説明

画像形成装置

【課題】画像形成用のフィルムを簡単に着脱交換することが出来、更に装着時に弛んだフィルムを簡単に巻き直すことが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】装置フレームに着脱可能に取付けたフィルムカセットにフィルムを巻装するスプールをカップリング手段で着脱可能に装着する。このカップリング手段をカセットに設けた軸芯部材と、スプールの端部と結合するカップリング部材と、これを結合方向に付勢する付勢スプリングと、カップリング部材の回転をロック状態とロック解除状態に規制するロック部材と、カップリング部材をスプール端部から離脱する操作部材とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードその他の記録媒体にインクフィルム、転写フィルムなどの画像形成フィルムで画像形成する画像形成装置に係わり、ロール状フィルムをフィルムカセットに収容するフィルム装填構造の改良に関する。
【0002】
一般に、カード、普通紙などの記録媒体にインクリボン(インクフィルム)で画像形成する装置は例えばサーマルプリンタなどとして知られている。この場合記録媒体にインクリボンで直接画像形成するダイレクトプリンティング方式と、転写フィルムに画像形成して記録媒体に転写する中間転写プリンティング方式が知られている。
【0003】
いずれのプリンティング方式にあってもフィルム(インクフィルム、転写フィルム;以下同様)を装置内に装填する必要があり、例えば引用文献1にはフィルムをロール状に巻回するスプールが開示されている。そしてフィルムを巻回した供給用スプールと巻取用スプールを装置内に装着して記録部にフィルムを供給している。
【0004】
また引用文献2にはフィルムカセットに一対のスプールと、これに巻回したフィルムを一体収納し、このカセットを装置内に装着する装置が提案されている。従来一般的には比較的薄い素材のインクフィルムはフィルムカセット装着構造で、比較的厚い素材の転写フィルムはスプール装着構造で装置に着脱可能に装着している。いずれ納着構造を作用するかは使用者の装着作業の容易性と、消耗品ロスなど経済性から選択されている。
【0005】
そこで、装着作業性と経済性から装置フレームにカセットを着脱可能に取付け、このカセットにフィルムを巻回したスプールを装着する装着構造が提案されている。この場合には装置からカセット(フィルム装着ユニット)を取り外し、このカセットにスプールに巻回したフィルムを装着することによって作業性の向上と消耗品ロスを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−276243号公報
【特許文献2】特開2006−281643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように記録媒体に画像形成するフィルムを装置に装填する際に、特許文献1のようにフィルムを巻回したスプールを交換する方法と、特許文献2のようにフィルムを収容したカセットを交換する方法が知られている。スプール交換方式では装置内にフィルムを装填する作業が煩雑で、装填時にフィルムに弛みが生し、画像形成に影響を及ぼす。またカセット交換方式では消耗品ロスが多く経済性に問題がある。
【0008】
そこで本発明は装置にフィルム装填ユニット(カセット)を着脱可能に取付け、このカセットにフィルムをロール状に巻回したスプールを着脱する交換方法を前提としている。この場合、カセットにスプールを装着するときスプールが傾くこととフィルムに弛みが生ずる問題が発生する。
【0009】
このスプールの傾きは、スプールを装置内の駆動機構に連結して回転させる必要があり、スプールの一端をカセットに装着し、駆動機構を連結する他端をフリーとする片持ち機構を採用する場合に生ずる。つまりスプールはその一端をカセットに設けたチャック部に嵌合支持された片持ち状態のためスプールが傾くことがあり、更に供給と巻取側の一対のスプールを正しい姿勢で片持ち支持することは困難である。
【0010】
またフィルムの弛みは、例えば供給スプールをカセットに装填し、フィルム端部を巻取スプールに装着する際に発生する。
【0011】
そこで本発明者は、カセットにフィルムを巻回したスプールを装着する際にこのスプールの一端部と係合するカップリング手段をスプールの軸方向に複数の位置に位置移動するように構成し、この位置をスプールが非装着状態の第1の位置と、カセットにスプールが装着された第2の位置と、カセットが装置に挿入されたときに装置内の駆動回転機構と連結される第3の位置に設定する。そして第1と第2の位置ではスプールの回転をロック状態に、第3の位置ではロック解除状態に設定するとの着想に至った。これによりカセットにスプールを装着する際にはカップリング手段はロックされ不用意に回転することが無く、またスプールの装着後には簡単な操作で弛んだフィルムを巻き直すことが可能となる。
【0012】
本発明は、画像形成用のフィルムを簡単に着脱交換することが出来、装置内の巻取駆動機構に正しい位置、姿勢で連結することが可能であり、更に装着時に弛んだフィルムを簡単に巻き直すことが可能な画像形成装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するため本発明は、装置フレームに着脱可能に取付けたフィルムカセットにフィルムを巻装するスプールをカップリング手段で着脱可能に装着する。このカップリング手段をカセットに設けた軸芯部材と、スプールの端部と結合するカップリング部材と、これを結合方向に付勢する付勢スプリングと、カップリング部材の回転をロック状態とロック解除状態に規制するロック手段とで構成する。
【0014】
そしてカップリング部材を軸方向に、スプールが非装着状態の第1の位置とスプールが装着された第2の位置と駆動回転軸に連結された第3の位置との間で位置移動可能に構成する。このときカップリング部材は第1の位置と第2の位置ではロック状態に、第3の位置では、ロック解除状態となるように軸芯部材に取付けることを特徴としている。
【0015】
その具体的構成を説明する。装置フレームと、装置フレームに着脱可能に取付けられたフィルムカセット(50)と、フィルムカセットに着脱可能に取付けられ外周に画像形成フィルムを巻装するスプール(47、48)と、フィルムカセットに配置されスプールを装着するカップリング手段(53)と、スプールの端部と着脱可能に結合してスプールを所定速度で回転する駆動回転軸とを備える。
【0016】
上記カップリング手段は、フィルムカセットに軸受け支持された軸芯部材(55)と、この軸芯部材に軸方向に移動可能に取付けられスプールの端部と結合可能なカップリング部材(56)と、このカップリング部材をスプールの結合方向に付勢する付勢スプリング(57)と、カップリング部材の回転を阻止するロック状態と回転を許容するロック解除状態との間で移動可能なロック部材(59)と、カップリング部材をスプール端部から離脱させ、ロック部材と係脱する操作部材(58)とで構成する。
【0017】
上記カップリング部材は軸芯部材の軸方向に、スプールが非装着状態の第1の位置(Pa)と、スプールが装着された第2の位置(Pb)と、駆動回転軸が連結された第3の位置(Pc)との間で付勢スプリングに抗して位置移動可能であって、ロック部材は、第1の位置と第2の位置ではロック状態、第3の位置では、ロック解除状態、となるように軸芯部材に取付ける。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、フィルムカセットにフィルムを巻装したスプールを着脱可能に装着する際にカセットに設けた軸芯部材にカップリング部材とその回転をロック状態とロック解除状態に規制するロック部材と付勢スプリングを設け、このカップリング部材をスプールが非装着状態の第1の位置とスプールが装着された第2の位置と駆動回転軸に連結された第3の位置との間で位置移動可能に構成し、第1の位置と第2の位置ではロック状態に、第3の位置ではロック解除状態となるようにしたものであるから以下の効果を奏する。
【0019】
まず、フィルムを巻装したスプールは装置本体に着脱自在のカセットに装着するから、装置本体に直接装着する場合に比べフィルム交換作業が容易となる。これと共にスプールは回転がロックされた状態のカップリング部材に装着されるから装着時にフィルムが弛む恐れが少ない。またカップリング部材に装着されたスプールは操作部材の操作で容易にカセットから取り外すことが出来るなどフィルムを巻装したスプールの着脱交換が至って容易である。
【0020】
更に本発明は操作部材を、回転可能にカップリング部材に連結することによってロック解除位置でカセットに装着したフィルムを巻き直すことが可能となり、装填時に生じたフィルム弛みを簡単に修正することが出来る。これと共にスプールの両端部をカセットに軸支持することによってフィルムを装置本体に正しい姿勢で装着することが出来る。
【0021】
そしてその為の構造は、スプールをカップリング部材とこれを摺動可能に支持する軸芯部材と、この軸芯部材に設けたロック部材とカップリング部材を付勢する付勢スプリングでスプールの着脱と、回転阻止と、弛み取り回転を簡単な操作で行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係わる情報記録装置の全体構成説明図。
【図2】図1の装置におけるフィルムカセットの装着状態を示す斜視図。
【図3】図2のフィルムカセットの分解斜視図。
【図4】フィルムカセットへのスプールの装着状態を示し、(a)は未装着状態であり、(b)は装着状態を示す。
【図5】フィルムカセットへのスプールの装着状態を示し、(a)はロック解除状態であり、(b)は離脱状態を示す。
【図6】カップリング手段の作用説明図であり、(a)は装置から取り出した状態であり、(b)はフィルムカセットに装着した状態を、(c)は装置フレームに装着した状態図。
【図7】図1の情報記録装置の制御構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる情報記録装置1の全体構成の説明図である。図1の装置は各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカードなどに情報を記録する。このため装置ハウジング2には情報記録部Aとカード供給部Cが備えられる。情報記録部Aは磁気記録部A1と、IC記録部A2と画像情報記録部A3で構成されている。この情報記録部Aは装置仕様に応じて種々の記録部、例えばバーコード記録部などで構成する。
【0024】
上記カード供給部Cは、複数枚のカードを収納するカセットで構成する。このカセットは例えば装置ハウジング2にホッパ形状のカセットを設けるか、装置ハウジングから分離したカードカセットで構成する。図示のものは後者の構成を示している。カードカセット3には図1に示すように複数のカードが立位姿勢で整列収納され、図1左端から右端にサポート部材12で繰り出される。このカードカセット3の先端には分離開口7が設けられ、ピックアップローラ19で最前列のカードから装置内に供給される。
【0025】
[情報記録部の構成]
図1に基づいて情報記録部Aの構成を説明する。上述のカードカセット3から送られたカード(記録媒体;以下同様)は搬入ローラ22から反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレーム(不図示)に旋回動可能に軸受け支持されたユニットフレームと、このフレームに支持された一対、或いは複数のローラ対で構成される。
【0026】
図示のものは距離を隔てて前後に配置された2つのローラ対20、21をユニットフレームに回転自在に軸支持されている。そしてユニットフレームは旋回モータ(パルスモータなど)で所定角度方向に旋回動し、これに取付けられているローラ対は搬送モータで正逆転方向に回転するように構成されている。この駆動機構は図示しないが、例えば1つのパルスモータでユニットフレームの旋回動と、ローラ対の回転をクラッチで切り換えるように構成する。
【0027】
従ってカードカセット3に準備されたカードはピックアップローラ19と分離ローラ(アイドルコロ)9で1枚ずつ分離され下流側の反転ユニットFに送られる。そして反転ユニットFはカードをローラ対20、21でユニット内に搬入し、ローラ対でニップした状態で所定角度方向に姿勢偏向することとなる。
【0028】
上記反転ユニットFの旋回方向外周には、磁気記録ユニット24と、非接触式IC記録ユニット23及び接触式IC記録ユニット27と、リジェクトスタッカ25が配置されている。尚図示28はバーコードリーダであり、例えば後述する画像形成部Bで印刷したバーコードを読み取って正誤判別(エラー判別)するためのユニットである。以下これらの記録ユニットをデータ記録ユニットという。
【0029】
そこで反転ユニットFで所定の角度方向に姿勢偏向されたカードをローラ対20、21で記録ユニットに移送すると、カード上に磁気的若しくは電気的にデータ入力することが可能となる。またこれらのデータ入力ユニットで記録ミスが生じた場合にはリジェクトスタッカ25に搬出する。
【0030】
上記反転ユニットFの下流側には画像形成部Bが設けられ、この画像形成部Bにカードカセット3からカードを移送する搬入経路P1が設けられ、この経路P1に前述の反転ユニットFが配置されている。また、搬入経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。この搬送ローラ29、30は正逆転切り換え可能に構成され、反転ユニットFから画像形成部Bにカードを搬送するのと同時に画像形成部Bからカードを反転ユニットFに搬送するようになっている。
【0031】
上記画像形成部Bの下流側には収容スタッカ65にカードを移送する搬出経路P2が設けられている。搬出経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0032】
尚、搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはディカールローラ36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することによってカール矯正する。このためディカールローラ36は図示しない昇降機構で図1上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0033】
「画像形成部」
画像形成部Bは、カードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成する。図示の装置は昇華型インクリボンで画像形成する場合を示している。
【0034】
画像形成部Bにはサーマルヘッド40とインクリボン41が配置されている。インクリボン41はカートリッジ42に収納され、このカートリッジ42に操出ロール43と巻取ロール44が収容され、巻取ロール44には図示しないワインドモータMr1が連結されている。
【0035】
そしてプラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。このサーマルヘッド40にはヘッドコントロール用IC74x(図6参照)が連結され、サーマルヘッド40を熱制御するようになっている。このヘッドコントロール用IC74xは画像データに従ってサーマルヘッド40を加熱制御することによってインクリボン41を後述する転写フィルム46に画像形成する。このためサーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取ロール44が回転し、インクリボン41を所定速度で巻き取るように構成されている。図示f1はサーマルヘッド40を冷やす為の冷却ファンである。
【0036】
上記転写フィルム46は供給スプール47と巻取スプール48に巻回され、この転写フィルム46はプラテンローラ31とヒートローラ33に転写画像を移送するように巻装されている。図示49は転写フィルム46の移送ローラであり、その周面にピンチローラ32aと32bが配置され、この移送ローラ49には図示しない駆動モータに連結されている。そして転写フィルム46は、インクリボン41と同一速度で図1反時計方向に移動する。この転写フィルムは後述するフィルムカセット50に収容され、装置ハウジング1に着脱可能に取り付けられている。
【0037】
また上記ヒートローラ33には、搬入経路P1に配置されているプラテンローラ31に転写フィルム46を介して圧接離間するように昇降機構(不図示)が設けられている。このヒートローラ33は加熱ローラで構成され、内部に配置されている加熱手段で転写フィルム46上の画像をカード表面に転写する。尚図示Se11はインクリボン41の位置検出センサであり、図示Se13は転写フィルム46の有無検出センサである。尚、画像形成部Bには装置内に発生した熱を外に出す為のファンf2が設けられている。
【0038】
「収容部」
収容部Iは図1に示すように画像形成部Bから送られたカードを収容スタッカ65に収容するように構成されている。この収容スタッカ65は図示しない昇降機構66とレベルセンサで、最上カードを検出し、昇降機構66で図1下側に下降移動するように構成されている。
【0039】
[フィルムカセットの構成]
上述の転写フィルム46を装填するフィルムカセットについて説明する。このフィルムカセット50(以下「Fカセット」という)は、装置ハウジング2に着脱可能に取付けられている。図示しないが図1前面側にフロントカバーが開閉自在に配置され、このフロントカバーから装置フレームにFカセット50を着脱するようになっている。上記Fカセット50は図2に示すようにユニットフレーム51(以下「Uフレーム」という)に供給スプール47と巻取スプール48を着脱可能に装着する。そして装置フレームにこのFカセット50を着脱可能に装着する。
【0040】
[スプール形状]
上記供給スプール47と巻取スプール48は、同一構造でフィルム巻回部に転写フィルム46を巻回する。図3に示す巻取スプール48についてその構造を説明する。同図に示すように左右一対のフランジ48a、48b間に巻回部(巻回胴)48cが形成されている。そして巻取スプール48の一端部には駆動連結部48dが、他端部にはカップリング係合部48eが設けられている。
【0041】
上記駆動連結部48dは、駆動回転軸の伝動ハブと係合する係合凹部を有している。またカップリング係合部48eは後述するカップリング部材と係合する係合面を有し、この係合面には係合突起48g(図4(a)参照)が形成してある。この係合突起48gはカップリング部材を手動で回転したときスプールを一体に回転させるためである。尚供給スプール47もこの巻取スプール48と同一構造で構成されている。
【0042】
上記スプールをFカセット50に装着する構造について説明する。図2及び図3に示すようにFカセット50にはスプール端部を支持する軸受部52とカップリング手段53が設けられている。図3で説明するとスプール47、48の一端部(図3左端部)を回転可能に支持する軸受部52が巻取スプール48と供給スプール47それぞれに対向配置されている。図示の軸受部52は半裁円形状(U字形状)でスプールの駆動連結部48dのフランジを嵌合支持するようになっている。
【0043】
スプール47、48の他端部(図3右端部)はFカセット50に配置されたカップリング手段53に支持される。このカップリング手段53は、軸芯部材55と、この軸芯部材に軸方向に移動可能に取付けられたカップリング部材56と、これをスプール結合方向に付勢する付勢スプリング57で構成されている。
【0044】
図4に示すようにFカセット50の側枠50fに軸芯部材55が回転可能に軸支持されている。図示のものはカセット側枠50fに軸芯部材55が回転可能に片持ち支持されている。そしてこの軸芯部材55にカップリング部材56が軸方向に移動可能に取り付けられている。カップリング部材56はスプールの一端面と係合する係合面56aを有する円板形状に構成され、これを支持する軸芯部材55に遊嵌され軸方向に移動可能に構成されている。
【0045】
なお、カップリング部材56にはテーパ56bが設けられている。これにより、スプール47、48がカップリング部材56の移動方向に対して直交する方向から挿入されるため(図3の破線矢印)、一端カップリング部材56が退避してからスプール47、48に係合することが可能になる。
【0046】
なお、カップリング部材56はスプールの軸方向に移動可能であれば良く、軸芯部材55に固着して両者一体に軸方向に移動可能に構成しても良い。
【0047】
上述のようにカップリング部材56にはスプールの結合方向(図4(a)左方向)に付勢する付勢スプリング57がカセット側枠50fとの間に設けてある。図示の付勢スプリング57は構造上2つに分離したスプリング57a、57bで構成しているが、これは1本のスプリングで構成することも可能である。図示55eは軸芯部材55に設けたEリング(突起であってもよい)であり、付勢スプリング57で付勢されるカップリング部材56を係止する左限ストッパである。
【0048】
上記軸芯部材55には、カップリング部材56をスプール端部から離脱する操作部材58と、カップリング部材の回転を阻止するロック部材59が次のように設けてある。まず、操作部材58は軸芯部材55に一体に設けられた操作摘みで構成されている。そしてこの操作部材58を図4右方向に移動すると軸芯部材55も一体に移動し、Eリング55eの作用でカップリング部材56も同図右側移動する。これによってカップリング部材56はスプール端部から離脱する。
【0049】
ロック部材59は、上記軸芯部材55若しくは操作部材58の回転を阻止する機構で構成され、図示のものは軸芯部材と一体の操作部材58を係止するロック部材がカセット側枠50fに一体に取り付けられている。その位置関係は後述するが、カセット側枠50fには操作部材(操作摘み)58の回転を係止する嵌合溝59aを有するロック部材59が一体に取り付けられている。
【0050】
従って、軸芯部材55を操作部材58で付勢スプリング57に抗して図4右方向に移動すると、操作部材58とロック部材59の嵌合が解除され、軸芯部材55は回転可能となる。また操作部材58の非操作状態では付勢スプリング57の作用で操作部材58はロック部材59に嵌合ロックされる。このように軸芯部材55の位置制御で回転を阻止されたロック状態と回転を許容するロック解除状態となる。
【0051】
そこで軸芯部材55とカップリング部材56との間には、一体に回転する連結部材60が設けてある。この軸芯部材55とカップリング部材56は一体に固定することも可能であるが、図示のものは軸芯部材55に沿ってカップリング部材56が軸方向に移動するように遊嵌している。このため軸芯部材55にはハブ状の連結部材60が一体に固着(基端部60aを軸芯部材55に圧入固定)してあり、この連結部材60の一端60bがカップリング部材56に摺動可能に嵌合してある。
【0052】
このように構成されたカップリング部材56は、付勢スプリング57の作用で、図4(a)に示す、左限位置Paに位置する。この状態(初期状態)ではカップリング部材56は付勢スプリング57で左限ストッパ(Eリング)55eに突き当たったスプール未装着位置である。この第1の位置Paではスプール他端側の軸受部52とのスパンはスプール47、48のスパンより短く設定されている。またカップリング部材56が第1の位置Paの時には、図4(a)の状態にロック部材59と操作部材58が嵌合して回転が阻止されたロック状態となる。
【0053】
次に、操作者が付勢スプリング57に抗してカップリング部材56を第2の位置Pbに移動してスプールを装着すると、図4(b)に示すようにカップリング部材56は軸芯部材55に沿って移動し、係合面56aがスプール端面と係合する。この状態では軸芯部材55は初期状態に維持され、ロック部材59と操作部材58が嵌合して回転が阻止されたロック状態に置かれる。
【0054】
このようにカップリング部材56は第1の位置Pa(初期状態;スプール未装着)と第2の位置Pb(スプール装着状態)では、ロック部材59で回転が阻止されたロック状態に保持される。
【0055】
このとき、例えばスプール47、48の装着を誤った(操作ミス)ときには、操作者は、操作部材58を図示右側に引き出し、カップリング部材56をスプール離脱位置(第4の位置)Pdに移動すると図5(b)の状態となり、スプールをカップリング部材56から取り外すことが出来る。また、スプールを装着する過程で転写フィルム46に弛みが生じたときには、操作部材58を図示右側に引き出し、カップリング部材56をロック解除位置(第3の位置)Pcに移動する。すると図5(a)の状態にロック部材59と操作部材58との係合が解除(ロック解除)され、この軸芯部材55は回転可能となる。そこで操作者は操作部材58を同図矢印方向に回転することによってフィルムを巻き直すことが可能となる。
【0056】
なお、上述のフィルムカセット50は装置フレームに装着された状態で、装置側の駆動回転軸(不図示)とスプールの駆動連結部48dが係合する。このとき装置側の駆動回転軸に押されてスプールは移動し、カップリング部材56は第3の位置Pcに移動する。カップリング部材56が移動することによって、カップリング部材56の一部(不図示)が連結部材60に係合し、連結部材60を押すことによって軸芯部材55が図中右側に移動する。なお、スプールが直接連結部材60に係合して軸芯部材55を移動させてもよい。そして図5(a)状態にロック部材59と操作部材58との係合が解除(ロック解除)され、スプールは装置側の駆動回転軸で回転することとなる。
【0057】
このように本発明は、軸芯部材55にカップリング部材56と操作部材58を装備し、カップリング部材56を、第1の位置Pa(スプール未装着)、第2の位置Pb(スプール装着)、第3の位置Pc(駆動連結)、第4の位置Pd(スプール取り外し)の位置に移動する。そして、第1第2の位置Pa、Pbではカップリング部材56の回転を阻止するロック状態に、第3第4の位置Pc、Pdではロック解除状態とすることを特徴としている。
【0058】
次に図6に基づいて上述のカップリング手段の作用を説明する。図6(a)はフィルムカセット50を装置から取り出した状態を示し、供給側、巻取側いずれのスプールも装着されていない状態を示す。カップリング部材56は、付勢スプリング57の作用を受けてストッパ(Eリング55e)に係止されている。この状態で軸受部52とカップリング部材56との間のスパンL1はスプールのスパンLSより短く設定されている。この状態のときカップリング部材56は図4(a)のロック状態に保持されている。
【0059】
従って図6(a)の状態ではカップリング部材56は回転が阻止され、軸受部52とカップリング部材56との間にフィルムを巻回したスプールを取り付ける操作が容易にとなる。
【0060】
図6(b)はスプールをフィルムカセット50に装着した状態を示し、巻取スプール48と巻取側のスプール47は、その一端をカセットの軸受部52に支持され、他端はカップリング部材56に支持されている。このカップリング部材56とスプール端面とは付勢スプリング57で弾圧固定されている。このときカップリング部材56は図4(b)のロック状態に保持される。従ってフィルムを巻回したスプールを取り付ける際に不用意にカップリング部材56が回転してフィルムが弛むことがない。
【0061】
図6(c)は、巻取スプール48と供給スプール47を装着したFカセット50を装置に装着した状態を示す。このときカップリング部材56は装置側の駆動回転軸に連結されこの連結によって軸芯部材55は図5(a)のロック解除状態となる。従って装置側の駆動回転軸を回転制御することによってフィルムを繰り出すことが可能となる。
【0062】
また、図6(b)の状態(カセットを装置に装着する前の状態)で、操作部材58を図5(a)の位置(第3の位置Pc)に移動(引き出す)することによってスプール装着時に発生したフィルム弛みを巻き直すことが出来る。
【0063】
なお、図示しないが図6(b)のフィルムを巻回したスプールがFカセット50に装着された状態で、操作部材58を第4の位置Pd(図5(b)参照)に移動することによって例えば使用済みの巻取スプール57を簡単にカセット50から取り外すことができる。
【0064】
[制御構成]
図7に本発明に係わる制御構成について説明する。制御部Hは、例えば制御CPU70で構成し、このCPU70にはROM71とRAM72が備えられている。そして制御CPU70には、データ入力制御部73と、画像形成制御部74と、カード搬送制御部75が構成されている。そしてカード搬送制御部75は搬入経路P1と搬出経路P2に配置されているカード搬送手段(図1に示す搬送ローラ対)を制御するように図示しない駆動モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。このカード搬送制御部75は反転ユニットFの旋回モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。
【0065】
上記カード搬送制御部75には、センサSe1〜Se10の状態信号を受信するようにそれぞれのセンサと電気的に接続されている。これと共にデータ入力制御部73からジョブ信号を受信するように接続されている。
【0066】
上記データ入力制御部73は、磁気記録部A1に内蔵されているデータR/W用のIC73xに入力データの送受信を制御するコマンド信号を送信し、同様にIC記録部A2のデータR/W用のIC73yにコマンド信号を送信するように構成されている。上記画像形成制御部74は、画像形成部Bでカードの表裏面への画像形成を制御する。
【0067】
そして上記RAM72には、データ入力部(磁気・IC記録部)でカード上にデータ入力する処理時間が、例えばデータテーブルに記憶されている。
【0068】
そして、カード搬送制御部75には監視手段H1と判断手段H2が設けられ、いずれも制御CPU70の制御プログラムに組み込まれている。この監視手段H1は、上記センサSe1〜Se10の状態信号と、データ入力制御部73のジョブ信号を受信して、装置内に存在するカードの搬送状態を監視するように構成されている。
【符号の説明】
【0069】
1 情報記録装置
2 装置ハウジング
3 カードカセット
9 分離ローラ(アイドルコロ)
12 サポート部材
19 ピックアップローラ(供給手段)
20 ローラ対
21 ローラ対
22 搬入ローラ
29 搬送ローラ
30 搬送ローラ
31 プラテンローラ
32a ピンチローラ
32b ピンチローラ
33 ヒートローラ
40 サーマルヘッド
46 転写フィルム
47 巻取スプール
48 供給スプール
48a フランジ
48b フランジ
48c 巻回部(巻回胴)
48d 駆動連結部
48e カップリング係合部
48f 係合突起
49 移送ローラ
50 フィルムカセット
50f 側枠
51 ユニットフレーム
52 軸受部
53 カップリング手段
55 軸芯部材
55e Eリング(左限ストッパ)
56 カップリング部材
56a 係合面
56b テーパ
57 付勢スプリング(57a、57b)
58 操作部材(ロック手段の一部)
59 ロック部材(ロック手段の一部)
59a 嵌合溝
60 連結部材
60a 基端部
60b 一端部
Pa 左限位置(第1の位置)(未装着位置)
Pb 第2の位置(装着位置)
Pc 第3の位置(駆動連結位置)
Pd 第4の位置(取り外し位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像形成する装置であって、
装置フレームと、
前記装置フレームに着脱可能に取付けられたフィルムカセットと、
前記フィルムカセットに着脱可能に取付けられ外周に画像形成フィルムを巻装するスプールと、
前記フィルムカセットに配置され前記スプールを装着するカップリング手段と、
前記スプールの端部と着脱可能に結合してスプールを所定速度で回転させる駆動回転軸と、
を備え、
前記カップリング手段は、
前記フィルムカセットに軸受け支持された軸芯部材と、
この軸芯部材に軸方向に移動可能に取付けられ前記スプールの端部と結合可能なカップリング部材と、
このカップリング部材をスプールの結合方向に付勢する付勢部材と、
前記カップリング部材の回転を阻止するロック状態と回転を許容するロック解除状態とに変位可能なロック手段と、
で構成され、
前記カップリング部材は前記軸芯部材の軸方向に、スプールが非装着状態の第1の位置と、スプールが装着された第2の位置と、前記駆動回転軸が連結された第3の位置との間で前記付勢部材に抗して位置移動可能であって、
前記ロック手段は、
前記第1の位置と第2の位置ではロック状態、
前記第3の位置では、ロック解除状態、
となるように前記軸芯部材に取り付けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
更に前記カップリング部材を前記スプール端部から離脱させる操作部材を備え、前記操作部材は、前記軸芯部材に取付けられ、前記カップリング部材を前記第3の位置から第4の位置に移動可能で、この第4の位置は前記カップリング部材と前記スプール端部が離脱状態に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記操作部材は、前記軸芯部材に取付けられると共に前記カップリング部材を回転可能にこのカップリング部材と連結していることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記スプールは前記フィルムカセットに両端部を軸支持され、その少なくとも一端部は前記カップリング手段で前記フィルムカセットに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成フィルムは、インクフィルム若しくは表面に形成された画像を記録媒体に転写する転写フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記軸芯部材は軸方向にロック位置とロック解除位置との間で移動可能に前記フィルムカセットに取付けられ、
前記フィルムカセットには、この軸芯部材がロック位置のとき回転を阻止するロック手段が設けられ、
前記カップリング部材とこの軸芯部材との間には一体に回転する連結部材が設けられ、
前記軸芯部材がロック位置のときには、この軸芯部材と前記カップリング部材は一体に回転阻止され、
前記軸芯部材がロック解除位置のときには、この軸芯部材と前記カップリング部材は一体に回転することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
更に、前記軸芯部材を移動させる操作部材を備え、前記操作部材は、前記軸芯部材をロック位置とロック解除位置との間で移動するように前記軸芯部材に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記フィルムカセットには、供給用スプールと、巻取用スプールが配置され、この供給用スプールと巻取用スプールとは、それぞれ少なくとも一端部は前記カップリング手段で前記フィルムカセットに装着されていることを特徴とする請求項1又は7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25020(P2012−25020A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165320(P2010−165320)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】