説明

画像形成装置

【課題】安定したクリーニング性能を確保することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明は、トナー転写後の中間転写ベルト23の表面と接触して残留物を捕集する回転ブラシ35と、中間転写ベルト23と回転ブラシ35との接触部位よりも回転ブラシ35の回転方向下流側で回転ブラシ35と接触して回転ブラシ35で捕集した残留物を除去する回収ローラ36と、回転ブラシ35と回収ローラ36との接触部位よりも回収ローラ36の回転方向下流側で接触して回収ローラ36で除去した残留物を除去するクリーニングブレード37と、回転ブラシ35と回収ローラ36との接触部位とクリーニングブレード37との間に位置して回収ローラ36に接触するシート38と、を備え、中間転写ベルト23の表面粗さの経時変化と回収ローラ36の表面粗の経時変化とが、回収ローラ36による残留物の除去率が低くなる方向で略同じ傾向を有する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、或いはこれらを機能的に備えた複合機等の画像形成装置、特に、トナー画像を転写紙に転写した後の像担持体の表面と接触する回転ブラシ(ファーブラシ)によって像担持体の表面に付着した残トナーや紙粉等の残留物を捕集するようにした画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ、ファクシミリ、或いはこれらを機能的に備えた複合機等の画像形成装置、特に、トナー画像を転写紙に転写した後の像担持体の表面と接触する回転ブラシ(ファーブラシ)によって像担持体の表面に付着した残トナーや紙粉等の残留物を捕集するようにした画像形成装置が知られている。
【0003】
この際、回転ブラシで像担持体の表面に付着した残留物を掻き取る場合、掻き取った残留物を効率良く回収するためには、回転ブラシから残留物を回収ローラで回収した後に、その回収ローラの比較的上方位置でクリーニングブレードの先端をカウンタ方向で当接させて回収スクリュー等に落下させるのが好ましい。
【0004】
このため、回収ローラとクリーニングブレードとの間には、クリーニングブレードで掻き取った残留物が回収ローラの上流側に再度付着してしまわないよう、シート状のシール部材等を配置している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−96630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した画像形成装置にあっては、シール部材の静止摩擦係数だけでなく、回収ローラの表面粗さのパラメーターが重要となる。
【0007】
例えば、回収ローラの表面粗さが極端に小さい場合には、シール部材との間に目詰まりが発生し易いうえ、回転ブラシから付着物を捕集し難くなってしまう。また、回収ローラの表面粗さが極端に大きい場合には、クリーニングブレードでの掻き取り性が悪化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、安定したクリーニング性能を確保することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、表面にトナー画像が形成される像担持体と、トナー画像を転写紙に転写した後の前記像担持体の表面と接触して、該表面に付着した残留物を捕集する回転ブラシと、前記像担持体と前記回転ブラシとの接触部位よりも前記回転ブラシの回転方向下流側で該回転ブラシと接触して該回転ブラシで捕集した残留物を除去する回収ローラと、前記回転ブラシと前記回収ローラとの接触部位よりも前記回収ローラの回転方向下流側で接触して前記回収ローラで除去した残留物を除去するクリーニングブレードと、前記回転ブラシと前記回収ローラとの接触部位と前記クリーニングブレードとの間に位置して前記回収ローラに接触するシートと、を備えた画像形成装置において、前記像担持体の表面粗さと前記回収ローラの表面粗さとが、初期において大きく経時変化して小さくなる構造であることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置によれば、安定したクリーニング性能を確保することができる。
【0011】
請求項2に記載の画像形成装置は、前記像担持体の表面層と前記回収ローラの表面層とを、同じ材料からなるコーティング層で構成することによって、前記像担持体及び前記回収ローラの各表面粗さの経時変化の傾向を略同じ構造としたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の画像形成装置によれば、像担持体と回収ローラとの各表面粗さの経時変化を略同一とすることができる。
【0013】
請求項3に記載の画像形成装置は、前記回収ローラの表面硬度と前記像担持体の表面硬度に差があり、表面硬度が高い前記一方の表面を研磨する研磨部材を設け、前記像担持体の表面粗さの経時変化と前記回収ローラの表面粗さの経時変化との相対的な変化率又は粗さの差分を同期させることによって、前記像担持体及び前記回収ローラの各表面粗さの経時変化の傾向を同じ構造としたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の画像形成装置によれば、像担持体と回収ローラとの各表面粗さの経時変化を、略同じ関係を維持しつつ、その傾向を同じ構造とすることができる。
【0015】
請求項4に記載の画像形成装置は、前記回収ローラの表面硬度と前記像担持体の表面硬度の一方の表面硬度を他方の表面硬度よりも低くすると共に、表面硬度を低くした前記一方の表面にコーティング層を設け、前記像担持体の表面粗さの経時変化と前記回収ローラの表面粗さの経時変化との相対的な変化率又は粗さの差分を同期させることによって、前記像担持体及び前記回収ローラの各表面粗さの経時変化の傾向を略同じ構造としたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の画像形成装置によれば、像担持体と回収ローラとの各表面粗さの経時変化を、像担持体の交換時期で同じ表面粗さとなるように、その傾向を同じ構造とすることができる。
【0017】
この際、前記回収ローラの初期の表面粗さがRz>3であり、前記像担持体の初期の表面粗さがRz>5であり、前記像担持体の経時変化に伴う交換時期における表面粗さがRz>0.5であるのが望ましい。また、前記回収ローラの表面のコーティング層が高硬度の金属メッキであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像形成装置は、安定したクリーニング性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態の画像形成装置を示す目詰まり状態の要部の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態の画像形成装置を示す要部の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の画像形成装置に適用される中間転写ベルトを示し、(A)は初期状態の中間転写ベルトの要部の断面図、(B)は表面粗さが経時変化している状態の中間転写ベルトの要部の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の画像形成装置に適用される回収ローラを示し、(A)は初期状態の回収ローラの要部の断面図、(B)は表面粗さが経時変化している状態の回収ローラの要部の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の画像形成装置における実施例2の中間転写ベルトと回収ローラとの経時変化を示すグラフ図である。
【図7】本発明の一実施形態の画像形成装置における実施例3の回収ローラの経時変化を示し、(A)は初期の要部の断面図、(B)は中期の要部の断面図、(C)は終期の要部の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の画像形成装置における実施例3の中間転写ベルトと回収ローラとの経時変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明の画像形成装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0021】
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置の説明図、図2は本発明の一実施形態の画像形成装置を示す目詰まり状態の要部の説明図、図3は本発明の一実施形態の画像形成装置を示す要部の説明図、図4は本発明の一実施形態の画像形成装置に適用される中間転写ベルトを示し、図4(A)は初期状態の中間転写ベルトの要部の断面図、図4(B)は表面粗さが経時変化している状態の中間転写ベルトの要部の断面図、図5は本発明の一実施形態の画像形成装置に適用される回収ローラを示し、図5(A)は初期状態の回収ローラの要部の断面図、図5(B)は表面粗さが経時変化している状態の回収ローラの要部の断面図、図6は本発明の一実施形態の画像形成装置における実施例2の中間転写ベルトと回収ローラとの経時変化を示すグラフ図、図7は本発明の一実施形態の画像形成装置における実施例3の回収ローラの経時変化を示し、図7(A)は初期の要部の断面図、図7(B)は中期の要部の断面図、図7(C)は終期の要部の断面図、図8は本発明の一実施形態の画像形成装置における実施例3の中間転写ベルトと回収ローラとの経時変化を示すグラフ図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのタンデム方式のカラープリンタ11は、プリンタ本体12の内部に、転写紙(図示せず)を収納する給紙カセット13と、給紙カセット13から転写紙を取り出す給紙部14と、給紙カセット13又は図示を略する手差トレイから供給された転写紙に画像形成処理を行う画像形成処理部15と、給紙カセット13又は手差トレイから供給された転写紙を転写紙搬送経路16で案内しつつ画像形成処理部15で画像形成処理したトナー像を転写する二次転写部17と、転写後のトナー像を定着する定着部18と、定着後の転写紙を排紙する排紙部19と、を備えている。
【0023】
画像形成処理部15は、例えば、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)を用いて画像形成処理を行うタンデム方式が採用されている。尚、以下の説明では、特に色指定に関する場合にのみ、各算用数字の符号に括弧書きで(Y,M,C,K)の色を付し、共通の場合には算用数字のみの符号を付して説明する。
【0024】
画像形成処理部15は、各色(Y,M,C,K)毎に対応して、補給用トナーを収納した複数のトナーコンテナ20と、各色トナーを図示を略するパーソナルコンピュータから送信された印刷データに含まれる画像データに基づいてトナー像を形成するアモルファスシリコン製の複数の感光体ドラム21と、各感光体ドラム21にトナーを供給する複数の現像器22と、感光体ドラム21に形成されたトナー像が転写される無端状の中間転写ベルト(像担持体)23とを備えている。
【0025】
各感光体ドラム21は、その表面に露光器ユニット24から出射されたビーム光束に基づいて各色のトナー像を担持して中間転写ベルト23にトナー像を転写するためのものであり、現像器22と共に中間転写ベルト23の下方に配置されている。また、感光体ドラム21の周囲には、帯電器(帯電ローラ)25、露光器ユニット24、現像器22、転写ローラ26、感光体クリーニング装置27、除電器28が転写プロセス順に配置されている。
【0026】
各現像器22は、基本的に同一構成のものが中間転写ベルト23の下方に回動移動方向に沿って隣接配置されている。尚、現像器22の詳細な構成の説明は省略する。
【0027】
中間転写ベルト23は、プリンタ本体12内で水平方向に延びて配置された無端ベルトであり、画像形成動作に伴って循環駆動される。また、中間転写ベルト23上に転写されたトナー像は、給紙カセット13又は手差トレイから転写紙搬送経路16を通って搬送されてきた転写紙に対し二次転写部17で転写する。また、中間転写ベルト23は、一対のローラ29,30間に回動移動可能に架設され、一方のローラ29を駆動ローラ、他方のローラ30を従動ローラ兼用のテンションローラとすることで緊張状態が維持されている。さらに、中間転写ベルト23の側方(図においてローラ30に中間転写ベルト23を介して対向する左側)には、二次転写部17で転写紙にトナー像を転写紙した後の残留トナーを中間転写ベルト23の表面から除去するクリーニング装置31が設けられている。また、二次転写部17の上流側において中間転写ベルト23の表面に対向して反射型センサー42が設けられている。反射型センサー42により中間転写ベルト23の上のトナー画像の濃度を検知して、画像形成動作の最適な条件が設定される。
【0028】
尚、二次転写部17でトナー像を転写した転写紙は転写紙搬送経路16を通って定着部18で定着された後、転写紙搬送経路16の終端部に配置された排紙部19へと案内されてプリンタ本体12の上面として兼用する排紙トレイ部12aに向けて排出・積載される。また、ローラ30のテンション機構は公知の技術のものが採用され、中間転写ベルト23の回動移動方向(図示矢印a,b方向)に変位することで中間転写ベルト23の緊張状態を維持する。
【0029】
露光器ユニット24は、各感光体ドラム21(Y,M,C,K)に対応した複数の光源32(Y,M,C,K)から放射された各ビーム光束を、2つに分割されたユニット、即ち、光源32(Y),(M)及び光源32(C),(K)を対としてそれぞれ共用するポリゴンミラー等の偏光器33(YM),33(CK)で偏光走査しつつ感光体ドラム21(Y,M,C,K)にビーム光束を結像する。
【0030】
クリーニング装置31は、中間転写ベルト23の幅方向(図1の紙面と直交する奥行き方向・転写紙幅方向)に延在され、中間転写ベルト23を介してローラ(テンションローラ)30と対向配置されている。また、クリーニング装置31は、図2及び図3に示すように、クリーニングケース34と、中間転写ベルト23の表面に接触するローラ状のファーブラシからなる回転ブラシ35と、回転ブラシ35と接触して回転ブラシ35で捕集した中間転写ベルト23の表面に付着した残留物を回転ブラシ35から電気的に回収する回収ローラ36と、回収ローラ36で回収した残留物を掻き取るクリーニングブレード37と、回転ブラシ35と回収ローラ36との接触部位とクリーニングブレード37との間に位置して回収ローラ36に接触する逆流防止用のシート38と、クリーニングブレード37よりも下流側で回収ローラ36と接触して回収ローラ36の表面を研磨する研磨部材としての研磨ローラ39と、クリーニングブレード37で掻き取った残留物を回収・搬送するスパイラル40と、を備えている。尚、図示の矢印は各回転体の回転方向を示す。
【0031】
これにより、クリーニング装置31は、回転ブラシ35によって中間転写ベルト23の表面に残存した残トナーや紙粉等の残留物を中間転写ベルト23の回動移動方向(図2の矢印参照)とカウンタ方向で回転することによってブラシ繊維間で捕集する。
【0032】
また、回転ブラシ35で捕集した残留物は、回収ローラ36に印加されるバイアスによって回転ブラシ35と回収ローラ36との間の電位差によりブラシ繊維間から回収ローラ36に除去される。
【0033】
さらに、回収ローラ36で除去された残留物は、回収ローラ36とカウンタ方向で接触するクリーニングブレード37によって掻き取られ、このクリーニングブレード37の下方に配置されたスパイラル40によって装置外へと排出(図示しない廃棄トナーボックスに搬送)される。
【0034】
回転ブラシ35には、例えば、導電性ポリエステルや導電性ナイロン等の導電性樹脂からなるブラシ繊維を使用する。
【0035】
回収ローラ36には、例えば、ステンレス鋼やニッケルメッキ等の金属部材等を使用する。
【0036】
クリーニングブレード37には、例えば、ポリウレタン等の樹脂シートやPET等の樹脂フィルムを使用する。
【0037】
また、逆流防止用のシート38は、回転ブラシ35で捕集した残留物を常時は掻き取ることなく通過させる。このため、シート38の材質又は厚さは、回転ブラシ35のブラシ繊維よりも高い柔軟性を有するものが用いられている。
【0038】
研磨ローラ39は、図示しないスプリング等の付勢によって回収ローラ35の表面と常時接触しており、回収ローラ35の表面を研磨する。
【0039】
ここで、中間転写ベルト23は、図4(A)に示すように、基材樹脂23aの表層側に弾性ゴム層23b及びコーティング層23cをこの順に備えている。中間転写ベルト23の表面は、画像形成動作にともなってトナーの外添剤などが付着していき、ある程度使用すると初期状態から耐久状態に移行して安定する。移行に際して光沢度も低下するが、初期状態の表面の光沢度が高いと耐久状態になった際に場所により光沢度に差が生じて均一にならない。光沢度にムラがあると反射型センサー42によるトナー濃度検知が不安定になる。そこで、本発明の中間転写ベルト23では、初期状態の光沢度を耐久状態の光沢度に近くなるように、コーティング条件などで表面粗さを大きくしている。この際、中間転写ベルト23の表面粗さがコーティング層23cの材料や表面処理等によって初期において大きく設定されている場合、図4(B)に示すように、残トナーや外添剤等が残留物Fとして埋没することで、表面粗さが平滑化する方向での変化が経時的に起こる。また、中間転写ベルト23の表面粗さが大きい場合、発生した紙粉が中間転写ベルト23に付着して搬送され易い状態になる。したがって、中間転写ベルト23の回動移動に伴って回転ブラシ35にまで搬送された紙粉は、回転ブラシ35に捕集され、その後、回収ローラ36に移り、逆流防止用のシート38を通過させ、クリーニングブレード37にて掻き落とされて、回収される。
【0040】
初期の中間転写ベルト23の表面粗さが大きい場合、中間転写ベルト23の表面に付着して搬送される紙粉量が多くなるため、回収ローラ36で除去する紙粉量が多くなる。ここで、図2に示すように、紙粉量が多くなった場合、回収ローラ36とシート38との間に目詰まりが発生し易くなる。このため、紙面奥行き方向で回収ローラ36とシート38との間を回収トナーが通過できない。また、目詰まりが発生していない回収ローラ36とシート38との隙間からクリーニングブレード37で掻き落とされたトナーがクリーニングケース34の底面34aに溜まって回収不能となる虞がある。しかも、この回収不能となってしまったトナー等は、底面34aでの堆積により、場合によっては回転ブラシ35に再付着し、クリーニング装置31よりも下流側の中間転写ベルト23に付着したクリーニング不良と同じ結果を招き、画像不具合が発生してしまう。
【0041】
そこで、図5(A)に示すように、回収ローラ36の基材36aに、アルミ,SUS,SUMなどの金属材料を用いた場合には、その表面にはニッケルなどの高硬度の金属メッキをコーティング層36bとして施すことで、長期的に安定な表面粗さを保持することができる。また、回収ローラ36の表面粗さは、基材の金属材料にブラスト処理などを施すことで調整可能であり、金属メッキ処理を施した場合には、その表面状態を維持しながら高硬度の表面を得ることができる。この際、回収ローラ36の表面にニッケルなどの金属メッキ層のコーティング処理を施した場合には、表面粗さの変化がほとんど起こらない。中間転写ベルト23の表面粗さは初期的に大きい場合、トナーや外添材などが埋没することで、表面粗さの変化が経時的に起こる。中間転写ベルト23の表面粗さが大きい初期状態の場合、発生した紙粉が中間転写ベルト23に付着し、搬送されやすい状態になる。回転ブラシ35にまで搬送された紙粉は、回転ブラシ35に捕集され、その後、回収ローラ36に除去され、シート38を通過した後に、クリーニングブレード37にて掻き落とされて、回収される。
【0042】
また、回収ローラ36の表面粗さが大きい場合は、中間転写ベルト23から紙粉が多く搬送されてきたとしても、回収ローラ36の搬送力が高いために、シート38に詰まることなく通過させることができる。しかし、回収ローラ36の表面粗さが大きい場合は、クリーニングブレード37からトナーがすり抜けやすくなるため、クリーニングブレード37の設計に制約がでてきてしまう。
【0043】
したがって、紙粉をシート38に詰まらせることなく、クリーニングブレード37設計に制限を設けないために、紙粉の搬送量が多い中間転写ベルト23の初期には、回収ローラ36の表面粗さを大きく設定し、印字することで中間転写ベルト23の表面粗さが下がり、紙粉の搬送量が減ってきた場合、回収ローラ36の表面粗さはトナーを搬送する程度以上にすればよい。しかし、回収ローラ36の表面硬度が高い場合には、中間転写ベルト23の表面粗さの経時変化に合わせることができず、初期は紙粉を詰まらせることを防げたとしても、クリーニングブレード37すり抜け問題がすぐ顕著に表れ、クリーニング不良等が発生してしまう。
【0044】
しかしながら、回収ローラ36や中間転写ベルト23の基材硬度、表面硬度、表面粗さ等は紙粉やクリーニングブレード37をすり抜けるだけで設計することはできないため、ある程度条件が制約されてしまう。そこで、他のパラメーターに影響を与えずに紙粉やすり抜けの問題を解決させるために、研磨ローラ39で回収ローラ36の表面を均すことによって、回収ローラ36の初期の表面粗さを大きくし、経時的に表面粗さを下げていき、中間転写ベルト23の表面粗さの経時変化とを合わせることが可能となる。
【0045】
図5に研磨ローラ39有無での回収ローラ36の表面粗さの断面図を示す。図5(A)に示すように、回収ローラ36には、高硬度の金属メッキによるコーティング層36bを備えているため、クリーニングブレード37に当接しているとはいえ、大きく表面粗さが変化することは考え難い。そこで、回収ローラ36の表面を研磨する研磨ローラ39を高硬度にすることで、初期的に表面粗さが大きい回収ローラ36を、図5(B)に示すように、コーティング層36bを経時的に均すことが可能となる。
【0046】
もしくは、回収ローラ36の表面層(コーティング層36b)を基材36aよりも低硬度、研磨ローラ39の硬度は回収ローラ36の基材と表面層の間に設定することで、表面層は研磨されて表面は均されるが、基材層は均されないため、基材の表面粗さをブラスト処理等で設定すれば、ある範囲内で回収ローラ36の表面粗さを設定することが可能となり、初期と耐久での性能を満足させることができる。
【0047】
研磨ローラ39をクリーニングブレード37よりも下流側に配置しているのは、トナーが研磨ローラ39と回収ローラ36とに挟まれて押し付けられることで回収ローラ36に固着するのを防止することを目的としているが、酸化チタンなどのトナーの外添剤を研磨剤として、より研磨性を高めたい場合には、シート38とクリーニングブレード37との間に配置しても良い。
【0048】
(実施例1)
上述した条件に鑑み、中間転写ベルト23のコーティング層23cと回収ローラ36のコーティング層36bとには、同じ材質のものを用いる。
【0049】
これにより、中間転写ベルト23の表面粗さの経時変化と回収ローラ36の表面粗さの経時変化とを同期させることができ、常に合わせることができる。
【0050】
(実施例2)
回収ローラ36の表面硬度を中間転写ベルト23の表面硬度よりも高くすると共に、回収ローラ36の表面を研磨ローラ39で研磨した。
【0051】
これにより、図6に示すように、回収ローラ36を研磨しない場合に比べて、中間転写ベルト23の表面粗さの経時変化と回収ローラ36の表面粗の経時変化との相対的な変化率又は粗さの差分を同期させることができ、中間転写ベルト23及び回収ローラ36の各表面粗さの経時変化の傾向を同じ構造とした。
【0052】
尚、図6のグラフでは、中間転写ベルト23の初期の表面粗さの所定枚数までの経時変化が大きく、所定枚数の画像形成処理後においては、表面粗さの経時変化が小さい。中間転写ベルト23の表面粗さの経時変化に対して、回収ローラ36の表面粗さの経時変化を差分(Rz基準)で略同じ関係となるようにしている。
【0053】
この関係は、中間転写ベルト23のコーティング層23cの材料と回収ローラ36のコーティング層36bの材料との差によって設定することが可能であるが、例えば、中間転写ベルト23の経時変化を反射型センサー42により監視して、その中間転写ベルト23の経時変化が想定からずれた場合に、回収ローラ36の経時変化とが略同じ差分で変化するように、研磨ローラ39の回収ローラ36への付勢力(接触圧力)を可変することで調整することも可能である。
【0054】
また、回収ローラ36の表面粗さの経時変化を、所定枚数以降は殆ど変化しないように設定しても良い。
【0055】
(実施例3)
回収ローラ36の表面硬度を中間転写ベルト23の表面硬度よりも低くすると共に、図7に示すように、回収ローラ36の表面に金属メッキ層36cを設けたうえでコーティング層36dを設け、図7(A)〜図7(C)に示すように、そのコーティング層36dの経時変化(摩滅)のタイミングを、図8に示すように、中間転写ベルト23及び回収ローラ36の各表面粗さの経時変化の傾向を略同じ構造とした。
【0056】
尚、実施例3では、回収ローラ36の表面硬度を中間転写ベルト23の表面硬度よりも低い関係を維持しつつ、回収ローラ36の初期の表面粗さはRz>3(図8のグラフではRZ=5)とし、中間転写ベルト23の初期の表面粗さはRz>5(図8のグラフではRZ=10)とし、中間転写ベルト23の経時変化に伴う交換時期における表面粗さがRz>0.5とするのが望ましい。
【0057】
このように、本発明の画像形成装置としてのカラープリンタ11にあっては、中間転写ベルト23の表面粗さの経時変化と回収ローラ36の表面粗さの経時変化とを、回収ローラ36による残留物の除去率が低くなる方向で略同じ傾向を有する構造としたことにより、回転ブラシ35とシート38との間の目詰まりを抑制することができ、安定したクリーニング性能を確保することができる。
【0058】
尚、上記実施の形態では、回収ローラ36の表面を研磨ローラ39で研磨する構成を開示したが、回収ローラ36の表面硬度を中間転写ベルト23の表面硬度よりも低くした場合には、研磨ローラ39に類似の研磨部材をクリーニング装置31の上流付近に配置し、回収ローラ36に変えて中間転写ベルト23の表面を研磨しても良い。
【符号の説明】
【0059】
11…カラープリンタ(画像形成装置)
23…中間転写ベルト(像担持体)
23c…コーティング層
35…回転ブラシ
36…回収ローラ
36b…コーティング層
37…クリーニングブレード
38…シート
39…研磨ローラ(研磨部材)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナー画像が形成される像担持体と、
トナー画像を転写紙に転写した後の前記像担持体の表面と接触して、該表面に付着した残留物を捕集する回転ブラシと、
前記像担持体と前記回転ブラシとの接触部位よりも前記回転ブラシの回転方向下流側で該回転ブラシと接触して該回転ブラシで捕集した残留物を除去する回収ローラと、
前記回転ブラシと前記回収ローラとの接触部位よりも前記回収ローラの回転方向下流側で接触して前記回収ローラで除去した残留物を除去するクリーニングブレードと、
前記回転ブラシと前記回収ローラとの接触部位と前記クリーニングブレードとの間に位置して前記回収ローラに接触するシートと、
を備えた画像形成装置において、
前記像担持体の表面粗さと前記回収ローラの表面粗さとが、初期において大きく経時変化して小さくなる構造であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体の表面層と前記回収ローラの表面層とを、同じ材料からなるコーティング層で構成することによって、前記像担持体及び前記回収ローラの各表面粗さの経時変化の傾向を略同じ構造としたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回収ローラの表面硬度と前記像担持体の表面硬度に差があり、
表面硬度が高い前記一方の表面を研磨する研磨部材を設け、
前記像担持体の表面粗さの経時変化と前記回収ローラの表面粗さの経時変化との相対的な変化率又は粗さの差分を同期させることによって、前記像担持体及び前記回収ローラの各表面粗さの経時変化の傾向を同じ構造としたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記回収ローラの表面硬度と前記像担持体の表面硬度の一方の表面硬度を他方の表面硬度よりも低くすると共に、
表面硬度を低くした前記一方の表面にコーティング層を設け、
前記像担持体の表面粗さの経時変化と前記回収ローラの表面粗の経時変化との相対的な変化率又は粗さの差分を同期させることによって、前記像担持体及び前記回収ローラの各表面粗さの経時変化の傾向を略同じ構造としたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記回収ローラの初期の表面粗さがRz>3であり、
前記像担持体の初期の表面粗さがRz>5であり、
前記像担持体の経時変化に伴う交換時期における表面粗さがRz>0.5であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記回収ローラの表面のコーティング層が高硬度の金属メッキであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−29715(P2013−29715A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166538(P2011−166538)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】