説明

画像形成装置

【課題】潤滑剤の塗布ムラが生じないように、二次転写部で生じた弾性中間転写ベルトの段差を解消する画像形成装置を提供する。
【解決手段】弾性層を有し回動する無端状の中間転写ベルト7と、中間ベルト7にトナー像を重畳して形成する画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdと、中間転写ベルト7とニップ部を形成し前記ニップ部で記録材を挟持搬送して中間転写ベルト7のトナー像を記録材Pに一括転写する転写ローラ9と、記録材Pに対するトナー像の転写後の中間転写ベルト7の面に潤滑剤を塗布するファーブラシ122と中間転写ベルト7の面を拭掃するクリーニングブレード123と、を有する画像形成装置において、通紙される記録材Pの厚み情報を認識する記録材情報認識手段と、通紙される記録材Pの坪量に応じた厚さに対応して定まる、二次転写位置で生ずる中間転写ベルト7の弾性層の変形回復時間の経過後に潤滑剤を中間転写ベルト7に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙等の被記録材表面に光沢性を有するトナー等の記録材によって印刷、或は電子写真等の画像形成記録を行うプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものであり、特に弾性層を有する中間転写ベルトを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光導電性感光体等の像担持体表面に静電潜像を形成し、現像,中間転写部材への一次転写、記録材への二次転写後、上記像担持体表面及び中間転写部材表面をクリーニングして再び潜像形成プロセスを行う電子写真複写機が、各種実用に供されている。
【0003】
中間転写部材として、必要に応じて抵抗調整を行なったPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリアミド、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)及びポリカーボネート等の樹脂フィルムで形成された無端上の樹脂ベルトが汎用されている。このように剛性の高い樹脂を用いることにより、回転駆動中におけるベルトのしわの発生を防止することができる。また近年では、剛性の高い樹脂ベルト上に弾性層を設けることによって、記録材表面の凹凸に対する追従性を上げることや、一次転写部・二次転写部でのトナーに対する応力集中を緩和することで、画像品位の向上を実施している。
【0004】
二次転写後に中間転写部材表面上の現像剤等の残留物を除去するクリーニング装置として、弾性を有するクリーニングブレードを中間転写部材に当接させてクリーニングするブレード方式が汎用されている。ブレードクリーニングの代わりに弾性ローラ或いはブラシローラを単体で用いることもある。また、ブレードクリ―ニング方式の補助機構として、クリーニングブレードの先端部当接位置の像担持体移動方向上流側に、シート状の案内部材や弾性ローラ或いはブラシローラ等を配置し、像担持体の外周面に圧接する。これにより、トナーの漏れ防止、紙粉等の除去、トナーフィルミング防止を実施している。
【0005】
弾性層を有する樹脂ベルト(弾性中間転写ベルト)とクリーニングブレード、ファーブラシによる代表的なクリーニング装置について図13に示す。剛性の高い樹脂フィルム71上に弾性層72が設けられた弾性中間転写ベルト7に対し、回転可能な支持軸17に対向するようにクリーニングブレード23が配置されている。また弾性中間転写ベルト7の駆動方向上流側にはクリーニング補助部材としてのファーブラシ22が配置されている。
【0006】
弾性中間転写ベルト7の弾性層72は、上述した理由により硬度が低いことが望ましく、そのためクリーニングブレード23の先端は弾性中間転写ベルト7に食い込んだ状態で当設する。
【0007】
このような構成で画像形成を行った場合、使用環境の変化や耐久状況によって弾性中間転写ベルトとクリーニングブレードの摩擦係数が高くなると、『ビビリ』、『めくれ』といった現象が発生する。この現象が発生すると、十分なクリーニング能力が得られず、残留物がすり抜ける所謂クリーニング不良が発生し、画像不良となって顕在化する。特に『めくれ』現象は、画像形成装置全体の破損につながる大きな弊害であり、その回復にも多大な時間と費用がかかってしまう。
【0008】
『ビビリ』、『めくれ』といった現象を解決するために、「感光体、中間転写ベルト、又は二次転写ローラの何れかに潤滑剤を塗布し、転写中抜けなどの一次転写不良やブレードめくれを防止する画像形成装置」が提案されている(特許文献1)。
【0009】
即ち、クリーニングの対象に潤滑剤を塗布することにより、ブレードとの摩擦力を下げることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−140085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、二次転写後の弾性中間転写ベルトに潤滑剤を塗布しようとした場合、
以下の課題が生じた。即ち、記録材の種類によってはHT画像のようなハイライト画像では横スジが発生してしまった。これは、弾性層が記録材表面の凹凸に対して追従するようにした結果、二次転写ニップ位置で記録材と弾性中間転写ベルトが押圧されると、記録材のエッジに対応した段差が弾性中間転写ベルトにできてしまうことが前提となる。そして、この段差が解消されないまま弾性中間転写ベルトに潤滑剤が塗布されてしまったために、塗布ムラが生じてしまったことが原因である。
【0012】
従来の画像形成装置で望まれる機能を十分に発揮するためには、上記段差が解消されるまでの時間をとるために二次転写位置と潤滑剤塗布位置との距離を十分に確保すれば良い。しかしながら、近年求められるようになった『装置の小型化』を満たすためには、各部材の配置間隔を縮めることが必須となる。
【0013】
そこで、装置の小型化による潤滑剤の塗布ムラが生じないように、本発明は簡単な構成により二次転写部で生じた弾性中間転写ベルトの段差を解消することができる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、この発明に係わる画像形成装置の代表的な構成は、弾性層を有し回動する無端状の中間像担持体と、前記中間像担持体にトナー像を重畳して形成する画像形成部と、前記中間像担持体とニップ部を形成し前記ニップ部で記録材を挟持搬送して前記中間像担持体の前記トナー像を前記記録材に一括転写する転写部材と、前記記録材に対する前記トナー像の転写後の前記中間像担持体の面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部材と、前記潤滑剤が塗布された前記中間像担持体の面に当接して前記中間像担持体の面を拭掃するクリーニングブレードと、を有する画像形成装置において、通紙される記録材の厚み情報を認識する記録材情報認識手段と、前記記録材情報認識手段からの情報に基づいて前記中間像担持体への前記潤滑剤を塗布するタイミングを決定し、前記タイミングに対応しプロセススピードを変えて前記潤滑剤の塗布を実行する又は前記タイミングに対応しプロセススピードを変えずに前記潤滑剤の塗布を遅延させる制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明は、弾性層を有する中間像担持体に潤滑剤を塗布することで良好なクリーニング能力を得る画像形成装置において、潤滑剤を均一に弾性中間記録材上に塗布することが可能となり、長期にわたって良好な画像を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像形成装置の概略断面図である。
【図2】画像形成装置における画像形成ステーションの概略断面図である。
【図3】第1の実施形態における潤滑剤塗布装置の概略断面図である。
【図4】(a)は二次転写ニップで生じる記録材の先端位置に対応した中間転写ベルトの段差の説明図、(b)は二次転写で生じる記録材の後端位置に対応した中間転写ベルトの段差の説明図である。
【図5】(a)は二次転写ニップで生じる記録材の先端位置に対応し潤滑剤塗布装置で生じる潤滑剤の塗布ムラを説明するための説明図、(b)は二次転写ニップで生じる記録材の後端位置に対応し潤滑剤塗布装置で生じる潤滑剤の塗布ムラを説明するための説明図である。
【図6】弾性層の変形が回復する経時変化を表すグラフである。
【図7】(a)は第1の実施形態におけるプロセススピード制御のブロック図、(b)はプロセススピード制御のフローチャートである。
【図8】弾性層の変形が回復する経時変化の温度依存性を表すグラフである。
【図9】第2の実施形態における画像形成装置の概略断面図である。
【図10】(a)は第2の実施形態におけるプロセススピード制御のブロック図、(b)はプロセススピード制御のフローチャートである。
【図11】第3の実施形態における画像形成装置の概略断面図である。
【図12】(a)は弾性層の変化を測定する測定装置の加圧時の概略断面図、(b)は 除加時の概略断面図である。
【図13】従来技術における弾性中間転写ベルトのクリーニング装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一又は対応する部分には同一の符号を付す。
【0018】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図1に本実施形態のフルカラー画像形成装置(複写機能、プリンタ機能、FAX機能を併せ持つ複合機)の概略断面図を示す。また、図2に本画像形成装置における画像形成ステーションの概略断面図を示す。
【0019】
図に示す画像形成装置は、弾性層を有し回動する無端状の中間像担持体としての中間転写ベルト7の回転方向(矢印R7方向)に沿って上流側から下流側にかけて4個の画像形成部(画像形成ステーション)Sa、Sb、Sc、Sdが配置されている。
【0020】
各画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdは、この順にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成するものであり、以下に図2を用いて画像形成ステーションを詳細に説明する。尚、4つの各画像形成ステーションSa,Sb,Sc,Sdは同一の構成となっており、ここではa、b、c、dの符号を省略する。
【0021】
画像形成ステーションS,は、像担持体としてドラム形の電子写真感光体(以下「感光体ドラム」という。)1を備えている。
【0022】
感光体ドラム1は、それぞれ矢印R1方向(図2中の反時計回り)に300mm/sで回転駆動されるようになっている。各感光体ドラム1の周囲には、その回転方向に沿ってほぼ順に、帯電器(帯電手段)2、露光装置(潜像形成手段)3、現像器(現像手段)4、一次転写ローラ(一次転写手段)5、クリーニング装置(クリーニング手段)6、が配置されている。上述の一次転写ローラ5及び二次転写対向ローラ8,テンションローラ16、支持軸17には、中間像担持体としての無端状の弾性中間転写ベルト7が掛け渡されている。
【0023】
上述した構成の画像形成装置においては、以下のようにして、記録材P上にフルカラーのトナー像が形成される。即ち、不図示の画像データ読込部より入力された画像データには、画像の各画素に対応してRGB信号が、それぞれ256階調で記録される。この画素毎のRGB信号は、不図示のRGB−CMYK変換部により、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの成分による最小印字単位(以後1dotと呼ぶ)毎のCMYK画像信号に変換される。
【0024】
RGB−CMYK変換部には、例えば3×4のマスキング・マトリクスを用いる方式や、3×3のマトリクスでまずCMYに変換した後、3×4のマトリクスによる所謂墨入れを行い、K画像信号を生成する方式等を用いることができる。
【0025】
不図示のCMYKトナー印字部では、変換されたCMYK画像信号にあわせて、露光装置3によって露光が行われる。
【0026】
続いて、感光体ドラム1は、感光体ドラム駆動モータ(不図示)によって矢印方向に300mm/sのプロセススピードで回転駆動され、帯電器2によって−700Vに一様に帯電される。帯電後の感光体ドラム1は、露光装置3によって画像信号に基づく露光が行われ、露光部分の電荷が−200Vにされて各色毎の静電潜像が形成される。
【0027】
これら感光体ドラム1上の静電潜像は、現像器4に印加した−550Vとの電位差によってイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色のトナー像として現像される。これら4色のトナー像は、一次転写ニップT1において、一次転写ローラ5に印加した1500Vにより、弾性中間転写ベルト7上に順次に一次転写される。こうして、4色のトナー像が中間転写ベルト7上で重ね合わされる。一次転写時に、弾性中間転写ベルト7に転写されないで感光体ドラム1上に残ったトナー(一次転写残トナー)は、クリーニング装置6によって除去される。
【0028】
弾性中間転写ベルト7上で重ね合わされた4色のトナー像は、記録材Pに二次転写される。記録材Pは給紙カセット100に積載された状態で収納され、給紙ローラ、搬送ローラ、レジストローラ等を有する給搬送装置によって、弾性中間転写ベルト7上のトナー像にタイミングを合わせるようにして二次転写ニップT2に供給される。供給された記録材Pには、二次転写ニップT2において、二次転写ローラ9により、中間転写ベルト7上の4色のトナー像が一括で二次転写される。二次転写時に、記録材Pに転写されないで弾性中間転写ベルト7上に残ったトナー(二次転写残トナー)は、ブレード123によって除去される。
【0029】
一方、4色のトナー像が二次転写された記録材Pは、定着装置13に搬送され、ここで定着ローラ14とこれに加圧された加圧ローラ15とにより加熱・加圧されて表面にトナー像が定着される。トナー像定着後の記録材Pは、排紙トレイ(不図示)上に排出される。
【0030】
(弾性中間転写ベルト)
弾性中間転写ベルト7は、図3に示すように基層71上に弾性層72に設けており、記録材表面の凹凸による当接圧の振れを吸収し、長手方向(移動方向に交差する方向)
において略均一な二次転写ニップ幅が得られるようになっている。基層71の材料としては、回転駆動中におけるベルトのしわの発生を防止するために、剛性の高い樹脂を用いることが望ましい。具体的にはPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリアミド、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)及びポリカーボネート等の剛性の高い樹脂である。また基層71の厚さとしては、0.02mm〜0.50mmの範囲が望ましい。これは、薄すぎると磨耗による十分な耐久性が得られなくなったり、厚すぎるとテンションローラ16、支持軸17で適当に曲がらずに凹みや折れが発生したりするためである。
【0031】
弾性層72の材料としては、NBRゴム、クロロプレンゴム、EPDM及びウレタンゴム等の弾性材料が選択可能である。弾性層72の厚さとしては、0.10mm〜1.00mmの範囲が望ましい。これは、薄すぎると記録材表面の凹凸に対する追従性得られなくなったり、厚すぎると長手方向や周方向での体積抵抗率のムラが発生したりするためである。
【0032】
ゴム硬度としては、低すぎると放置後に一次転写ニップや二次転写ニップに、ブレードニップ跡が生じやすくなり、高すぎると記録材表面の凹凸に対する追従性得られなくなるため、JIS−A硬度が40°〜80°の範囲が望ましい。更に、弾性中間転写ベルト7の電荷蓄積による画像不良を防止するために、カーボン、ZnO、SnO、及びTiO等の導電性の充填材を分散させ、体積低効10〜1011Ω・cmに調整することが良い。
【0033】
そこで、本実施形態では、厚さが0.06mmのポリイミド樹脂からなる基層71と、厚さが0.30mm、JIS−A硬度が55°、体積抵抗が10Ω・cmにしたクロロプレンゴムからなる弾性層72とを用いて、弾性中間転写ベルト7を成型した。
【0034】
弾性中間転写ベルト7は、その裏面側から一次転写ローラ5によって押圧されていて、その表面を感光体ドラム1に当接させている。これにより、感光体ドラム1と、弾性中間転写ベルト7との間には、一次転写ニップ(一次転写部)T1が形成されている。
【0035】
弾性中間転写ベルト7は、駆動ローラも兼ねる二次転写対向ローラ8の矢印R8方向(図1)の回転に伴って、矢印R7方向に回転するようになっている。この中間転写ベルト7の回転速度は、上述の各感光体ドラム1の回転速度とほぼ同じに設定されている。即ち、中間転写ベルト7はプロセススピードで移動されている。
【0036】
弾性中間転写ベルト7表面における、二次転写対向ローラ8に対応する位置には、二次転写ローラ(二次転写手段)9が配置されている。二次転写ローラ9は、二次転写対向ローラ8との間に弾性中間転写ベルト7を挟持しており、二次転写ローラ9と中間転写ベルト7との間には、二次転写ニップ(二次転写部)T2が形成されている。即ち、転写部材としての二次転写ローラ9は中間転写ベルト7とニップ部を形成し、前記ニップ部で記録材を挟持搬送して中間転写ベルト7上で重ね合わされたトナー像を記録材に一括転写する。
【0037】
(潤滑剤塗布装置)
弾性中間転写ベルト7表面における、回転可能な支持軸17に対応する位置には、潤滑剤塗布装置が当接されている。
【0038】
図3は潤滑剤塗布装置の概略断面図であり、固形の潤滑剤121と、ファーブラシ122と、ブレード123とからなる。潤滑剤121はファーブラシ122によって掻き取られ、弾性中間転写ベルト7に塗布される。そしてブレード123で塗り伸ばされて、弾性中間転写ベルト7上に薄層コートが形成されることで、ブレードとの摩擦係数を下げている。
【0039】
また、ファーブラシ122とブレード123は上述した機能と共に、二次転写後に残留したトナー(二次転写残トナー)を有する弾性中間転写ベルトの面を拭掃する(クリーニングする)機能も持ち合わせている。即ち、ブレード123はクリーニングブレードとしての機能を備える。
【0040】
本実施形態で使用する固形の潤滑剤121は例えばステアリン酸亜鉛である。具体的にはステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウムである。また、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレイン酸鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸銅でも良い。また、パルチミン酸、亜鉛パルチミン酸コバルト、パルチミン酸銅、パルチミン酸マグネシウム、パルチミン酸アルミニウム、パルチミン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプロン酸鉛でも良い。
【0041】
また、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、及びリコリノレン酸カドミウムのような脂肪酸、これら脂肪酸の金属塩でも良い。更には、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、オオバ油、みつろう、ラノリンなどのワックスなどが挙げられる。
【0042】
ブレード123にはJIS−A硬度が75°のウレタンゴムを使用し、弾性中間転写ベルト7の回転方向R7に対してカウンタ方向に当接しており、当接角θ(弾性中間転写ベルト7の接線との角度)は30°とした。また、ファーブラシ122のブラシ繊維は、材質としてアクリル系の絶縁糸を使用し、また繊度300デニールで、ブラシ上の繊維密度は200KF/inch^2とした。
【0043】
二次転写ニップT2位置から潤滑剤塗布部材としてのファーブラシ122位置までの距離Lは、画像形成装置の小型化を達成する為には小さいことが望ましく、本実施形態では150mmとした。
【0044】
(中間転写ベルトの弾性層の変形)
上述した画像形成装置を用いて画像を形成していると、記録材Pの進行方向に直交した方向にスジ状に濃度が薄くなるという現象(以後スジ抜けと呼ぶ)が発生する場合があった。筆者等の検討によると、この現象は記録材Pの坪量が大きい場合に頻繁に発生した。画像形成途中の感光体ドラム1、弾性中間転写ベルト7上のトナー像を確認したところ、以下の様であった。即ち、ドラム1上のトナー像は問題なかったが、一次転写された弾性中間転写ベルト7上では既にスジ抜けが発生しており、一次転写部での部分的な転写不良であることが分かった。
【0045】
そこで、二次転写ニップT2から一次転写ニップT1までの区間での弾性中間転写ベルトの挙動を確認したところ、次のことが分かった。
【0046】
図4は記録材Pが二次転写ニップT2に突入し、通過していく様子を表したものであり、記録材Pに関し(a)に先端エッジが二次転写ニップT2を通過した直後の様子と、(b)に後端エッジが二次転写ニップT2を通過した直後の様子を示す。
【0047】
弾性中間転写ベルト7は記録材Pの表面の凹凸に対して追従するような材料・硬度・厚み選択しているため、通紙部と非通紙部の境界においても同様に追従してしまう。即ち、図4(a)のように記録材Pの先端位置Tに対応する弾性中間転写ベルト7上の点T’では急激な段差が生じてしまう。記録材Pの坪量と厚みは比例関係にあり、坪量が大きいと厚みは厚くなる。つまり、記録材Pの坪量が大きいほど弾性中間転写ベルト7上に生じる段差は大きくなる。また図4(b)のように記録材Pの後端エッジにおいても先端エッジと同様な理由で記録材Pの後端位置Eに対応する弾性中間転写ベルト7上の点E’では、急激な段差が生じる。
【0048】
図5は弾性中間転写ベルト7が潤滑剤塗布装置であるファーブラシ122に突入し、通過していく様子を表したものであり、(a)は弾性中間転写ベルト7に記録材Pの先端エッジによる段差がある場合、(b)は記録材Pの後端エッジによる段差がある場合である。
【0049】
ファーブラシ122によって潤滑剤121が塗布され、ブレード123によって弾性中間転写ベルト7に塗り伸ばされる過程で以下の現象が現れる。即ち、二次転写ニップT2で生じた段差が解消されないまま移動してくると、図5(a)のようにブレードニップ位置で突然弾性層72の膜厚が下がるような段差(T’位置)では、ブレード圧が一瞬下がる。このため、潤滑剤121のコート層が他の場所と比較して厚くなる。また、図5(b)のようにブレードニップ位置で突然弾性層72の膜厚が上がるような段差(E’位置)では、ブレード圧が一瞬上がるため潤滑剤121のコート層が他の場所と比較して薄くなる。
【0050】
感光体ドラム1に関連する画像形成プロセスが実行される状況下では、弾性中間転写ベルト7上に潤滑剤121のコート層のムラが生じると、ベルトの抵抗値ムラとなってしまい、転写効率の低下が生じる。即ち、一次転写ニップ部T1で潤滑剤121のコート層が厚い場所では、感光体ドラム1に流れる電流値が下がることによる転写効率の低下が生じる。また、潤滑剤121のコート層が薄い場所では、感光体ドラム1に流れる電流値が上がることによる転写効率の低下が生じるため、スジ抜けが発生してしまう。これを解消するためには、潤滑剤121を弾性中間転写ベルト7上に均一に塗布することが必要である。
【0051】
(中間転写ベルトの弾性層の変形回復の測定)
弾性層72は変形に対して元の状態に回復するものであり、図12の測定装置を用いてその様子を測定した。図12は、20℃環境で三角形状の重りXに加重を加えて弾性層72をΔdだけ変形させ(図12(a))、その後除加した瞬間から弾性層72の変形部分が元の状態に回復させる(図12(b))ときの変形量の時間変化を測定するものである。ここで、重りXに加える加重を二次転写ニップに記録材が突入することによって変化する圧力と同じにすることで、その記録材によって生じる段差と同等の弾性層の変化量を得ることができる。
【0052】
図6は、図12の測定装置を用いた時の弾性層72の変形量の経時変化を表すグラフである。図6の実線は記録材の坪量が300gsmの場合の回復曲線であり、この時の弾性層72(図3)の初期変形量は264μmであった。また、図中の一点鎖線は記録材の坪量が150gsmの場合の回復曲線、点線は記録材の坪量が80gsmの場合の回復曲線であり、それぞれの初期変化量は124μm、72μmであった。
【0053】
横軸は弾性層の段差が二次転写ニップ位置で作られてからの経過時間である。図6のa点は上述した画像形成装置の構成の場合に、弾性層の変形が潤滑剤塗布部材(ファーブラシ122)に到達する時間であり、0.50sである。
【0054】
筆者等の検討によると、実質的にスジ抜けが気にならなくなる弾性層の変形量は50μm未満であることが分かっており、弾性中間転写ベルト7上に生じた変形が回復する時間Δtとは、弾性層の変形量が50μm未満に達するまでの時間とする。
【0055】
図6より、弾性中間転写ベルト7上に生じた変形が回復する時間Δtは、記録材の坪量が300gsmでは1.90s、記録材の坪量が128gsmでは0.95s、記録材の坪量が80gsmでは0.35sである。
【0056】
(中間転写ベルトの弾性層の変形回復時間の取得)
中間転写ベルト7の弾性層72の変形回復時間については、予め記録材の坪量に応じた厚さ毎に弾性層72の回復時間が回復時間判断部202(図7)に換算データとしてあるいは変換式として格納されている。そして、記録材の厚さを入力して変形回復時間を換算する、あるいは記録材の厚さを測定して変形回復時間を出力することで、変形回復時間を変形回復時間取得手段である回復時間判断部202より取得する。
【0057】
(中間転写ベルトへの潤滑剤塗布のタイミング)
上述した本実施形態における弾性層の変形が潤滑剤塗布部材に到達する時間0.50sでは、記録材の坪量が80gsmの場合、弾性層の変形量が50μm未満になった状態で潤滑剤塗布部材に突入しているためスジ抜けが発生しない。しかし、記録材の坪量が128gsm、300gsmの場合、弾性層の変形量が50μm以上ある状態で潤滑剤塗布部材に突入しているためにスジ抜けが発生することが分かる。
【0058】
即ち、潤滑剤を均一にコートし、スジ抜けを防止するためには、一括転写時から潤滑剤塗布時までの経過時間tと弾性層の変形が回復する時間Δtが、t≧Δtの関係を満足していれば良い。
【0059】
また、弾性層の変形が潤滑剤塗布部材に到達する時間tは、二次転写ニップ位置から潤滑剤塗布部材位置までの距離L(=150mm)と、画像形成装置のプロセススピードVpとで、一義的に決まるもの(t=L/Vp)であり、上述した関係式は、
Δt≦t=L/Vp
Vp≦L/Δt
となる。
【0060】
(プロセススピード変化による潤滑剤塗布タイミング調整)
そこで本実施形態では弾性層の変形量が十分回復するになる時間t’を記録材の坪量に応じた厚さから予測し、Vp≦L/Δtの関係式を満たすようにプロセススピードを変更するという制御を行った。
【0061】
プロセススピードを変更することで、感光体ドラムの回転速度、中間転写ベルトの移動速度が画像形成前に変更される。以下にプロセススピード制御の詳細について説明する。図7(a)は本実施形態におけるプロセススピード制御を示すブロック図、図7(b)は本実施例におけるプロセススピード制御を示すフローチャートであり、これらに基づいて説明する。
【0062】
画像形成が開始すると、記録材Pを給紙カセット100にセットした際に入力した記録材の坪量情報が格納された坪量認識部201より、回復時間判断部202に信号が送られる(工程1)。回復時間判断部202は、坪量に応じた厚さ毎の弾性層の回復時間が予め格納されており、坪量認識部201からの信号に応じて回復時間を判断する(工程2)。具体的には記録材Pの坪量が300gsmであるという信号が入力された場合、弾性層の回復時間が1.90sと判断する。回復時間判断部202で判断された情報は、回転速度切換判断部203に入力される。回転速度切換判断部203では、二次転写ニップから潤滑剤塗布位置までの距離と回復時間判断部202からの情報により、画像形成装置のプロセススピードが算出される(工程3)。具体的には二次転写ニップ−潤滑剤塗布位置間の距離L(150mm)と弾性層の回復時間1.90sにより、画像形成装置のプロセススピードは78mm/sとなる。ここで、算出された値がプロセススピードより大きくするために、小数点以下は切り捨てる。回転速度切換判断部203で算出されたプロセススピードの信号は、画像形成装置の駆動モータ204に出力することで、画像形成装置を所定のプロセススピードで回転させる(工程4)。
【0063】
上述した制御は給紙カセット100の記録材の坪量に応じた厚さが変化する毎に実施され、最適なプロセススピードが選択される。上述した制御を用いて画像形成を行ったところ、潤滑剤の塗布ムラによるスジ抜けが発生することが無くなった。
【0064】
以上説明したように、本実施形態では、弾性層を有する中間転写体に潤滑剤を塗布することで良好なクリーニング能力を得る画像形成装置において、記録材の厚みを取得し、その値に応じて画像形成装置のプロセススピードを変更する。これにより、二次転写ニップで生じた弾性層の変形を十分回復させることが可能となったため、中間転写ベルト7に潤滑剤を均一にコートすることができ、長期にわたって良好な画像を提供することができる。
【0065】
本実施形態では画像形成前に記録材の厚みを取得して画像形成前にプロセススピードを変更したが、記録材が二次転写ニップに搬送される手前で記録材の厚みを検知する部材を設け、その値を用いてプロセススピードを変更するようにしても良い。
【0066】
《第2の実施形態》
上述した実施形態では、記録材の厚みに応じて画像形成装置のプロセススピードを変更することで、中間転写ベルトに潤滑剤を均一にコートすることができ、長期にわたって良好な画像を提供することができる構成について述べた。しかしながら、10℃といった低温環境で画像形成を行った場合に、再びスジ抜けが発生してしまった。
【0067】
図8は弾性層72が300gsmの坪量の記録材Pにより変形した状態から回復するまでの時間変化の温度依存性を表すグラフである。図8の点線は外気温度が30℃の場合の回復曲線、実線は外気温度20℃の場合の回復曲線、二点鎖線は外気温度が10℃の場合の回復曲線、一点鎖線は外気温度が0℃の場合の回復曲線である。これより外気温度が高い方が中間転写ベルト7の弾性層72に生じた段差の回復が早いことが分かる。
【0068】
このように徐々に段差が回復する遅延弾性変形は、ゴムの粘性抵抗により発生するものであり、筆者等の検討によると、以下のことが分かった。即ち、この現象は外気温度と弾性中間転写ベルト7の弾性体72が同等に冷えてしまった場合に、粘性抵抗が大きくなり、段差の回復が遅くなってしまった為に発生したことが分かった。また、本実施形態で用いている弾性体においては、弾性体の温度が5℃変化すると回復時間が0.3s変化することが分かった。
【0069】
そこで、環境に依存することなく、第1の実施形態と同様な効果が得られるという本実施形態について説明する。本実施形態で特徴とするのは、記録材の厚みと弾性中間転写ベルトの温度に応じて、弾性中間転写ベルトの回復時間を判断し、プロセススピードを変更することによって、低温環境でも潤滑剤を均一にコートすることができる点である。
【0070】
以下にプロセススピード制御の詳細について説明する。図9は本実施形態における画像形成装置の概略断面図、図10(a)は本実施形態におけるプロセススピード制御を示すブロック図、図10(b)は本実施形態におけるプロセススピード制御を示すフローチャートであり、これらに基づいて説明する。
【0071】
本実施形態における画像形成装置は、概ね第1の実施形態と同じであるが、弾性中間転写ベルト7上の温度を検知する中間転写ベルト温度検知手段305が配置される。本実施形態では、中間転写ベルト温度検知手段305として非接触型の温度検知センサを潤滑剤塗布装置であるファーブラシ122と画像形成ステーションSaの間に配置した。
【0072】
画像形成が開始すると、記録材Pを給紙カセット100にセットした際に入力した記録材の坪量情報が格納された坪量認識部301より、回復時間判断部302に信号が送られる(工程1’)。また同時に、中間転写ベルト温度検知手段305が検知した値が復時間判断部302に送られる(工程2’)。回復時間判断部302には、弾性中間転写ベルトの温度が20℃時の坪量に応じた厚さ毎の弾性層の回復時間と、弾性中間転写ベルトの温度による補正時間が予め格納されている。そして、坪量認識部301、中間転写ベルト温度検知手段305からの信号に応じて弾性中間転写ベルトの回復時間を決定する(工程3’)。具体的には記録材Pの坪量が300gsm、中間転写ベルトの温度が10℃であるという信号が入力された場合、弾性層の回復時間が2.6sと決定する。回復時間判断部302で判断された情報は、回転速度切換判断部303に入力される。回転速度切換判断部303では、二次転写ニップから潤滑剤塗布位置までの距離と回復時間判断部302からの情報により、画像形成装置のプロセススピードが算出される(工程4’)。具体的には二次転写ニップ−潤滑剤塗布位置間の距離150mmと弾性層の回復時間2.6sにより、画像形成装置のプロセススピードは57mm/sとなる。回転速度切換判断部303で算出されたプロセススピードの信号は、画像形成装置の駆動モータ304に出力することで、画像形成装置を所定のプロセススピードで回転させる。(工程5’)
上述した制御は給紙カセット100の記録材の坪量に応じた厚さが変化するたびに実施され、最適なプロセススピードが選択される。
【0073】
上述した制御を用いて画像形成を行ったところ、低温環境においても潤滑剤の塗布ムラによるスジ抜けが発生することが無くなった。
【0074】
以上説明したように、中間転写ベルトの温度と記録材の厚みを検知し、その値に応じて画像形成装置のプロセススピードを変更することで、画像形成装置の使用環境に依存することなく、二次転写ニップで生じた弾性層の変形を十分回復させることができる。このため、中間転写ベルトに潤滑剤を均一にコートすることができ、長期にわたって良好な画像を提供することができる。
【0075】
なお、外部環境による弾性中間転写ベルトの温度変化の他、耐久による弾性中間転写ベルトの温度変化に応じて、プロセススピードを変更して弾性中間転写ベルトの移動速度を変えるようにしても良い。
【0076】
《第3の実施形態》
上述した実施形態では、記録材の厚み、中間転写体の温度に応じて画像形成装置のプロセススピードを変更することで、移動速度が変更された中間転写ベルトに潤滑剤を均一にコートすることができる構成について述べた。しかし、そのような構成において複数種の坪量に応じた厚さの記録材が混載されているような成果物を作成する場合には、生産性の観点を考慮することが好ましい。
【0077】
連続画像形成中におけるプロセススピードの切り換え動作は、作像動作を一旦停止し、切り換えたプロセススピードで再度作像動作を開始するようになっているため、生産性を低下させる傾向にある。筆者等の検討によると、記録材の坪量に応じた厚さ毎にプロセススピードを切り換える制御を行った結果、記録材の坪量に応じた厚さの切換回数が多いほど画像形成装置のウェイトが頻繁に行なわれ、生産性の低下となり得る。
【0078】
本実施形態では、記録材毎に坪量に応じた厚さに対応したプロセススピードを変更するのではなく、記録材を坪量に応じた厚さでグループ化し、記録材のグループ毎に坪量に応じた厚さに対応したプロセススピードへ変更する。本実施形態では、記録材の坪量に応じた厚さ別にグループ分けし、そのグループ毎にプロセススピードを変更することで、坪量に応じた厚さが近い記録材が混載しているような場合に、画像形成装置を一旦停止させることが無くなる。これにより、生産性の著しい低下を防止することができる。
【0079】
ここで、記録材のグループ分けは、その数が多いとプロセススピード切り換えるための画像形成装置の停止が頻繁に実施され、生産性の低下が生じてしまう。また数が少ないとグループ内の坪量に応じた厚さが厚い記録材は最適な生産性を確保できるが、グループ内の坪量に応じた厚さが薄い記録材ではやはり生産性が低下してしまう。そのため、3〜5グループに分けることが望ましく、本実施形態では80gsm以下、80〜128gsm以下、128gsmより以上の3グループに分けた。
【0080】
また、弾性中間転写ベルト7上の弾性層72の変形が十分回復する時間t’は、図6に示すように、記録材の坪量が80gsm、128gsm、300gsmでは0.35s、0.95s、1.90sであることが分かっている。弾性層72の変形箇所が潤滑剤塗布部材であるファーブラシ122に到達する時間tが、t≧t’の関係を満たすようにそれぞれの坪量において0.50s、1.00s、2.00sと設定することで、各グループでのプロセススピードを決定した。具体的には、記録材の坪量が80gsm以下の場合には300mm/s、80〜128gsm以下の場合には150mm/s、128gsmより以上の場合には75mm/sとした。
【0081】
上述した構成で様々な坪量に応じた厚さの記録材が混載した成果物を出力すると、坪量が80gsmから256gsmに変更する場合(坪量グループ外への変更の場合)には、プロセススピードが300mm/sで駆動していた画像形成装置を一旦停止する。そして、75mm/sに変更してから作像を再開することで、スジ抜け等の画像弊害がない良好の画像を得ることができる。また、坪量が256gsmから300gsmに変更する場合(坪量グループ内での変更の場合)には、プロセススピードは300mm/sのままで作像が続くため、生産性が低下することなく、良好の画像を得ることができた。
【0082】
以上説明したように、記録材の坪量に応じた厚さ別にグループ分けし、それに応じたプロセススピードで画像形成を行なうことで、複数の坪量に応じた厚さの記録材が混載された場合においても中間転写体に潤滑剤を均一にコートすることができる。そして、長期にわたって良好な画像を提供することができると共に、プロセススピードの切り換え作業時に発生する時間のロスを極力なくすことができ、生産性の著しい低下を防止することができる。
【0083】
なお、本実施形態において、第2の実施形態である中間像担持体上の温度に応じて弾性層の変形回復時間を補正することを加味することもできる。
【0084】
《第4の実施形態》
前述した実施形態では、記録材情報認識手段からの情報に基づいて中間像担持体である中間転写ベルト7への潤滑剤を塗布するタイミングを決定し、記録材の厚さが厚い場合にはプロセススピードを遅くして潤滑剤の塗布を実行するものである。これに対し、本実施形態では、前記タイミングに対応しプロセススピードを変えずに潤滑剤の塗布の方を遅延させる点が前述した実施形態と異なる。
【0085】
記録材情報認識手段からの情報に基づいて、記録材の厚さが厚い場合には中間像担持体である弾性中間転写ベルト7を何周か空回りさせて時間を稼ぎ、その間は潤滑剤塗布ユニットMは塗布位置から外れた位置へ矢印方向に退避させる。そして、回復時間が経過する周に入った段階で、潤滑剤塗布ユニットMは塗布位置へ矢印方向に突出させられる。
【0086】
潤滑剤塗布ユニットMは潤滑剤を塗布するファーブラシ122と、塗布された潤滑剤を塗り伸ばすブレード123を有する。ブレード123は既述したように二次転写後に中間転写ベルト上に残留したトナーをクリーニングする機能も持ち合わせる。
【0087】
ここで、二次転写ニップ位置から潤滑剤塗布ユニットMの塗布位置までの長さをL(=150mm)、無端状の弾性中間転写ベルト7の周長さをL0、弾性中間転写ベルト7の一定移動速度をV0とする。また、二次転写ニップ位置を基準として空回りする回数をm(整数値)とする。すると、弾性層の変形が潤滑剤塗布ユニットMにより塗布される迄の経過時間t=(L+m×LO)/V0となる。この経過時間tが弾性層の変形が回復する時間Δt以上となるように空回りする回数m(整数値)が決められる。なお、弾性中間転写ベルト7を何周か空回りさせて時間を稼ぐ間、感光体ドラムに関連する画像形成プロセスは実行されないように無効化される。
【0088】
なお、本実施形態において、第2の実施形態である中間像担持体上の温度に応じて弾性層の変形回復時間を補正する、及び/又は第3の実施形態であるグループ化された記録材の厚さに応じて弾性層の変形回復時間を取得することを加味することもできる。
【0089】
(変形例)
以上、カラー画像形成装置について述べたが、本発明は透明トナーと黒トナーを用い透明トナー像と黒トナー像を中間転写ベルトに重畳して記録材に一括転写するモノクロ画像形成装置にも適用可能である。
【0090】
(変形回復の程度に関連した本発明の位置づけ)
以上、好ましい実施形態として、二次転写位置で記録材により変形した弾性層の変形が充分回復した後に中間転写ベルトに潤滑剤を塗布できるように、中間転写ベルトの移動スピードを落としたり、中間転写ベルトを空回りさせることを述べた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、弾性層の変形が必ずしも充分に回復していなくても、中間転写ベルトの移動スピードを落としたり、中間転写ベルトを空回りさせることで潤滑剤の塗布タイミングを遅らせ、回復方向にある中間転写ベルトの段差を小さくして潤滑剤を塗布できる。
【符号の説明】
【0091】
7・・弾性中間転写ベルト、8・・二次転写対向ローラ、9・・二次転写ローラ、13・・定着装置、14・・定着ローラ、15・・加圧ローラ、16・・テンションローラ、17・・支持軸、100・・給紙カセット、121・・潤滑剤、122・・ファーブラシ、123・・ブレード、Sa、Sb、Sc、Sd・・イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の各画像形成ステーション、P・・記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層を有し回動する無端状の中間像担持体と、前記中間像担持体にトナー像を重畳して形成する画像形成部と、前記中間像担持体とニップ部を形成し前記ニップ部で記録材を挟持搬送して前記中間像担持体の前記トナー像を前記記録材に一括転写する転写部材と、前記記録材に対する前記トナー像の転写後の前記中間像担持体の面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部材と、前記潤滑剤が塗布された前記中間像担持体の面に当接して前記中間像担持体の面を拭掃するクリーニングブレードと、を有する画像形成装置において、
通紙される記録材の厚み情報を認識する記録材情報認識手段と、
前記記録材情報認識手段からの情報に基づいて前記中間像担持体への前記潤滑剤を塗布するタイミングを決定し、前記タイミングに対応しプロセススピードを変えて前記潤滑剤の塗布を実行する又は前記タイミングに対応しプロセススピードを変えずに前記潤滑剤の塗布を遅延させる制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録材の坪量に応じた厚さに対応して定まる前記弾性層の変形回復時間を取得する変形回復時間取得手段を備え、前記制御手段は一括転写時から潤滑剤塗布時までの経過時間が記録材の坪量に応じた厚さに対応して定まる前記変形回復時間より短くないように、前記中間像担持体の移動速度を制御する又は前記中間像担持体の移動速度を変えずに前記中間像担持体を空回りさせることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変形回復時間取得手段は、記録材の厚さを入力して変形回復時間を換算することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記変形回復時間取得手段は、記録材の厚さを測定して変形回復時間を出力することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記一括転写する転写部材から前記潤滑剤塗布部材までの距離をL、前記記録材の坪量に応じた厚さにより定まる前記中間像担持体上に生じる変形が回復するまでの時間をΔt、前記中間像担持体の移動速度をVpとした時、
Vp≦L/Δt
となることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記中間像担持体上の温度を検知する温度検知手段と、検知される温度に応じて前記弾性層の変形回復時間を補正することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記変形回復時間取得手段はグループ化された記録材の坪量に応じた厚さに対応して定まる前記弾性層の変形回復時間を取得することを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−22125(P2012−22125A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159570(P2010−159570)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】