説明

画像形成装置

【課題】用紙にかかる負担を低減しつつ、筒カールを矯正することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置(レーザプリンタ1)は、加熱部材(加熱ローラ71)と加圧部材(加圧ローラ72)とによって記録シート(用紙P)上に現像剤像を定着する定着装置7と、定着装置7を収容する装置本体2と、定着装置7から排出される記録シートを装置本体2に形成される排出口22に向けてUターンするように案内する排出ガイド9と、を備えている。そして、排出ガイド9は、ニップ部73に対して近接・離間する方向に変位可能となるように構成され、変位の前後において定着装置7から排出された記録シートを排出口22に案内可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を加熱することで用紙上にトナー像を熱定着させる定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱ローラと加圧ローラとの間で用紙を挟持することで用紙上にトナー像を定着させる定着装置と、定着装置から排出される用紙を定着装置よりも上方に形成された排出口に向けてUターンするように案内する排出ガイドとを備えた画像形成装置が知られている。
【0003】
このような定着装置を利用した画像形成装置では、定着装置内で加熱された用紙が筒カール(用紙搬送方向を軸方向とする筒状のカール)する場合がある。この場合、従来では、用紙の搬送方向に対して定着装置の下流側に位置する搬送ローラの搬送速度を大きくし、用紙を内側の排出ガイドに押し付けることで、筒カールを矯正するようにしていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−48399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、用紙に大きな力がかかるため、用紙が破損したり、その力が定着装置に伝わり、熱定着に影響が出るおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、用紙(記録シート)にかかる負担を低減しつつ、筒カールを矯正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、回転可能な加熱部材と、前記加熱部材との間でニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、を備え、前記加熱部材と前記加圧部材とによって記録シート上に現像剤像を定着する定着装置と、前記定着装置を収容する装置本体と、前記定着装置から排出される記録シートを前記装置本体に形成される排出口に向けてUターンするように案内する排出ガイドと、を備えた画像形成装置であって、前記排出ガイドが前記ニップ部に対して近接・離間する方向に変位可能となるように構成され、変位の前後において前記定着装置から排出された記録シートを前記排出口に案内可能となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、排出ガイドをニップ部に対して近接・離間する方向に変位させることで、定着装置からUターンして排出口に向かう記録シートの順カールの度合いを変化させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録シートにかかる負担を低減しつつ、筒カールを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザプリンタを示す説明図である。
【図2】排出ガイドを示す拡大斜視図(a)と、装置本体の溝と連結軸との関係を示す説明図(b)である。
【図3】他の実施形態に係るレーザプリンタを示す説明図である。
【図4】第2ガイドが外側位置に位置する状態を示す拡大斜視図(a)と、第2ガイドが内側位置に位置する状態を示す拡大斜視図(b)と、装置本体の溝とスライダ部付近の構造を示す説明図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<レーザプリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分を詳細に説明することとする。
【0012】
以下の説明において、方向は、レーザプリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側(手前側)」、紙面に向かって右側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0013】
図1に示すように、レーザプリンタ1は、樹脂製の装置本体2と、当該装置本体2内に記録シートの一例としての用紙Pを給紙するためのフィーダ部3と、用紙Pに画像を形成するための画像形成部4とを備えている。
【0014】
フィーダ部3は、装置本体2の下部に着脱可能に装着される給紙トレイ31と、給紙トレイ31内の用紙Pを画像形成部4に向けて給紙する給紙機構32とを備えている。
【0015】
画像形成部4は、スキャナユニット5、プロセスカートリッジ6、転写ローラCRおよび定着装置7を備えている。
【0016】
スキャナユニット5は、装置本体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。このスキャナユニット5では、レーザビームを、感光ドラム61の表面上に高速走査にて照射する。
【0017】
プロセスカートリッジ6は、装置本体2に着脱可能であり、感光ドラム61と、現像ローラ62と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部63とを備えている。
【0018】
このプロセスカートリッジ6では、回転する感光ドラム61の表面が、図示せぬ帯電器により一様に帯電された後、スキャナユニット5からのレーザビームの高速走査により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、感光ドラム61の表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0019】
次いで、回転駆動される現像ローラ62によってトナー収容部63内のトナーが感光ドラム61の静電潜像に供給されて、感光ドラム61の表面上にトナー像が形成される。その後、感光ドラム61と転写ローラCRの間で用紙Pが搬送されることで、感光ドラム61の表面に担持されているトナー像が用紙P上に転写される。
【0020】
定着装置7には、用紙Pを加熱する加熱部材の一例としての加熱ローラ71と、加熱ローラ71との間でニップ部73を形成する加圧部材の一例としての加圧ローラ72とが回転可能に設けられている。そして、このように構成される定着装置7では、用紙P上に転写されたトナーを、用紙Pが加熱ローラ71と加圧ローラ72との間のニップ部73(各ローラ71,72が用紙Pを挟持する範囲)を通過する間に用紙P上に定着させている。
【0021】
なお、定着装置7で熱定着された用紙Pは、定着装置7の後側(用紙搬送方向下流側)に配設される排出ガイド9で後から前にUターンするように排紙ローラRに搬送され、この排紙ローラRから排紙トレイ21上に送り出される。
【0022】
<排出ガイド周りの構造>
次に、本発明の特徴部分である排出ガイド9周りの構造について詳細に説明する。
排出ガイド9は、側面視で略円弧状に形成されており、定着装置7から排出される用紙Pを、装置本体2のうち定着装置7よりも上方に形成された排出口22に向けてUターンするように案内している。
【0023】
具体的には、図2(a)に示すように、排出ガイド9は、複数のガイド部材91と、各ガイド部材91の下端部を一体に連結する回動軸92と、各ガイド部材91の上端部を一体に連結する連結軸93とを備えて構成されている。なお、図2(a)においては、便宜上、排出ガイド9の左側部分は省略し、右側部分のみを図示する。
【0024】
複数のガイド部材91は、それぞれ側面視が略円弧状となるように形成されており、左右方向(用紙Pの幅方向)で互いに間隔を空けた状態で配置されている。
【0025】
回動軸92は、両端が装置本体2に回動可能に支持されている。これにより、図1に示すように、排出ガイド9は、その下端の回動軸92を中心にして上端が前後に揺動可能となっている。すなわち、排出ガイド9は、ニップ部73に対して近接・離間する方向に変位可能となるように構成され、変位の前後において定着装置7から排出された用紙Pを排出口22に案内可能となっている。
【0026】
言い換えると、排出ガイド9は、ニップ部73から所定距離だけ離れた離間位置(実線の位置)と、当該離間位置よりもニップ部73に近付いた近接位置(2点鎖線の位置)との間で揺動可能となっている。このように排出ガイド9が構成されることにより、排出ガイド9を離間位置に配置したときよりも、近接位置に配置したときの方が、定着装置7から排出される用紙Pの順カールの度合いを大きくすることができ、筒カールを矯正することが可能となっている。
【0027】
なお、「順カールの度合いを大きくする」とは、離間位置に位置する排出ガイド9で案内される用紙Pのうち最も曲率半径が小さくなる部位(例えば図に実線で示す用紙Pの右下の部位A1)の曲率半径よりも、近接位置に位置する排出ガイド9で案内される用紙Pのうち最も曲率半径が小さくなる部位(例えば図に2点鎖線で示す用紙Pの右下の部位A1’)の曲率半径の方が小さくなることをいう。
【0028】
また、図2(a)に示すように、連結軸93は、少なくとも一方の端部93Aが回動軸92よりも軸方向外側に延びるように形成されて、図2(b)に示す装置本体2の側壁23から外部に突出するようになっている。そして、側壁23には、回動軸92を中心とする円弧状の溝23Aが形成されており、この溝23Aには、端部93Aを前述した離間位置に保持するための突起23Bが形成されるとともに、端部93Aを前述した近接位置に保持するための突起23Cが形成されている。
【0029】
これにより、端部93A(もしくは端部93Aに設ける図示せぬ操作片)をユーザが前後に移動させる際に、ユーザは端部93Aと各突起23B,23Cとの係合による節度感(クリック感)を感じることができるので、排出ガイド9を離間位置や近接位置に確実に位置させることが可能となっている。
【0030】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
排出ガイド9をニップ部73に対して近接・離間する方向に変位させることで、定着装置7からUターンして排出口22に向かう用紙Pの順カールの度合いを変化させることができるので、用紙Pにかかる負担を低減しつつ、筒カールを矯正することができる。
【0031】
排出ガイド9が装置本体2に回動可能に支持されているので、例えば排出ガイドを前後にスライド移動させるような構造に比べ、簡易な構成とすることができる。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、排出ガイド9の傾きを変えることで用紙Pの順カールの度合いを変化させるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、排出ガイド10を第1ガイド11と第2ガイド12で構成し、第2ガイド12を第1ガイド11の前後に移動させることで順カールの度合いを変化させてもよい。
【0033】
具体的には、図4(a)に示すように、第1ガイド11は、第1円弧状部の一例としての複数の第1円弧状部材11Aと、各第1円弧状部材11Aの上下端部をそれぞれ一体に連結する2本の連結軸11Bとを備えている。なお、図4においては、便宜上、排出ガイド10の左側部分は省略し、右側部分のみを図示する。
【0034】
第1円弧状部材11Aは、曲率半径が最も小さくなる部位(図の右下の部位)の曲率半径が所定の曲率半径となるように形成されている。そして、複数の第1円弧状部材11Aは、それぞれ左右方向に互いに間隔を空けた状態で2本の連結軸11Bによって一体に連結されている。また、各連結軸11Bは、両端部が装置本体2に固定されている。
【0035】
第2ガイド12は、第2円弧状部の一例としての複数の第2円弧状部材12Aと、各第2円弧状部材12Aを一体に連結する連結部材12Bとを備えている。
【0036】
第2円弧状部材12Aは、曲率半径が最も小さくなる部位(図の右下の部位)の曲率半径が、前記所定の曲率半径よりも小さな曲率半径となるように形成されている。そして、複数の第2円弧状部材12Aは、左右方向において複数の第1円弧状部材11Aからずらした状態で連結部材12Bによって一体に連結されている。
【0037】
連結部材12Bは、各第2円弧状部材12Aの後面から後方に延びる第1延在部B1と、各第1延在部B1の後端を一体に連結するように左右に延びる第2延在部B2と、左右方向の最も外側に位置する2つの第1延在部B1から左右方向外側に延びる2つのスライダ部B3(1つのみ図示)とを備えている。
【0038】
そして、各スライダ部B3は、図4(c)に示すように、装置本体2の側壁23に装置本体2内に向けて開口するように形成された溝23Dによって前後に移動可能に支持されている。ここで、図4(c)は、装置本体2の内側から溝23Dを見た状態を簡易化して図示している。
【0039】
これにより、図3に示すように、第2ガイド12は、第1ガイド11よりも定着装置7側の内側位置(2点鎖線の位置)と、第1ガイド11よりも定着装置7から離れる外側位置(実線の位置)との間で移動可能となっている。すなわち、この形態では、第2ガイド12を内側位置と外側位置とに切り替えるための切替機構が、各スライダ部B3と各溝23Dとによって構成されている。
【0040】
なお、この形態では、各スライダ部B3は、側壁23から機外に突出しないように構成されることで、ユーザがスライダ部B3を操作することはできないようになっている。その代わりに、この形態では、図3に示すように、装置本体2の後壁24に第2ガイド12を外部に露出させるための開口部24Aが形成されるとともに、この開口部24Aを開閉するためのリアカバー25が後壁24に回動可能に設けられている。そのため、ユーザは、リアカバー25を開けることによって、第2ガイド12の連結部材12Bを掴んで操作することが可能となっている。
【0041】
図4(c)に示すように、溝23Dの近傍には、第2ガイド12の操作に対して節度感を与えるための線バネ13(弾性部材)が設けられている。線バネ13は、一端部13Aが側壁23に固定され、他端が揺動可能となっている。そして、線バネ13の適所には、スライダ部B3の移動経路に出没可能となる2つの突起部13B,13Cが形成されている。
【0042】
これにより、第2ガイド12をユーザが前後に移動させる際に、ユーザはスライダ部B3と各突起部13B,13Cとの係合による節度感を感じることができるので、第2ガイド12を内側位置や外側位置に確実に位置させることが可能となっている。
【0043】
以上、図3,4の形態によれば、2つのガイド11,12のうち曲率半径が小さい方の第2ガイド12の曲面に筒カールした用紙Pを沿わせて搬送することができるので、第2ガイド12の曲面で用紙Pの筒カールをより適正に矯正することができる。
【0044】
前記実施形態では、レーザプリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【0045】
前記実施形態では、加熱部材として加熱ローラ71を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばガイドによって回転可能に支持される円筒状の定着フィルムであってもよい。
【0046】
前記実施形態では、加圧部材として加圧ローラ72を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の加圧部材などであってもよい。
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートを採用してもよい。
【0047】
前記実施形態では、排出ガイド9を複数のガイド部材91を一体に連結して構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば排出ガイドを1枚の板状部材や、円筒面を有し、かつ、前後に肉厚となる部材などで形成してもよい。
【0048】
前記実施形態では、排出ガイド9を略前後方向に移動させることで順カールの度合いを変化させたが、本発明はこれに限定されず、例えば、撓み変形可能な板状の排出ガイドの撓み変形の度合いを変化させることで順カールの度合いを変化させてもよい。すなわち、排出ガイドを撓み変形させることで、排出ガイドの一部をニップ部に対して近接・離間する方向に変位させてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 レーザプリンタ
2 装置本体
7 定着装置
9 排出ガイド
22 排出口
71 加熱ローラ
72 加圧ローラ
73 ニップ部
91 ガイド部材
92 回動軸
93 連結軸
P 用紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な加熱部材と、前記加熱部材との間でニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、を備え、前記加熱部材と前記加圧部材とによって記録シート上に現像剤像を定着する定着装置と、
前記定着装置を収容する装置本体と、
前記定着装置から排出される記録シートを前記装置本体に形成される排出口に向けてUターンするように案内する排出ガイドと、を備えた画像形成装置であって、
前記排出ガイドが前記ニップ部に対して近接・離間する方向に変位可能となるように構成され、変位の前後において前記定着装置から排出された記録シートを前記排出口に案内可能となっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記排出ガイドは、前記装置本体に回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記排出ガイドは、
所定の曲率半径となる複数の第1円弧状部を記録シートの幅方向に互いに間隔を空けた状態で一体に連結して構成される第1ガイドと、
前記第1円弧状部とは異なる曲率半径となる複数の第2円弧状部を記録シートの幅方向において前記複数の第1円弧状部からずらした状態で一体に連結して構成される第2ガイドと、を備え、
前記第2ガイドを、前記第1ガイドよりも前記定着装置側の内側位置と、前記第1ガイドよりも前記定着装置から離れる外側位置との間で移動させる切替機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−78406(P2012−78406A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220881(P2010−220881)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】