説明

画像形成装置

【課題】大サイズ用紙を用いての両面記録を可能に構成する場合でもコスト増加及び装置大型化を極力抑制する。
【解決手段】記録ヘッド7により画像形成を行なう画像形成装置本体の背部には、両面ユニット61と延長ユニット65からなる両面反転部が設けられる。両面ユニット61の両面搬送経路62には搬送ローラ63a,63b,63cが配置される。延長ユニット65の延長搬送経路67には搬送ローラは配置されない。大サイズ用紙に両面記録を行なう場合は、両面搬送経路62の経路長よりも長い経路長を有する延長搬送経路67により用紙を反転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用紙(記録媒体)の両面に記録が可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置においては、環境負荷の低減およびコスト低減の観点から、両面印刷機能が広く搭載されている。電子写真方式による画像形成装置では、用紙に転写された未定着トナー像を定着する必要があり、用紙の表裏を反転させる構成としては、片面記録後の用紙が作像部から完全に抜けてから(通常は定着装置を通過してから)両面反転部に送られて表裏が反転され、再度作像部に送られるような構成が一般的である。
【0003】
これに対し、インクジェット記録方式では、用紙と非接触印字である点を生かし、片面印字後に、用紙を印字部から逆走させて両面反転部に送り込む構成(以下、インクジェット両面パス方式と呼ぶ)が周知であり、一般に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の両面記録可能なインクジェット記録装置では、インクジェット両面パス方式を採用する場合、大サイズ用紙での両面印刷を可能に(大サイズ用紙の反転を可能に)構成すると、両面反転部の用紙パスを大サイズ用紙に合わせて延長する必要があり、その搬送経路で通常サイズあるいは小サイズの用紙を搬送できるようにするためには、搬送経路中に配置する搬送手段(搬送ローラ等)の数を増やさなければならず、画像形成装置が大型化するとともに、コストが増大するという問題がある。
【0005】
具体的には、はがきを収容可能なパス長は148mmであるが、A3用紙を収容するには420mmが必要となる。つまり、A3対応の両面機能を備えるためには少なくとも420mm以上のパス長を確保する必要があり、その420mm以上の搬送路にはがきを搬送するためには420÷105=4つの搬送手段(搬送ローラ等)が必要となる。一般的には、大サイズ用紙よりもA4用紙(297mm)など、通常サイズや小サイズの用紙を使用することが多いことから、使用頻度の低い大サイズ用紙に対応した両面反転部を備えることは、必要性の低い部分にコストを掛ける結果となっている。
【0006】
特開2010−215376号公報(特許文献1)には、装置の大型化を極力抑えつつ、より大きなサイズの用紙を用いての両面記録を可能とした画像形成装置が記載されているが、この装置では、両面反転部におけるパス長の拡大に制限があり、大サイズ用紙での両面記録は困難であり、また、大サイズ用紙への対応を可能とした場合には搬送経路中に配置する搬送手段(搬送ローラ等)の数が増加してしまう問題は何ら解消されていない。
【0007】
本発明は、従来の画像形成装置における上述の課題を解決し、大サイズ用紙を用いての両面記録を可能に構成する場合でもコスト増加及び装置大型化を極力抑制することのできる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、本発明により、作像部にて記録媒体の第一面に記録を行なった後に記録媒体を逆送して両面反転部を通過させ、記録媒体の表裏を反転させて前記作像部に再度給送して記録媒体の第二面に記録を行ない、両面記録が可能な画像形成装置において、前記両面反転部は、用紙搬送経路長が異なる第一の反転搬送経路と第二の反転搬送経路とを備え、前記第二の反転搬送経路は、前記第一の反転搬送経路から分岐した後に前記第一の反転搬送経路に合流するよう設けられていることにより解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置によれば、両面反転部に搬送経路長が異なる第一の反転搬送経路と第二の反転搬送経路とが備えられており、第二の反転搬送経路は第一の反転搬送経路から分岐した後に第一の反転搬送経路に合流するよう設けられているので、大サイズ用紙を用いての両面記録を低コストかつ省スペースにて実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置の構成を示す断面図である。
【図2】延長ユニットと両面ユニットの着脱機構を説明する模式図である。
【図3】両面搬送経路と延長搬送経路の分岐部を示す部分斜視図である。
【図4】延長ユニットの着脱により切替爪が切り替えられるように構成した実施例を示す部分斜視図である。
【図5】切替爪とそれを切り替える部材の動作を説明する模式図である。
【図6】本発明の第二実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す断面図である。
【図7】インクジェット両面パス方式の画像形成装置の一例を示す断面構成図である。
【図8】図7の装置よりもパス長の大きな両面搬送経路を有する記録装置を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の実施形態の説明に先立ち、両面印字機能有する画像形成装置の一例と、その装置構成を元に大サイズ用紙への対応を可能とする方法の一例について説明する。
図7は、片面印字後の用紙を印字部から逆送させて反転させる「インクジェット両面パス方式」の画像形成装置の一例を示す断面構成図である。この図に示すインクジェット記録装置は、装置本体部において、給紙カセット10内に収納された用紙12を給紙ローラ13で送り出し、さらに搬送ベルト21で印字位置まで搬送し、記録ヘッド7で記録を行なう。そして、装置本体の背部には両面ユニット61が装着されており、両面印刷時には、片面記録終了後の用紙を搬送ベルト21の逆転により両面ユニット61内に搬送し、両面搬送経路62を通過させることで用紙を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再給紙し、用紙裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
【0012】
このような構成で用紙を反転可能とし、両面印刷を行なう装置においては、両面印字が可能な用紙サイズは、両面ユニット61で反転可能な用紙サイズに制限される。すなわち、両面ユニット61の両面搬送経路62のパス長により反転可能な用紙サイズが決まるため、より大サイズの用紙を反転可能とするために、両面搬送経路(反転搬送経路)の長さを拡大することが考えられる。
【0013】
図8は、図7の装置における両面搬送経路62よりもパス長の大きな両面搬送経路162を有する両面ユニット161を備えるインクジェット記録装置を示す断面構成図である。
【0014】
図8の装置では、両面搬送経路162のパス長が長いために、その搬送経路中を用紙搬送できるように、計5つの搬送ローラ対を備えている。図7の装置と比較すると、図7の装置が有する3つの搬送ローラ対に加えて、搬送ローラ63d、63eが設けられている。このように、より大サイズの用紙を反転して両面記録を可能とするために、両面搬送経路のパス長を拡大すると、両面搬送経路に必要な搬送ローラ対の数が増え、コストが増大するという問題がある。また、大サイズ用紙での両面記録を要求しないユーザにとっては、不要なコストを負担することになるが、だからといって図7の装置では、大サイズ用紙での両面記録は不可であり、必要となった時点で大サイズ用紙での両面記録ができるように機能拡張できることが望ましい。
【0015】
このような点に鑑み、本願発明者が鋭意研究を重ねた発明の実施形態について以下に図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置の構成を示す断面図である。本実施形態のインクジェット記録装置は、画像形成部を有した画像形成装置本体と、画像形成装置本体に付設された両面ユニット(反転ユニット)と、から概略構成されている。
【0016】
画像形成装置本体は、図示しない左右の側板に架設したガイド部材であるガイドロッド1によりキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータで駆動プーリと従動プーリ間に架け渡したタイミングベルト5を介してキャリッジ3を主走査方向(図面に垂直な方向)に移動走査する。
【0017】
キャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドからなる4個の記録ヘッド7を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0018】
記録ヘッド7を構成する液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどのインク(記録液)を吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0019】
キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための図示しない各色のサブタンクを搭載している。このサブタンクにはインク供給チューブを介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。なお、インク滴を吐出する記録ヘッド7以外に、記録液(インク)と反応することでインクの定着性を高める定着用処理液(定着用インク)を吐出する記録ヘッドを備えることもできる。
【0020】
一方、給紙カセット10などの用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する給紙ローラ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙ローラ13側に付勢されている。
【0021】
この給紙部から給紙された被記録媒体(用紙)12を記録ヘッド7の下方側で搬送するための搬送部として、用紙12を静電力で吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド15を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ22と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせるための搬送ガイド23と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された先端加圧コロ25とを備えている。また、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段を構成する帯電ローラ(図示せず)を備えている。
【0022】
ここで、搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されて、図示しない副走査モータからタイミングベルト及びタイミングローラを介して搬送ローラ27が回転されることで、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。
【0023】
また、キャリッジ3の前方側には、スリットを形成したエンコーダスケール42を設け、キャリッジ3の前面側にはエンコーダスケール42のスリットを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ43を設け、これらによって、キャリッジ3の主走査方向位置を検知するためのエンコーダ44を構成している。
【0024】
さらに、記録ヘッド7で記録が行なわれた用紙を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙を分離するための分離爪(図示せず)と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
【0025】
そして、画像形成装置本体の背部には両面ユニット61が装着されている。両面ユニット61は、両面搬送経路62に沿って配置された搬送ローラ63a,63b,63cと、各搬送ローラと接しているコロ64a,64b,64cと、を備えている。
【0026】
画像形成装置本体側の用紙駆動系の正転時、逆転時にかかわらず、両面ユニット61内における搬送方向(図1で反時計回り方向)は変わらない。両面給紙ユニット61内に設けられた用紙搬送系を駆動させる駆動系には、例えば、回転方向に合わせ揺動するブラケットに奇数個の歯車で構成される歯車列と、偶数個の歯車で構成される歯車列の2つの歯車列に連結する歯車が2個あり、装置本体側の用紙搬送系の回転方向により、歯車列のどちらかがかみ合うようにすることによって、両面給紙ユニット61内における回転は一方向に保たれる。なお、揺動するブラケット以外に、ワンウェイクラッチや電磁クラッチを使用しても良い。
【0027】
さらに、本実施形態では、両面ユニット61の外側に、オプションの延長ユニット65を装着できるようになっている。図1では延長ユニット65を装着した状態で示す。延長ユニット65内には、ガイド板で囲われた延長搬送経路67が形成されている。延長ユニット65は、両面ユニット61に容易に着脱できるように構成されている。両面ユニット61と延長ユニット65で、用紙搬送経路長が異なる2つの反転搬送経路を有する両面反転部を構成している。
【0028】
なお、両面ユニット61には、両面搬送経路62から分岐して延長ユニットの延長搬送経路67に連絡される分岐側連絡経路(装置の上側)と、延長ユニットの延長搬送経路67を両面搬送経路62に合流させる合流側連絡経路(装置の下側)とが設けられている。そして、分岐側連絡経路の入口部には、用紙搬送方向を切り替える切替爪66が配置されている。切替爪66は、図示しないソレノイド等の駆動手段によりその位置が切り替えられる。この切替爪66の位置を切り替えることにより、印字部から逆送されてきた用紙の進行方向を、通常の両面搬送経路62を通る方向と、延長ユニットの延長搬送経路67を通る方向とに切り替えることができる。
【0029】
延長搬送経路67を用いて用紙を反転させるとき、用紙は、延長ユニット65内に入るまで、及び、延長ユニット65から出た後は、両面ユニット61内の搬送路(搬送経路62の一部)を通過するわけであるが、以下の説明では、単に「延長搬送経路67を通過」や「延長搬送経路67を用いて」などと記す。
【0030】
上記のように構成した本実施形態のインクジェット記録装置において、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給送され、略鉛直上方に給紙された用紙12はガイド15で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド23で案内されて先端加圧コロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0031】
このとき、図示しない帯電ローラに対して正極(プラス)出力とマイナス(負極)出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト21には、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスの電荷が所定の幅で帯状に交互に印加される。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
【0032】
そこで、キャリッジ3を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙12を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
【0033】
なお、キャリッジ3の走査方向と印刷との関係では、一方向の走査時にだけ画像を形成する片方向記録モードと、キャリッジ3の両方向の走査時のいずれでも画像を形成する両方向記録モードがあり、これをユーザーからの指定や印刷画像に応じて設定するか、或いは、いずれかのモードだけを行うようにするかは任意である。
【0034】
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面ユニット61内に送り込み、両面搬送経路62又は延長搬送経路67を通過させることで用紙12を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベルト21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
【0035】
用紙逆送時に、用紙後端が印字部から抜けた後(両面ユニット61内に入った後)の所定のタイミングで、画像形成装置本体側の用紙駆動系を正転方向に戻す。これにより、表裏が反転されてカウンタローラ22と搬送ベルト21との間に再給紙された用紙を、印字部に給送する。
【0036】
両面印刷時に、両面搬送経路62と延長搬送経路67のどちらに用紙を通過させるかは、用紙サイズにより決定する(制御する)。仮に、本実施形態のインクジェット記録装置では、最大A3サイズ(縦通紙)までの用紙を使用可能とする。その場合、B4サイズまでの用紙、例えばA4(縦)サイズやB4(縦)サイズの用紙を用いる場合は、用紙が両面搬送経路62を通るように上記切替爪66を切り替える。そして、A3サイズ(縦)の用紙を用いる場合は、用紙が延長搬送経路67を通るように上記切替爪66を切り替える。なお、以下ではA3サイズの用紙を「大サイズ用紙」、B4サイズ以下の用紙を「通常サイズ」と呼ぶ。
【0037】
ところで、両面ユニット61の反転経路62の長さ(パス長)は、通常サイズ用紙の長さより長く、しかも、通常サイズ用紙の後端が両面ユニット61に入ったことを図示しないセンサが検知した時点では、用紙先端が搬送ベルト21に到達しない長さに設定する。また、延長ユニット65の反転経路67を用いる場合のパス長(搬送経路62の一部を含むパス長)は、大サイズ用紙の長さより長く、しかも、大サイズ用紙の後端が両面ユニット61に入ったことを図示しないセンサが検知した時点では、用紙先端が搬送ベルト21に到達しない長さに設定する。このように設定することにより、用紙反転時に画像形成装置本体内に用紙が残ることなく、用紙全体が両面ユニット61内または両面ユニット61+延長ユニット65内に取り込まれる。
【0038】
さらに、延長された部分のパス長、より正確には、搬送ローラ63a(とコロ64a)から延長ユニット65の反転経路67を経由した搬送ローラ63c(とコロ64c)までのパス長は、大サイズ用紙(例えばA3縦)の長さよりも短くなるように設定されている。このように設定することにより、反転経路67を通過させて大サイズ用紙を反転させるときに、両面ユニット61内の搬送ローラ(ここでは搬送ローラ63aと搬送ローラ63c)で用紙の搬送が可能となるため、大サイズ用紙搬送のために延長ユニット65内に(反転経路67内に)搬送ローラ及びその駆動系を配置する必要がなく、装置構成の複雑化を防ぎ、コストの上昇を抑制することができる。
【0039】
また、仮に、大サイズ用紙が延長ユニット65内でジャムした場合でも、分岐部あるいは合流部のどちらかから用紙がユニット外に(延長ユニット65の外に)露出することになるので、延長ユニット65を両面ユニット61から取り外すだけでジャム処理を行うことができる。したがって、ジャム処理用の開口部などを延長ユニット65に設ける必要がなく、この点でも、構成の複雑化とコストの上昇を防ぐことができる。
【0040】
さらに、搬送ローラが無いことから、延長搬送経路の長さを任意に設定することで(適宜な経路長を有する延長ユニットを準備することで)、様々な用紙サイズに対応することが可能となる。例えば、短冊状の長尺紙を使用したい場合には、その長尺紙に対応する経路長を有する延長ユニットを両面ユニット61に装着することで、長尺紙を用いた両面記録が可能となる。
【0041】
また、両面ユニット61から延長ユニット65への分岐部(反転経路62から反転経路67への分岐部)を、両面ユニット61内の用紙搬送手段(本例では搬送ローラ63aとコロ64aによる搬送ローラ対)の直後に設けることで、反転経路67の使用に必要な搬送ローラ間隔、すなわち、延長ユニット65への分岐部手前の搬送ローラ対(本例では搬送ローラ63a)と合流部後の搬送ローラ対(本例では搬送ローラ63c)との間隔(距離)を最小化することができる。また同時に、分岐部における搬送負荷に対して安定した用紙搬送を行うことができる。
【0042】
上述したように、延長ユニット65は、両面ユニット61に着脱可能に構成されている。図2に、延長ユニット65と両面ユニット61の着脱機構(係止機構)の構成を示す。この図に示すように、延長ユニット65の一方側(両面ユニット側)端部の上部と下部に、両面ユニット61に設けられた受部68a,68aに嵌合される嵌合部68b,68bが形成されている。上記嵌合部68b,68bを受部68a,68aに合わせて、延長ユニット65を両面ユニット61に押し込むことにより、嵌合部68bが受部68aに嵌合され、延長ユニット65を両面ユニット61に容易に装着することができる。また、延長ユニット65を図に矢印で示す方向に引っ張ることにより、延長ユニット65を両面ユニット61から容易に取り外すことができる。なお、延長ユニット65を装着後に両面ユニット61に固定させる留め具等を設けても良い。
【0043】
図示例では、延長ユニット65が両面ユニット61から完全に離脱できる(取り外す)構成を示したが、スライドレール等により延長ユニット65を両面ユニット61から引き出すことにより離間させる構成も可能である。さらに、延長ユニット65を回動軸を介して両面ユニット61に装着支持させ、延長ユニット65を回動させることで延長ユニット65を開放可能に設けることもできる。
【0044】
延長ユニット65内に搬送ローラやその駆動系を設ける必要がないので、上記のような適宜な構成により、延長ユニット65の両面ユニット61に対する高い取り付け自由度および取外し自由度を容易に実現することができる。
【0045】
図3は、両面搬送経路62と延長搬送経路67の分岐部を示す、部分斜視図である。上述したように、本実施形態では、通常サイズ用紙を反転させる場合は両面搬送経路62を用い、大サイズ用紙を反転させる場合は延長搬送経路67を用いるようになっている。両面搬送経路62の幅(用紙搬送方向と直交する方向の長さ)は、通常サイズ用紙に対応する幅に設けられている。そして、その分岐部に配置される切替爪66は、両面搬送経路62の幅(延長搬送経路67の幅よりも狭く)に設定されている。このような構成により、切替爪66を小型化することができ、コストを下げることができる。また、幅方向に空いたスペースを利用して、切替爪を動作させる機構や延長ユニットの着脱機構(係止機構)を、ユニット外形を拡大することなく内包することが可能となる。
【0046】
図4及び図5は、延長ユニット65の着脱により切替爪66が切り替えられるように構成した実施例を示すものである。
図4に示すように、延長ユニット65の幅方向の一方側端部に、ストライカー71が突出して設けられている。両面ユニット61側には、ストライカー71が挿入される穴69が設けられている。図5の上段に示すように、切替爪66の回動軸の一方側(ストライカー71に対応する側)にはレバー70が装着固定されている。レバー70は切替爪66の回動軸と一体的に形成しても良い。切替爪66とレバー70は、図5の中段に示すように、所定の角度を持つように設定されている。そして、延長ユニット65を両面ユニット61に装着すると、ストライカー71が穴69に挿入され、図5の下段に示すように、ストライカー先端がレバー70に当接してレバーを押し、切替爪66を回動させるように構成する。
【0047】
切替爪66の回動軸には、図示しないトーションスプリングが装着されており、切替爪66が図5の上段に示すような位置となるように回動習性を与えている。これにより、切替爪66は、印字部から逆送されてきた用紙を両面ユニット61の両面搬送経路62に導く。すなわち、延長ユニット65が両面ユニット61に装着されていないとき、切替爪66は、印字部から逆送されてきた用紙を両面ユニット61の両面搬送経路62へ導く切り替え位置に保持される。
【0048】
延長ユニット65を両面ユニット61に装着することにより、図5の下段に示すように、ストライカー71が切替爪66を回動させると、切り替え爪66は、印字部から逆送されてきた用紙を延長ユニット65の延長搬送経路67に導く位置に切り替えられる。これにより、延長ユニット65が装着された状態では、印字部から逆送されてきた用紙は延長搬送経路67を搬送される。
【0049】
このような構成により、延長ユニット65の着脱により切替爪66が自動的に切り替えられる。延長ユニット65は、両面ユニット61から完全に取り外す構成でも良いし、スライドレール等により引き出す構成でも良い。また、回動させることで開放する構成でもかまわない。
【0050】
また、ここでは、ストライカー71が直接切替爪66を動作させる構成を示したが、リンク部材等を用いて切替爪66を動作させる構成でもよい。また、動力源を用い、ストライカー71がスイッチを押す、あるいは、ストライカー71を検知することにより、上記動力源を駆動させて切替爪66を動作させる構成でもよい。さらに、ストライカー71を利用して、延長ユニット65が両面ユニット61に装着されたこと及び両面ユニット61から取り外されたことの検知を行うように構成することもできる。
【0051】
図6は、両面ユニットの一部と延長ユニットを一体化して、拡張ユニットとして設けた、第2実施形態を示すものである。基本的構成は図1等により説明した第1実施形態と同様であるため、異なる部分を説明し、重複する説明は省略する。
【0052】
図6に示す第2実施形態のインクジェット記録装置において、通常反転部60と延長反転部75からなる拡張ユニット80が、画像形成装置本体の背部に装着されている。延長反転部75は、ユニットカバー76の下側端部に位置する回動軸77により、通常反転部60に対して開放及び閉鎖可能に設けられている。図では延長反転部75を開放した状態で示している。なお、延長反転部75を通常反転部60から完全に取り外す(離脱させる)構成も可能である。また、スライドレール等により延長反転部75を通常反転部60から引き出す構成も可能である。
【0053】
本第2実施形態では、延長搬送経路67が延長反転部75側に形成されているのはもちろんであるが、両面搬送経路62を形成する外側のガイド板も延長反転部75側に設けられている。そのほか、コロ64a,64b及び切替爪66も延長反転部75側に、すなわちユニットカバー76内に支持されて設けられている。切替爪66は、延長反転部75を閉鎖すると、通常反転部60側に設けた駆動系が連結され、切り替え可能となる。あるいは、図4,5で説明した構成を利用して切替爪66を切り替える(その場合には、通常反転部60側にストライカーを設けて、延長反転部75閉鎖時にストライカーによって切替爪66を切り替える)ように構成しても良い。
【0054】
本第2実施形態の構成によれば、用紙がジャムした場合、延長反転部75を開放することにより、両面搬送経路62における複数の搬送ローラ対のニップが開放される(本例では、搬送ローラ63a及び63b部でニップが開放される)ため、ジャムした用紙(通常サイズ用紙)を容易に取り出すことができる。搬送ローラ63c部ではニップは開放されないが、用紙後端が充分に露出されることから用紙の取り出しは可能である。延長搬送経路67に用紙が進入している場合(大サイズ用紙がジャムした場合)は、上記分岐部または合流部から用紙を取り出すことができる。
【0055】
また、本第2実施形態の構成によれば、用紙反転のための搬送経路を2つ設けて大サイズ用紙の両面印字を可能としながら、通常サイズ用紙でも大サイズ用紙でも、用紙ジャムが発生した場合には、延長反転部75を開放させるという、ワンアクションの動作でジャム処理が可能となるため、良好な作業性を(反転搬送路が1つの装置と同じように)維持できるという、優れた操作性を提供することができる。
【0056】
上述したように、本発明によれば、両面反転部に記録媒体の搬送手段が配置された第一の反転搬送経路と記録媒体の搬送手段が配置されない第二の反転搬送経路とが備えられており、第二の反転搬送経路は第一の反転搬送経路から分岐した後に第一の反転搬送経路に合流するよう設けられているので、大サイズ用紙を用いての両面記録を低コストかつ省スペースにて実現することが可能となる。
【0057】
また、第二の反転搬送経路の経路長が第一の反転搬送経路の経路長よりも長いことにより、第二の反転搬送経路を使用して、より大きなサイズの用紙を用いた両面記録を行なうことができる。
【0058】
また、第一の反転搬送経路から第二の反転搬送経路への分岐部が、第一の反転搬送経路に配置された一つの搬送手段の下流側近傍に設けられることにより、第二の反転搬送経路を搬送させる用紙を送る用紙搬送手段の配置間隔を最小化することができる。また同時に、分岐部における搬送負荷にたいして安定した用紙搬送を行なうことができる。
【0059】
また、第一の反転搬送経路から第二の反転搬送経路への分岐部に、記録媒体の搬送方向を切り替える切替手段が配置されているので、用紙の搬送方向を第一の反転搬送経路または第二の反転搬送経路へ確実に切り替えることができる。
【0060】
そして、切替手段の用紙搬送方向と直交する方向の大きさを、第一の反転搬送経路の通紙幅に対応する大きさに設けることで、コストを抑制できるとともに、空いたスペースを利用して駆動系やユニット着脱機構部を外形を拡大することなく内包することが可能となる。
【0061】
また、第二の反転搬送経路を備える部分が第一の反転搬送経路を備える部分に対し、着脱可能なユニットとして構成されるので、必要となった時点で第二の反転搬送経路を備えるユニットを装着することが可能となり、装置の初期コストを低減できるとともに、装置の初期設置スペースも低減できる。
【0062】
また、第二の反転搬送経路を備えるユニットを装着することで両面反転部における用紙搬送方向を第一の反転搬送経路から第二の反転搬送経路へと自動的に切り替えることができる。また、その搬送方向の切り替えに連動してユニットの装着検知ができ、別途検知手段を設ける必要がないことでコストを低減することができる。
【0063】
また、第二の反転搬送経路を備えるユニットを離間させることにより、第一の反転搬送経路の一部が開放状態となるので、ジャム処理を容易に行なうことができる。
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。画像形成装置本体部分の構成、すなわち、給紙部や印字部の構成等は適宜な構成を採用可能である。
【0064】
反転搬送経路の長さも一例であって、適宜な用紙サイズに対応する長さとすることが可能である。両面反転部における搬送ローラの駆動系の構成なども適宜な構成を採用可能である。
【0065】
画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【符号の説明】
【0066】
3 キャリッジ
7 記録ヘッド
10 給紙カセット
21 搬送ベルト
61 両面ユニット
62 両面搬送経路
63 搬送ローラ
64 コロ
65 延長ユニット
66 切替爪
67 延長搬送経路
68a 受部
68b 嵌合部
69 穴
70 レバー
71 ストライカー
75 延長反転部
80 拡張ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2010−215376号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作像部にて記録媒体の第一面に記録を行なった後に記録媒体を逆送して両面反転部を通過させ、記録媒体の表裏を反転させて前記作像部に再度給送して記録媒体の第二面に記録を行ない、両面記録が可能な画像形成装置において、
前記両面反転部は、記録媒体の搬送手段が配置された第一の反転搬送経路と記録媒体の搬送手段が配置されない第二の反転搬送経路とを備え、
前記第二の反転搬送経路は、前記第一の反転搬送経路から分岐した後に前記第一の反転搬送経路に合流するよう設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第二の反転搬送経路の経路長が前記第一の反転搬送経路の経路長よりも長いことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第一の反転搬送経路から前記第二の反転搬送経路への分岐部は、前記第一の反転搬送経路に配置された一つの搬送手段の下流側近傍に設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第一の反転搬送経路から前記第二の反転搬送経路への分岐部に、記録媒体の搬送方向を切り替える切替手段が配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記切替手段の、用紙搬送方向と直交する方向の大きさは、前記第一の反転搬送経路の通紙幅に対応する大きさに設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第二の反転搬送経路を備える部分が、前記第一の反転搬送経路を備える部分に対し、着脱可能なユニットとして構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第二の反転搬送経路を備えるユニットを前記第一の反転搬送経路を備える部分に装着することで、前記両面反転部における用紙搬送方向が前記第一の反転搬送経路から前記第二の反転搬送経路へと切り替わることを特徴とする、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記両面反転部における用紙搬送方向の切替に連動して、前記第二の反転搬送経路を備えるユニットの前記第一の反転搬送経路を備える部分への装着が検知されることを特徴とする、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第二の反転搬送経路を備えるユニットを前記第一の反転搬送経路を備える部分から離間させることにより、前記第一の反転搬送経路の一部が開放状態となることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18614(P2013−18614A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153705(P2011−153705)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】