液300を完全に吸引排出することはできず、吸引キャップ91内の下方側内壁面には廃液300が一部残留する。
【0044】
この状態で、デキャップ動作に移行し、図5(d)に示すように、図示しないキャッピング機構用ステッピングモータを逆に駆動して、キャップホルダ93を記録ヘッド24から後退させる方向に移動させると、まず、吸引キャップ91のニップ部91aがノズル面124から離間する。
【0045】
このとき、誘導部材195の当接部195aはノズル面124から離間しておらず、ニップ部91aよりもノズル面124側に突出しているため、吸引キャップ91内に残留している廃液300はニップ部91aから誘導部材195上に垂れて受け止められ、誘導部材195によって排出経路197に誘導されて排出されるので、キャップホルダ93のガイド部193上に垂れ落ちることが防止される。
【0046】
その後、図6(a)に示すように、キャップホルダ93の後退移動により、誘導部材195がノズル面124から離間し、最後に同図(b)に示すように、キャップホルダ93のガイド部193が記録ヘッド24から離間して、デキャップ動作が終了する。
【0047】
なお、図示しないが、その後、記録ヘッド24をワイパ部材94による払拭位置に移動させ、ワイパ部材94を図2で矢示方向に移動させてノズル面124のワイピングを行い、更に空吐出受け95の位置に移動させて空吐出動作を行って、クリーニング動作を終了する。
【0048】
このように、使用環境によって吸引キャップ91内に排出された廃液300の吸引排出後の残留廃液量が多く、吸引キャップ91のニップ部91aがノズル面124から離間するとき(デキャップ時)に廃液垂れが発生しても、誘導部材195がノズル面124に当接している状態であるので、垂れた廃液が誘導部材195で受け止められて排出経路197に誘導されて排出されるので、キャップホルダ93のガイド部193への廃液付着、固着を防止することができる。また、同様に、装置設置場所の傾斜角度、また吸引動作中の突然の停電後などトラブル発生時に吸引キャップ外に廃液が垂れたときでも、同様に誘導部材195による受け止め、誘導、排出を行うことができて、キャップホルダ93のガイド部193への廃液付着、固着、装置本体内への垂れ落ちを防止することができる。
【0049】
つまり、ヘッドホルダを進出位置から後退させて吸引キャップを記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態から離間させるとき、吸引キャップが誘導部材よりも先に後退し、誘導部材が吸引キャップの当接部よりも記録ヘッド側に突出して吸引キャップから垂れ落ちる廃液を受ける状態になる構成とすることで、特にノズル面が垂直に配設された記録ヘッドを備える場合でも、デキャップ時にキャップから垂れ落ちる残留廃液がキャップホルダなどに付着しないようにすることができる。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態における維持回復機構について図7を参照して説明する。なお、図7は同維持回復機構のキャップ部分の模式的説明図である。
ここでは、吸引キャップ91からの吸引排出経路97と誘導部材195からの排出経路197を途中で接続し、排出経路197から排出される廃液も吸引排出経路97を通じて廃液タンク98に排出するようにしている。これにより、排出経路の這い回しが簡単になる。
【0051】
そして、キャップホルダ93には排出経路197を開閉する開閉部である突起部93aを設けている。このキャップホルダ93の突起部93aは、図7(a)に示すように、キャップホルダ93が後退位置にあるときには、排出経路197を開いているが、同図(b)に示すように、キャッピング時にキャップホルダ93が記録ヘッド24方向へ進出するときに排出経路197を押圧して内部流路を遮断する。
【0052】
これにより、キャッピング時には吸引排出経路97に接続された(分岐している)排出経路197が遮断されるので、吸引ポンプ96による吸引圧は吸引キャップ91内部の密閉空間に作用し、吸引を行うことができる。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態における維持回復機構について図8を参照して説明する。なお、図6は同維持回復機構のキャップ部分の模式的説明図である。
ここでは、前記第2実施形態と同様に、吸引キャップ91からの吸引排出経路97と誘導部材195からの排出経路197を途中で接続し、排出経路197から排出される廃液も吸引排出経路97を通じて廃液タンク98に排出するようにしている。これにより、排出経路の這い回しが簡単になる。
【0054】
そして、誘導部材195は、弾性部材によって形成し、排出経路197に通じる開口178を形成している。この誘導部材195は、記録ヘッド24のノズル面124に当接する当接部197aと反対側の端面197bをキャップホルダ93に固定している。
【0055】
このように構成したので、図8(a)に示すように、キャップホルダ93が後退位置にあるときには、誘導部材195の開口部198は開いているが、同図(b)に示すように、キャッピング時にキャップホルダ93が記録ヘッド24方向へ進出すると、誘導部材195はノズル面124とキャップホルダ93との間で押し潰されて開口部198が閉じた状態になる。
【0056】
これにより、キャッピング時には吸引排出経路97に接続された(分岐している)排出経路197が遮断されるので、吸引ポンプ96による吸引圧は吸引キャップ91内部の密閉空間に作用し、吸引を行うことができる。
【0057】
次に、本発明の第4実施形態における誘導部材について図9を参照して説明する。なお、図9は同誘導部材の斜視説明図である。
誘導部材195は、内底面195cが当接部195a側から開口部188側に向かって下方に傾斜する傾斜面で形成されている。
【0058】
これにより、誘導部材195に流れた廃液を開口部198側へ誘導するときに、廃液が流れ易くなる。また、この場合、内底面195cに撥水処理を施すことよってより流れ易くなる。
【0059】
なお、上記実施形態では、用紙を鉛直方向に沿う方向(垂直方向)に搬送し、液滴を水平方向に吐出する例で説明しているが、用紙を鉛直方向に沿う方向(垂直方向)に対して傾斜した方向に搬送し、液滴を水平方向に対して傾斜した方向に吐出する構成であっても、本発明を同様に適用することができる。また、上記実施形態ではシリアル型画像形成装置で説明しているが、ライン型画像形成装置にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
2 画像形成部
4 給紙部
5 搬送機構
6 排紙部
7 排紙トレイ
8 反転部
9 維持回復機構
10 用紙(被記録媒体)
23 キャリッジ
24 記録ヘッド
51 搬送ベルト
91 吸引キャップ
93 キャップホルダ
96 吸引ポンプ
97 吸引排出経路
98 廃液タンク
191 大気開放弁
195 誘導部材
197 排出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有するノズル面を上下方向に配置した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面に当接する当接部を有し、前記ノズル面をキャピングするキャップと、
前記キャップを、弾性部材を介して変位可能の保持し、前記記録ヘッドに対して進退可能に配設されたキャップホルダと、を備え、
前記キャップホルダには、前記記録ヘッドの下方側外端面に摺動可能に接するガイド部が設けられ、
前記キャップホルダの下方側内壁面と前記キャップの下方側外壁面との間に、前記キャップの下方側端部から垂れ落ちる廃液を受ける誘導部材が配設され、
前記誘導部材には受け止めた前記廃液を外部に排出する排出経路が接続され、
前記ヘッドホルダを進出位置から後退させて前記キャップを前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態から離間させるとき、前記キャップが前記誘導部材よりも先に後退し、前記誘導部材が前記キャップの当接部よりも前記記録ヘッド側に突出して前記キャップから垂れ落ちる廃液を受ける状態になる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記誘導部材の前記記録ヘッドに対向する側と反対側と前記キャップホルダとの間に、前記誘導部材を前記記録ヘッド側に向けて付勢する付勢手段が介装されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記誘導部材は、少なくとも前記記録ヘッドのノズル面に当接する部分が弾性体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記誘導部材は、前記記録ヘッドのノズル面に当接する側から前記排出経路に向かって斜め下方向に傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記キャップには吸引手段を有する吸引排出経路が接続され、前記誘導部材の排出経路は前記吸引排出経路に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記キャップホルダには前記誘導部材の前記排出経路を開閉する開閉部を有していることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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