説明

画像形成装置

【課題】分離爪や分離バイアス電極を設けることなく、中間転写ベルト16からの記録紙の曲率分離不良の発生を抑える。
【解決手段】中間転写ベルト16をループ内側に配設された複数の支持ローラに掛け回した状態で無端移動させながら、中間転写ベルト16における周方向の全域のうち、2次転写対向ローラ18に対する掛け回し箇所に対して2次転写ローラ20をループ外側から当接させて2次転写ニップを形成し、感光体2Y,M,C,Kと中間転写ベルト16との当接によるY,M,C,K用の1次転写ニップで感光体からベルトにY,M,C,Kトナー像を重ね合わせて転写した後、2次転写ニップで記録紙に一括2次転写する構成において、2次転写対向ローラ18として、その直径D[mm]と、設計上の記録紙最小坪量W[g/m]とについて、「D[mm]≦0.23W[g/m]+5.1」という関係を具備するものを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のベルト部材のおもて面に形成したトナー像を、ベルト部材とニップ形成ローラとの転写ニップに挟み込んだ記録紙に転写する複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、周知の電子写真プロセスによって感光体の表面にトナー像を形成するプロセスユニットと、感光体上のトナー像を記録紙に転写する転写ユニットとを備えている。転写ユニットは、ベルトループ内側に配設された複数の支持ローラによって張架している無端状の中間転写ベルトを感光体に当接させて1次転写ニップを形成している。そして、感光体上のトナー像を1次転写ニップ内で中間転写ベルトの表面に1次転写する。この中間転写ベルトの周方向における全域のうち、支持ローラに対する掛け回し箇所には、2次転写ローラが当接して2次転写ニップを形成している。中間転写ベルトの表面に1次転写されたトナー像は、2次転写ニップに進入すると、タイミングを合わせて2次転写ニップに送り込まれてきた記録紙に密着せしめられながら、2次転写電界の影響によって記録シートの表面に2次転写される。このようにしてトナー像が転写された記録紙は、2次転写ニップを通過すると、支持ローラの曲面に沿って進む中間転写ベルトから曲率分離して、定着装置に送り込まれる。
【0003】
かかる構成の画像形成装置においては、2次転写ニップを通過した記録紙が中間転写ベルトの表面から曲率分離せずに、中間転写ベルトとともに移動してジャムを発生させることがある。かかるジャムの発生を回避する対策としては、2次転写ニップの出口付近において、記録紙を機械的に強制分離するための分離爪をベルト表面に押し当てたり、記録紙を静電分離するための分離バイアス電極をベルト表面に近接させたりする技術が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、装置の小型化が進められる近年においては、2次転写ニップの出口付近に分離爪や分離バイアス電極を配設するためのスペースを確保することが困難になってきている。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分離爪や分離バイアス電極を設けることなく、ベルト部材からの記録紙の曲率分離不良の発生を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、無端状のベルト部材をループ内側に配設された複数の支持ローラに掛け回した状態で無端移動させるベルト駆動装置と、前記ベルト部材のおもて面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記ベルト部材における周方向の全域のうち、複数の前記支持ローラにおける何れか1つであるニップ裏支持ローラに対する掛け回し箇所に対してループ外側から当接して転写ニップを形成するニップ形成ローラと、前記転写ニップに向けて記録紙を送り込む送込手段と、を備え、前記ベルト部材のおもて面上のトナー像を前記転写ニップ内で記録紙に転写した後、転写ニップを通過した記録紙を、前記転写ニップの付近で前記ニップ裏支持ローラの周面に沿って湾曲している前記ベルト部材の曲率によって前記ベルト部材から分離する画像形成装置において、前記ニップ裏支持ローラとして、その直径D[mm]と、設計上の記録紙最小坪量W[g/m]とについて、「D[mm]≦0.23W[g/m]+5.1」という関係を具備するものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記ニップ裏支持ローラの回転軸線方向の両端をそれぞれ回転可能に支持する軸受けを、それぞれ保持部材によって移動不能に保持させたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、前記ニップ裏支持ローラを、自らの回転駆動によって前記ベルト部材を無端移動せしめる駆動ローラとして機能させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの発明においては、「支持ローラ直径D[mm]≦0.23×記録紙最小坪量W[g/m]+5.1」という関係を具備することで、本発明者らが後述する実験で明らかにしたように、転写ニップを通過した後の記録紙をベルト部材の表面から良好に曲率分離する。よって、分離爪や分離バイアス電極を設けることなく、ベルト部材からの記録紙の曲率分離不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタのK用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図3】同プリンタにおける転写ユニットを部分的に拡大して示す部分拡大構成図。
【図4】トナーの静電転写による記録紙の曲率分離促進作用を説明するための部分拡大構成図。
【図5】2次転写ローラの直径と最小用紙坪量と曲率分離性との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット1Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するためのプロセスユニット1Kを例にすると、図2に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置4K、現像装置5K等を備えている。これらが一体的に共通の支持体に支持された状態で、プリンタ本体に脱着されるようになっている。
【0010】
帯電装置4Kは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置5KによってKトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。
【0011】
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写工程を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。また、除電装置は、クリーニング後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色のプロセスユニット(1Y,M,C)においても、同様にして感光体(2Y,M,C)上に(Y,M,C)トナー像が形成されて、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。
【0012】
現像装置5Kは、図示しないKトナーを収容する縦長のホッパ部6Kと、現像部7Kとを有している。ホッパ部6K内には、図示しない駆動手段によって回転駆動されるアジテータ8K、これの鉛直方向下方で図示しない駆動手段によって回転駆動される撹拌パドル9K、これの鉛直方向下方で図示しない駆動手段によって回転駆動されるトナー供給ローラ10Kなどが配設されている。
【0013】
ホッパ部6K内のKトナーは、アジテータ8Kや撹拌パドル9Kの回転駆動によって撹拌されながら、自重によってトナー供給ローラ10Kに向けて移動する。このトナー供給ローラ10Kは、金属製の芯金と、これの表面に被覆された発泡樹脂等からなるローラ部とを有しており、ホッパ部6K内のKトナーをローラ部の表面に付着させながら回転する。
【0014】
現像装置5Kの現像部7K内には、感光体2K及びトナー供給ローラ10Kに当接しながら回転する現像ローラ11Kや、これの表面に先端を当接させる薄層化ブレード12Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のトナー供給ローラ10Kに付着したKトナーは、現像ローラ11Kとトナー供給ローラ10Kとの当接部で現像ローラ11Kの表面に供給される。供給されたKトナーは、現像ローラ11Kの回転に伴ってローラと薄層化ブレード12Kとの当接位置を通過する際に、ローラ表面上での層厚が規制される。そして、層厚規制後のKトナーは、現像ローラ11Kと感光体2Kとの当接部である現像領域において、感光体2K表面のK用の静電潜像に付着する。この付着により、K用の静電潜像がKトナー像に現像される。
【0015】
図2を用いてK用のプロセスユニットについて説明したが、Y,M,C用のプロセスユニット1Y,M,Cにおいても、同様のプロセスにより、感光体2Y,M,C表面にY,M,Cトナー像が形成される。
【0016】
先に示した図1において、プロセスユニット1Y,M,C,Kの鉛直方向上方には、光書込装置70が配設されている。潜像書込装置たる光書込装置70は、画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光Lにより、プロセスユニット1Y,M,C,Kにおける感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込装置70は、光源から発したレーザー光(L)を、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0017】
プロセスユニット1Y,M,C,Kの鉛直方向下方には、無端状の中間転写ベルト16を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写手段たる転写ユニット15は、中間転写ベルト16の他に、テンションローラ17、2次転写対向ローラ18、4つの1次転写ローラ19Y,M,C,K、2次転写ローラ20、ベルトクリーニング装置21、クリーニングバックアップローラ22などを備えている。
【0018】
中間転写ベルト16は、そのループ内側に配設されたテンションローラ17、2次転写対向ローラ18、クリーニングバックアップローラ22及び4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される2次転写対向ローラ18の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
【0019】
4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト16を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト16のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0020】
1次転写ローラ19Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されており、これにより、感光体2Y,M,C,Kの静電潜像と、1次転写ローラ19Y,M,C,Kとの間に1次転写電界が形成される。なお、1次転写ローラ19Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0021】
Y用のプロセスユニット1Yの感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴って上述のY用の1次転写ニップに進入すると、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト16上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト16は、その無端移動に伴ってM,C,K用の1次転写ニップを通過する際に、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト16上には4色トナー像が形成される。
【0022】
中間転写ベルト16の周方向における全域のうち、2次転写対向ローラ18に対する掛け回し箇所には、2次転写ローラ20がベルトループ外側から当接して2次転写ニップを形成している。2次転写ローラ20には、図示しない転写バイアス電源によって2次転写バイアスが印加される。この印加により、2次転写ローラ20と、アース接続されている2次転写対向ローラ18との間には、2次転写電界が形成される。
【0023】
転写ユニット15の鉛直方向下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット30がプリンタの筐体に対してスライド着脱可能に配設されている。この給紙カセット30は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ30aを当接させており、これを所定のタイミングで図中反時計回り方向に回転させることで、その記録紙Pを給紙路31に向けて送り出す。
【0024】
給紙路31の末端付近には、レジストローラ対32が配設されている。このレジストローラ対32は、給紙カセット30から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを上述の2次転写ニップ内で中間転写ベルト16上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。
【0025】
2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト16上の4色トナー像は、2次転写電界やニップ圧の影響を受けて記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、2次転写ローラ20や中間転写ベルト16から曲率分離する。そして、転写後搬送路33を経由して、後述する定着装置34に送り込まれる。
【0026】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト16には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト16のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置21によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト16のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ22は、ベルトクリーニング装置21によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。なお、以下、ベルトクリーニング装置21によって中間転写ベルト16表面から除去されたトナーを、ベルト廃トナーという。
【0027】
定着装置34は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ34aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ34bとによって定着ニップを形成している。定着装置34内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ34aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0028】
定着装置34内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路35を経由した後、排紙路36と反転前搬送路41との分岐点にさしかかる。定着後搬送路35の側方には、回動軸42aを中心にして回動駆動される切替爪42が配設されており、その回動によって定着後搬送路35の末端付近を閉鎖したり開放したりする。定着装置34から記録紙Pが送り出されるタイミングでは、切替爪42が図中実線で示す回動位置で停止して、定着後搬送路35の末端付近を開放している。よって、記録紙Pが定着後搬送路35から排紙路36内に進入して、排紙ローラ対37のローラ間に挟み込まれる。
【0029】
図示しないテンキー等からなる操作部に対する入力操作や、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる制御信号などにより、片面プリントモードが設定されている場合には、排紙ローラ対37に挟み込まれた記録紙Pがそのまま機外へと排出される。そして、筐体の上カバー50の外面部であるシート載置部にスタックされる。
【0030】
一方、両面プリントモードに設定されている場合には、先端側を排紙ローラ対37に挟み込まれながら排紙路36内を搬送される記録紙Pの後端側が定着後搬送路35を通り抜けると、切替爪42が図中一点鎖線の位置まで回動して、定着後搬送路35の末端付近が閉鎖される。これとほぼ同時に、排紙ローラ対37が逆回転を開始する。すると、記録紙Pは、今度は後端側を先頭に向けながら搬送されて、反転前搬送路41内に進入する。
【0031】
図1において、本プリンタの一側端部は、揺動軸40aを中心に揺動することで筐体の本体に対して開閉可能な反転ユニット40になっている。排紙ローラ対37が逆回転すると記録紙Pがこの反転ユニット40の反転前搬送路41内に進入して、鉛直方向上側から下側に向けて搬送される。そして、反転搬送ローラ対43のローラ間を経由した後、半円状に湾曲している反転搬送路44内に進入する。更に、その湾曲形状に沿って搬送されるのに伴って上下面が反転せしめられながら、鉛直方向上側から下側に向けての進行方向も反転して、鉛直方向下側から上側に向けて搬送される。その後、上述した給紙路31内を経て、2次転写ニップに再進入する。そして、もう一方の面にもフルカラー画像が一括2次転写された後、転写後搬送路33、定着装置34、定着後搬送路35、排紙路36、排紙ローラ対37を順次経由して、機外へと排出される。
【0032】
反転ユニット40は、筺体の本体に対して揺動可能な外部カバー45と、これに対して更に揺動可能な第2揺動体46とを有している。具体的には、反転ユニット40の外部カバー45は、プリンタ本体の筺体に設けられた揺動軸40aを中心にして揺動するように支持されている。この揺動により、外部カバー45は、その内部に保持している第2揺動体46とともに筺体に対して開閉する。図中点線で示すように、外部カバー45がその内部の第2揺動体46とともに開かれると、反転ユニット40とプリンタ本体側との間に形成されていた給紙路31、2次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36が縦に2分されて、外部に露出する。これにより、給紙路31、2次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0033】
また、第2揺動体46は、外部カバー45が開かれた状態で、外部カバー45に設けられた図示しない揺動軸を中心にして揺動するように外部カバー45に支持されている。この揺動により、第2揺動体46が外部カバー45に対して開かれると、反転前搬送路41や反転搬送路44が縦に2分されて外部に露出する。これにより、反転前搬送路41内や反転搬送路44内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0034】
プリンタの筺体の上カバー50は、筺体の開閉扉になっている。そして、図中矢印で示すように、軸部材51を中心にして揺動自在に支持されており、図中反時計回り方向に所定角度回転することで、筺体に対して開いた状態になる。そして、筺体の保守点検開口を開く。
【0035】
プリンタ内部の鉛直方向において、転写ユニット15と給紙カセット30との間には、トナー搬送装置100が配設されている。このトナー搬送装置100は、各色のプロセスユニット1Y,M,C,Kや、中間転写ベルト21から回収されたトナーを、自らの回収トナー容器まで搬送するものである。
かかる構成の本プリンタにおいては、2次転写ニップを通過した記録紙Pが中間転写ベルト16の表面から曲率分離せずに、中間転写ベルト16とともに移動してジャムを発生させることがある。かかるジャムの発生を回避する対策としては、図3に示すように、2次転写ニップの出口付近において、記録紙Pを機械的に強制分離するための分離爪23をベルト表面に押し当てることが考えられる。また、記録紙Pを静電分離するための分離バイアス電極24をベルト表面に近接させてもよい。
【0036】
しかしながら、装置の小型化が進められる近年においては、2次転写ニップの出口付近に分離爪23や分離バイアス電極24を配設するためのスペースを確保することが困難になってきている。
【0037】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用意した。このプリンタ試験機において、中間転写ベルト16の幅や、各感光体の軸線方向の長さは約230[mm]である。このプリンタ試験機を用いて、A4サイズの記録紙を連続テスト通紙する試験を行った。連続テスト通紙は、2次転写ローラ20に2次転写バイアスを印加した状態で、2次転写ニップに対して10枚の記録紙を連続して通紙する試験である。連続テスト通紙において、中間転写ベルト16には、トナー像を形成していないので、記録紙はトナー像が2次転写されることなく、2次転写ニップを通過する。記録紙にトナー像を2次転写せずに、2次転写ニップを通過させるだけにしたのは、次に説明する理由からである。即ち、中間転写ベルト16上にトナー像が形成されている場合、そのトナー像を構成するトナーは未定着で粉末状のものであるので、ベルト表面と記録紙との間に介在すると、記録紙をベルト表面から離脱させ易くなる。また、図4に示すように、トナー像がベルト表面から記録紙Pに2次転写される際には、トナーがベルト表面側から2次転写ローラ20側に静電移動することで、記録紙Pに対してベルト表面から離脱する方向の力を付与する。これらの結果、ベルト表面にトナー像が存在する場合には、存在しない場合に比べて、記録紙Pがベルト表面から曲率分離し易くなる。よって、トナー像を形成しないで記録紙Pを2次転写ニップに通すだけの条件が、記録紙Pの曲率分離不良を最も発生させ易くなる条件となる。このため、中間転写ベルト16にトナー像を形成しない連続テスト通紙を行うことにした。
【0038】
記録紙Pとしては、A4サイズのものを用い、それを横長の姿勢(短手方向を搬送方向に沿わせる姿勢)で2次転写ニップに通した。2次転写ニップの圧力については、20、30、40、50[N]の4通りに設定し、それぞれの圧力条件で連続テスト通紙を行った。また、プロセス線速については、60、120、180[mm/sec]の3通りに設定し、それぞれの線速条件で連続テスト通紙を行った。また、中間転写ベルト16としては、次の表1に示すように、材質や厚みの異なる4種類のものを使用し、それぞれのベルトで連続テスト通紙を行った。
【表1】

【0039】
A4サイズの記録紙Pとしては、NBSリコー社製の複写印刷用紙45kY目(54g/m)、NBSリコー社製の複写印刷用紙55kY目(65g/m)、及びNBSリコー社製のマイペーパーEP(70g/m)の3種類を用いた。それぞれの紙種で連続テスト通紙を行った。
【0040】
互いに直径の異なる7つの2次転写対向ローラ18を順次付け替えながら、それぞれの2次転写対向ローラ18にて連続テスト通紙を行った。2次転写対向ローラ18の直径は、16、18、20、21、22、23、24[mm]の7通りである。
【0041】
4通りの2次転写ニップ圧×3通りのプロセス線速×4通りのベルト種類×3通りの紙種×7通りのローラ径=1008通りの条件で、それぞれ連続テスト通紙を行った。連続テスト通紙1回あたりの通紙量は、上述したように10枚である。そして、10枚中、1枚でも曲率分離不良が発生した場合には、×(分離不良発生)、1枚も曲率分離不良が発生しなかった場合には○(分離不良なし)として評価した。
【0042】
これら1008通りの連続テスト通紙の結果により、記録紙のベルトからの曲率分離性は、プロセス線速、2次転写ニップ圧、ベルト種類にはそれぞれ影響されないことがわかった。プロセス線速を変化させたり、2次転写ニップ圧を変化させたり、ベルト種類を変えたりしても、曲率分離性は変わらなかったのである。なお、プロセス線速が曲率分離性に影響を与えなかったのは、60〜180[mm/sec]の範囲では、記録紙が2次転写ニップを通過する際に、0.1秒程度は記録紙に対して静電的な力が働くからだと考えられる。
【0043】
一方、ニップ裏支持ローラたる2次転写対向ローラ20の直径や、記録紙の種類は、曲率分離性に大きな影響を及ぼした。具体的には、2次転写対向ローラ20の直径を大きくするほど、曲率分離性を悪化させた。また、記録紙の坪量が小さくするほど、曲率分離性を悪化させた。2次転写対向ローラ20の直径と、記録紙の坪量と、曲率分離性との関係を図5に示す。図5におけるプロット点のうち、曲率分離性の結果が○となったプロット点だけを抽出して回帰直線式を計算したところ、直径D=0.23×坪量+5.1という関数が得られた。この関数で示される直線、又は直線よりも下側の領域の条件であれば、曲率分離不良が発生しないことになる。
【0044】
記録紙はユーザーによって給紙カセットにセットされるものであり、どのような種類の記録紙を用いるのかはユーザーの裁量によって決定される。但し、記録紙最小坪量W[g/m]をユーザーに指定することは可能である。例えば、「坪量○○g/m以上の用紙をご使用下さい。」、「このプリンタが対応できる用紙坪量の最小値は○○○○g/mです。」などの表記を装置の取り扱い説明書などにすることで、記録紙の坪量の最小値である記録紙最小坪量Wをユーザーに指定するのである。
【0045】
そこで、本プリンタにおいては、装置の取り扱い説明書に上述のような表記をすることで、ユーザーに対して記録紙最小坪量W[g/m]を指定している。そして、2次転写体躯ローラ20として、「2次転写対向ローラ20の直径D[mm]≦0.23×記録紙最小坪量W[g/m]+5.1」という関係を具備するものを搭載している。
【0046】
かかる構成においては、本発明者らが連続テスト通紙の実験で明らかにしたように、2次転写ニップを通過した後の記録紙を中間転写ベルト16の表面から良好に曲率分離する。よって、分離爪や分離バイアス電極を設けることなく、中間転写ベルト16からの記録紙の曲率分離不良の発生を抑えることができる。
【0047】
なお、記録紙Pの腰の強さは、記録紙Pの幅(搬送方向に直交する方向の寸法)には影響を受けないので、中間転写ベルト16からの記録紙Pの曲率分離性は、記録紙Pの幅の違いの影響を受けないと考えられる。
【0048】
本プリンタにおいては、2次転写対向ローラ20の回転軸線方向の両端をそれぞれ回転可能に支持する軸受けを、それぞれ装置本体の側板によって移動不能に保持させている。つまり、2次転写対向ローラ20を移動不能に構成している。これにより、中間転写ベルト16のテンションにかかわらず、2次転写ニップを特定の位置に存在させることで、テンションの変動による2次転写ニップ位置の変動の発生を回避する。よって、中間転写ベルト16のテンションの変動によって2次転写ニップ位置を変化させてしまうことによる曲率分離性の変動の発生を回避することができる。
【0049】
また、本プリンタにおいては、2次転写対向ローラ20を、自らの回転駆動によって中間転写ベルト16を無端移動せしめる駆動ローラとして機能させている。かかる構成では、圧力のかかる2次転写ニップで中間転写ベルト16を2次転写対向ローラ20に押し付けることで、駆動ローラとして機能する2次転写対向ローラ20表面上でのベルトスリップの発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0050】
16:中間転写ベルト(ベルト部材)
17:テンションローラ(支持ローラ)
18:2次転写対向ローラ(ニップ裏支持ローラ、駆動ローラ)
20:2次転写ローラ(ニップ形成ローラ)
32:レジストローラ対(送込手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2007−140041号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト部材をループ内側に配設された複数の支持ローラに掛け回した状態で無端移動させるベルト駆動装置と、前記ベルト部材のおもて面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記ベルト部材における周方向の全域のうち、複数の前記支持ローラにおける何れか1つであるニップ裏支持ローラに対する掛け回し箇所に対してループ外側から当接して転写ニップを形成するニップ形成ローラと、前記転写ニップに向けて記録紙を送り込む送込手段と、
を備え、前記ベルト部材のおもて面上のトナー像を前記転写ニップ内で記録紙に転写した後、転写ニップを通過した記録紙を、前記転写ニップの付近で前記ニップ裏支持ローラの周面に沿って湾曲している前記ベルト部材の曲率によって前記ベルト部材から分離する画像形成装置において、
前記ニップ裏支持ローラとして、その直径D[mm]と、設計上の記録紙最小坪量W[g/m]とについて、「D[mm]≦0.23W[g/m]+5.1」という関係を具備するものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記ニップ裏支持ローラの回転軸線方向の両端をそれぞれ回転可能に支持する軸受けを、それぞれ保持部材によって移動不能に保持させたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
前記ニップ裏支持ローラを、自らの回転駆動によって前記ベルト部材を無端移動せしめる駆動ローラとして機能させたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−189921(P2012−189921A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55052(P2011−55052)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】