説明

画像形成装置

【課題】記録媒体の坪量が小さく(厚みが薄い)、透気度が短い記録媒体を使用する場合の裏抜け濃度の低減と、記録媒体の坪量が大きく(厚みが厚い)、透気度が長い記録媒体を使用する場合の低消費電力化と、ができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を形成する画像形成装置であって、前記記録ヘッドに対し前記記録媒体搬送方向の上流側にプレ加熱部が配置され、前記記録媒体搬送方向の下流側にポスト加熱部が配置され、プレ加熱とポスト加熱とを使用するモードと、ポスト加熱のみ使用するモードと、が切り替え可能であり、前記モードの切り替えは、前記記録媒体の坪量と厚みとの少なくとも1つの条件により行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式画像形成装置に係わり、特にインクの乾燥や定着に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット式の画像形成装置において、例えば特許文献1では、記録媒体のインクを吐出して記録を行なう領域よりも前の、まだ記録が行なわれていない領域の記録面上のインクのにじみ量を制御し、インクの、にじみ量が制御された記録面上にインクを付与するインク付与工程を有している。このインク付与工程の、にじみ量の制御は、加熱(プレ加熱)により記録媒体の温度を制御する、または記録媒体中の含水量を制御することにより行うものである。また、インク付与工程の後に、記録媒体上に付与されたインクを記録媒体に定着させる定着工程(ポスト加熱)を有しているものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1には、記録媒体の坪量、厚み、種類によるプレ加熱とポスト加熱の併用、またはポスト加熱のみの使用、のモード切り替えに関して記載されていない。また、プレ加熱によりインクが増粘し記録媒体への浸透性を低下させることについても記載がなく、この浸透性低下によりポスト加熱での必要熱量を増大させるという問題があった。
【0004】
まず表層から裏層までのインク浸透性がよい記録媒体(例えば普通紙)において、プレ加熱することによりインクを増粘させて裏抜け濃度を低減させるが、プレ加熱をしない場合は、裏抜け濃度が許容値に対して高くなり印刷品質に問題がある。
【0005】
また普通紙はプレ加熱により、記録ヘッド部を通過する時の用紙温度を上げるほど印刷汚れ濃度が高くなる。つまり、プレ加熱は、裏抜け濃度の低減に対し有効な反面、定着性(印刷汚れ)に対しては悪化させるという問題がある。これは、プレ加熱によりインクが増粘するので記録媒体に浸透し難くなったインクを記録媒体へ定着させるためには、インク水分の蒸発を促進させなければ定着できなくなるためである。
【0006】
次に表層から裏層までのインク浸透性が悪い記録媒体(例えばグロス紙)において、プレ加熱により、記録ヘッド部通過時の用紙温度を上げても裏抜け濃度は一定である。これは、インクを増粘させるためにインクが記録媒体へ浸透し難くなるが、グロス紙では、表層のインク受容層までしかインクが浸透しないため、プレ加熱が裏抜け濃度に影響を与えないためである。
【0007】
またグロス紙はプレ加熱により、記録ヘッド部を通過する時の用紙温度を上げるほど印刷面汚れ濃度が高くなる。このために、プレ加熱により記録ヘッドを通過する時の用紙温度を上げた場合には、ポスト加熱での定着必要熱量(消費電力)を増加させる必要があるという問題がある。
【0008】
従って、プレ加熱により記録ヘッド通過時の用紙温度を上げた場合には、ポスト加熱での定着必要熱量(消費電力)を増加させなければならないという問題があった。また、印刷速度を高速化する場合は、単位時間に供給可能な熱量に制限があるために、加熱時間を確保するためには装置サイズの大型化が必要となるという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、記録媒体の坪量が小さく(厚みが薄い)、透気度が短い記録媒体を使用する場合の裏抜け濃度の低減と、記録媒体の坪量が大きく(厚みが厚い)、透気度が長い記録媒体を使用する場合の低消費電力化と、ができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を形成する画像形成装置であって、前記記録ヘッドに対し前記記録媒体搬送方向の上流側にプレ加熱部が配置され、前記記録媒体搬送方向の下流側にポスト加熱部が配置され、プレ加熱とポスト加熱とを使用するモードと、ポスト加熱のみ使用するモードと、が切り替え可能であり、前記モードの切り替えは、前記記録媒体の坪量と厚みとの少なくとも1つの条件により行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、記録媒体の坪量が小さく(厚みが薄い)、透気度が短い記録媒体を使用する場合の裏抜け濃度の低減と、記録媒体の坪量が大きく(厚みが厚い)、透気度が長い記録媒体を使用する場合の低消費電力化と、ができる画像形成装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】プレ加熱による記録ヘッド部通過時の用紙温度上昇に対する裏抜け濃度の状況(普通紙)を示す図である。
【図3】プレ加熱による記録ヘッド部通過時の用紙温度上昇に対する印刷汚れ濃度の状況(普通紙)を示す図である。
【図4】プレ加熱による記録ヘッド部通過時の用紙温度上昇に対する裏抜け濃度の状況(グロス紙)を示す図である。
【図5】プレ加熱による記録ヘッド部通過時の用紙温度上昇に対する印刷汚れ濃度の状況(グロス紙)を示す図である。
【図6】加熱方式による印刷汚れ低減効果(普通紙)を示す図である。
【図7】加熱方式による印刷汚れ低減効果(グロス紙)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施の形態について以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。画像形成装置10は、記録媒体1とサクション部2とプレ加熱部3と記録ヘッド部4とポスト加熱部5とアウトフィードローラ6とニップローラ7とを主に備えて構成される。
【0015】
画像形成装置10の記録媒体1は、記録媒体1を吸着するサクション部2を経て、プレ加熱部3に搬送され、記録媒体1の搬送方向に沿って配置された記録ヘッド部4と、ポスト加熱部5を通過し、アウトフィードローラ6とニップローラ7にて装置外に排出される。つまり記録媒体1は、図1中のX方向に搬送される。
【0016】
また、記録媒体1の搬送経路には、図示しない複数のガイドローラ8が設けられている。
【0017】
また記録ヘッド部4にて、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分減少に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分減少率30wt%までは5.0以下であり、かつ、水分減少率30−45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクを記録媒体方向へ飛翔させ、画像形成している。
【0018】
記録媒体1は、サクション部2とアウトフィードローラ6、ニップローラ7間で適正な張力を付与され、記録媒体1のY方向のばたつきが抑制可能となっている。プレ加熱部3、及びポスト加熱部5には、複数の赤外線ヒータが設置され、記録媒体1の温度を制御可能な構成となっている。
【0019】
図2は、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分減少に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分減少率30wt%までは5.0以下であり、かつ、水分減少率30−45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクを使用し、記録媒体1として普通紙(坪量:81g/m2(用紙厚:100μm)、透気度:18秒)に印刷した場合のプレ加熱3にて加熱された記録媒体1が記録ヘッド部4を通過する際の温度と裏抜け濃度(印刷面のインクが非印刷面からみた時に透けて見える現象)の関係を示す図である。
【0020】
図2より記録ヘッド部4通過時の用紙温度を上げるほど裏抜け濃度が低下することが分かる。つまり、プレ加熱3は、記録ヘッド4から記録媒体面1に向かって飛翔中のインクの水分の蒸発、もしくは、記録媒体に着弾直後のインクの水分の蒸発を促進させ、インクの水分が減少することによりインクを増粘させるため、インクが記録媒体1へ浸透し難くなり、裏抜け濃度を低減する効果が生じている。また、プレ加熱3をしない場合は、普通紙(坪量:81g/m2(用紙厚:100μm)、透気度:18秒)では、裏抜け濃度が許容値に対して高く印刷品質に問題があることが分かる。
【0021】
図3は、上記の図2と同じインクと記録媒体(普通紙)において、プレ加熱3にて加熱された記録媒体1が記録ヘッド部4を通過する際の温度と用紙に印刷されたインクがニップローラ7に転写し、この転写インクが用紙に再転写することによる印刷面の汚れ濃度(以下、印刷汚れ濃度と略す)に関係を示す図である。
【0022】
図3より記録ヘッド部4通過時の用紙温度を上げるほど印刷汚れ濃度が高くなることが分かる。
つまり、プレ加熱3は裏抜け低減に対し有効な反面、定着性(印刷汚れ)に対しては悪化させることになる。この原因をインクを記録媒体1へ定着させるための手法により説明する。まず、インクを記録媒体1へ定着するための手法としては、(A)記録媒体1へ浸透させること、(B)水分を蒸発させること、の2種があるが、プレ加熱3により増粘し、浸透し難くなったインクを記録媒体1へ定着させるためには、水分の蒸発を主としインクを記録媒体1に定着する必要が生じ、より多くのインク水分を蒸発させなければ定着できなくなるため定着性が悪くなる。そのため、プレ加熱3により記録ヘッド4通過時の用紙温度を上げた場合には、ポスト加熱5での定着必要熱量(消費電力)を増加させる必要がある。また、印刷速度を高速化する場合は、単位時間に供給可能な熱量に制限があるので、加熱時間を確保するために装置サイズの大型化が必要となる。
【0023】
図4は、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分減少に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分減少率30wt%までは5.0以下であり、かつ、水分減少率30−45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクを使用し、記録媒体1としてグロス紙(坪量:81g/m2(用紙厚:100μm)、透気度:6000秒)に印刷した場合のプレ加熱3にて加熱された記録媒体1が記録ヘッド部4を通過する際の温度と裏抜け濃度の関係を示す図である。
【0024】
図4より記録ヘッド部通過時の用紙温度を上げても裏抜け濃度は一定であることが分かる。つまり、プレ加熱3は、記録ヘッド4から記録媒体1に向かって飛翔中のインクの水分の蒸発もしくは、記録媒体に着弾直後のインクの水分の蒸発を促進させ、インクの水分が蒸発することによりインクを増粘させるため、インクが記録媒体1へ浸透し難くなるが、グロス紙では、表層のインク受容層までしかインクが浸透しないため、プレ加熱3が裏抜け濃度に影響を与えないのである。尚、プレ加熱無しでも裏抜け濃度は、許容値に対して低く印刷品質上の問題がないことが分かる。
【0025】
図5は、プレ加熱3にて加熱された記録媒体1が記録ヘッド部4を通過する際の温度と印刷汚れ濃度の関係を示す図である。
【0026】
図5より、記録ヘッド部4通過時の用紙温度を上げるほど印刷面汚れ濃度が高くなることが分かる。つまり、裏抜け濃度に変化がなくてもプレ加熱3によるインク増粘によりグロス紙の表面のインク受容層へのインク浸透を阻害するためである。そのため、プレ加熱3により記録ヘッド4通過時の用紙温度を上げた場合には、ポスト加熱5での定着必要熱量(消費電力)を増加させる必要があることが分かる。また、インクの粘度上昇傾向が異なっても水分減少により、増粘するインクを使用すれば、上記と同様の問題が発生することになる。
【0027】
また、インクが少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分減少に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分減少率30wt%までは5.0以下であり、かつ、水分減少率30−45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクを使用する場合は、記録媒体表面に着弾し水分が記録媒体に吸収されることにより、急激に増粘するため、記録媒体表面でのにじみが少なく問題にならないが、裏抜けに対しては、上述したことにより記録媒体の厚みが薄い場合に問題になる。
【0028】
図6は、普通紙に印刷する場合の加熱方式による印刷汚れ低減効果を説明する図である。また図7は、グロス紙に印刷する場合の加熱方式による印刷汚れ低減効果を説明する図である。図6及び図7に対する詳細な説明については以下に後述する。
【0029】
(第1の実施形態)
プレ加熱部3とポスト加熱部5は、プレ加熱部3+ポスト加熱部5を使用するモードと、ポスト加熱部5のみを使用するモードと、の切り替えが可能となっている。各々のモードの選択条件としては、以下に詳細に説明する。
【0030】
<プレ加熱部3+ポスト加熱部5を使用するモード>
記録媒体厚み(t):t≦120μm もしくは、記録媒体坪量(g):g≦105g/m2の場合 または、記録媒体の透気度(s):s≦25秒 の場合
<ポスト加熱部5のみを使用するモード>
記録媒体厚み(t):120μm<t もしくは、記録媒体坪量(g):105g/m2<gの場合 または、記録媒体の透気度(s):25秒<s の場合
【0031】
図1に示した画像形成装置10の構成にて普通紙(用紙坪量81g/m2(用紙厚:100μm)、透気度:18秒)を印刷した場合の一例を図2及び図6を参照して説明する。
【0032】
上述したモード選択条件より、プレ加熱部3+ポスト加熱部5を併用して乾燥・定着を実施した例である。
【0033】
図2は、プレ加熱部3による記録ヘッド部4通過時の用紙温度に対する裏抜け濃度の状況(普通紙)を示しており、プレ加熱部3では、裏抜け濃度を許容値に抑えることができるように記録ヘッド部4通過時の用紙温度がA℃となるように加熱を行っている。
【0034】
図6は、用紙温度に対する印刷汚れの状況(普通紙)を示す図である。図中の(a)〜(c)は、(a)プレ加熱での汚れ悪化効果、(b)プレ加熱+ポスト加熱での汚れ低減効果、(c)ポスト加熱のみでの汚れ低減効果を示している。
【0035】
図6の(a)プレ加熱での汚れ悪化効果より、用紙温度をA℃とした場合、ポスト加熱3を行わない場合の用紙に印刷されたインクがニップローラ7に転写し、この転写インクが用紙に再転写することによる印刷面の汚れ濃度(以下、印刷面汚れ濃度と略す)は、b[D]となる。
【0036】
図6の(b)プレ加熱3+ポスト加熱5での汚れ低減効果より、ポスト加熱5では、b[D]を0[D]に低減可能なC[℃]まで用紙を加熱している。上述した説明によるプレ加熱3とポスト加熱5により裏抜け濃度を許容値に保ちつつ、印刷面汚れのない乾燥・定着が可能となる。
【0037】
一方、プレ加熱3での用紙昇温を実施しない場合は、裏抜け濃度は許容レベルではないが、図6の(c)ポスト加熱のみでの汚れ低減効果によりa[D]を0[D]に低減可能なB[℃]で印刷汚れのない印刷が可能となり、裏抜け濃度を許容レベルに抑えるために用紙温度Δt1=B[℃]−C[℃]分の追加の熱量が必要になっている。
【0038】
本実施形態では、プレ加熱部3+ポスト加熱部5を使用するモードと、ポスト加熱部5のみを使用するモードと、を上述した条件で切り替えて使用するため、用紙坪量、厚みが大きく、プレ加熱3を行わなくても裏抜け濃度が許容できる場合には、プレ加熱3を使用しないため、用紙温度をΔt1分増加させる熱量を低減することが可能であり、用紙坪量、厚みが小さい場合の裏抜け低減と用紙坪量、厚みが大きい場合の低熱量化を図ることが可能となる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、図1に示した画像形成装置10の構成にてグロス紙、(用紙坪量81g/m2(用紙厚:100μm)、透気度:6000秒)を印刷した場合の一例を、図4及び図7を参照して説明する。
【0040】
上述したモード選択条件により、ポスト加熱5のみで乾燥・定着を実施している。
【0041】
図4は、プレ加熱3にて加熱された記録媒体1が記録ヘッド部4を通過する際の温度と裏抜け濃度の状況(グロス紙)を示しており、図2に示す普通紙での状況のようにプレ加熱3による裏抜け濃度の低減効果がなく、プレ加熱を実施しなくても裏抜け濃度は、許容値以下となっている。
【0042】
図7は、用紙温度に対する印刷汚れの状況(グロス紙)を示す図である。図中の(a)〜(c)は、(a)プレ加熱での汚れ悪化効果、(b)プレ加熱+ポスト加熱での汚れ低減効果、(c)ポスト加熱のみでの汚れ低減効果を示している。
【0043】
上述したモード選択条件より、ポスト加熱5のみで乾燥・定着を実施しているため、プレ加熱3無しでの汚れ濃度:c[D]を0[D]とするためにポスト加熱で用紙温度をD[℃]としており、この乾燥・定着条件にて裏抜け濃度を許容値以下に保ちつつ、印刷汚れのない乾燥・定着が可能となる。
【0044】
本実施形態では、プレ加熱部3+ポスト加熱部5を使用するモードと、ポスト加熱部5のみを使用するモードと、を上述した条件で切り替えて使用するため、グロス紙でのプレ加熱による印刷汚れを防止するために必要な用紙温度をΔt2=E[℃]−D[℃]上昇させるための熱量を低減可能である。
【0045】
上述した説明による図7でのE[℃]は、図6でのC[℃]よりも高くなるため、用紙の種類(例えば普通紙、グロス紙、マット紙)、透気度によるモード切替だけでも熱量低減に有効である。
【0046】
なお図1に示した実施形態では、加熱部に赤外線ヒータを使用しているが、これに限ることはなく、中空ドラムの内部にハロゲンヒータ等を有する構成とした加熱ドラム式の加熱とした場合も同様の結果を得ることができる。
【0047】
また、図1では、記録媒体の印刷面を加熱する構成としているが、裏面を加熱することでも同じ効果を得ることができる。
【0048】
<本実施形態の作用・効果>
上記の実施形態によれば、本発明の第1の手段は、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分減少に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分減少率30wt%までは5.0以下であり、かつ、水分減少率30−45wt%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクもしくは、水分の減少に伴い粘度が上昇するように構成されたインクを記録ヘッド4により記録媒体1に吐出し画像を形成し、前記記録ヘッド4に対し、前記記録媒体1の搬送方向の上流の加熱部(プレ加熱)3及び下流の加熱部(ポスト加熱)5が配置された印刷装置において、プレ加熱3+ポスト加熱5を使用するモードとポスト加熱5のみ使用するモードとが切り替え可能であり、前記モードの切り替えを記録媒体の坪量もしくは、厚みにより行うようにしたことにより、記録媒体1の坪量、厚みが大きい場合におけるプレ加熱3でのインク増粘による記録媒体への浸透性低下に伴うポスト加熱5の熱量増加と記録媒体1の坪量、厚みが小さい場合における裏抜け濃度の低減を両立できる。
【0049】
また上記の実施形態によれば、本発明の第2の手段は、前記モードの切り替えを記録媒体の坪量(g)で行う場合は、
プレ加熱3+ポスト加熱5を使用するモード:g≦105g/m2
ポスト加熱5のみ使用するモード:105g/m2<g
とし、前記モードの切り替えを記録媒体の厚み(t)にて行う場合は、
プレ加熱3+ポスト加熱5を使用するモード:t≦120μm
ポスト加熱5のみ使用するモード:120μm<t
とすることにより、記録媒体1の坪量、厚みが大きい場合におけるプレ加熱3でのインク増粘による記録媒体への浸透性低下に伴うポスト加熱5の熱量増加と記録媒体1の坪量、厚みが小さい場合における裏抜け濃度の低減を両立できる。
【0050】
また上記の実施形態によれば、本発明の第3の手段は、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分減少に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分減少率30wt%までは5.0以下であり、かつ、水分減少率30〜45wt%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクもしくは、水分の減少に伴い粘度が上昇するように構成されたインクを記録ヘッド4により記録媒体1に吐出し画像を形成し、前記記録ヘッド4に対し前記記録媒体1の搬送方向の上流の加熱部(プレ加熱)3及び下流の加熱部(ポスト加熱)5が配置された印刷装置において、プレ加熱3+ポスト加熱5を使用するモードとポスト加熱5のみ使用するモードが切り替え可能であり、前記モードの切り替えを記録媒体1の種類(表層から裏層までのインク浸透性差異)、透気度により行うようにしたことにより、記録媒体1が表層から裏層までのインク浸透性が悪い場合や透気度が長い場合におけるプレ加熱3でのインク増粘による記録媒体への浸透性低下に伴うポスト加熱5の熱量増加と記録媒体1が表層から裏層までのインク浸透性が良い場合や透気度が短い場合における裏抜け濃度の低減を両立できる。
【0051】
また上記の実施形態によれば、本発明の第4の手段は、前記モードの切り替えを記録媒体1の種類で行う場合は、
プレ加熱3+ポスト加熱5を使用するモード:表層から裏層までのインク浸透性が良い記録媒体(例えば普通紙)
ポスト加熱5のみ使用するモード:表層から裏層までのインク浸透性が悪い記録媒体(例えばグロス紙、マット紙)
とし、記録媒体の透気度(s)で行う場合は、
プレ加熱3+ポスト加熱5を使用するモード:s≦25秒
ポスト加熱5のみ使用するモード:25秒<s
とすることにより、記録媒体1が表層から裏層までのインク浸透性が悪い場合や透気度が長い場合におけるプレ加熱3でのインク増粘による記録媒体への浸透性低下に伴うポスト加熱5の熱量増加と記録媒体1が表層から裏層までのインク浸透性が良い場合や透気度が短い場合における裏抜け濃度の低減を両立できる。
【0052】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0053】
本発明に係る画像形成装置は、前記モードの切り替えを前記記録媒体の坪量で行う場合は、前記記録媒体秤量が105g/m2以下では前記プレ加熱と前記ポスト加熱とを使用するモードとし、前記記録媒体秤量が105g/m2を超える場合では前記ポスト加熱のみ使用するモードとし、前記モードの切り替えを前記記録媒体の厚みにて行う場合は、前記記録媒体厚さが120μm以下では前記プレ加熱とポスト加熱とを使用するモードとし、前記記録媒体厚さが120μmを超える場合では前記ポスト加熱のみ使用するモードとすることを特徴とする。
【0054】
また本発明に係る画像形成装置は、前記モードの切り替えは、前記記録媒体の表層から裏層までのインク浸透性と前記記録媒体の透気度との少なくとも1つの条件により行うことを特徴とする。
【0055】
また本発明に係る画像形成装置は、前記モードの切り替えを前記記録媒体の表層から裏層までのインク浸透性で行う場合は、前記表層から裏層までのインク浸透性が良い記録媒体は前記プレ加熱と前記ポスト加熱とを使用するモードとし、前記表層から裏層までのインク浸透性が悪い記録媒体は前記ポスト加熱のみ使用するモードとし、前記モードの切り替えを前記記録媒体の透気度で行う場合は、前記記録媒体の透気度が25秒以下では前記プレ加熱と前記ポスト加熱とを使用するモードとし、前記記録媒体の透気度が25秒を超える場合では前記ポスト加熱のみ使用するモードとすることを特徴とする。
【0056】
また本発明に係る画像形成装置は、前記インク浸透性が良い記録媒体は普通紙であり、前記インク浸透性が悪い記録媒体はグロス紙とマット紙とであることを特徴とする。
【0057】
また本発明に係る画像形成装置は、前記インクは、水分の減少に伴い粘度が上昇するように構成されたインクであることを特徴とする。
【0058】
また本発明に係る画像形成装置は、前記インクは、少なくとも水に分散する着色剤と湿潤剤と浸透性向上剤とを含み、水分減少に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分減少率30wt%までは5.0以下であり、かつ、水分減少率30−45wt%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクであることを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、画像形成装置、加熱により粘度が変化する液体を吸収体に吹き付ける場合において、液体の吸収体層への浸透深さの制御が必要となる装置などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 記録媒体
2 サクション部
3 プレ加熱部
4 記録ヘッド部
5 ポスト加熱部
6 アウトフィードローラ
7 ニップローラ
8 ガイドローラ
10 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開平6−23977号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを記録ヘッドにより記録媒体に吐出して画像を形成する画像形成装置であって、
前記記録ヘッドに対し前記記録媒体搬送方向の上流側にプレ加熱部が配置され、前記記録媒体搬送方向の下流側にポスト加熱部が配置され、
プレ加熱とポスト加熱とを使用するモードと、
ポスト加熱のみ使用するモードと、が切り替え可能であり、
前記モードの切り替えは、前記記録媒体の坪量と厚みとの少なくとも1つの条件により行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記モードの切り替えを前記記録媒体の坪量で行う場合は、
前記記録媒体秤量が105g/m2以下では前記プレ加熱と前記ポスト加熱とを使用するモードとし、
前記記録媒体秤量が105g/m2を超える場合では前記ポスト加熱のみ使用するモードとし、
前記モードの切り替えを前記記録媒体の厚みにて行う場合は、
前記記録媒体厚さが120μm以下では前記プレ加熱とポスト加熱とを使用するモードとし、
前記記録媒体厚さが120μmを超える場合では前記ポスト加熱のみ使用するモードとすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記モードの切り替えは、前記記録媒体の表層から裏層までのインク浸透性と前記記録媒体の透気度との少なくとも1つの条件により行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記モードの切り替えを前記記録媒体の表層から裏層までのインク浸透性で行う場合は、
前記表層から裏層までのインク浸透性が良い記録媒体は前記プレ加熱と前記ポスト加熱とを使用するモードとし、
前記表層から裏層までのインク浸透性が悪い記録媒体は前記ポスト加熱のみ使用するモードとし、
前記モードの切り替えを前記記録媒体の透気度で行う場合は、
前記記録媒体の透気度が25秒以下では前記プレ加熱と前記ポスト加熱とを使用するモードとし、
前記記録媒体の透気度が25秒を超える場合では前記ポスト加熱のみ使用するモードとすることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記インク浸透性が良い記録媒体は普通紙であり、前記インク浸透性が悪い記録媒体はグロス紙とマット紙とであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記インクは、水分の減少に伴い粘度が上昇するように構成されたインクであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記インクは、少なくとも水に分散する着色剤と湿潤剤と浸透性向上剤とを含み、水分減少に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分減少率30wt%までは5.0以下であり、かつ、水分減少率30−45wt%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクであることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−56084(P2012−56084A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198146(P2010−198146)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】