説明

画像形成装置

【課題】正確なスイッチバック動作と、排出トレイへの積載性とを両立可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】角度制御手段は、スイッチバック動作中、反転経路R2に向かって、排出/反転ニップN3を起点として斜め上方向に、第1面への定着処理済みの用紙を搬送し、排出動作中、排出トレイ26に向かって、排出/反転ニップN3を起点として斜め上方向に、第2面への定着処理済みの用紙を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上のトナー画像の定着処理後に、排出/反転ローラ及び排出/反転コロを用いたスイッチバック動作により、同記録媒体を表裏反転させて転写ニップに搬送可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した画像形成装置の中には、スイッチバック動作により記録媒体への両面に印刷を行うものがある。画像形成装置においては、印刷対象の画像データに基づき光ビームが生成される。この光ビームは、帯電している感光体ドラムの周面に照射され、これにより、静電潜像が形成される。この静電潜像を現像することで、感光体ドラム周面上にはトナー像が形成される。このトナー像は、転写ニップに送り込まれてきた記録媒体(例えば用紙)上に転写される。その後、記録媒体は、定着装置の定着ニップに導入され、トナー画像側が加熱されると同時に、その裏面側が加圧される。このような定着処理により、トナー像が記録媒体上に定着する。その後、記録媒体は、片面印刷の場合には、正転する排出/反転ローラと、それに従動する排出/反転コロとの間(排出/反転ニップ)を通過した後、排出トレイに排出される。
【0003】
両面印刷の場合、記録媒体の第1面への定着処理の後、該記録媒体は、排出/反転ニップに向けて排出経路を案内される。この時、排出/反転ローラは正転しており、該記録媒体は、先頭側から排出/反転ニップを順次通過していく。そして、記録媒体の後端近傍が排出/反転ニップに差し掛かると、排出/反転ローラが逆転し、第1面印刷時の記録媒体の後端が先端となって、両面印刷ユニットに向かう反転経路に導入される。この記録媒体は、反転経路を案内された後、表裏反転して転写ニップに導入される。これにより、記録媒体の第2面にトナー画像が転写される。第2面への転写が終わった記録媒体は、その後、片面印刷の場合と同様の処理を経て、排出トレイに排出される。
【0004】
スイッチバック動作が可能な画像形成装置として、例えば特許文献1に記載のようなものもある。この画像形成装置は、上述の排出/反転ローラに相当する二段ローラ、二段ローラと当接し二段ローラに対して従動回転する排出補助ローラ、排出補助ローラとは異なる位置で二段ローラと当接し二段ローラに対して従動回転する反転補助ローラを有している。
【0005】
また、画像形成装置には、二段ローラ近傍を分岐点として、定着装置を結ぶ第一搬送路と、両面搬送部を結ぶ第二搬送路の、2つの搬送路が形成されており、その分岐点には、2つの搬送経路を相互に切り替える切替手段が設置されている。
【0006】
片面印刷時には、切替手段により、定着処理済みの記録媒体は第一搬送路を通って、二段ローラと排出補助ローラとの間、つまり排出ニップから画像形成装置外に排出される。
【0007】
一方、両面印刷時には、切替手段により、第1面に対する定着処理済みの記録媒体は、二段ローラと反転補助ローラの間、つまり反転ニップに導かれる。この記録媒体の後端直前が反転ニップに達したとき、二段ローラが逆転させられ、それと同時に、記録媒体を両面搬送部の方向に案内するように切替手段を切り替える。この動作により、記録媒体は第二搬送路を通って両面搬送部へ運ばれ、第2面への印刷が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−62100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、画像形成装置の小型化に伴い、定着ニップから排出/反転ローラに至る排出経路長が短くなってきている。その結果、スイッチバック時に定着ニップ方向に逆戻りさせることなく記録媒体を反転経路(特許文献1における第二搬送路に相当)に正しく導入すること(本明細書では、以下、「正確なスイッチバック動作」という)と、排出トレイに排出された記録媒体の積載性との両立が難しくなってきている。
【0010】
特許文献1に記載の画像形成装置では、切替手段により、正確なスイッチバック動作を行うことが可能ではあるが、排出ニップから排出される記録媒体の向き(角度)を考慮していないため、排出トレイへの積載性がよくないという問題点があった。
【0011】
それゆえに、本発明の目的は、正確なスイッチバック動作と、排出トレイへの積載性とを両立可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一局面は、画像形成装置であって、像担持体に形成された第1トナー画像を、記録媒体の第1面に転写する転写手段と、前記転写手段から送り出された記録媒体上の第1トナー画像を定着させて、定着処理済みの記録媒体を排出経路に送り出す定着装置と、第1面への定着処理済みの記録媒体が前記排出経路を通じて排出/反転ニップに導入されると、スイッチバック動作により、導入された記録媒体を反転経路に送り出す、角度制御手段と、を備えている。前記反転経路は、前記排出/反転ニップから前記定着手段の途中までを前記排出経路と共有し、途中の分岐点にて該排出経路に対し上方に分岐している。
【0013】
前記画像形成装置は、前記反転経路を搬送されてくる記録媒体を表裏反転させて前記転写手段に送り出す両面印刷ユニットを、さらに備えている。前記転写手段は、像担持体に形成された第2トナー画像を、前記両面印刷ユニットによって送り出された記録媒体の第2面に転写する。前記定着装置は、前記転写手段から送り出された記録媒体上の第2トナー画像を定着させて、定着処理済みの記録媒体を排出経路に送り出す。前記角度制御手段は、第2面への定着処理済みの記録媒体が前記排出経路を通じて排出/反転ニップに導入されると、排出動作により、導入された記録媒体を排出トレイに向けて排出する。
【0014】
前記角度制御手段はさらに、スイッチバック動作中、反転経路に向かって、前記排出/反転ニップを起点として斜め上方向に、第1面への定着処理済みの記録媒体を搬送し、排出動作中、排出トレイに向かって、前記排出/反転ニップを起点として斜め上方向に、第2面への定着処理済みの記録媒体を搬送する。
【発明の効果】
【0015】
上記構成により、正確なスイッチバックと、排出トレイへの積載性との両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略的な内部構成を示す模式図である。
【図2】図1の角度制御手段の全体構成を示し、かつ一部の構成を正面視した模式図である。
【図3】図1の角度制御手段の全体構成を示し、かつ一部の構成の面A−A’に沿う断面を矢印Bから見た時の模式図である。
【図4】(A),(B)は、第1及び第2規制部材により規制される揺動角度θ1,θ2を示す模式図である。
【図5】角度制御手段によるスイッチバック動作時の制御フロー図である。
【図6】(A),(B)は、スイッチバック動作時、及び排出動作時における搬送方向A,Bを示す模式図である。
【図7】(A),(B)は、第1の変形例に係る揺動角度θ2,θ1を示す模式図である。
【図8】(A),(B)は、第2の変形例に係る揺動角度θ2,θ1を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(画像形成装置の概要について)
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照しながら詳説する。以下の各図において、X軸は、画像形成装置の奥行き方向(前後方向)を示す。本実施形態の説明では、給送トレイ11が設けられている側が奥行き方向の手前側で、カバー28が設けられている側が奥行き方向の奥側とする。また、Y軸は、画像形成装置の横方向(左右方向)を示す。Z軸は、画像形成装置の高さ方向(上下方向)を示す。
【0018】
図1において、画像形成装置1は、例えばモノクロプリンタであり、給送トレイ11と、給送ローラ12と、分離パッド13と、像担持体の一例としての感光体ドラム15と、転写手段の一例としての転写ローラ16と、露光装置17と、帯電器18と、現像装置19と、加熱ローラ21及び加圧ローラ22を含む定着装置20と、排出/反転ローラ23及び排出/反転コロ24を含む角度制御手段25とを、外装体内に備えている。また、画像形成装置1は、外装体の一部を構成する排出トレイ26を備えている。なお、画像形成装置1は、他にも感光体ドラム周面の残留トナーを除去するクリーニング装置等を備えているが、本実施形態の要部では無いので、図示及び説明を省略する。
【0019】
給送トレイ11には、記録媒体の一例としての用紙Pが載置される。載置された用紙Pは、給送ローラ12の回転によって分離パッド13で1枚ずつ分離され、その後、後述の転写ニップN1に向けて給送ローラ12から送り出される。この用紙Pは、感光体ドラム15と、これに対向する転写ローラ16とで形成される転写ニップN1に送り込まれる。
【0020】
露光装置17には、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータ等(図示せず)から、印刷対象の画像を表す画像データが送られてくる。露光装置17は、受信画像データで変調した光ビームBを生成する。露光装置17は、生成した光ビームBを、副走査方向に回転する感光体ドラム15の周面に主走査方向に沿って照射する。感光体ドラム15の周面は、帯電器18により帯電させられており、光ビームBが照射されると、感光体ドラム15の周面上には静電潜像が形成される。
【0021】
また、現像装置19は、感光体ドラム15上の静電潜像を現像剤で現像して、該感光体ドラム15上にトナー像を形成する。このトナー像は、転写ニップN1に送り込まれてきた用紙P上に転写される。その後、用紙Pは定着装置20に搬送される。
【0022】
定着装置20において、加熱ローラ21及び加圧ローラ22とは、Y軸方向を長手方向とする円柱形状を有しており、互いに当接しあって定着ニップN2を形成する。この定着ニップN2に用紙Pが導入されると、加圧ローラ22が用紙Pを加圧しつつ、該用紙P上のトナー像を加熱ローラ21が加熱する。この定着処理により、トナー像が用紙P上に定着させられる。その後、用紙Pは、片面印刷の場合、定着ニップN2から、排出/反転ローラ23及び排出/反転コロ24で形成される排出/反転ニップN3を経て排出トレイ26に排出される。ここで、本実施形態では、定着ニップN2から排出/反転ニップN3に至る用紙Pの経路を排出経路R1とする。
【0023】
(スイッチバック動作のための構成)
画像形成装置1において、両面印刷のためのスイッチバック動作は、特に、センサSE1と、両面印刷ユニット27と、角度制御手段25とにより行われる。
【0024】
センサSE1は、例えば、反射型のフォトセンサであり、排出経路R1に向けて光を出射する。センサSE1は、用紙Pからの反射光を受信すると、用紙Pの先端が排出経路R1の特定箇所(センサSE1の検知エリア)を通過し始めたことを示す信号S1を出力する。
【0025】
両面印刷ユニット27は、画像形成装置1の背面側に設けられ、両面印刷時に用いられる反転経路R2と、該反転経路R2上に設けられる少なくとも1組のローラ対271とを有する。反転経路R2は、排出/反転ニップN3から、ローラ対271を経由して転写ニップN1へと用紙Pを搬送するための経路である。より詳細には、反転経路R2は、排出/反転ニップN3から見て途中の分岐点P1までは排出経路R1と共通の経路であり、該分岐点P1にて定着ニップN2に向かう経路(排出経路R1)から分岐して、ローラ対271を介して転写ニップN1へと向かっている。また、本実施形態では、両面印刷ユニット27が定着装置20よりも背面側に配置されるため、反転経路R2は、分岐点P1にて排出経路R1よりも上方向に分岐する。
【0026】
角度制御手段25は、上述の排出/反転ローラ23及び排出/反転コロ24以外に、図2、図3に示すように、第1シャフト28と、2個一対の第1ギア29と、2個一対の保持部材30と、第2シャフト31と、2個一対の第2ギア32と、2個一対の第1規制部材33aと、2個一対の第2規制部材33bと、4個の緩衝部材34と、計時手段36を含む制御手段35と、モータM1と、を備えている。なお、各第1規制部材33a、各第2規制部材33b及び各緩衝部材34は、図示の都合上、図2には示されていない。また、各第1規制部材33a及び各第2規制部材33bは、都合上、図3には1個ずつしか示されておらず、各緩衝部材34は、都合上、図3には2個しか示されていない。
【0027】
第1シャフト28は、画像形成装置1の上端近傍に、Y軸と略平行に設けられる。また、第1シャフト28の一方端及び他方端は、画像形成装置1に対し固定的に設置された2個の軸受け(図示せず)により支持される。第1のシャフト28は、モータM1から与えられる駆動力により、自身の軸C1を中心にZX平面内で回転可能に支持される。
【0028】
2個の第1ギア29の一方及び他方は、第1シャフト28の軸C1を共有するように、第1シャフト28の一方端及び他方端に固定される。
【0029】
2個の保持部材30のそれぞれには、上下方向に並ぶ貫通孔が形成される。一方及び他方の保持部材30に形成された上側貫通孔には、第1シャフト28の一方端及び他方端が固定されずに挿通される。ここで、第1シャフト28が回転すると、両保持部材30は、第1シャフト28と共に軸C1を中心に回転する。また、一方及び他方の保持部材30に形成された下側貫通孔には、以下に説明する第2シャフト31の一方端及び他方端が回転可能に挿通される。
【0030】
第2シャフト31は、例えば第1シャフト28の斜め下方に、Y軸と略平行に設けられる。この第2シャフト31には、Y軸方向中心から概ね等距離に、排出/反転ローラ23が例えば1個ずつ固定される。また、各排出/反転ローラ23の下方には、排出/反転コロ24が1個ずつ配置される。各排出/反転コロ24は、画像形成装置1に取り付けられたコイルばねにより、自身の軸C2を基準として軸C1の方向に付勢されている。
【0031】
2個の第2ギア32の一方及び他方は、2個の第1ギア29の一方及び他方に噛み合いかつ第2のシャフト31の軸C3を共有するように、第2シャフト31の一方端及び他方端に固定される。これにより、第1シャフト28の回転により発生する力は、第1及び第2ギア29,32を介して第2シャフト31に伝達され、第2シャフト31と、これに固定された各排出/反転ローラ23は、第1シャフト28とは逆方向に、自身の軸C3を中心に回転する。ここで、以下の説明では、第2シャフト31又は排出/反転ローラ23が軸C3を中心に回転することを「自転」と称する。
【0032】
また、第1シャフト28の回転により、2個の保持部材30は軸C1を中心に回転する。したがって、各保持部材30に挿通された第2シャフト31及びこれに固定される各排出/反転ローラ23は、軸C1を中心に、第1シャフト28の周囲を回転することになる。ここで、以下の説明では、第2シャフト31又は排出/反転ローラ23が軸C1を中心としてその周りを回転することを「揺動」と称する。
【0033】
2個の第1規制部材33a及び2個の第2規制部材33bは、画像形成装置1に固定されており、排出/反転ローラ23が揺動する量を規制する板状の部材である。より詳しく説明すると、図4(A)、(B)に示すように、軸C1と軸C2とを結ぶ面を基準面F1とする。また、排出/反転ローラ23の揺動の中心となる軸C3が基準面F1上にある時を基準位置とする。図4(A)に示すように、排出/反転ローラ23が角度θ1だけ揺動した時に、該ローラ23と共に回転する2個の保持部材30は、2個の第1規制部材33aに当たり、停止する。ここで、角度θ1は、基準位置に対し排出/反転ローラ23が反時計回りに揺動する角度である。このように、2個の第1規制部材33aは、排出/反転ローラ23が揺動する角度の上限を角度θ1に規制する。2個の第2規制部材33bは、図4(B)に示すように、排出/反転ローラ23が揺動する角度の上限を角度θ2に規制する。ここで、本実施形態では、θ2は、−θ1である。
【0034】
緩衝部材34は、例えばウレタン製のシート状部材であり、騒音対策として、第1及び第2規制部材33a,33bの主面に1個ずつ設けられる。ここで、第1及び第2規制部材33a,33bの主面とは、緩衝部材34が無いと仮定した場合に、排出/反転ローラ23の揺動時に保持部材30が当たる面である。
【0035】
制御手段35は、マイコンや主メモリ等からなり、計時手段36を有している。制御手段35は、計時手段36を用いてスイッチバック動作を制御する。以下、図5を参照して、制御手段35による制御を説明する。
【0036】
(スイッチバック動作の制御について)
両面印刷では、前述の片面印刷と同様の処理により、用紙Pの第1面上のトナー画像に対し定着処理が行われ、該用紙Pが定着ニップN2から排出経路R1に送り出される。センサSE1は、検知エリアに用紙Pが進入し始めると信号S1を制御手段35に対し出力する。
【0037】
図5において、制御手段35がセンサSE1から信号S1を受信すると(S501)、S502が実行される。以下、S502について詳細に説明する。
【0038】
S502において、まず、制御手段35は、モータM1に制御信号CS1を与えるとともに、計時手段36を用いて第1所定時間T1の計時を開始する。ここで、第1所定時間T1は、センサSE1が用紙Pの先端を検出してから、該用紙Pの後端近傍が排出/反転ニップN3に到達するまでの時間である。第1所定時間T1は、用紙Pの搬送方向の長さから求まる時間であり、スイッチバック動作では、従来より一般的に用いられる。
【0039】
また、S502において、モータM1は、制御信号CS1が与えられると、用紙Pを排出トレイ26に排出する方向(図3において時計回り)に排出/反転ローラ23が自転するように第1シャフト28に駆動力を与える。これにより、排出経路R1上の用紙Pは排出/反転ニップN3に先端から導入され、排出/反転ニップN3から送り出されていく。
【0040】
ここで、以下の説明では、排出/反転ローラ23の自転方向のうち、用紙Pを排出トレイ26に排出する方向を「正方向」と、用紙Pを両面印刷ユニット27(反転経路R2)に向けて搬送する方向を「逆方向」と称する。なお、詳細は後述するが、排出/反転ローラ23が正方向に自転するように第1シャフト28に駆動力を与えると、排出/反転ローラ23は角度θ1だけ揺動して、図4(A)のような状態になる。
【0041】
S502の後、制御手段35は、第1所定時間T1の計時を完了すると(S503:Yes)、S504が実行される。以下、S504について詳細に説明する。
【0042】
S504において、制御手段35は、モータM1に制御信号CS2を与えるとともに、計時手段36を用いて第2所定時間T2の計時を開始する(S504)。ここで、第2所定時間T2は、用紙Pを排出/反転ニップN3から相対的に低速で送り出す時間である。詳細は後で説明するが、第2の所定時間T2は、騒音対策のために設定される時間であり、画像形成装置1の仕様等を考慮して任意かつ適切に設定される。
【0043】
また、S504において、モータM1は、制御信号CS2が与えられると、排出/反転ローラ23が回転数Raで逆方向に自転するように第1シャフト28に駆動力を与える。この駆動力により、排出/反転ローラ23は、回転数Raで逆方向に自転するだけでなく、2個の保持部材30と共に時計回りに揺動する。この間、各排出/反転コロ24は、バネ付勢されているため、排出/反転ローラ23の周面に接しながら、基準面F1に平行に軸C1の方向に移動する。各排出/反転コロ24は、排出/反転ローラ23を加圧し続けるため、排出/反転ニップN3が形成され続ける。排出/反転ローラ23が角度θ2だけ揺動すると、各保持部材30の回転が第2規制部材33bにより規制され、排出/反転ローラ23は角度θ2を超えて揺動しない(図4(B)を参照)。この揺動の停止以降も、第1シャフト28には、排出/反転ローラ23を逆方向に自転させる駆動力が与えられており、これにより、排出/反転ニップN3から反転経路R2に向けて用紙Pを送り出す。また、第1シャフト28に、排出/反転ローラ23を逆方向に自転させる駆動力が与えられることにより、これとは反対の方向の回転力(反力)が2個の保持部材30に作用する。これにより、各保持部材30は第2規制部材33bに押し付けられ続け、排出/反転ローラ23は角度θ2を維持する。
【0044】
S504の後、制御手段35は、第2所定時間T2の計時が完了すると(S505:Yes)、S506が実行される。以下、S506について詳細に説明する。
【0045】
S506において、制御手段35は、モータM1に制御信号CS3を与える。モータM1は、制御信号CS3が与えられると、排出/反転ローラ23が回転数Rb(Rb>Ra)で逆方向に自転するように第1シャフト28に駆動力を与える。これにより、用紙Pは、排出/反転ニップN3から、相対的に高速に反転経路R2に送り出されていく。
【0046】
S506において、制御手段35はさらに、計時手段36を用いて第3所定時間T3の計時を開始する。ここで、第3所定時間T3は、例えば、用紙Pの後端が排出/反転ニップN3から抜け出るタイミングに合わせられており、用紙Pの搬送方向の長さに基づき定まる時間である。より詳しくは、第2所定時間T2の計時の計時を開始してから、第3所定時間T3の計時を完了するまでの時間が、用紙Pが排出/反転ニップN3から抜け出る時間となる。
【0047】
S506の後、制御手段35は、第3所定時間T3の計時が完了すると(S507:Yes)、用紙Pは排出/反転ニップN3を通過し切っており、転写ニップN1において第2面側へのトナー画像の転写が始まっている。そのため、S507の後、制御手段35は、モータM1への制御信号CS3の送信を停止する(S508)。
【0048】
S508の後、制御手段35は、S501と同様に、センサSE1から信号S1を待機しており(S509)、該信号S1を受信すると(S509:Yes)、S510が実行される。以下、S510について詳細に説明する。
【0049】
S510において、まず、制御手段35は、S502と同様に、モータM1に制御信号CS1を与えるとともに、計時手段36を用いて第4所定時間T4の計時を開始する。ここで、第4所定時間T4は、センサSE1が用紙Pの先端を検出してから、該用紙Pが排出/反転ニップN3を通過し終えるまでの時間である。この第4所定時間T4もまた、用紙Pの搬送方向の長さから求まり、一般的に用いられる時間である。
【0050】
また、S510において、モータM1は、制御信号CS1が与えられると、排出/反転ローラ23が正方向に自転するように第1シャフト28に駆動力を与える。この駆動力により、排出/反転ローラ23は、正方向に自転するだけでなく、2個の保持部材30と共に反時計回り揺動する。この間、各排出/反転コロ24は、バネ付勢されているため、揺動する排出/反転ローラ23の周面に接しながら、基準面F1に平行に軸C1の方向に移動する。各排出/反転コロ24は、排出/反転ローラ23を加圧し続けるため、排出/反転ニップN3が形成され続ける。排出/反転ローラ23が基準面F1に対し角度θ1だけ回転すると、各保持部材30の回転が第1規制部材33aにより規制され、排出/反転ローラ23は角度θ1を超えて揺動しない(図4(A)を参照)。この揺動の停止以降も、第1シャフト28には、排出/反転ローラ23を正方向に自転させる駆動力が与えられており、これにより、排出/反転ニップN3から排出トレイ26に向けて用紙Pを送り出す。また、第1シャフト28に排出/反転ローラ23を正方向に自転させる駆動力が与えられることにより、これとは反対の方向の回転力(反力)が2個の保持部材30に作用する。これにより、各保持部材30は、各第1規制部材33aに押しつけられ続け、排出/反転ローラ23の角度θ1は維持される。
【0051】
S510の後、制御手段35は、第4所定時間の計時完了を、つまりは用紙Pの全体が排出トレイ26に排出されることを待機している(S511)。この計時が完了すると(S511:Yes)、制御手段35は、両面印刷処理を終了し、次の印刷処理に備える。
【0052】
(スイッチバック動作の作用・効果について)
図5のS504〜S507の間(スイッチバック動作中)、用紙Pは、排出/反転ニップN3から反転経路R2に向かって、図6(A)中の矢印Aの方向(以下、「搬送方向A」という)に送り出される。搬送方向Aは、軸C2,C3を結ぶ面に概ね垂直で、排出/反転ローラ23と排出/反転コロ24との接触線La(つまり、排出/反転ニップN3)を起点として反転経路R2に向かって斜め上方向である。搬送方向Aに送り出されることで、用紙Pの先端部分は、排出経路R1と反転経路R2との共通経路の上方を案内されやすくなるため、図1に示す分岐点P1から上方に分岐する反転経路R2に導入されやすくなる。このように、本角度制御手段25によれば、正確なスイッチバック動作を行うことが可能となる。
【0053】
また、図5のS510〜S511の間(用紙Pの排出動作中)、用紙Pは、実質的に、排出/反転ニップN3から排出トレイ26に向かって、図6(B)中の矢印Bの方向(以下、「搬送方向B」という)に送り出される。この搬送方向Bは、軸C2,C3を結ぶ面に概ね垂直で、排出/反転ローラ23と排出/反転コロ24との接触線Laを起点として斜め上方向である。搬送方向Bに送り出されることで、用紙Pは、排出/反転ニップN3から上方に向けて排出されるので、排出トレイ26での用紙Pの積載性が向上する。
【0054】
以上説明した通り、本画像形成装置1によれば、正確なスイッチバック動作と、排出トレイ26での用紙Pの積載性を両立させることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、スイッチバック動作において、排出/反転ローラ23は、最初から第2所定時間T2までは、相対的に低速な回転数Raで回転し、その後、用紙Pが送り出されるまでの間、相対的に高速な回転数Rbで回転する。これにより、第2所定時間T2の間、排出/反転ローラ23は、前述したとおり、2個の保持部材30と共に時計回りに揺動する。この間、各排出/反転コロ24は、バネ付勢されているため、排出/反転ローラ23の周面に接しながら、基準面F1に平行に軸C1の方向に移動する。このように、第2所定時間T2の間には、排出/反転ローラ23以外にも様々な構成が動作するので、相対的に大きな音が発生する。それゆえ、第2所定時間T2の間、相対的に低速で排出/反転ローラ23を自転させて、発生する音を抑制している。
【0056】
ところで、特許文献1によれば、二段ローラの駆動源と切替手段の駆動源は別々にする必要があるが、本画像形成装置1によれば、排出/反転ローラ23の自転及び揺動のための駆動源を共通のモータM1とすることが可能となる。これにより、騒音の発生源を少なくし、騒音を抑制している。
【0057】
(スイッチバック動作の制御の第1の変形例)
以上の実施形態では、S504で排出/反転ローラ23が揺動する角度θ2の絶対値と、S510での揺動角度θ1の絶対値とは同じとしていた。しかし、これに限らず、図7(A)、(B)に示すように、|θ1|<|θ2|としても構わない。この場合、基準面F1上の任意の点から、排出動作時の軸C2までの距離Daが、スイッチバック動作時の軸C2までの距離Dbよりも小さくなる。換言すると、排出動作時に排出/反転コロ24が排出/反転ローラ23を加圧する力Faが、スイッチバック動作時の加圧力Fbよりも大きくなる。これにより、前述の実施形態の場合と比較して、排出/反転ニップN3から排出トレイ26に向けて用紙Pを送り出す搬送力が高くなる。これにより、例えば、相対的に厚さのある用紙Pを排出する場合であっても、用紙Pの積載性を確保することが可能となる。
【0058】
また、第1の変形例において、θ1=0°としても構わない。具体的には、S510において、排出/反転ローラ23は、θ2の角度位置から反時計回りの揺動を開始する。この時、排出/反転ローラ23の軸C2が基準面F1に沿う位置、つまりθ1=0°の位置で、排出/反転ローラ23を停止させても構わない。これにより、排出/反転コロ24が排出/反転ローラ23を加圧する力が最大となり、搬送力を最大化することができる。
【0059】
(スイッチバック動作の制御の第2の変形例)
また、第1の変形例以外にも、図8(A)、(B)に示すように、|θ2|<|θ1|としても構わない。この場合、基準面F1上の任意の点から、スイッチバック動作時の軸C2までの距離Dbが、排出動作時の軸C2までの距離Daよりも小さくなる。換言すると、スイッチバック時に排出/反転コロ24から排出/反転ローラ23への加圧力Faが、排出動作時の加圧力Fbよりも大きくなる。これにより、前述の実施形態の場合と比較して、排出/反転ニップN3から反転経路R2に向けて用紙Pを送り出す搬送力が高くなる。これにより、スイッチバック動作時に用紙Pの搬送力を向上させ、例えば、排出経路R1と反転経路R2との共通経路が急な傾斜を有する場合にも、用紙Pを該共通経路上で詰まらせることなく搬送することが可能となる。
【0060】
また、第2の変形例に関しても、搬送力を最大化する観点で、S504において、θ2=0°の位置で排出/反転ローラ23を停止させても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る画像形成装置は、正確なスイッチバック動作と、排出トレイへの積載性とを両立可能であり、モノクロプリンタ以外にも、軽量・小型のファクシミリやカラープリンタ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
20 定着装置
21 加熱ローラ
22 加圧ローラ
23 排出/反転ローラ
24 排出/反転コロ
25 角度制御手段
26 排出トレイ
R1 排出経路
R2 反転経路
N1 転写ニップ
N2 定着ニップ
N3 排出/反転ニップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
像担持体に形成された第1トナー画像を、記録媒体の第1面に転写する転写手段と、
前記転写手段から送り出された記録媒体上の第1トナー画像を定着させて、定着処理済みの記録媒体を排出経路に送り出す定着装置と、
第1面への定着処理済みの記録媒体が前記排出経路を通じて排出/反転ニップに導入されると、スイッチバック動作により、導入された記録媒体を反転経路に送り出す、角度制御手段と、を備え、
前記反転経路は、前記排出/反転ニップから前記定着手段の途中までを前記排出経路と共有し、途中の分岐点にて該排出経路に対し上方に分岐しており、
前記画像形成装置は、前記反転経路を搬送されてくる記録媒体を表裏反転させて前記転写手段に送り出す両面印刷ユニットを、さらに備え、
前記転写手段はさらに、像担持体に形成された第2トナー画像を、前記両面印刷ユニットによって送り出された記録媒体の第2面に転写し、
前記定着装置はさらに、前記転写手段から送り出された記録媒体上の第2トナー画像を定着させて、定着処理済みの記録媒体を排出経路に送り出し、
前記角度制御手段はさらに、第2面への定着処理済みの記録媒体が前記排出経路を通じて排出/反転ニップに導入されると、排出動作により、導入された記録媒体を排出トレイに向けて排出し、
前記角度制御手段はさらに、スイッチバック動作中、反転経路に向かって、前記排出/反転ニップを起点として斜め上方向に、第1面への定着処理済みの記録媒体を搬送し、排出動作中、排出トレイに向かって、前記排出/反転ニップを起点として斜め上方向に、第2面への定着処理済みの記録媒体を搬送する、画像形成装置。
【請求項2】
前記角度制御手段は、
外部から与えられた駆動力によって、自身の軸を中心に回転可能に支持される第1シャフトと、
前記第1シャフトの下方に設けられ、前記第1シャフトから伝達される駆動力により回転する第2シャフトと、
前記第2シャフトに固定され、自身の軸を中心に回転可能にかつ該第1シャフトの軸を中心に揺動可能な排出/反転ローラと、
前記排出/反転ローラの下方に設けられ、前記第1シャフト方向に付勢されることで該排出/反転ローラと接触し、前記排出/反転ニップを形成する、排出/反転コロと、を含んでおり、
前記排出/反転ローラは、
前記スイッチバック動作において、前記第1シャフトから伝達される駆動力の反力により前記第1シャフトの軸を中心に揺動して、前記排出/反転コロと前記第1シャフトとを結ぶ基準面に対し前記排出トレイ側に移動し、これによって、前記反転経路に向かって、前記排出/反転ニップを起点として斜め上方向に、第1面への定着処理済みの記録媒体を搬送し、
前記排出動作において、前記第1シャフトから伝達される駆動力の反力により前記第1シャフトの軸を中心に揺動して、前記排出/反転コロと前記第1シャフトとを結ぶ基準面に対し前記反転経路側に移動し、これによって、前記排出トレイに向かって、前記排出/反転ニップを起点として斜め上方向に、第2面への定着処理済みの記録媒体を搬送する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記角度制御手段は、
前記スイッチバック動作において、前記第1シャフトの軸を中心に前記基準面に対し角度θ2だけ前記排出トレイ側に前記排出/反転ローラが揺動した時点で、該排出/反転ローラの揺動を規制する第1規制部材と、
前記排出動作において、前記第1シャフトの軸を中心に前記基準面に対し角度θ1だけ前記反転経路側に前記排出/反転ローラが揺動した時点で、該排出/反転ローラの揺動を規制する第2規制部材と、を含み、
前記角度θ1及びθ2は、|θ1|<|θ2|であることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記角度制御手段は、
前記スイッチバック動作において、前記第1シャフトの軸を中心に前記基準面に対し角度θ2だけ前記排出トレイ側に前記排出/反転ローラが揺動した時点で、該排出/反転ローラの揺動を規制する第1規制部材と、
前記排出動作において、前記第1シャフトの軸を中心に前記基準面に対し角度θ1だけ前記反転経路側に前記排出/反転ローラが揺動した時点で、該排出/反転ローラの揺動を規制する第2規制部材と、を含み、
前記角度θ1及びθ2は、|θ2|<|θ1|であることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記スイッチバック動作及び前記排出動作のいずれか一方において、前記角度θ1及びθ2のいずれか一方が0°となる、請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記角度制御手段はさらに、前記第1及び前記第2規制部材の主面には設けられた緩衝部材を含む、請求項3〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記排出/反転ローラは、前記スイッチバック動作の開始から予め定められた時間までは、相対的に低速な回転数Raで回転し、その後、相対的に高速な回転数Rbで回転する、請求項2〜6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記角度制御手段は、
前記第1シャフトの両側に設けられた一対の第1ギアと、
前記第2シャフトの両側に設けられ、前記一対の第2ギアと噛み合う一対の第2ギアと、をさらに含む、請求項2〜7のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107725(P2013−107725A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252930(P2011−252930)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】