説明

画像形成装置

【課題】 印加電圧の抑制と画質の向上のためにトナー像を記録材に転写する転写部において押圧部を二つ設けた構成において、上流側の転写部材に印加される電圧が大きくなるのを抑制した上で、トナー像が形成されない記録材の先端に下流側の転写部材において付与される電荷が大きくなるのを抑制することができない。
【解決手段】 上流側の転写内ローラは第1の抵抗で、下流側の転写内ローラは第1の抵抗より高い第2の抵抗となるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多様な記録材に対応するために、感光ドラム等の像担持体に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、その後中間転写体に形成されたトナー像を記録材に転写する転写部を有する画像形成装置が採用されている。
【0003】
特許文献1にはトナー像を記録材に転写する転写部の記録材搬送方向における幅を長くとることによって印加電圧の抑制と画質の向上とを行うために、転写部が中間転写体の内周面に接触する転写内ローラ2つと、中間転写体の外面に接触し、中間転写体を介して転写内ローラ2つを圧する転写外ローラとにより形成される構成が記載されている。特許文献1では、転写内ローラ二つが同じ部材によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−29054
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もし上流側と下流側の転写部材を構成するために高抵抗の部材を用いれば、トナー像を転写する転写電流を流すために電圧を大きくする必要が生じる。その結果転写部材の近傍で放電が生じやすくなる。しかし上流側の転写部材の上流側近傍で生じる放電は画像不良を引き起こすおそれがある。そこで上流側の転写部材に印加される電圧が大きくなるのを抑制するためには、転写部材を構成するために低抵抗の部材を用いるのが有効である。
【0006】
一方で転写部材を構成するために低抵抗の部材を用いれば、トナー像が形成されない領域が定電圧制御された電圧が印加された転写部材を通過するときに流れる電流が大きくなる。その結果トナー像が形成されない領域が転写部材を通過する時に付与される電荷が大きくなる。しかしトナー像が形成されない記録材の先端に下流側の転写部材において付与される電荷が大きくなると、記録材の先端が下流側の転写部材を抜けた後に中間転写体側に静電的に吸着されて分離不良を引き起こすおそれがある。
【0007】
すなわち上流側の転写部材に印加される電圧が大きくなるのを抑制しつつ、トナー像が形成されない記録材の先端に下流側の転写部材において付与される電荷が大きくなるのを抑制する構成が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体から転写されたトナー像を担持する移動可能な中間転写体と、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写内ローラと、前記中間転写体の移動方向において前記第1の転写内ローラより下流側に配置されて、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写内ローラと、前記中間転写体を介して前記第1の転写内ローラを第1の押圧部で圧して前記第2の転写内ローラを第2の押圧部で圧して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための転写外ローラと、前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに電圧を印加可能な電圧印加手段を備えて、前記電圧印加手段が前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに定電圧制御された転写電圧を印加することでトナー像を記録材に転写する画像形成装置において、前記第1の転写内ローラは第1の抵抗で、前記第2の転写内ローラは前記第1の抵抗より高い第2の抵抗となるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明により、上流側の転写部材に印加される電圧が大きくなることに起因する画像不良を抑制した上で、トナー像が形成されない記録材の先端に下流側の転写部材において付与される電荷が大きくなることに起因する記録材の分離不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略断面構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における、転写電流と転写電圧の関係を示す線図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における、転写の制御機構を示すブロック図である。
【図4】実施形態3のフローチャートを示す図である。
【図5】実施形態4のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
[画像形成装置の全体構成及び動作について]
先ず、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置100の概略断面構成を示す。
【0012】
Sa、Sb、Sc、Sdはトナー像を形成する画像形成部としてのプロセスユニットである。各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する。画像形成部Sa、Sb,Sc,Sdの構成は、用いられるトナーの色が異なる以外は同様の構成であるので、代表して画像形成部Saを用いて説明する。
【0013】
画像形成部Saは、像担持体としての感光ドラム1aと、感光ドラム1a表面を帯電する帯電手段としての帯電ローラ2aと、帯電された感光体ドラム表面を露光する露光手段としてのレーザースキャナ3aとを備える。さらに画像形成部Saはトナー像を現像する現像手段としての現像装置4aと、感光ドラム1aからトナー像を中間転写ベルト41に転写する一次転写手段としての一次転写ローラ53aとを備える。感光ドラム1aが回転駆動して、感光体ドラム1aの表面が帯電ローラ2aにより帯電される。帯電された感光体ドラム1a表面はレーザースキャナ3aによって露光されて、感光体ドラム1a上に静電潜像が形成される。静電潜像は、レーザースキャナ3の出力が画像情報に基づいてOFF/ONされることによって画像情報に応じて形成される。現像装置4aはイエロートナーを内包する。現像装置4aには所定の電圧が印加されており、静電潜像は現像装置4aを通過するときに現像されて、感光ドラム1a表面上にトナー像が形成される。現像方式としては、静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。一次転写ローラ53aは中間転写ベルト51を介して感光体ドラム1aを圧するように配置されて、中間転写ベルト51にトナー像を転写する一次転写部を形成する。感光ドラム1a上のトナー画像は、一次転写電源54aにより一次転写ローラ53aに一次転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト51へ転写する。感光ドラム1aに残ったトナーはドラムクリーナ6aによってクリーニングされる。
【0014】
なお一次転写ローラ53aとしては、外径8mmの芯金531と、芯金回りに設けられて厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層532とで構成される弾性ローラを用いた。一次転写ローラ53aの電気抵抗値は、約10Ω(23℃/50%RH)であった。尚、一次転写ローラ53aの電気抵抗値は、500g重の荷重の下で接地された金属ローラに当接された一次転写ローラ53aを50mm/secの周速で移動させ、芯金531に50μAの定電流を流して測定された電圧値から求められる。なおフルカラー画像を形成する場合には、各色のトナー像がそれぞれの一次転写部で順次中間転写ベルト51に転写して重畳する。
【0015】
中間転写ベルト51は、感光体ドラム1a、1b、1c、1dから転写されたトナー像を担持して搬送する中間転写体として機能する。中間転写ベルト51は外周面が感光体ドラム1a、1b、1c、1d表面に当接するように配置されており、複数の支持部材としての52,55,56a、56bによって張架されて、移動可能なベルト部材である。中間転写ベルト51として、表面抵抗率1012Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧100V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み80μmのPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いた。もちろんこれに限定する意図ではなく、中間転写ベルト51として、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂を用いてもよい。52は中間転写ベルト51の移動を駆動する駆動ローラとして機能する。詳細は後述するが、56a、56bはトナー像を記録材に転写するための二次転写内ローラ56として機能する。中間転写ベルト51は、ベルト駆動手段である中間転写ベルト駆動ローラ52による駆動力を受けて、図1中の矢印R3方向に周回移動する。中間転写ベルト51の移動に伴って、中間転写ベルト51上のトナー像は、転写ベルト91によってトナー像を記録材に転写する二次転写部まで搬送される。
【0016】
記録材を担持搬送する転写ベルト91は、複数の張架部材としての92、95によって張架されて、図示のR4向きに移動可能なベルト部材である。92は転写搬送ベルト91の移動を駆動する駆動ローラとして機能する。
転写搬送ベルト91としては、表面抵抗率1014Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧1000V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み80μmの、カーボンが分散されたPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いた。もちろんこれらに限定する意図ではなく、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂を用いてもよい。
【0017】
記録材は記録材収容部としてのカセット81に収容されている。記録材は、記録材収容部としてのカセット81からピックアップローラ82によって取り出されて、搬送ローラ83によって転写搬送ベルト91へ向けて搬送される。記録材は、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングと同期して搬送される。記録材は、吸着手段96に不図示のバイアス印加手段から印加されることで、転写搬送ベルト91の表面に吸着される。二次転写部に突入する前に予め記録材を転写搬送ベルト91に吸着させておくことで、二次転写部での記録材の搬送安定性を高めることができる。
【0018】
中間転写ベルト51からトナー像は転写搬送ベルト91に担持搬送された記録材へ二次転写部で転写される。トナー像が二次転写部で記録材に転写された後、記録材Pは転写搬送ベルト駆動ローラ92の近傍で転写搬送ベルト91から分離する。その後記録材は搬送ガイド97を伝って、トナー像を記録材に定着する定着手段としての定着装置7へと搬送される。なお二次転写部で記録材に転写せず中間転写ベルト51に残留したトナー(二次転写残トナー)は、中間転写ベルトクリーナ59によって除去、回収される。
【0019】
定着装置7は、回転自在に配設された定着ローラ71と、定着ローラ71に押圧しながら回転する加圧ローラ72と、を有する。定着ローラ71の内部には、ハロゲンランプ等のヒータ73が配設されている。そして、このヒータ73へ供給する電圧等を制御することにより、定着ローラ71の表面の温度調節が行われている。定着装置7に記録材Pが搬送されてくると、一定速度で回転する定着ローラ71と加圧ローラ72との間を記録材Pが通過する際に、記録材Pは、その表裏両面からほぼ一定の圧力、温度で加圧、加熱される。これにより、記録材Pの表面上の未定着トナー像は、溶融して記録材Pに定着される。こうして、記録材P上への画像形成が完了する。
【0020】
なお、本実施形態の画像形成装置は、従来の一般的な画像形成装置よりも生産性を高めるために、プロセス速度(感光ドラム1や中間転写ベルト51の周速、記録材Pの搬送速度)は700mm/secに設定されている。
【0021】
[二次転写部の構成]
本実施形態では、中間転写ベルト51を内周面側から張架する二次転写内ローラ56a、中間転写ベルト51の移動方向において二次転写内ローラ56aより下流側に配置されて中間転写ベルト51を内周面側から張架する二次転写内ローラ56bが設けられている。さらに転写搬送ベルト91を内周面側から張架する二次転写外ローラ57a、転写搬送ベルト91の移動方向において二次転写外ローラ57aより下流側で転写搬送ベルト91を内周面側から張架する二次転写外ローラ57bが設けられている。二次転写内ローラ56a、56b、二次転写外ローラ57a、57bが、中間転写ベルト51からトナー像を記録材に転写する二次転写部を形成する二次転写部材として機能する。
【0022】
上流側の二次転写外ローラ57a(第1の転写外ローラ)は、転写搬送ベルト91と中間転写ベルト51とを介して上流側の二次転写内ローラ56a(第1の転写内ローラ)と対向する位置に設けられている。つまり上流側の二次転写外ローラ57aは、転写搬送ベルト91と中間転写ベルト51とを介して上流側の二次転写内ローラ56aを押圧する押圧部(第1の押圧部N2a)を形成する。下流側の二次転写外ローラ57b(第2の転写外ローラ)は転写搬送ベルト91と中間転写ベルト51とを介して下流側の二次転写内ローラ56b(第2の転写内ローラ)と対向する位置に設けられている。つまり下流側の二次転写外ローラ57bは、転写搬送ベルト91と中間転写ベルト51とを介して下流側の二次転写内ローラ56bを押圧する押圧部(第2の押圧部N2b)を形成する。
【0023】
この様に押圧部を複数形成することで、トナー像を記録材に転写する二次転写部の記録材搬送方向における幅を長くとることができる。
【0024】
本実施形態ではトナー像を記録材に転写する二次転写電圧を印加可能な二次転写電圧印加手段として、二次転写電圧電源58a、58bが設けられている。
【0025】
本実施形態では図1、図3に示されるように、上流側の二次転写外ローラ57aは二次転写電圧電源58aに接続されて、上流側の二次転写内ローラ56aは接地される。下流側の二次転写外ローラ57bは二次転写電圧電源58bに接続されて、下流側の二次転写内ローラ56bは接地される。二次転写電圧電源58aが上流側の二次転写外ローラ57aに電圧を印加すると、電界が上流側の二次転写外ローラ57aと二次転写内ローラ57aとの間に形成される。二次転写電圧電源58bが下流側の二次転写外ローラ57bに電圧を印加すると、電界が下流側の二次転写外ローラ57bと二次転写内ローラ56bとの間に形成される。
【0026】
すなわちトナー像を記録材に転写するときには、トナー像を記録材に転写する二次転写電圧としてトナーの正規の極性(負極性)と逆極性の電圧が二次転写外ローラ57a、57bそれぞれに印加される。二次転写電圧印加により形成される転写電界は、正規の極性のトナーを中間転写ベルト51上から記録材Pに向けて移動させる方向である。この転写電界は、上流側の二次転写内ローラ56aと二次転写外ローラ57aとの間の第1の押圧部N2aと、下流側の二次転写内ローラ56bと二次転写外ローラ57bとの間の第2の押圧部N2bとの二か所に確実に形成される。その結果トナー像を記録材に転写する転写電流が流れる電流経路として、第1の押圧部N2aを介する経路と第2の押圧部N2bとの二つを形成する。
【0027】
この理由について説明する。画像形成装置の構成によってはトナー像を記録材に転写するために必要となる電流が大きくなる場合がある。しかし従来用いられている構成では、トナー像を記録材に転写する転写電流が流れる経路が一つであった。このような構成ではトナー像を記録材に転写するために必要となる電流値が大きい場合、二次転写部において印加する電圧を高くしなければならない。その結果二次転写部の上流側で放電が生じて、画像を乱すおそれがある。すなわちトナー像を転写するために必要となる電流値が大きい場合であっても、印加電圧が高くなるのを抑制する構成が望まれている。そこで本実施形態は、トナー像を転写する転写電流が流れる電流経路を二つ形成して、転写電流を分けて流す構成となっている。その結果、トナー像を転写する転写電流が流れる経路が一つであった従来の構成に比べて、二次転写部において印加する電圧が大きくなるのを抑制することができる。
【0028】
なお本実施形態では記録材Pを二次転写部で搬送する手段として、転写搬送ベルト91を採用している。その結果転写搬送ベルト91に記録材Pが保持されることで記録材Pの搬送が安定化して、二次転写部で記録材Pが中間転写ベルト51とずれるのを抑制することができる。もちろんこの構成に限定する意図ではなく、コスト低減を重視して転写搬送ベルト91を採用しない構成であってもよい。
【0029】
ところで本実施形態は二次転写内ローラ56a、56bを接地して、バイアスを印加する電源58a、58bを二次転写外ローラ57a、57bそれぞれに接続する構成である。もちろんこの構成に限定する意図ではない。
【0030】
また他の実施形態としては二次転写外ローラ57a、57bにバイアスを印加する電源を個別に設けるのではなくて共通化してもよい。
【0031】
他の実施形態としては一本の二次転写内ローラ56、2本の二次転写外ローラ57a、57bを備えて、二次転写内ローラ56を接地して、二次転写電圧電源58a、58bを二次転写外ローラ57a、57bに接続する構成でもよい。
【0032】
また他の本実施形態としては二次転写外ローラを3本以上備えて、押圧部を三つ以上形成する構成であってもよい。
【0033】
[二次転写部における電圧の制御]
本実施形態では二次転写電圧電源58a、58bによる印加電圧は制御部200によって制御される。制御部200の制御は、ユーザに指定された記録材の坪量情報、電流測定部581aによって測定される上流側の二次転写外ローラ57aを流れる電流値、電流測定部581bによって測定される下流側の二次転写外ローラ57bを流れる電流値に基づく。制御部200はCPU,ROM,RAMを含む。なお坪量とは、単位面積辺りの重さ(g/m)を示す単位で、記録材の厚みを示す値として一般的に用いられる。
【0034】
本実施形態では、トナー像を記録材に転写する二次転写電圧を適正化するために、調整電圧を印加するATVC(Auto Transfer Voltage Control)とよばれる調整工程がトナー像を記録材に転写する二次転写工程前の非通紙時に行われる。
【0035】
調整工程としてのATVCは、定電圧制御された複数の調整電圧が二次転写電圧電源により印加されて、調整電圧が印加された時に流れる電流がそれぞれ測定されることにより行われる。その理由は電圧と電流の相関関係を算出するためである。印加された複数の調整電圧とそれぞれ測定された電流との相関関係に基づいて二次転写に必要となる目標電流Itを流すための電圧V1が算出される。記録材が分担する記録材分担電圧V2を電圧V1に加えた電圧(V1+V2)が、調整工程に続く二次転写工程中は、定電圧制御された二次転写電圧の目標電圧Vtとして設定される。その結果二次転写電圧として所望の転写電流に対応する適正な電圧値が設定される。また二次転写中は二次転写電圧が定電圧制御された状態で印加されるので、記録材の幅が変わっても二次転写が安定した状態で行われる。
【0036】
本実施形態は二次転写電圧電源58a、58bが二次転写電圧を二次転写外ローラ57a、57bに印加する構成であるので、上流側と下流側の二次転写外ローラ57a、57bのそれぞれについて二次転写電圧を適正化する必要がある。
【0037】
上流側と下流側の二次転写外ローラ57a、57bの調整工程は並行して行われる。すなわち二次転写電圧電源58aが上流側の二次転写外ローラ57aに複数の調整電圧V1,V2を印加して、かつ二次転写電圧電源58bが複数の調整電圧V1,V2を下流側の二次転写外ローラ57bに印加する。さらにこの時に電流測定部581aがそれぞれの調整電圧V1,V2が二次転写ローラ57aに印加されたときの電流I1a、I2aを測定して、かつ電流測定部581bがそれぞれの調整電圧V1,V2が二次転写外ローラ57bに印加されたときの電流I1b、I2bを測定する。なお電流測定部581bによる下流側の二次転写外ローラ57bに流れる電流の測定は、上流側の二次転写外ローラ57aに電圧が印加された状態で行われる。そのため下流側の二次転写外ローラ57bの調整を画像形成時に近い状況で行うことができる。V1,V2,I1a、I2aの相関関係に基づいて上流側の二次転写外ローラ57a位置での二次転写に必要となる上流側の目標電流Itaを流すための電圧V1aが算出される。算出されたV1aに基づいて上流側の二次転写外ローラ57aに印加される二次転写電圧の目標電圧Vtaが設定される。同様にV1,V2,I1b、I2bの相関関係に基づいて下流側の二次転写外ローラ57b位置での二次転写に必要となる下流側の目標電流Itbを流すための電圧V1bが算出される。算出されたV1bに基づいて下流側の二次転写外ローラ57bに印加される二次転写電圧の目標電圧Vtbが設定される。
【0038】
なおトナー像すべてを記録材に転写するために必要となる目標電流の合計値は画像形成装置の構成、搬送速度等により予め設定される。本実施形態では、目標電流の合計値に対して上流側の目標電流Vtaが占める割合は50%、下流側の目標電流Vtbが占める割合は50%と、割合は同じになるように設定される。もちろんこの割合に限定する意図ではない。
【0039】
なお、図2は本実施形態の画像形成装置の二次転写部における、転写電圧と転写電流の関係を示している。下流側の二次転写外ローラ57bの位置では、上流側の二次転写外ローラ57aで転写されたトナーや記録材Pにチャージされた電荷があるのでトナー像は転写しにくい。すなわち、同じ電流を流すために必要となる電圧は、下流側の二次転写外ローラ57bの方が上流側の二次転写外ローラ57aよりもΔV高くなる。本実施形態では電圧差ΔVは800V程度になる。例えば50μAを流すために必要な印加電圧は、上流側の二次転写外ローラ57aでは4000Vであるのに対して、下流側の二次転写外ローラ57bでは4800Vとなる。
【0040】
本実施形態では上流側と下流側の二次転写外ローラ57a、57bに印加される二次転写電圧の目標電圧Vta、Vtbを設定するために、調整工程を上流、下流側の二次転写外ローラ57a、57bそれぞれについて行う構成である。しかしこれに限定する意図ではない。二次転写電圧の目標電圧Vta,Vtbを設定するために、いずれか一方の二次転写外ローラについて調整工程を行った上で、他方の二次転写外ローラについて調整工程を行う代わりに図2の関係を利用してもよい。すなわち上流側の二次転写外ローラ57aについての目標電圧Vtaの設定は、上流側の二次転写外ローラ57aについて調整工程を実行することで算出された電圧と電流の相関関係に基づいて行う。下流側の二次転写外ローラ57bについて目標電圧Vtbの設定は、上流側の二次転写外ローラ57aで算出された電圧と電流の相関関係を高電圧側に所定値シフトした関係に基づいて行う。その結果下流側の二次転写外ローラ57bについて調整工程を行わずに済む。
【0041】
[二次転写外ローラ57a、57bの抵抗]
本実施形態では、上流側の二次転写外ローラ57aの抵抗が下流側の二次転写外ローラ57bの抵抗と異なるように構成される。すなわち、下流側の二次転写外ローラ57bの抵抗が上流側の二次転写外ローラ57aの抵抗より高い。その結果、記録材搬送方向における幅を長くとるために上流側と下流側とで二つ転写部材を設けた画像形成装置において、上流側転写部材のさらに上流側での生じる放電に起因する画像劣化と、下流側転写部材での転写後の記録材の分離不良とを両立することができる。
【0042】
二次転写内ローラ56a、56bとしては、外径18mmの芯金561a、561bと、芯金561a、561b周りに設けられて厚さ2mmの導電性でソリッドのシリコーンゴム層562a、562bとによって構成される弾性ローラを用いた。二次転写内ローラ56a、56bの電気抵抗値は、一次転写ローラ53aと同様の測定方法において、約10Ωである。もちろん二次転写内ローラをこれらの数値のものに限定する意図ではない。なお二次転写内ローラの抵抗値は二次転写外ローラの抵抗値の100分の1以下に設定されるのが望ましい。その結果二次転写内ローラの抵抗が二次転写内ローラに比べて十分小さいとみなすことができる。
【0043】
二次転写外ローラ57aとしては、外径8mmの芯金571aと、芯金571a周りに配置されて厚さ4mmの導電性のEPDMゴムのスポンジ層572aと、によって構成される弾性ローラを用いた。二次転写外ローラ57bとしては、外径8mmの芯金571bと、芯金571b周りに配置されて厚さ4mmの導電性のEPDMゴムのスポンジ層572a、572bとによって構成される弾性ローラを用いた。
【0044】
本実施形態では、上流側の二次転写外ローラ57aとしては、抵抗値が、一次転写ローラ53aと同様の測定方法で50μAの定電流を流した場合に、約1×10Ωとなるものを用いた。下流側の二次転写外ローラ57bとしては、抵抗値が、一次転写ローラ53aと同様の測定方法で、50μAの定電流を流した場合に、約5×10Ωのものを用いた。なおここでは上流側の目標電流が50μAで、下流側の目標電流が50μAになる場合を想定している。
【0045】
すなわち、上流側の目標電流が下流側の目標電流が同じである場合には、上流側の二次転写外ローラ57aの抵抗(第1の抵抗)が下流側の二次転写外ローラ57bの抵抗(第二の抵抗)より低くなるように構成される。
【0046】
この理由について説明する。もし二次転写電圧電源58a、58bが接続された二次転写外ローラ57a、57bを構成するために高抵抗で同じ部材を用いれば、トナー像を転写する転写電流を流すために電圧を大きくする必要が生じる。その結果二次転写部材の近傍で放電が生じやすくなる。しかし上流側の二次転写外ローラ57aの上流側近傍で生じる放電は画像不良を引き起こすおそれがある。そこで上流側の二次転写外ローラ57aに印加される電圧が大きくなるのを抑制するためには、二次転写外ローラを構成するために低抵抗の部材を用いるのが有効である。
【0047】
一方で二次転写外ローラを構成するために低抵抗で同じ部材を用いれば次のような別の問題が生じる。二次転写部の抵抗値は、トナー像が形成されない領域が二次転写部を通過するとき、トナー像が形成された領域が二次転写部を通過する時に比べて、トナー像の抵抗成分だけ小さくなる。そのため二次転写外ローラの抵抗成分の影響は、トナー像が形成されない領域が二次転写部を通過するときに、トナー像が形成された領域が二次転写部を通過するときよりも、強くなる。二次転写外ローラを構成するために低抵抗で同じ部材を用いれば、トナー像が形成されない領域が定電圧制御された電圧が印加された転写部材を通過するときに流れる電流が大きくなる。そうすると記録材の先端の余白にはトナー像が形成されないので、記録材の先端に下流側の二次転写外ローラ57bにおいて付与される電荷が大きくなる。その結果記録材の先端が下流側の二次転写外ローラ57bを抜けた後に中間転写体側に静電的に吸着されて分離不良を引き起こすおそれがある。
【0048】
すなわち上流側の二次転写外ローラ57aに印加される電圧が大きくなるのを抑制しつつ、トナー像が形成されない記録材の先端に下流側の二次転写外ローラ57bにおいて付与される電荷が大きくなるのを抑制する構成が望まれている。
【0049】
そこで本実施形態では、上流側の二次転写外ローラ57aの抵抗(第1の抵抗)が、下流側の二次転写外ローラ57bの抵抗(第2の抵抗)より低いように構成される。そのため上流側の二次転写部材に印加される電圧が大きくなることに起因する画像不良を抑制した上で、トナー像が形成されない記録材の先端に下流側の転写部材において付与される電荷が大きくなることに起因する記録材の分離不良を抑制することができる。
【0050】
ところで本実施形態では、上流側の二次転写外ローラ57aについては抵抗が1×10Ωとなるものを用いた。もちろんこの数値に限定する意図ではない。上流側の二次転写外ローラ57aについては、抵抗が1×10Ω以上で3×10Ω以下のものを用いるのが望ましい。この理由について説明する。
【0051】
上流側の二次転写外ローラ57aの抵抗が高くなると転写電圧が大きくなり、飛び散りといった画像不良が生じるおそれがある。飛び散りといった画像不良は、電圧が4000Vを超えると顕著になる。そこで目標転写電流(本実施形態では50μAとする)に対応して印加される転写電圧が4000V以下となるように、二次転写外ローラ57aについては抵抗が3×10Ω以下となるものを用いるのが望ましい。その結果印加される転写電圧が4000V以下に押さえられて、飛び散りといった画像不良が生じるのが抑制される。一方で上流側の二次転写外ローラ57aの抵抗が過度に低くなると、記録材間で流れる電流が大きくなる。その結果二次転写電圧電源58aに流れる電流が許容されるレベルを超過するおそれがある。そこで二次転写外ローラ57aについては抵抗が1×10Ω以上となるものを用いるのが望ましい。
【0052】
ところで本実施形態では、下流側の二次転写外ローラ57bについては抵抗が5×10Ωとなるものを用いた。もちろんこの数値に限定する意図ではない。下流側の二次転写外ローラ57aについては、抵抗が3×10Ω以上で1×10Ω以下となるものを用いればよい。この理由について説明する。
【0053】
下流側の二次転写外ローラ57aの抵抗が低くなると記録材先端に流れる電流が大きくなり、転写後の記録材の分離性が悪化するおそれがある。そこで下流側の二次転写外ローラ57aについては抵抗が3×10Ω以上となるものを用いるのが望ましい。一方で下流側の二次転写外ローラ57aの抵抗が過度に高くなると、転写電圧が大きくなり、白花のような放電画像不良が生じるおそれがある。白花のような放電画像不良は、印加される電圧が6500Vを超えると顕著になる。そこで目標転写電流(本実施形態では50μAとする)に対応して印加される転写電圧が6500以下となるように、下流側の二次転写外ローラ57aについては抵抗が1×10Ω以下となるものを用いるのが望ましい。その結果印加される転写電圧が6500V以下に抑えられて、白花のような放電画像不良が生じるのが抑制される。
【0054】
<実施形態2>
本発明に係る第2の実施形態について説明する。第2の実施形態が第1の実施形態と重複する点については説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、二次転写電圧電源58a、58bが二次転写内ローラ56a、56bに接続されて、二次転写外ローラ57a、57bは接地される。なお二次転写内ローラ56a、56bに印加されるトナー像を転写する二次転写電圧の極性はトナーと同極性となる。
【0056】
本実施形態では二次転写電圧電源が接続される上流側の二次転写内ローラ56aの抵抗が第1の抵抗になるように構成されて、二次転写電圧電源が接続される下流側の二次転写内ローラ56bの抵抗(第二の抵抗)が第1の抵抗より高くなるように構成される。そのため上流側の二次転写部材に印加される電圧が大きくなることに起因する画像不良を抑制した上で、トナー像が形成されない記録材の先端に下流側の転写部材において付与される電荷が大きくなることに起因する記録材の分離不良を抑制することができる。
【0057】
二次転写外ローラ57a57bとしては、外径8mmの芯金571a、571bと、芯金571a、571b周りに配置されて厚さ4mmの導電性のEPDMゴムのスポンジ層572a、572bと、によって構成される弾性ローラを用いた。二次転写外ローラ57a、57bの電気抵抗値は、一次転写ローラ53aと同様の測定方法において、約10Ωである。もちろん二次転写外ローラ57a、57bをこれらの数値のものに限定する意図ではない。
【0058】
二次転写内ローラ56aとしては、外径18mmの芯金561aと、芯金561a周りに設けられて厚さ2mmの導電性でソリッドのシリコーンゴム層562aとによって構成される弾性ローラを用いた。二次転写内ローラ56bとしては、外径18mmの芯金561bと、芯金561b周りに設けられて厚さ2mmの導電性でソリッドのシリコーンゴム層562bとによって構成される弾性ローラを用いた。
【0059】
本実施形態では、上流側の二次転写内ローラ57aとしては、抵抗値が、一次転写ローラ53aと同じ測定方法で50μAの定電流を流した場合に、約1×10Ωとなるものを用いた。下流側の二次転写内ローラ57bとしては、抵抗値が、一次転写ローラ53aと同様の測定方法で50μAの定電流を流した場合に、約5×10Ωのものを用いた。
【0060】
ところで本実施形態は二次転写内ローラ56a、56bを電源58a、58bに接続して、二次転写外ローラ57a、57bを接地する構成である。もちろんこの構成に限定する意図ではない。
【0061】
他の実施形態としては二次転写内ローラ56a、56bに電圧を印加する電源を個別に設けるのではなくて共通化してもよい。
【0062】
他の実施形態としては2本の二次転写内ローラ56a、56bと、1本の二次転写外ローラ57を備えて、二次転写内ローラ56a、56bを電源58a、58bに接続して、二次転写外ローラ57を接地する構成でもよい。
【0063】
また他の本実施形態としては二次転写内ローラを3本以上備えて、押圧部を三つ以上形成する構成であってもよい。
【0064】
<実施形態3>
実施形態1と重複する部分については説明を省略する。
本実施形態では、制御部200が上流側目標電流Itaに対する下流側目標電流Itbの比率を記録材Pの厚みによって変更する。本実施形態では目標電流の合計を上流側電流経路と下流側経路とに分配する割合の設定を表1のマトリクスに基づいて行う。さらに制御部200は下流側目標電流Itbを上流側目標電流Itaより小さくする機能(第1の機能)と下流側目標電流Itbを上流側目標電流Itaよりも大きくする機能(第2の機能)とを備える。
【0065】
【表1】

【0066】
表1は、制御部200内に設けられている記録部に予め記録されている制御テーブルである。この制御テーブルは、記録材の坪量に応じて、上流側の二次転写外ローラ57aについての上流側目標電流Itaと、下流側の二次転写外ローラ57bについての下流側目標電流Itbとの割合を変化させるものである。坪量が150g/m以上である場合、上流側目標電流Itaの割合を30%、下流側目標電流Itbの割合を70%とする。坪量が70g/mより大きく150g/mより小さい場合、上流側目標電流Itaの割合を50%、下流側目標電流Itbの割合を50%とする。坪量が70g/m以下である場合、上流側目標電流Itaの割合を70%、下流側目標電流Itbの割合を30%とする。
【0067】
すなわち記録材の坪量が低い場合(第1の厚み)、上流側目標電流Itaに対する下流側目標電流Itbの比率を低く(第1の比率)して、記録材の坪量が高い場合(第1の厚みより厚い第2の厚み)、上流側目標電流Itaに対する下流側目標電流Itbの比率を高く(第1の比率より高い第2の比率)する。その結果記録材の坪量が低い場合に実行される画像を形成する画像形成モード(第1の画像形成モード)では、下流側の二次転写外ローラを流れる転写電流の比率が低くなり、記録材の坪量が高い場合に実行される画像形成モード(第2の画像形成モード)では、上流側の二次転写外ローラを流れる転写電流の比率が低くなる。すなわち本実施形態では制御部200が複数の画像形成モードを実行可能に構成される
【0068】
上流側目標電流Itaの割合と下流側目標電流Itbの割合を決定するフローチャートについて図4を用いて説明する。スタートすると(S01)、ユーザに設定された記録材の坪量情報が読み取られる(S02)。坪量が150g/m以上であるかどうかが判断される(S03)。記録材の坪量が150g/m以上である場合、上流側の二次転写外ローラ57aの上流側の転写電流を減らす制御が必要になる。設定された記録材の坪量が150以上の場合、制御部200によって、上流側目標電流Itaの割合が30%、下流側目標電流Itbの割合が70%に設定されて(S04)、終了する(S08)。その結果、上流側二次転写外ローラ57aに印加される電圧が大きくならず、上流側の二次転写外ローラ57aの上流側で放電が生じるのが抑制される。飛び散りといった画像不良が生じるのが抑制される。S03で記録材の坪量が150g/m以上ではない場合、記録材の坪量が70g/mより大きく150g/mより小さいかどうかが判断される(S05)。記録材の坪量が記録材の坪量が70g/mより大きく150g/mより小さい場合には、上流側目標電流Itaの割合が50%、下流側目標電流Itbの割合が50%に設定されて(S06)、終了する(S08)。S05で記録材の坪量が70g/mより大きく150g/mより小さくない場合、記録材は坪量が70g/m以下である。剛度の弱い薄紙等の記録材を転写搬送ベルト91から分離するために下流側の転写電流を減らす制御が必要になる。設定された記録材の坪量が70g/m以下の場合、制御部200によって、上流側目標電流Itaの割合が70%、下流側目標電流Itbの割合が30%に設定されて(S07)、終了する(S08)。その結果、下流側の二次転写外ローラ57bに印加される電圧が大きくならず、下流側の二次転写外ローラ57bの下流側に形成される電界が弱まり、二次転写後の記録材が中間転写ベルト51側に巻き付いたまま分離不良を生じるのが抑制される。
【0069】
記録材Pが厚紙(具体的には坪量が150gより大きい程度)である場合、特に記録材Pの先端や後端がカールしているときなどには、カールした部分が中間転写ベルト51と密着せずに空間が空いたままになりやすい。すなわち、中間転写ベルト51と記録材Pが接触しないまま、二次転写部近傍の転写電界の影響がある領域に突入することとなる。すると二次転写部よりも上流側で転写されるトナーの位置が安定せずに、飛び散り画像となるという問題が発生したり、中間転写ベルト51と記録材Pの間の空隙で放電現象が発生して、転写抜け画像となったりする。
【0070】
そこで、本実施形態では、上記の飛び散りや放電による転写不良を発生させないため、所定(ここでは坪量150g)よりも厚い記録材に対し、上流側の二次転写外ローラ57aに流す転写電流の比率を下げることとしている。上流側の転写部材に流す転写電流を下げ、印加電圧も下げることにより、飛び散りや放電による不良画像を回避することができる。
【0071】
次に記録材Pの厚みが薄い(具体的には坪量が70g以下程度)である場合について説明する。この場合二次転写部の下流において、転写搬送ベルト91に吸着されている記録材Pが、転写バイアスの影響をうけて中間転写ベルト51に引き寄せられ、巻きつくことがある。すなわち二次転写部における分離不良である。一方、紙が厚くてこしがある場合には、紙が転写バイアスにより受けて中間転写ベルト51に引き付けられる力よりも紙のこしが勝ってまっすぐに進もうとするため、分離不良は発生しにくい。そこで本実施形態では、所定(ここでは坪量70g)よりも薄い記録材に対し、下流側の二次転写外ローラ57bに流す転写電流の比率を下げることとしている。これにより転写バイアスによる紙を中間転写ベルト51へ引き付ける力を弱めることとなり、薄紙においても分離不良の発生しにくい構成を達成することが出来る。
【0072】
本実施例ではユーザが入力した坪量情報に基づいて制御を行っているが、画像形成装置にセンサーを設けて、センサーを利用して記録材の坪量を判断してもよい。センサーによって判断された坪量に基づいて制御部200が制御されると、大きな坪量の記録材用のカセットに小さな坪量の記録材が誤って収納されているような場合であっても、下流側の二次転写電流を減らす制御が行われる。すなわち、坪量の小さな記録材を収納する位置を誤っても、坪量の小さな記録材の分離不良が生じるのを抑制することができる。
【0073】
センサーとしては、記録材の搬送経路中に、搬送された記録材の重みを検知する重みセンサーを設けて、重みセンサーにより検知された重みと、記録材のサイズ情報(面積)とに基づいて、記録材の坪量を判断すればよい。あるいは、光の透過率を検知する透過型センサーを記録材の搬送経路中に設けて、搬送される記録材を透過する光の透過率から、記録材の厚さを判断してもよい。
【0074】
<実施形態4>
本発明に係る第4の実施形態について説明する。第4の実施形態が第1の実施形態と重複する点については説明を省略する。
本実施形態では、制御部200が上流側目標電流Itaに対する下流側目標電流Itbの比率を記録材の吸湿状態に応じて変更する機能を備える。本実施形態では吸湿状態を判断するために、絶対水分量を測定することが可能な測定手段として絶対水分量センサーが設けられている。本実施形態では記録材の吸湿状態を示す指標として絶対水分量(g/kg)を用いるが、温度や湿度(相対水分量)を用いてもよい。
【0075】
本実施形態では目標電流の合計を上流側電流経路と下流側経路とに分配する割合の設定を表2のマトリクスに基づいて行う。
【0076】
【表2】

【0077】
表2は、制御部200内に設けられている記録部に予め記録されている制御テーブルである。この制御テーブルは、絶対水分量に応じて、上流側の二次転写外ローラ57aについての上流側目標電流Itaの割合と、下流側の二次転写外ローラ57bについての下流側目標電流Itbの割合とを変化させるものである。絶対水分量が5g/kgより低い場合、上流側目標電流Itaの割合を30%、下流側目標電流Itbの割合を70%とする。絶対水分量が5g/kg以上で10g/kgより低い場合、上流側目標電流Itaの割合を45%、下流側目標電流Itbの割合を55%とする。絶対水分量が10g/kg以上で15g/kgより低い場合、上流側目標電流Itaの割合を55%、下流側目標電流Itbの割合を45%とする。絶対水分量が15g/kg以上でる場合、上流側目標電流Itaの割合を70%、下流側目標電流Itbの割合を30%とする。
【0078】
すなわち絶対水分量が高い(第1の水分量)場合、上流側目標電流Itaに対する下流側目標電流Itbの比率を下げて、絶対水分量が低い(第1の水分量より低い第2の水分量)場合、上流側目標電流Itaに対する下流側目標電流Itbの比率を上げる。
【0079】
その結果絶対水分量が高い場合に実行される画像を形成する画像形成モード(第1の画像形成モード)では、下流側の二次転写外ローラ57bを流れる転写電流の比率が低くなり、絶対水分量が低い場合に実行される画像を形成する画像形成モード(第2の画像形成モード)では、上流側の二次転写外ローラ57aを流れる転写電流の比率が低くなる。
【0080】
上流側目標電流Itaの割合と下流側目標電流Itbの割合を決定するフローチャートについて図5を用いて説明する。スタートすると(S01)、絶対水分量センサーに測定された絶対水分量が読み取られる(S02)。絶対水分量が5g/kgより低いかどうかが判断される(S03)。絶対水分量が5g/kgより低い場合、上流側の二次転写外ローラ57aの上流側の転写電流を減らす制御が必要になる。測定された絶対水分量が5g/kgより低い場合、制御部200によって、上流側目標電流Itaの割合が30%、下流側目標電流Itbの割合が70%に設定されて(S04)、終了する(S10)。その結果、上流側の二次転写外ローラ57aに電圧が大きくならず、上流側の二次転写外ローラ57aの上流側で放電が生じるのが抑制されて、飛び散りといった画像不良が生じるのが抑制される。S03で絶対水分量が5g/kgより低くない場合、絶対水分量が5g/kg以上で10g/kgより低いかどうかが判断される(S05)。絶対水分量が5g/kg以上で10g/kgより低い場合、上流側目標電流Itaの割合が45%に設定されて、下流側目標電流Itbの割合が55%に設定されて(S06)、終了する(S10)。S05で絶対水分量が5g/kg以上で10g/kgより低くない場合、絶対水分量が10g/kg以上で15g/kgより低いかどうかが判断される(S07)。絶対水分量が10g/kg以上で15g/kgより低い場合、上流側目標電流Iaの割合が55%に設定されて、下流側目標電流Itbの割合が45%に設定されて(S08)、終了する(S10)。S07で絶対水分量が10g/kg以上で15g/kgより低くない場合、上流側目標電流の割合が70%、下流側目標電流の割合が30%に設定されて(S09)、終了する(S10)。その結果、下流側の二次転写外ローラ57bに印加される電圧が大きくならず、下流側の二次転写外ローラ57bの下流側に形成される電界が弱まり、絶対水分量が多く記録材の剛度が低下する場合であっても、二次転写後の記録材が中間転写ベルト51側に巻き付いたまま分離不良を生じるのが抑制される。
【0081】
絶対水分量が低い場合には、トナーの帯電電荷量が大きくなるので、転写電流が高くなりやすくなる。しかし転写電流を高くするために印加電圧を高くすると、二次転写部の上流側で記録材Pが中間転写ベルト51と接する前に、トナーが飛び散ってしまう現象がおきやすくなる。そこで、本実施形態では、上記の飛び散りや放電による転写不良を発生させないため、絶対水分量が低いときに、上流側の二次転写外ローラ57aに流す転写電流の比率を下げることとしている。上流側の転写部材に流す転写電流を下げ、印加電圧も下げることにより、飛び散りや放電による不良画像を回避することができる。
【0082】
一方で絶対水分量が高い時には、記録材Pが水分を吸収することによるカール量が大きくなりやすく、また紙のこしが弱くなる。その結果二次転写部の下流において、転写搬送ベルト91に吸着されている記録材Pが、転写バイアスの影響をうけて中間転写ベルト51に引き寄せられ、巻きついてしまう場合がある。すなわち二次転写部における分離不良である。そこで本実施形態では、絶対水分量が高いときに、下流側の二次転写外ローラ57bに流す転写電流の比率を下げることとしている。これにより転写バイアスによる紙を中間転写ベルト51へ引き付ける力を弱めることとなり、薄紙においても分離不良の発生しにくい構成を達成することが出来る。
【符号の説明】
【0083】
1 感光ドラム
51 中間転写体
56 二次転写内ローラ
57 二次転写外ローラ
91 転写搬送ベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から転写されたトナー像を担持する移動可能な中間転写体と、
前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写内ローラと、
前 記中間転写体の移動方向において前記第1の転写内ローラより下流側に配置されて、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写内ローラと、
前記中間転写体を介して前記第1の転写内ローラを第1の押圧部で圧して前記第2の転写内ローラを第2の押圧部で圧して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための転写外ローラと、
前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに電圧を印加可能な電圧印加手段を備えて、前記電圧印加手段が前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに定電圧制御された転写電圧を印加することでトナー像を記録材に転写する画像形成装置において、
前記第1の転写内ローラは第1の抵抗で、前記第2の転写内ローラは前記第1の抵抗より高い第2の抵抗となるように構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から転写されたトナー像を担持する移動可能な中間転写体と、
前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写内ローラと、
前記中間転写体の移動方向において前記第1の転写内ローラより下流側に配置されて、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写内ローラと、
前記中間転写体を介して前記第1の転写内ローラを第1の押圧部で圧して前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写外ローラと、
前記中間転写体を介して前記第2の転写内ローラを第2の押圧部で圧して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写外ローラと、
前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに電圧を印加可能な電圧印加手段を備えて、前記電圧印加手段が前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに定電圧制御された転写電圧を印加することでトナー像を記録材に転写する画像形成装置において、
前記第1の転写内ローラは第1の抵抗で、前記第2の転写内ローラは前記第1の抵抗より高い第2の抵抗となるように構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から転写されたトナー像を担持する移動可能な中間転写体と、
前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写内ローラと、
前記中間転写体の移動方向において前記第1の転写内ローラより下流側に配置されて、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写内ローラと、
前記中間転写体を介して前記第1の転写内ローラを第1の押圧部で圧して前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写外ローラと、
前記第2の転写内ローラを第2の押圧部で圧して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写外ローラと、
前記中間転写体を介して前記第1の転写外ローラ及び前記第2の転写外ローラに電圧を印加可能な電圧印加手段を備えて、前記電圧印加手段が前記第1の転写外ローラ及び前記第2の転写外ローラに定電圧制御された転写電圧を印加することでトナー像を記録材に転写する画像形成装置において、
前記第1の転写外ローラは第1の抵抗で、前記第2の転写外ローラは前記第1の抵抗より高い第2の抵抗となるように構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から転写されたトナー像を担持する移動可能な中間転写体と、
前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための転写内ローラと、
前記中間転写体を介して前記転写内ローラを第1の押圧部で圧して前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写外ローラと、
前記中間転写体を介して前記転写内ローラを第2の押圧部で圧して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写外ローラと、
前記第1の転写外ローラ及び前記第2の転写外ローラに電圧を印加可能な電圧印加手段を備えて、前記電圧印加手段が前記第1の転写外ローラ及び前記第2の転写外ローラに定電圧制御された転写電圧を印加することでトナー像を記録材に転写する画像形成装置において、
前記第1の転写外ローラは第1の抵抗で、前記第2の転写外ローラは前記第1の抵抗より高い第2の抵抗となるように構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至2のいずれかに記載された画像形成装置において、前記第2の押圧部を流れる転写電流が前記第1の押圧部に流れる転写電流より小さくなるように、前記電圧印加手段が前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに電圧を印加するように制御する機能を持つ制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3乃至4のいずれかに記載された画像形成装置において、前記第2の押圧部を流れる転写電流が前記第1の押圧部に流れる転写電流より小さくなるように、前記電圧印加手段が前記第1の転写外ローラ及び前記第2の転写外ローラに電圧を印加するように制御する機能を持つ制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の抵抗は1×10Ω以上で3×10Ω以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項8】
前記第2の抵抗は3×10Ω以上で1×10Ω以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載された画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−233993(P2012−233993A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101428(P2011−101428)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】