説明

画像形成装置

【課題】様々なシート搬送状態において画像品質の低下を抑制しつつ画像形成できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写部材5と定着装置FXの間のシート撓みを検出するループ検出装置及び定着装置FXのシート送り速度の制御部を含んでおり、ループ検出装置はシート搬送経路31,32のそれぞれに対応するシート撓み検出センサBS1、BS2を含んでおり、制御部は、各撓み検出センサの検出結果、撓み検出対象シートサイズ、撓み検出対象シートの搬送経路及び撓み検出対象シートの予定画像形成枚数のうちの順位の組み合わせに基づいて、正常なトナー像転写及びトナー像定着がなされるように組み合わせに応じて予め定めておいた定着装置シート送り速度に定着装置FXのシート送り速度を制御する画像形成装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録用のシートを複数の並行なシート搬送経路のそれぞれに沿って搬送し、画像形成部に通すことで該シートに画像を形成できる複写機、プリンタ、ファクシミリ機、これらのうち2以上を組み合わせた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここでの画像形成部は、提供される画像情報に応じたトナー像を形成するための像担持体、前記像担持体上に形成されるトナー像を記録用のシートに転写する転写部材、前記トナー像が転写されたシートを該シートに該トナー像を定着させつつ送る定着装置を含むものである。
【0003】
記録用のシートを複数の並行なシート搬送経路のそれぞれに沿って搬送し、上記のような画像形成部に通すことで該シートに画像を形成できる画像形成装置の1例として次のものを挙げることができる。
【0004】
シート供給部からシート排出トレイへ向け並行に延びる二つのシート搬送経路を備え、これら二つのシート搬送経路を使って小サイズの記録用シート(例えばA5、A6、B6等のサイズのシート)を2枚同時並行に、又はシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように或いはシートが全体的に並ぶわけではないが部分的には並ぶようにシート搬送方向において位置をずらして交互に搬送し、各シートに画像形成部で画像形成し、画像形成された各シートをシート排出トレイへ排出する画像形成装置である。
【0005】
この種の画像形成装置では、前記小サイズのシートに対して大きい一般的サイズのシート(例えば、A5サイズシートに対するA4サイズシート)を前記二つのシート搬送経路を跨ぐように使って搬送し、画像形成することも可能である。
【0006】
ところで、このような複数の並行なシート搬送経路を採用しない一般的な画像形成装置では、前記画像形成部の転写部材と定着装置との間でシートを適度に撓ませて、シートが該転写部材と定着装置の間で引っ張られ過ぎて転写ずれ(カラー画像形成の場合の色ずれも含む)や画像の伸びが発生したり、シートが転写部材と定着装置の間で撓みすぎてトナー画像がいずれかの部材に接触して乱れたりすることがないようにしている。
【0007】
転写部材と定着装置とでシート搬送速度を等速にしておくことができるなら、前記のような所望の画像品質を得るためのシート撓みを形成しなくてもよい。しかし、実際には、転写部材と定着装置とでシート搬送速度を等速に設定しようとしてもシート送り速度に差が生じてくる。
【0008】
例えば、転写部材がそうである事が多いローラ部材であるとともに定着装置の定着部材等がそうである事が多いローラ部材である場合、それらローラ部材間ではローラ外径にばらつきがあり、また、ローラ圧接力及びローラ表面硬度の差による個々のローラにおけるローラ中心からシート送りを担当するローラ表面部位のまでの距離がばらつくなどにより、転写部材と定着装置とでシート搬送速度に差が生じる。
【0009】
転写部材と定着装置間でのシート搬送速度差を放置しておくと、画像形成上重要な、前記転写部材のある転写部での設定シート搬送速度に対してシートを定着装置で引っ張る、或いはシートを定着装置へ押し込む力がシートに働き、シートが該転写部材と定着装置の間で引っ張られ過ぎて転写ずれ(カラー画像形成の場合の色ずれも含む)や画像の伸びが発生したり、シートが転写部材と定着装置の間で撓みすぎてトナー画像がいずれかの部材に接触して乱れたりする事態が発生してくる。
【0010】
そこでこのシート搬送速度差を吸収して良好な画像を得るために、既述のように
転写部材と定着装置との間でシートを適度に撓ませることでシート搬送速度差を吸収するようにして、シートが該転写部材と定着装置の間で引っ張られ過ぎて転写ずれや画像の伸びが発生したり、シートが転写部材と定着装置の間で撓みすぎてトナー画像がいずれかの部材に接触して乱れたりすることがないようにするのである。
【0011】
前記転写部材と定着装置との間のシート撓みを所望品質の画像を得るうえで支障のない撓みに維持するための手段として、該シート撓みを測定し、測定撓み量を定着装置の回転駆動部へフィードバックして、該シート撓みを所望品質の画像を得るうえで支障のない撓みに維持するように定着装置のシート送り速度を制御することが知られている。
【0012】
また、特開2007-52112号公報には、定着ローラの圧力バランスの左右差、転写ユニットの圧力バランスの左右差、シート供給の際のシート斜行などにより、シート搬送方向を横切る方向のシート片側部分に撓みが発生するものの反対側ではシートが引っ張れるというような事態が発生することを抑制するため、搬送経路に沿ったシート搬送方向を横切る方向に複数のループ検知手段を設け、それらセンサによりシート各部の撓み量を検出し、その検出結果に基づいて、定着装置のシート搬送速度を制御することが記載されている。
【0013】
具体的には、すべてのループ検知手段が所定量を超えるシート撓みを検出すると、定着装置のシート送り速度を低速から、高速に切り換えて過度のシート撓みを解消し、少なくとも一方のループ検知手段が所定量を超えるシート撓みを検出しないときは、シートの引っ張りを防止するために定着装置のシート送り速度を低速に設定する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007-52112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、記録用のシートを複数の並行なシート搬送経路のそれぞれに沿って搬送し、画像形成部に通すことで該シートに画像を形成できる画像形成装置において、使用可能な最大サイズより小サイズのシートを前記複数のシート搬送経路に沿って複数枚同時並行に、又はシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように位置をずらして交互に搬送する場合、シート上の画像濃度、シート種(例えば、シート厚みによる種類)等の相違によって、転写部材と定着装置間で、各シート搬送経路に沿って搬送されるシートごとにシート撓み量が相違してくることがある。
【0016】
そのような場合に、いずれかのシート搬送経路で搬送されるシートの転写部材と定着装置間での撓み検出だけに頼って定着装置のシート送り速度を制御すると、撓み検出対象となった側のシートの撓みが許容限度を超えているときには該シートの過度の撓みを解消するように定着装置のシート送り速度を増すことになり、そうすると、他のシート搬送経路で搬送されるシートが過度に引っ張られ、そのシートに関して転写ずれが発生したり、該シート上の画像が伸びたりし、また、撓み検出対象となった側のシートの撓みが許容限度を超えていない場合に定着装置のシート送り速度を現状速度に維持すると他のシート搬送経路で搬送されるシートの撓みが過度になって画像がにじむ等の画像不良が発生することがある。
【0017】
特開2007-52112号公報に記載されている定着装置速度制御は、シート搬送経路が一つで、その経路に沿って単枚のシートが搬送される場合を前提とする制御であり、すべてのループ検出手段がシート撓みを検出すると定着装置のシート送り速度を低速から高速へ切り替えるものである。
【0018】
特開2007-52112号公報に記載の定着装置速度制御は、シートを複数の並行なシート搬送経路のそれぞれに沿って搬送し、画像形成部に通すことで該シートに画像を形成できる画像形成装置において、複数のシート搬送経路のうち全数より少数のシート搬送経路が選択的に使用され、選択されたシート搬送経路に沿って小サイズのシートが搬送されるだけの場合や、小サイズのシートがシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように位置をずらして交互に搬送される場合などには適用できない制御である。
【0019】
本発明は、記録用のシートを複数の並行なシート搬送経路のそれぞれに沿って搬送し、画像形成部に通すことで該シートに画像を形成でき、前記画像形成部は提供される画像情報に応じたトナー像を形成するための像担持体、前記像担持体上に形成されるトナー像を前記シートに転写する転写部材及び前記トナー像が転写されたシートを該シートに該トナー像を定着させつつ送る定着装置を含んでいる画像形成装置であって、使用可能な最大サイズより小サイズのシートが前記複数のシート搬送経路を使って同時的に並行に、又はシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように交互に搬送される場合や、全数より少数のシート搬送経路が選択的に使用され、選択されたシート搬送経路に沿って小サイズのシートが搬送されるだけの場合を含め、様々なシート搬送状態において画像品質の低下を抑制しつつ画像形成できる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は前記課題を解決するため、
記録用のシートを複数の並行なシート搬送経路のそれぞれに沿って搬送し、画像形成部に通すことで該シートに画像を形成できる画像形成装置であり、
前記画像形成部は提供される画像情報に応じたトナー像を形成するための像担持体、前記像担持体上に形成されるトナー像を前記シートに転写する転写部材、前記トナー像が転写されたシートを該シートに該トナー像を定着させつつ送る定着装置、前記転写部材と前記定着装置の間の前記シートの撓みを検出するループ検出装置及び前記定着装置のシート送り速度の制御部を含んでおり、前記ループ検出装置は前記転写部材と前記定着装置の間に前記複数のシート搬送経路のそれぞれに対して配置されたシート撓み検出センサを含んでおり、前記各シート撓み検出センサは予め定めた許容シート撓みを超えるシート撓みを検出するシート撓み検出センサであり、前記制御部は、前記各シート撓み検出センサの検出結果、前記各シート撓み検出センサによる撓み検出対象のシートのサイズ、前記複数のシート搬送経路のうち該撓み検出対象シート搬送に用いられるシート搬送経路及び該撓み検出対象シートの予定画像形成枚数のうちの順位の組み合わせに基づいて、正常なトナー像転写及び正常なトナー像定着がなされるように該組み合わせに応じて予め定めておいた定着装置シート送り速度に前記定着装置のシート送り速度を制御する画像形成装置を提供する。
【0021】
本発明に係る画像形成装置によると、前記定着装置のシート送り速度が、前記各シート撓み検出センサの検出結果、前記各シート撓み検出センサによる撓み検出対象のシートのサイズ、前記複数のシート搬送経路のうち該撓み検出対象シート搬送に用いられるシート搬送経路及び該撓み検出対象シートの予定画像形成枚数のうちの順位の組み合わせに基づいて、正常なトナー像転写及び正常なトナー像定着がなされるように該組み合わせに応じて予め定めておいた定着装置シート送り速度に制御される。
【0022】
ここで、「撓み検出対象のシートのサイズ」とは、使用可能なシートのうち最大サイズ(例えばA4)、該最大サイズより小サイズ(例えばA5)などを指している。
「撓み検出対象シート搬送に用いられるシート搬送経路」とは、複数のシート搬送経路のすべてを用いるのか、そのうち所定の位置にある一部(例えば一つ)のシート搬送経路だけを用いるのか、といったことを意味している。
【0023】
「予定画像形成枚数のうちの順位」とは、予定画像形成枚数のうちの何番目のシートか、ということである。例えば、二つのシート搬送経路を用いて複数枚シートを2枚ずつ同時並行に搬送する場合における奇数番目、且つ、最終枚目のシートである場合、そのシートについては、単枚シートを一つのシート搬送経路にそって搬送している場合と同様と判断できる。
【0024】
従って、使用可能な最大サイズシートに画像形成する場合だけでなく、使用可能な最大サイズより小サイズのシートが前記複数のシート搬送経路を使って同時的に並行に、又はシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように交互に搬送される場合や、全数より少数のシート搬送経路が選択的に使用され、選択されたシート搬送経路に沿って小サイズのシートが搬送されるだけの場合を含め、様々なシート搬送状態において、転写部材と定着装置間でのシートの引っ張り過ぎや、シートの撓みすぎによる画像品質の低下を抑制することができる。
【0025】
前記制御部は、前記転写部材と前記定着装置の間に適度のシート撓みを得るために、例えば、前記定着装置の初期シート送り速度を前記転写部材によるシート送り速度より遅く設定することができる。
【0026】
前記制御部に接続され、ユーザにより操作可能な操作パネルが設けられていてもよい。そして、前記撓み検出対象シートのサイズ、前記用いるシート搬送経路及び前記予定画像成枚数の情報は前記操作パネルから前記制御部へ入力されるようにしてもよい。
【0027】
また、前記複数のシート搬送経路のそれぞれに対してシート検出センサを配置し、前記制御部は前記撓み検出対象シート搬送に用いられるシート搬送経路を前記シート検出センサによるシート検出結果に基づいて判断するとともに前記シート検出センサによるシート検出回数の積算値から前記撓み検出対象シートの前記予定画像形成枚数のうちの順位を判断するようにしてもよい。この場合も、前記制御部に接続され、ユーザにより操作可能な操作パネルを設け、前記検出対象シートのサイズの情報は前記操作パネルから前記制御部へ入力されるようにしてもよい。
【0028】
前記転写部材と前記定着装置の間にシートガイドを設け、前記シートガイドは前記制御部の指示のもとに正規位置から遠ざかる後退位置へ移動可能な可動ガイド部材を含むものとし、前記制御部は前記複数の撓み検出センサのうちいずれかがシート撓みを検出すると、前記可動ガイド部材を前記後退位置へ後退させてシート撓み受け入れスペースを大きく設定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、記録用のシートを複数の並行なシート搬送経路のそれぞれに沿って搬送し、画像形成部に通すことで該シートに画像を形成でき、前記画像形成部は提供される画像情報に応じたトナー像を形成するための像担持体、前記像担持体上に形成されるトナー像を前記シートに転写する転写部材及び前記トナー像が転写されたシートを該シートに該トナー像を定着させつつ送る定着装置を含んでいる画像形成装置であって、使用可能な最大サイズより小サイズのシートが前記複数のシート搬送経路を使って同時的に並行に、又はシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように交互に搬送される場合や、全数より少数のシート搬送経路が選択的に使用され、選択されたシート搬送経路に沿って小サイズのシートが搬送されるだけの場合を含め、様々なシート搬送状態において画像品質の低下を抑制しつつ画像形成できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る画像形成装置の1例の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の画像形成装置における転写部材と定着装置の間のシートガイド及び撓み検出センサを画像形成部側から見た図である。
【図3】図1の画像形成装置におけるシート搬送経路及びシート搬送態様の1例等を示す図である。
【図4】図3に示すように小サイズシートをシート搬送方向を横切る方向に並べて同時に搬送する態様で、奇数枚を搬送する状態を示す図である。
【図5】小サイズシートをシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように位置をずらして交互に搬送する場合を示す図である。
【図6】小サイズシートをシート搬送方向を横切る方向においてシートが全体的に並ぶわけではないが部分的には並ぶようにシート搬送方向において位置をずらして交互に搬送する場合を示す図である。
【図7】シート搬送方向切り替えガイド装置を示す図である。
【図8】図1の画像形成装置の制御回路の概略を示すブロック図である。
【図9】可動部材を含むシートガイドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明に係る画像形成装置の1例の構成の概略を示している。図1の画像形成装置10はタンデム型のカラープリンタである。
【0032】
図1に示すプリンタ10はプリンタ動作を制御する制御部Cont(図8参照)も含んでいる。プリンタ各部は制御部Contの指示のもとに動作する。
【0033】
プリンタ10は操作パネルPAを備えている。操作パネルPAで画像形成しようとする記録用シートのサイズの設定、画像形成枚数の設定、後述する複数のシート搬送経路のうちいずれを用いて画像形成するのかの設定、片面画像形成か両面画像形成かの選択等を行なえる。
【0034】
プリンタ10は、画像形成部1、画像形成部下方の記録用シート(記録用紙等)の供給部2、シート搬送経路31、32(図3も参照)、シート排出トレイT等を有している。
【0035】
画像形成部1はベルト駆動部11D(図8参照)により回転駆動され駆動ローラd1と対向ローラd2に巻き掛けられて図中反時計方向CCWに回転駆動可能の中間転写ベルト11を含んでいる。ベルト11に沿ってベルト走行方向にイエロー画像形成ユニットY、マゼンタ画像形成ユニットM、シアン画像形成ユニットC及びブラック画像形成ユニットKがこの順序で配置されている。
【0036】
各色担当の画像形成ユニットは、図示省略の画像読み取り装置からの画像情報や、図示省略の外部コンピュータや外部ファクシミリ機等から送信されてくる画像情報に基づいて、電子写真方式により感光体PC上に担当色画像に対応する静電潜像を形成し、該潜像を担当色トナーで現像してトナー像を形成し、これを1次転写電源PW1(図8参照)から1次転写バイアスが印加される1次転写ローラtrでベルト11上に1次転写することができる。
【0037】
画像形成ユニットを用いて画像形成するにあたっては、四つの画像形成ユニットのうちいずれか一つを用いてモノクロトナー像を形成することができるし、二つ以上の画像形成ユニットを用いてカラー画像を形成することもできる。二つ以上の画像形成ユニットを用いる場合には、それら画像形成ユニットで形成される各色トナー像はベルト11上で重ねられるタイミングでベルト11に1次転写される。
【0038】
画像形成部1はさらに、中間転写ベルト11の回転方向においてブラック画像形成ユニットKの下流側で該ベルトに臨む2次転写ローラ5及びその上方に配置された定着装置FXも含んでいる。定着装置FXは本例では加熱定着ローラr1とバックアップローラr2の間でトナー像保持シートを挟着しつつ搬送することで、トナー像を定着させるものである。
【0039】
前記のようにベルト11上に1次転写されるトナー像は、2次転写電源PW2(図8参照)から2次転写バイアスが印加される2次転写ローラ5により、後述するシート搬送経路に沿って搬送されて来る記録用シートSに2次転写され、定着装置FXにより加熱加圧下に該記録用シートに定着される。
このことから分かるように、中間転写ベルト11は像担持体の1種であり、2次的な像担持体とも言える。
【0040】
トナー像が定着されたシートSはシート搬送経路に沿って後述するシート排出装置7へ至り、後述するように循環搬送路9を使って両面画像形成を行なわないのであればそのまま排出トレイTへ排出される。循環搬送路9を用いる両面画像形成については後ほどさらに説明する。
【0041】
図3はプリンタ10におけるシート搬送経路及びシート搬送態様等を示している。図3に示すようにプリンタ10はシート供給部2、さらに言えばシート供給部2のシート収容カセット20から画像形成部1を通ってシート排出トレイTの方へ並行に延びる手前側シート搬送経路31及び奥側シート搬送経路32を含んでいる。
【0042】
ここで、また、以後の説明で「手前側」とは画像形成されて排出トレイTに排出されたシートをユーザが見たり、取り出したりし易い側であり、本例ではプリンタ10の使用にあたりユーザが通常位置する、操作パネルPAのある側である。これに対し「奥側」とは前記「手前側」とは反対側である。
【0043】
シート供給部2はカセット20に臨む供給ローラ装置211、212を含んでいる。
各供給ローラ装置はピックアップローラ221(222)でピックアップされる記録用シートを1枚ずつシート搬送経路へ供給できる。本例では、供給ローラ装置211は手前側シート搬送経路31に対応しており、制御部Contの指示のもとに手前側シート搬送経路31にシートを供給できる。
【0044】
供給ローラ装置212は奥側シート搬送経路32に対応しており、制御部Contの指示のもとに奥側シート搬送経路32にシートを供給できる。
【0045】
本例では、供給ローラ装置211、212は、操作パネルPAでの設定に従って、制御部Contの指示のもとに、小サイズのA5シートS1、S2を図4に示すように2枚同時に並行にシート搬送径路31、32へ供給できる。図4の例では奇数番目のシートS1(S13)については、供給ローラ装置211にて手前側シート搬送経路31に供給される。
【0046】
また、供給ローラ装置211、212は、操作パネルPAでの設定に従って、図5や図6に示すように、小サイズのA5シートS1、S2をシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように或いはシートが全体的に並ぶわけではないが部分的には並ぶようにシート搬送方向において位置をずらして交互にシート搬送径路31、32へ供給できる。図5の例では奇数番目のシートS1(S12)、図6の例では奇数番目のシートS1(S13)がシート搬送経路31へ供給される。図5、図6のいずれの例でも偶数番目のシートはシート搬送経路32へ供給される。
【0047】
なお、供給ローラ装置211、212は、それらのいずれか、或いは双方でA4サイズシートを1枚ずつシート搬送経路31、32へ供給することもできる。
【0048】
シート搬送経路31、32の前記2次転写ローラ5の上流側にレジストローラ対4が配置されている。レジストローラ対4は制御部Contの指示のもとに、供給されてくる記録用シートを一旦停止させ、ベルト11上のトナー像が2次転写領域へ到来するタイミングで該シートを2次転写領域へ送り込む。
【0049】
プリンタ10では、排出トレイTに臨むシート排出口は排出口70,80の二つであり、排出口70の上流側から該排出口にシート排出ローラ装置7が臨んでおり、排出口80の上流側から該排出口に逆転可能なシート排出ローラ装置8が臨んでいる。これに伴ってシート搬送方向切り替えガイド装置6も設けられている。
【0050】
シート供給装置211,212、レジストローラ対4、シート排出装置7、8等はシート搬送経路31,32に沿ってシート供給部2から排出トレイTへシートを搬送するシート搬送装置を構成している。
【0051】
シート搬送方向切り替えガイド装置6は図3、図7に示すようにシート搬送方向を横切る方向に隣合わせて配置された手前側の板状の第1ガイド部61と奥側の板状の第2ガイド部62を含んでいる。
【0052】
ガイド部61は図示省略の部材に回動可能に支持された軸61sに支持されており、制御部Contの指示のもとに軸61sを回す駆動部RD1により、手前側シート搬送経路31で搬送されて来るA5サイズシートS1を第1排出口70へ導く姿勢を取ることができる。図7(C)はこのときのガイド部61の姿勢を示している。
【0053】
ガイド部62は図示省略の部材に回動可能に支持された軸62sに支持されており、制御部Contの指示のもとに軸62sを回す駆動部RD2により、奥側シート搬送経路32で搬送されて来るA5サイズシートS2を第2排出口80へ導く姿勢を取ることができる。図7(C)はこのときのガイド部62の姿勢を示している。
【0054】
また、ガイド部61,62は、制御部Contの指示のもとに、シート搬送経路31、32を使って1枚ずつ搬送されて来るA4サイズシートを片面画像形成モード時は第1排出口70へ向け案内することもできる。図7(A)はこのときのガイド部61,62の姿勢を示している。また、ガイド部61,62は、制御部Contの指示のもとに、シート搬送経路31、32を使って1枚ずつ搬送されて来るA4サイズシート或いはシート搬送経路31、32のいずれか使って搬送されて来るA5サイズシートを両面画像形成モードにおいて循環搬送路9へ反転搬送するときには、該シートを後述する反転搬送可能な排出装置8へ向け案内することもできる。図7(B)はこのときのガイド部61、62の姿勢を示している。
【0055】
プリンタ10は、さらに両面画像形成のための循環搬送路9も含んでいる。
既述のとおり排出装置8は逆転可能である。両面画像形成モードでは、制御部Contの指示のもとに、排出装置8は両面画像形成対象のシートであって片面だけ画像形成されて到来するシートの一部を正転にて一旦排出トレイTへ排出し、ひき続き逆転にて該シートを循環搬送路9へ反転搬送する。循環搬送路9は反転搬送されたシートを搬送ローラ91にて画像形成部1の入口にあるレジストローラ4へ再供給し、両面画像形成させる。両面画像形成されたシートは排出装置7で排出トレイTへ排出される。
【0056】
ここで重要な事項として、プリンタ10では二つのシート搬送経路31、32があることから、ここでの使用可能な最大サイズA4より小サイズA5のシートがシート搬送経路31、32を使って同時的に並行に搬送される場合(図4、図6の搬送状態の場合)又はシート搬送方向を横切る方向においては並ばないように交互に搬送される場合(図5の搬送状態の場合)や、シート搬送経路31,32のいずれかだけが選択的に使用され、選択されたシート搬送経路に沿って小サイズのシートが搬送されるだけの場合(例えば図4の奇数番目の最後のシートS13の場合を含む)を含め、様々なシート搬送状態において、2次転写ローラ5と定着装置FXの間でシートSに適度の撓みをもたせて、シートが転写ローラ5と定着装置FXの間で引っ張られ過ぎて転写ずれ、色ずれや画像の伸びが発生したり、撓みすぎてトナー画像がいずれかの部材に接触して乱れたりすることがないようにしている点である。
【0057】
プリンタ10はそのために次のように構成されている。すなわち、図1、図2に示すように、転写ローラ5と定着装置FXの間に板状のシートガイド100が配置され、ガイド100のシート搬送経路31、32に対応する部分のそれぞれに開口部Wが形成され、その開口部Wからシート撓み検出センサBS1、BS2が搬送経路31、32にそれぞれ臨んでいる。なお、図2においてRbは補強用リブである。
【0058】
シート撓み検出センサBS1、BS2のそれぞれは転写ローラ5から定着装置FXへ搬送されるシートの撓み量が予め定めた許容シート撓み量を超えてくるとそれを検出するセンサである。
【0059】
センサBS1、BS2は制御部Contに接続されており(図8参照)、制御部Contはシート撓み検出センサBS1、BS2の各検出結果、センサBS1、BS2のそれぞれによる撓み検出対象のシートのサイズ、シート搬送経路31,32のうち該撓み検出対象シート搬送に用いられるシート搬送経路及び該撓み検出対象シートの予定画像形成枚数のうちの順位の組み合わせに基づいて、正常なトナー像転写及び正常なトナー像定着がなされるように該組み合わせに応じて予め実験等により求めておいた定着装置シート送り速度に定着装置FXのシート送り速度を制御する。
【0060】
本例では、制御部Contは、2次転写ローラ5でのシート送り速度を予め定めた一定速度とし、それに対して定着装置FXの初期設定速度は2次転写ローラのシート送り速度より遅い、予め定めたものとする。定着装置FXの初期設定速度は2次転写ローラ5のシート送り速度との兼ね合いで、シートが引っ張られ過ぎて転写ずれ、色ずれや画像の伸びが発生したり、撓みすぎてトナー画像が乱れたりすることがないように適度の撓みが発生する程度のものである。
【0061】
制御部Contは、前記撓み検出対象のシートのサイズ、シート搬送経路31,32のうち該撓み検出対象シート搬送に用いられるシート搬送経路及び該撓み検出対象シートの予定画像形成枚数の情報については、操作パネルPAにてユーザにより入力されるそれらの情報を利用する。
【0062】
図2に示すように、シート供給カセット20とレジストローラ対4の間で、レジストローラ対4に近い位置に、シート搬送経路31、32のそれぞれに対応させてシート検出センサ(ここではシート先端検出センサ)Se1、Se2が配置されている。これらシート検出センサによるシート検出情報も制御部Contに入力される(図8参照)。
【0063】
制御部Contは、シート検出センサSe1、Se2からの情報により、シートSが搬送されているシート搬送経路情報を把握できる。また、シート検出センサSe1、Se2によるシート検出積算値から偶数番目のシートか、奇数番目のシートかを把握できるとともに、操作パネルPAで設定された画像形成枚数中の何番目のシートかという、順位を把握できる。
【0064】
前記の制御部Contによるここでの定着装置FXのシート搬送速度制御についてさらに説明する。
制御部Contは次表のように定着装置FXのシート搬送速度を制御する。

(1)シート搬送経路31、32の双方を用いて通常サイズ(例えばA4)シートに画像形成する場合及び小サイズ(例えばA5)シートを搬送経路31,32を用いて図4や図6のように2枚並行に搬送する場合。
撓み検出センサBS1 撓み検出センサBS2 定着装置シート送り速度の制御
撓み検出なし 撓み検出なし 初期設定の低速
撓み検出あり 撓み検出なし 初期設定の低速
撓み検出なし 撓み検出あり 初期設定の低速
撓み検出あり 撓み検出あり 初期設定の低速より所定の高速
(2)シート搬送経路31にてシート搬送(搬送経路32はシート搬送なし)
撓み検出なし 撓み検出なし 初期設定の低速
撓み検出あり 撓み検出なし 初期設定の低速より所定の高速
(3)シート搬送経路32にてシート搬送(搬送経路31はシート搬送なし)
撓み検出なし 撓み検出なし 初期設定の低速
撓み検出なし 撓み検出あり 初期設定の低速より所定の高速
【0065】
なお、上記(1)、(2)では、初期設定の低速より所定の高速に設定されたあと、センサBS1、BS2のいずれかが撓みを検出しなくなると、初期設定の低速に復帰させる。上記(3)では、撓みを検出していたセンサが撓みを検出しなくなると、初期設定の低速に復帰させる。
【0066】
前記シートガイド100については、図9に示すように、制御部Contの指示のもとに、図示省略の駆動部にて正規位置から遠ざかる後退位置へ移動可能な可動ガイド部材101、102を含むものとし、制御部Contは撓み検出センサBS1、BS2のうちいずれかがシート撓みを検出すると、予め定めた時間(シート先端がシートガイド100に到達するに要する時間程度)後に可動ガイド部材101,102を図9(A)の通常正規位置から図9(B)の後退位置へ後退させてシート撓み受け入れスペースを大きく設定するようにしてもよい。
【0067】
以上説明したプリンタ10はタンデム型のカラープリンタであったが、本発明は他のタイプ(例えば所謂4サイクル型)のカラー画像形成装置にも適用でき、また、モノクロ画像形成装置にも適用できる。また、前記画像形成部1は電子写真方式の画像形成部であったが、他のタイプ、例えばインク方式等の画像形成部でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は記録用シートを並行に搬送してそれぞれに画像形成できる画像形成装置であって、様々なシート搬送状態において画像品質の低下を抑制しつつ画像形成できる画像形成装置を提供することに利用できる。
【符号の説明】
【0069】
10 プリンタ
1 画像形成部
11 中間転写ベルト
Y,M,C,K 画像形成ユニット
2 シート供給部
20 シート収容カセット
211、212 シート供給ローラ装置
31 手前側シート搬送経路
32 奥側シート搬送経路
4 レジストローラ対
5 2次転写ローラ
FX 定着装置
r1 加熱定着ローラ
r2 バックアップローラ
6 シート搬送方向切り替え装置
61 第1ガイド部
62 第2ガイド部
70、80 シート排出口
7 シート排出ローラ装置
T 排出トレイ
9 シート循環搬送路
100 シートガイド
W シートガイドの開口部
BS1、BS2 シート撓み検出センサ
Se1、Se2 シート検出センサ
101、102 可動ガイド部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用のシートを複数の並行なシート搬送経路のそれぞれに沿って搬送し、画像形成部に通すことで該シートに画像を形成できる画像形成装置であり、
前記画像形成部は提供される画像情報に応じたトナー像を形成するための像担持体、前記像担持体上に形成されるトナー像を前記シートに転写する転写部材、前記トナー像が転写されたシートを該シートに該トナー像を定着させつつ送る定着装置、前記転写部材と前記定着装置の間の前記シートの撓みを検出するループ検出装置及び前記定着装置のシート送り速度の制御部を含んでおり、前記ループ検出装置は前記転写部材と前記定着装置の間に前記複数のシート搬送経路のそれぞれに対して配置されたシート撓み検出センサを含んでおり、前記各シート撓み検出センサは予め定めた許容シート撓みを超えるシート撓みを検出するシート撓み検出センサであり、前記制御部は、前記各シート撓み検出センサの検出結果、前記各シート撓み検出センサによる撓み検出対象のシートのサイズ、前記複数のシート搬送経路のうち該撓み検出対象シート搬送に用いられるシート搬送経路及び該撓み検出対象シートの予定画像形成枚数のうちの順位の組み合わせに基づいて、正常なトナー像転写及び正常なトナー像定着がなされるように該組み合わせに応じて予め定めておいた定着装置シート送り速度に前記定着装置のシート送り速度を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は前記定着装置の初期シート送り速度を前記転写部材によるシート送り速度より遅く設定する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部に接続され、ユーザにより操作可能な操作パネルが設けられており、前記検出対象シートのサイズ、前記用いるシート搬送経路及び前記予定画像形成枚数の情報は前記操作パネルから前記制御部へ入力される請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数のシート搬送経路のそれぞれに対してシート検出センサが配置されており、前記制御部は前記撓み検出対象シート搬送に用いられるシート搬送経路を前記シート検出センサによるシート検出結果に基づいて判断するとともに前記シート検出センサによるシート検出回数の積算値から前記撓み検出対象シートの前記予定画像形成枚数のうちの順位を判断する請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写部材と前記定着装置の間にシートガイドが設けられており、前記シートガイドは前記制御部の指示のもとに正規位置から遠ざかる後退位置へ移動可能な可動ガイド部材を含んでおり、前記制御部は前記複数の撓み検出センサのうちいずれかがシート撓みを検出すると、前記可動ガイド部材を前記後退位置へ後退させてシート撓み受け入れスペースを大きく設定する請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−225967(P2012−225967A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90668(P2011−90668)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】