説明

画像形成装置

【課題】簡易な構成で、より安定、より良好な転写性能を得ることのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、転写部材5が、弾性部材51と、ベルト体7と弾性部材51との間に挟持されてベルト体7に面で接触するシート部材52と、を有し、ベルト体7の移動方向において、像担持体1とベルト体7との接触領域Aの下流側端部は、シート部材52とベルト体7との接触領域B内に位置する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電気録方式を利用して像担持体上に形成したトナー像をベルト体上又はベルト体に担持された転写材上に転写する工程を有するレーザービームプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いる画像形成装置では、像担持体としての電子写真感光体(感光体)上に現像剤像であるトナー像を形成する。そして、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電界を転写手段に与え、転写ベルトに担持されている転写材又は中間転写ベルトの表面に、感光体に担持されているトナー像を静電的に転移させる転写工程が行われる。
【0003】
そのため、転写ベルトや中間転写ベルトなどの移動可能なベルト体を備えた画像形成装置では、転写手段に対して転写工程に必要な電圧を印加する電圧印加手段が設けられる。この一例として、ベルト体を挟んで感光体の対向位置(ベルト体の裏面側)に、電圧印加手段としての高圧電源に接続された転写ローラなどの接触転写部材を、転写手段として配置した構成がある。
【0004】
ところが、転写ローラを用いた画像形成装置では、ベルト体と転写ローラとの接触領域(所謂、転写ニップ)が転写ローラの撓みの影響などにより長手方向で不均一となることがある。従って、転写工程に必要な電流がベルト体と転写ローラとの接触領域の長手方向で不均一となり、転写不良などの画像不良を引き起こす場合がある。又、転写ニップが狭いため、ベルト体と感光体との剥離部で剥離放電が発生し、画像不良を引き起こす場合がある。
【0005】
上述のような問題に対する対策として、転写手段としてブラシ状の接触転写部材を用いる構成が提案されている。この場合、ブラシを構成する各々の繊維が独立してベルト体と接触しているために、ベルト体との接触領域の当接状態を長手方向で均一にすることができ、上述の如き転写不良を抑制するのに有利である(特許文献1)。
【0006】
又、転写手段として、フィルムを用いた構成が提案されている。より具体的には、フィルムが、フィルムの支持体と感光体との間で変位可能であり、電圧の供給、非供給による静電吸着力の有無によって転写材と接離するものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05―127546号公報
【特許文献2】特開平09−120218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のブラシを転写手段として用いた画像形成装置では、長期使用した場合に、ブラシの先端部がつぶれて変形を起こし、ベルト体との当接が不均一となり、転写不良を発生させる場合がある。
【0009】
具体的には、ブラシをベルト体に押圧することで、ブラシを構成する各々の繊維は倒れることになる。このような状態で使用された場合、ブラシの繊維に倒れた状態の癖が付き変形する。これにより、ブラシとベルト体との当接が不均一になり、転写工程に必要となる転写電流値が不均一になるため、転写不良を招く場合がある。
【0010】
又、ベルト体の移動方向において、ベルト体と感光体との接触領域内に、ベルト体と転写部材との接触領域の下流側端部(接触終了端)がある場合には、次のような不具合が発生することがあることが分かった。即ち、ベルト体の感光体からの剥離部では、急激な電位変化により剥離放電が発生し、ベルト体上などのトナー像を乱してしまうことがある。これを防止するためには、除電部材を設けることが望まれ、装置の大型化、コストアップを招くことがある。
【0011】
一方、従来のフィルムを転写手段として用いた画像形成装置では、フィルムのバックアップ部材がないため、フィルムの波打ちなどにより転写不良が生じる場合がある。
【0012】
具体的には、フィルムの静電吸着力のみによりベルト体に接触させる場合は、フィルムの波打ちなどにより、フィルムとベルト体との長手方向の接触の均一性が保てないことがある。そのため、接触領域の狭い部分若しくはフィルムとベルト体との接触が不十分な部分においては、十分な転写電流が確保できないことがある。従って、転写電流不足により、縦スジ状の転写不良を引き起こす場合がある。
【0013】
又、フィルムの静電吸着を積極的に用いる構成であるため、フィルムとベルト体との摩擦力が大きくなり、ベルト体の駆動トルクアップにより駆動モータなどへの負荷が大きくなることがある。
【0014】
具体的には、実際にベルト体とフィルムとの間に働く摩擦力は、ベルト体とフィルムとの摩擦係数により決まる力と、フィルムとベルト体とのインピーダンスにより決まる静電吸着力となっている。そのため、転写電圧の供給、非供給によりフィルムの接離を行う場合、フィルムの静電吸着力が大きくなり、ベルト体の駆動トルクの上昇を引き起こすことがある。
【0015】
尚、ベルト体が中間転写ベルト、転写ベルトのいずれの場合でも上述のような課題が同様にある。ベルト体が中間転写ベルトである場合には中間転写ベルト上へのトナー像の転写工程に関して、又ベルト体が転写ベルトである場合には転写ベルトに担持された紙などの転写材へのトナー像の転写工程に関して同様に上述のような現象が発生することがある。
【0016】
従って、本発明の目的は、簡易な構成で、より安定、より良好な転写性能を得ることのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体と接触して移動可能なベルト体と、前記ベルト体を挟んで前記像担持体と対向する位置に前記ベルト体に接触して配置され、前記像担持体上のトナー像を前記ベルト体又は前記ベルト体に担持された転写材に転写させる転写部材と、前記転写部材に前記転写のための電圧を印加する電圧印加手段と、を有する画像形成装置において、前記転写部材は、弾性部材と、前記ベルト体と前記弾性部材との間に挟持されて前記ベルト体に面で接触するシート部材と、を有し、前記ベルト体の移動方向において、前記像担持体と前記ベルト体との接触領域の下流側端部は、前記シート部材と前記ベルト体との接触領域内に位置することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成で、より安定、より良好な転写性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略断面構成図である。
【図2】本発明に従って構成された1次転写部材の一例の概略斜視図である。
【図3】本発明に従って構成された1次転写部材と感光ドラムと中間転写ベルトとの位置関係を説明するための1次転写部の拡大図である。
【図4】比較例1を説明するための1次転写部の拡大図である。
【図5】比較例2を説明するための1次転写部の拡大図である。
【図6】比較例3を説明するための模式図である。
【図7】本発明に従って構成された1次転写部材の他の例を説明するための1次転写部の拡大図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の他の実施例の概略断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0021】
実施例1
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略断面構成を示す。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いたレーザービームプリンタである。又、本実施例の画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色成分に分解された画像情報に従って形成した各色のトナー像を、中間転写体上に1次転写して一旦重ねた後に転写材に2次転写する、中間転写方式を採用している。先ず、本実施例の画像形成装置の全体構成及び動作を説明する。
【0022】
画像形成装置100は、複数の画像形成部としてそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成するための4個の画像形成部(ステーション)、即ち、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdを有する。本実施例では、各画像形成部Sa〜Sdの構成及び動作は、それぞれが形成するトナー像の色を除いて実質的に共通である部分が多い。従って、以下の説明において、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
【0023】
画像形成部Sは、像担持体としてのドラム型の感光体、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、駆動手段(図示せず)によって図示矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1はOPC(有機光導電体)感光層を有する。画像形成部Sは、感光ドラム1の周囲に、感光ドラム1を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ2、露光手段としての露光装置3、現像手段としての現像装置4を有する。又、画像形成部Sは、感光ドラム1の周囲に、1次転写手段としての1次転写部材(転写部材)5、クリーニング手段としてのクリーニング装置6を有する。
【0024】
クリーニング装置6は、感光ドラム1上のトナーを掻き取ってクリーニングするファーブラシ、ブレードなどのクリーニング部材と、クリーニング部材によって感光ドラム1上から除去されたトナーなどを回収する回収トナー容器とを有する。
【0025】
現像装置4は、本実施例では、反転現像方式により静電像を現像する。即ち、現像装置4は、感光ドラム1の帯電極性と同極性である正規の極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、帯電処理された後に露光によって電荷が減衰した感光ドラム1上の部分(明部)に付着させて、感光ドラム1上にトナー像を形成する。又、現像装置4は、本実施例では、現像剤として非磁性1成分現像剤、即ち、トナーを用いる。そして、現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラ41上に、現像剤規制部材としての現像剤塗布ブレード42を用いてトナーを担持して感光ドラム1との対向部(現像部)まで搬送するようになっている。
【0026】
又、露光装置3は、レーザー光を多面鏡によって走査させるレーザースキャナユニット、又はLEDアレイなどで構成することができるが、本実施例ではレーザースキャナユニットを用いた。露光装置3は、画像信号に基づいて変調された走査ビーム18を感光ドラム1上に照射する。
【0027】
本実施例では、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びクリーニング装置6とは、一体的にカートリッジ化されて画像形成装置本体(装置本体)に対して着脱可能なプロセスカートリッジ19を構成している。尚、プロセスカートリッジとは、電子写真感光体と、電子写真感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段、現像手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つと、を一体的にカートリッジ化して画像形成装置の本体に対して着脱可能としたものである。
【0028】
一方、4つの感光ドラム1a〜1dの全てに対し当接するように、中間転写体としての移動可能な無端状のベルト体で構成された中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7と各感光ドラム1a〜1dとの接触領域(1次転写ニップ,1次転写部)n1a〜n1dにおいて、各感光ドラム1a〜1dから中間転写ベルト7へのトナーの転写(1次転写)が行われる。中間転写ベルト7は、その張架部材として2次転写対向ローラ71、駆動ローラ72、テンションローラ73の3本のローラにより支持されており、適当なテンションが維持されるようになっている。駆動ローラ72を回転駆動されることにより、中間転写ベルト7は、各1次転写部n1a〜n1dにおいて感光ドラム1に対して順方向に略同速度で移動する。即ち、中間転写ベルト7は、図示矢印R2方向(時計回り)に回転する。
【0029】
中間転写ベルト7を挟んで各感光ドラム1a〜1dと対向する位置に、各感光ドラム1a〜1dに対応する1次転写手段としての1次転写部材5a〜5dが配置されている。詳しくは後述するが、1次転写部材5a〜5dは、中間転写ベルト7のトナー像を担持する面とは反対側の面(裏面)に接触して配置される。
【0030】
又、中間転写ベルト7を挟んで2次転写対向ローラ71と対向する位置には、2次転写手段としての2次転写部材である2次転写ローラ8が、中間転写ベルト7に当接するように配置されている。2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7のトナー像を担持する面に接触する。中間転写ベルト7と2次転写ローラ8との接触領域(2次転写ニップ,2次転写部)n2において、中間転写ベルト7から転写材Pへのトナー像の転写(2次転写)が行われる。
【0031】
又、帯電ローラ2は、帯電ローラ2への電圧印加手段である帯電電源14に接続されている。現像装置4の現像スリーブ41は、現像スリーブ41への電圧印加手段である現像電源15に接続されている。1次転写部材5は、1次転写部材5への電圧印加手段である1次転写電源16に接続されている。そして、2次転写ローラ8は、2次転写ローラ8への電圧印加手段である2次転写電源17に接続されている。
【0032】
次に、フルカラー画像形成時を例として、画像形成動作について説明する。画像形成動作がスタートすると、感光ドラム1a〜1d、中間転写ベルト6などは、所定のプロセススピードで、それぞれ所定の方向に回転を始める。
【0033】
感光ドラム1は、帯電ローラ2に帯電電源14から帯電バイアス電圧が印加されることよって、一様に所定の極性(本実施例では負極性)に帯電される。続いて、帯電した感光ドラム1上には、露光装置3からの走査ビーム18によって、画像情報に従った静電像(潜像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電像は、感光ドラム1が回転することによって、現像装置4の現像ローラ41との対向部(現像部)に到達する。
【0034】
現像装置4内のトナーは、現像剤塗布ブレード42によって正規の帯電極性(本実施例では負極性)に帯電されて、現像ローラ41上に塗布される。そして、現像ローラ41に現像電源15より現像バイアス電圧が印加されることによって、感光ドラム1上の静電像は負極性のトナーによって可視化され、感光ドラム1上にはトナー像が形成される。
【0035】
次いで、感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写ニップn1において、中間転写ベルト7上に1次転写される。この時、1次転写部材5には、1次転写電源16よりトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)のDCバイアス電圧が印加される。
【0036】
1次転写工程後に、感光ドラム1上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、クリーニング装置6によって感光ドラム1の表面から除去され、回収される。
【0037】
以上の帯電、露光、現像、1次転写の各工程が、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdにおいて行われることにより、中間転写ベルト7上に各色のトナー像が順次に重ね合わせて転写され、中間転写ベルト7上に多重画像が形成される。この時、各色の1次転写位置間の距離に応じて、各色毎に一定のタイミングでコントローラ(図示せず)からの書き出し信号を遅らせながら、各感光ドラム1a〜1d上に露光による静電像を形成して、この静電像を現像して1次転写する。
【0038】
その後、露光による静電像の形成に合わせて、転写材カセット11に積載されている転写材Pは、転写材供給ローラ12によりピックアップされ、搬送ローラ(図示せず)によりレジストローラ13にまで搬送される。そして、転写材Pは、中間転写ベルト7上のトナー像に同期して、レジストローラ13によって2次転写ニップn2へ搬送される。この時、2次転写ローラ8には、2次転写電源によりトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)のDCバイアス電圧が印加される。これにより、中間転写ベルト7上に担持された4色の多重トナー像は、転写材P上に一括して2次転写される。
【0039】
2次転写工程後に、中間転写ベルト7上に残留したトナー(2次転写残トナー)、及び転写材Pが搬送されることによって発生した紙粉などは、ベルトクリーニング手段74により、中間転写ベルト7の表面から除去され、回収される。本実施例では、ベルトクリーニング手段74は、中間転写ベルト7に当接して配置された、クリーニング部材としてのウレタンゴムなどで形成された弾性を有するクリーニングブレードによって、中間転写ベルト7上の付着物を掻き取る。
【0040】
トナー像が転写された転写材Pは、定着手段としての定着装置10へと搬送され、ここでその上のトナー像が溶融混合されて定着された後、フルカラーの画像形成物(プリント、コピー)として画像形成装置100の外部へと排出される。
【0041】
画像形成装置100は、所望の単一又は複数(全てではない)の画像形成部Sにおいてのみ画像形成を行うことで、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできる。
【0042】
尚、本実施例では、2次転写ローラ8としては、直径8mmのニッケルメッキ鋼棒に、抵抗値を108Ω、厚みを5mmに調整したNBR(ニトリル・ブタジエンゴム)の発泡スポンジ体を覆設した、直径18mmのローラを用いた。又、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に対して、5〜15g/cm程度の線圧で当接させ、且つ、中間転写ベルト7の移動方向に対して順方向に略等速度で回転するように配置した。
【0043】
又、中間転写ベルト7の材料としては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン)、NBR、ウレタン、シリコーンゴムなどのゴムを好適に用いることができる。又は、中間転写ベルト7の材料としては、次のような樹脂を好適に用いることができる。PI(ポリイミド)、PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC/PET、ETFE/PCなどである。本実施例では、中間転写ベルト7としては、厚さが100μm、体積抵抗率が1010ΩcmのPVDFで形成された無端ベルト状のフィルムを用いた。
【0044】
中間転写ベルト7の張架部材としての駆動ローラ72としては、アルミニウム製の芯金に、カーボンを導電剤として分散した抵抗値が104Ω、肉厚が1.0mmのEPDMゴムを被覆した、直径25mmのローラを用いた。中間転写ベルト7の張架部材としてのテンションローラ73としては、直径25mmのアルミニウム製の金属棒を用いた。そして、テンションローラ73の長手方向両端部を付勢することによって中間転写ベルト7に与えるテンションは、片側19.6N、総圧39.2Nとした。又、中間転写ベルト7の張架部材としての2次転写対向ローラ71としては、アルミニウム製の芯金に、カーボンを導電剤として分散した抵抗値が104Ω、肉厚が1.5mmのEPDMゴムを被覆した、直径25mmのローラを用いた。
【0045】
[1次転写部材]
次に、本実施例の画像形成装置100における1次転写部材5について詳しく説明する。本実施例では、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdで1次転写部材5は同一の構成を有する。
【0046】
前述したように、従来のブラシを1次転写手段として用いた画像形成装置では、長期使用した場合に、中間転写ベルトとの当接が不均一となり、転写不良を発生させる場合がある。
【0047】
又、中間転写ベルト7の移動方向において、中間転写ベルト7と感光ドラム1との接触領域内に、中間転写ベルト7と1次転写部材5との接触領域の下流側端部(接触終了端)がある場合には、次のような不具合が発生することがあることが分かった。即ち、中間転写ベルト7の感光ドラム1からの剥離部では、急激な電位変化により剥離放電が発生し、中間転写ベルト7上のトナー像を乱してしまうことがある。これを防止するためには、除電部材を設けることが望まれ、装置の大型化、コストアップを招くことがある。
【0048】
一方、従来のフィルムを転写手段として用いた画像形成装置では、フィルムのバックアップ部材がないため、フィルムの波打ちなどにより、縦スジ状の転写不良を引き起こす場合がある。又、フィルムの静電吸着を積極的に用いる構成であるため、フィルムとベルト体との摩擦力が大きくなり、ベルト体の駆動トルクアップにより駆動モータなどへの負荷が大きくなることがある。
【0049】
従って、本実施例の主要な目的は、簡易な構成で、より安定、より良好な転写性能を得ることである。本実施例のより詳細な目的の1つは、簡易な構成により中間転写ベルト7と1次転写部材5の均一な接触を維持して良好な転写性を確保することである。又、本実施例のより詳細な目的の他の1つは、中間転写ベルト7の裏面に除電部材を用いることなく、感光ドラム1と中間転写ベルト7との間で生じる剥離放電の発生を防止することである。
【0050】
A.構成
図2は、本実施例の1次転写部材5の概略分解斜視図である。又、図3は、本実施例における1次転写部材5、中間転写ベルト7及び感光ドラム1の位置関係を示す1次転写部N1の拡大図である。
【0051】
本実施例では、1次転写部材5は、弾性部材51と、中間転写ベルト7と弾性部材51との間に挟持されて中間転写ベルト7に面で接触するシート部材52と、を有する。そして、中間転写ベルト7の移動方向において、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aの下流側端部は、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域B内に位置する。即ち、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの下流側端部は、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aの下流側端部上又はそれより下流側(好ましくは下流側)に位置する。
【0052】
又、本実施例では、中間転写ベルト7の移動方向において、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aの上流側端部は、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの内側(接触領域内)に位置する。即ち、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの上流側端部は、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aの上流側端部上又はそれより上流側(典型的には上流側)に位置する。
【0053】
更に、本実施例では、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの長さは、弾性部材51の長さ(幅)D以上である。
【0054】
更に説明すると、本実施例では、1次転写部材5は、弾性部材51とシート部材52とを有し、シート部材52は、中間転写ベルト7と弾性部材51との間に挟持されている。そして、本実施例では、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bは、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより長く、弾性部材51の幅D以上である。
【0055】
尚、弾性部材51は、断面略矩形の略直方体形状のパッドとして形成される。又、シート部材52は、弾性部材51と中間転写ベルト7との間に挟持されて支持される板状フィルムとして形成される。
【0056】
より具体的には、本実施例では、1次転写部材5の弾性部材51として、ウレタン製の発泡スポンジ状の弾性体(発泡スポンジ体)で形成された、肉厚(t1)2mm、幅(w1:上記Dに相当)5mm、長手長さ(l1)230mmの略直方体形状のものを用いた。上記の幅(w1)は中間転写ベルト7の移動方向に沿う方向の長さであり、長手長さ(l1)は中間転写ベルト7の移動方向と交差(本実施例では略直交)する方向に沿う長さである。又、本実施例では、弾性部材51の硬度は、アスカーC(500gf)で30°であった。又、本実施例では、弾性部材51の抵抗値は、500V印加時に1×106Ωであった。
【0057】
尚、本実施例では、弾性部材51として発泡ウレタンを用いたが、エピクロルヒドリンゴム、NBR、EPDMなどのゴム材料を用いても良い。又、弾性部材51の硬度は、アスカーC(500gf)で40°以下であることが好ましい。
【0058】
一方、1次転写部材5のシート部材52としては、厚み(t2)50μm、長手長さ(l2)232mmの酢酸ビニル製のシート(フィルム)を用いた。シート部材52の体積抵抗率は、50V印加時に1×106Ωcmであった。上記の長手長さ(l2)は、弾性部材51の長手長さ(l1)に沿う方向の長さである。
【0059】
尚、本実施例では、シート部材52として酢酸ビニルシートを用いたが、PC、PVDF、PET、PI、PE(ポリエチレン)、PAなどのシートを用いてもよい。
【0060】
より詳細には、本実施例では、中間転写ベルト7の移動方向における、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aを3mm、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bを6mm、弾性部材51の幅D(上記w1に相当)を5mmとした。又、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52は、接触領域Aの上流側端部より0.5mm上流側(図3中の領域E)から中間転写ベルト7に接触する。又、中間転写ベルト7の移動方向において、接触領域Aの下流側端部より3mm下流側(図3中の領域F)に、シート部材52の下流側端部がある。このシート部材52の下流側端部は、中間転写ベルト7と接触している。尚、中間転写ベルト7の移動方向上流側のシート部材52の端部の所定長さの部分は、弾性部材51の側面に沿って屈曲されている。
【0061】
又、本実施例では、弾性部材51には、1次転写電源16が接続され、画像形成動作中は、代表値として500Vの電圧が印加される。
【0062】
更に、本実施例では、弾性部材51は、付勢手段としての加圧バネ(図示せず)により、感光ドラム1側に(即ち、中間転写ベルト7に向けて)加圧(押圧)される。従って、シート部材52は、弾性部材51により中間転写ベルト7に向けて押圧される。
【0063】
B.作用
1次転写部材5を、弾性部材51とシート部材52とを有する構成とすることで、シート部材52を弾性部材51により中間転写ベルト7の裏面に押圧することができる。従って、シート部材52を確実に中間転写ベルト7の裏面に接触させることができる。これにより、シート部材52と中間転写ベルト7との摺動性が良化し、1次転写部材5がスティックスリップすることを防止することができる。そして、中間転写ベルト7の駆動トルクの上昇を抑制することができる。又、シート部材52と中間転写ベルト7との均一な接触性を確保することができるため、1次転写部材5と中間転写ベルト7との長手方向での接触ムラに起因する縦スジ状の転写不良を防止することができる。
【0064】
又、中間転写ベルト7と感光ドラム1とで形成される接触領域Aの内側でシート部材52が中間転写ベルト7と接触すると共に、該接触領域Aの内側にシート部材52の下流側端部が存在しない。そのため、接触領域A内にシート部材52の厚みによる段差などの隙間が生じない。従って、その隙間部などの空隙での放電により、接触領域Aにおいてトナーが逆帯電し転写できなくなることによる、点状の画像抜け(点状転写抜け)の発生を防止することができる。
【0065】
一方、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bを、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより長くする(図3中の領域Fを形成する)。即ち、中間転写ベルト7の移動方向において、少なくとも感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aの下流側端部は、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの内側に位置するようにする。これにより、シート部材52が、感光ドラム1から中間転写ベルト7が剥離する接触領域Aの下流側端部(接触終了点)Cにおいて対向電極の役目をする。従って、中間転写ベルト7と感光ドラム1との剥離部の電位が確定し、剥離放電を抑制することができる。即ち、中間転写ベルト7を除電する除電部材を設けることなく、剥離放電に起因する画像不良を防止することができる。
【0066】
又、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bが、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより長く、弾性部材51の幅D以上であることで、弾性部材51と中間転写ベルト7とが直接接触することがないため、摺動抵抗を抑制することができる。そして、中間転写ベルト7の駆動トルクの上昇を抑制することができる。
【0067】
上述の作用は、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdで1次転写部n1a〜n1dを同様の構成とすることで、同様に得ることができる。
【0068】
C.評価
本実施例の効果を調べるため、プロセススピード100mm/secの画像形成装置100を用いて、以下に示す比較例と共に、初期と10k枚通紙後に、縦スジ、点状転写抜け、及び剥離放電跡ついて評価した。尚、以下に示す比較例の画像形成装置においても、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdで1次転写部材5は同一の構成を有する。
【0069】
(比較例1)
比較例1では、図4に示すように、シート部材52と中間転写ベルト7の接触領域Bが、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより短い。比較例1における1次転写部材5の弾性部材51は、本実施例と同一のものを用いた。
【0070】
(比較例2)
比較例2では、図5に示すように、1次転写部材5がシート部材52のみで構成されており、弾性部材51がない。シート部材52と中間転写ベルト7とは、シート部材52に1次転写電源16により電圧が印加されたときのみ、シート部材52の静電吸着力だけで接触するものとする。比較例2における1次転写部材5のシート部材52は、本実施例と同一のものを用いた。
【0071】
(比較例3)
比較例3では、図6に示すようなブラシ形状の1次転写部材301を用いた。より具体的には、比較例3の1次転写部材301は、抵抗値が1×108Ω、パイル長(t3)3mm、幅(w3)5mmのポリアミドからなるブラシである。比較例3の1次転写部材301の配置は、実施例1と同一とした。
【0072】
(評価結果)
評価結果を表1に示す。ここでは、縦スジ状の転写不良、点状の画像抜け(点状転写抜け)、30%印字ハーフトーン画像での放電跡に着目し評価を行った。又、通紙耐久テストは、Xerox社製4024 坪量75g/m2で行い、10k枚通紙後の画像を評価した。
【0073】
【表1】

【0074】
本実施例では、初期から10k枚通紙後まで、縦スジ、点状転写抜け、剥離放電跡のいずれも良好であった。
【0075】
比較例1では、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bが、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより短い。そのため、シート部材52が、感光ドラム1から中間転写ベルト7が剥離する接触領域Aの下流側端部(接触終了点)Cにおいて対向電極として働かない。従って、中間転写ベルト7と感光ドラム1との剥離部において剥離放電が発生した。又、中間転写ベルト7と感光ドラム1とで形成される接触領域Aの内側にシート部材52の下流側端部があるため、シート部材52の厚みによる段差などの隙間が生じる。従って、その隙間部などの空隙での放電により、点状の画像抜けが発生した。
【0076】
比較例2では、シート部材52が、シート部材52の静電吸着力のみで中間転写ベルト7と接触している。そのため、シート部材52の波打ちにより中間転写ベルト7の裏面に密着できない箇所が発生する。従って、シート部材52と中間転写ベルト7との均一な接触性を確保することができず、縦スジ状の転写不良が発生した。
【0077】
比較例3では、初期は問題なく、良好であるものの、10k枚通紙後においては、ブラシの先端がつぶれたため、1次転写部材301と中間転写ベルト7との長手方向の接触が不均一となった。このため、10k枚通紙後に、長手方向の転写ムラが発生した。
【0078】
以上説明したように、本実施例によれば、1次転写部材5を、弾性部材51とシート部材52とを有する構成することで、シート部材52と中間転写ベルト7との摺動性を改善する。又、シート部材52と中間転写ベルト7との均一な接触性を確保することができ、長手方向での接触ムラに起因する縦スジ状の転写不良を防止することができる。
【0079】
又、本実施例によれば、中間転写ベルト7と感光ドラム1とで形成される接触領域Aの内側でシート部材52が中間転写ベルト7と接触すると共に、該接触領域Aの内側にシート部材52の下流側端部が存在しない。そのため、シート部材52の厚みによる隙間部などの空隙での放電により、点状の画像抜けが発生することを防止することができる。
【0080】
又、本実施例によれば、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bを、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより長くすることで、中間転写ベルト7と感光ドラム1との剥離部の電位が確定し、剥離放電を抑制することができる。
【0081】
又、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの長さが、弾性部材51の幅D以上であることで、弾性部材51と中間転写ベルト7とが直接接触することがないため、摺動抵抗を抑制することができる。そして、中間転写ベルト7の駆動トルクの上昇を抑制することができる。
【0082】
このように、本実施例によれば、簡易な構成により中間転写ベルト7と1次転写部材5の均一な接触を維持して良好な転写性を確保することができる。又、本実施例によれば、中間転写ベルト7の裏面に除電部材を用いることなく、感光ドラム1と中間転写ベルト7との間で生じる剥離放電の発生を防止することができる。これにより、装置の大型化、コストアップを招くことなく、簡易な構成で、中間転写ベルト7に転写されたトナー像の乱れを防止することができる。従って、本実施例によれば、簡易な構成で、より安定、より良好な転写性能を得ることができる。
【0083】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1と同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0084】
A.構成
図7は、本実施例における1次転写部材5、中間転写ベルト7及び感光ドラム1の位置関係を示す1次転写部N1の拡大図である。本実施例では、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdで1次転写部材5は同一の構成を有する。
【0085】
本実施例では、中間転写ベルト7の移動方向において、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aの上流側端部は、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの外部(接触領域外)に位置する。即ち、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの上流側端部は、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aの上流側端部上又はそれより下流側(好ましくは下流側)に位置する。
【0086】
又、本実施例では、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの長さは、弾性部材51の長さ(幅)D未満である。
【0087】
更に説明すると、本実施例では、1次転写部材5は、弾性部材51とシート部材52とを有し、シート部材52は、中間転写ベルト7と弾性部材51との間に挟持されている。そして、本実施例では、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bは、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより長く、弾性部材51の幅D未満である。
【0088】
より具体的には、本実施例では、中間転写ベルト7の移動方向における、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aを3mm、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bを4.5mm、弾性部材51の幅Dを5mmとした。又、中間転写ベルト7の移動方向において、シート部材52は、接触領域Aの上流側端部より0.5mm下流側(図7中の領域E)から中間転写ベルト7に接触する。又、中間転写ベルト7の移動方向において、接触領域Aの下流側端部より2mm下流側(図7中の領域F)に、シート部材52の下流側端部がある。このシート部材52の下流側端部は、中間転写ベルト7と接触している。尚、中間転写ベルト7の移動方向上流側のシート部材52の端部の所定長さの部分は、弾性部材51の側面に沿って屈曲されている。
【0089】
本実施例で用いたシート部材52の抵抗値、厚み、材質は、実施例1と同一である。
【0090】
又、1次転写電源16は、弾性部材51に電圧を印加する。
【0091】
B.作用
1次転写部材5を、弾性部材51とシート部材52とを有する構成することで、シート部材52を弾性部材51により中間転写ベルト7の裏面に押圧することができる。従って、シート部材52を確実に中間転写ベルト7の裏面に接触することができる。これにより、シート部材52と中間転写ベルト7との均一な接触性を確保することができ、1次転写部材5と中間転写ベルト7との長手方向での接触ムラに起因する縦スジ状の転写不良を防止することができる。
【0092】
又、中間転写ベルト7と感光ドラム1とで形成される接触領域Aの内側でシート部材52が中間転写ベルト7と接触すると共に、該接触領域Aの内側にシート部材52の下流側端部が存在しない。そのため、接触領域A内にシート部材52の厚みによる段差などの隙間が生じない。従って、その隙間部などの空隙での放電により、トナーが逆帯電し、転写できなくなることによる、点状の画像抜け(点状転写抜け)の発生を防止することができる。
【0093】
一方、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bを、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより長くする(図7中の領域Fを形成する)。即ち、中間転写ベルト7の移動方向において、少なくとも感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aの下流側端部は、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの内側に位置するようにする。これにより、シート部材52が、感光ドラム1から中間転写ベルト7が剥離する接触領域Aの下流側端部(接触終了点)Cにおいて対向電極の役目をする。従って、中間転写ベルト7と感光ドラム1との剥離部の電位が確定し、剥離放電を抑制することができる。即ち、中間転写ベルト7を除電する除電部材を設けることなく、剥離放電に起因する画像不良を防止することができる。
【0094】
又、シート部材52を、接触領域Aの上流側端部(接触開始点)より下流側(図7中の領域E)から中間転写ベルト7に接触させることで、1次転写部材5に電圧を印加した際に、感光ドラム1と1次転写部材5との間で形成される転写電界の影響を抑制できる。つまり、転写電界が、中間転写ベルト7と感光ドラム1との接触領域A内で作用するようになる。これにより、接触領域Aより前に転写電界が感光ドラム1上のトナー像に作用して、接触領域Aより前でトナー像が中間転写ベルト7上に転写されることによる、トナー像がぼける画像不良(所謂、飛び散り)を抑制することができる。
【0095】
又、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの長さを、弾性部材51の幅Dより短くすることで、シート部材52は中間転写ベルト7と接触している全域で弾性部材51に押圧され、支持される。シート部材52は、弾性部材51と中間転写ベルト7とにより挟持されているため、シート部材52と中間転写ベルト7との接触は均一になる。従って、中間転写ベルト7の回転力によりシート部材52が引っ張り、伸ばされることがなく、シート部材52の波打ちを抑制することができる。そのため、シート部材52と中間転写ベルト7との間における空隙での放電により、中間転写ベルト7上のトナー像が乱れることを防止することができる。尚、上述のシート部材52の波打ちは、プリント枚数が多くなればなるほど、シート部材52が引っ張り伸ばされる時間が長くなるため、悪化してしいく傾向にある。そのため、本実施例の構成は、プリント枚数によらずシート部材52と中間転写ベルト7との接触状態を均一として、より長期間にわたり安定した転写性能を維持し、良好な画像の形成を可能とする点で有利である。
【0096】
以上説明したように、本実施例によれば、1次転写部材5を、弾性部材51とシート部材52とを有する構成することで、シート部材52と中間転写ベルト7との均一な接触性を確保することができる。これにより、長手方向での接触ムラに起因する縦スジ状の転写不良を防止することができる。
【0097】
又、本実施例によれば、中間転写ベルト7と感光ドラム1とで形成される接触領域Aの内側でシート部材52が中間転写ベルト7と接触すると共に、該接触領域Aの内側にシート部材52の下流側端部が存在しない。そのため、シート部材52の厚みによる隙間部などの空隙での放電により、点状の画像抜けが発生することを防止することができる。
【0098】
又、本実施例によれば、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bを、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触領域Aより長くすることで、中間転写ベルト7と感光ドラム1との剥離部の電位が確定し、剥離放電を抑制することができる。
【0099】
又、本実施例によれば、シート部材52を、接触領域Aの上流側端部(接触開始点)より下流側から中間転写ベルト7に接触させることで、トナー像がぼける画像不良(所謂、飛び散り)を抑制することができる。
【0100】
更に、本実施例によれば、シート部材52と中間転写ベルト7との接触領域Bの長さを、弾性部材51の幅Dより短くする。これにより、耐久を通じてシート部材52と中間転写ベルト7との接触を均一にすることができるため、耐久を通じて安定した転写性能を維持することができる。
【0101】
実施例3
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置は、ベルト体として、実施例1、2における中間転写ベルトの代わりに、紙などの転写材を担持して搬送する転写材担持体としての転写ベルトを有する。そして、この転写ベルトを用いた画像形成装置の転写手段に対して、実施例1、2にて説明したものと実質的に同一の構成を適用する。
【0102】
[画像形成装置の全体構成]
図8は、本実施例の画像形成装置200の概略断面構成を示す。尚、本実施例における直接転写方式の画像形成装置200は、ベルト体として転写ベルトを用い、像担持体から転写材に直接トナー像を転写することを除いて、その構成及び動作は実施例1、2における中間転写方式の画像形成装置100と共通するものが多い。従って、図1に示す実施例1、2における中間転写方式の画像形成装置100のものと同一又はそれに相当する機能を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0103】
本実施例の画像形成装置200では、4つの感光ドラム1a〜1dの全てに対し当接するように、転写材担持体としての無端状のベルト体で構成された転写ベルト207が配置されている。転写ベルト207と各感光ドラム1a〜1dとの接触領域(転写ニップ,転写部)na〜ndにおいて、各感光ドラム1a〜1dから転写ベルト207上に担持された転写材Pへのトナーの転写が行われる。
【0104】
転写ベルト207は、転写ベルト207を駆動させる駆動ローラ271、転写ベルト207にテンションをかけるテンションローラ272の2本のローラに張架されている。転写ベルト207は、図示矢印R2方向(反時計回り)に回転する。そして、転写ベルト207は、転写材Pを担持して、各転写部na〜ndへ搬送する。
【0105】
転写ベルト207を挟んで各感光ドラム1a〜1dと対向する位置に、各感光ドラム1a〜1dに対応する転写手段としての転写部材5a〜5dが配置されている。転写部材5は、転写部材5への電圧印加手段である転写電源16に接続されている。
【0106】
次に、フルカラー画像形成時を例として、画像形成動作について説明する。画像形成動作がスタートすると、感光ドラム1a〜1d、転写ベルト207などは、所定のプロセススピードで、それぞれ所定の方向に回転を始める。そして、実施例1で説明したのと同様にして各感光ドラム1a〜1d上にトナー像が形成される。
【0107】
一方、転写材カセット11に積載されている転写材Pは、転写材供給ローラ12によりピックアップされ、搬送ローラ(図示せず)によりレジストローラ13にまで搬送される。そして、転写材Pは、第1の画像形成部Saの感光ドラム1a上のトナー像に同期してレジストローラ13によって転写ベルト207上へと搬送される。
【0108】
次いで、この転写材Pは、転写ベルト207上に吸着担持されて第1の画像形成部Saの転写部naへと搬送される。そして、先ず、第1の画像形成部Saの転写部naにおいて、転写ベルト207上に担持された転写材P上に、感光ドラム1a上のトナー像が転写される。この時、転写部材5aには、転写電源16よりトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)のDCバイアス電圧が印加される。
【0109】
そして、転写材Pが転写ベルト207によって搬送されていくのに同期して、第2〜第4の画像形成部Sb〜Sdの感光ドラム1b〜1d上へのトナー像の形成、及びそのトナー像の転写材Pへの転写が順次に行われ、転写材P上に多重画像が形成される。
【0110】
トナー像が転写された転写材Pは、転写ベルト207から分離されて定着装置10に送られ、ここでその上のトナー像が溶融混合されて固着された後、フルカラーの画像形成物(プリント,コピー)として画像形成装置200の外部へと排出される。
【0111】
又、転写工程後に、感光ドラム1上に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置6によって清掃される。
【0112】
[転写部材]
本実施例の画像形成装置200において、転写ベルト207上に担持されている転写材Pは、転写ベルト207にならって移動していく。そのため、各転写部nにおける転写材Pと感光ドラム1との接触領域は、その転写部nにおける転写ベルト207と感光ドラム1との接触領域と略同一である。従って、転写部材5に対して、実施例1、2にて1次転写部材5に対して適用したのと同様に本発明を適用することができ、それにより実施例1、2と同様の効果を得ることができる。即ち、各転写部nにおいて転写ベルト207に担持された転写材Pに形成されるトナー像に対して、実施例1、2にて各1次転写部n1において中間転写ベルト7に形成されるトナー像に対して得られたものと同様の効果を得ることができる。
【0113】
このように、本実施例の画像形成装置200は、実施例1、2にて説明したものと同様の特徴を全て備えることができる。そして、詳しい説明は省略するが、本実施例の画像形成装置200においても、実施例1、2と同様に、次のような作用効果を奏し得る。
【0114】
転写部材5を、弾性部材51とシート部材52とを有する構成とすることで、シート部材52と転写ベルト207との均一な接触性を確保することができる。これにより、長手方向での接触ムラに起因する縦スジ状の転写不良を防止することができる。
【0115】
又、転写ベルト207と感光ドラム1とで形成される接触領域Aの内側でシート部材52が転写ベルト207と接触すると共に、該接触領域の内側にシート部材52の下流側端部が存在しない。そのため、シート部材52の厚みによる隙間部などの空隙での放電により、点状の画像抜けが発生することを防止することができる。
【0116】
又、シート部材52と転写ベルト207との接触領域Bを、感光ドラム1と転写ベルト207との接触領域Aより長くすることで、転写材Pと感光ドラム1の剥離部の電位が確定し、剥離放電を抑制することができる。
【0117】
又、シート部材52と転写ベルト207との接触領域Bの長さを、弾性部材51の幅D以上とすることができる。この場合には、弾性部材51と中間転写ベルト7とが直接接触することがないため、摺動抵抗を抑制する利点がある。
【0118】
又、シート部材52と転写ベルト207との接触領域Bの長さを、弾性部材51の幅Dより短くすることができる。この場合には、耐久を通じてシート部材52と転写ベルト207との接触を均一にして、耐久を通じて安定した転写性能を維持する利点がある。
【0119】
上述の効果は、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdで転写部na〜ndを同様の構成とすることで、同様に得ることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 感光ドラム
5 1次転写部材(転写部材)
7 中間転写ベルト(ベルト体)
51 弾性部材
52 シート部材
207 転写ベルト(ベルト体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体と接触して移動可能なベルト体と、前記ベルト体を挟んで前記像担持体と対向する位置に前記ベルト体に接触して配置され、前記像担持体上のトナー像を前記ベルト体又は前記ベルト体に担持された転写材に転写させる転写部材と、前記転写部材に前記転写のための電圧を印加する電圧印加手段と、を有する画像形成装置において、
前記転写部材は、弾性部材と、前記ベルト体と前記弾性部材との間に挟持されて前記ベルト体に面で接触するシート部材と、を有し、前記ベルト体の移動方向において、前記像担持体と前記ベルト体との接触領域の下流側端部は、前記シート部材と前記ベルト体との接触領域内に位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ベルト体の移動方向において、前記像担持体と前記ベルト体との前記接触領域の上流側端部は、前記シート部材と前記ベルト体との前記接触領域内に位置することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルト体の移動方向において、前記像担持体と前記ベルト体との前記接触領域の上流側端部は、前記シート部材と前記ベルト体との前記接触領域外に位置することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ベルト体の移動方向において、前記シート部材と前記ベルト体との前記接触領域の長さは、前記弾性部材の長さ以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ベルト体の移動方向において、前記シート部材と前記ベルト体との前記接触領域の長さは、前記弾性部材の長さ未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルト体の移動方向において、前記シート部材の下流側端部は、前記ベルト体と接触していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記シート部材は、前記弾性部材により前記ベルト体に向けて押圧されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記弾性部材は、略直方体形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、発泡スポンジ体から成ることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−212190(P2012−212190A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179041(P2012−179041)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2007−158079(P2007−158079)の分割
【原出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】