説明

画像形成装置

【課題】より高精度で記録ヘッドの取り付け角度を調整することのできる画像形成装置を得る。
【解決手段】システムコントローラ84は、テストパターンを用紙に形成する場合に、隣接するドット間距離に対するドットの大きさの割合であるオーバーラップ率が、ヘッドユニット66に設けられた記録ヘッドに対して選択的に設定可能とされたドットの大きさのうちの最も小さなドットで用紙Kに画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に係り、特に、2次元状に配列され、各々記録媒体に着弾して形成されるドットの大きさとして予め定められた複数種類の大きさの何れかが選択的に適用される複数の液滴吐出ノズルを有する記録ヘッドにより画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式により画像を形成する画像形成装置における画像の記録方式として、記録媒体の搬送方向とは直交する方向に記録ヘッドを往復移動させながら画像を記録するシリアル方式(マルチパス方式)と、記録媒体の搬送方向とは直交する用紙幅の方向に沿って長尺のラインヘッドを設置して記録媒体の搬送と共に当該ラインヘッドによる1回の描画パスで画像を記録するライン方式(シングルパス方式)とが知られている。
【0003】
ところで、ライン方式を採用し、液滴吐出ノズルが2次元状に配列された記録ヘッドによって画像を形成する画像形成装置においては、記録媒体の搬送方向とは直交する方向(以下、「直交方向」という。)に対して隣接する液滴吐出ノズル間の距離を均一にすることが濃度ムラの発生を抑制するうえで重要である。従って、この種の画像形成装置で用いられる記録ヘッドでは、液滴吐出ノズルが上記直交方向に対して等間隔となるように配列されている。
【0004】
しかしながら、この種の画像形成装置では、記録ヘッドを画像形成装置に取り付ける際に、上記直交方向に対して傾斜する取り付け誤差が生じる場合があり、この場合、上記直交方向に対して隣接する液滴吐出ノズル間の距離が等間隔とならず、この結果として濃度ムラが生じてしまう、という問題があった。
【0005】
この問題を解決するために適用することのできる技術として、特許文献1には、ライン状に複数のドット記録素子を一定間隔に配列したライン記録ヘッドを複数個取付け、記録媒体への記録幅分の複数のドット記録素子を有するマトリクスタイプのオンデマンド型マルチノズルインクジェットヘッドで、前記記録媒体の移動制御とドット記録素子の駆動制御によりドット記録を行うインクジェットプリンタにおいて、ドット記録素子を一定間隔に配列したライン記録ヘッド毎に取付け角度を補正する補正手段と、テストパターンを印刷させながらドット記録素子を一定間隔に配列したライン記録ヘッド毎に取付け角度を調整する調整手段と、テストパターンを読み取って紙送り方向に対するドット記録素子のドット着地ズレをモニタするモニタ手段と、前記モニタ手段によって得られたドット着地ズレ量を定量化し、各ドット記録素子に応じた駆動タイミング値を保存するための記憶部する保存手段とを有し、ドット記録素子毎に印字駆動タイミングを制御することを特徴とするインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−145777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、通常、インクジェット方式により画像を形成する画像形成装置では、図18に示すように、記録媒体に形成されたドットの径(以下、「ドット径」という。)Dと、解像度により決定される上記直交方向に対して隣接するドット間の間隔pとの関係は、概ねD≒1.5p〜2.5pとなるように設定されており、互いに隣接するドットは大きく重複(オーバーラップ)されている。なお、本明細書では、当該オーバーラップの度合いを示す値をオーバーラップ率OLとして、次の(1)式により定義する。
【0008】
【数1】

【0009】
このように、通常の画像形成装置では、隣接するドット間でオーバーラップ領域が設けられているため、上記特許文献1に開示される技術では、テストパターンにおける上記直交方向に対するドット間に隙間領域が生じないか、または生じたとしても著しく狭いものとなってしまう。この結果、この技術では、テストパターンにおける記録ヘッドの上記直交方向に対する傾斜に起因する濃度ムラを、必ずしも容易に確認することができるとは限らず、この結果として必ずしも高精度で記録ヘッドの取り付け角度を調整することができるとは限らない、という問題点があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、より高精度で記録ヘッドの取り付け角度を調整することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の画像形成装置は、2次元状に配列され、各々液滴を吐出すると共に、吐出した液滴が記録媒体に着弾して形成されるドットの大きさとして予め定められた複数種類の大きさの何れか1つが各々選択的に設定可能とされた複数の液滴吐出ノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドの前記液滴吐出ノズルからの液滴吐出方向を回転軸とした回転角度を調整するために用いるテストパターンを前記記録媒体に形成する場合に、隣接する前記ドット間距離に対する前記ドットの大きさの割合であるオーバーラップ率が、大きさが最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように前記記録ヘッドを制御する制御手段と、を備えている。
【0012】
請求項1記載の画像形成装置によれば、制御手段により、2次元状に配列され、各々液滴を吐出すると共に、吐出した液滴が記録媒体に着弾して形成されるドットの大きさとして予め定められた複数種類の大きさの何れか1つが各々選択的に設定可能とされた複数の液滴吐出ノズルを有する記録ヘッドの前記液滴吐出ノズルからの液滴吐出方向を回転軸とした回転角度を調整するために用いるテストパターンを前記記録媒体に形成する場合に、隣接する前記ドット間距離に対する前記ドットの大きさの割合であるオーバーラップ率が、大きさが最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように前記記録ヘッドが制御される。
【0013】
このように、請求項1に記載の画像形成装置によれば、テストパターンを記録媒体に形成する場合に、隣接するドット間距離に対するドットの大きさの割合であるオーバーラップ率が、記録ヘッドに対して選択的に設定可能とされたドットの大きさのうちの最も小さなドットで記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように記録ヘッドを制御しているので、オーバーラップ率を当該最も小さなドットで記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率以上とする場合に比較して、隣接するドット間の隙間領域を広くすることができる結果、ムラが強調されることにより、より高精度で記録ヘッドの取り付け角度を調整することができる。
【0014】
ところで、画像形成装置では、記録ヘッドと、記録媒体を搬送する搬送手段とが構造的に異なる部位に支持されている場合が多く、この場合には、記録ヘッドと記録媒体との間で上記直交方向に対して相対的に振動が生じている場合が多い。
【0015】
この場合、液滴吐出ノズルが2次元状に配列された記録ヘッドによって画像を形成する画像形成装置の場合、上記相対的な振動(以下、「相対振動」という。)に起因する濃度ムラ(以下、「振動ムラ」という。)が生じる場合があった。
【0016】
以下、振動ムラについて説明する。なお、ここでは、記録媒体の搬送方向をy方向とし、上記直交方向をx方向として説明する。また、ここでは、記録ヘッドにおける液滴吐出ノズルの配列が図14に示したものとされている場合について説明する。
【0017】
この場合、記録ヘッドをx方向に対して傾斜することなく設けた場合で、かつ上記相対振動がある場合には、一例として図15に示したテストパターンが形成される。これに対し、記録ヘッドをx方向に対して−1度傾斜させた場合で、かつ上記相対振動がある場合のテストパターンは一例として図16に示したものとなり、+1度傾斜させた場合で、かつ上記相対振動がある場合のテストパターンは一例として図17に示したものとなる。
【0018】
ここで、図15〜図17を比較すると、傾斜角度が−1度である場合のテストパターンにおける隙間領域がx方向に対して並ぶ白帯領域のy方向に対する中心位置が概ね−600pix,−1400pix,−2200pixであるのに対し、傾斜角度が+1度である場合のテストパターンにおける白帯領域のy方向に対する中心位置は概ね−200pix,−1000pix,−1800pixであり、各々の白帯領域が生じている位置には周期的にずれが生じている。
【0019】
これに対し、傾斜角度が0(零)である場合のテストパターンにおける白帯領域のy方向に対する中心位置は概ね−200pix,−600pix,−1000pix,−1400,−1800pix,−2200pixであり、傾斜角度が−1度である場合と+1度である場合の双方の白帯の発生位置に白帯が発生している一方、白帯領域の面積は傾斜角度を有する場合より狭くなっている。
【0020】
従って、相対振動がある状態で形成したテストパターンを参照することにより、以上のような白帯領域の状態の相違から記録ヘッドの上記直交方向に対する傾斜角度を推定することができる。
【0021】
そこで、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記記録ヘッドを前記記録媒体の搬送方向とは直交する方向に振動させる振動源による振動を抑制する振動抑制手段をさらに備え、前記制御手段は、前記テストパターンを前記記録媒体に形成する場合に、前記振動抑制手段による前記振動の抑制の度合いを低減させることにより、前記記録媒体と前記記録ヘッドとを前記直交する方向に相対的に振動させる制御をさらに行ってもよい。これにより、新たな構成を要することなく、テストパターンを記録ヘッドの傾斜角度を推定できるものとすることができ、より利便性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記テストパターンが、前記ドットにより全体的に均一な濃度となるように形成される平網パターンであるものとしてもよい。これにより、テストパターンの濃度ムラの視認性を向上させることができる結果、より高精度で記録ヘッドの取り付け角度を調整することができる。
【0023】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記制御手段が、前記記録ヘッドの前記液滴吐出ノズルから吐出させる液滴の量を調整することにより、前記オーバーラップ率が前記最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように前記記録ヘッドを制御してもよく、請求項5に記載の発明のように、前記制御手段が、隣接する前記ドット間の距離を調整することにより、前記オーバーラップ率が前記最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように前記記録ヘッドを制御してもよく、特に、請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記制御手段が、液滴を吐出させる前記液滴吐出ノズルを間引くことにより、前記隣接する前記ドット間の距離を調整してもよい。
【0024】
また、本発明は、請求項7に記載の発明のように、前記制御手段が、前記テストパターンを形成する記録媒体の種類を変更することにより、前記オーバーラップ率が前記最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように制御してもよい。
【0025】
また、本発明は、請求項8に記載の発明のように、前記記録ヘッドの前記回転角度を調整する調整手段と、前記記録媒体に記録された前記テストパターンを撮像する撮像手段と、をさらに備え、前記制御手段が、前記撮像手段による撮像によって得られた前記テストパターンの画像における、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間で前記記録媒体の搬送方向とは直交する方向に相対的に生じる振動に起因する濃度ムラが最も小さくなるように前記調整手段を制御してもよい。これにより、記録ヘッドの回転角度を手動で調整する場合に比較して、より簡易に記録ヘッドの取り付け角度を調整することができる。
【0026】
また、請求項8に記載の発明は、請求項9に記載の発明のように、前記調整手段が、前記記録ヘッドの前記直交する方向に対する前記回転角度が零である状態を含む予め定められた範囲内で前記記録ヘッドの前記回転角度が調整可能とされており、前記制御手段が、前記記録ヘッドの前記回転角度を前記予め定められた範囲における下限角度および上限角度の何れか一方から予め定められた角度単位で設定するように前記調整手段を制御すると共に、この状態で形成されたテストパターンの画像における前記ドットが形成されない面積が予め定められた面積以下となった場合に設定されていた前記回転角度となるように前記調整手段に対する制御を行ってもよい。
【0027】
また、請求項8に記載の発明は、請求項10に記載の発明のように、前記調整手段が、前記記録ヘッドの前記直交する方向に対する前記回転角度が零である状態を含む予め定められた範囲内で前記記録ヘッドの前記回転角度が調整可能とされており、前記制御手段が、前記記録ヘッドの前記回転角度を前記予め定められた範囲における前記零を隔てた予め定められた2つの回転角度となるように前記調整手段を制御すると共に、当該2つの回転角度の各々の状態で形成されたテストパターンの画像における前記ドットが形成されない2つの面積に基づいて、前記2つの回転角度の間で、かつ前記テストパターンの画像における前記ドットが形成されない面積が最小となる場合に対応する回転角度を導出し、当該回転角度となるように前記調整手段に対する制御を行ってもよい。
【0028】
さらに、請求項8に記載の発明は、請求項11に記載の発明のように、前記調整手段が、前記記録ヘッドの前記直交する方向に対する前記回転角度が零である状態を含む予め定められた範囲内で前記記録ヘッドの前記回転角度が調整可能とされており、前記制御手段が、前記記録ヘッドの前記回転角度を前記予め定められた範囲における下限角度および上限角度の何れか一方から予め定められた角度単位で設定するように前記調整手段を制御すると共に、この状態で形成されたテストパターンの画像における前記ドットが形成されない面積が減少から増加に転じたときの前記回転角度となるように前記調整手段に対する制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、テストパターンを記録媒体に形成する場合に、隣接するドット間距離に対するドットの大きさの割合であるオーバーラップ率が、記録ヘッドに対して選択的に設定可能とされたドットの大きさのうちの最も小さなドットで記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように記録ヘッドを制御しているので、オーバーラップ率を当該最も小さなドットで記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率以上とする場合に比較して、隣接するドット間の隙間領域を広くすることができる結果、ムラが強調されることにより、より高精度で記録ヘッドの取り付け角度を調整することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す断面側面図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係るヘッドの外観を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係るヘッド部の底面側の構成を示す底面図である。
【図5】実施の形態に係るヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図6】実施の形態に係るヘッドのノズル配列の一例を示す概略図である。
【図7】実施の形態に係るヘッド角度調整機構の構成を示す底面図である。
【図8】実施の形態に係る画像形成装置におけるマルチドット方式の説明に供する模式図である。
【図9】第1の実施の形態に係るヘッド調整処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態に係るヘッド調整処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第2の実施の形態に係るヘッド調整処理プログラムによる処理の説明に供する模式図である。
【図12】第3の実施の形態に係るヘッド調整処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】第4の実施の形態に係るヘッド調整処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】振動ムラの説明に供する図であり、記録ヘッドにおける液滴吐出ノズルの配列状態の一例を示す背面図である。
【図15】図14のノズル配置とされ、記録媒体の搬送方向とは直交する方向に対する傾斜角度が零(0)とされた記録ヘッドにより形成されるテストパターンの一例を示す図である。
【図16】図14のノズル配置とされ、記録媒体の搬送方向とは直交する方向に対する傾斜角度が−1度とされた記録ヘッドにより形成されるテストパターンの一例を示す図である。
【図17】図14のノズル配置とされ、記録媒体の搬送方向とは直交する方向に対する傾斜角度が+1度とされた記録ヘッドにより形成されるテストパターンの一例を示す図である。
【図18】本発明に係るオーバーラップ率の説明に供する模式図である。
【図19】実施の形態に係るヘッド部の他の構成例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、インク滴により画像を形成する所謂インクジェットプリンタ(以下、「画像形成装置」という。)に適用した場合について説明する。
【0032】
[第1の実施の形態]
まず、本実施の形態に係る画像形成装置10の全体構成について説明する。
【0033】
[画像形成装置]
図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10には、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という)Kの搬送方向(以下、「用紙Kの搬送方向」との記載を省略する場合もある。)上流側に、用紙Kを給紙搬送する給紙搬送部12が設けられている。この給紙搬送部12の下流側には、用紙Kの搬送方向に沿って、用紙Kの被画像形成面(画像形成面)に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙Kの被画像形成面に画像を形成する画像形成部16、被画像形成面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部18、乾燥した画像を用紙Kに定着させる画像定着部20、画像が定着した用紙Kを排出する排出部21が設けられている。
【0034】
以下、各処理部について説明する。
【0035】
(給紙搬送部)
給紙搬送部12には、用紙Kが積載される積載部22が設けられており、積載部22の下流側には、該積載部22に積載された用紙Kを一枚ずつ給紙する給紙部24が設けられている。この給紙部24によって給紙された用紙Kは、複数のローラ26対で構成された搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。
【0036】
(処理液塗布部)
処理液塗布部14では、処理液塗布ドラム30が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙Kの先端部を挟持して用紙Kを保持する保持部材32が設けられており、該保持部材32を介して、処理液塗布ドラム30の表面に用紙Kを保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって該用紙Kを下流側へ搬送する。
【0037】
なお、後述する中間搬送ドラム34、画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38、および定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に保持部材32が設けられている。そして、この保持部材32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙Kの受け渡しが行われる。
【0038】
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42および処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布装置42によって、用紙Kの被画像形成面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、該処理液が乾燥される。
【0039】
ここで、処理液はインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材(顔料)と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留している貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
【0040】
このグラビアローラ48にはゴムローラ50が圧接して配置されており、該ゴムローラ50が用紙Kの被画像形成面(表面)側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48にはスキージ(図示省略)が接触しており、用紙Kの被画像形成面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0041】
処理液膜厚はヘッド打滴のインク滴より十分小さいことが理想である。例えば2plの打滴量の場合、ヘッド打滴のインク滴の平均直径は15.6μmであり、処理液膜厚が厚い場合、インクドットは用紙Kの被画像形成面と接触することなく処理液内で浮遊する。2plの打滴量で着弾ドット径を30μm以上得るには処理液膜厚を3μm以下にすることが好ましい。
【0042】
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル54および赤外線ヒータ(以下、「IRヒータ」という。)56が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル54およびIRヒータ56により、処理液中の水などの溶媒を蒸発させ、固体もしくは薄膜処理液層を用紙Kの被画像形成面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像形成部16でインク打滴したドットが用紙Kの表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応し色材凝集して用紙Kの表面に固定する作用が得られやすい。
【0043】
このようにして、処理液塗布部14で被画像形成面に処理液が塗布、乾燥された用紙Kは、処理液塗布部14と画像形成部16の間に設けられた中間搬送部58へ搬送される。
【0044】
(中間搬送部)
中間搬送部58には、中間搬送ドラム34が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34に設けられた保持部材32を介して、中間搬送ドラム34の表面に用紙Kを保持し、中間搬送ドラム34の回転によって該用紙Kを下流側へ搬送する。
【0045】
(画像形成部)
画像形成部16には、画像形成ドラム36が回転可能に設けられており、画像形成ドラム36に設けられた保持部材32を介して、画像形成ドラム36の表面に用紙Kを密着させた状態で保持し、画像形成ドラム36の回転によって該用紙Kを下流側へ搬送する。
【0046】
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、各々インク滴を吐出する複数のノズルが2次元状に設けられたシングルパス方式のインクジェットラインヘッド64(以下、「ヘッド64」という。)を有するヘッドユニット66が配設されている。このヘッドユニット66では、少なくとも基本色であるY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のヘッド64が画像形成ドラム36の上方において画像形成ドラム36の周方向に沿って配列され、処理液塗布部14で用紙Kの被画像形成面に形成された処理液層上に各色の画像を形成する。
【0047】
処理液はインク中に分散する色材(顔料)とラテックス粒子を処理液に凝集する効果を持たせ、用紙K上で色材流れなど発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用い色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。
【0048】
ヘッド64は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、回転軸68の精度、ドラム表面速度に依存せず、打滴ムラを低減することが可能となる。
【0049】
なお、ヘッドユニット66は画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、ヘッド64のノズル面清掃や増粘インク排出などのメンテナンス動作は、該ヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
【0050】
また、画像形成ドラム36の上部で、かつヘッドユニット66の下流側には、各ヘッド64の用紙Kの搬送方向とは直交する方向(以下、「直交方向」という。)に対する傾斜角度を調整する際に用紙Kに形成される、後述するテストパターンを読み取るためのラインセンサ110が設けられている。なお、本実施の形態に係るラインセンサ110は、用紙Kの直交方向に対する幅の全域の画像を読み取り対象としている。
【0051】
被画像形成面に画像が形成された用紙Kは、画像形成ドラム36の回転によって、画像形成部16とインク乾燥部18の間に設けられた中間搬送部70へ搬送されるが、中間搬送部70については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0052】
(インク乾燥部)
インク乾燥部18には、インク乾燥ドラム38が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥ドラム38の表面に近接して、熱風ノズル72およびIRヒータ74が複数配設されている。この熱風ノズル72およびIRヒータ74による温風によって、用紙Kの画像形成部では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
【0053】
温風は用紙Kの搬送速度によっても異なるが、通常は50℃〜70℃に設定されている。蒸発した溶媒はエアーと共に画像形成装置10の外部へ排出されるが、エアーは回収される。このエアーは、冷却器/ラジエータ等で冷却して液体として回収してもよい。
【0054】
被画像形成面の画像が乾燥した用紙Kは、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20の間に設けられた中間搬送部76へ搬送されるが、中間搬送部76については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0055】
(画像定着部)
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられており、画像定着部20では、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱/加圧されて溶融し、用紙K上に固着定着する機能を有する。
【0056】
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ78が配設されている。この加熱ローラ78は熱伝導率のよいアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、該加熱ローラ78によって、ラテックスのTg温度以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙K上の凹凸に押し込み定着を行うと共に画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることを可能とする。
【0057】
加熱ローラ78の下流側には、定着ローラ80が設けられている。この定着ローラ80は画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配置され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ80又は画像定着ドラム40のうち、少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙Kに対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0058】
以上のような工程により、被画像形成面の画像が定着した用紙Kは、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
【0059】
なお、本実施の形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で被画像形成面に形成された画像を乾燥・定着させることができればよいため、この画像定着部20は必ずしも必要ではない。
【0060】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10のシステム構成を説明する。
【0061】
同図に示されるように、画像形成装置10は、ファン・モータドライバ81、通信インタフェース83、システムコントローラ84、画像メモリ85、ROM86、モータドライバ87、ヒータドライバ88、プリント制御部89、画像バッファメモリ90、画像処理部91、ヘッドドライバ92等を備えている。
【0062】
通信インタフェース83は、ユーザが画像形成装置10に対して画像形成の指示等を行うため等に用いられるホスト装置99とのインタフェース部である。通信インタフェース83にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインタフェースやセントロニクスなどのパラレルインタフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。
【0063】
ホスト装置99から送出された画像情報は通信インタフェース83を介して画像形成装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ85に記憶される。画像メモリ85は、通信インタフェース83を介して入力された画像情報を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ84を通じて情報の読み書きが行われる。画像メモリ85は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0064】
システムコントローラ84は、中央演算処理装置(CPU)およびその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する制御装置として機能すると共に、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ84は、ファン・モータドライバ81、通信インタフェース83、画像メモリ85、モータドライバ87、ヒータドライバ88等の各部を制御し、ホスト装置99との間の通信制御、画像メモリ85およびROM86の読み書き制御等を行うと共に、用紙搬送系のモータ93やIRヒータ56,74等を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部89に対しては、制御信号の他に、画像メモリ85に記憶された画像情報を送信する。
【0065】
また、ROM86には、システムコントローラ84のCPUが実行するプログラムおよび制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM86は、書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0066】
画像メモリ85は、画像情報の一時記憶領域として利用されると共に、プログラムの展開領域およびCPUの演算作業領域としても利用される。
【0067】
モータドライバ87は、システムコントローラ84からの指示に従って用紙搬送系のモータ93を駆動するドライバ(駆動回路)である。また、ヒータドライバ88は、システムコントローラ84からの指示に従ってIRヒータ56,74を駆動するドライバである。
【0068】
また、ファン・モータドライバ81は、システムコントローラ84からの指示に従って、各ファン・モータおよびファン・モータ結線回路71を駆動するドライバである。
【0069】
また、システムコントローラ84には前述したラインセンサ110が接続されており、システムコントローラ84には、ラインセンサ110によって読み取られたテストパターンを示す画像情報が入力される。
【0070】
ところで、前述したように、本実施の形態に係る画像形成装置10では、ヘッド64に対するメンテナンスを行うことを可能とするため、ヘッドユニット66が画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、ヘッド64のメンテナンス動作を行う際には、ヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させる一方、画像形成時にはヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部に位置させる。このため、本実施の形態に係る画像形成装置10では、ヘッドユニット66が、当該ヘッドユニット66をメンテナンス動作を行う際の位置と画像形成時の位置との間で移動可能とするためのガイドレールにキャリッジを介して設けられている。
【0071】
一方、画像形成装置10では、画像形成時にモータ93の回転駆動により生じる振動等の様々な振動が発生しており、この振動が上記キャリッジを介してヘッドユニット66に伝達されるため、各ヘッド64もまた上記直交方向に対して振動することになり、ヘッドユニット66によって用紙Kに形成される画像にも当該振動に起因する振動ムラが発生してしまう。
【0072】
この振動ムラは、画像形成時において用紙Kとヘッド64との間で相対的に上記直交方向に対して振動が生じることで発生するものであるため、当該振動ムラの発生を抑制するため、本実施の形態に係る画像形成装置10には、画像形成時においてヘッドユニット66を本体フレームに対して固定するロック機構112が設けられている。なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、ロック機構112として、上記キャリッジを電磁石によって本体フレームに固定するものを適用しているが、これに限らず、他の構成を適用してもよいことは言うまでもない。
【0073】
システムコントローラ84には、このロック機構112によるロックおよびロックの解除を行うことのできるロック機構ドライバ114が接続されており、システムコントローラ84は、ロック機構ドライバ114を介してロック機構112によるロックおよびロックの解除を選択的に設定することができる。
【0074】
一方、プリント制御部89は、CPUおよびその周辺回路等から構成され、システムコントローラ84の制御に従い、画像処理部91と協働して画像メモリ85内の画像情報から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正等の処理を行うと共に、生成した吐出データをヘッドドライバ92に供給してヘッドユニット66の吐出駆動を制御する。
【0075】
プリント制御部89には、プリント制御部89のCPUが実行するプログラムおよび制御に必要な各種データなどが格納されているROM94が接続されている。ROM94もまた書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0076】
画像処理部91は、入力された画像情報からインク色別のドット配置データを生成するものであり、入力画像情報に対してハーフトーニング処理(中間階調処理)を行って高品質のドット位置を決定する。
【0077】
なお、図2において、画像処理部91は、システムコントローラ84やプリント制御部89とは別個のものとして図示しているが、例えば、画像処理部91は、システムコントローラ84或いはプリント制御部89に含まれて、その一部を構成するようにしてもよい。
【0078】
また、プリント制御部89は、画像処理部91で生成されたドット配置データに基づいてインクの吐出データ(ヘッド64のノズルに対応するアクチュエータの制御信号)を生成する吐出データ生成機能と、駆動波形生成機能とを有している。従って、プリント制御部89は、ヘッド64からインク滴を吐出させる際に用いる駆動波形を示す波形信号を生成する手段である。なお、この波形信号の生成であるが、外部で生成された波形信号がこの画像形成装置10に入力される場合には、その外部で生成された波形信号を、記憶または保持し、記憶または保持された波形信号を用いるようにしてもよい。
【0079】
吐出データ生成機能にて生成された吐出データはヘッドドライバ92に与えられ、ヘッドユニット66のインク吐出動作が制御される。
【0080】
駆動波形生成機能は、ヘッド64の各ノズルに対応したアクチュエータを駆動するための駆動信号波形を生成する機能であり、当該駆動波形生成機能にて生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ92に供給される。なお、駆動波形生成機能にて生成される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。ヘッドドライバ92は、発生された波形信号をヘッド64に供給してインク滴を吐出させる手段である。
【0081】
プリント制御部89には画像バッファメモリ90が接続されており、プリント制御部89における画像情報処理時に画像情報やパラメータ等のデータが画像バッファメモリ90に一時的に格納される。なお、図2において画像バッファメモリ90はプリント制御部89に付随する態様で示されているが、画像メモリ85と兼用することも可能である。
【0082】
なお、プリント制御部89とシステムコントローラ84とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0083】
図3には、本実施の形態に係るヘッド64の外観を示す斜視図が示されている。なお、Y,M,C,Kの各ヘッド64は、吐出するインク滴に含まれる色材が異なるだけで何れも同様の構成をしているので、以下では、Kのヘッド64を例に挙げて説明する。
【0084】
同図に示されるように、ヘッド64は、用紙搬送方向Yに対して直交する方向(直交方向)Xに用紙Kの全幅(画像記録可能範囲の全幅)にわたりライン状に配置されるように構成された長尺状のヘッド部100を備えており、ヘッド部100は長尺状のプレート102に固定されている。
【0085】
図4には、本実施の形態に係るヘッド部100の底面視構成を示す模式図が示されている。同図に示されるように、ヘッド部100は、略平坦面に形成されたインク吐出面100Aを備えている。ヘッド部100における画像形成ドラム36の外周面に対向するインク吐出面100Aには各々インク滴を吐出する複数のノズル151が用紙搬送方向Yおよび直交方向Xの各方向に所定の間隔で並べて形成されており、ノズル151を直交方向Xにライン状に配列して構成したノズル列151Aが用紙搬送方向Yに隣接する列間でノズル151が重ならないように2次元状に配置されている。
【0086】
図5はヘッド64の構造例を示す平面透視図である。用紙K上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド64におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド64は、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(直交方向X)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0087】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0088】
各圧力室152は供給口154を介して共通流路と連通されている。共通流路はインク供給源たるインクタンク(図示省略)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路を介して各圧力室152に分配供給される。
【0089】
圧力室152の一部の面を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)には個別電極を備えたアクチュエータが接合されている。個別電極と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータが変形して圧力室の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータには、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。
【0090】
インク吐出後、アクチュエータの変位が元に戻る際に、共通流路から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0091】
画像情報から生成さるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータの駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。
【0092】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図6に示す如く直交方向Xに沿う行方向および直交方向Xに対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0093】
すなわち、直交方向Xに対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、直交方向Xに並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、直交方向Xについては、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、直交方向Xに並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり1200個(1200ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0094】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示した例に限定されない。また、本実施の形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータの変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用することができる。
【0095】
ところで、本実施の形態に係る画像形成装置10には、各ヘッド64の直交方向Xに対する傾斜角度を調整する機構(以下、「ヘッド角度調整機構」という。)が設けられている。
【0096】
図7に示すように、本実施の形態に係るヘッド角度調整機構は、ヘッド64の一端部を軸支する軸120と、ヘッド64の他端部近傍の一方の側面に対して外周面が当接された偏心カム122と、ヘッド64の他端部近傍の他方の側面に対して偏心カム122の方向に付勢するコイルバネ124と、を含んで構成されている。
【0097】
ここで、偏心カム122の回転軸にはモータ116(図7では図示省略。図2参照。)の回転軸が機械的に結合されており、図2に示すように、モータ116は、モータドライバ118を介してシステムコントローラ84に接続されている。従って、システムコントローラ84は、モータドライバ118を介してモータ116の回転軸の回転角度を制御することにより、ヘッド64の他端部を同図矢印A方向およびB方向に移動させることができるため、ヘッド64の直交方向Xに対する傾斜角を調整することができる。
【0098】
なお、本実施の形態に係るヘッド角度調整機構では、ヘッド64を画像形成時の位置に位置決めした際に、直交方向Xを含み、かつヘッド64の最大取り付け誤差の範囲を含む範囲として予め定められた範囲(以下、「調整可能範囲」という。)で直交方向Xに対する傾斜角度が調整可能となるように、軸120の位置や偏心カム122の大きさ・位置等が予め設定されている。
【0099】
ところで、本実施の形態に係る画像形成装置10では、ヘッド64として、吐出したインク滴が用紙Kに着弾して形成されるドットの大きさとして予め定められた複数種類の大きさの何れか1つが選択的に設定可能とされたノズル151が2次元配列されたものを用いている。なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、上記複数種類のドットの大きさとして、小サイズ、中サイズ、および大サイズの3種類の大きさを適用しているが、これに限らず、2種類の大きさや、4種類以上の大きさを適用する形態としてもよい。
【0100】
このため、本実施の形態に係る画像形成装置10では、ヘッド64として、一例として図8に示すように、上記ドットの大きさの種類と同数の種類の大きさ(本実施の形態では、小滴、中滴、大滴の3種類の大きさ)のインク滴の何れか1つを選択的に吐出することができるものとされている。なお、同図に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10では、上記3種類の大きさから何れか1つの大きさのインク滴を選択的に吐出することができるようにするために3パルス構成の単一の吐出駆動波形が適用されており、小滴のインク滴を吐出させる場合には上記吐出駆動波形の最初のパルスのみをアクチュエータに印加し、中滴のインク滴を吐出させる場合には上記吐出駆動波形の2番目のパルスまでをアクチュエータに印加し、大滴のインク滴を吐出させる場合には上記吐出駆動波形の3番目のパルスまでをアクチュエータに印加する。
【0101】
なお、同図に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10では、ノズル151から吐出させるインク滴の大きさにかかわらず、その用紙K上の着弾位置が同一とされているため、吐出させるインク滴が大きくなるに従ってオーバーラップ率OLも大きくなることになる。
【0102】
次に、本実施の形態の作用として、本発明に特に関係するヘッド64の直交方向Xに対する傾斜角度を零(0)とするヘッド調整処理を実行する際の画像形成装置10の作用を、図9を参照しつつ説明する。なお、図9は、予め定められたタイミング(本実施の形態では、ヘッド調整処理の実行指示がホスト装置99から通信インタフェース83を介して受け付けられたタイミング)で画像形成装置10のシステムコントローラ84により実行されるヘッド調整処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM86に予め記憶されている。
【0103】
まず、同図のステップ200では、ロック機構112によるロックが解除されるようにロック機構ドライバ114を制御し、次のステップ202では、モータ93による用紙Kの搬送が開始されるようにモータドライバ87を制御する。
【0104】
次のステップ204では、各色のヘッド64のうちの何れかのヘッド64(以下、「調整対象ヘッド」という。)のインク滴の吐出方向を回転軸とした回転角度を、上記調整可能範囲における下限角度および上限角度の何れか一方(本実施の形態では、上限角度)とするべくモータ116により偏心カム122を回転させるようにモータドライバ118を制御する。
【0105】
次のステップ206では、用紙Kが調整対象ヘッドによるインク滴の吐出位置に到達するまで待機し、次のステップ208にて、調整対象ヘッドによるテストパターンの形成を開始するようにプリント制御部89を介してヘッドユニット66を制御する。
【0106】
このとき、システムコントローラ84は、テストパターンとして、ドットにより全体的に均一な濃度となるように形成される平網パターンを形成するように制御する。また、このとき、システムコントローラ84は、調整対象ヘッドの各ノズル151から吐出されるインク滴を、オーバーラップ率OLが、上記複数種類の大きさのうちの最も小さなドット(本実施の形態では、小サイズ)で用紙Kに画像を形成した場合のオーバーラップ率OLより小さくなるように調整対象ヘッドを制御する。なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、このオーバーラップ率OLに関する制御を、調整対象ヘッドの各アクチュエータに印加する駆動波形を、小滴のインク滴を吐出させる際に印加する駆動波形に対して電圧レベルを所定割合(本実施の形態では、20%)だけ低くしたものを適用することにより実現する形態を採用しているが、これに限らず、小滴のインク滴を吐出させる際に印加する駆動波形に対して当該駆動波形のパルス幅を所定幅だけ短くしたものを適用することにより実現する形態や、これらの形態を組み合わせて適用する形態としてもよい。
【0107】
次のステップ210では、テストパターンを形成している用紙Kが当該テストパターンの形成が終了する位置まで搬送されるまで待機し、次のステップ212にて、調整対象ヘッドによるテストパターンの形成を停止するようにプリント制御部89を介してヘッドユニット66を制御する。
【0108】
次のステップ214では、ラインセンサ110によりテストパターンの読み取りを行い、次のステップ216にて、読み取ったテストパターンにおける白帯領域(非ドット形成領域)の面積(以下、「白帯面積」という。)を導出する。
【0109】
次のステップ218では、上記ステップ216の処理によって導出した白帯面積が予め定められた閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定となった場合は後述するステップ226に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ220に移行する。なお、上記閾値は、白帯面積が当該値以下であれば調整対象ヘッドの傾斜角度が許容範囲内にあるものとして、画像形成装置10に要求される画像品質等に応じて予め定められた値である。
【0110】
ステップ220では、調整対象ヘッドの回転角度が上記下限角度および上限角度の他方(本実施の形態では、下限角度)に達していないか否かを判定することにより、調整対象ヘッドの回転角度の変更が可能か否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ222に移行して、調整対象ヘッドの上記回転角度を予め定められた角度だけ上記下限角度および上限角度の他方(本実施の形態では、下限角度)の方向に変更するようにモータドライバ118を制御した後に上記ステップ206に戻る。
【0111】
一方、上記ステップ220において否定判定となった場合には、調整対象ヘッドの上記回転角度の調整を行うことができなかったものと見なしてステップ224に移行し、予め定められたエラー処理を実行した後にステップ226に移行する。なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、上記ステップ224において実行されるエラー処理として、調整対象ヘッドの角度調整が不調に終わったことを示す情報をホスト装置99に通信インタフェース83を介して送信する処理を適用しているが、これに限らず、画像形成装置10に表示装置を設けておき、当該表示装置でエラーの発生を示す情報を表示する処理等、他のエラーの発生を提示する処理を適用する形態としてもよい。
【0112】
ステップ226では、全てのヘッド64について以上の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ204に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ228に移行する。なお、上記ステップ204〜ステップ226の処理を繰り返し実行する際には、それまでに調整対象ヘッドとしなかったヘッド64を調整対象ヘッドとする。
【0113】
ステップ228では、最終的に調整対象とされたヘッド64によりテストパターンが形成された用紙Kが排出部21から排出されるまで待機し、次のステップ230にて、モータ93による用紙Kの搬送が停止されるようにモータドライバ87を制御し、さらに次のステップ232にて、ロック機構112によりロックされるようにロック機構ドライバ114を制御した後、本ヘッド調整処理プログラムを終了する。
【0114】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、テストパターンを記録媒体(本実施の形態では、用紙K)に形成する場合に、隣接するドット間距離に対するドットの大きさの割合であるオーバーラップ率が、記録ヘッド(本実施の形態では、ヘッド64)に対して選択的に設定可能とされたドットの大きさのうちの最も小さなドットで記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように記録ヘッドを制御しているので、オーバーラップ率を当該最も小さなドットで記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率以上とする場合に比較して、隣接するドット間の隙間領域を広くすることができる結果、ムラが強調されることにより、より高精度で記録ヘッドの取り付け角度を調整することができる。
【0115】
また、本実施の形態では、前記テストパターンを前記記録媒体に形成する場合に、前記記録媒体と前記記録ヘッドとを前記記録媒体の搬送方向とは直交する方向に相対的に振動させる制御をさらに行っているので、テストパターンを記録ヘッドの傾斜角度を推定できるものとしており、より利便性を向上させることができる。
【0116】
特に、本実施の形態では、前記テストパターンを前記記録媒体に形成する場合に、前記記録ヘッドを前記直交する方向に振動させる振動源による振動を抑制する振動抑制手段(本実施の形態では、ロック機構112)による前記振動の抑制の度合いを低減させることにより、前記振動させる制御を行っているので、新たな構成を要することなく、より簡易かつ低コストで記録ヘッドの取り付け角度を調整することができる。
【0117】
また、本実施の形態では、前記テストパターンを、前記ドットにより全体的に均一な濃度となるように形成される平網パターンとしているので、他のテストパターンを用いる場合に比較して、テストパターンの濃度ムラの視認性を向上させることができる結果、より高精度で記録ヘッドの取り付け角度を調整することができる。
【0118】
また、本実施の形態では、前記記録ヘッドの前記回転角度を調整する調整手段(本実施の形態では、回転軸120、偏心カム122、コイルバネ124)と、前記記録媒体に記録された前記テストパターンを撮像する撮像手段(本実施の形態では、ラインセンサ110)と、を備え、前記撮像手段による撮像によって得られた前記テストパターンの画像における前記ドットが形成されない面積が最も小さくなるように前記調整手段を制御しているので、記録ヘッドの回転角度を手動で調整する場合に比較して、より簡易に記録ヘッドの取り付け角度を調整することができる。
【0119】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本第2の実施の形態に係る画像形成装置10の構成は上記第1の実施の形態と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0120】
以下、本第2の実施の形態の作用として、本発明に特に関係するヘッド64の直交方向Xに対する傾斜角度を零(0)とするヘッド調整処理を実行する際の画像形成装置10の作用を、図10を参照しつつ説明する。なお、図10は、予め定められたタイミング(本実施の形態では、ヘッド調整処理の実行指示がホスト装置99から通信インタフェース83を介して受け付けられたタイミング)で画像形成装置10のシステムコントローラ84により実行されるヘッド調整処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM86に予め記憶されている。また、同図の図9と同一の処理を実行するステップには図9と同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0121】
同図のステップ208’では、調整対象ヘッドによるテストパターンの形成を開始するようにプリント制御部89を介してヘッドユニット66を制御する。
【0122】
このとき、システムコントローラ84は、テストパターンとして、ドットにより全体的に均一な濃度となるように形成される平網パターンを形成するように制御する。また、このとき、システムコントローラ84は、調整対象ヘッドの各ノズル151から吐出されるインク滴を、オーバーラップ率OLが、上記複数種類の大きさのうちの最も小さなドット(本実施の形態では、小サイズ)で用紙Kに画像を形成した場合のオーバーラップ率OLより小さくなるように調整対象ヘッドを制御する。なお、本第2の実施の形態に係る画像形成装置10では、このオーバーラップ率OLに関する制御を、隣接するドット間の距離を調整することにより行っている。そして、本第2の実施の形態に係る画像形成装置10では、この隣接するドット間の距離の調整を、一例として図11に示すように、調整対象ヘッドから中滴または大滴のインク滴を吐出させるように制御すると共に、インク滴を吐出させるノズル151を間引くように制御することにより行っている。
【0123】
この形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0124】
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本第3の実施の形態に係る画像形成装置10の構成も上記第1の実施の形態と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0125】
以下、本第3の実施の形態の作用として、本発明に特に関係するヘッド64の直交方向Xに対する傾斜角度を零(0)とするヘッド調整処理を実行する際の画像形成装置10の作用を、図12を参照しつつ説明する。なお、図12は、予め定められたタイミング(本実施の形態では、ヘッド調整処理の実行指示がホスト装置99から通信インタフェース83を介して受け付けられたタイミング)で画像形成装置10のシステムコントローラ84により実行されるヘッド調整処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM86に予め記憶されている。
【0126】
まず、同図のステップ250では、ロック機構112によるロックが解除されるようにロック機構ドライバ114を制御し、次のステップ252では、モータ93による用紙Kの搬送が開始されるようにモータドライバ87を制御する。
【0127】
次のステップ254では、各色のヘッド64のうちの何れかのヘッド64(調整対象ヘッド)のインク滴の吐出方向を回転軸とした回転角度を、上記調整可能範囲における下限角度および上限角度の何れか一方(本実施の形態では、上限角度)とするべくモータ116により偏心カム122を回転させるようにモータドライバ118を制御する。
【0128】
次のステップ256では、用紙Kが調整対象ヘッドによるインク滴の吐出位置に到達するまで待機し、次のステップ258にて、調整対象ヘッドによるテストパターンの形成を開始するようにプリント制御部89を介してヘッドユニット66を制御する。
【0129】
このとき、システムコントローラ84は、テストパターンとして、ドットにより全体的に均一な濃度となるように形成される平網パターンを形成するように制御する。また、このとき、システムコントローラ84は、調整対象ヘッドの各ノズル151から吐出されるインク滴を、オーバーラップ率OLが、上記複数種類の大きさのうちの最も小さなドット(本実施の形態では、小サイズ)で用紙Kに画像を形成した場合のオーバーラップ率OLより小さくなるように調整対象ヘッドを制御する。なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、このオーバーラップ率OLに関する制御を、調整対象ヘッドの各アクチュエータに印加する駆動波形を、小滴のインク滴を吐出させる際に印加する駆動波形に対して電圧レベルを所定割合(本実施の形態では、20%)だけ低くしたものを適用することにより実現する形態を採用しているが、これに限らず、小滴のインク滴を吐出させる際に印加する駆動波形に対して当該駆動波形のパルス幅を所定幅だけ短くしたものを適用することにより実現する形態や、これらの形態を組み合わせて適用する形態としてもよい。
【0130】
次のステップ260では、テストパターンを形成している用紙Kが当該テストパターンの形成が終了する位置まで搬送されるまで待機し、次のステップ262にて、調整対象ヘッドによるテストパターンの形成を停止するようにプリント制御部89を介してヘッドユニット66を制御する。
【0131】
次のステップ264では、ラインセンサ110によりテストパターンの読み取りを行い、次のステップ266にて、読み取ったテストパターンにおける白帯領域(非ドット形成領域)の面積(白帯面積)を導出し、さらに次のステップ268にて、導出した白帯面積を画像メモリ85に記憶する。
【0132】
次のステップ270では、本ヘッド調整処理プログラムの実行を開始してから上記ステップ268による白帯面積の導出が2回目であったか否かを判定し、肯定判定となった場合は後述するステップ274に移行する一方、否定判定となった場合はステップ272に移行して、調整対象ヘッドの上記回転角度を、上記調整可能範囲における下限角度および上限角度の他方(本実施の形態では、下限角度)とするべくモータ116により偏心カム122を回転させるようにモータドライバ118を制御した後、上記ステップ256に戻る。
【0133】
以上のステップ256〜ステップ270の繰り返し処理により、調整対象ヘッドが上記上限角度とされている場合の白帯面積(以下、「上限角度白帯面積」という。)と、上記下限角度とされている場合の白帯面積(以下、「下限角度白帯面積」という。)と、が画像メモリ85に記憶される。
【0134】
そこで、ステップ274では、上限角度白帯面積および下限角度白帯面積を画像メモリ85から読み出し、次のステップ276にて、読み出した各白帯面積に基づいて、調整対象ヘッドの設定するべき回転角度を導出する。
【0135】
なお、本第2の実施の形態に係る画像形成装置10では、当該回転角度の導出を、上限角度と下限角度との間で、かつ上限角度白帯面積と下限角度白帯面積との比率に応じた回転角度を導出することにより行っている。例えば、上限角度白帯面積および下限角度白帯面積が同一である場合には、上記回転角度として上限角度および下限角度の中央の角度を導出し、上限角度白帯面積が下限角度白帯面積より大きい場合には、上記回転角度として下限角度側で、かつ各白帯面積の比率に応じた角度を導出し、上限角度白帯面積が下限角度白帯面積より小さい場合には、上記回転角度として上限角度側で、かつ各白帯面積の比率に応じた角度を導出する。
【0136】
次のステップ278では、調整対象ヘッドの回転角度を上記ステップ276において導出した回転角度とするべくモータ116により偏心カム122を回転させるようにモータドライバ118を制御する。
【0137】
次のステップ280では、全てのヘッド64について以上の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ254に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ282に移行する。なお、上記ステップ254〜ステップ280の処理を繰り返し実行する際には、それまでに調整対象ヘッドとしなかったヘッド64を調整対象ヘッドとする。
【0138】
ステップ282では、最終的に調整対象とされたヘッド64によりテストパターンが形成された用紙Kが排出部21から排出されるまで待機し、次のステップ284にて、モータ93による用紙Kの搬送が停止されるようにモータドライバ87を制御し、さらに次のステップ286にて、ロック機構112によりロックされるようにロック機構ドライバ114を制御した後、本ヘッド調整処理プログラムを終了する。
【0139】
この形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0140】
[第4の実施の形態]
以下、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、本第4の実施の形態に係る画像形成装置10の構成も上記第1の実施の形態と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0141】
以下、本第4の実施の形態の作用として、本発明に特に関係するヘッド64の直交方向Xに対する傾斜角度を零(0)とするヘッド調整処理を実行する際の画像形成装置10の作用を、図13を参照しつつ説明する。なお、図13、予め定められたタイミング(本実施の形態では、ヘッド調整処理の実行指示がホスト装置99から通信インタフェース83を介して受け付けられたタイミング)で画像形成装置10のシステムコントローラ84により実行されるヘッド調整処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM86に予め記憶されている。
【0142】
まず、同図のステップ300では、ロック機構112によるロックが解除されるようにロック機構ドライバ114を制御し、次のステップ302では、モータ93による用紙Kの搬送が開始されるようにモータドライバ87を制御する。
【0143】
次のステップ304では、各色のヘッド64のうちの何れかのヘッド64(調整対象ヘッド)のインク滴の吐出方向を回転軸とした回転角度を、上記調整可能範囲における下限角度および上限角度の何れか一方(本実施の形態では、上限角度)とするべくモータ116により偏心カム122を回転させるようにモータドライバ118を制御する。
【0144】
次のステップ306では、用紙Kが調整対象ヘッドによるインク滴の吐出位置に到達するまで待機し、次のステップ308にて、調整対象ヘッドによるテストパターンの形成を開始するようにプリント制御部89を介してヘッドユニット66を制御する。
【0145】
このとき、システムコントローラ84は、テストパターンとして、ドットにより全体的に均一な濃度となるように形成される平網パターンを形成するように制御する。また、このとき、システムコントローラ84は、調整対象ヘッドの各ノズル151から吐出されるインク滴を、オーバーラップ率OLが、上記複数種類の大きさのうちの最も小さなドット(本実施の形態では、小サイズ)で用紙Kに画像を形成した場合のオーバーラップ率OLより小さくなるように調整対象ヘッドを制御する。なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、このオーバーラップ率OLに関する制御を、調整対象ヘッドの各アクチュエータに印加する駆動波形を、小滴のインク滴を吐出させる際に印加する駆動波形に対して電圧レベルを所定割合(本実施の形態では、20%)だけ低くしたものを適用することにより実現する形態を採用しているが、これに限らず、小滴のインク滴を吐出させる際に印加する駆動波形に対して当該駆動波形のパルス幅を所定幅だけ短くしたものを適用することにより実現する形態や、これらの形態を組み合わせて適用する形態としてもよい。
【0146】
次のステップ310では、テストパターンを形成している用紙Kが当該テストパターンの形成が終了する位置まで搬送されるまで待機し、次のステップ312にて、調整対象ヘッドによるテストパターンの形成を停止するようにプリント制御部89を介してヘッドユニット66を制御する。
【0147】
次のステップ314では、ラインセンサ110によりテストパターンの読み取りを行い、次のステップ316にて、読み取ったテストパターンにおける白帯領域(非ドット形成領域)の面積(白帯面積)を導出し、さらに次のステップ318にて、導出した白帯面積を画像メモリ85に記憶する。
【0148】
次のステップ320では、本ヘッド調整処理プログラムの実行を開始してから上記ステップ318による白帯面積の導出が2回目以降であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はテップ322に移行する。
【0149】
ステップ322では、上記ステップ318の処理によって今回記憶した白帯面積(以下、「最新白帯面積」という。)と、上記ステップ318の処理によって前回記憶した白帯面積(以下、「前回白帯面積」という。)と、を画像メモリ85から読み出し、次のステップ324にて、最新白帯面積が前回白帯面積より大きいか否かを判定することにより、白帯面積が増加に転じたか否かを判定して、否定判定となった場合は後述するステップ326に移行する。
【0150】
一方、上記ステップ320において否定判定となった場合にはステップ326に移行し、調整対象ヘッドの回転角度が上記下限角度および上限角度の他方(本実施の形態では、下限角度)に達していないか否かを判定することにより、調整対象ヘッドの回転角度の変更が可能か否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ328に移行して、調整対象ヘッドの上記回転角度を予め定められた角度だけ上記下限角度および上限角度の他方(本実施の形態では、下限角度)の方向に変更するようにモータドライバ118を制御した後に上記ステップ306に戻る。
【0151】
一方、上記ステップ326において否定判定となった場合には、調整対象ヘッドの上記回転角度の調整を行うことができなかったものと見なしてステップ330に移行し、予め定められたエラー処理を実行した後に後述するステップ334に移行する。なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、上記ステップ330において実行されるエラー処理として、調整対象ヘッドの角度調整が不調に終わったことを示す情報をホスト装置99に通信インタフェース83を介して送信する処理を適用しているが、これに限らず、画像形成装置10に表示装置を設けておき、当該表示装置でエラーの発生を示す情報を表示する処理等、他のエラーの発生を提示する処理を適用する形態としてもよい。
【0152】
一方、上記ステップ324において肯定判定となった場合にはステップ332に移行し、調整対象ヘッドの回転角度を、前回白帯面積を導出した際の回転角度とするべく、モータ116により偏心カム122を回転させるようにモータドライバ118を制御し、その後にステップ334に移行する。
【0153】
ステップ334では、全てのヘッド64について以上の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ304に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ336に移行する。なお、上記ステップ304〜ステップ334の処理を繰り返し実行する際には、それまでに調整対象ヘッドとしなかったヘッド64を調整対象ヘッドとする。
【0154】
ステップ336では、最終的に調整対象とされたヘッド64によりテストパターンが形成された用紙Kが排出部21から排出されるまで待機し、次のステップ338にて、モータ93による用紙Kの搬送が停止されるようにモータドライバ87を制御し、さらに次のステップ340にて、ロック機構112によりロックされるようにロック機構ドライバ114を制御した後、本ヘッド調整処理プログラムを終了する。
【0155】
この形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0156】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0157】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0158】
例えば、上記各実施の形態では、3種類の大きさのドットが選択可能とされたヘッド64を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1種類の大きさのドットのみが選択可能とされたヘッドや、3種類を除く複数の大きさのドットが選択可能とされたヘッドを適用する形態としてもよい。
【0159】
また、上記各実施の形態では、画像形成装置10が複数の印刷モードを有し、かつ各印刷モードで選択可能とされているドットの大きさの種類が異なる場合については言及しなかったが、この場合においても本発明は適用可能であり、この場合には、テストパターンを形成する際のオーバーラップ率OLを、全ての印刷モードにおける最も小さなドットで用紙Kに画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるようにヘッド64を制御することになる。
【0160】
また、上記各実施の形態では、本発明の液滴としてインク滴を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上記インク滴に代えて上記処理液を適用する形態としてもよい。
【0161】
また、上記各実施の形態では、ロック機構112によるロックを解除することによって用紙Kとヘッド64とを直交方向Xに相対的に振動させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該相対的な振動を発生させる振動源を新たに設けて適用する形態としてもよい。
【0162】
また、上記各実施の形態では、ヘッド64に対する制御により、オーバーラップ率がヘッド64に対して選択的に設定可能とされたドットの大きさのうちの最も小さなドットで用紙Kに画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように制御する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、用紙Kの種類を変更することにより、オーバーラップ率がヘッド64に対して選択的に設定可能とされたドットの大きさのうちの最も小さなドットで用紙Kに画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように制御する形態としてもよい。
【0163】
なお、この場合の形態例としては、画像形成装置10として、複数種類の用紙を選択的に適用可能なものを適用する一方、上記複数種類の用紙としてインクの吸収速度が異なる用紙を適用し、テストパターンを形成する際の用紙としてインクの吸収速度が最も速い用紙(例えば、インクジェット専用紙)を適用する形態を例示することができる。
【0164】
また、上記各実施の形態で適用したヘッド64は一例であり、一例として図19に示すように、複数のヘッドモジュールを千鳥配列で直交方向Xに繋ぎ合わせたラインヘッドを適用する形態としてもよい。
【0165】
さらに、上記各実施の形態では、本発明の撮像手段としてラインセンサ110を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該撮像手段としてエリアセンサを適用する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0166】
10 画像形成装置
16 画像形成部
36 画像形成ドラム
64 ヘッド(記録ヘッド)
84 システムコントローラ(制御手段)
89 プリント制御部
91 画像処理部
92 ヘッドドライバ
93 モータ
100 ヘッド部
110 ラインセンサ(撮像手段)
112 ロック機構(振動抑制手段)
120 回転軸(調整手段)
122 偏心カム(調整手段)
124 コイルバネ(調整手段)
151 ノズル(液滴吐出ノズル)
K 用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元状に配列され、各々液滴を吐出すると共に、吐出した液滴が記録媒体に着弾して形成されるドットの大きさとして予め定められた複数種類の大きさの何れか1つが各々選択的に設定可能とされた複数の液滴吐出ノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの前記液滴吐出ノズルからの液滴吐出方向を回転軸とした回転角度を調整するために用いるテストパターンを前記記録媒体に形成する場合に、隣接する前記ドット間距離に対する前記ドットの大きさの割合であるオーバーラップ率が、大きさが最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように制御する制御手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドを前記記録媒体の搬送方向とは直交する方向に振動させる振動源による振動を抑制する振動抑制手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記テストパターンを前記記録媒体に形成する場合に、前記振動抑制手段による前記振動の抑制の度合いを低減させることにより、前記記録媒体と前記記録ヘッドとを前記直交する方向に相対的に振動させる制御をさらに行う
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記テストパターンは、前記ドットにより全体的に均一な濃度となるように形成される平網パターンである
請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記記録ヘッドの前記液滴吐出ノズルから吐出させる液滴の量を調整することにより、前記オーバーラップ率が前記最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように前記記録ヘッドを制御する
請求項1から請求項3の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、隣接する前記ドット間の距離を調整することにより、前記オーバーラップ率が前記最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように前記記録ヘッドを制御する
請求項1から請求項4の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、液滴を吐出させる前記液滴吐出ノズルを間引くことにより、前記隣接する前記ドット間の距離を調整する
請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記テストパターンを形成する記録媒体の種類を変更することにより、前記オーバーラップ率が前記最も小さなドットで前記記録媒体に画像を形成した場合のオーバーラップ率より小さくなるように制御する
請求項1から請求項6の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドの前記回転角度を調整する調整手段と、
前記記録媒体に記録された前記テストパターンを撮像する撮像手段と、
をさらに備え、
前記制御手段は、前記撮像手段による撮像によって得られた前記テストパターンの画像における、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間で前記記録媒体の搬送方向とは直交する方向に相対的に生じる振動に起因する濃度ムラが最も小さくなるように前記調整手段を制御する
請求項1から請求項7の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記調整手段は、前記記録ヘッドの前記直交する方向に対する前記回転角度が零である状態を含む予め定められた範囲内で前記記録ヘッドの前記回転角度が調整可能とされており、
前記制御手段は、前記記録ヘッドの前記回転角度を前記予め定められた範囲における下限角度および上限角度の何れか一方から予め定められた角度単位で設定するように前記調整手段を制御すると共に、この状態で形成されたテストパターンの画像における前記ドットが形成されない面積が予め定められた面積以下となった場合に設定されていた前記回転角度となるように前記調整手段に対する制御を行う
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記調整手段は、前記記録ヘッドの前記直交する方向に対する前記回転角度が零である状態を含む予め定められた範囲内で前記記録ヘッドの前記回転角度が調整可能とされており、
前記制御手段は、前記記録ヘッドの前記回転角度を前記予め定められた範囲における前記零を隔てた予め定められた2つの回転角度となるように前記調整手段を制御すると共に、当該2つの回転角度の各々の状態で形成されたテストパターンの画像における前記ドットが形成されない2つの面積に基づいて、前記2つの回転角度の間で、かつ前記テストパターンの画像における前記ドットが形成されない面積が最小となる場合に対応する回転角度を導出し、当該回転角度となるように前記調整手段に対する制御を行う
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記調整手段は、前記記録ヘッドの前記直交する方向に対する前記回転角度が零である状態を含む予め定められた範囲内で前記記録ヘッドの前記回転角度が調整可能とされており、
前記制御手段は、前記記録ヘッドの前記回転角度を前記予め定められた範囲における下限角度および上限角度の何れか一方から予め定められた角度単位で設定するように前記調整手段を制御すると共に、この状態で形成されたテストパターンの画像における前記ドットが形成されない面積が減少から増加に転じたときの前記回転角度となるように前記調整手段に対する制御を行う
請求項8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図8】
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【図11】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−187784(P2012−187784A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52459(P2011−52459)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】